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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094718
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20220620BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/34 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207761
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】寺内 伊久哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇広
【テーマコード(参考)】
5E314
5E319
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA36
5E314BB05
5E314BB12
5E314CC01
5E314DD07
5E314FF05
5E314GG09
5E319AA03
5E319AA08
5E319AC02
5E319AC13
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1絶縁層2と、第1絶縁層2上に形成されている導体層と、第1絶縁層2上及び導体層上に形成されているソルダーレジスト層4と、を含んでいて、第1面及びその反対面である第2面を有している。導体層は矩形の平面形状を有する導体パッド3aを含み、ソルダーレジスト層4は、導体パッド3aにおける第1絶縁層2と反対側の表面である主面3a1の面積の50%以上を露出させる開口4aを有し、導体パッド3aの周縁3bのうちの辺部3b1において、導体パッド3aの側面3a2及び主面3a1が開口4a内に露出しており、周縁3bのうちの角部3b2において、導体パッド3aの側面3a2及び主面3a1がソルダーレジスト層4に覆われている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成されている導体層と、
前記第1絶縁層上及び前記導体層上に形成されているソルダーレジスト層と、
を含んでいて、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有する配線基板であって、
前記導体層は矩形の平面形状を有する導体パッドを含み、
前記ソルダーレジスト層は、前記導体パッドにおける前記第1絶縁層と反対側の表面である主面の面積の50%以上を露出させる開口を有し、
前記導体パッドの周縁のうちの辺部において、前記導体パッドの側面及び前記主面が前記開口内に露出しており、
前記周縁のうちの角部において、前記導体パッドの前記側面及び前記主面が前記ソルダーレジスト層に覆われている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記ソルダーレジスト層は、前記導体パッドの前記周縁における全ての前記角部を覆っている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記導体パッドを覆う表面処理層を含んでいる。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1面は部品が実装される部品実装面であり、
前記導体層は前記第2面側に形成されている。
【請求項5】
請求項4記載の配線基板であって、前記導体パターンは外部要素に接続される接続パッドである。
【請求項6】
請求項4記載の配線基板であって、さらに、前記第1面に形成されている複数の部品実装パッドを含み、
前記導体層の前記導体パッドは前記複数の部品実装パッドのいずれよりも大きい。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、前記第1絶縁層が芯材を含んでいる。
【請求項8】
請求項6記載の配線基板であって、さらに前記第1面に第2ソルダーレジスト層を備え、
前記第2ソルダーレジスト層は前記部品実装パッドの周縁部を覆っており、
前記第2ソルダーレジスト層の開口には前記部品接続パッドの周縁部以外の部分が露出している。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記ソルダーレジスト層において前記導体パッドの前記角部を覆う被覆部分が曲線状の外縁を有している。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板であって、前記導体パッドの前記角部がR面取りされている。
