(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094642
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】舗装構造物および舗装構造物構築方法
(51)【国際特許分類】
E01C 3/06 20060101AFI20220620BHJP
E01C 13/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E01C3/06
E01C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207642
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】松本 七保子
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA03
2D051AE04
2D051CA01
2D051CA04
(57)【要約】
【課題】排水方向を所望の方向に制御することができると共に、舗装構造物の内部が不飽和状態である場合でも舗装構造物中の地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出することができる舗装構造物を提供する。
【解決手段】舗装構造物2は、路床4と、路床4の上方に敷設された路盤6と、路盤6の上方に敷設された表層8と、路床4に形成された地下排水溝10と、吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれ、繊維によって吸収した水を排出する排水部12a、12bを有する吸水性シート12とを備える。吸水性シート12の排水部12a、12bは地下排水溝10に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出可能な舗装構造物であって、
路床と、
前記路床の上方に敷設された路盤と、
前記路盤の上方に敷設された表層と、
前記路床に形成された地下排水溝と、
吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれ、前記繊維によって吸収した水を排出する排水部を有する吸水性シートとを備え、
前記吸水性シートの前記排水部は前記地下排水溝に接続されている舗装構造物。
【請求項2】
前記排水部は前記吸水性シートの前記所定方向の両端である、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項3】
前記排水部は前記吸水性シートの前記所定方向の一端であり、前記吸水性シートの前記所定方向の他端は前記一端よりも上方に位置する、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項4】
前記排水部は前記吸水性シートの下端である、請求項1から3までのいずれかに記載の舗装構造物。
【請求項5】
前記吸水性シートは、ジオテキスタイルに前記繊維が織り込まれた吸水性補強シートである、請求項1から4までのいずれかに記載の舗装構造物。
【請求項6】
地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出可能な舗装構造物を構築する舗装構造物構築方法であって、
路床に地下排水溝を形成する工程と、
吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれ、前記繊維によって吸収した水を排出する排水部を有する吸水性シートを設置する工程と、
前記路床の上方に路盤を敷設する工程と、
前記路盤の上方に表層を敷設する工程とを含み、
前記吸水性シートを設置する際に、前記吸水性シートの前記排水部を前記地下排水溝に接続する舗装構造物構築方法。
【請求項7】
前記排水部を前記吸水性シートの前記所定方向の両端とする、請求項6に記載の舗装構造物構築方法。
【請求項8】
前記排水部を前記吸水性シートの前記所定方向の一端とし、前記吸水性シートの前記所定方向の他端を前記一端よりも上方に位置づける、請求項6に記載の舗装構造物構築方法。
【請求項9】
前記排水部を前記吸水性シートの下端とする、請求項6から8までのいずれかに記載の舗装構造物構築方法。
【請求項10】
前記吸水性シートとして、ジオテキスタイルに前記繊維が織り込まれた吸水性補強シートを用いる、請求項6から9までのいずれかに記載の舗装構造物構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出可能な舗装構造物およびこの舗装構造物を構築する舗装構造物構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装された道路や駐車場、飛行場の滑走路等の舗装構造物は、路床と、路床の上方に敷設された路盤と、路盤の上方に敷設された表層とを備える。このような舗装構造物においては、路床の内部や路盤の内部に何らかの原因によって空洞が形成されてしまう場合があり、この場合には、透水性が高い空洞に舗装構造物中の地下水、ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水(以下「浸入水」ということがある。)が集中して流入することになる。そうすると、空洞の上端が崩落することによって空洞が徐々に上昇していく。そして、舗装構造物の表層近傍に空洞が到達すると表層が陥没し、車両の通行等に支障をきたすという問題が発生する。そこで、舗装構造物の表層の陥没を防止するため、舗装構造物中に排水材を埋設し、舗装構造物中の地下水位の上昇を抑制する工法が行われている(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の排水材においては、排水方向が定まっていないため排水方向を所望の方向に制御することが困難であると共に、舗装構造物の内部が不飽和状態である場合には、地下水および浸入水がほとんど吸収されず所要の排水機能が発揮されないという問題がある。
