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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094666
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】遊星歯車機構及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
F16H1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207676
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】水谷 年寿
(72)【発明者】
【氏名】尾張 大樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】長内 広哲
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純也
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA17
3J027FA37
3J027FB01
3J027GC13
3J027GE03
3J027GE29
(57)【要約】
【課題】全体としての剛性が高く、大負荷がかかる場合にも変位量を小さく抑えることができる遊星歯車機構を実現する。
【解決手段】遊星歯車機構(2)は、軸部(211)とギヤ部(212,213)とを有するピニオンギヤ体(210)と、ピニオンギヤ体(210)を回転可能に支持するキャリヤ(2D)とを備える。ピニオンギヤ体(210)は、軸部(211)とギヤ部(212,213)とが一体的に形成されている。キャリヤ(2D)は、第1部材(220)と第2部材(230)とを備え、第1部材(220)と第2部材(230)とがこれらの当接部分(222a,232a)において溶接(242)により互いに固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部とギヤ部とを有するピニオンギヤ体と、前記ピニオンギヤ体を回転可能に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構であって、
前記ピニオンギヤ体は、前記軸部と前記ギヤ部とが一体的に形成されているとともに、前記ギヤ部に対して軸方向の一方側である軸方向第1側に突出する前記軸部の一部である第1突出軸部と、前記ギヤ部に対して軸方向の他方側である軸方向第2側に突出する前
軸部の一部である第2突出軸部と、を備え、
前記キャリヤは、第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記ギヤ部に対して前記軸方向第1側に配置されて前記第1突出軸部を回転可能に支持する第1支持部と、前記第2部材と連結される第1連結部と、を備え、
前記第2部材は、前記ギヤ部に対して前記軸方向第2側に配置されて前記第2突出軸部を回転可能に支持する第2支持部と、前記第1部材と連結される第2連結部と、を備え、
前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方が、前記軸方向における前記第1連結部及び前記第2連結部の他方の側へ延在する軸方向延在部を備え、
前記第1連結部は、前記軸方向第2側を向く面であって前記第2連結部との接合面である第1接合面を備え、
前記第2連結部は、前記軸方向第1側を向く面であって前記第1連結部との接合面である第2接合面を備え、
前記第1接合面と前記第2接合面との互いに対応する複数個所にピン挿入孔が設けられており、
複数の前記ピン挿入孔のそれぞれにノックピンが挿入された状態で、前記第1接合面と前記第2接合面とが当接し、前記第1部材と前記第2部材とが、前記第1接合面と前記第2接合面との当接部分において溶接により互いに固定されている、遊星歯車機構。
【請求項2】
前記第1連結部及び前記第2連結部のいずれか一方を対象連結部とし、他方を非対象連結部として、
前記非対象連結部が前記軸方向延在部を備えるとともに、前記対象連結部が前記軸方向延在部を備えない、請求項1に記載の遊星歯車機構。
【請求項3】
前記ギヤ部は、第1ギヤ部分と第2ギヤ部分とを備え、
前記第2ギヤ部分は、前記第1ギヤ部分に対して前記軸方向に隣接して配置され、前記第1ギヤ部分とは異なる外径に形成されている、請求項1又は2に記載の遊星歯車機構。
【請求項4】
前記軸方向延在部は、前記キャリヤの周方向に分散して複数設けられており、
複数の前記軸方向延在部のそれぞれにおける前記周方向の両端部を除く部分が連続的に溶接されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の遊星歯車機構。
【請求項5】
前記ノックピンが、前記第1接合面に設けられた前記ピン挿入孔と、前記第2接合面に設けられた前記ピン挿入孔との両方に圧入されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の遊星歯車機構。
【請求項6】
軸部とギヤ部とが一体的に形成されたピニオンギヤ体と、前記ピニオンギヤ体を回転可能に支持するキャリヤと、を備え、前記キャリヤが第1部材と第2部材とを備える遊星歯車機構の製造方法であって、
前記第1部材の第1接合面と前記第2部材の第2接合面との互いに対応する複数個所に設けられた複数のピン挿入孔のそれぞれにノックピンを挿入し、前記第1部材と前記第2部材との相対位置を径方向及び周方向に位置決めして前記第1接合面と前記第2接合面とを当接させた仮組状態とする工程と、
前記仮組状態で、前記第1部材に前記軸部を回転可能に支持する第1支持部を形成する加工と、前記第2部材に前記軸部を回転可能に支持する第2支持部を形成する加工と、を行う工程と、