【請求項11】
請求項1記載の配線基板であって、前記ソルダーレジスト層において前記導体パッドの前記角部を覆う被覆部分の外縁が前記導体パッドの前記角部の外縁に沿っている。
【請求項12】
請求項1記載の配線基板であって、前記開口と前記導体パッドとが平面視において略同じ形状及び面積を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層上に形成されていて半導体素子に接合されるパッド部を有する多層配線基板が開示されている。絶縁層上にはソルダーレジストが設けられており、パッド部は、ソルダーレジストの開口中にソルダーレジストから離れた状態となるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-22713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のパッド部のように絶縁層上に形成された導体パッド及びその下層の絶縁層には、導体パッドと絶縁層との熱膨張率の相違や、導体パッドに接続される外部の部品から加わる外力などによって応力が生じることがある。そのため、導体パッド及びその近傍の絶縁層では、この応力によるクラックや、絶縁層と導体パッドとの間の界面剥離などの不具合が生じ易いと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成されている導体層と、前記第1絶縁層上及び前記導体層上に形成されているソルダーレジスト層と、を含んでいて、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有している。そして、前記導体層は矩形の平面形状を有する導体パッドを含み、前記ソルダーレジスト層は、前記導体パッドにおける前記第1絶縁層と反対側の表面である主面の面積の50%以上を露出させる開口を有し、前記導体パッドの周縁のうちの辺部において、前記導体パッドの側面及び前記主面が前記開口内に露出しており、前記周縁のうちの角部において、前記導体パッドの前記側面及び前記主面が前記ソルダーレジスト層に覆われている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、配線基板に設けられる導体パッドにおいて必要な大きさの露出部分を確保しながらその周辺部における不具合の発生を抑制できることがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す平面図。
図3図2の配線基板のIII-III線での断面図。
図4図2のIV部の拡大図。
図5A図1のVA部の拡大図。
図5B図3のVB部の拡大図。
図6A】本発明の一実施形態における導体パッド及びソルダーレジスト層の開口の他の例を示す断面図。
図6B】本発明の一実施形態における導体パッド及びソルダーレジスト層の開口の他の例を示す断面図。
図6C】本発明の一実施形態における導体パッド及びソルダーレジスト層の開口の他の例を示す断面図。
図7A】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図7B】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図8】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程中の状態の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1には、一実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されており、図2には、図1における下面側からの配線基板1の平面図が示されている。図2のI-I線での断面図が図1である。また図3には、図2のIII-III線での断面図が示されている。なお図3では、配線基板1の図1における下面付近の領域だけが示されており、その他の領域は省略されている。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層20と、絶縁層20の両面それぞれに交互に積層された導体層及び絶縁層とを含んでいる。絶縁層20の上面20a上には、3つの導体層31のそれぞれと2つの絶縁層21のそれぞれとが交互に積層され、その上に、さらに絶縁層(第2絶縁層)23が積層され、絶縁層23上に導体層(第2導体層)33が形成されている。同様に、絶縁層20の上面20aの反対面である下面20b上には、3つの導体層32のそれぞれと2つの絶縁層22のそれぞれとが交互に積層され、その上に、さらに絶縁層(第1絶縁層)2が積層され、絶縁層2上に導体層(第1導体層)3が形成されている。絶縁層23及び導体層33上には、ソルダーレジスト層(第2ソルダーレジスト層)40が形成されている。絶縁層2及び導体層3上にはソルダーレジスト層4が形成されている。このように、実施形態の配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2上に形成されている導体層3と、絶縁層2上及び導体層3上に形成されているソルダーレジスト層4と、を少なくとも含んでおり、図1の例ではさらに絶縁層23及び導体層33を含んでいる。