【0005】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、排水方向を所望の方向に制御することができると共に、舗装構造物の内部が不飽和状態である場合でも舗装構造物中の地下水および浸入水を排出することができる舗装構造物および舗装構造物構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面によれば、上記課題を解決する以下の舗装構造物が提供される。すなわち、地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出可能な舗装構造物であって、路床と、前記路床の上方に敷設された路盤と、前記路盤の上方に敷設された表層と、前記路床に形成された地下排水溝と、吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれ、前記繊維によって吸収した水を排出する排水部を有する吸水性シートとを備え、前記吸水性シートの前記排水部は前記地下排水溝に接続されている舗装構造物が提供される。
【0007】
好ましくは、前記排水部は前記吸水性シートの前記所定方向の両端である。前記排水部は前記吸水性シートの前記所定方向の一端であり、前記吸水性シートの前記所定方向の他端は前記一端よりも上方に位置するのが好適である。前記排水部は前記吸水性シートの下端であるのが好都合である。前記吸水性シートは、ジオテキスタイルに前記繊維が織り込まれた吸水性補強シートであるのが望ましい。
【0008】
本発明の第2の局面によれば、上記課題を解決する以下の舗装構造物構築方法が提供される。すなわち、地下水ならびに舗装構造物の表面および舗装構造物の側方から舗装構造物の内部に浸入した水を排出可能な舗装構造物を構築する舗装構造物構築方法であって、路床に地下排水溝を形成する工程と、吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれ、前記繊維によって吸収した水を排出する排水部を有する吸水性シートを設置する工程と、前記路床の上方に路盤を敷設する工程と、前記路盤の上方に表層を敷設する工程とを含み、前記吸水性シートを設置する際に、前記吸水性シートの前記排水部を前記地下排水溝に接続する舗装構造物構築方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記排水部を前記吸水性シートの前記所定方向の両端とする。前記排水部を前記吸水性シートの前記所定方向の一端とし、前記吸水性シートの前記所定方向の他端を前記一端よりも上方に位置づけるのが好適である。前記排水部を前記吸水性シートの下端とするのが好都合である。前記吸水性シートとして、ジオテキスタイルに前記繊維が織り込まれた吸水性補強シートを用いるのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性を有する繊維が織り込まれた所定方向に沿って舗装構造物中の地下水および浸入水を地下排水溝に運ぶので、排水方向を所望の方向に制御することができると共に、吸水性を有する繊維が毛細管現象によって舗装構造物中の地下水および浸入水を吸収するので、舗装構造物の内部が不飽和状態である場合でも舗装構造物中の地下水および浸入水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】吸水性シートが実質上水平に設置された舗装構造物の断面図。
【
図3】吸水性シートの一端側部分および他端側部分が下方に折り曲げられた状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図4】吸水性シートの両端が地下排水溝に接続されると共に、地下排水溝に向かって下方に傾斜した状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図5】吸水性シートの一端が地下排水溝に接続され、吸水性シートの他端側部分が上方に向かって折り曲げられた状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図6】吸水性シートの一端側部分が下方に向かって折り曲げられると共に地下排水溝に接続され、吸水性シートの他端側部分が上方に向かって折り曲げられた状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図7】吸水性シートの一端が地下排水溝に接続されると共に、地