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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094741
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207803
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】591165919
【氏名又は名称】株式会社新井組
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】蘓鉄 盛史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 弘尚
(72)【発明者】
【氏名】福島 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】大矢 隆義
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA60
2E220AB07
2E220AC01
2E220BA04
2E220CA07
2E220CA10
2E220DA02
2E220GA22X
2E220GA22Y
2E220GA24Y
2E220GA25X
2E220GA25Y
2E220GA33Y
2E220GB22Y
2E220GB32X
2E220GB32Y
(57)【要約】
【課題】場所が異なっても床のかたさが一定である床構造を提供する。
【解決手段】建築物のコンクリート30上に中空構造体50を備え、中空構造体50上に床材70を備えており、コンクリート30はレベリング材32を含み、コンクリート30の下に防湿シート10及び/又は断熱材20を備え、前記中空構造体50は平面視長方形のパネルとして形成されており、各パネルがコンクリート30上に破れ目地状に配置されていて、中空構造体50と床材70とを合わせた厚みは、前記コンクリート30の厚みよりも薄い床構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のコンクリート上に中空構造体を備え、同中空構造体上に合成樹脂製の床材を備えたことを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記コンクリートはレベリング材を含むことを特徴とする請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記コンクリートの下に断熱材及び/又は防湿シートを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の床構造。
【請求項4】
前記中空構造体は平面視長方形のパネルとして形成されており、前記各パネルがコンクリート上に破れ目地状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項5】
前記中空構造体と前記床材とを合わせた厚みは、前記コンクリートの厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に設けられる床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、特に体育館、柔道場、剣道場、フィットネススタジオなどの各種運動が行われる施設においては二重床構造が採用されている。この二重床構造とは、まず一定高さに打設形成されたコンクリート面の上に縦横一定間隔で金属製支持脚を設置する。そして、縦ないし横方向に並ぶ複数の支持脚の上に直線状をなす金属製の大引を平行に配置し、この大引の上に大引の延伸方向と直交する方向に一定間隔で直線状をなす金属製の根太を平行に配置する。さらに、この根太の上に床板等の床材を配置するという構造である。
【0003】
特許文献1には、基礎コンクリート上に一定間隔で固定した支持脚の上に大引を配置し、その上に根太として断面凹凸形状の制振屈曲鋼板を配置し、さらにその上に表面板を配置した体育館の二重床構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-109735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の二重床構造では、床材は根太である制振屈曲鋼板に支持されているが、この制振屈曲鋼板は凹凸状であり、床材の下が制振屈曲鋼板に接触している箇所としない箇所が存在する。また、制振屈曲鋼板は大引に支持されているが、大引も一定間隔で配置されているため制振屈曲鋼板の下が大引に接触している箇所としない箇所が存在する。さらに、大引は支持脚に支持されているが、支持脚も一定間隔で配置されているため大引の下が支持脚に接触している箇所としない箇所が存在する。すなわち、特許文献1の二重床構造では、床材の下に根太としての制振屈曲鋼板、大引、支持脚がそれぞれ位置する箇所としない箇所が存在し、その構造の相違に起因して床の硬さが場所により異なっていた。そして、床の硬さが異なると衝撃吸収度やボールのリバウンド量等も異なることとなる。なお、床の硬さとは床構造全体の鉛直たわみ剛性の影響も含めた床材の表面の硬さをいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、建築物のコンクリート上に中空構造体を備え、同中空構造体上に合成樹脂製の床材を備えたことを特徴とする。
前記コンクリートはレベリング材を含むことを特徴とする。
【0007】
前記コンクリートの下に断熱材及び/又は防湿シートを備えることを特徴とする。
