(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094749
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220620BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220620BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20220620BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20220620BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20220620BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220620BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20220620BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02J7/00 P
H02J7/02 H
H02J7/00 S
H02H7/12
B60L9/18 P
B60L50/60
B60L58/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207823
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西村 宗世
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 真人
(72)【発明者】
【氏名】谷 敬弥
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5G053AA06
5G053BA01
5G053BA04
5G053BA06
5G053BA09
5G053CA08
5G053EB01
5G053EC01
5G053FA05
5G503BA03
5G503BB01
5G503DA08
5G503FA06
5G503FA14
5G503GB06
5G503HA02
5H125AA01
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5H125BA00
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5H125BC01
5H125BC05
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5H125CD04
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5H125EE11
5H125EE23
5H125EE56
5H125EE65
5H125FF01
5H770AA01
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA01Z
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA06Z
5H770JA17Z
5H770LA02Y
5H770LA04Z
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】小型化を図ることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置11は、巻線41U~41Wを有する回転電機40と、上アームスイッチQUH~QWH及び下アームスイッチQUL~QWLを有するインバータ30と、第1蓄電池21の負極端子及び第2蓄電池22の正極端子が接続された中間端子Bと、巻線41U~41Wの中性点Oとを電気的に接続する接続経路60と、接続経路60に設けられ、オンされることにより中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続し、オフされることにより中間端子Bと中性点Oとを電気的に遮断する接続スイッチ61と、接続スイッチ61をオンするか否かを判定し、接続スイッチ61をオンすると判定した場合、接続スイッチ61をオンし、上,下アームスイッチQUH~QUWのスイッチング制御を行う制御装置70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
星形結線された巻線(41U,41V,41W,41X,41Y)を有する回転電機(40)と、
上アームスイッチ(QUH,QVH,QWH,QXH,QYH)及び下アームスイッチ(QUL,QVL,QWL,QXL,QYL)の直列接続体を有するインバータ(30)と、を備える電力変換装置(11)において、
直列接続された第1蓄電部(21,32a)及び第2蓄電部(22,32b)において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路(60)と、
前記接続経路に設けられ、オンされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に接続し、オフされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に遮断する接続スイッチ(61)と、
前記接続スイッチをオンするか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記接続スイッチをオンすると判定された場合、前記接続スイッチをオンし、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記判定部は、同相の前記巻線で発生する部分放電量が許容値より大きいと判定した場合、前記接続スイッチをオンすると判定する判定処理を行う請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記回転電機の周囲の気圧又は高度を取得する気圧情報取得部を備え、
前記判定部は、前記判定処理として、前記気圧情報取得部により取得された値に基づいて、前記接続スイッチをオンするか否かを判定する処理を行う請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記巻線の温度又は該温度と相関する温度を取得する温度取得部を備え、
前記判定部は、前記判定処理として、取得された温度が温度閾値以上であることを条件として、前記接続スイッチをオンすると判定する処理を行う請求項2又は3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記巻線に流れる電流又は該電流の相関値である電流パラメータを取得する電流取得部を備え、
前記判定部は、前記判定処理として、取得された前記電流パラメータが電流閾値を跨いだことを条件として、前記接続スイッチをオンすると判定する処理を行う請求項2~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の直列接続体の端子電圧又は該端子電圧の相関値である電圧パラメータを取得する電圧取得部を備え、
前記判定部は、前記判定処理として、取得された前記電圧パラメータが電圧閾値以上であることを条件として、前記接続スイッチをオンすると判定する処理を行う請求項2~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの端子電圧又は該端子電圧の相関値である電圧パラメータを取得する電圧取得部を備え、
前記判定部は、取得された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち大きい方の電圧パラメータが電圧閾値以下の場合、前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、前記接続スイッチをオンすると判定された場合、前記接続スイッチをオンし、前記インバータ、前記巻線及び前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流を流すことにより、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち一方の蓄電部から他方の蓄電部へとエネルギの授受を行うべく、前記スイッチング制御を行う請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記スイッチング制御により前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間で授受される電力を算出する電力算出部を備え、
前記制御部は、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間で授受される電力が前記電力算出部により算出された授受電力になるように前記スイッチング制御を行うとともに、前記電力算出部により算出された前記授受電力が大きい場合、前記授受電力が小さい場合よりも、前記スイッチング制御により電流を流す巻線の相数を多く設定する請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電力算出部は、前記授受電力として、電流が流れる前記巻線の相数に対応して定まる電力であり、かつ、前記スイッチング制御における電力変換効率が最大となる電力を算出する請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間で授受される電力を、前記授受電力に制御する場合において、電流を流す前記巻線の相数が、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間で電力が授受されるときにおける電力変換効率が最大となる相数となるように前記スイッチング制御を行う請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電力算出部は、前記電圧取得部により取得された前記第1蓄電部の電圧パラメータと前記第2蓄電部の電圧パラメータとの差が大きいほど、前記授受電力を増大する請求項8~10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記電力変換装置は、移動体に搭載され、
前記回転電機は、前記移動体を移動させるための動力源である請求項1~11のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置として、巻線を有する回転電機と、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータと、を備えるものが知られている。電力変換装置は、上アームスイッチ及び下アームスイッチのスイッチング制御時における要求に対応すべく、種々の動作を行う。例えば、特許文献1に記載された電力変換装置では、回転電機の絶縁性能を確保すべく、回転電機の周囲の気圧に基づいてスイッチング制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング制御時における要求に対応するために、電力変換装置が大型化し得る。例えば、所望の絶縁性能を確保すべく、回転電機の巻線間の絶縁距離が長くされることにより回転電機が大型化する。このような問題に対して、電力変換装置には未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、小型化を図ることができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の構成は、
星形結線された巻線を有する回転電機と、
上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータと、を備える電力変換装置において、
直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路と、
前記接続経路に設けられ、オンされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に接続し、オフされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に遮断する接続スイッチと、
前記接続スイッチをオンするか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記接続スイッチをオンすると判定された場合、前記接続スイッチをオンし、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部と、を備える、電力変換装置である。
【0007】
上記第1の構成の電力変換装置は、第1蓄電部の負極側及び第2蓄電部の正極側と、巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路と、接続経路に設けられる接続スイッチと、判定部とを備える。判定部は、スイッチング制御時における要求に対応するために、接続スイッチをオンするか否かを判定する。判定部により接続スイッチをオンすると判定された場合、接続スイッチがオンされ、上アームスイッチ及び下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。これにより、新たな部品の追加を抑制しつつ、要求に対応するための種々の動作を行うことができる。その結果、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成において、前記判定部は、同相の前記巻線で発生する部分放電量が許容値より大きいと判定した場合、前記接続スイッチをオンすると判定する判定処理を行う。
【0009】
同相の巻線で発生する部分放電量が許容値より大きくなることより巻線が劣化し、巻線の絶縁性能が低下する可能性がある。この問題に対処すべく、所望の絶縁性能を確保するために巻線間の絶縁距離を長く設定することが考えられる。しかし、この場合、回転電機が大型化する懸念がある。
【0010】
この点、上記第2の構成によれば、同相の巻線で発生する部分放電量が許容値より大きいか否かが判定され、判定結果に基づいて接続スイッチがオンオフされる。接続スイッチがオフされた状態では、巻線には第1蓄電部及び第2蓄電部の直列接続体の端子電圧の分圧値に相当する電圧差が生じる。この分圧値の最大値は、第1,第2蓄電部の直列接続体の端子電圧を2等分した値よりも高い。一方、接続スイッチがオンされた状態では、第1蓄電部の負極側及び第2蓄電部の正極側と巻線の中性点とが接続される。この場合、上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われる場合において、各相の巻線には、第1蓄電部又は第2蓄電部の端子電圧が印加される。このため、接続スイッチがオンされる場合、接続スイッチがオフされる場合よりも同相の巻線間の電圧差を低減することができる。これにより、同相の巻線で発生する部分放電量を低減することができる。その結果、巻線間の絶縁距離を短く設定することができ、ひいては回転電機を小型化することができる。
【0011】
また、第2の構成では、インバータに供給される電圧を下げることなく同相の巻線間の電圧差を低減することができる。これにより、回転電機の出力が低下することを抑制することができる。
【0012】
