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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094612
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】撚線導体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/08 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
H01B5/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207589
(22)【出願日】2020-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】395005169
【氏名又は名称】三洲電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 俊文
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307EA01
5G307EF10
(57)【要約】
【課題】圧縮することなく、若しくは、低い圧縮率で、撚線導体の断面形状を真円状に近い形状に製造できる撚線導体を提供する。
【解決手段】
複数の太径線15と、複数の第1中径線13と、複数の第2中径線14と、複数の細径線12で構成された外層3を有し、太径線15を周方向に離間して設け、周方向に隣り合う太径線15,15間に2本の第2中径線14を周方向に配設し、周方向に隣り合う第2中径線14,14の谷間部の内側に、1本の第1中径線13を配設し、第1中径線13と太径線15との間に、1本の細径線12を配設し、太径線15の直径は第2中径線14の直径より大きく、第2中径線14の直径は第1中径線13の直径よりも大きく、第1中径線13の直径は細径線12の直径よりも大きくした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層を有し、
前記太径線を周方向に離間して設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
前記第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は第1中径線の直径よりも大きく、第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
前記外層の内側に複数の素線で構成された内層を配設し、
前記第1中径線を、前記内層において最も外側の層を構成し、かつ、周方向に隣り合う素線で構成される谷間部の外側に配設したことを特徴とする請求項1記載の撚線導体。
【請求項3】
前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数と、前記第1中径線の本数を同じとしたことを特徴とする請求項2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記撚線導体の中心から、前記外層を構成する第2中径線の最縁端までの距離と、前記中心から、前記外層を構成する太径線の最縁端までの距離とが、同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撚線導体。
【請求項5】
前記太径線の本数が、6本以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撚線導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線導体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等に使用される撚線導体を構成する各々の素線は、一般的に、全て断面円形の丸線で、かつ、同一径である。該素線として銅線が主として用いられ、その銅線に、錫、ニッケル、銀、或いはアルミ、各種合金をメッキしたものが使用されている。
【0003】
例えば、19本の素線で構成される撚線導体は、一般的に、図7に示すように、撚線導体101における中心の1本の素線102を核として、その周囲を6本の素線103が覆い囲んで内層を形成し、更に、その外周を12本の素線104が覆い囲んで外層を形成し、それを同一方向に撚ることで形成されている。
【0004】
素線102、103、104が全て、断面円形で、かつ、同一径であることから、素線102、103、104を標準心線配列で配列して撚線導体101を形成すると、その外周形状は図7に示すように、六角形状に近似した形状となり、丸形状に近似した形状とはならない。以下、これを従来技術1とする。
【0005】
撚線導体101は、一般的に図7に示すように、外周部に絶縁材106を被覆した後に、電線等(被覆線)107として使用される。被覆線の断面形状は、略真円形状であることが望まれている。一方、絶縁材106は、耐圧特性の点から撚線導体101の外周部に略均一に被覆されることが望ましい。したがって、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれている。
【0006】
また、石油を主成分とする絶縁材106の減量化は、資源の有効利用の観点からも大変
重要であり、撚線導体の細径化が要求されている。
【0007】
しかし、撚線導体101における断面形状の外形が六角形で、かつ、被覆線107における断面形状の外形を真円とすると、撚線導体101の断面形状が六角形の頂点部の近傍に位置する絶縁材106の厚みは薄く、六角形の頂点部から辺部に至るほど厚くなり、絶縁材106の厚みが不均一となるという問題が生じる。
【0008】
また、耐圧不良を防止するためには、前記六角形の頂点部に位置する絶縁材106の厚みを一定以上確保する必要がある。そのため、撚線導体101の中心からその最縁端までの径よりも被覆線107を細くすることができず、被覆線の細径化、軽量化には限界があるという問題がある。