前記中空構造体は平面視長方形のパネルとして形成されており、前記各パネルがコンクリート上に破れ目地状に配置されていることを特徴とする。
【0008】
前記中空構造体と前記床材とを合わせた厚みは、前記コンクリートの厚みよりも薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床の硬さがどの場所でもほぼ均等な床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の床構造の断面模式図。
図2】中空構造体パネルの配置状態を示す平面図。
図3図3(a)は中空構造体の断面斜視図、図3(b)は図3(a)のα-α線の断面模式図、図3(c)は同β-β線の断面模式図。
図4図4(a)はコア層を構成するシート材の部分斜視図、図4(b)は同シート材の折り込み途中の状態を示す部分斜視図、図4(c)は同シート材を折り込んだ状態を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を体育館に具体化した建築物の床構造の一実施形態を図1図4にしたがって説明する。なお、本実施形態の床構造とは地盤の上に形成されている構造を意味し地盤は含まない。
【0012】
図1は、本実施形態の床構造の断面模式図を示す。本実施形態の床構造は体育館の床構造であり、具体的には地盤上に下から、防湿シート10、断熱材20、コンクリート30、接着剤40、中空構造体50、接着剤60、床材70が積層された構成をなす。なお、図1は各部材の積層構造を説明するための模式図であり、各部材の厚みは正確な厚みを示すものではない。
【0013】
地盤は地面を一定深さ掘り下げて形成した一定面積を有する土壌からなるのであり、その上面はある程度平坦にならされている。地盤の上には防湿シート10が敷設されている。防湿シート10は地盤上に敷設することによりコンクリート30等の構造物を地盤の湿気から保護するものである。防湿シート10としてはポリエチレンシート等、公知の防湿機能を有するシートを使用することができる。厚さは特に限定なく防湿機能を発揮することができればよいが、一般的なポリエチレンシートとして0.1~2.0mmのものを使用することができる。
【0014】
防湿シート10の上には断熱材20が敷設されている。断熱材20は地盤の上方に敷設することによりコンクリート30等の構造物に地盤の熱が直接作用しないようにするものである。断熱材20としてはシート状のもの、或いは発泡ポリスチレンのようにパネル状のものなど、公知の断熱材を使用することができる。厚みも特に限定なく使用する材質に応じて決定すればよいが、発泡ポリスチレンであれば10~100mmのものを使用することができる。
【0015】
断熱材20の上には、コンクリート30が形成されている。コンクリート30は土間コンクリート31とその上に形成されたレベリング材32とから構成される。なお、体育館の床に打設される土間コンクリート31は内部に鉄筋が配置されているが、図1では鉄筋等の補強構造は図示を略している。
【0016】
土間コンクリート31は一般的に体育館の基礎として使用される土間コンクリートであり、その厚みは12~30cm、好ましくは15~20cm程度の範囲とすることができる。
【0017】
また、土間コンクリート31の上面にはレベリング材32が積層されている。一般に土間コンクリート31を打設した場合、その上面が凹凸となってしまい、土間コンクリート31だけではその上面の水平性、平滑性を確保することは困難である。このため、土間コンクリート31の上面に流動性の高いレベリング材32を一定厚さになるように流し込み、土間コンクリート31と一体化し、上面の水平性、平滑性を実現している。使用するレベリング材32は特に限定されず、セメント系やモルタル等の自己水平性を有する公知のレベリング材32を使用することができる。レベリング材32の厚みも特に限定するものではないが、土間コンクリート31上の水平性、平滑性を出すには1~3cmの範囲とすることができる。レベリング材32により水平及び平滑に整えられたコンクリート30の上面の全面には接着剤40により中空構造体50が固定されている。
【0018】
中空構造体50は樹脂製であり、平面視で長方形板状をなす中空構造体パネル50P(以下単に「パネル50P」という)として形成されている。パネル50Pは一例として長辺180cm、短辺90cmの平面視が長方形状であり、厚み約3~30mmの板状に形成されている。中空構造体50は圧縮強度が0.5~5Mpaの範囲のものを使用することができ、0.5~4Mpaの範囲が好ましく、2~4Mpaの範囲が更に好ましい。
【0019】
個々のパネル50Pは接着剤40によりコンクリート30の上面に固定支持されている。なお、コンクリート30とパネル50Pとの固定に用いる接着剤40は、両者の接着固定が可能なものであれば特に限定されず、例えばウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤などを使用することができる。
【0020】
図2にパネル50Pを敷き詰めた体育館の平面図を示す。同図に示すように、パネル50Pは、図示しないコンクリート30の上面全体に隙間のないように敷き詰められて図示しない接着剤40により固定されている。各パネル50Pは平面視においてパネル50Pの短辺(90cmの辺)が、短辺の延びる方向に隣接する他のパネルの短辺と連続しないように、短辺方向に隣接するパネル50Pに対してパネル50Pを長手方向に1/2個分ずらせて配置するいわゆる破れ目地となるように配置している。
【0021】
