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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094673
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】集塵循環装置及び集塵循環システム
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/03 20060101AFI20220620BHJP
   B24B 55/10 20060101ALI20220620BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B24B55/03
B24B55/10
B23Q11/00 K
B23Q11/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207689
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000142919
【氏名又は名称】株式会社呉英製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 克宏
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
【Fターム(参考)】
3C011BB01
3C011BB34
3C047FF05
3C047GG01
3C047JJ12
3C047JJ17
(57)【要約】
【課題】 フィルタを通過するときに発生する泡を集塵ポンプに到達させない集塵循環装置を提供する。
【解決手段】
筐体31は、内部空間を上下空間に画設する区画板44を備え、供給ポンプ46及び集塵ポンプ45は、ポンプ収容部41に設置されるとともに、ろ過フィルタ55は貯水タンク32の上部に位置するように、筐体31の下空間に設置されており、集塵ポンプ45は、その吸引開口45aが、区画板44を貫通した状態で、ろ過フィルタ55の上部の位置となるように設置され、吸引開口45aとろ過フィルタ55との間に、ろ過フィルタ55により生じる泡Bを消滅させるための、線材を網目状に形成した除泡フィルタ材65が設けられている集塵循環装置Sとした。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具の回転ホイルで被加工物を切削又は研削する際において、前記回転工具から前記被加工物に対して供給する液体を、供給ホースを介して貯水タンクから供給ポンプにより送り出し、
前記被加工物から発生した粉塵と前記液体の混合物を、筐体内に設けられたろ過手段に、集塵ホースを介して集塵ポンプにより集塵する集塵循環装置において、
前記筐体は、内部空間を上下空間に画設する区画板を備え、
前記ろ過手段と前記貯水タンクは、前記筐体の下部空間に設置され、
前記供給ポンプ及び前記集塵ポンプは、前記筐体の上部空間に設置され、
前記集塵ポンプは、前記ろ過手段の上部の位置となるように前記区画板上に設置され、かつ、前記集塵ポンプの吸引開口は、前記下部空間と連通しており、
前記吸引開口と前記ろ過手段との間に、前記ろ過手段により生じる泡を消滅させるためのフィルタ材が設けられていること、を特徴とする集塵循環装置。
【請求項2】
前記フィルタ材は、線材が空間を開けて集合体として形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の集塵循環装置。
【請求項3】
前記フィルタ材は、網目状に形成したフレーム体を1枚又は重ねて形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の集塵循環装置。
【請求項4】
前記フィルタ材は、複数の方向に貫通する空気の通路が多数設けられたたバルク材により形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の集塵循環装置。
【請求項5】
前記吸引開口と前記ろ過手段との間に導風路が形成されており、
前記導風路の少なくとも一部に、前記フィルタ材が介装されていること、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の集塵循環装置。
【請求項6】
前記導風路は、円筒状に形成された前記筐体の胴体に沿って内周面に当接する直径であり、かつ、中心側に貫通する貫通孔を有する円環状に形成された第1円板と、前記第1円板よりも直径を小さくした円板状に形成された第2円板とを所定間隔を開けて配置するとともに、