下排水溝に向かって下方に傾斜した状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図8】吸水性シートの一端側部分が下方に向かって折り曲げられると共に地下排水溝に接続され、吸水性シートの他端側部分が上方に向かって折り曲げられ、かつ地下排水溝に向かって下方に傾斜した状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図9】吸水性シートの中間部が地下排水溝に接続されると共に、地下排水溝に向かって下方に傾斜した状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図10】吸水性シートの中間部が下方に向かって折り曲げられると共に地下排水溝に接続され、吸水性シートの一端側部分および他端側部分が上方に向かって折り曲げられた状態で吸水性シートが設置された舗装構造物の断面図。
【
図11】地下排水溝用の溝が路床に形成された状態を示す舗装構造物の断面図。
【
図12】地下排水溝用の溝に集水管が設置されると共に、路床の設置面に吸水性シートが設置された状態を示す舗装構造物の断面図。
【
図13】路盤および表層が形成された状態を示す舗装構造物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の舗装構造物および舗装構造物構築方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
まず、本発明の舗装構造物の実施形態について説明する。
図1に示すとおり、舗装構造物2は、路床4と、路床4の上方に敷設された路盤6と、路盤6の上方に敷設された表層8と、路床4に形成された地下排水溝10と、吸水性を有する繊維が所定方向に織り込まれた吸水性シート12とを備える。路盤6はクラッシャランや粒度調整砕石等でよく、表層8はアスファルト混合物等から形成され得る。
【0014】
図1に示すとおり、図示の実施形態の地下排水溝10は、
図1に矢印Aで示す方向(
図1における左右方向)に間隔をおいて路床4に設けられた一対の窪み14のそれぞれに、集水管16およびフィルター材18が設置されて形成されている。窪み14は、紙面に対して垂直な方向に延びており、集水管16は、窪み14に沿って配置されている。集水管16は、公知のコンクリート製または合成樹脂製の透水管または有孔管でよい。フィルター材18は、透水性が高く、かつ、路床4や路盤6からの土の細粒分の流入を防止することができるものが好ましく、たとえば、粒度が調整された砂利、砕石等が用いられ得る。なお、地下排水溝10は、集水管16に代えて、板状排水材、不織布、粗石、そだ等を有していてもよい。
【0015】
図2を参照して説明すると、吸水性シート12は、合成樹脂製の織布であり、吸水性を有する繊維20が所定方向(
図2に矢印Xで示す方向)に織り込まれている。繊維20の材質としては、たとえば、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル等が挙げられる。
図2に示すとおり、吸水性シート12に織り込まれている繊維20は、
図2に矢印Yで示す方向(
図2における上下方向であり、X方向に直交する方向)に間隔をおいてX方向に延びる複数本のラインを形成している。繊維20によって形成された複数のラインのそれぞれ(単一のライン)は、多数の繊維20によって構成されている。また、繊維20によって形成された複数のラインは互いに平行である。
【0016】
そして、吸水性シート12においては、毛細管現象によって、単一のラインを形成する繊維20同士の隙間に水を吸収すると共に、繊維20同士の隙間に吸収した水を所定方向(X方向)に沿って運ぶようになっている。なお、吸水性シート12は、繊維20の長手方向(X方向)に延びる1個以上の凹所(図示していない。)が各繊維20に形成されていることにより、毛細管現象によって各繊維20の凹所に水を吸収し、各繊維20の凹所を介して所定方向(X方向)に水を運ぶようになっていてもよい。
【0017】
また、吸水性シート12は、ジオテキスタイルとして形成された主要部22に、吸水性を有する繊維20が織り込まれた吸水性補強シートであるのが望ましい。これによって、舗装構造物2に設置された吸水性シート12が、舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸収して排出する機能だけでなく、舗装構造物2を補強する機能を発揮することができる。主要部22の材質としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステルが用いられ得る。
【0018】
吸水性シート12は、舗装構造物2中に様々な態様で設置され得るが、繊維20によって吸収した水を排出する排水部が地下排水溝10に接続されているのが重要である。吸水性シート12の設置態様の一例を説明すると、
図1に示すとおり、繊維20が織り込まれている所定方向(繊維20によって形成された複数のラインが延びるX方向)と
図1のA方向とが整合した状態において、吸水性シート12が路床4と路盤6との境界に実質上水平に設置されている。また、吸水性シート12の所定方向(X方向)の一端12aおよび他端12bが一対の地下排水溝10に接続されている。