【0010】
配線基板1は、配線基板1の厚さ方向と直交する方向に広がる2つの表面として第1面11、及び第1面11の反対面である第2面12を有している。配線基板1の厚さ方向は、以下では単に「Z方向」とも称される。配線基板1において、絶縁層23、導体層33、及びソルダーレジスト層40は配線基板1の第1面11側に形成されており、配線基板1の第1面11側の表層部を形成している。第1面11は、絶縁層23、導体層33、及びソルダーレジスト層40それぞれにおけるZ方向に直交する露出面によって構成されている。また、絶縁層2、導体層3、及びソルダーレジスト層4は、配線基板1の第2面12側に形成されており、配線基板1の第2面12側の表層部を形成している。第2面12は、絶縁層2、導体層3、及びソルダーレジスト層4それぞれにおけるZ方向に直交する露出面によって構成されている。
【0011】
絶縁層20には、導体層31と導体層32とを接続するスルーホール導体20cが形成されている。絶縁層20、上面20a上の導体層31、及び下面20b上の導体層32は、配線基板1のコア基板を構成している。絶縁層2及び絶縁層21~23それぞれには、絶縁層2及び絶縁層21~23それぞれを挟む導体層同士を接続するビア導体2vが形成されている。
【0012】
絶縁層2及び絶縁層20~23は、それぞれ、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成される。各絶縁層は、ガラス繊維などの補強材(芯材)及び/又はシリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
【0013】
導体層3及び導体層31~33、ビア導体2v、及びスルーホール導体20cは、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され、例えば、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成される。従って、導体層3及び導体層31~33、ビア導体2v、及びスルーホール導体20cは、図1では単層構造で示されているが、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。例えば、絶縁層20の上面20a及び下面20bそれぞれに形成されている導体層31及び導体層32は、金属箔、無電解めっき膜、及び電解めっき膜を含む3層構造を有し得る。また、導体層3、導体層33、絶縁層21又は絶縁層22上に形成されている導体層31及び導体層32、ビア導体2v、並びにスルーホール導体20cは、例えば無電解めっき膜及び電解めっき膜を含む2層構造を有し得る。
【0014】
各導体層は、所定の導体パッド及び/又は配線パターンを有するようにパターニングされている。図1の例の配線基板1では、導体層33は複数の部品実装パッド33aを有するようにパターニングされている。すなわち配線基板1は第1面11に形成されている複数の部品実装パッド33aを含んでいる。複数の部品実装パッド33aは絶縁層23上に形成されている。各部品実装パッド33aは、配線基板1の使用時に配線基板1に実装される部品E1がその表面に載置される導体パッド(第2導体パッド)である。すなわち第1面11は配線基板1の部品実装面である。部品実装パッド33aには、例えばはんだなどの接合材(図示せず)を介して部品E1の電極E11が電気的及び機械的に接続される。
【0015】
部品E1としては、例えば、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品、及び、電気抵抗などの受動部品のような電子部品が例示される。部品E1は、半導体基板上に形成された微細配線を含む配線材であってもよい。しかし、部品E1はこれらに限定されない。
【0016】