前記第1円板と前記第2円板との間に、環柱状に形成された前記フィルタ材を介装することにより形成されており、
前記第2円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間から前記フィルタ材の内部を通り、前記第1円板の貫通孔に至るように通気可能に構成されていること、を特徴とする請求項5に記載の集塵循環装置。
【請求項7】
前記導風路は、円筒状に形成された前記筐体の胴体に沿って内周面に当接する直径であり、かつ、中心側に貫通する貫通孔を有する円環状に形成された第1円板と、前記第1円板よりも直径を小さくした円板状に形成され、前記第1円板の上下に所定間隔を開けて配置された上部円板及び下部円板を有するとともに、
前記第1円板と前記下部円板との間に、環柱状に形成された前記フィルタ材を介装することにより形成されており、

前記下部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間から前記フィルタ材の内部を通って前記第1円板の貫通孔に至り、前記第1円板と前記上部円板の間及び前記上部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間を通り、前記集塵ポンプの吸引開口に至るように通気可能に構成されており、
前記上部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間の間隙幅が、前記第1円板と前記上部円板の高さと比較して大きく形成されていること、を特徴とする請求項6に記載の集塵循環装置。
【請求項8】
被加工物を切削又は研削する回転ホイルを取り付けて回転駆動させる出力軸と、前記出力軸に取り付けられる前記回転ホイルの一面側を覆う集塵カバーと、を有する回転工具と、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の集塵循環装置と、を備えることを特徴とする集塵循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラインダ等のカップ型回転工具を用いて、石材、コンクリート等の硬質構造物の研磨、切断及び塗膜の剥がし等の作業を、集塵しながら湿式で循環して行うための集塵循環システム及び当該集塵循環システムに使用される集塵循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湿式集塵循環システムは、被加工物を切削又は研削する回転ホイルを取り付けて回転駆動させる出力軸を有すると共に、前記出力軸に取り付けられる回転ホイルの一面側を覆う集塵カバーを有する回転工具と、前記回転工具の回転ホイルで被加工物を切削又は研削することで発生する粉塵に噴霧する水を供給して集塵する集塵循環装置とを備えている。
【0003】
前記湿式集塵循環システムでは、回転工具の回転ホイルを覆う集塵カバーに水の供給ホースが接続されると共に水と粉塵を集塵する集塵ホースが接続され、集塵循環装置の供給タンクから供給ポンプにより供給ホースを介して水が集塵カバー内に供給される。そして、湿式集塵循環システムでは、集塵ポンプにより集塵ホースを介して水と粉塵が混ざったスラッジが回収され、集塵したスラッジを、フィルタを介して収納すると共に、スラッジから水をフィルタにより分離し供給タンクに溜めるように構成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-157427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記湿式集塵循環システムにおいて、切削又は研削する作業により生じる粉塵は、塗膜及びコンクリートを含む下地を主要な構成材料としており、これらが水と混合してスラッジとなり、空気と一緒に、集塵循環装置のフィルタ内に吸引されることにより回収される。そして、液体及び気体(以下、「液体等」という。)がフィルタを通過することでろ過され、浄化された水が供給タンクに貯留されるとともに、固形物がフィルタの内部に残留することとなる。
【0006】
前記した集塵及びろ過する過程において、液体等がフィルタを通過する際に、フィルタ表面から激しく発泡し、発生した泡は、次第に供給タンク内に堆積する。そして、泡は、短時間で、供給タンクの最上部まで達し、集塵ポンプに吸引される。
【0007】