また、図2の上端や左端のように体育館の壁際や角部などはパネル50Pの配置スペースとパネル50Pの形状とが一致しない箇所がある。そのような箇所にはパネル50Pを配置スペースの形状に合わせて切断して配置すればよい。
【0022】
中空構造体50の上面の全体には接着剤60を介して合成樹脂製の床材70が配置されている。床材70は体育館の床構造として最上面に位置する構成である。床材70として使用することのできるものは合成樹脂製であれば特に限定がなく、一般的に屋内運動施設の床材70として使用されているものであればよい。例えば、下側にウレタン層、上側にポリ塩化ビニル層を積層した合成樹脂製シートからなる表層材を使用することができる。床材70は接着剤60により中空構造体50の上面に固定することができる。この固定に使用する接着剤60は公知の接着剤を使用することができ、使用する床材70の材質に応じて適宜選択すればよい。床材70の厚みは中空構造体50(パネル50P)の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0023】
以下、中空構造体50についてより詳細に説明する。
図3(a)に中空構造体50の断面斜視図を示す。同図に示すように中空構造体50は、内部に複数の柱形状のセルSが並設された全体として中空板状をなす。
【0024】
図3(b)に図3(a)のα-α線断面図を、また図3(c)に図3(a)のβ-β線断面図を示す。図3(b)及び図3(c)に示すように、中空構造体50は、内部に複数の柱形状のセルSが並設されたコア層51と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層52、53とで構成されている。コア層51は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層51は、上壁部54と、下壁部55と、上壁部54及び下壁部55の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部56とで構成されている。
【0025】
図3(b)及び図3(c)に示すように、コア層51の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図3(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部56の上部に2層構造の上壁部54が設けられている。この2層構造の上壁部54の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部56の下部に1層構造の下壁部55が設けられている。一方、図3(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部56の上部に1層構造の上壁部54が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部56の下部に2層構造の下壁部55が設けられている。この2層構造の下壁部55の各層は互いに接合されている。また、図3(b)及び図3(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部56によって区画されている。この2層構造の側壁部56は、コア層51の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層51の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部56の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
【0026】
図3(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列をなすように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列をなすように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層51は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0027】
図3(a)ないし図3(c)に示すように、上記のように構成されたコア層51の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層52が接合されている。また、コア層51の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層53が接合されている。これらコア層51、スキン層52、53で中空板状の中空構造体が構成されている。このような構成の中空構造体50としては、岐阜プラスチック工業株式会社の製品名テクセル(登録商標)シリーズがある。
【0028】
以下、中空構造体50の製造方法について説明する。
図4(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0029】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0030】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0031】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層51が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図4(b)及び図4(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層51が形成される。