【0009】
また、辺部に位置する絶縁材106は、性能の観点からは過剰であるが、断面を真円とするためには必要であるため、絶縁材106の減量化にも限界が生じるという問題がある。
【0010】
また、撚線導体101の断面形状が六角形であると、被覆線を端末加工する時等において、絶縁材106をストリップする際に撚線導体101を傷つける虞があるという問題がある。
【0011】
上記の問題点は、撚線導体の断面形状を略真円とすることで解決することができる。
【0012】
この解決手段として、例えば、特許文献1記載のように、断面円形で、かつ、全て同一径の素線202を、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通すことにより、図8に示すように、撚線導体201の断面形状を略真円とする方法が提案されている。以下、これを従来技術2とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11-25758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記、従来技術2の撚線導体201は、図8に示すように、素線202を圧縮ダイスに通す時に、外層素線が、圧縮変形されることにより、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損なわれるという問題がある。
【0015】
また、従来技術2の撚線導体201は、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通す必要があるため、従来技術1の撚線導体101と比較して、圧縮ダイスが余分に必要であり、この圧縮ダイスは撚線導体201の製造時に摩耗損傷が生じるため、定期交換が必要でありコストが高くなるという問題がある。
【0016】
また、圧縮後の撚線を略真円状にするためには、製造機械(撚線機)の回転数を一定値以下にし、かつ、回転数を安定させる必要があるため、従来技術1の撚線導体101よりも生産効率が悪くなるという問題もある。
【0017】
そこで、本発明は、圧縮することなく、若しくは、上記従来技術2よりも低い圧縮率で素線を圧縮加工することで、撚線導体の断面形状をより真円形状に近い形状とすることができる撚線導体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層を有し、
前記太径線を周方向に離間して設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
前記第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は第1中径線の直径よりも大きく、第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記外層の内側に複数の素線で構成された内層を配設し、
前記第1中径線を、前記内層において最も外側の層を構成し、かつ、周方向に隣り合う素線で構成される谷間部の外側に配設したことを特徴とするものである。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数と、前記第1中径線の本数を同じとしたことを特徴とするものである。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記撚線導体の中心から、前記外層を構成する第2中径線の最縁端までの距離と、前記中心から、前記外層を構成する太径線の最縁端までの距離とが、同一であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記太径線の本数が、6本以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、太径線を周方向に離間して設け、周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、第1中径線と太径線との間に、1本の細径線を配設したことにより、撚線導体の断面形状は略真円形状とし、撚線導体の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【0024】
また、本発明の撚線導体は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体の外形を略真円形状とすることができるために、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性を損うことなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1に係る撚線導体の横断面図。
図2】本発明の実施例3に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図3】本発明の実施例3に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図4】本発明の実施例3に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図5】本発明の実施例4に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
図6】本発明の実施例4に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
図7】従来技術1の撚線導体の横断面図。
図8】従来技術2の撚線導体の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0027】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撚線導体1の軸方向と直交する方向に切断した横断面図で、その各素線の断面を示す斜線は、図の煩雑を避けるために省略した。
【0028】