このとき、集塵ポンプ内に吸引した泡が集塵ポンプに悪影響を与えて、集塵ポンプが故障してしまうことになり、湿式集塵循環システムを効率的に利用できないという問題点を有していた。また、集塵循環装置から外部に排出された泡中には、塗膜に含まれる有害成分が存在する場合があり、意図せずに、有害物質を飛散させることにつながってしまうという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、上記各問題点を解決するためになされたものであり、フィルタを通過するときに発生する泡を集塵ポンプに到達させない集塵循環装置及び集塵循環システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、回転工具の回転ホイルで被加工物を切削又は研削する際において、前記回転工具から前記被加工物に対して供給する液体を、供給ホースを介して貯水タンクから供給ポンプにより送り出し、前記被加工物から発生した粉塵と前記液体の混合物を、筐体内に設けられたろ過手段に、集塵ホースを介して集塵ポンプにより集塵する集塵循環装置において、前記筐体は、内部空間を上下空間に画設する区画板を備え、前記ろ過手段と前記貯水タンクは、前記筐体の下部空間に設置され、前記供給ポンプ及び前記集塵ポンプは、前記筐体の上部空間に設置され、前記集塵ポンプは、前記ろ過手段の上部の位置となるように前記区画板上に設置され、かつ、前記集塵ポンプの吸引開口は、前記下部空間と連通しており、前記吸引開口と前記ろ過手段との間に、前記ろ過手段により生じる泡を消滅させるためのフィルタ材が設けられている構成とした。
【0010】
ここで、フィルタ材は、通気可能であり、ろ過手段で発生した泡(以下、「泡」という場合がある。)の液体分を除去するために設けられるものであり、その効果を奏するものであれば、材質、寸法及び形状等に制限はない。特に、フィルタ材は、線材が空間を開けて集合体として形成されていること、網目状に形成したフレーム体を1枚あるいは重ねて形成されていること、又は、複数の方向に貫通する空気の通路が多数設けられたたバルク材により形成されていることが好適である。
【0011】
本発明によれば、吸引開口とろ過手段との間に、泡を消滅させるためのフィルタ材が設けられており、当該フィルタ材により、泡の液体分を分離除去できるため、当該泡が集塵ポンプに到達することを防止できる。
【0012】
また、前記集塵循環装置において、前記吸引開口と前記ろ過手段との間に導風路が形成されており、前記導風路の少なくとも一部に、前記フィルタ材が介装されていること、とするものであってもよい。
【0013】
ここで、導風路は、高さ方向又は水平方向に、屈曲、屈折、又は空気の通り道を、吸引開口とろ過手段とが直線的となることを回避するように構成することにより、集塵循環装置をコンパクトにしながら、通気距離を長く確保することができるので、発生した泡を消滅させるために好適である。
また、泡の移動速度を減少させ、泡の揚力を抑制させるためには、導風空間を広く、かつ、上方に屈曲させることとすれば好適である。
【0014】
本発明によれば、導風路が設けられているため、当該導風路を通過させる際の重力の作用により、泡の液体分を分離除去できるため、当該泡が集塵ポンプに到達することをより確実に防止できる。
【0015】
また、前記集塵循環装置において、前記導風路は、円筒状に形成された前記筐体の胴体に沿って内周面に当接する直径であり、かつ、中心側に貫通する貫通孔を有する円環状に形成された第1円板と、前記第1円板よりも直径を小さくした円板状に形成された第2円板とを所定間隔を開けて配置するとともに、前記第1円板と前記第2円板との間に、環柱状に形成された前記フィルタ材を介装することにより形成されており、前記第2円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間から前記フィルタ材の内部を通り、前記第1円板の貫通孔に至るように通気可能に構成されているものであってもよい。
【0016】
前記集塵循環装置において、さらに、一又は複数の円板を設けて、筐体の高さ方向において、連通する複数段の導風路を有するように構成されるものであってもよい。また、この場合において、数か所にフィルタ材を設けるものであってもよい。
【0017】