前記第1支持部が形成された前記第1部材と前記第2支持部が形成された前記第2部材とを分離して、前記第1支持部と前記第2支持部との間に前記ピニオンギヤ体を配置し、その後、再び前記第1接合面と前記第2接合面とを当接させ、前記軸部を前記第1支持部と前記第2支持部とにより回転可能に支持した本組状態とする工程と、
前記本組状態で、前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1接合面と前記第2接合面との当接部分において溶接により互いに固定する工程と、
を含む、遊星歯車機構の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッド車両や所謂エンジン車両等の車両用の駆動装置において、多くの場合、変速機構を構成するのに遊星歯車機構が用いられる。遊星歯車機構は、軸部とギヤ部とを有するピニオンギヤ体と、このピニオンギヤ体を回転可能に支持するキャリヤとを備える。このような遊星歯車機構の一例が、特開2016-133182号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の遊星歯車機構(遊星歯車機構50)において、キャリヤ(キャリヤ42c)によって回転可能に支持されるピニオンギヤ体は、軸部(ピニオンシャフト55)とギヤ部(ピニオンギヤ42p)とが別体で構成されている。そして、キャリヤに軸部が固定され、その軸部に対してギヤ部が軸受(ニードルベアリング55)を介して回転可能に支持されている。また、特許文献1には明示の記載はないが、キャリヤを構成する第1部材(支持部52)と第2部材(支持部53)とは、ボルト等の締結部材を用いて互いに固定されることが一般的である。
【0004】
ところで、遊星歯車機構に入力されるトルクが大きくなると、キャリヤやピニオンギヤ体にかかる負荷も大きくなる。このような場合に、キャリヤを構成する第1部材と第2部材とが締結部材で固定されていたり、ピニオンギヤ体を構成する軸部とギヤ部とが別体であったりすると、負荷による変位量が大きくなり、ギヤ部と他のギヤとの歯当たりが悪化する(すなわち、ギヤどうしの噛み合い状態が設計値からずれる)可能性があった。歯当たりが悪化すると、ギヤ部への応力集中やギヤどうしの歯面の接触面圧の過大化に繋がり得るため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-133182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、全体としての剛性が高く、大負荷がかかる場合にも変位量を小さく抑えることができる遊星歯車機構の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る遊星歯車機構は、
軸部とギヤ部とを有するピニオンギヤ体と、前記ピニオンギヤ体を回転可能に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構であって、
前記ピニオンギヤ体は、前記軸部と前記ギヤ部とが一体的に形成されているとともに、前記ギヤ部に対して軸方向の一方側である軸方向第1側に突出する前記軸部の一部である第1突出軸部と、前記ギヤ部に対して軸方向の他方側である軸方向第2側に突出する前記軸部の一部である第2突出軸部と、を備え、
前記キャリヤは、第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記ギヤ部に対して前記軸方向第1側に配置されて前記第1突出軸部を回転可能に支持する第1支持部と、前記第2部材と連結される第1連結部と、を備え、
前記第2部材は、前記ギヤ部に対して前記軸方向第2側に配置されて前記第2突出軸部を回転可能に支持する第2支持部と、前記第1部材と連結される第2連結部と、を備え、
前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方が、前記軸方向における前記第1連結部及び前記第2連結部の他方の側へ延在する軸方向延在部を備え、
前記第1連結部は、前記軸方向第2側を向く面であって前記第2連結部との接合面である第1接合面を備え、
前記第2連結部は、前記軸方向第1側を向く面であって前記第1連結部との接合面である第2接合面を備え、
前記第1接合面と前記第2接合面との互いに対応する複数個所にピン挿入孔が設けられ、ており、
複数の前記ピン挿入孔のそれぞれにノックピンが挿入された状態で、前記第1接合面と前記第2接合面とが当接し、前記第1部材と前記第2部材とが、前記第1接合面と前記第2接合面との当接部分において溶接により互いに固定されている遊星歯車機構。
【0008】
この構成によれば、軸部とギヤ部とが一体的に形成されているので、これらを別体で構成する場合に比べて、ピニオンギヤ体の剛性を高めることができる。また、第1部材と第2部材とを溶接により固定しているので、ボルト等の締結部材により固定する場合に比べて、キャリヤの剛性を高めることができる。これにより、遊星歯車機構全体としての剛性を高めることができ、大負荷がかかる場合にも変位量を小さく抑えることができる。よって、ギヤ部と他のギヤ(サンギヤ又はリングギヤ)との噛み合いを適正な状態に維持しやすくなるため、ギヤ部の応力集中や接触面圧の過大化を抑制することができる。
【0009】