第3の構成は、第1の構成において、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの端子電圧又は該端子電圧の相関値である電圧パラメータを取得する電圧取得部を備え、
前記判定部は、取得された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち大きい方の電圧パラメータが電圧閾値以下の場合、前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、前記接続スイッチをオンすると判定された場合、前記接続スイッチをオンし、前記インバータ、前記巻線及び前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流を流すことにより、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち一方の蓄電部から他方の蓄電部へとエネルギの授受を行うべく、前記スイッチング制御を行う。
【0013】
従来、複数の蓄電部の間においてエネルギの授受を行う制御が行われている。この制御では、各蓄電部の間でエネルギの授受を行うための専用のスイッチ素子及びリアクトルが必要となることにより、電力変換装置の部品数が増大する。この場合、電力変換装置の大型化が懸念される。
【0014】
この点、上記第3の構成によれば、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータが取得される。取得された電圧パラメータのうち、大きい方の電圧パラメータが電圧閾値以下の場合、接続スイッチをオンすると判定される。接続スイッチがオンされた状態において、第1蓄電部及び第2蓄電部のうち一方の蓄電部から他方の蓄電部へとエネルギの授受を行うべく、スイッチング制御が行われる。これにより、巻線及びインバータを利用して第1蓄電部及び第2蓄電部の間でエネルギの授受を行うことができる。このため、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0015】
さらに、上述した構成では、各蓄電部の電圧パラメータが低下した状態においてエネルギの授受が行われる。各蓄電部の電圧パラメータが小さいほど、巻線に流れるリプル電流は小さくなる。リプル電流が小さいほど、回転電機において発生する鉄損が小さくなる。そのため、第3の構成によれば、エネルギの授受を行う際に生じるエネルギの損失を低減することができる。
【0016】
第4の構成は、第1の構成において、
前記第1蓄電部の電圧及び前記第2蓄電部の電圧を取得する電圧取得部を備え、
前記判定部は、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流を流す制御要求があるか否かを判定し、前記制御要求があると判定した場合に前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、
前記判定部により前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記電圧取得部により取得された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの電圧が規定電圧範囲内であると判定した場合、前記接続スイッチをオンした状態において、前記インバータ、前記巻線及び前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように前記スイッチング制御を行い、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの電圧のうち最小値が前記規定電圧範囲の下限値を下回ると判定した場合、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち電圧が最小値となる過放電保護対象が放電する放電電流を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の電圧が前記規定電圧範囲内のときよりも小さくするように前記スイッチング制御を行い、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの電圧のうち最大値が前記規定電圧範囲の上限値を上回ると判定した場合、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち電圧が最大値となる過充電保護対象が充電する充電電流を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の電圧が前記規定電圧範囲内のときよりも小さくするように前記スイッチング制御を行う。
【0017】
従来、例えば蓄電部の温度が低い場合に蓄電部を昇温すべく、複数の蓄電部の間に電流を流す制御が行われている。この制御において、蓄電部の端子電圧が、蓄電部の信頼性を維持可能な電圧範囲からはずれることにより、蓄電部の劣化が生じることが懸念される。
【0018】
この点、上記第4の構成では、接続スイッチをオンすると判定された場合、接続スイッチをオンした状態において、インバータ、巻線及び接続経路を介して第1蓄電部及び第2蓄電部の間に電流が流れるように、上アームスイッチ及び下アームスイッチがオンオフされる。
【0019】
上述した構成において、接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧のうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回ると判定された場合、過放電保護対象の放電電流が小さくされる。また、接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧のうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定された場合、過充電保護対象の充電電流が小さくされる。これにより、過放電保護対象及び過充電保護対象の電圧が、蓄電部の信頼性を維持可能な電圧範囲からはずれる事態の発生を抑制できる。その結果、第1蓄電部及び第2蓄電部に劣化が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの構成図。
【
図3】部分放電開始電圧と気圧及び温度との関係を示す図。
【
図4】巻線電圧と蓄電池の端子電圧及び巻線の相電流との関係を示す図。
【
図5】接続スイッチがオフされた場合の巻線電圧の最大値を示す図。
【
図6】接続スイッチがオンされた場合の巻線電圧の最大値を示す図。
【
図7】スイッチ駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図9】第1実施形態の変形例に係る電力変換システムの構成図。
【
図10】第1実施形態の変形例に係る電力変換システムの構成図。
【
図12】停車時における制御装置の機能ブロック図。
【
図14】回転電機駆動時における制御装置の機能ブロック図。
【
図16】蓄電池の端子電圧とSOCとの関係を示す図。
【
図17】エネルギ管理制御において発生するエネルギの損失と授受電力との関係を示す図。
【
図18】電力変換効率と授受電力との関係を示す図。
【
図19】電流が流れる巻線の相数毎の授受電力と電力変換効率との関係を示す図。
【
図20】エネルギ管理制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図21】第3実施形態に係る昇温制御の機能ブロック図。
【
図24】昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図27】第3実施形態の変形例に係る昇温制御の機能ブロック図。
【
図28】回転電機及びスイッチングデバイス部の相数が5相の場合の電力変換システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換システムは、例えば電気自動車やハイブリッド車に搭載されている。
【0022】
図1示すように、電力変換システム10は、電力変換装置11を備えている。電力変換装置11は、インバータ30と、回転電機40とを備えている。回転電機40は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU,V,W相巻線41U,41V,41Wを備えている。各相巻線41U,41V,41Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機40は、例えば永久磁石同期機である。本実施形態において、回転電機40は車載主機であり、車両の走行動力源となる。
【0023】
インバータ30は、スイッチングデバイス部31を備えている。スイッチングデバイス部31は、上アームスイッチQUH,QVH,QWHと下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。このため、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、フリーホイールダイオードとしての各ダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0024】
U相上アームスイッチQUHのエミッタと、U相下アームスイッチQULのコレクタとには、バスバー等のU相導電部材33Uを介して、U相巻線41Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチQVHのエミッタと、V相下アームスイッチQVLのコレクタとには、バスバー等のV相導電部材33Vを介して、V相巻線41Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチQWHのエミッタと、W相下アームスイッチQWLのコレクタとには、バスバー等のW相導電部材33Wを介して、W相巻線41Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線41U,41V,41Wの第2端同士は、中性点Oで接続されている。なお、本実施形態において、各相巻線41U,41V,41Wは、ターン数が同じに設定されている。これにより、各相巻線41U,41V,41Wは、例えばインダクタンスが同じに設定されている。
【0025】
各上アームスイッチQUH,QVH,QWHのコレクタと、組電池20の正極端子とは、バスバー等の正極側母線Lpにより接続されている。各下アームスイッチQUL,QVL,QWLのエミッタと、組電池20の負極端子とは、バスバー等の負極側母線Lnにより接続されている。
【0026】
電力変換装置11は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続するコンデンサ32を備えている。なお、コンデンサ32は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
【0027】
組電池20は、単電池としての電池セルの直列接続体として構成されており、端子電圧が例えば数百Vとなるものである。本実施形態では、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧(例えば定格電圧)が互いに同じに設定されている。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池を用いることができる。
【0028】
本実施形態では、組電池20を構成する電池セルのうち、高電位側の複数の電池セルの直列接続体が第1蓄電池21を構成し、低電位側の複数の電池セルの直列接続体が第2蓄電池22を構成している。つまり、組電池20が2つのブロックに分けられている。本実施形態では、第1蓄電池21を構成する電池セル数と、第2蓄電池22を構成する電池セル数とが同じである。このため、第1蓄電池21の端子電圧(例えば定格電圧)と、第2蓄電池22の端子電圧(例えば定格電圧)とが同じである。なお、第1蓄電池21が「第1蓄電部」に相当し、第2蓄電池22が「第2蓄電部」に相当する。
【0029】
組電池20において、第1蓄電池21の負極端子と第2蓄電池22の正極端子とには中間端子Bが接続されている。
【0030】
電力変換装置11は、接続経路60と、接続スイッチ61とを備えている。接続経路60は、組電池20の中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続する。接続スイッチ61は、接続経路60上に設けられている。本実施形態では、接続スイッチ61としてリレーが用いられている。接続スイッチ61がオンされることにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。一方、接続スイッチ61がオフされることにより、中間端子Bと中性点Oとの間が電気的に遮断される。
【0031】
電力変換システム10は、監視ユニット50を備えている。監視ユニット50は、組電池20を構成する各電池セルの端子電圧、SOC及び温度を検出し、各電池セルの状態を監視する。監視ユニット50により検出された各電池セルの端子電圧、SOC及び温度の情報を含む電池情報は、インバータ30が備える制御装置70に入力される。
【0032】
電力変換システム10は、電流センサ62と、相電流センサ63とを備えている。電流センサ62は、接続経路60に流れる電流である中性点電流IMrを検出する。電流センサ62の検出値は、制御装置70に入力される。相電流センサ63は、少なくとも2相分の相電流を検出する。相電流センサ63は、例えば、各導電部材32U~32Wのうち少なくとも2相分の導電部材に流れる電流を検出する。相電流センサ63の検出電流Irは、制御装置70に入力される。
【0033】
電力変換システム10は、気圧センサ51を備えている。気圧センサ51は、回転電機40の周囲の気圧を検出する。気圧センサ51の気圧検出値Prは、制御装置70に入力される。
【0034】
電力変換システム10は、温度センサ52を備えている。温度センサ52は、各巻線41U,41V,41Wのうち少なくとも1つの巻線の温度又はその周辺構成の温度を検出する。温度センサ52の検出温度Trは、制御装置70に入力される。
【0035】
制御装置70は、マイコンを主体として構成され、回転電機40の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLをオンオフするスイッチ駆動制御を行う。例えば、制御量はトルクであり、指令値は上位制御装置53から出力されるトルク指令値Trq*である。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは交互にオンされる。
【0036】
制御装置70は、自身が備える記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。なお、制御装置70が「制御部」に相当する。
【0037】
次に、スイッチ駆動制御を行う際に各相巻線41U,41V,41Wに生じる部分放電について説明する。ここでは、U,V,W相巻線41U,41V,41Wのうちいずれか1つの相の巻線を同相巻線41aとする。同相巻線41aは、導体41bの外側を絶縁層41cに覆われている。絶縁層41cは、電気的絶縁性を有する材料により形成され、例えば合成樹脂により形成されている。
図2は、配置位置が隣り合い、互いの絶縁層41cが接触している同相巻線41aの断面図である。隣り合う同相巻線41aの間の電位差である巻線電圧が高くなると、隣り合う同相巻線41aの間において部分放電が生じる。巻線電圧が部分放電開始電圧(PDIV:Partial Discharge Inception Voltage)よりも高くなる場合、部分放電が発生する又は部分放電が発生する可能性が極めて高くなる。