また、前記集塵循環装置において、前記導風路は、円筒状に形成された前記筐体の胴体に沿って内周面に当接する直径であり、かつ、中心側に貫通する貫通孔を有する円環状に形成された第1円板と、前記第1円板よりも直径を小さくした円板状に形成され、前記第1円板の上下に所定間隔を開けて配置された上部円板及び下部円板を有するとともに、前記第1円板と前記下部円板との間に、環柱状に形成された前記フィルタ材を介装することにより形成されており、前記下部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間から前記フィルタ材の内部を通って前記第1円板の貫通孔に至り、前記第1円板と前記上部円板の間及び前記上部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間を通り、前記集塵ポンプの吸引開口に至るように通気可能に構成されており、前記上部円板の円板周縁と前記筐体の内周面との間の間隙幅が、前記第1円板と前記上部円板の高さと比較して大きく形成されているものであってもよい。
【0018】
さらに、前記課題を解決するために、本発明に係る集塵循環システムは、被加工物を切削又は研削する回転ホイルを取り付けて回転駆動させる出力軸と、前記出力軸に取り付けられる前記回転ホイルの一面側を覆う集塵カバーと、を有する回転工具と、前記集塵循環装置と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フィルタを通過するときに発生する泡を集塵ポンプに到達させない集塵循環装置及び集塵循環システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の集塵循環システムを模式的に示す一部を切り欠いた斜視図である。
図2】本発明の集塵循環システムの回転工具を示す断面図である。
図3】本発明の集塵循環システムを模式的に示す説明図である。
図4】本発明の集塵循環装置を示す一部を分解した断面図である。
図5】本発明の集塵循環装置における空気等の流れを模式的に示す断面図である。
図6】本発明の集塵循環装置の防泡部における空気等の流れを模式的に示す一部を拡大した断面図である。
図7】本発明の集塵循環装置の防泡部における空気等の流れを模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の集塵循環装置に使用する除泡フィルタ材の他の実施形態を示す斜視図である。
図9】本発明の集塵循環装置に使用する除泡フィルタ材のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の集塵循環システム(以下、「本集塵循環システムS」という。)の一実施形態について、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(1)本集塵循環システムSの構成
図1及び図3に示すように、本集塵循環システムSは、回転工具10と、集塵循環装置30とを備えている。そして、回転工具10によりコンクリート、石材及び窯業関連製品等の硬質構造物(以下、「被加工物W」という。)の研磨、切断、塗膜の剥がし等の研削又は切削(以下、「加工」という。)を行い、集塵循環装置30により被加工物Wから発生した粉塵と水Mの混合物であるスラッジGを回収することを可能とし、被加工物Wへの水Mの供給とスラッジGの集塵を行うことで水Mを循環させながら行うシステムである。
【0023】
[回転工具]
回転工具10は、電動式でハンディタイプのグラインダであり、例えば、中央が一方に突出している円盤状の回転ホイル21を着脱自在に取り付けて、加工作業を行う研削装置の一種である。
前記回転工具10は、工具本体11と、工具本体11に設けられた回転ホイル21を回転駆動させる出力軸12と、出力軸12に取り付けられる回転ホイル21の一面側を覆う集塵カバー13とを備えている。この集塵カバー13は、噴射ノズル17を有し、集塵ホース26(接続体)の接続部18が形成されている。
【0024】
集塵カバー13は、一例として、回転ホイル21の一面側を覆い加工時の粉塵の飛散を防止するために設けられており、出力軸12が貫通した状態で工具本体11に設置される上面部14と、上面部14の周端側から下方に形成される周側面部15と、を備えている。
【0025】
上面部14は、略中央部において、工具本体11の出力軸12が貫通して設置されるように形成されている。また、上面部14は、出力軸12を隔てて対向する位置に噴射ノズル17が設けられるとともに、集塵ホース26の接続部18が形成されている。
【0026】
噴射ノズル17は、供給ホース27に接続されており、供給ホース27を介して供給される水Mを噴射するものである。この噴射ノズル17は、被加工物Wの加工面において、回転ホイル21の上面に水Mを噴射できるように上面部14に設けられている。また、噴射ノズル17及び接続部18の位置は、出力軸12を中心としてその左右に互いに隔てて配置されている。