撚線導体1は、内層2と、内層2の外側に設けられた外層3を有する。内層2は、1本の中心線(素線)10と、中心線10を覆い囲むように配置された6本の第1内層線11で構成された第1内層5、この第1内層線11が内層2において最も外側に位置する第1内層5を構成する素線に該当する。中心線10と第1内層線11は同じ直径で構成されている。
【0029】
外層3は、図1に示すように、12本の細径線(素線)12と、6本の第1中径線(素線)13と、12本の第2中径線(素線)14と、6本の太径線(素線)15の計36本の素線12,13,14,15で第1内層5を覆い囲むように構成されている。
【0030】
太径線15は、第1内層5を構成する第1内層線11の外側に設けられるとともに、太径線15の中心が、中心線10の中心と第1内層線11を通る線上に位置するように設けられ、太径線15の中心が、中心線10の中心と第1内層線11の中心を通る線上に、第1内層線11に当接するように位置することが好ましい。
【0031】
第1中径線13は、周方向に隣り合う太径線15と太径線15の間における径方向の内側部で、かつ、第1内層5を構成し、かつ、周方向に隣接する第1内層線11,11との間に形成される谷間部16の外側に、第1内層線11に当接するように配置されている。
【0032】
細径線12は、周方向に隣り合う太径線15と太径線15の間における径方向の内側部で、かつ、隣り合う第1中径線13と太径線15との間に、第1中径線13と太径線15と第1内層線11に当接するように配設されている。
【0033】
第2中径線14は、周方向に隣り合う太径線15と太径線15の間における径方向の外側部に、周方向に2本配設され、各第2中径線14は、隣り合う第1中径線13と細径線12との間に形成される谷間部18の外側に、第1中径線13と太径線15と細径線12と第2中径線14に当接するように配設されている。周方向に隣り合う第2中径線14と第2中径線14との間に形成される谷間部19の内側に、第1中径線13が配設されている。
【0034】
各素線10,11,12,13,14,15の基となる線材としては、裸銅線、無酸素銅線、線形結晶無酸素銅線、単結晶状高純度無酸素銅線等の銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、リッツ線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができる。各素線10,11,12,13,14,15の素材は、同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いてもよい。
【0035】
中心線10の直径d1は、第1内層線11の直径d2と同じに設定されている。第1内層線11の直径d2は、太径線15の直径d3より大きく設定され、太径線15の直径d3は、第2中径線14の直径d4の直径より大きく設定され、第2中径線14の直径d4の直径は、第1中径線13の直径d5の直径より大きく設定され、第1中径線13の直径d5の直径は、細径線12の直径d6より大きく設定されている。
【0036】
本実施例1では、d1=d2,d3=0.825×d2、d4=0.635×d2、d5=0.565×d2、d6=0.30×d2の関係が成立する各素線10,11,12,13,14,15を用いた。
【0037】
また、撚線導体1の断面形状が、略真円形状、つまり、中心線10の中心Aから太径線15の最外縁端Bまでの距離L1と、中心線10の中心Aから第2中径線14の最外縁端Cまでの距離L2が同一となるように形成されている。
【0038】
本願発明の撚線導体1は、上記の構造を有しているために、次のような作用、効果を奏する。
【0039】
撚線導体1の断面形状は略真円形状とし、かつ、素線10,11,12,13,14,15が隣接する全ての素線10,11,12,13,14,15に当接することができるために、撚形態が安定するとともに撚線導体1の導体密度を高くすることができ、撚線導体1の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【0040】
撚線導体1の外形が略真円形状で、かつ、上述のように、従来技術1の撚線導体101よりも細径化できることにより、絶縁材の被覆の厚みを薄くでき、かつ、略均一化することができるため、絶縁材を減量でき、コストを低減することができる。
【0041】
また、撚線導体1は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体1の外形を略真円形状とすることができるため、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損うことがなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【0042】
[実施例2]
上記実施例1の撚線導体1を構成する素線は、中心線10の直径d1は、第1内層線11の直径d2と同じに、第1内層線11の直径d2は、太径線15の直径d3より大きく、太径線15の直径d3は、第2中径線14の直径d4の直径より大きく、第2中径線14の直径d4の直径は、第1中径線13の直径d5の直径より大きく、第1中径線13の直径d5の直径は、細径線12の直径d6より大きいものを用いて各素線10,11,12,13,14,15及び撚線導体1を構成すれば、上記実施例1に記載の径を有する素線以外にも任意の素線を用いて撚線導体1を構成することができる。また、その外層3の外周部から圧縮ダイス等により、圧縮してもよい。
【0043】
この圧縮により、外層3を形成するとともに、径方向の最も外側に位置する素線14,15の外周部は、圧縮変形され、撚線導体の外形形状をより真円形状に近づけることができる。圧縮ダイス等による圧縮は、撚線導体1を製造する際に行っても良いし、撚線導体1を製造した後に行っても良い。なお、圧縮率に関しては、任意に設定する。
【0044】
その他の構造は、上記実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0045】