【0019】
図1に示すように、吸水性シート12が実質上水平に設置されている場合には、吸水性シート12に吸収された水は、繊維20が織り込まれている所定方向(X方向)に沿って運ばれ、所定方向(X方向)の一端12aおよび他端12bから排出される。すなわち、
図1に示す態様においては、吸水性シート12の排水部は、吸水性シート12の所定方向(X方向)の両端12a、12bである。
【0020】
なお、
図1に示す態様においては、吸水性シート12の排水部としての両端12a、12bのそれぞれが地下排水溝10のフィルター材18の上面に接触しているが、吸水性シート12に吸収された水が排水部から地下排水溝10に排出されるようになっていればよく、たとえば、排水部がフィルター材18の側面に接触していてもよく、あるいは、
図3に示す態様のように吸水性シート12の排水部(両端12a、12b)がフィルター材18の内部に位置していてもよい。また、
図1に示す態様においては、吸水性シート12が路床4と路盤6との境界に設置されているが、
図3に示す態様のように、吸水性シート12は、路盤6の内部(路床4と路盤6との境界よりも上方の位置)に設置されていてもよい。
【0021】
図1に示す舗装構造物2においては、上記のとおり、吸水性シート12の繊維20が毛細管現象によって水を吸収するので、重力の作用で吸水性シート12の上方から流れてきた舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸水性シート12によって吸収すると共に、吸水性シート12の下方からも舗装構造物2中の地下水および浸入水を重力に逆らって吸い上げることができる。
図1には、吸水性シート12に吸収される地下水および浸入水の流れが矢印Wで示されている。
【0022】
そして、吸水性シート12に吸収された水は、所定方向(X方向)に沿って運ばれ、吸水性シート12の排水部としての両端12a、12bから地下排水溝10に排出される。地下排水溝10に排出された水は、集水管16を通って適宜の排出口(図示していない。)から排出される。
【0023】
このように、舗装構造物2においては、吸水性を有する繊維20が織り込まれた所定方向(X方向)に沿って舗装構造物2中の地下水および浸入水を地下排水溝10に運ぶので、排水方向を所望の方向に制御することができると共に、吸水性を有する繊維20が毛細管現象によって舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸収するので、舗装構造物2の内部が不飽和状態である場合でも舗装構造物2中の地下水および浸入水を排出することができる。
【0024】
また、吸水性シート12が、ジオテキスタイルとして構成された主要部22に、繊維20が織り込まれた吸水性補強シートである場合には、舗装構造物2の強度を向上させることができる。
【0025】
ところで、降雪地域においては冬季に融雪剤が舗装道路に散布されるところ、融雪剤には塩分が含まれているため、地下水および浸入水の塩分濃度が上昇して塩が結晶化すると、従来の排水材では塩により目詰まりが生じて排水機能が低下する場合があった。この点、吸水性シート12においては、吸水性を有する繊維20が毛細管現象によって舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸収する一方、結晶化した塩を吸収することがないので、地下水および浸入水の塩分濃度が上昇して塩が結晶化した場合でも吸水性シート12の繊維20に目詰まりが生じることがなく、排水機能の低下が防止される。同様に、吸水性シート12においては、路床4や路盤6から繊維20に土の細粒分が流入することも抑制される。
【0026】
また、寒冷地では、寒気が舗装構造物の内部に浸入して霜柱(アイスレンズ)が舗装構造物の内部に形成され、舗装構造物の表面(表層)が持ち上がる凍上現象が発生し、舗装構造物に亀裂が生じることがある。この点、図示の実施形態の舗装構造物2においては、舗装構造物2中の地下水および浸入水を地下排水溝10から排出することができるので、凍上現象の発生を抑制することができる。
【0027】
次に、
図3ないし
図10を参照して、吸水性シート12の他の設置態様について説明する。
【0028】
図3に示す態様においては、繊維20が織り込まれている所定方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、吸水性シート12が全体として路盤6に実質上水平に設置され、かつ、一端12aの手前において吸水性シート12の一端側部分12cが下方に折り曲げられ、他端12bの手前において吸水性シート12の他端側部分12dが下方に折り曲げられている。また、吸水性シート12の両端12a、12bが一対の地下排水溝10に接続されている。このように、
図3に示す態様においては、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する所定方向の両端12a、12bである。
【0029】
図3に示す舗装構造物2においては、一端側部分12cおよび他端側部分12dのそれぞれにおいて、吸水性シート12の繊維20を流れている地下水および浸入水が下方に向かって流れることになるため、地下水および浸入水の流れに重力の作用が加わり、排水部としての両端12a、12bからの地下水および浸入水の排出が促進される。したがって、