なお、噴射ノズル17の数及び取付位置等は、適宜に定めることができる。また、本実施形態では、噴射ノズル17としてストレートノズルを使用しているが、送り出される水をシャワー状あるいは霧状として供給するノズルを用いることとしてもよい。
【0027】
前記のように構成されていることから、噴射ノズル17から噴射された水Mが高速で回転する回転ホイル21の上面に当たるようにすることで、回転ホイル21の遠心力により噴射された水Mが微細化し、外周方向に吹き飛ばされて集塵カバー13の内側壁に付着することになり。そして、集塵カバー13と被加工物Wの隙間から外気が取り込まれ、当該外気に運ばれて、回転ホイル21の刃先に水Mが行きわたるようになっている。
【0028】
接続部18は、円筒状に形成され、上面部14に突設されており、集塵ホース26が着脱自在に接続できるように、ねじ式又はアタッチメント等の既存の構造を備えている。また、接続部18は、スラッジGと集塵カバー13内の空気を効率よく吸引して集塵できる直径の大きさに形成されている。
【0029】
周側面部15は、一例として、ウレタンゴムにより円環状に形成されている。この周側面部15は、取付金具23を介してボルト16に支持されている。さらに、周側面部15は、ボルト16に設けたコイルバネ22により移動下端側に位置するように設置されている。そして、周側面部15は、回転ホイル21が取り付けられたときに、その側面側を覆い、加工による粉塵の飛散を防止する役割を果たしており、上面部14の側面部に沿って形成されている。
【0030】
上面部14には、数カ所(図では3か所)にはボルト16が設けられており、ボルト16に設けたコイルばね22により上面部14が常に下方に付勢されている。コイルばね22は、作業者の操作により工具本体11を被加工物W側に押し付けたときに、付勢力に抗して周側面部15に沿って上面部14が下方に押し下げられ移動できるように形成されている。
【0031】
回転ホイル21は、一般的に、加工を行う作業に使用される、切削刃又は研削刃(以下、「切削刃等」という。)を基板に備えている公知の製品を使用することができる。この回転ホイル21は、基板が加工を行う加工部と、加工部を支持して工具本体11に取り付けられる取付部とを備えている。回転ホイル21は、基板の中央が一方に突出するように形成され、その突出している中央に出力軸12に取り付けられる貫通穴が形成されている。また、回転ホイル21には、基板の下面の周面に、切削刃等が周方向に所定間隔となるように設けられている。
【0032】
[本集塵循環装置]
図3及び図4に示すように、集塵循環装置30は、筐体31の内部空間に各種の装置等を備えている。
筐体31は、水平方向に設けられている区画板44を境に、内部空間が上下空間に画設されており、上部のポンプ収容部41と下部の筐体本体51とに分割されている。筐体本体51は、一例として3段の略中空円筒体として構成されており、下部は、内部に貯水可能となっており、貯水タンク32を兼用している。また、ポンプ収容部41は、上面が縮径している垂台形状にそれぞれ形成されている。そして、筐体本体51の内側上部において、ポンプ収容部41の境界に防泡部61が設けられている。
【0033】
筐体本体51における壁面の上部には、パイプ取付孔51aが形成されており、筐体本体51の内部側において、パイプ取付孔51aに接続するようにパイプ挿通筒体52が設けられている。パイプ取付孔51aとパイプ挿通筒体52には、センターパイプ53が挿通されている。センターパイプ53は、筐体本体51の内部及び外部に突出しており、内部側の端部は、後記するろ過フィルタ55(ろ過手段)と連通している。また、センターパイプ53における外部側の端部は、集塵ホース26の先端部に取り付けられており、当該センターパイプ53の先端からスラッジGをろ過フィルタ55(ろ過手段)に供給できるようになっている。
また、筐体本体51の内部は、外気圧よりも低い圧力(以下、「負圧」という場合がある。)となるように、密閉空間が形成されるように構成されている。
【0034】
貯水タンク32には、供給ポンプ46の取水部46aが配置されており、当該供給ポンプ46により、貯水タンク32から取水された水Mを、供給ホース27を介して噴射ノズル17に送り出すようになっている。
なお、筐体31は、移動用車輪が設けられている架台に載置されているものであってもよい。
【0035】
貯水タンク32の内底部には、フィルタ台33が設置されており、その上に、ろ過フィルタ55が載置されている。ろ過フィルタ55は、スラッジGから水Mをろ過して分離する役割を奏することができるものであれば、その材質及び形状には制限はないが、本実施形態では、袋状に形成された公知のもの使用している。ろ過フィルタ55の解放部は、筐体本体51のパイプ挿通筒体52に緊止され、集塵したスラッジGを収納し水を通過するように形成されている。