本実施形態では、導体層3は複数の導体パッド3a(第1導体パッド)を含んでおり、そのため、配線基板1は第2面12に複数の導体パッド3aを備えている。導体パッド3aは、図2に示されるように矩形の平面形状を有している。「平面形状」は、導体パッド3aのような対象物の平面視における形状であり、「平面視」は、対象物をZ方向と平行な視線で見ることを意味している。
【0017】
上記及び下記の説明において「矩形」は、互いに平行な2つの辺(線分)と、その2つの辺に直交する互いに平行な2つの辺(線分)とによって囲まれる形状を意味している。この「矩形」において、互いに隣接すると共に直交する二辺は、その交点において必ずしも直角の交角をなすように接していなくてもよく、その交点付近の部分(角部)が、C面取り又はR面取りなどで面取りされた形状を有していてもよい。その場合、上記及び下記の説明における「矩形」の各一辺の直線部分は、好ましくは、その一辺と直交する他の二辺間の距離の1/3以上の長さを有している。図2の例の導体パッド3aでは、4つの角部はいずれもR面取りされている。
【0018】
図1の例の配線基板1において、第2面12は、第1面11と同様に、半導体集積回路装置のような電子部品が実装される部品実装面であってもよい。また第2面12は、外部の配線基板、例えば任意の電気機器のマザーボードなどの外部要素S1に配線基板1自体が実装される場合に、外部要素S1に接続される接続面であってもよい。すなわち、配線基板1は、例えば第1面11に実装される半導体集積回路などの部品E1のパッケージの一部を構成してもよい。その場合、配線基板1は、図1に示されるように第2面12を外部要素S1に向けて外部要素S1に部品E1と共に実装されてもよい。
【0019】
第2面12が外部要素S1との接続面である場合、第2面12は、外部要素S1との接続部を備え得る。図1の例の配線基板1は、導体パッド3aにおいて外部要素S1と接続される。従って図1の例の導体パッド3aは、配線基板1において外部要素S1に接続される接続パッドであり、図1の配線基板1における外部要素S1との接続パッドは導体パッド3aからなる。
【0020】
導体パッド3aは、例えば、はんだなどの接合材によって外部要素S1の電極S11に電気的及び機械的に接続され得る。外部要素S1は、前述したように、任意の電気機器を構成するマザーボードであってもよく、配線基板1よりも大きなパッケージサイズを有する任意の電子部品であってもよい。導体パッド3aは、これらに限定されない任意の基板、電気部品、又は機構部品などと接続され得る。
【0021】
図1の例では、導体パッド3aは、第1面11側に設けられている導体層33の複数の部品実装パッド33aのいずれよりも大きい。部品E1よりも大きな外部要素S1と配線基板1とが、大きな面積で強固に接続されると考えられる。
【0022】
ソルダーレジスト層4、40は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成されている。ソルダーレジスト層40は、部品実装パッド33aを露出させる開口40aを有している。図1の例では、ソルダーレジスト層40は、各部品実装パッド33aの周縁部を覆っており、開口40aには、各部品実装パッド33aの周縁部以外の部分が露出している。
【0023】
一方、ソルダーレジスト層4は、図1図3に示されるように、導体パッド3aを露出させる開口4aを有している。開口4aは、導体パッド3aにおける絶縁層2と反対側の表面である主面3a1の面積の50%以上を露出させている。開口4aは、導体パッド3aの主面3a1の過半を露出させていてもよい。導体パッド3aは、その周縁部の一部を除いて、開口4a内に露出している。従って、配線基板1と外部要素S1とが大きな面積で強固に接続され得る。
【0024】
本実施形態において導体パッド3aの周縁3bは、図1及び図2に示されるように一部においてソルダーレジスト層4に覆われずに開口4a内に露出し、図2及び図3に示されるように部分的にソルダーレジスト層4に覆われている。
【0025】
図4図5A及び図5Bを参照して、さらに、導体パッド3a及びソルダーレジスト層4の開口4aが説明される。図4には、図2のIV部の拡大図が示され、図5Aには、図1のVA部の拡大図が示され、図5Bには、図3のVB部の拡大図が示されている。なお、図5A及び図5Bでは、図3と同様に、配線基板1の第2面12付近の領域だけが示されており、その他の領域は省略されている。
【0026】
図4及び図5Aに示されるように、平面視における導体パッド3aの周縁3bのうちの辺部3b1において、導体パッド3aの側面3a2及び主面3a1が開口4a内に露出している。一方、図4及び図5Bに示されるように、平面視における導体パッド3aの周縁3bのうちの角部3b2において、導体パッド3aの側面3a2及び主面3a1がソルダーレジスト層4に覆われている。