図3に示す舗装構造物2においては、舗装構造物2中の地下水および浸入水が比較的速やかに排出される。
【0030】
図4に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、中間部12eにおいて吸水性シート12が折り曲げられており、吸水性シート12は、中間部12eから一端12aに向かって下方に傾斜し、かつ、中間部12eから他端12bに向かって下方に傾斜している。また、吸水性シート12の両端12a、12bが一対の地下排水溝10に接続されている。
【0031】
図4に示す態様においても、
図3に示す態様と同様に、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する所定方向の両端12a、12bである。そして、
図4に示す舗装構造物2においては、吸水性シート12の繊維20を流れる地下水および浸入水に重力の作用(吸水性シート12の傾斜方向成分)が加わり、排水部としての両端12a、12bからの地下水および浸入水の排出が促進される。
【0032】
図5に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、吸水性シート12が全体として路床4と路盤6との境界に実質上水平に設置され、かつ、他端12bの手前において吸水性シート12の他端側部分12dが上方に折り曲げられている。また、吸水性シート12の一端12aが地下排水溝10に接続されている。
【0033】
図5に示す態様においては、吸水性シート12の他端側部分12dに吸収された地下水および浸入水には重力の作用が加わるため、他端側部分12dに吸収された地下水および浸入水は他端12bには運ばれず、一端12aに運ばれることになる。したがって、他端12bが一端12aよりも上方に位置することにより、他端12bが排水部とならず、一端12aのみが排水部となる。このように、
図5に示す態様においては、吸水性シート12の排水部が所定方向の一端12aであり、吸水性シート12の所定方向の他端12bが一端12aよりも上方に位置する。
【0034】
図6に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、吸水性シート12が全体として路盤6に実質上水平に設置され、かつ、一端12aの手前において吸水性シート12の一端側部分12cが下方に折り曲げられ、他端12bの手前において吸水性シート12の他端側部分12dが上方に折り曲げられている。また、吸水性シート12の一端12aが地下排水溝10に接続されている。
図6に示す態様においては、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する所定方向の一端12aであり、吸水性シート12の所定方向の他端12bが一端12aよりも上方に位置する。
【0035】
図7に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、他端12bから一端12aに向かって吸水性シート12が下方に傾斜し、吸水性シート12の一端12aが地下排水溝10に接続されている。
図7に示す態様においても、
図6に示す態様と同様に、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する所定方向の一端12aであり、吸水性シート12の所定方向の他端12bが一端12aよりも上方に位置する。
【0036】
図8に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、他端12bから一端12aに向かって吸水性シート12が下方に傾斜しており、かつ、一端12aの手前において吸水性シート12の一端側部分12cが下方に折り曲げられ、他端12bの手前において吸水性シート12の他端側部分12dが上方に折り曲げられている。また、吸水性シート12の一端12aが地下排水溝10に接続されている。
図8に示す態様においても、
図6および
図7に示す態様と同様に、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する所定方向の一端12aであり、吸水性シート12の所定方向の他端12bが一端12aよりも上方に位置する。
【0037】
図9に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、中間部12eにおいて吸水性シート12が折り曲げられており、吸水性シート12は、一端12aから中間部12eに向かって下方に傾斜し、かつ、他端12bから中間部12eに向かって下方に傾斜しており、中間部12eが吸水性シート12の下端となっている。また、吸水性シート12の中間部12eが地下排水溝10に接続されている。
【0038】
図9に示す態様においては、吸水性シート12に吸収された地下水および浸入水は、重力の作用によって、吸水性シート12の下端に位置する中間部12eに運ばれ、両端12a、12bには運ばれないことから、中間部12eから地下排水溝10に排出される。すなわち、吸水性シート12に吸収された地下水および浸入水は、一端12aまたは他端12bから排出されるとは限らず、重力の作用によって吸水性シート12の下端から排出される。このように、