ところで、上記の構成では、ピニオンギヤ体の軸部とギヤ部とが一体的に形成されているので、当該ピニオンギヤ体をキャリヤ(第1部材及び第2部材)に組み付けた後に第1部材と第2部材とを溶接する必要がある。この点、溶接前であっても、複数のピン挿入孔のそれぞれに挿入されたノックピンにより、第1部材と第2部材との相対位置(径方向及び周方向の相対位置)を高精度に合わせることができる。そして、第1部材と第2部材との相対位置を高精度に合わせた状態で、第1支持部及び第2支持部等の精度が必要な部分の加工を行い、そのままの精度で、溶接により第1部材と第2部材とを固定することができる。よって、軸部とギヤ部とが一体化されたピニオンギヤ体を高い軸心精度で支持しながら、第1部材と第2部材とを溶接により固定することができる。従って、大負荷がかかる場合にも変位量を小さく抑えることができる遊星歯車機構を適切に実現することができる。
【0010】
また、本開示に係る遊星歯車機構の製造方法は、
軸部とギヤ部とが一体的に形成されたピニオンギヤ体と、前記ピニオンギヤ体を回転可能に支持するキャリヤと、を備え、前記キャリヤが第1部材と第2部材とを備える遊星歯車機構の製造方法であって、
前記第1部材の第1接合面と前記第2部材の第2接合面との互いに対応する複数個所に設けられた複数のピン挿入孔のそれぞれにノックピンを挿入し、前記第1部材と前記第2部材との相対位置を径方向及び周方向に位置決めして前記第1接合面と前記第2接合面とを当接させた仮組状態とする工程と、
前記仮組状態で、前記第1部材に前記軸部を回転可能に支持する第1支持部を形成する加工と、前記第2部材に前記軸部を回転可能に支持する第2支持部を形成する加工と、を行う工程と、
前記第1支持部が形成された前記第1部材と前記第2支持部が形成された前記第2部材とを分離して、前記第1支持部と前記第2支持部との間に前記ピニオンギヤ体を配置し、その後、再び前記第1接合面と前記第2接合面とを当接させ、前記軸部を前記第1支持部と前記第2支持部とにより回転可能に支持した本組状態とする工程と、
前記本組状態で、前記第1部材と前記第2部材とを、前記第1接合面と前記第2接合面との当接部分において溶接により互いに固定する工程と、
を含む。
【0011】
この構成によれば、上述したように、大負荷がかかる場合にも変位量を小さく抑えることができる遊星歯車機構を適切に実現することができる。
【0012】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の遊星歯車機構を含む車両用駆動装置のスケルトン図
図2】車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図3図2の部分拡大図
図4】キャリヤカバーの軸方向視図
図5】遊星歯車機構の製造工程の一局面を示す図
図6】遊星歯車機構の製造工程の一局面を示す図
図7】遊星歯車機構の製造工程の一局面を示す図
図8】遊星歯車機構の製造工程の一局面を示す図
図9】遊星歯車機構の平面図
図10】別態様の遊星歯車機構の断面図
図11】別態様の遊星歯車機構の断面図
図12】別態様の遊星歯車機構のキャリヤカバーの軸方向視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
遊星歯車機構の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、車両を駆動するための車両用駆動装置1で用いられる遊星歯車機構2を例として説明する。この遊星歯車機構2は、差動歯車機構50の構成部品となっている。
【0015】
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機10と、第2回転電機20と、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材70Aと、第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材70Bと、第1カウンタギヤ機構30と、第2カウンタギヤ機構40と、遊星歯車機構2を含む差動歯車機構50とを備えている。図2に示すように、これらはケース(駆動装置ケース)9に収容されている。なお、第1出力部材70A及び第2出力部材70Bの一部は、ケース9の外部に露出している。
【0016】
本実施形態において、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いる。
【0017】
また、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
【0018】
第1回転電機10は、第1軸X1上に配置されている。第2回転電機20は、第2軸X2上に配置されている。第1出力部材70A及び第2出力部材70Bは、第3軸X3上に配置されている。第1カウンタギヤ機構30は、第4軸X4上に配置されている。第2カウンタギヤ機構40は、第5軸X5上に配置されている。
【0019】
これらの第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、第4軸X4、及び第5軸X5は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。本実施形態では、これらの第1軸X1、第2軸X2、第3軸X3、第4軸X4、及び第5軸X5に平行な方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とするとともに、その反対側である軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。
【0020】
第1回転電機10は、第1ステータ11と、第1ロータ12とを備えている。本実施形態では、第1回転電機10は、インナロータ型の回転電機であり、非回転部材(本例ではケース9)に第1ステータ11が固定されているとともに、この第1ステータ11の内側に、第1ロータ12が回転自在に支持されている。
【0021】