【0027】
本実施形態では、このように導体パッド3aの周縁3bが角部3b2においてソルダーレジスト層4に被覆されているので、絶縁層2のクラックや、絶縁層2と導体パッド3aとの界面剥離などが抑制されると考えられる。一方、導体パッド3aの周縁3bが辺部3b1においてソルダーレジスト層4から露出しているので、導体パッド3aと、図1に示される外部要素S1などとが強固に接続されると考えられる。
【0028】
すなわち、導体パッド3a及び絶縁層2には、前述したように、両者の間の熱膨張率の相違や外力などによって応力が生じることがある。その場合、その応力は、絶縁層2の表面上において導体パッド3aが存在する領域と存在しない領域との境界となる導体パッド3aの周縁3b付近に集中し易い。そして、集中する応力に絶縁層2が耐え切れずに導体パッド3aの周縁3bと重なる部分にクラックが生じたり、導体パッド3aの周縁3bを発端とする絶縁層2と導体パッド3aとの界面剥離が生じたりすることがある。そしてこのような応力集中は、導体パッド3aの周縁3bのうち直線状の部分よりも曲折している部分において顕著になることがある。そのため、導体パッド3aの周縁3bのうちの角部3b2では、辺部3b1よりもクラックなどが生じ易いと考えられる。
【0029】
これに対して本実施形態では、導体パッド3aの周縁3bのうちの角部3b2では、導体パッド3aがソルダーレジスト層4に覆われているので、絶縁層2に作用する力が緩和されると推察される。例えば、導体パッド3aの存在によってもたらされる応力がソルダーレジスト層4側にも分散されたり、導体パッド3aの絶縁層2に対する相対的な挙動がソルダーレジスト層4によって制限されたりすることがある。その結果、本実施形態では、導体パッド3aにおける角部3b2の周辺でのクラックや界面剥離などの不具合が抑制されると考えられる。
【0030】
特に図1図5Bに例示される配線基板1では、前述したように導体パッド3aは、第1面11側に設けられている複数の部品実装パッド33aのいずれよりも大きい。従って、その平面面積は大きく、導体パッド3aは絶縁層2との間に比較的大きな界面を有し得る。従って周縁3bに集中する応力も過大になり易い。導体パッド3aのように比較的大きな平面面積を有する導体パッドにおいて本実施形態は特に有益であると考えられる。
【0031】
このように導体パッド3aの周縁3bをソルダーレジスト層4で被覆することによって不具合が抑制されると推察されるが、周縁3bの全域がソルダーレジスト層4で覆われると、導体パッド3aの面積に対して接続領域の面積が小さくなる。「接続領域」は、導体パッド3aの全表面のうち導体パッド3aに接続される外部要素との接続に寄与する領域であって、導体パッド3aの主面3a1及び側面3a2のうちのソルダーレジスト層4に覆われていない領域である。接続領域の面積が小さくなると、十分な接続強度が得られないことがある。
【0032】
そこで本実施形態では、導体パッド3aの周縁3bのうちの辺部3b1では、導体パッド3aの側面3a2及び主面3a1が開口4a内に露出している。そのため、周縁3bの全域がソルダーレジスト層4に覆われる場合と比べて、導体パッド3aの面積に対する接続領域の比率を高めることができる。必要十分な接続強度が得られ易いと考えられる。特に、辺部3b1では導体パッド3aの側面3a2も露出されるので、図5Aに示されるように、側面3a2においても、外部要素との接続に用いられる接合材Bと導体パッド3aとが接合され得る。従って、単純に接続面積が増大するだけでなく、導体パッド3aの主面3a1と平行な方向に作用する力に対する耐性も向上することがある。
【0033】
なお、周縁3bの全域をソルダーレジスト層4で覆い、且つ、十分な接続領域を確保すべく大きな導体パッド3aが採用されると、導体パッド3aの高密度な配置や配線基板1の小型化が阻害されることがある。それに対して本実施形態における導体パッド3aは、クラックなどの不具合が生じ易いと考えられる角部3b2においてソルダーレジスト層4に覆われ、辺部3b1では開口4a内に露出される。そのため、導体パッド3aの高密度配置などを阻害することなく、且つクラックなどの不具合を効果的に抑制しながら、十分な接続領域が確保されることがある。
【0034】