【0038】
部分放電は、部分放電開始電圧が低いほど生じ易くなる。部分放電開始電圧は、空気密度が低いほど低くなる。空気密度は、回転電機40の周囲の気圧が低くなったり、同相巻線41aの温度が高くなったりするほど低くなる。このため、
図3に示すように、部分放電開始電圧は、回転電機40の周囲の気圧が低くなったり、同相巻線41aの温度が高くなったりするほどに低くなる。
【0039】
部分放電は、巻線電圧が高いほど生じ易くなり、部分放電量は、巻線電圧と部分放電開始電圧との差が大きいほど大きくなり易い。スイッチングデバイス部31に供給される電圧である各蓄電池21,22の端子電圧が高いほど、スイッチングデバイス部31の出力電圧が高くなる。このため、
図4に示すように、巻線電圧は、各蓄電池21,22の端子電圧が高いほど高くなる。また、各スイッチQUH~QWLがオフされることに伴い発生するサージ電圧は、同相巻線41aに流れる相電流が大きいほど高くなる。サージ電圧が回転電機40に伝搬すると、同相巻線41aの巻線電圧が瞬間的に高くなる。そのため、
図4に示すように、巻線電圧は、同相巻線41aに流れる相電流が大きいほど高くなる。
【0040】
続いて、スイッチ駆動制御を行う際に生じる同相巻線41aの巻線電圧について説明する。スイッチ駆動制御は、通常、接続スイッチ61がオフされた状態で行われる。
図5は、接続スイッチ61がオフされた状態において、同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値Vmについて説明するための図である。
図5において、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL、接続経路60及び接続スイッチ61の図示は省略し、先の
図1と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0041】
3相巻線ではスイッチ駆動制御が行われる場合において、第1蓄電池21の正極端子及び第2蓄電池22の負極端子のうち一方に1相分の同相巻線41aが接続され、他方に2相分の同相巻線41aが接続される。
図5には、1相分の同相巻線41aが第1蓄電池21の正極端子に接続され、2相分の同相巻線41aが第2蓄電池22の負極端子に接続される例を示す。この場合、1相分の同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値Vmは、組電池20の端子電圧の分圧値2/3×Vdcとなる。ここで、Vdcは電源電圧、すなわち組電池20の端子電圧を示す。1相分の同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値Vmは、並列接続された2相分の同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値1/3×Vdcよりも高いため、1相分の同相巻線41aには部分放電が生じ易く、かつ、部分放電量が大きくなり易い。
【0042】
実際の部分放電量が、同相巻線41aの部分放電量の許容値より大きくなることにより、同相巻線41aの絶縁層41cが劣化する可能性がある。この問題に対処すべく、所望の絶縁性能を確保するために同相巻線41aの絶縁距離を長く設定することが考えられる。しかし、この場合、回転電機40が大型化する懸念がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、接続スイッチ61の制御により同相巻線41aの絶縁性能が確保される構成とした。詳しくは、接続スイッチ61がオンされた状態においてスイッチ駆動制御が行われる。
図6は、接続スイッチ61がオンされた状態において、同相巻線41aに生じる巻線電圧について説明するための図である。
図6において、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL及び接続スイッチ61の図示は省略し、先の
図1と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0044】
接続スイッチ61がオンされた状態では、中性点Oと組電池20の中間端子Bとが電気的に接続される。そのため、スイッチ駆動制御が行われる場合において、1相分の同相巻線41aの一端が、第1蓄電池21の正極端子及び第2蓄電池22の負極端子のうちいずれかに接続され、他端が中間端子Bに接続される。このため、1相分の同相巻線41aに生じる巻線電圧は、第1蓄電池21の端子電圧又は第2蓄電池22の端子電圧となる。
【0045】
図6には、第1蓄電池21の端子電圧及び第2蓄電池22の端子電圧が共に1/2×Vdcの場合を示す。この場合、接続スイッチ61がオフされた状態の巻線電圧の最大値Vmが2/3×Vdcであるのに対し、接続スイッチ61がオンされた状態の巻線電圧の最大値Vmを1/2×Vdcに低減できる。
【0046】
第1蓄電池21の端子電圧及び第2蓄電池22の端子電圧(例えば定格電圧)は、同一又は同等の値とされることが望ましいが、異なる値であってもよい。
【0047】
制御装置70は、気圧センサ51の気圧検出値Pr、温度センサ52の検出温度Tr、相電流センサ63の検出電流Ir及び組電池20の端子電圧Vrに基づいて、同相巻線41aで発生する部分放電量が許容値より大きいか否かを判定する。本実施形態では、同相巻線41aで発生する部分放電量が許容値より大きいか否かの判定処理として、同相巻線41aに部分放電が発生するか否かの判定処理が行われる。具体的には、制御装置70は、以下の第1~第4条件のうち少なくとも1つが成立すると判定した場合、同相巻線41aに部分放電が発生すると判定する。
【0048】
第1条件は、気圧センサ51により検出された気圧検出値Prが気圧判定値Pth以下との条件である。
【0049】
第2条件は、温度センサ52の検出温度Trが温度判定値Tth以上との条件である。
【0050】
第3条件は、相電流センサ63の検出電流Irの絶対値が電流判定値Ith以上との条件である。なお、相電流センサ63の検出電流Irが「電流パラメータ」に相当する。
【0051】
第4条件は、組電池20の端子電圧Vrが電圧判定値Vdcth以上との条件である。なお、組電池20の端子電圧Vrは、監視ユニット50の電池情報に基づいて取得されればよい。なお、監視ユニット50から取得された組電池20の端子電圧Vrが「電圧パラメータ」に相当する。
【0052】
制御装置70は、部分放電が発生すると判定した場合、接続スイッチ61をオンする。なお、制御装置70が「判定部」に相当する。
【0053】
図7に、制御装置70が実施する制御の処理手順を示す。この制御は所定の制御周期で繰り返し実施される。
【0054】
ステップS10では、回転電機40の駆動要求があるか否かを判定する。本実施形態において、この駆動要求には、回転電機40の回転駆動により車両を走行させる要求が含まれる。ステップS10において否定判定した場合、ステップS11に進む。
【0055】
ステップS11では、待機モードに設定する。待機モードに設定することにより、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLがオフされる。そして、ステップS12において、接続スイッチ61をオフする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に遮断される。
【0056】
ステップS10において肯定判定した場合、ステップS13に進む。ステップS13では、同相巻線41aに部分放電が発生するか否かを判定する。具体的には、気圧検出値Pr、検出温度Tr、検出電流Ir及び端子電圧Vrを取得する。そして、上述した第1~第4条件のうち少なくとも1つが成立するか否かを判定する。ステップS13において否定判定した場合、ステップS14に進む。なお、ステップS13が「気圧情報取得部」、「温度取得部」、「電流取得部」及び「電圧取得部」に相当する。
【0057】
ステップS14では、スイッチ駆動制御を行う通常モードに設定する。そして、ステップS15において、接続スイッチ61をオフする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に遮断される。ステップS16において、接続スイッチ61がオフされた状態で各相上,下アームスイッチQUH~QWLをオンオフする。具体的には例えば、各相の指令電圧を電源電圧Vdcで規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームスイッチのスイッチ操作信号(デューティ信号)を生成する。
【0058】
一方、ステップS13において肯定判定した場合、ステップS17に進む。ステップS17では、同相巻線41aの絶縁保護を行いつつスイッチ駆動制御を行う絶縁保護モードに設定する。そして、ステップS18では、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。ステップS19において、接続スイッチ61がオンされた状態で各相上,下アームスイッチQUH~QWLをオンオフする。具体的には、ステップS16と同様のPWM制御を行う。
【0059】
図8に、気圧センサ51の気圧検出値Prに基づいて、接続スイッチ61が制御される場合のスイッチ駆動制御の一例を示す。
図8には、気圧検出値Prに対する同相巻線41aの巻線電圧の最大値Vm及び部分放電開始電圧PDIVの関係を示す。
図8において、実線は、巻線電圧の最大値Vmを示し、破線は、部分放電開始電圧PDIVを示す。巻線電圧の最大値Vmが部分放電開始電圧PDIVよりも低い場合、部分放電が生じない又は部分放電が生じる可能性が極めて低いことを示し、巻線電圧の最大値Vmが部分放電開始電圧PDIV以上の場合、部分放電が生じる又は部分放電が生じる可能性が極めて高いことを示す。
【0060】
気圧検出値Prが気圧判定値Pthより高い領域では、接続スイッチ61がオフされ、部分放電開始電圧PDIVが、接続スイッチ61がオフされた状態の巻線電圧の最大値Vmである2/3×Vdcよりも高くなる。この場合、スイッチ駆動制御が行われたとしても、部分放電は生じない又は部分放電が生じる可能性は極めて低い。なお、
図8では、部分放電開始電圧PDIVが2/3×Vdcと同じ値になる場合における回転電機40周囲の気圧検出値Prが、気圧判定値Pthとして設定されている。
【0061】
一方、気圧検出値Prが気圧判定値Pth以下の領域では、部分放電開始電圧PDIVが、接続スイッチ61がオフされた状態の巻線電圧の最大値Vmである2/3×Vdc以下となる。このため、接続スイッチ61がオフされた状態では、同相巻線41aに部分放電が発生することが懸念される。そこで、制御装置70は、気圧検出値Prが気圧判定値Pth以下となる領域では、第1条件が成立すると判定し、接続スイッチ61をオンする。これにより、スイッチ駆動制御が行われる場合において同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値Vmを、部分放電開始電圧PDIVよりも低い1/2×Vdcに低減できる。その結果、気圧検出値Prが気圧判定値Pth以下となる領域においても、スイッチ駆動制御が行われる場合において同相巻線41aに部分放電が生じることを抑制できる。
【0062】
温度センサ52の検出温度Trに基づいて接続スイッチ61が制御される場合も、気圧センサ51の気圧検出値Prに基づいて接続スイッチ61が制御される場合と同様の制御が行われる。詳しくは、検出温度Trが温度判定値Tthより低い領域では、部分放電開始電圧PDIVが巻線電圧の最大値Vmである2/3×Vdcよりも高いため、接続スイッチ61がオフされた状態でスイッチ駆動制御が行われても部分放電は生じない。一方、検出温度Trが温度判定値Tth以上となる領域では、部分放電開始電圧PDIVが巻線電圧の最大値Vmである2/3×Vdc以下となる。そこで、制御装置70は、検出温度Trが温度判定値Tth以上となる領域では、第2条件が成立すると判定し、接続スイッチ61をオンする。制御装置70は、接続スイッチ61をオンした状態においてスイッチ駆動制御を行うことにより、部分放電の発生を抑制する。
【0063】
制御装置70は、相電流センサ63の検出電流Irの絶対値が電流判定値Ithより小さい場合、接続スイッチ61をオフした状態でスイッチ駆動制御を行う。一方、制御装置70は、相電流センサ63の検出電流Irの絶対値が電流判定値Ith以上の場合、第3条件が成立すると判定し、接続スイッチ61をオンする。制御装置70は、接続スイッチ61をオンした状態においてスイッチ駆動制御を行う。
【0064】
制御装置70は、組電池20の端子電圧Vrが電圧判定値Vdcthより低い場合、接続スイッチ61をオフした状態でスイッチ駆動制御を行う。制御装置70は、組電池20の端子電圧Vrが電圧判定値Vdcth以上の場合、第4条件が成立すると判定し、接続スイッチ61をオンする。制御装置70は、接続スイッチ61をオンした状態においてスイッチ駆動制御を行う。
【0065】
制御装置70は、例えば、気圧検出値Pr、検出温度Tr、検出電流Ir及び組電池20の端子電圧Vrに基づいて、各判定値Pth,Tth,Ith,Vdcthそれぞれを設定すればよい。
【0066】
詳しくは、制御装置70は、検出温度Tr、検出電流Ir及び組電池20の端子電圧Vrのうち少なくとも1つと、部分放電量を許容値以下にできる気圧判定値Pthとが予め対応付けられた対応情報(例えば、マップ情報又は数式情報)を用いて、気圧判定値Pthを設定すればよい。制御装置70は、気圧検出値Pr、検出電流Ir及び組電池20の端子電圧Vrのうち少なくとも1つと、部分放電量を許容値以下にできる温度判定値Tthとが予め対応付けられた対応情報を用いて、温度判定値Tthを設定すればよい。
【0067】
また、制御装置70は、気圧検出値Pr、検出温度Tr及び組電池20の端子電圧Vrのうち少なくとも1つと、部分放電量を許容値以下にできる電流判定値Ithとが予め対応付けられた対応情報を用いて、電流判定値Ithを設定すればよい。制御装置70は、気圧検出値Pr、検出温度Tr及び検出電流Irのうち少なくとも1つと、部分放電量を許容値以下にできる電圧判定値Vdcthとが予め対応付けられた対応情報を用いて、電圧判定値Vdcthを設定すればよい。なお、部分放電の発生を許容しない場合、許容値は例えば0に設定され、部分放電の発生を許容する場合、許容値は0よりも大きい値に設定される。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
・電力変換装置11は、第1蓄電池21の負極端子及び第2蓄電池22の正極端子と、中性点Oとを電気的に接続する接続経路60と、接続経路60に設けられる接続スイッチ61と、制御装置70とを備える。制御装置70において、第1~第4条件のうち少なくとも1つが成立するか否かが判定される。第1~第4条件のうち少なくとも1つが成立すると判定された場合、部分放電が発生すると判定され、接続スイッチ61がオンされる。
【0070】