【0032】
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層51の上壁部54が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層51の下壁部55が形成される。なお、図4(c)に示すように、上壁部54における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部55における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0033】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部56を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部56を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部56となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0034】
このようにして得られたコア層51の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層51の上面に接合された第2シート材はスキン層52となり、コア層51の下面に接合された第2シート材はスキン層53となる。
【0035】
なお、第2シート材(スキン層52、53)をコア層51に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部54(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部55(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。その一方で、第1セルS1及び第2セルS2における2層構造の側壁部56には、上壁部54及び下壁部55に比べて熱が伝わりにくい、したがって、2層構造の側壁部56間には互いに熱溶着で接合されていない部分を有している。その結果、各セルSの内部空間は、完全に閉塞された空間でなく、各セルSの内部空間同士が、熱溶着で接合されていない2層構造の側壁部56の間を介して連通している。
【0036】
このように製造された長尺状の中空構造体50を所定の長さ及び幅にカットしてパネル50Pとすることができる。
上記実施形態の床構造によれば以下のような効果を奏することができる。
【0037】
(1).従来の床構造はコンクリート上に支持脚、大引、根太を配置していたが、上記実施形態ではコンクリート30上に中空構造体50を設けているため、施工が容易である。
【0038】
(2).コンクリート30上面全面に中空構造体50のパネル50Pが敷設されているため、従来のようにコンクリート30と床材70との間に構造物(支持脚、大引、根太)がある箇所とない箇所が生じることなく、床材70の場所が変わっても床の硬さがほぼ均等である。これにより、衝撃吸収にバラツキがなく、床の踏み心地や床からのボールのリバウンドも同じとなる。
【0039】
(3).中空構造体50は約3~30mmの厚みであり接着剤40、60を含めてもコンクリート30上面と床材70下面との間の距離は約5~35mmとなる。このため、従来の金属製支持脚、大引、根太を使用し床下空間を形成する場合に比べてコンクリート30上面と床材70下面との間の距離を狭くすることができる。これにより、従来よりも室外と室内(床材の位置する箇所)との段差を小さくでき、地盤工事における掘削深さが浅くなるため、工程、コストを低減できる。
【0040】
また、建物の中間階に床構造を設ける場合も同様にコンクリート30上面と床材70下面との間の距離を狭くすることができるため、当該階の建築階高を浅くできて二重床部分の施工も不要なため、工程、コストを低減することができる。
【0041】
(4).コンクリート30の上面には接着剤40により中空構造体50を固定し、さらに接着剤60により床材70を固定することができ、接着工法で施工することができるため、工程、コストが低減できる。
【0042】
(5).中空構造体50は一定形状のパネル50Pに形成されており、軽量である上、これをコンクリート30上に敷き詰めて接着剤40により接着すればよい。このため、中空構造体50の設置作業が容易である。
【0043】
(6).中空構造体50や床材70の衝撃吸収値を変えることでバトミントンやバスケットボールなどの用途に合わせた床の硬さにすることができる。また、児童や高齢者が転倒した場合の身体保護として床の硬さを柔軟なものにすることも容易にできる。
【0044】
(7).ボールをバウンドした時、従来の二重床のような太鼓現象の音の反響を低減することができ、スポーツ競技中の複数のプレイヤーの歩行、疾走や跳ね飛び時の反響音が低減され、プレイヤー間の掛け声やコーチングの声が聞き取りやすくなったり、行われている競技の臨場感を向上させることができる。
【0045】
(8).ダンスフロアーなどの2階や3階でも下の階への音を低減することができる。
(9).従来の二重床と異なり湿気の原因となる空気層がないため、結露や換気設備が不要となる。また、床材に木を使用しないので、床材が腐食や亀裂・破損しない。また、金属製支柱等の金属も使用しないので錆が生じることはない。
【0046】
(10).本実施形態の床構造は、従来の二重床より軽量なので床構造自体が軽量化でき、建物強度を小さくしてもよい。また、床の張替えなどの場合でも建物自体を補強しなくてもよい。