【0036】
ポンプ収容部41は、上側ケース部42と、筐体本体における上部空間に挿設される下側凸部43とを備え、当該上側ケース部42と下側凸部43との境界部には、区画板44が設けられている。下側凸部43の下面中央部及び区画板44の中央部には、それぞれ通気口43a,44aが形成されている。そして、筐体本体51の上部空間において、ポンプ収容部41の下側凸部43が着脱自在に挿設されている。
なお、本実施形態の区画板44は、着脱自在であるポンプ収容部41に設けられているが、当該部材が、請求項に記載する区画板に相当する。
【0037】
ポンプ収容部41には、集塵ポンプ45(集塵手段)と供給ポンプ46とが、区画板44の上面に載置された状態で収納されている。
集塵ポンプ45の吸引開口45aは、区画板44と下側凸部43の各通気口43a,44aに臨むように位置しており、当該集塵ポンプ45の吸引開口45aが筐体本体51の内部と連通している。
【0038】
集塵ポンプ45は、貯水タンク32を含む筐体本体51の内部を負圧にすることで集塵ホース26を介して、集塵カバー13内に発生するスラッジGを空気とともに集塵する装置である。この集塵ポンプ45は、公知のポンプ(例えば、バキュームポンプ)を使用することができる。
【0039】
また、供給ポンプ46は、貯水タンク32に貯溜されている水Mを、噴射ノズル17に供給するために設けられるものであり、公知のポンプ(例えば、ギヤポンプ)を使用することができる。
【0040】
(防泡部)
防泡部61は、筐体本体51におけるろ過フィルタ55の上部であり、上縁部から所定高さ下側となる位置に設けられている。
防泡部61は、3枚の円板62,63,64から形成されている。最上部の円板(以下、「上部円板62」という。)及び最下部の円板(以下、「下部円板64」という。)は、同一形状の円板であり、上から2枚目の円板(以下、「中間円板63」という。)は、上部円板62及び下部円板64と比較して、直径が大きく形成されている。また、中間円板63は、中央部に、貫通孔63aが形成されている(図6図7)。
【0041】
なお、上記において、中間円板63が請求項に記載する第1の円板に、下部円板64が第2の円板にそれぞれ相当する。また、中間円板63は、上部円板62及び下部円板64と同一の直径に形成し、その周縁に接続する、ゴム等の弾性部材からなる円環状の接続板を介して直径を大きくするように形成することであってもよい。
【0042】
中央円板63の直径は、筐体本体51の直径と同一に形成されており、その周縁部がシール材68を介して、筐体本体51に当着するように設けられている。また、上部円板62及び下部円板64と、筐体本体51との間には、間隙部67a,66aが形成されている。3枚の円板62,63,64は、高さ方向に、所定間隔となるように設けられおり、上部円板62と中間円板63の間に上部導風路66が形成され、中間円板63と下部円板64の間に下部導風路67が形成されている。また、間隙部66a、67aと比較して、上部導風路66と下部導風路67の高さは、大きく形成されている。
【0043】
下部導風路67には、除泡フィルタ材65が介装されている。防泡フィルタ材65は、線材が空間を開けて集合体として形成されており、本実施形態では、ウレタンフォームをオープンセル構造とした、いわゆる「モルトフィルタ」を使用している。
除泡フィルタ材65は、スラッジGを効率的に集塵するためには、必要な除泡を行うことができる範囲で可能な限り、通風時における空気抵抗(圧力損失)を減らすことが求められる。そのため、網目における間隙部の割合が多い(粗い)形状とすることが好ましく、例えば、25mm当たり、10個以下の間隙部とすることが好適である。
この除泡フィルタ材65は、薄厚円環柱状であり、下部円板の直径と比較して、少し短く形成されている。また、除泡フィルタ材65の中央の中空部65aの直径は、中間円板63の貫通孔63aの直径と比較して、少し長く形成されている。
【0044】
このように構成されることにより防泡部61は、筐体本体51の高さ方向において、連通する2段の上部導風路66及び下部導風路67を有するように構成されることになる。すなわち、ろ過フィルタ55の上面の空気(泡Bを含む場合もある)は、下部円板64の端部と筐体本体51の間の間隙部67aを通り、除泡フィルタ材65が介装されている下部導風路67に導かれる。さらに、中間円板63の貫通孔63aを通って上部導風路66に導かれ、上部円板62の端部と筐体本体51の間の間隙部66aを通る。その後に、ポンプ収容部41の下側凸部43の下面を通り、下側凸部43及び区画板44の通気口43a,44aから集塵ポンプ45の吸引開口45aに導かれるようになっている。