上述した構成において、接続スイッチ61がオフされた状態では、スイッチ駆動制御において同相巻線41aには組電池20の端子電圧の分圧値が印加される。この場合、巻線電圧の最大値Vmは2/3×Vdcとなる。一方、接続スイッチ61がオンされた状態では、同相巻線41aには第1蓄電池21の端子電圧又は第2蓄電池22の端子電圧に相当する電圧が印加される。第1蓄電池21の端子電圧の大きさ及び第2蓄電池22の端子電圧の大きさが同一であるとする場合、巻線電圧の最大値Vmは1/2×Vdcとなる。このため、接続スイッチ61がオンされた状態においてスイッチ駆動制御が行われることにより、接続スイッチ61がオフされた状態においてスイッチ駆動制御が行われる場合よりも、同相巻線41aに生じる巻線電圧の最大値Vmを低減することができる。これにより、スイッチングデバイス部31及び回転電機40を利用して、部分放電の発生を抑制することができる。その結果、同相巻線41aの絶縁距離を短く設定することができ、ひいては回転電機40を小型化することができる。
【0071】
・本実施形態とは異なり、組電池20の端子電圧を降圧してスイッチングデバイス部31に供給することにより、巻線電圧を低減し、部分放電の発生を抑制することが考えられる。しかし、この場合、スイッチ駆動制御における回転電機40の出力が低下することが懸念される。これに対し、本実施形態では、接続スイッチ61がオンされた状態においてスイッチ駆動制御が行われることにより、巻線電圧の最大値Vmを低減することができる。これにより、スイッチ駆動制御における回転電機40の出力が低下することを抑制することができる。
【0072】
・気圧センサ51の気圧検出値Prが取得される。回転電機40の周囲の気圧が低いほど部分放電開始電圧が低くなり、部分放電が生じ易くなる。そのため、取得された気圧検出値Prに基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0073】
・温度センサ52の検出温度Trが取得される。同相巻線41aの温度が高いほど部分放電開始電圧が低くなり、部分放電が生じ易くなる。そのため、取得された温度センサ52の検出温度Trに基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0074】
・相電流センサ63の検出電流Irが取得される。同相巻線41aに流れる相電流が大きい状況では、各スイッチQUH~QWLがオフされることにより発生するサージ電圧が高くなるため、巻線電圧の最大値Vmも高くなる。このため、部分放電が生じ易くなる。そのため、相電流センサ63の検出電流Irに基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0075】
・監視ユニット50から組電池20の端子電圧Vrが取得される。組電池20の端子電圧Vrが高い状況では、スイッチングデバイス部31の出力電圧が高い。これにより、巻線電圧の最大値Vmも高くなり、部分放電が生じ易くなる。そのため、取得された組電池20の端子電圧Vrに基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0076】
<第1実施形態の変形例>
・電力変換システム10は、気圧センサ51に代えて、高度を取得する高度センサを備えていてもよい。高度センサにより検出された高度情報は、制御装置70に入力される。制御装置70は、高度情報に基づいて、回転電機40の周囲の気圧検出値Prを取得する。
【0077】
・第3条件において、相電流センサ63の検出電流Irが電流判定値Ithよりも大きいか否かが判定されることに代えて、上位制御装置53から出力されるトルク指令値Trq*が、トルク判定値Trqthよりも大きいか否かが判定されてもよい。この場合、制御装置70は、トルク指令値Trq*を取得し、トルク指令値Trq*がトルク判定値Trqthよりも大きい場合、第3条件が成立したと判定する。
【0078】
トルク指令値Trq*が大きい場合、同相巻線41aに流れる相電流も大きくなるため、各スイッチQUH~QWLがオフされることにより生じるサージ電圧が高くなり、巻線電圧が高くなる。このため、部分放電が生じ易くなる。そのため、取得されたトルク指令値Trq*に基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0079】
なお、第3条件において、トルク指令値Trq*に代えて、d,q軸指令電流に対応して定まる指令電流ベクトルの大きさが、所定値よりも大きいか否かが判定されてもよい。この場合、制御装置70は、指令電流ベクトルを取得し、指令電流ベクトルの大きさが所定値よりも大きい場合、第3条件が成立したと判定する。なお、トルク指令値Trq*及び指令電流ベクトルの大きさが「電流パラメータ」に相当する。
【0080】
・各スイッチQUH~QWLがオンされることに伴い発生するリカバリサージ電圧は、同相巻線41aに流れる相電流が小さいほど高くなる。これにより、同相巻線41aの巻線電圧が瞬間的に高くなることが考えられる。
【0081】
そこで、第3条件を、相電流センサ63の検出電流Irの絶対値が電流判定値Ith以上であるか否かを判定する条件に代えて、相電流センサ63の検出電流Irの絶対値が小電流判定値以下であるか否かを判定する条件としてもよい。この場合、制御装置70は、相電流センサ63の検出電流Irが小電流判定値以下の場合、第3条件が成立したと判定すればよい。
【0082】
・第4条件を、取得された組電池20の端子電圧Vrが電圧判定値Vdcthよりも高いか否かを判定する条件に代えて、組電池20のSOCが容量判定値SOCthよりも大きいか否かを判定する条件としてもよい。この場合、制御装置70は、監視ユニット50からSOCを取得し、取得された組電池20のSOCが容量判定値SOCthよりも大きい場合、第4条件が成立したと判定する。なお、監視ユニット50から取得されたSOCが「電圧パラメータ」に相当する。
【0083】
組電池20のSOCが大きい場合、組電池20の端子電圧は高くなる。そのため、スイッチングデバイス部31の出力電圧が高くなることにより、巻線電圧の最大値Vmも高くなる。その結果、部分放電が生じ易くなる。そのため、取得された組電池20のSOCに基づいて、接続スイッチ61がオンされるべき状態を的確に判定することができる。
【0084】
・中間端子Bの設置箇所を変更してもよい。
図9に示すように、電力変換装置11は、静電容量が等しい第1コンデンサ32a及び第2コンデンサ32bを備えている。
図9において、先の
図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。なお、第1コンデンサ32aの静電容量と第2コンデンサ32bの静電容量とは同じでなくてもよい。
【0085】
第1コンデンサ32aの第1端は正極側母線Lpに接続され、第2コンデンサ32bの第1端は負極側母線Lnに接続される。第1コンデンサ32aの第2端と第2コンデンサ32bの第2端とには中間端子Bが接続されている。なお、第1コンデンサ32aが「第1蓄電部」に相当し、第2コンデンサ32bが「第2蓄電部」に相当する。
【0086】
・第1実施形態において、電力変換システム10は、組電池20に代えて、異なる種類の蓄電部の直列接続体を備えていてもよい。
図10に示すように、電力変換システム10は、電源23を備えている。
図10において、先の
図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0087】
電源23は、第1蓄電池21と、第2蓄電池22に代えてキャパシタ24とを有する。蓄電池21の正極端子が正極側母線Lpに接続され、キャパシタ24の負極端子が負極側母線Lnに接続される。蓄電池21の負極端子とキャパシタ24の正極端子とには中間端子Bが接続されている。なお、電源23は、第1蓄電池21に代えてキャパシタ24と、第2蓄電池22とを備えていてもよい。ここで、キャパシタ24は、静電容量の大きなスーパーキャパシタが用いられるとよい。なお、本実施形態において、キャパシタ24が「第2蓄電部」に相当する。
【0088】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行うエネルギ管理制御を実施する。
【0089】
以下、接続スイッチ61がオンされた状態において行われるエネルギ管理制御について説明する。
【0090】
図11(a)に、エネルギ管理制御で用いられる電力変換システム10の等価回路を示す。
図11(a)では、各相巻線41U~41Wを巻線41として示し、各上アームスイッチQUH,QVH,QWHを上アームスイッチQHとして示し、各上アームダイオードDUH,DVH,DWHを上アームダイオードDHとして示している。また、各下アームスイッチQUL,QVL,QWLを下アームスイッチQLとして示し、各下アームダイオードDUL,DVL,DWLを下アームダイオードDLとして示している。
【0091】
図11(a)の等価回路は、
図11(b)の等価回路として示すことができる。
図11(b)の回路は、第1蓄電池21と第2蓄電池22との間で双方向の電力伝達が可能な昇降圧チョッパ回路である。
図11(b)において、IBHは第1蓄電池21に流れる電流を示し、IBLは第2蓄電池22に流れる電流を示す。第1,第2蓄電池21,22の充電電流が流れる場合にIBH,IBLは負となり、第1,第2蓄電池21,22の放電電流が流れる場合にIBH,IBLは正となる。また、VRは巻線41の端子電圧を示し、IMrは中性点電流を示す。中性点電流IMrの正負は、巻線41から中間端子Bへと向かう方向に中性点電流IMr流れる場合を正とし、その逆方向に中性点電流IMrが流れる場合を負とする。
【0092】
図11(b)を参照して、上アームスイッチQHがオンされると、巻線41の端子電圧VRが「VBH」となる。一方、下アームスイッチQLがオンされると、巻線41の端子電圧VRが「-VBL」となる。つまり、上アームスイッチQHがオンされることにより、巻線41に正方向に励磁電流を流すことができ、下アームスイッチQLがオンされることにより、巻線41に負方向に励磁電流を流すことができる。
【0093】
図12に、エネルギ管理制御のブロック図を示す。
図12は、回転電機40の駆動前における車両の停車中に実施されるエネルギ管理制御の制御ブロックである。
【0094】
制御装置70は、エネルギ制御部90を備えている。エネルギ制御部90は、指令値設定部91と、中性点偏差算出部92と、中性点制御部93と、U~W相重畳部94U~94Wとを備えている。
【0095】
指令値設定部91は、中性点指令電流IM*を設定する。本実施形態では、指令値設定部91は、第1蓄電池21の端子電圧VBHから第2蓄電池22の端子電圧VBLを減算することにより、判定電圧Vj(=VBH-VBL)を算出する。指令値設定部91は、算出した判定電圧Vjが正の値の場合、中性点指令電流IM*を正の値に設定する。詳しくは、
図13に示すように、判定電圧Vjが高いほど中性点指令電流IM*を大きく設定する。指令値設定部91は、算出した判定電圧Vjが負の値の場合、中性点指令電流IM*を負の値に設定し、詳しくは、判定電圧Vjの絶対値が大きいほど中性点指令電流IM*の絶対値を大きく設定する。そのため、本実施形態では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの端子電圧の均等化を目的として、エネルギ管理制御が行われる。
【0096】
中性点偏差算出部92は、中性点指令電流IM*から、電流センサ62により検出された電流である中性点電流IMrを減算することにより、中性点電流偏差ΔIMを算出する。本実施形態において、中性点指令電流IM*は直流電流である。
【0097】
中性点制御部93は、算出された中性点電流偏差ΔIMを0にフィードバック制御するための操作量として、オフセット補正量CFを算出する。本実施形態では、このフィードバック制御として比例積分制御が用いられる。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
【0098】
U相重畳部94Uは、U相指令電圧Vuにオフセット補正量CFを加算することにより、U相最終指令電圧「Vu+CF」を算出する。V相重畳部94Vは、V相指令電圧Vvにオフセット補正量CFを加算することにより、V相最終指令電圧「Vv+CF」を算出する。W相重畳部94Wは、W相指令電圧Vwにオフセット補正量CFを加算することにより、W相最終指令電圧「Vw+CF」を算出する。
図12の処理においては、停車中であるため、各相指令電圧Vu,Vv,Vwが0とされる。このため、各相最終指令電圧はオフセット補正量CFとなる。
【0099】
制御装置70は、U~W相変調部95U~95Wを備えている。U相変調部95Uは、U相最終指令電圧を電源電圧Vdcで除算することにより、U相変調率Muを算出する。ここで、電源電圧Vdcは、監視ユニット50から取得された第1蓄電池21の端子電圧VBH及び第2蓄電池22の端子電圧VBLの合計値である。V相変調部95Vは、V相最終指令電圧を電源電圧Vdcで除算することにより、V相変調率Mvを算出する。W相変調部95Wは、W相最終指令電圧を電源電圧Vdcで除算することにより、W相変調率Mwを算出する。
【0100】
制御装置70は、算出した各変調率Mu,Mv,Mwに基づいて、3相分のスイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。具体的には例えば、制御装置70は、各変調率Mu,Mv,Mwとキャリア信号(例えば三角波信号)との大小比較に基づくPWM制御によりスイッチング制御を行えばよい。
【0101】
エネルギ管理制御は、車両の停車中のみならず、車両が走行している場合においても実施することができる。
図14は、その場合に実施されるエネルギ管理制御の制御ブロック図である。なお、
図14において、先の
図12に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0102】
制御装置70は、d,q軸偏差算出部100d,100qと、d,q軸制御部101d,101qと、3相変換部102とを備えている。
【0103】
制御装置70において、d軸偏差算出部100dは、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部100qは、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。ここで、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*は、回転電機40のトルク指令値Trq*に基づいて設定される。また、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrは、相電流センサ63の検出電流Ir及び回転電機40の電気角に基づいて算出される。なお、電気角は、レゾルバ等の回転角センサの検出値であってもよいし、位置センサレス制御で推定された推定値であってもよい。
【0104】
d軸制御部101dは、算出されたd軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量として、d軸電圧Vdを算出する。q軸制御部101qは、算出されたq軸電流偏差ΔIqを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸電圧Vqを算出する。本実施形態では、各制御部101d,101qのフィードバック制御として比例積分制御が用いられる。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
【0105】