【0047】
(11).合成樹脂製の中空構造体50の上面は平滑なので床材を接着するための接着剤の量を少なくすることができる。
(12).従来の二重床の最外周は木製床材を使用しており熱膨張の関係でゴム板を設置していたが、本実施形態の床構造は合成樹脂製の床材を使用しているため必ずしもゴム板を使用しなくてもいい。
【0048】
また、本実施形態は以下のように変更することができる。
・床材70は、合成樹脂製であれば上記実施形態の構成に限られない。体育館の床材として市販されている合成樹脂製のシート、パネル等を使用することができる。
【0049】
・上記実施形態では、一枚の第1シート材100を折り畳み成形して、コア層51の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層51を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を、順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層51を形成してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、コア層51の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は、特に限定されるものでなく、例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0051】
・コア層51の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、スキン層52を貫通してセルSの上壁部54に連通する穴を形成してもよい。この場合、中空構造体50による吸音効果も発揮することができる。
【0052】
・上記実施形態では、配置する中空構造体50を1層としたが、中空構造体50を2層以上積層してもよい。この場合、積層する中空構造体50同士も接着剤で固定する。
・中空構造体50の構成は上記実施形態のように柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、錐状、柱状等の所定の凹凸形状を有するコア層の上面或いは下面にスキン層を接合したものであってもよい。このような構成の中空構造体としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0053】
・上記実施形態において中空構造体50を成形する際の熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。また、タルクや無機材料等を混ぜて比重を大きくすることも可能である。コア層51、スキン層52、53のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層51、スキン層52、53の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0054】
・上記実施形態においてスキン層52、53が多層構造をなしていてもよい。例えば、スキン層52、53が比較的溶融温度の低い接着層と難燃性等の機能が付加された機能層とを有していてもよい。
【0055】
・本実施形態の床構造は、建築物の1階だけでなく2階にも使用することができる。床構造を2階に使用する場合に防湿シート10及び断熱材20は不要な場合がある。
・コンクリート30上のパネル50Pの配置は格子状としてもよい。
【0056】
・体育館、柔道場、剣道場、フィットネススタジオのみならず、劇場、コンサートホール等の音楽演奏や映画鑑賞等に用いる施設にも使用することができる。
以下、具体的実施例について説明する。
【0057】
実施例の床構造
レベリング材32を用いて水平性及び平滑性を確保したコンクリート30(厚み14cm)上にウレタン系接着剤40により中空構造体50のパネル50Pを固定した。更に中空構造体50の上にウレタン系接着剤60により床材70を固定した。使用した中空構造体50は岐阜プラスチック工業株式会社製のテクセル(登録商標)T5-1870(厚さ5mm)であり、長さ180cm、幅90cmのサイズである。中空構造体50のスキン層52、53の厚みはそれぞれ0.3mmであり、コア層51はポリプロピレン80質量%、タルクが20質量%からなる。セルS1、S2の直径は約5~10mmである。
【0058】
また、使用した床材は下からウレタン層、ポリ塩化ビニル層を積層した厚さ5mmの市販の合成樹脂製の床材である。
パネル50Pはコンクリート30上に図2に図示したように破れ目地状に配置した上で接着剤40により固定し、そのパネル50P上に床材70を接着剤60により固定した。
【0059】
比較例の床構造
比較例として従来の二重床構造を用意した。実施例と同様に形成したコンクリート30上に、縦横90cm間隔で金属製支持脚を設置し、支持脚の上に直線状の金属製大引を平行に配置した。また、大引の上に大引の延伸方向と直交する方向に30cm間隔で直線状をなす金属製根太を平行に配置した。そして、根太の上に、ベース材として3層の積層合板(下から厚さ12cm、12cm、5cm)を配置した。その上に床材として実施例で使用したものと同じ合成樹脂シートを接着剤により固定した。
【0060】
衝撃吸収性(JISA6519床のかたさ試験方法)
実施例及び比較例について床材の位置を変えた複数箇所において衝撃吸収性の測定試験を行い、衝撃吸収値(G値)を測定した。
【0061】