第1ロータ12には、軸方向Lに沿って延在する第1入力軸15が一体的に回転するように連結されている。第1入力軸15は、第1ロータ12から軸方向第2側L2に向かって延出している。そして、本例では、この第1入力軸15の外面に第1入力ギヤ16が形成されている。これにより、第1入力ギヤ16は、第1回転電機10の第1ロータ12と一体的に回転する。
【0022】
第2回転電機20は、第2ステータ21と、第2ロータ22とを備えている。本実施形態では、第2回転電機20は、インナロータ型の回転電機であり、非回転部材(本例ではケース9)に第2ステータ21が固定されているとともに、この第2ステータ21の内側に、第2ロータ22が回転自在に支持されている。
【0023】
第2ロータ22には、軸方向Lに沿って延在する第2入力軸25が一体的に回転するように連結されている。第2入力軸25は、第2ロータ22から軸方向第1側L1に向かって延出している。そして、本例では、この第2入力軸25の外面に第2入力ギヤ26が形成されている。これにより、第2入力ギヤ26は、第2回転電機20の第2ロータ22と一体的に回転する。
【0024】
第1カウンタギヤ機構30は、第1カウンタ入力ギヤ31と、第1カウンタ出力ギヤ32と、第1カウンタ軸33とを備えている。第1カウンタ入力ギヤ31は、第1カウンタギヤ機構30の入力要素であり、第1入力ギヤ16に噛み合っている。第1カウンタ軸33は、第1カウンタ入力ギヤ31と第1カウンタ出力ギヤ32とを一体的に回転するように連結している。第1カウンタ出力ギヤ32は、第1カウンタ入力ギヤ31に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1カウンタ出力ギヤ32は、第1カウンタギヤ機構30の出力要素であり、差動歯車機構50の第1差動入力ギヤ51に噛み合っている。
【0025】
第2カウンタギヤ機構40は、第2カウンタ入力ギヤ41と、第2カウンタ出力ギヤ42と、第2カウンタ軸43とを備えている。第2カウンタ入力ギヤ41は、第2カウンタギヤ機構40の入力要素であり、第2入力ギヤ26に噛み合っている。第2カウンタ軸43は、第2カウンタ入力ギヤ41と第2カウンタ出力ギヤ42とを一体的に回転するように連結している。第2カウンタ出力ギヤ42は、第2カウンタ入力ギヤ41に対して軸方向第2側L2に配置されている。第2カウンタ出力ギヤ42は、第2カウンタギヤ機構40の出力要素であり、差動歯車機構50の第2差動入力ギヤ52に噛み合っている。
【0026】
差動歯車機構50は、第1差動入力ギヤ51と、第2差動入力ギヤ52と、遊星歯車機構2とを備えている。
【0027】
第1差動入力ギヤ51は、第1連結部材61に形成されている。本実施形態では、第1連結部材61の外周面に、第1差動入力ギヤ51が形成されている。第1差動入力ギヤ51は、第1カウンタ出力ギヤ32に噛み合っている。第1連結部材61は、第2連結軸64と同軸に、当該第2連結軸64の径方向外側を覆うように配置されている。また、第1差動入力ギヤ51が形成された第1連結部材61は、リングギヤ2Cと一体的に回転するように連結されている。
【0028】
第2差動入力ギヤ52は、第2連結部材62に形成されている。本実施形態では、第2連結部材62の外周面に、第2差動入力ギヤ52が形成されている。第2差動入力ギヤ52は、第2カウンタ出力ギヤ42に噛み合っている。第2連結部材62は、第1連結部材61に対して軸方向第2側L2において、第1連結軸63及び第2出力部材70Bの径方向外側を覆うように配置されている。また、第2差動入力ギヤ52が形成された第2連結部材62は、第2サンギヤ2Bが形成された第2連結軸64と一体的に回転するように連結されている。
【0029】
本実施形態の遊星歯車機構2は、ラビニヨ型の遊星歯車機構で構成されている。遊星歯車機構2は、第1サンギヤ2Aと、第2サンギヤ2Bと、リングギヤ2Cと、キャリヤ2Dとを有している。
【0030】
第1サンギヤ2Aは、第2出力部材70Bと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1サンギヤ2Aは、軸方向Lに沿って延在する第1連結軸63を介して、第2出力部材70Bと連結されている。第1連結軸63の軸方向第1側L1の端部にスプライン係合されたサンギヤ形成部材65の外周面に第1サンギヤ2Aが形成されているとともに、第1連結軸63の軸方向第2側L2の端部の径方向内側に第2出力部材70Bが進入した状態で、第1連結軸63と第2出力部材70Bとがスプライン係合により互いに連結されている。
【0031】
第2サンギヤ2Bは、第2カウンタ出力ギヤ42に噛み合う第2差動入力ギヤ52と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2サンギヤ2Bは、軸方向Lに沿って延在すると第2連結部材62とを介して、第2差動入力ギヤ52と連結されている。第2連結軸64の軸方向第1側L1の端部における外周面に第2サンギヤ2Bが形成されているとともに、第2連結軸64とスプライン係合により連結された第2連結部材62の外周面に、第2差動入力ギヤ52が形成されている。
【0032】
リングギヤ2Cは、第1カウンタ出力ギヤ32に噛み合う第1差動入力ギヤ51と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1差動入力ギヤ51が形成された第1連結部材61と一体回転するように連結されたリングギヤ形成部材66の内周面にリングギヤ2Cが形成されている。リングギヤ2Cは、リングギヤ形成部材66及び第1連結部材61を介して、第1差動入力ギヤ51と一体回転するように連結されている。
【0033】