本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することができる。
【0046】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、外層3を構成する太径線15と第1中径線13を夫々6本、第2中径線14と細径線12の本数を、夫々6本の2倍の12本に設定したが、第1中径線13の本数を、太径線15の本数と同じで、第2中径線14と細径線12の本数を、太径線15の本数の2倍で、かつ、太径線15の本数が6本以上であれば夫々任意の本数に設定することができる。
【0047】
例えば、図2に示すように、内層2Aの第1内層5Aを構成する第1内層線11と、外層3Aを構成する太径線15と第1中径線13を7本、外層3Aを構成する第2中径線14と細径線12の本数を7本の2倍の各14本とした撚線導体21の場合には、d1=1.305×d2,d3=0.75×d2、d4=0.565×d2、d5=0.54×d2、d6=0.27×d2の関係が成立する各素線10,11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体21の断面形状を略真円形状とするとともに、全ての素線10,11,12,13,14,15が隣接する全ての素線10,11,12,13,14,15と当接することができる。
【0048】
例えば、図3に示すように、内層2Bの第1内層5Bを構成する第1内層線11と、外層3Bを構成する太径線15と第1中径線13を8本、外層3Bを構成する第2中径線14と細径線12の本数を8本の2倍の各16本とした撚線導体22の場合には、d1=1.615×d2,d3=0.705×d2、d4=0.52×d2、d5=0.50×d2、d6=0.26×d2の関係が成立する各素線10,11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体22の断面形状を略真円形状とするとともに、全ての素線10,11,12,13,14,15が隣接する全ての素線10,11,12,13,14,15と当接することができる。
【0049】
例えば、図4に示すように、内層2Cの第1内層5Cを構成する第1内層線11と、外層3Cを構成する太径線15と第1中径線13を9本、外層3Cを構成する第2中径線14と細径線12の本数を9本の2倍の各18本とした撚線導体23の場合には、d1=1.925×d2,d3=0.65×d2、d4=0.49×d2、d5=0.48×d2、d6=0.24×d2の関係が成立する各素線10,11,12,13,14,15の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体23の断面形状を略真円形状とするとともに、全ての素線10,11,12,13,14,15が隣接する全ての素線10,11,12,13,14,15と当接することができる。
【0050】
その他の構造は、上記実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0051】
本実施例3においても、上記実施例1,2と同様の作用効果を発揮することができる。
【0052】
本実施例3においては、更に、6本以上の太径線15、第1中径線13、第2中径線14、細径線12で外層3を構成することができるため、撚線導体1,21,22,23を設計する際の自由度が高く、細径撚線導体から太径撚線導体と広範な導体面積を必要とするものに適用することができる。
【0053】
[実施例4]
上記実施例1~3においては、内層2を1心の中心線10と太径線15と同じ本数からなる第1内層線11で構成したが、内層は、複数本の素線で構成されているとともに、内層の最も外側の層を構成する素線の本数と太径線15の本数が同じであれば、内層を構成する層の数と各層を構成する素線の本数は任意に設定することができる。
【0054】
また、内層を構成する素線の種類は、1種類で構成してもよいし、直径の異なる複数種類で構成してもよい。また、内層を形成する素線として、銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができ、外層を形成する素線と同じ材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。
【0055】
例えば、図5に示すように、1本の中心線31を配設し、中心線31の周りに9本の第1内層線32で覆って第1内層33を構成し、第1内層33の周りに、9本の第2内層線34で覆って第2内層35を構成し、中心線31、第1内層33、第2内層35で内層36を構成し、内層36の外側に、第2内層線34と同じ9本の太径線15で構成された図4に示す撚線導体23の外層3Cと同様の外層3Cを配設して撚線導体38としてもよい。撚線導体38において、内層36の最も外側の層は、第2内層35が該当し、第2内層35を構成する第2内層線34と太径線15の本数は同じである。また第2内層35を構成し、かつ、隣り合う第2内層線34,34との間に形成される谷間部の外側に、外層3Cを構成する第1中径線13が配設されている。
【0056】
また、図6に示すように、中心部に3本の第1内層線41で構成した第1内層42を構成し、第1内層42の周りを、9本の第2内層線43で覆って第2内層44を構成し、隣接する2本の第1内層線41,41と、その外側に位置し隣接する2本の第2内層線43,43との間に、1本の第3内層線45とその両側に1本ずつの第4内層線46を配設し、第1内層42、第2内層44、第3内層線45、第4内層線46で内層47を構成し、内層47の外側に、第2内層線43と同じ9本の太径線15で構成された図4に示す撚線導体23の外層3Cと同様の外層3Cを配設して撚線導体48としてもよい。撚線導体48において、内層47の最も外側の層は、第2内層44が該当し、第2内層44を構成する第2内層線43と太径線15の本数は同じである。また第2内層44を構成し、かつ、隣り合う第2内層線43,43との間に形成される谷間部の外側に、外層3Cを構成する第1中径線13が配設されている。