なお、泡が発生している場合には、下部導風路67から上部導風路66を空気が通過する間において除泡フィルタ材65を通過したときに泡がはじけて消滅することになる。
【0045】
防泡部61は、上部円板62とポンプ収容部41の下側凸部43との間に、所定高さの間隙が形成されるようにして、取付部材47により、下側凸部43の下面に取り付けられている。
【0046】
(2)本集塵循環システムSの動作
続いて、本集塵循環システムSの動作について、一例として、アスベストが含有されている塗膜を被加工物Wとして剥離する作業を行う場合を想定して説明する。
なお、本集塵循環システムSを適用するにあたり、被加工物Wの加工面の近くに本集塵循環装置30を運び、作業者が回転工具10を操作して被加工物Wの加工作業を行うことになる。
【0047】
回転工具10、供給ポンプ46及び集塵ポンプ45を作動させ、噴射ノズル17から水Mを噴射させると、回転工具10では、回転ホイル21が回転することで噴射ノズル17から噴射された水Mが集塵カバー13内及び被加工物Wの加工面に広がる。回転ホイル21を被加工物Wに当接させるようにして、工具本体11を把持した状態で集塵カバー13を被加工物W側に押し当てるように回転工具10を操作すると、集塵カバー13が被加工物W側に押される。この操作により、コイルバネ22の付勢力に抗して周側面部15に沿って上面部14が下方に押し下げられるように移動し、回転ホイル21が被加工物Wに当接できる状態となり、被加工物Wの表面である加工面を研削される。
【0048】
加工作業に伴い、集塵カバー13内に粉塵が発生する。集塵カバー13の内部には、噴射ノズル17から噴射した水Mが供給されており、当該水Mと粉塵が混合してスラッジGとなる。このとき、集塵ポンプ45により、筐体内部を負圧にすることで、集塵カバー13内の空気等を吸い込む動作が行われ、集塵ホース26及びセンターパイプ53を介して、集塵循環装置30の筐体本体51の内に回収され、ろ過フィルタ55の内部に送られる。そして、スラッジGが集塵回収フィルタ55を通過することで、水Mがろ過され、浄化された水Mが貯水タンク32に貯溜される。貯溜された水Mは、供給ポンプ46により、再度、噴射ノズル17から噴射される。
【0049】
ろ過フィルタ55でスラッジGから水Mをろ過する過程において、泡Bが発生する。この泡Bは、防泡部61における、下部円板64の端部と筐体本体51の間の間隙部67aを通って下部導風路67に導かれる。このとき、泡Bは、除泡フィルタ材65を通過する際に、除泡フィルタ65の間隙部において、除泡フィルタ65に接触することで破裂し泡Bが消滅して、液体分が分離除去される。そして、泡Bが除去された空気(以下、「除泡空気」という。)は、中間円板63の貫通孔63aを通って上部導風路66に導かれ、上部円板62の端部と筐体本体51の間の間隙部66aを通過する。なお、上部導風路66を通過する際に、除泡空気中に液体分が含まれている場合には、重力の作用により、さらに液体分が分離される。
その後、除泡空気は、ポンプ収容部41の下側凸部43の下面を通り、下側凸部43及び区画板44の通気口43a,44aから集塵ポンプ45の吸引開口45aに導かれ、当該集塵ポンプ45により、減圧された後に、筐体31の外部に排気される(図5図7)。
【0050】
なお、泡Bの移動する速度(風速)は、導風路の断面積及び通過する開口部の面積が広いほど減速するため、上部導導風路66では風速が速く、間隙部66aでは遅くなる。一方、泡B中の液体分には、揚力から重力を減じた力が作用するが、揚力は風速の2乗に比例するため、速度が遅くなることにより、重力の作用が大きくなる。そのため、間隙部66aでは、液体分が落下することによる分離が促進されることになる。
【0051】
(3)本集塵循環システムSの作用効果
本集塵循環装置30によれば、防泡部61が設けられているため、粉塵と水Mの混合物であるスラッジGをろ過フィルタ55で回収する際に、ろ過フィルタ55の表面から激しく発泡した場合であっても、泡Bのみを分離除去した状態で通気させることで、泡Bが集塵ポンプ45に到達することを防止できる。加えて、下部導風路67に介装されている除泡フィルタ材65により、泡Bの液体分を容易に分離除去できるため、泡Bが集塵ポンプ45に到達することを防止できる。