キャリヤ2Dは、第1出力部材70Aと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、キャリヤ2Dは、第1出力部材70Aの軸方向第2側L2の端部において一体的に形成されている。また、キャリヤ2Dは、複数対の第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213を回転自在に支持している。第1ピニオンギヤ212は、第1サンギヤ2Aに噛み合っており、第2ピニオンギヤ213は、第2サンギヤ2Bに噛み合っている。
【0034】
差動歯車機構50は、第1回転電機10から第1差動入力ギヤ51に伝達された駆動力及び第2回転電機20から第2差動入力ギヤ52に伝達された駆動力を、第1出力部材70Aと第2出力部材70Bとに分配して出力する。
【0035】
以下では、遊星歯車機構2の構成について、より詳細に説明する。図3に示すように、遊星歯車機構2は、第1サンギヤ2Aと、第2サンギヤ2Bと、リングギヤ2Cと、ピニオンギヤ体210と、ピニオンギヤ体210を回転可能に支持するキャリヤ2Dとを備えている。第1サンギヤ2Aは、第1連結軸63の軸方向第1側L1の端部にスプライン係合されたサンギヤ形成部材65の外周面に形成されている。第2サンギヤ2Bは、第2連結軸64の軸方向第1側L1の端部における外周面に形成されている。リングギヤ2Cは、第1連結部材61と一体的に回転するように連結されたリングギヤ形成部材66の内周面に形成されている。
【0036】
本実施形態では、第2サンギヤ2Bは、第1サンギヤ2Aに対して軸方向第2側L2に配置されており、当該第1サンギヤ2Aよりも小径に形成されている。また、リングギヤ2Cは、第1サンギヤ2A及び第2サンギヤ2Bのうち、第2サンギヤ2Bと同じ軸方向Lの位置に配置されている。
【0037】
ピニオンギヤ体210は、ピニオン軸211と、第1ピニオンギヤ212と、第2ピニオンギヤ213とを有する。本実施形態では、ピニオンギヤ体210を構成するピニオン軸211と第1ピニオンギヤ212と第2ピニオンギヤ213とは、一体的に形成されている。また、第2ピニオンギヤ213は、第1ピニオンギヤ212に対して軸方向Lに隣接して配置され、第1ピニオンギヤ212とは異なる外径に形成されている。具体的には、第2ピニオンギヤ213は、第1ピニオンギヤ212に対して軸方向第2側L2に配置されており、第1ピニオンギヤ212よりも大径に形成されている。そして、第1ピニオンギヤ212が第1サンギヤ2Aに噛み合い、第2ピニオンギヤ213が第2サンギヤ2Bに噛み合っている。
【0038】
このように、ピニオンギヤ体210は、第1ピニオンギヤ212と第2ピニオンギヤ213とを備え、第2ピニオンギヤ213は、第1ピニオンギヤ212に対して軸方向Lに隣接して配置され、第1ピニオンギヤ212とは異なる外径に形成されている。
【0039】
この構成によれば、ラビニヨ型の遊星歯車機構2を適切に構成することができる。
【0040】
ピニオン軸211の軸方向第1側L1の端部は、第1ピニオンギヤ212よりも軸方向第1側L1に突出している。また、ピニオン軸211の軸方向第2側L2の端部は、第2ピニオンギヤ213よりも軸方向第2側L2に突出している。このように、ピニオンギヤ体210は、ピニオン軸211の一部であってピニオンギヤ212,213に対して軸方向第1側L1に突出する第1突出軸部211aと、ピニオン軸211の一部であってピニオンギヤ212,213に対して軸方向第2側L2に突出する第2突出軸部211bとを有している。ピニオンギヤ体210は、第1突出軸部211aと第2突出軸部211bとで、ピニオン軸受251を介して、キャリヤ2Dによって回転可能に支持されている。
【0041】
本実施形態では、ピニオン軸211が「軸部」に相当する。また、第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213が「ギヤ部」に相当するとともに、これらのうち第1ピニオンギヤ212が「第1ギヤ部分」に相当し、第2ピニオンギヤ213が「第2ギヤ部分」に相当する。
【0042】
キャリヤ2Dは、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とを備えている。キャリヤ本体220がピニオンギヤ体210の一端(本例では第2突出軸部211b)を回転可能に支持し、キャリヤカバー230がピニオンギヤ体210の他端(本例では第1突出軸部211a)を回転可能に支持している。キャリヤ本体220は、第1連結部材61に対して相対回転可能に支持されている。キャリヤカバー230は、第1出力部材70Aと一体的に形成されている。
【0043】
キャリヤ本体220は、ピニオンギヤ体210を軸方向第2側L2から回転可能に支持するとともに、軸方向第2側L2からキャリヤカバー230に連結される。キャリヤ本体220は、ピニオンギヤ体210の第2突出軸部211bを回転可能に支持する支持部221と、キャリヤカバー230と連結される連結部222とを備えている。支持部221は、ピニオンギヤ体210の個数に応じた数だけ設けられており、複数の支持部221が周方向に分散して配置されている。そして、複数の支持部221のそれぞれに貫通孔221aが形成され、この貫通孔221aにピニオンギヤ体210の第2突出軸部211bが挿入されている。また、周方向に隣り合う支持部221どうしの間に、連結部222が設けられている。こうして、支持部221と連結部222とが周方向に交互に設けられている。
【0044】