3相変換部102は、d軸電圧Vd、q軸電圧Vq及び上記電気角に基づいて、3相固定座標系におけるU~W相指令電圧Vu~Vwを算出する。各相指令電圧Vu~Vwは、電気角で120度ずつ位相がずれた信号(具体的には正弦波状の信号)である。3相変換部102で算出されたU~W相指令電圧Vu~Vwには、U~W相重畳部94U~94Wにおいてオフセット補正量CFが加算される。これにより、U~W相最終指令電圧が算出される。
【0106】
上述した構成により、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受が行われる。詳しくは、中性点指令電流IM*が正の場合、第1蓄電池21から第2蓄電池22へとエネルギが供給され、中性点指令電流IM*が負の場合、第2蓄電池22から第1蓄電池21へとエネルギが供給される。
【0107】
エネルギ管理制御では、エネルギを供給する側の蓄電池の出力エネルギと、エネルギを供給される側の蓄電池の入力エネルギとの比率である電力変換効率が高いこと、言い換えれば授受されるエネルギの損失が低損失であることが望ましい。そこで、本実施形態では、制御装置70は、エネルギ管理制御の電力変換効率を高める構成を備えることとした。
【0108】
エネルギ管理制御において発生するエネルギの損失には、回転電機40で発生する鉄損が含まれる。鉄損はリプル電流Iripに起因して発生することが知られている。詳しくは、鉄損はリプル電流Iripの2乗に比例して増大する。本実施形態におけるリプル電流Iripとは、
図15に示すように、各スイッチQUH~QWLのオンオフに伴い発生する中性点電流IMrの変動幅である。リプル電流Iripは、以下の下式(e1)で表される。
【0109】
【数1】
ここで、Vbatは蓄電池の端子電圧であり、Lは巻線41のインダクタンスであり、fswはインバータ30のスイッチング周波数である。上式(e1)より、蓄電池の端子電圧Vbatが低い場合、リプル電流Iripが低減される。よって、蓄電池の端子電圧Vbatが低い場合にエネルギ管理制御を行うことにより、回転電機40の鉄損を低減できる。
【0110】
制御装置70は、エネルギ管理制御における鉄損を低減すべく、各蓄電池21,22の端子電圧のうち高い方の端子電圧VBが電圧規定値Vp以下であることを条件として、各蓄電池21,22のうち一方から他方へとエネルギの供給を行う。なお、蓄電池の端子電圧VBが「電圧パラメータ」に相当する。
【0111】
例えば、電圧規定値Vpは、各蓄電池21,22のSOCが低下した状態である低SOC状態において、蓄電池の端子電圧VBが低いことに着目して設定される。
図16に、蓄電池の端子電圧VBとSOCとの関係を示す。蓄電池の端子電圧VBとSOCとには相関があり、蓄電池のSOCの単位変化量あたりの端子電圧VBの変化量である電圧変化量は、SOCの大きさに応じて変化するものとなっており、電圧変化量が大きい領域と、電圧変化量が小さい領域とがある。電圧変化量が大きい領域まで蓄電池のSOCが低下すると、蓄電池の劣化が生じる可能性がある。このことを考慮し、例えば、電圧変化量が小さい領域の下限値よりもSOCがやや大きい値をSOC規定値Spとし、SOC規定値Spに対応する蓄電池の端子電圧VBが電圧規定値Vpと設定されればよい。
【0112】
各蓄電池21,22の端子電圧のうち高い方の端子電圧VBが電圧規定値Vp以下であることを条件として、各蓄電池21,22のうち一方から他方へとエネルギの供給が行われることにより、リプル電流Iripが低減される。これにより、エネルギ管理制御において発生する鉄損を低減することができる。
【0113】
エネルギ管理制御において発生するエネルギの損失には、回転電機40で発生する鉄損以外にも、回転電機40及びスイッチングデバイス部31で発生する銅損、及びスイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLで発生するスイッチング損失がある。
【0114】
ここで、エネルギ管理制御において発生するエネルギの損失について補足的に説明する。
図17に、エネルギ管理制御において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行う際の電力である授受電力と、エネルギ損失の関係を示す。
図17では、実線は、回転電機40で発生する鉄損を示し、破線は、回転電機40及びスイッチングデバイス部31で発生する銅損を示し、一点鎖線は、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLで発生するスイッチング損失を示す。
【0115】
回転電機40における鉄損は授受電力の値によらず略一定の大きさで発生する。回転電機40及びスイッチングデバイス部31における銅損は授受電力の2乗に比例して増大する。スイッチングデバイス部31におけるスイッチング損失は授受電力に比例して増大する。
【0116】
そこで、本実施形態では、これら鉄損、銅損及びスイッチング損失を考慮し、エネルギ管理制御における電力変換効率を高める構成とした。
【0117】
図18に、授受電力と、鉄損、銅損及びスイッチング損失を考慮した場合の電力変換効率との関係を示す。電力変換効率には最大値ηmaxが存在し、電力変換効率の最大値ηmaxにおける授受電力を最大効率電力Pmaxとする。授受電力が最大効率電力Pmaxよりも大きい領域では、授受電力の増大に伴い銅損及びスイッチング損失が増大するため、授受電力が大きいほど電力変換効率が低下する。一方、授受電力が最大効率電力Pmaxよりも小さい領域では、授受電力の値にかかわらず鉄損が略一定の大きさであることに起因して、授受電力が小さいほど電力変換効率が低下する。
【0118】
制御装置70は、エネルギ管理制御における授受電力が指令電力W*となるように、エネルギ管理制御を行う。制御装置70は、指令電力W*を最大効率電力Pmaxに設定する。ここで、最大効率電力Pmaxは、エネルギ管理制御において電流が流れる巻線41の相数毎に予め定められる。
【0119】
図19に、エネルギ管理制御において電流が流れる巻線41の相数毎の授受電力と電力変換効率との関係を示す。実線は、電流が流れる巻線41の相数が1相の場合を示し、破線は、電流が流れる巻線41の相数が2相の場合を示し、一点鎖線は、電流が流れる巻線41の相数が3相の場合を示す。電流が流れる巻線41の相数が大きくなるほど、最大効率電力Pmaxも大きくなる。言い換えると、電流が流れる巻線41の相数が1相の場合の最大効率電力Pmax1は、電流が流れる巻線41の相数が2相の場合の最大効率電力Pmax2よりも小さい。また、電流が流れる巻線41の相数が2相の場合の最大効率電力Pmax2は、電流が流れる巻線41の相数が3相の場合の最大効率電力Pmax3よりも小さい。
【0120】
図19に示す特性を踏まえ、制御装置70は、回転電機40の駆動要求がない場合、電流を流す巻線41の相数を変更することができる。本実施形態では、制御装置70は、要求電力Wreqの大きさに基づいて、電流を流す巻線41の相数を算出する。
【0121】
例えば、制御装置70は、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差が大きいほど、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間で授受する要求電力Wreqを大きく算出する。
【0122】
制御装置70は、算出した要求電力Wreqに基づいて、最大効率電力Pmax1,Pmax2,Pmax3のうちいずれかを指令電力W*として算出する。
【0123】
詳しくは、制御装置70は、要求電力Wreqが第1領域DP1の範囲内にある場合、1相の場合の最大効率電力Pmax1を指令電力W*として算出する。ここで、第1領域DP1とは、1相の場合の電力変換効率が、他の相数の場合の電力変換効率よりも高くなる授受電力の領域である。制御装置70は、要求電力Wreqが第2領域DP2の範囲内にある場合、2相の場合の最大効率電力Pmax2を指令電力W*として算出する。ここで、第2領域DP2とは、2相の場合の電力変換効率が、他の相数の場合の電力変換効率よりも高くなる授受電力の領域である。制御装置70は、要求電力Wreqが第3領域DP3の範囲内にある場合、3相の場合の最大効率電力Pmax3を指令電力W*として算出する。ここで、第3領域DP3とは、3相の場合の電力変換効率が、他の相数の場合の電力変換効率よりも高くなる授受電力の領域である。なお、指令電力W*が大きいほど、指令値設定部91の中性点指令電流IM*が大きくされる。
【0124】
制御装置70は、算出した最大効率電力Pmaxに対応した相数の巻線41に電流を流すことにより、エネルギ管理制御を行う。詳しくは、指令電力W*として、3相の場合の最大効率電力Pmax3が算出された場合、3相の巻線41に電流を流すように、インバータ30において3相分の上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われる。2相の場合の最大効率電力Pmax2が算出された場合、2相の巻線41に電流を流すように2相分のスイッチング制御が行われ、残りの1相分の上,下アームスイッチがオフされる。1相の場合の最大効率電力Pmax1が算出された場合、1相の巻線41に電流を流すように1相分のスイッチング制御が行われ、残りの2相分の上,下アームスイッチがオフされる。
【0125】
一方、制御装置70は、回転電機40の駆動要求がある場合、指令電力W*として、3相の場合の最大効率電力Pmax3を算出し、3相の巻線41に電流を流すように3相分の上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う。
【0126】
図20に、制御装置70が行うエネルギ管理制御の処理手順を示す。エネルギ管理制御は所定の制御周期で繰り返し実施される。
【0127】
ステップS20では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれのエネルギの授受要求があるか否かを判定する。本実施形態では、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差の絶対値が、電流偏差ΔV1を超えていると判定した場合、エネルギの授受要求があると判定する。ここで、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとは、監視ユニット50から取得すればよい。
【0128】
ステップS20においてエネルギの授受要求がないと判定した場合には、ステップS21に進み、待機モードに設定する。待機モードに設定することにより、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLをオフする。そして、ステップS22において、接続スイッチ61をオフする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に遮断される。
【0129】
ステップS20においてエネルギの授受要求があると判定した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLのうち高い方の端子電圧VBが、電圧規定値Vp以下であるか否かを判定する。ステップS23において否定判定した場合、ステップS21に進む。一方、ステップS23において肯定判定した場合、ステップS24に進む。
【0130】
ステップS24では、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。そして、ステップS25では、回転電機40の駆動要求があるか否かを判定する。本実施形態において、この駆動要求には、回転電機40の回転駆動により車両を走行させる要求が含まれる。
【0131】
ステップS25において駆動要求がないと判定した場合、ステップS26に進む。ステップS26では、指令電力W*と、電流が流れる巻線41の相数とを算出する。本実施形態では、要求電力Wreqに基づいて、指令電力W*と、電流が流れる巻線41の相数とを算出する。
【0132】
ステップS27では、算出された指令電力W*及び巻線41の相数により、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行う停止時PWM制御を行う。そして、ステップS30に進む。
【0133】
一方、ステップS25において駆動要求があると判定した場合、ステップS28に進む。ステップS28では、指令電力W*を算出する。本実施形態では、3相の場合の最大効率電力Pmax3を、指令電力W*として算出する。本実施形態において、ステップS26及びステップS28が「電力算出部」に相当する。
【0134】
ステップS29では、3相の巻線41に電流を流して回転電機40を駆動させつつ、算出された電力により第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行う駆動時PWM制御を行う。そして、ステップS30に進む。
【0135】
ステップS30では、エネルギの授受が完了したか否かを判定する。本実施形態では、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差の絶対値が、目標値ΔV2以下であると判定した場合、エネルギの授受が完了したと判定する。
【0136】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0137】
・エネルギ管理制御において、本実施形態とは異なり、各蓄電池21,22の間でエネルギの授受を行うための専用のスイッチ素子及びリアクトルが必要となる構成が考えられる。この構成では、電力変換装置11の部品数が増大し、電力変換装置11が大型化することが懸念される。
【0138】
この点、本実施形態では、各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLのうち高い方の端子電圧VBが、電圧規定値Vp以下であると判定された場合、接続スイッチ61をオンすると判定される。接続スイッチ61がオンされた状態において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に電流が流れるようにPWM制御が行われる。これにより、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち一方から他方へとエネルギの授受が行われる。このため、巻線41及びスイッチングデバイス部31を利用して、エネルギの授受を行うことができる。その結果、電力変換装置11の小型化を図ることができる。
【0139】
・各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLが低下した状態においてエネルギの授受が行われる。各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLが低下するほど、中性点電流IMrの変動幅であるリプル電流Iripは小さくなる。リプル電流Iripが小さいほど巻線41において発生する鉄損が低減される。この点に鑑み、各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLが低下した状態においてエネルギの授受が行われる。これにより、エネルギの授受を行う際に生じるエネルギの損失を低減することができる。
【0140】
・回転電機40の駆動要求がないと判定され、かつ、要求電力Wreqが小さい場合、電流が流れる巻線41の相数が少なくされる。これにより、回転電機40に含まれる鉄心を通過する磁束を低減できるため、回転電機40において発生する鉄損を低減することができる。
【0141】