なお、本実施形態において矩形の導体パッドの周縁の「角部」は、隣接する二辺の交点(交点付近が面取りされている場合は二辺それぞれの延長線の交点、例えば図4における点P)から各辺において特定の長さ以内の部分である。また「辺部」は、矩形の導体パッドの周縁における「角部」以外の部分である。なお「特定の長さ」は、例えば、各辺において、その各辺と直交する他の二辺間の距離(以下、「距離D」とも称される)の1/4の長さであり、好ましくは、距離Dの1/10以上の長さである。隣接する二辺の長さが異なる場合は、短い方の辺についての「特定の長さ」以内の部分が、その二辺に関する「角部」であってもよい。例えば、図4において点Pを挟む二辺に関する角部3b2は、その二辺それぞれにおいて、点Pから距離Dの1/4の長さ以内の部分である。図4に示されるように距離Dは、点Pを挟む二辺のうちの短い方の辺(図4における縦方向の辺)と直交する二辺間の距離である。
【0035】
なお、実施形態の配線基板の導体パッドが図4の例の導体パッド3aのように矩形の交点において面取りされている場合は、「角部」は、面取り部分であってもよく、上記「特定の長さ」以内の部分と面取り部分とのうちの小さい方であってもよい。
【0036】
本実施形態では、導体パッド3aの角部3b2を介して隣接する二辺それぞれにおいて、角部3b2の少なくとも50%以上の部分がソルダーレジスト層4に覆われる。また本実施形態では、導体パッド3aの4辺それぞれの辺部3b1において、少なくとも各辺部3b1の50%以上の部分がソルダーレジスト層4の開口4a内に露出される。導体パッド3aは、好ましくは、周縁3bの各辺部3b1において、その辺に関する前述の「距離D」の1/3以上の長さに渡ってソルダーレジスト層4の開口4a内に露出する。そして、導体パッド3aは、好ましくは、その露出部分の両側の角部3b2それぞれにおいて、前述の「距離D」の1/4以上の長さでソルダーレジスト層4に覆われる。その場合、十分な接続領域が確保されると共に、導体パッド3aの周縁3b付近の不具合が抑制され易いと考えられる。なお本実施形態では、各角部3b2の全体がソルダーレジスト層4に覆われていなくてもよく、各辺部3b1の全体が露出していなくてもよい。
【0037】
図4の例では、ソルダーレジスト層4は、導体パッド3aの周縁3bが有する4つの角部3b2、すなわち周縁3bにおける全ての角部3b2を覆っている。導体パッド3aの周縁3b付近のクラックが高い確率で防がれると考えられる。しかし、本実施形態では、導体パッド3aの周縁3bが有する角部3b2の全てがソルダーレジスト層4に覆われなくてもよい。少なくとも1つの角部3b2が覆われれば、その角部3b2の付近での不具合が抑制され得る。
【0038】
先に参照した図1図3では省略されているが、図4図5Bに示されるように、配線基板1は、導体パッド3aの主面3a1及び側面3a2を覆う表面処理層5を含んでいる。表面処理層5は、例えば導体パッド3aの主面3a1及び側面3a2などの露出部分の防食処理及び/又は防錆処理によって形成される被膜である。表面処理層5によって、導体パッド3aの腐食や酸化などが防がれる。
【0039】
表面処理層5は、例えば、導体パッド3aとは異なる金属を含む金属被膜や、イミダゾール化合物などの有機物を含む有機被膜である。導体パッド3aが銅で形成されている場合、表面処理層5は、ニッケル、パラジウム、銀、金、若しくはこれらの合金、又ははんだなどによって形成され得る。図4図5Bの例では、表面処理層5は、導体パッド3aの本体側に形成されている下層51と下層51上に形成されている上層52とを含む2層構造を有している。下層51は、例えばニッケル膜若しくはニッケルとパラジウムとの合金膜であり、上層は、例えば金からなる金属膜である。
【0040】
表面処理層5が、導体パッド3aの本体部分を構成する材料の熱膨張率と絶縁層2の熱膨張率の間の熱膨張率を用いて形成されると、表面処理層5が形成されない場合と比べて、絶縁層2及び導体パッド3において生じる応力が低減されると考えられる。また、表面処理層5が、絶縁層2との熱膨張率の差が導体パッド3aよりも大きい材料で形成される場合でも、本実施形態では導体パッド3aの角部3b2がソルダーレジスト層4で覆われるので、クラックなどの不具合が生じ難いと考えられる。
【0041】
図4の例では、ソルダーレジスト層4において導体パッド3aの角部3b2を覆う被覆部分4bは、円の一部である弓型又は半円状の形状を有している。被覆部分4bは、導体パッド3aの中心に向かって凸となるように湾曲する曲線状の外縁4b1を有している。従って、導体パッド3aとソルダーレジスト層4との熱膨張率の相違などによる応力の集中箇所が外縁4b1付近に生じ難いと考えられる。
【0042】
本実施形態の導体パッド3aの形状及びソルダーレジスト層4の開口4aの形状は、図4などに例示の形状に限定されない。図6A図6Cには、例えば、導体パッド3a及びソルダーレジスト層4の開口4aの形状の他の例が示されている。
【0043】