本実施形態では、キャリヤ本体220の支持部221は、その全体が第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213よりも軸方向第2側L2に配置されている。支持部221は、第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213よりも軸方向第2側L2に配置された円環板状部に設けられている。これに対して、キャリヤ本体220の連結部222は、軸方向Lにおけるキャリヤカバー230の連結部232側(軸方向第1側L1)へ延在する軸方向延在部223を備えている。連結部222は、軸方向延在部223を備えることで、第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213と同じ軸方向Lの領域を含むように配置されている。また、軸方向延在部223は、連結部222の位置に応じて、周方向に分散して複数設けられている。
【0045】
連結部222は、キャリヤカバー230側(軸方向第1側L1)を向く面であって、キャリヤカバー230の連結部232との接合面となる接合面222aを備えている。この接合面222aは、連結部222の軸方向第1側L1側の端面で構成されている。このように、キャリヤ本体220では、軸方向Lにおいて、ピニオンギヤ体210の支持位置(貫通孔221aの位置)とキャリヤカバー230との接合位置(接合面222aの位置)とが離間している。複数の連結部222のそれぞれの接合面222aには、軸方向Lに沿ってピン挿入孔225が設けられている。ピン挿入孔225は、貫通孔221aとは異なる周方向の位置に設けられている。また、本実施形態では、ピン挿入孔225の個数は、貫通孔221aの個数よりも少ない(本例では半分)。
【0046】
本実施形態では、キャリヤ本体220が「第2部材」に相当する。また、キャリヤ本体220の支持部221が「第2支持部」に相当し、キャリヤ本体220の連結部222が「第2連結部」に相当するとともに「非対象連結部」に相当する。また、連結部222の接合面222aが「第2接合面」に相当する。
【0047】
キャリヤカバー230は、ピニオンギヤ体210を軸方向第1側L1から回転可能に支持するとともに、軸方向第1側L1からキャリヤ本体220に連結される。キャリヤカバー230は、ピニオンギヤ体210の第1突出軸部211aを回転可能に支持する支持部231と、キャリヤ本体220と連結される連結部232とを備えている。支持部231は、ピニオンギヤ体210の個数に応じた数だけ設けられており、図4に示すように、複数の支持部231が周方向に分散して配置されている。そして、複数の支持部231のそれぞれに貫通孔231aが形成され、この貫通孔231aにピニオンギヤ体210の第1突出軸部211aが挿入されている。また、周方向に隣り合う支持部231どうしの間に、連結部232が設けられている。こうして、支持部231と連結部232とが周方向に交互に設けられている。
【0048】
本実施形態では、キャリヤカバー230の支持部231及び連結部232は、その全体が第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213よりも軸方向第1側L1に配置されている。支持部231及び連結部232は、第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213よりも軸方向第1側L1に配置された円環板状部(第1出力部材70Aの軸方向第2側L2の端部に設けられたフランジ部)に設けられている。このように、キャリヤカバー230の連結部232は、キャリヤ本体220の連結部222とは異なり、軸方向Lに延在する部位(軸方向延在部)を備えていない。
【0049】
このように、キャリヤ本体220の連結部222及びキャリヤカバー230の連結部232のいずれか一方を「対象連結部」とし、他方を「非対象連結部」としたとき、非対象連結部(本例ではキャリヤ本体220)が軸方向延在部223を備えるとともに、対象連結部(本例ではキャリヤカバー230)が軸方向延在部を備えていない。
【0050】
この構成によれば、キャリヤ本体220の連結部222及びキャリヤカバー230の連結部232のいずれか一方を平坦な形状に形成できるので、低コスト化を図ることができる。
【0051】
このため、キャリヤカバー230では、上記円環板状部におけるキャリヤ本体220側(軸方向第2側L2)を向く面が、キャリヤ本体220の連結部222との接合面232aとなっている。そして、キャリヤカバー230では、軸方向Lにおいて、ピニオンギヤ体210の支持位置(貫通孔231aの位置)とキャリヤ本体220との接合位置(接合面232aの位置)とが同じとなっている。複数の連結部232のそれぞれの接合面232aには、軸方向Lに沿ってピン挿入孔235が設けられている。キャリヤ本体220の接合面222aのピン挿入孔225と、キャリヤカバー230の接合面232aのピン挿入孔235とは、互いに対応する周方向及び径方向の位置に設けられている。
【0052】
本実施形態では、キャリヤカバー230が「第1部材」に相当する。また、キャリヤカバー230の支持部231が「第1支持部」に相当し、キャリヤカバー230の連結部232が「第1連結部」に相当するとともに「対象連結部」に相当する。また、連結部232の接合面232aが「第1接合面」に相当する。
【0053】
キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とは、溶接によって互いに固定されている。キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とは、それぞれの接合面222a,232aどうしが当接する部分において、溶接によって互いに固定されている。このとき、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とは、互いに対応する位置に設けられた複数のピン挿入孔225,235のそれぞれにノックピン241が挿入された状態で固定されている。ノックピン241は、ピン挿入孔225,235の両方に圧入されている。
【0054】