【0052】
また、本集塵循環装置30によれば、3枚の円板62,63,64を使用して、上部導風路66及び下部導風路67から形成される、上下方向に屈曲した2段の導風路66,67を容易に形成することができ、泡Bが各導風路66,67を通過する際に、重力を作用させて、液体部を容易に分離除去することができる。
【0053】
さらに、上部円板62の円板周縁と、筐体本体51の内周面と、の間となる間隙部66aの幅が、上部導風路66の高さの幅と比較して大きく形成されている。そのため、相対的に風速が速い上部導風路66から、幅が広くかつ屈曲している間隙部66aを通過する際に、泡Bに作用する揚力が弱まることで、重量により液体分を落下させ、分離を促進させることができる。
このように、本集塵循環装置30によれば、有害物質を含んだ液体等が、筐体31の外部に排出されることを効果的に防止することができる。なお、導風路は、経路中の開口面積(導風路を形成する面積:断面積)を除泡フィルタ材65から通気口44aまでの間で異なるようにした構成として説明したが、同じ開口面積や同じ幅となるように形成されてもよい。
【0054】
また、本集塵循環システムSによれば、前記効果を奏する本集塵循環装置30と回転工具10を組み合わせることにより、硬質構造物の研磨、切断及び塗膜の剥がし等の作業を、集塵しながら湿式で循環して行うためのシステムに利用することが可能となる。
さらに、本集塵循環システムSでは、回転工具10及び集塵循環装置30により、粉塵に水Mを噴射してスラッジGとして、当該スラッジGを回収して、その中から、水Mをろ過して、再使用することができる。従って、本集塵循環システムSでは、貯水タンク32の大きさを小さくして小型化を実現することが可能となる。
【0055】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各要素に関して、適宜設計変更が可能である。
【0056】
前記のとおり、回転工具及び集塵循環装置の態様に制限はなく、最適な構成要素を採用することができる。また、回転工具及び集塵循環装置に関しては、必要最小限の構成要素を例示したものであり、本発明の作用効果を阻害しない限り、必要となる他の構成要素を付加するものであってもよい。
【0057】
また、本実施形態では、除泡フィルタ材65は、下部導風路67にのみ介装されているが、上部導風路66に介装されるものであってもよく、又は、上部導風路66及び下部導風路67の両方に介装されるものであってもよい。
さらに、実施形態では、円板を3枚使用して導風路を形成する構成として説明したが、円板は、2枚(上部円板又は下部円板のいずれか一方と、中央の円板)を使用することや、3枚以上を使用することとしてもよい。
【0058】
また、除泡フィルタ材165は、上記実施形態で説明した以外にも、ステンレス等を材料とした網目状に形成したフレーム体を、導風路中に配置して用いるものであってもよい。この場合において、フレーム体は、1枚でもよく、寸法の異なる複数枚のフレーム体を当接させ、又は、離間して対面するように重ねて配置するものでもよい(図8は、直径の異なる3枚の円形フレーム体165a,165b,165cを離間するように配置した場合を示している)。
【0059】
さらに、軽石及び発泡剤等、複数の方向に貫通する空気の通路が多数設けられた多孔状のバルク材により形成されている除泡フィルタ材265を用いるものであってもよい(図9参照)。
また、本実施形態では、筐体本体51と貯水タンク32が一体的な構造であるが、貯水タンク32を別体に形成し、筐体本体51に着脱自在に取り付けられる構造等とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
S 集塵循環システム
W 被加工物
G スラッジ
B 泡
M 水
10 回転工具
11 工具本体
12 出力軸
13 集塵カバー
17 噴射ノズル
21 回転ホイル
26 集塵ホース
27 供給ホース
30 集塵循環装置
31 筐体
32 貯水タンク
41 ポンプ収容部
42 上側ケース部
43 下側凸部
43a 通気口
44a 通気口
44 区画板
45 集塵ポンプ
45a 吸引開口
46 供給ポンプ
51 筐体本体
55 ろ過フィルタ(ろ過手段)
61 防泡部
62 上部円板
63 中間円板
63a 貫通孔
64 下部円板
65 除泡フィルタ材(フィルタ材)
65a 中空部
66 上部導風路
66a 間隙部
67 下部導風路
67a 間隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9