図6Aの例の導体パッド3aでは、矩形の形状の4つの頂点がいずれも面取りされず、各頂点において隣接する二辺が直角の交角をなして接している。ソルダーレジスト層4の開口4aは、導体パッド3aの各辺にそれぞれ平行な4つの辺4aaを含む八角形の形状を有している。ソルダーレジスト層4は、被覆部分4bで、導体パッド3aの面取りされていない角部3b2を覆っている。被覆部分4bは、開口4aの4つの辺4aaのうちの隣接する二辺同士の間の辺4abを外縁として有している。被覆部分4bは、導体パッド3aの角部3b2を、平面視において辺4abでC面取りするように角部3b2を覆っている。
【0044】
図6Bの例の導体パッド3aは、図4の例と同様に、R面取りされた角部3b2を有しており、ソルダーレジスト層4は被覆部分4bで導体パッド3aの角部3b2を覆っている。しかし図6Bの例では、ソルダーレジスト層4の被覆部分4bは曲線状の外縁4b2を有しており、外縁4b2は、導体パッド3aの角部3b2の外縁に沿って曲がっている。そのため、図6Bの例では、導体パッド3aの角部3b2付近でのクラックなどの不具合が抑制されると共に、より多くの接続領域が確保されると考えられる。
【0045】
図6Cの例では、導体パッド3a及びソルダーレジスト4の開口4aは、いずれも正方形の平面形状を有している。さらに、図6Cの例の導体パッド3aと開口4aとは、平面視で略同じ大きさを有している。従って、開口4aと導体パッド3aとが平面視において略同じ形状及び面積を有しており、開口4aの平面形状と導体パッド3aの平面形状とは合同である。さらに、開口4aの中心と導体パッド3aの中心とが平面視で重なっており、開口4aと導体パッド3aとは、互いに対して45°の角度で傾いた状態で重なっている。図6Cの例のような導体パッド3aとソルダーレジスト層4の開口4aでは、導体パッド3aの周縁3bにおいて生じる応力集中が、4つの辺部3b1に均等に分散し易いと考えられる。
【0046】
図7A及び図7Bには、実施形態の配線基板の他の例が示されている。図7Aの例の配線基板1aでは、配線基板1aの第2面12側の表層部を構成している絶縁層2が芯材2bを含んでいる。芯材2bは、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、又は、アラミド不織布などであるが、芯材2bは、絶縁層2の強度を高め得るものであれば特に限定されない。なお、図7Aの例の配線基板1aは、芯材2bを除いて、図1の配線基板1と同様の構造を有している。図7Aにおける図1と同様の構成要素には、図1に付されている符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、同様の構成要素に関する説明は省略される。
【0047】
図7Aの配線基板1aの絶縁層2は芯材2bを含んでいるため、芯材を含まない絶縁層と比べて機械的強度が高いと考えられる。さらに、万一絶縁層2のクラックの起点となり得る亀裂が絶縁層2において生じても、その伸展が芯材2bによって防がれることがある。比較的大きな面積を有する導体パッド3aが表面2aに形成されている絶縁層2において万一クラックが生じても、その拡大が抑制され、実質的な不具合が回避されることがある。
【0048】
図7Aの例では、配線基板1aの第1面11側の表層部を構成する絶縁層23(第2絶縁層)も芯材2bを含んでいる。絶縁層23においてもクラックの伸展が防止されると考えられる。絶縁層23に含まれる芯材2bも、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、又は、アラミド不織布などであってよく、また特にこれらに限定されない。なお、配線基板1aにおいて、第1面11側及び第2面12側それぞれの表層部を構成する絶縁層23及び絶縁層2の両方が芯材2bを含んでいなくてもよく、例えば第2面12側の絶縁層2だけが芯材2bを含んでいてもよい。
【0049】
図7Bの例の配線基板1bでは、第1面11側に形成されている複数の部品実装パッド33aの周縁部がソルダーレジスト40に覆われずに開口40b内に露出している。具体的には、部品実装パッド33aにおける絶縁層23側と反対側の表面である主面33bと側面33cとが開口40b内に露出している。図示されていないが、図7Bの例において、部品実装パッド33aの周縁の角部が、図4に例示される導体パッド3aの角部3b2と同様に、ソルダーレジスト層40に覆われていてもよい。そして、部品実装パッド33aの主面33bと側面33cとが、部品実装パッド33aの周縁の辺部だけで、図7Bに示されるように開口40b内に露出していてもよい。すなわち、実施形態の配線基板では、その両面それぞれに設けられる導体パッドが、それぞれ、周縁の辺部においてソルダーレジスト層から露出されていて角部においてソルダーレジスト層に覆われていてもよい。