このように、ノックピン241が、接合面222aに設けられたピン挿入孔225と接合面232aに設けられたピン挿入孔235との両方に圧入されている。
【0055】
この構成によれば、キャリヤカバー230とキャリヤ本体220との相対位置を径方向及び周方向に高精度に位置決めすることができる。
【0056】
この状態で、キャリヤ本体220の接合面222aとキャリヤカバー230の接合面232aとが当接する部分の外周部に溶接部242が形成されて、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とが固定されている。本実施形態では、溶接部242は、複数の軸方向延在部223のそれぞれにおける周方向の両端部を除く部分に形成されている(図9を参照)。
【0057】
このように、軸方向延在部223は、キャリヤ2Dの周方向に分散して複数設けられており、複数の軸方向延在部223のそれぞれにおける周方向の両端部を除く部分が連続的に溶接されている。
【0058】
この構成によれば、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230との接合強度を十分に確保することが容易である。
【0059】
本実施形態の遊星歯車機構2は、仮組工程、加工工程、本組工程、及び固定工程をこの順に経て製造することができる。すなわち、本実施形態の遊星歯車機構2の製造方法は、仮組工程、加工工程、本組工程、及び固定工程をこの順に含む。
【0060】
仮組工程では、図5の上段に示すように、キャリヤカバー230とキャリヤ本体220とを、それぞれの接合面232a,222aどうしを当接させた仮組状態とする。このとき、キャリヤカバー230の連結部232及びキャリヤ本体220の連結部222の互いに対応する位置に設けられた複数のピン挿入孔225,235のそれぞれにノックピン241を挿入して、仮組状態とする。このように、ノックピン241を挿入した状態で仮組状態とすることで、キャリヤカバー230とキャリヤ本体220との相対位置を径方向及び周方向に位置決めすることができる。
【0061】
加工工程では、図5の下段に示すように、キャリヤカバー230とキャリヤ本体220との仮組状態で、これらに穴あけ加工を行う。キャリヤカバー230に貫通孔231aを形成してその周囲に支持部231を形成するとともに、キャリヤ本体220に貫通孔221aを形成してその周囲に支持部221を形成する。キャリヤ本体220の支持部221に設けられる貫通孔221aはピニオンギヤ体210の第1突出軸部211aを支持し、キャリヤカバー230の支持部231に設けられる貫通孔231aはピニオンギヤ体210の第2突出軸部211bを支持することになる。同じ周方向位置に設けられる貫通孔221a,231aの各組は、それぞれ、切削具の同一ストロークによって形成されることが好ましい。このようにすれば、複数のピニオンギヤ体210を、それぞれ高い軸心精度で回転可能に支持することができる。
【0062】
加工工程を終えると、その後、本組工程へと進める訳であるが、その際、図6に示すように、一旦、貫通孔221aを有する支持部221が形成されたキャリヤ本体220と貫通孔231aを有する支持部231が形成されたキャリヤカバー230とを分離する。そして、図7に示すように、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230との間に第1連結軸63及びサンギヤ形成部材65、第2連結軸64、並びにピニオンギヤ体210を配置し、これらを組み付ける。
【0063】
本例では、まず、同軸に配置される第1連結軸63及び第2連結軸64に対して、軸方向第1側L1からキャリヤ本体220を外挿する。この状態で、キャリヤ本体220の支持部221に形成された複数の貫通孔221aのそれぞれに、軸方向第1側L1から、ピニオン軸受251及びワッシャー254を介してピニオンギヤ体210を組み付ける。なお、ピニオン軸受251は、複数の貫通孔221aのそれぞれに予め内嵌させておく。また、第2連結軸64に形成された第2サンギヤ2B及びリングギヤ形成部材66に形成されたリングギヤ2Cの両方と第2ピニオンギヤ213とを噛み合わせつつ、ピニオンギヤ体210の第2突出軸部211bをワッシャー254に挿通させてピニオン軸受251に内嵌させる。
【0064】
その後、第1連結軸63に外挿するようにして、軸方向第1側L1からスラスト軸受252を介してサンギヤ形成部材65を組み付ける。サンギヤ形成部材65に形成された第1サンギヤ2Aとピニオンギヤ体210の第1ピニオンギヤ212とを噛み合わせつつ、第1連結軸63に対してサンギヤ形成部材65をスプライン連結する。
【0065】
その後、キャリヤ本体220、第1連結軸63、第2連結軸64、サンギヤ形成部材65、及びピニオンギヤ体210に対して、軸方向第1側L1からキャリヤカバー230を組み付ける。キャリヤカバー230の複数の貫通孔221aのそれぞれにピニオン軸受251を予め内嵌させておき、ピニオンギヤ体210の第1突出軸部211aに、ワッシャー255及びピニオン軸受251を介してキャリヤカバー230を取り付ける。その際、合わせて、キャリヤカバー230に形成されたピン挿入孔235に、キャリヤ本体220のピン挿入孔225に挿入されたノックピン241の先端を挿入させる。そして、キャリヤ本体220の連結部222(軸方向延在部223)の接合面222aと、キャリヤカバー230の連結部232の接合面232aとを、再度当接させる。
【0066】
こうして、第1サンギヤ2Aと第1ピニオンギヤ212とが噛み合い、第2サンギヤ2B及びリングギヤ2Cと第2ピニオンギヤ213とが噛み合う状態で、ピニオン軸211をキャリヤ本体220の支持部221とキャリヤカバー230の支持部231とにより回転可能に支持した本組状態とする。
【0067】