まず、実施例については、以下の3箇所(位置Aないし位置C)について衝撃吸収値(G値)をそれぞれ5回測定し、その平均値を各位置の測定値とした。床材についてその下に配置されているパネル50Pの中央部となる位置(図2の位置A、図2では床材は図示していない)、パネル50Pの短辺と長辺の交差部となる位置(図2の位置B)、パネル50Pの短辺と短辺のつなぎ目となる位置(図2の位置C)。
【0062】
また、比較例については、以下の4箇所(位置aないし位置d)について衝撃吸収値(G値)をそれぞれ5回測定し、その平均値を各位置の測定値とした。床材について支持脚の直上であり大引と根太の交点となる位置(位置a)、支持脚の直上ではなく大引と根太の交点となる位置(位置b)、支持脚の直上ではなく大引は位置するが根太はない位置(位置c)、支持脚の直上ではなく大引と根太ともにない位置(位置d)。実施例及び比較例の測定結果を以下の表1に示す。
【0063】
【表1】
このように、従来の支持脚、大引及び根太を使用した比較例の床構造においては、床材の下の構造(支持脚、大引及び根太)が異なる場所では衝撃吸収値も大きく異なる値となり、その差も最大25(69-44)であった。一方、中空構造体のパネル50Pを用いた実施例ではパネル50Pの中央や繋ぎ目であっても衝撃吸収値の差は少なく、最大でも3(90-87)であった。衝撃吸収値は場所による差が少ないものが好ましく、差が1~10の範囲であればよく、好ましくは差が1~5の範囲である。
【0064】
ボールのリバウンド量
バスケットボールの最下部を高さ180cmから自重落下させ、床面に当たって跳ね返った際の高さ(リバウンド量)を測定した。この試験方法は、欧州規格であるEN-12235に準拠して行った。
【0065】
上記実施例、比較例の各位置についてバスケットボールの最下部を床材を基準とした高さ180cmから自重落下させ、下の床材に当たって跳ね返った際の高さをそれぞれ5回測定し、その平均値を各位置での測定値とした。実施例及び比較例の測定結果を以下の表2に示す。
【0066】
【表2】
このように、比較例の床構造においては、床材の下の構造(支持脚、大引及び根太)が異なる箇所ではリバウンド量も大きく異なる値となり、その差も最大19(118-99)であった。一方、実施例ではパネル50Pの中央や繋ぎ目となる位置など、異なる場所でもリバウンド量の差は少なく、最大でも1(123-122)であった。リバウンド量は場所による差が少ないものが好ましく、差が1~5の範囲であればよく、好ましくは差が1~3の範囲である。
【0067】
室内騒音(JISA1418-2建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法)
実施例の床材、比較例の床材の位置a及び位置bに加振装置(バングマシン RION FI-02)を設置した。
【0068】
また、床上1.2mの5箇所にマイクロホンを設置した。マイクロホンの加振装置からの距離は以下の通りである。まず、加振装置を中心とした半径2mの同心円上に両マイクロホンの直線距離が4mとなる位置に2箇所設置した。また、加振装置から6mの距離に1箇所設置した。さらに、加振装置を中心とした半径11mの同心円上に両マイクロホンの直線距離が4mとなる位置に2箇所設置した。
【0069】
加振装置により実施例の1箇所、比較例の2箇所において床材を加振し、特定の中心周波数(Hz)における室内音圧(dB(A))を5箇所のマイクロホンで測定した。特定の中心周波数(Hz)は表3に示す63~4kまでの7種類の周波数である。具体的には加振により得られた特定の中心周波数における室内音圧をそれぞれ5箇所のマイクロホンで測定し、5箇所の平均値を各中心周波数における加振時の室内音圧(dB(A))とした。その測定結果を表3に示す。室内騒音は、63~4kHzまでの周波数において、80dB(A)以下がよく、好ましくは75dB(A)以下である。
【0070】
【表3】
表3のとおり、測定範囲の周波数において、室内音圧の最大値は比較例では63Hzの87.3dB(A)であった、一方、実施例の最大値は同周波数の74.7dB(A)であった。
【0071】
実施例の床材を加振した場合の室内音圧は比較例の床材に対して63~250Hz帯域で10dB(A)程度小さいものであった。体育館内においてスポーツ競技が行われている場合、観客の声援などで複数の音が入り混じった状況では10dB(A)の差は大きいものである。
【0072】
振動加速度(JISA1418-2建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法)
さらに、上記加振装置の加振位置から1m離れた床材上に振動加速度計(RION VM-53)を設置し、これにデータレコーダ(RION DA-20)を接続した。加振装置により実施例、比較例の位置a及び位置bについて床材を加振し、振動加速度計により床材の鉛直方向における振動加速度(cm/s2)を求めた。同様の加振と測定を合計3回繰り返し、測定された最大の振動加速度を求め、併せて、測定された振動加速度から算出された変位(mm)を求めた。測定結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
表4のとおり、振動加速度について、実施例の振動加速度(18.3)は比較例(1092.1及び2277.1)に比して1/60~1/100程度であった。比較例は、振幅の動きが大きくて変位量が大きいが、実施例は振幅の動きが小さくて変位量が小さい。
【符号の説明】
【0074】
10…防湿シート
20…断熱材
30…コンクリート
31…土間コンクリート
32…レベリング材
40…接着剤
50…中空構造体
50P…中空構造体パネル
60…接着剤
70…床材
図1
図2
図3
図4