図9に示す態様においては、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する中間部12eである。
【0039】
図10に示す態様においては、繊維20の方向(X方向)とA方向とが整合した状態において、吸水性シート12が全体として路盤6に実質上水平に設置され、かつ、一端12aの手前において吸水性シート12の一端側部分12cが上方に折り曲げられ、他端12bの手前において吸水性シート12の他端側部分12dが上方に折り曲げられ、中間部12eにおいて吸水性シート12が下方に折り曲げられている。また、吸水性シート12の中間部12eが地下排水溝10に接続されている。
【0040】
図10に示す態様においても、
図9に示す態様と同様に、吸水性シート12に吸収された地下水および浸入水は、重力の作用によって、吸水性シート12の下端に位置する中間部12eに運ばれ、両端12a、12bには運ばれないことから、中間部12eから地下排水溝10に排出される。このように
図10に示す態様においても、
図9に示す態様と同様に、吸水性シート12の排水部が、吸水性シート12の下端に位置する中間部12eである。
【0041】
次に、本発明の舗装構造物構築方法の好適実施形態について
図11ないし
図13を参照しつつ説明する。なお、舗装構造物構築方法の実施形態においては、上述した舗装構造物の実施形態の構成要素と同一でよい構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0042】
図示の実施形態では、まず、路床4に地下排水溝10を形成する工程を実施する。本工程では、
図11に示すとおり、路床4を掘削し、A方向に間隔をおいて紙面に対して垂直に延びる一対の窪み14を形成すると共に、吸水性シート12を設置するための設置面24を形成する。本実施形態の構築方法は、
図1に示す態様の舗装構造物2を構築する方法であり、設置面24は、一対の窪み14間に配置され、かつ、実質上水平に形成されている。なお、
図4等に示す態様のように、吸水性シート12を傾斜させて設置する場合には、設置面24を傾斜面として形成する。また、
図5等に示す態様のように、単一の地下排水溝10を設ける場合には、形成する窪み14は単一でよい。次に、
図12に示すとおり、窪み14に集水管16およびフィルター材18を敷設し、設置面24とほぼ同じ高さにフィルター材18の上面を調整する。
【0043】
路床4に地下排水溝10を形成した後、
図12に示すとおり、吸水性シート12を設置面24に設置する工程を実施する。吸水性シート12を設置する際は、繊維20が織り込まれている所定方向(X方向)とA方向とを整合させ、吸水性シート12の所定方向(X方向)の一端12aおよび他端12bを地下排水溝10に接続する。なお、本実施形態では、吸水性シート12の排水部を所定方向(X方向)の両端12a、12bとしているが、
図3ないし
図10を参照して説明したとおり、吸水性シート12の排水部を所定方向の一端12aとし、他端12bを一端12aよりも上方に位置づけてもよく、排水部を吸水性シート12の下端としてもよい。
【0044】
設置面24に吸水性シート12を設置した後、
図13に示すとおり、路床4の上方に路盤6を敷設する工程を実施し、次に路盤6の上方に表層8を敷設する工程を実施する。これによって、舗装構造物2を構築することができる。なお、本実施形態では、路床4と路盤6との境界に吸水性シート12を設置しているため、吸水性シート12を設置した後に路盤6を敷設する工程を実施しているが、路盤6の内部に吸水性シート12を設置する場合には、路盤6を敷設する工程を実施している際に吸水性シート12を設置する工程を実施することになる。
【0045】
このようにして構築された舗装構造物2においては、吸水性を有する繊維20が織り込まれた所定方向(X方向)に沿って舗装構造物2中の地下水および浸入水を地下排水溝10に運ぶので、排水方向を所望の方向に制御することができる。また、舗装構造物2に設置された吸水性シート12は、吸水性を有する繊維20が毛細管現象によって舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸収するので、舗装構造物2の内部が不飽和状態である場合でも舗装構造物2中の地下水および浸入水が排出されると共に、地下水および浸入水の塩分濃度が上昇して塩が結晶化した場合でも吸水性シート12の繊維20に目詰まりが生じることがなく、排水機能の低下が防止される。
【0046】
さらに、吸水性シート12が、ジオテキスタイルとして構成された主要部22に、吸水性を有する繊維20が織り込まれた吸水性補強シートである場合には、舗装構造物2の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
2:舗装構造物
4:路床
6:路盤
8:表層
10:地下排水溝
12:吸水性シート
12a:吸水性シートの所定方向の一端
12b:吸水性シートの所定方向の他端
12c:吸水性シートの一端側部分
12d:吸水性シートの他端側部分
12e:吸水性シートの所定方向の中間部
20:吸水性を有する繊維
22:吸水性シートの主要部