・電流が流れる巻線41の相数に対応して定められる電力であり、かつ電力変換効率の最大値ηmaxにおける電力である最大効率電力Pmaxが指令電力W*として算出される。算出された指令電力W*により第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受が行われる。これにより、エネルギ管理制御の電力変換効率を高めることができる。
【0142】
・第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差が大きいほど、要求電力Wreqが増大される。これにより、エネルギ管理制御が行われる時間を短縮することができる。
【0143】
<第2実施形態の変形例>
・エネルギ管理制御において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれの端子電圧VBH,VBLの均等化を目的としなくてもよい。この場合、例えば、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち、一方から他方へのエネルギの授受要求があるか否かの判定が実施される。この要求があると判定された場合、指令値設定部91は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち、一方から他方へと供給するエネルギ目標値を算出し、算出したエネルギ目標値に基づいて中性点指令電流IM*を設定してもよい。詳しくは、指令値設定部91は、第1蓄電池21から第2蓄電池22へとエネルギを授受する場合、正のエネルギ目標値を算出し、正のエネルギ目標値が大きいほど、中性点指令電流IM*を大きく設定する。一方、指令値設定部91は、第2蓄電池22から第1蓄電池21へとエネルギを授受する場合、負のエネルギ目標値を算出し、負のエネルギ目標値の絶対値が大きいほど、中性点指令電流IM*を大きく設定する。
【0144】
・制御装置70は、エネルギ管理制御において、指令電力W*を、最大効率電力Pmax以外に設定してもよい。この場合、制御装置70は、要求電力Wreqをそのまま指令電力W*として算出すればよい。そして、制御装置70は、算出された指令電力W*に対してエネルギ管理制御における電力変換効率が最大となるように、電流を流す巻線41の相数を選択する。詳しくは、制御装置70は、指令電力W*が第1領域DP1の範囲内にある場合、電流を流す巻線41の相数を1相とし、指令電力W*が第2領域DP2の範囲内にある場合、電流を流す巻線41の相数を2相とし、指令電力W*が第3領域DP3の範囲内にある場合、電流を流す巻線41の相数を3相とする。
【0145】
上述した構成では、指令電力W*に対して、エネルギ管理制御における電力変換効率が最大となるように、電流を流す巻線41の相数が選択される。これにより、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行う際に生じるエネルギの損失を低減できる。
【0146】
・制御装置70は、各蓄電池21,22の端子電圧VBH,VBLのうち高い方の端子電圧VBが電圧規定値Vp以下であるか否かを判定することに代えて、各蓄電池21,22のSOCのうち大きい方のSOCがSOC規定値Sp以下であるか否かを判定してもよい。この場合、制御装置70は蓄電池21,22のSOCがSOC規定値Sp以下であることを条件として、各蓄電池21,22のうち一方から他方へエネルギの供給を行う。なお、本実施形態において、蓄電池のSOCが「電圧パラメータ」に相当する。
【0147】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、制御装置70は、組電池20の昇温制御を行う。詳しくは、制御装置70は、昇温制御として、接続スイッチ61をオンした状態において、スイッチングデバイス部31、巻線41及び接続経路60を介して、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に交流電流が流れるように各スイッチQUH~QWLをオンオフする。なお、昇温制御で用いられる電力変換装置11の等価回路は先の
図11と同様である。
【0148】
図21に、昇温制御における機能ブロック図を示す。制御装置70は、指令電流生成部110を備えている。指令電流生成部110は、中性点指令電流IM*を設定する。本実施形態において、中性点指令電流IM*は、
図22に示すように、正弦波として設定される。詳しくは、中性点指令電流IM*の1周期Tcにおいて、中性点指令電流IM*の値が0以外の値から0になるタイミング(以下、ゼロクロスタイミング)に対して、正の中性点指令電流IM*と負の中性点指令電流IM*とが点対称になるように中性点指令電流IM*を設定する。これにより、
図22において、中性点指令電流IM*の第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの期間が、第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの期間に等しくなる。ここでは、中性点指令電流IM*の正側の振幅Iaの大きさと、負側の振幅Ibの大きさとは等しいとする。
【0149】
また、中性点指令電流IM*の1周期Tcにおいて、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなる。第1領域の面積S1は、中性点指令電流IM*の1周期Tcにおいて、中性点指令電流IM*の第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの時間軸と、正の中性点指令電流IM*とで囲まれる領域である。第2領域の面積S2は、1周期Tcにおいて、中性点指令電流IM*の第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの時間軸と、負の中性点指令電流IM*とで囲まれる領域である。
【0150】
第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなるように設定されることにより、1周期Tcにおける第1蓄電池21及び第2蓄電池22の充放電電流の収支を合わせることができる。このため、昇温制御に伴い、第1蓄電池21の端子電圧VBHと第2蓄電池22の端子電圧VBLとの差が大きくなることを抑制できる。
【0151】
本実施形態において、中性点指令電流IM*の正負は、第2実施形態における中性点電流IMrの正負と同様である。
【0152】
図21の説明に戻り、制御装置70は、垂下制御部111を備えている。垂下制御部111は、入力された中性点指令電流IM*を制限し、最終指令電流IMa*として出力する。中性点指令電流IM*の絶対値は、制限値以下に制限される。なお、制限値の設定方法については後述する。
【0153】
制御装置70は、電流偏差算出部112、フィードバック制御器113、PWM生成部114及び反転器115を備えている。
【0154】
電流偏差算出部112は、最終指令電流IMa*から電流センサ62により検出された中性点電流IMrを減算することにより、中性点電流偏差ΔIMを算出する。フィードバック制御器113は、電流偏差算出部112により算出された中性点電流偏差ΔIMを0にフィードバックするための操作量として、デューティ信号Dを算出する。デューティ信号Dには、各相上,下アームスイッチQUH~QWLそれぞれのデューティ比が含まれる。ここで、各相上,下アームスイッチQUH~QWLのデューティ比とは、1スイッチング周期Tswにおけるオン時間Tonの比率(Ton/Tsw)を定める値である。なお、フィードバック制御器113で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0155】
PWM生成部114は、フィードバック制御器113で算出されたデューティ信号Dに基づいて、上アームスイッチQUH~QWHのゲート信号を生成する。反転器115は、上アームスイッチQUH~QWHのゲート信号の論理を反転させることにより、下アームスイッチQUL~QWLのゲート信号を生成する。ここで、ゲート信号は、各スイッチQUH~QWLのオン又はオフを指示する信号である。
【0156】
上述した構成により、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に交流電流が流れるように各スイッチQUH~QWLがオンオフされ、組電池20が昇温される。ところで、昇温制御が行われることにより、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが変動する。電池セルの端子電圧Vceの変動が大きいと、電池セルが一時的に過放電状態又は過充電状態となることがある。その結果、電池セルが劣化することが懸念される。
【0157】
そこで、本実施形態では、制御装置70は、昇温制御における昇温能力を確保しつつ電池セルの保護を行うべく、電池セルに過充電状態又は過放電状態が発生すると判定した場合、垂下制御が行われる構成とした。本実施形態において、垂下制御とは、組電池20を構成する各電池セルのうち、過充電状態又は過放電状態が生じた電池セルの端子電圧Vceに基づいて、中性点指令電流IM*を制限する制限値を変更する制御である。以下、制限値の設定方法について説明する。
【0158】
制御装置70は、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceに基づいて、電池セルに過充電状態又は過放電状態が発生する否かを判定する。具体的には、制御装置70の垂下制御部111は、各電池セルの端子電圧Vceが規定電圧範囲内にあると判定した場合、組電池20を構成する電池セルに過放電状態及び過充電状態が生じていないと判定する。規定電圧範囲は、規定電圧下限値Vmin及び規定電圧上限値Vmaxにより定められている。制御装置70は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回った場合、電池セルが過放電状態であると判定する。一方、制御装置70は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回った場合、電池セルが過充電状態であると判定する。制御装置70は、過放電状態であると判定された電池セルを過放電保護対象とし、過充電状態であると判定された電池セルを過充電保護対象とする。なお、電池セルの端子電圧Vceが「電圧パラメータ」に相当する。
【0159】
制限値は、垂下制御部111において設定される。垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceに基づいて、0~1の値である垂下係数CLを算出するとともに、予め定められた放電,充電制限値IMd,IMcに垂下係数CLを乗算することにより、最終的な放電,充電制限値IMd,IMcを設定する。
【0160】
詳しくは、垂下制御部111は、電池セルに過放電状態及び過充電状態が発生していないと判定した場合、垂下係数CLを1とする。この場合、予め定められた放電,充電制限値IMd,IMcがそのまま最終的な放電,充電制限値IMd,IMcとなる。
【0161】
垂下制御部111は、電池セルが過放電状態であると判定した場合、過放電保護対象である電池セルの端子電圧Vceに基づいて、1より小さい垂下係数CLを算出する。この場合、垂下制御部111は、中性点指令電流IM*のうち、過放電保護対象の電池セルの放電電流である指令放電電流の放電制限値IMdを変更し、放電制限値IMdに垂下係数CLを乗じた「CL×IMd」を最終的な放電制限値とする。
【0162】
垂下制御部111は、電池セルが過充電状態であると判定した場合、過充電保護対象である電池セルの端子電圧Vceに基づいて、1より小さい垂下係数CLを算出する。この場合、垂下制御部111は、中性点指令電流IM*のうち、過充電保護対象の電池セルの充電電流である指令充電電流の充電制限値IMcを変更し、充電制限値IMcに垂下係数CLを乗じた「CL×IMc」を最終的な充電制限値とする。
【0163】
制御装置70は、中性点指令電流IM*の絶対値を最終的な放電,充電制限値IMd,IMc以下に制限する。詳しくは、垂下制御部111は、指令放電電流の絶対値が「CL×IMd」以下の場合、指令放電電流をそのまま最終指令電流IMa*として算出する。垂下制御部111は、指令放電電流の絶対値が「CL×IMd」を上回る場合、指令放電電流の絶対値を「CL×IMd」に制限して最終指令電流IMa*として算出する。一方、垂下制御部111は、指令充電電流の絶対値が「CL×IMc」以下の場合、指令充電電流をそのまま最終指令電流IMa*として算出する。垂下制御部111は、指令充電電流の絶対値が「CL×IMc」を上回る場合、指令充電電流の絶対値を「CL×IMc」に制限して最終指令電流IMa*として算出する。
【0164】
ここで、例えば、過放電状態であると判定された電池セルが第1蓄電池21に含まれる場合、中性点指令電流IM*のうち符号が正の電流が指令放電電流に対応する。一方、例えば、過放電状態であると判定された電池セルが第2蓄電池22に含まれる場合、中性点指令電流IM*のうち符号が負の電流が指令放電電流に対応する。また、例えば、過充電状態であると判定された電池セルが第1蓄電池21に含まれる場合、中性点指令電流IM*のうち符号が負の電流が指令充電電流に対応する。一方、例えば、過充電状態であると判定された電池セルが第2蓄電池22に含まれる場合、中性点指令電流IM*のうち符号が正の電流が指令充電電流に対応する。
【0165】
図23に、垂下係数CLの算出方法を示す。垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧範囲内にある場合、垂下係数CLを1とする。これにより、予め定められた放電,充電制限値IMd,IMcにより中性点指令電流IM*が制限される。
【0166】
垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回った場合、電池セルの端子電圧Vceが低いほど垂下係数CLを直線的に低減する。ここで、垂下係数CLは0になるまで低減され得る。垂下制御部111は、放電制限値IMdに垂下係数CLを乗算する。これにより、指令放電電流の絶対値が、低減された放電制限値「CL×IMd」以下に制限される。この場合、低減された放電制限値「CL×IMd」は、指令放電電流のピーク値よりも小さくなる。
【0167】
垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回った場合、その電池セルの端子電圧Vceが高いほど垂下係数CLを直線的に低減する。ここで、垂下係数CLは0になるまで低減され得る。垂下制御部111は、充電制限値IMcに垂下係数CLを乗算する。これにより、指令充電電流の絶対値が、低減された充電制限値「CL×IMc」以下に制限される。この場合、低減された充電制限値「CL×IMc」は、指令充電電流のピーク値よりも小さくなる。
【0168】
図24に、制御装置70が行う昇温制御の処理手順を示す。昇温制御は所定の制御周期で繰り返し実施される。
【0169】
ステップS40では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の昇温要求があるか否かを判定する。本実施形態では、組電池20の温度Tが目標温度T*以下であると判定した場合、昇温要求があると判定する。ここで、組電池20の温度Tは、監視ユニット50から取得すればよい。なお、組電池20の温度Tとして、第1蓄電池21の温度や、第2蓄電池22の温度、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の平均温度を用いてもよい。