【0050】
実施形態の配線基板は、任意の一般的な配線基板の製造方法によって製造され得る。図8を参照して、図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、製造方法の一例が概説される。図8に示されるように、コア基板10が用意され、コア基板10の一面10a側に絶縁層21が積層され、その絶縁層21上に導体層31が形成される。同様に、コア基板10の他面10b側に、絶縁層22が積層され、その絶縁層22上に導体層32が形成される。そしてコア基板10の両面において、各絶縁層の積層と導体層の形成とが繰り返され、コア基板10の一面10a側及び他面10b側に、最表層の絶縁層23及び最表層の絶縁層2が形成される。
【0051】
コア基板10の用意では、例えば、絶縁層20を含む両面銅張積層板が用意される。そしてサブトラクティブ法などによって所定の導体パターンを含む導体層31、32を絶縁層20の両面に形成すると共にスルーホール導体20cを絶縁層20内に形成することによってコア基板10が用意される。絶縁層21、22、及び、絶縁層21又は絶縁層22上の導体層31、32は、例えば一般的なビルドアップ基板の製造方法によって、それぞれ形成される。例えば各絶縁層は、フィルム上のエポキシ樹脂を、コア基板10又は先に形成されている各絶縁層及び各導体層上に熱圧着することによって形成される。また、各導体層は、例えば、めっきレジストの形成及びパターンめっきなどを含むセミアディティブ法やフルアディティブ法などの導体パターンの任意の形成方法を用いて形成される。セミアディティブ法などの導体パターンの形成方法を用いる各導体層の形成では、ビア導体2vが各絶縁層内に形成され得る。
【0052】
図8に示されるように、絶縁層23上にさらに導体層33が形成され、絶縁層2上にさらに導体層3が形成される。導体層3は、導体パッド3aを含むように、適切な開口パターンを有するめっきジスト(図示せず)を用いるセミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。同様に、導体層33は、部品実装パッド33aを含むように任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。
【0053】
そして、図1に示されるように、ソルダーレジスト層40が絶縁層23及び導体層33上に形成され、ソルダーレジスト層4が絶縁層2及び導体層3上に形成される。ソルダーレジスト層4、40それぞれには、開口4a又は開口40aが設けられる。ソルダーレジスト層4、40は、それぞれ、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを塗布したり噴霧したりフィルム状で積層したりすることによって形成される。そして、例えば露光及び現像、又はレーザー加工などによって、開口4a、40aが、それぞれ形成される。開口4a内に露出する導体パッド3aの表面上、及び開口40a内に露出する部品実装パッド33aの表面上には、表面処理層5(図5A参照)が形成され得る。表面処理層5は、導体パッド3aの表面上及び部品実装パッド33aの表面上に、無電解めっき、電解めっきなどによって、ニッケル、パラジウム、金などの金属を析出させること、又は、又はスプレーイングによって耐熱性の有機物を塗布することによって形成され得る。以上の工程を経ることによって図1の例の配線基板1が完成する。
【0054】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。実施形態の配線基板は所謂両面基板であってもよく、片面基板であってもよい。導体パターン3aは表面処理層5を備えなくてもよい。前述したように、ソルダーレジスト層によって周縁の角部を覆われていてその周縁の辺部においてソルダーレジスト層の開口内に露出する導体パッドは、配線基板の両方の表面に設けられていてもよく、いずれか一方の表面だけに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b 配線基板
11 第1面
12 第2面
2 絶縁層(第1絶縁層)
23 絶縁層(第2絶縁層)
2b 芯材
3、31~33 導体層
3a 導体パッド
3a1 主面
3a2 側面
3b 周縁
3b1 辺部
3b2 角部
33a 部品実装パッド
4、40 ソルダーレジスト層
4a、40a、40b 開口
5 表面処理層
S1 外部要素
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8