固定工程では、図8に示すように、本組状態で、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とを、それぞれの接合面222a,232aの当接部分において溶接により互いに固定する。キャリヤ本体220の接合面222aとキャリヤカバー230の接合面232aとが当接する部分の外周部に、溶接部242を形成して、キャリヤ本体220とキャリヤカバー230とを固定する。このとき、溶接部242は、図9に示すように、複数の軸方向延在部223のそれぞれにおける周方向の両端部を除く部分に連続的に形成することが好ましい。
【0068】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、キャリヤ本体220が軸方向Lに沿って延びる軸方向延在部223を備えるとともに、キャリヤカバー230がそのような部位を備えない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば図10に示すように、キャリヤカバー230が軸方向Lに沿って延びる軸方向延在部233を備えるとともに、キャリヤ本体220がそのような部位を備えない構成としても良い。或いは、例えば図11に示すように、キャリヤ本体220が軸方向延在部223を備えるとともにキャリヤカバー230も軸方向延在部233を備える構成としても良い。
【0069】
(2)上記の実施形態では、ピン挿入孔225,235が貫通孔221a,231aとは異なる周方向の位置に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば図12に示すように、ピン挿入孔225,235が一部の貫通孔221a,231aと同じ周方向の位置に設けられても良い(図12はキャリヤカバー230側の構成を示す)。この場合、ピン挿入孔225,235は、図示の例のように貫通孔221a,231aよりも径方向外側に設けられても良いし、それとは逆に径方向内側に設けられても良い。
【0070】
(3)上記の実施形態では、ピン挿入孔225,235の個数が貫通孔221a,231aの個数よりも少ない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピン挿入孔225,235の個数は貫通孔221a,231aの個数と同じであっても良いし、貫通孔221a,231aの個数よりも多くても良い。
【0071】
(4)上記の実施形態では、ピニオンギヤ体210が軸方向Lに並ぶ2つのギヤ部分(第1ピニオンギヤ212及び第2ピニオンギヤ213)を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピニオンギヤ体210が1つのギヤ部分だけを有していても良い。
【0072】
(5)上記の実施形態では、溶接部242が、複数の軸方向延在部223のそれぞれにおける周方向の両端部を除く部分に連続的に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、溶接部242が、複数の軸方向延在部223のそれぞれにおける周方向全域に連続的に形成されても良い。或いは、点状の溶接部242が断続的に形成されても良い。
【0073】
(6)上記の実施形態では、車両を駆動するための車両用駆動装置1で用いられる遊星歯車機構2を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本開示に係る技術は、あらゆる用途で使用される遊星歯車機構2に適用可能である。
【0074】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:車両用駆動装置、2:遊星歯車機構、2A:第1サンギヤ、2B:第2サンギヤ、2C:リングギヤ、2D:キャリヤ、9:ケース、10:第1回転電機、11:第1ステータ、12:第1ロータ、15:第1入力軸、16:第1入力ギヤ、20:第2回転電機、21:第2ステータ、22:第2ロータ、25:第2入力軸、26:第2入力ギヤ、30:第1カウンタギヤ機構、31:第1カウンタ入力ギヤ、32:第1カウンタ出力ギヤ、33:第1カウンタ軸、40:第2カウンタギヤ機構、41:第2カウンタ入力ギヤ、42:第2カウンタ出力ギヤ、43:第2カウンタ軸、50:差動歯車機構、51:第1差動入力ギヤ、52:第2差動入力ギヤ、61:第1連結部材、62:第2連結部材、63:第1連結軸、64:第2連結軸、65:サンギヤ形成部材、66:リングギヤ形成部材、70A:第1出力部材、70B:第2出力部材、210:ピニオンギヤ体、211:ピニオン軸(軸部)、211a:第1突出軸部、211b:第2突出軸部、212:第1ピニオンギヤ(ギヤ部、第1ギヤ部分)、213:第2ピニオンギヤ(ギヤ部、第2ギヤ部分)、220:キャリヤ本体(第2部材)、221:支持部(第2支持部)、221a:貫通孔、222:連結部(第2連結部、非対象連結部)、222a:接合面(第2接合面)、223:軸方向延在部、225:ピン挿入孔、230:キャリヤカバー(第1部材)、231:支持部(第1支持部)、231a:貫通孔、232:連結部(第1連結部、対象連結部)、232a:接合面(第1接合面)、233:軸方向延在部、235:ピン挿入孔、241:ノックピン、242:溶接部、251:ピニオン軸受、252:スラスト軸受、254:ワッシャー、255:ワッシャー、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、W1:第1車輪、W2:第2車輪、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、X4:第4軸、X5:第5軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12