【0170】
ステップS40において昇温要求がないと判定した場合には、ステップS41に進み、回転電機40の駆動要求があるか否かを判定する。この駆動要求には、回転電機40の駆動により車両を走行させる要求が含まれる。
【0171】
ステップS41において回転電機40の駆動要求がないと判定した場合には、ステップS42に進み、待機モードに設定する。待機モードでは、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLはオフする。そして、ステップS43において、接続スイッチ61をオフする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に遮断される。
【0172】
ステップS41において回転電機40の駆動要求があると判定した場合には、ステップS44に進み、回転電機駆動モードに設定する。そして、ステップS45において、接続スイッチ61をオフする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが接続経路60を介して電気的に遮断される。その後、ステップS46において、回転電機駆動PWM制御を行う。回転電機駆動PWM制御では、回転電機40を駆動させるべく、スイッチングデバイス部31の各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行う。これにより、車両の駆動輪が回転し、車両を走行させることができる。
【0173】
ステップS40において昇温要求があると判定した場合には、ステップS47に進み、組電池20を構成する電池セルそれぞれに過充電状態又は過放電状態が発生するか否かを判定する。詳しくは、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回った場合、電池セルが過放電状態であると判定する。一方、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回った場合、電池セルが過充電状態であると判定する。
【0174】
ステップS47において電池セルに過充電状態及び過放電状態のいずれも発生しないと判定した場合、ステップS48に進む。ステップS48では、昇温制御モードに設定する。そして、ステップS49において、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが接続経路60を介して電気的に接続される。
【0175】
ステップS50では、第1蓄電池21及び第2蓄電池22を昇温するために昇温PWM制御を行う。昇温PWM制御では、中性点電流IMrを最終指令電流IMa*に制御すべく、各スイッチQUH~QWLをオンオフする。これにより、スイッチングデバイス部31、巻線41及び接続経路60を介して、第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に交流電流を流し、第1蓄電池21及び第2蓄電池22を昇温する。なお、昇温PWM制御では、垂下制御部111で算出される垂下係数CLは1である。つまり、予め定められた制限値により中性点指令電流IM*を制限し、最終指令電流IMa*を算出する。
【0176】
一方、ステップS47において電池セルに過充電状態又は過放電状態が発生したと判定した場合、ステップS51に進む。ステップS51では、垂下昇温制御モードに設定する。
【0177】
ステップS52では、過充電状態又は過放電状態が発生した電池セルの端子電圧Vceに基づいて、1より小さい垂下係数CLを算出する。詳しくは、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回った場合、その電池セルの端子電圧Vceが低いほど垂下係数CLを低減し、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回った場合、その電池セルの端子電圧Vceが高いほど垂下係数CLを低減する。
【0178】
ステップS53では、指令電流生成部110において設定される中性点指令電流IM*の振幅を増大する。ここで、中性点指令電流IM*の振幅を増大することは、先の
図22において、正側の振幅Ia及び負側の振幅Ibを増大することに対応する。
【0179】
ステップS54では、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが接続経路60を介して電気的に接続される。
【0180】
ステップS55では、昇温制御における昇温能力を確保しつつ、電池セルの保護を行うべく垂下昇温PWM制御を行う。垂下昇温PWM制御では、電池セルが過放電状態であると判定した場合、放電制限値IMdに、ステップS52において算出した垂下係数CLを乗算する。これにより、放電制限値IMdが低減される。一方、電池セルが過充電状態であると判定した場合、充電制限値IMcに、ステップS52において算出した垂下係数CLを乗算する。これにより、充電制限値IMcが低減される。中性点指令電流IM*が放電制限値CL×IMd及び充電制限値CL×IMc以下となるように、最終指令電流IMa*を算出する。
【0181】
中性点電流IMrを最終指令電流IMa*に制御すべく、各スイッチQUH~QWLをオンオフする。これにより、スイッチングデバイス部31、巻線41及び接続経路60を介して、第1蓄電池21と第2蓄電池22との間に交流電流を流し、第1蓄電池21及び第2蓄電池22を昇温する。
【0182】
図25に、第1蓄電池21を構成する電池セルが過放電状態であると判定された場合における昇温制御の一例を示す。
図25において、(a)は中性点電流IMrの推移を示し、(b)は過放電状態であると判定された電池セルの端子電圧Vceの推移を示す。なお、実線において、垂下制御が実施された場合の中性点電流IMr及び電池セルの端子電圧Vceの推移を示し、破線において、垂下制御が実施されない場合の中性点電流IMr及び電池セルの端子電圧Vceの推移を示す。
図25では、便宜上、ステップS53の処理について記載を省略している。
【0183】
電池セルの端子電圧Vceが規定電圧範囲内である場合、垂下係数CLが1とされる。電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回ることにより、1より小さい垂下係数CLが算出される。これにより、中性点指令電流IM*の負側の絶対値が「CL×IMd」以下に制限されるため、中性点電流IMrの負側のピーク値が「CL×IMd」となる。なお、
図25には、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回る期間において、便宜上、中性点電流IMrが一定値の「CL×IMd」に制限される例を示す。ただし、実際には、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回る期間において、「CL×IMd」は、電池セルの端子電圧Vceに基づいて都度変更され得る。
【0184】
垂下制御が実施されることにより、中性点電流IMrの負側のピーク値が「CL×IMd」以下に制限されるため、電池セルの端子電圧Vceの変動が、垂下制御が実施されない場合よりも抑制される。これにより、電池セルが過放電状態となることを抑制することができる。
【0185】
図26に、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回る期間において、
図24のステップS53の処理により、中性点指令電流IM*の振幅が増大される場合の中性点電流IMrの推移を示す。
図26において、(a)は中性点指令電流IM*の振幅が増大されない場合の中性点電流IMrの推移の比較例であり、(b)は中性点指令電流IM*が増大される場合の中性点電流IMrの推移である。なお、実線は、中性点電流IMrの推移を示し、破線は、中性点指令電流IM*の推移を示す。
【0186】
中性点指令電流IM*が増大されない場合、中性点電流IMr及び中性点指令電流IM*の波形は
図26(a)に示す波形となる。この場合、中性点指令電流IM*の波形は、正側の振幅がIa1であり、負側の振幅はIb1である。
【0187】
中性点指令電流IM*が増大される場合、中性点電流IMr及び中性点指令電流IM*の波形は
図26(b)に示す波形となる。この場合、中性点指令電流IM*の正側の振幅Ia2は、
図26(a)の中性点指令電流IM*の正側の振幅Ia1よりも大きく、負側の振幅Ib2は、
図26(a)の中性点指令電流IM*の負側の振幅Ib1よりも大きい。
【0188】
負側の中性点電流IMrのピーク値は、垂下制御が実施されることにより「CL×IMd」を下回らない。しかし、
図26(b)の中性点指令電流IM*の振幅Ia2,Ib2は、
図26(a)の中性点指令電流IM*の振幅Ia1,Ib1よりも増大されるため、
図26(b)の中性点電流IMrの時間変化量は、
図26(a)の中性点電流IMrの時間変化量よりも大きくなる。このため、
図26(a)の負側の中性点電流IMrと時間軸とで囲まれる領域の面積は「F1」であるのに対し、
図26(b)の負側の中性点電流IMrと時間軸とで囲まれる領域の面積は「F1+F2」となる。中性点電流IMrと時間軸とで囲まれる領域の面積が大きいほど、組電池20を昇温する能力が大きくなる。
【0189】
なお、中性点指令電流IM*の正側の振幅が増大されることにより、
図26(b)の正側の中性点電流IMrと時間軸とで囲まれる領域の面積も、
図26(a)の正側の中性点電流IMrと時間軸とで囲まれる領域の面積よりも大きくされる。
【0190】
垂下制御において、中性点指令電流IM*の振幅が増大される処理が実施されることにより、中性点指令電流IM*の振幅が増大されない場合よりも昇温能力を向上することができる。
【0191】
以上説明した本実施形態について、その特徴は以下のように表される。
【0192】
第Aの構成は、
星形結線された巻線を有する回転電機と、
上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を有するインバータと、を備える電力変換装置において、
直列接続された第1蓄電部及び第2蓄電部において前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線の中性点とを電気的に接続する接続経路と、
前記接続経路に設けられ、オンされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に接続し、オフされることにより前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記中性点とを電気的に遮断する接続スイッチと、
前記接続スイッチをオンするか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記接続スイッチをオンすると判定された場合、前記接続スイッチをオンし、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御部と、
前記第1蓄電部の電圧及び前記第2蓄電部の端子電圧又は該端子電圧の相関値である電圧パラメータを取得する電圧取得部を備え、
前記判定部は、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流を流す制御要求があるか否かを判定し、前記制御要求があると判定した場合に前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、
前記判定部により前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記電圧取得部により取得された前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータが規定電圧範囲内であると判定した場合、前記接続スイッチをオンした状態において、前記インバータ、前記巻線及び前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように前記スイッチング制御を行い、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち最小値が前記規定電圧範囲の下限値を下回ると判定した場合、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち前記電圧パラメータが最小値となる過放電保護対象が放電する放電電流を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の電圧が前記規定電圧範囲内のときよりも小さくするように前記スイッチング制御を行い、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち最大値が前記規定電圧範囲の上限値を上回ると判定した場合、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち前記電圧パラメータが最大値となる過充電保護対象が充電する充電電流を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の電圧が前記規定電圧範囲内のときよりも小さくするように前記スイッチング制御を行う。
【0193】
第Bの構成では、第Aの構成において、
前記判定部は、前記制御要求として、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の昇温要求があるか否かを判定し、前記昇温要求があると判定した場合に前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、
前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータが前記規定電圧範囲内であると判定した場合の前記スイッチング制御として、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に交流電流を流し、
前記最小値が前記下限値を下回ると判定した場合の前記スイッチング制御として、前記過放電保護対象の放電電流のピーク値を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の前記電圧パラメータが前記規定電圧範囲内のときよりも小さくし、
前記最大値が前記上限値を上回ると判定した場合の前記スイッチング制御として、前記過充電保護対象の充電電流のピーク値を、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の前記電圧パラメータが前記規定電圧範囲内のときよりも小さくする。
【0194】
第Bの構成によれば、第1蓄電部及び第2蓄電部の間に交流電流が流れるように、スイッチング制御が行われる。第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回ると判定された場合、過放電保護対象の放電電流のピーク値が小さくされる。また、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定された場合、過充電保護対象の充電電流のピーク値が小さくされる。これにより、過放電保護対象及び過充電保護対象の電圧の変動を抑制することができる。その結果、第1蓄電部及び第2蓄電部に劣化が生じることを抑制することができる。