【0057】
その他の構造は、上記実施例1~3と同様であるため説明を省略する。
【0058】
本実施例4においても、上記実施例1~3と同様の作用効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,21,22,23,38,48 撚線導体
2,2A,2B,2C,36,47 内層
3,3A,3B,3C 外層
12 細径線
13 第1中径線
14 第2中径線
15 太径線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-01-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層を有し、
前記太径線を周方向に離間して設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
前記第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は前記第1中径線の直径よりも大きく、前記第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
前記外層の内側に複数の素線で構成された内層を配設し、
前記第1中径線を、前記内層において最も外側の層を構成し、かつ、周方向に隣り合う素線で構成される谷間部の外側に配設したことを特徴とする請求項1記載の撚線導体。
【請求項3】
前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数と、前記第1中径線の本数を同じとしたことを特徴とする請求項2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記撚線導体の中心から、前記外層を構成する第2中径線の最縁端までの距離と、前記中心から、前記外層を構成する太径線の最縁端までの距離とが、同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撚線導体。
【請求項5】
前記太径線の本数が、6本以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撚線導体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層を有し、
前記太径線を周方向に離間して設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
前記第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は前記第1中径線の直径よりも大きく、前記第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とするものである。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層と、該外層の内側に複数の素線で構成された内層を有する撚線導体であって、
前記太径線を、前記内層において最も外側の層を構成する素線の外側に配設して周方向に離間して設けるとともに、前記太径線の中心が、撚線導体の中心と、前記内層において最も外側の層を構成する素線を通る直線上に位置するように設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数を同じとし、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は前記第1中径線の直径よりも大きく、前記第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
記第1中径線を、前記内層において最も外側の層を構成し、かつ、周方向に隣り合う素線で構成される谷間部の外側に配設したことを特徴とする請求項1記載の撚線導体。
【請求項3】
前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数と、前記第1中径線の本数を同じとしたことを特徴とする請求項2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記撚線導体の中心から、前記外層を構成する第2中径線の最縁端までの距離と、前記中心から、前記外層を構成する太径線の最縁端までの距離とが、同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撚線導体。
【請求項5】
前記太径線の本数が、6本以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撚線導体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の太径線と、複数の第1中径線と、複数の第2中径線と、複数の細径線で構成された外層と、該外層の内側に複数の素線で構成された内層を有する撚線導体であって、
前記太径線を、前記内層において最も外側の層を構成する素線の外側に配設して周方向に離間して設けるとともに、前記太径線の中心が、撚線導体の中心と、前記内層において最も外側の層を構成する素線を通る直線上に位置するように設け、
周方向に隣り合う太径線間に2本の第2中径線を周方向に配設し、
周方向に隣り合う第2中径線の谷間部の内側に、1本の第1中径線を配設し、
第1中径線と前記太径線との間に、1本の細径線を配設し、
前記内層において最も外側の層を構成する素線の本数と、前記太径線の本数を同じとし、
前記太径線の直径は前記第2中径線の直径より大きく、前記第2中径線の直径は前記第1中径線の直径よりも大きく、前記第1中径線の直径は前記細径線の直径よりも大きくしたことを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、記第1中径線を、前記内層において最も外側の層を構成し、かつ、周方向に隣り合う素線で構成される谷間部の外側に配設したことを特徴とするものである。