【0195】
第Cの構成では、第Bの構成において、
前記巻線の中性点に流れる電流を取得する電流取得部を備え、
前記制御部は、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータが前記規定電圧範囲内であると判定した場合、前記電流取得部により取得された電流を交流の指令電流に制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最小値が前記下限値を下回ると判定した場合、前記指令電流のうち前記過放電保護対象が放電する該指令電流である指令放電電流を、該指令放電電流の振幅よりも小さい放電制限値に制限し、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最大値が前記上限値を上回ると判定した場合、前記指令電流のうち前記過充電保護対象が充電する該指令電流である指令充電電流を、該指令充電電流の振幅よりも小さい充電制限値に制限する。
【0196】
第Cの構成によれば、電流取得部により取得された電流を指令電流に制御すべくスイッチング制御が行われる。上述した構成において、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回ると判定された場合、指令放電電流が指令放電電流の振幅よりも小さい値の放電制限値に制限される。また、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定された場合、指令充電電流が指令充電電流の振幅よりも小さい値の充電制限値に制限される。これにより、過放電保護対象の放電電流のピーク値及び過充電保護対象の充電電流のピーク値を的確に小さくすることができる。
【0197】
第Dの構成では、第Cの構成において、
前記制御部は、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最大値が前記上限値を上回ると判定した場合、前記過充電保護対象の前記電圧パラメータが高いほど前記充電制限値を小さくし、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最小値が前記下限値を下回ると判定した場合、前記過放電保護対象の前記電圧パラメータが低いほど前記放電制限値を小さくする。
【0198】
第Dの構成によれば、各蓄電部の電圧パラメータに基づいて、充電制限値及び放電制限値が設定される。これにより、第1蓄電部及び第2蓄電部の間で授受されるエネルギを確保しつつ、過放電保護対象の放電電流のピーク値及び過充電保護対象の充電電流のピーク値を的確に小さくすることができる。
【0199】
第Eの構成では、第Dの構成において、
前記制御部は、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最大値が前記上限値を上回ると判定した場合、前記指令充電電流の振幅を大きくし、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記最小値が前記下限値を下回ると判定した場合、前記指令放電電流の振幅を大きくする。
【0200】
指令電流が放電制限値及び充電制限値によって制限されることにより、第1蓄電部及び第2蓄電部の間に流れる電流が低減することが懸念される。この点、第Eの構成によれば、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回ると判定された場合、指令放電電流の振幅を大きくする。また、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定された場合、指令充電電流の振幅を大きくする。これにより、第1蓄電部及び第2蓄電部の間に流れる電流を増大することにより昇温能力を確保しつつ、各蓄電部に劣化が生じることを抑制することができる。
【0201】
第Fの構成では、第Aの構成において、
前記巻線の中性点に流れる電流を取得する電流取得部を備え、
前記判定部は、前記制御要求として、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部のうち、一方から他方へのエネルギの授受要求があるか否かを判定し、エネルギの授受要求があると判定した場合に、前記接続スイッチをオンすると判定し、
前記制御部は、
前記接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータが前記規定電圧範囲内であると判定した場合、前記電流取得部により取得された電流を直流の指令電流に制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回る、又は第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの前記電圧パラメータのうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定した場合、前記指令電流の大きさを、該指令電流の大きさよりも小さい直流制限値に制限する。
【0202】
第Fの構成によれば、制御部は、接続スイッチをオンすると判定されて、かつ、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータが規定電圧範囲内であると判定した場合、電流取得部により取得された電流を直流の指令電流に制御すべく、スイッチング制御を行う。制御部は、第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最小値が規定電圧範囲の下限値を下回ると判定した場合、又は第1蓄電部及び第2蓄電部それぞれの電圧パラメータのうち最大値が規定電圧範囲の上限値を上回ると判定した場合、指令電流の大きさを、指令電流の大きさよりも小さい直流制限値に制限する。これにより、第1蓄電部及び第2蓄電部のうち、一方から他方へエネルギを供給する際の電流の大きさが低減される。このため、第1蓄電部及び第2蓄電部の電圧が低下又は上昇する速度を低減することができる。その結果、第1蓄電部及び第2蓄電部が過放電状態又は過充電状態となることを抑制できる。
【0203】
以上説明した特徴を具体化した効果について説明する。
【0204】
・本実施形態では、組電池20の昇温要求があると判定された場合、接続スイッチ61をオンした状態において、スイッチングデバイス部31、巻線41及び接続経路60を介して第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に交流電流が流れるように、各スイッチQUH~QWLがオンオフされる。
【0205】
上述した構成において、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回ると判定された場合、中性点指令電流IM*のうち、過放電保護対象の電池セルの放電電流である中性点指令電流IM*の振幅が小さくされる。また、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回ると判定された場合、中性点指令電流IM*のうち、過充電保護対象の電池セルの充電電流である中性点指令電流IM*の振幅が小さくされる。これにより、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧範囲からはずれる事態の発生を抑制できる。その結果、第1蓄電池21及び第2蓄電池22に劣化が生じることを抑制することができる。
【0206】
・過放電保護対象の電池セル及び過充電保護対象の電池セルの端子電圧Vceに基づいて、垂下係数CLが設定され、指令放電電流及び指令充電電流の低減量が設定される。これにより、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間で授受される昇温用のエネルギを確保しつつ、放電電流のピーク値及び充電電流のピーク値を的確に小さくすることができる。
【0207】
・中性点指令電流IM*が放電制限値IMd及び充電制限値IMcによって制限されることにより、昇温能力が低下することが懸念される。この点、本実施形態では、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回ると判定された場合、及び組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回ると判定された場合、中性点指令電流IM*の振幅Ia,Ibが大きくされる。これにより、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に流れる電流を増大しつつ、各蓄電部に劣化が生じることを抑制することができる。その結果、昇温能力を確保しつつ、各蓄電部に劣化が生じることを抑制することができる。
【0208】
<第3実施形態の変形例>
・中性点指令電流IM*の設定方法は、
図22に示したものに限らない。1周期Tcにおいて中性点指令電流IM*のゼロクロスタイミングに対して、正の中性点指令電流IM*と負の中性点指令電流IM*とが点対称になる関係を満たしつつ、例えば、正の中性点指令電流IM*及び負の中性点指令電流IM*それぞれを台形波又は矩形波に設定してもよい。
【0209】
また、中性点指令電流IM*の設定方法としては、上記点対称の関係を満たすものに限らない。例えば、1周期Tcにおいて、中性点指令電流IM*の第1ゼロクロスタイミングC1から第2ゼロクロスタイミングC2までの期間と、中性点指令電流IM*の第2ゼロクロスタイミングC2から第3ゼロクロスタイミングC3までの期間とが異なるようにし、かつ、第1領域の面積S1と第2領域の面積S2とが等しくなるように中性点指令電流IM*を設定してもよい。この場合であっても、1周期Tcにおける第1蓄電池21及び第2蓄電池22の充放電電流の収支を合わせることはできる。
【0210】
・制御装置70は、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceに代えて、組電池20を構成する電池セルのSOCに基づいて、電池セルに過充電状態又は過放電状態が発生する否かを判定してもよい。具体的には、制御装置70は、各電池セルのSOCが規定SOC範囲内にあると判定した場合、組電池20を構成する電池セルに過放電状態及び過充電状態が生じていないと判定する。規定SOC範囲は、規定SOC下限値及び規定SOC上限値により定められている。制御装置70は、電池セルのSOCが規定SOC下限値を下回った場合、電池セルが過放電状態であると判定する。一方、制御装置70は、電池セルが規定SOC上限値を上回った場合、電池セルが過充電状態であると判定する。なお、電池セルのSOCが「電圧パラメータ」に相当する。
【0211】
ステップS47では、組電池20を構成する電池セルのSOCが規定SOC下限値を下回った場合、電池セルが過放電状態であると判定する。一方、組電池20を構成する電池セルのSOCが規定SOC上限値を上回った場合、電池セルが過充電状態であると判定する。これらの場合、ステップS51に進む。なお、電池セルのSOCは監視ユニット50から取得すればよい。
【0212】
・中性点指令電流IM*は直流電流であってもよい。この場合、制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の昇温制御ではなく、第1蓄電池21及び第2蓄電池22のうち一方から他方へとエネルギを供給する制御を行う。この制御は、先の
図24に示した制御に準じた制御となる。
【0213】
詳しくは、ステップS40において、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の昇温要求があるか否かを判定する代わりに、第1蓄電池21及び第2蓄電池22それぞれのエネルギの授受要求が有るか否かを判定する。エネルギの授受要求が有るか否かの判定方法は、第2実施形態と同様である。
【0214】
エネルギの授受要求があると判定した場合、ステップS47に進む。ステップS47では、組電池20を構成する電池セルそれぞれに過充電状態又は過放電状態が発生するか否かを判定する。
【0215】
ステップS47において電池セルに過充電状態及び過放電状態のいずれも発生しないと判定した場合、ステップS48に進む。ステップS48では、昇温制御モードの代わりに、エネルギ授受制御モードに設定される。ステップS49において、接続スイッチ61をオンする。
【0216】
ステップS50では、制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行うためにPWM制御を行う。詳しくは、接続スイッチ61をオンした状態において、スイッチングデバイス部31、巻線41及び接続経路60を介して、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間に電流が流れるように、各スイッチQUH~QWLをオンオフする。詳しくは、指令電流生成部110において、正の中性点指令電流IM*が設定された場合、第1蓄電池21から第2蓄電池22へとエネルギが供給され、負の中性点指令電流IM*が設定された場合、第2蓄電池22から第1蓄電池21へとエネルギが供給される。なお、等価回路及び機能ブロック図は昇温制御と同様である。
【0217】
ステップS47において、電池セルに過充電状態又は過放電状態が発生したと判定した場合、ステップS51に進む。ステップS51では、垂下昇温制御モードの代わりに、垂下エネルギ授受制御モードに設定される。
【0218】
ステップS52では、過充電状態又は過放電状態が発生した電池セルの端子電圧Vceに基づいて、垂下係数CLを算出する。詳しくは、垂下制御部111は、中性点指令電流IM*が交流電流の場合と同様に、組電池20を構成する電池セルの端子電圧Vceが規定電圧範囲内にあると判定した場合、垂下係数CLを1とする。一方、垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回る又は規定電圧上限値Vmaxを上回ると判定した場合、垂下係数CLを1より小さい値に低減する。
【0219】
垂下制御部111は、中性点指令電流IM*を制限する直流制限値IMdcに垂下係数CLを乗算し、最終的な直流制限値とする。垂下制御部111は、中性点指令電流IM*の絶対値を「CL×IMdc」以下に制限する。詳しくは、垂下制御部111は、中性点指令電流IM*の絶対値が「CL×IMdc」以下の場合、中性点指令電流IM*をそのまま最終指令電流IMa*として算出する。垂下制御部111は、中性点指令電流IM*の絶対値が「CL×IMdc」を上回る場合、中性点指令電流IM*の絶対値を「CL×IMdc」に制限して最終指令電流IMa*として算出する。
【0220】
ステップS54では、接続スイッチ61をオンする。ステップS55では、制御装置70は、第1蓄電池21及び第2蓄電池22の間でエネルギの授受を行うためにPWM制御を行う。なお、ステップS53の処理は行われない。
【0221】
・垂下係数CLの算出方法は、
図23に示したものに限られない。垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回った領域において、電池セルの端子電圧Vceが低いほど垂下係数CLが直線的に低減されるものに限らず、電池セルの端子電圧Vceが低いほど垂下係数CLが低減されるものとしてよい。また、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧上限値Vmaxを上回った領域において、電池セルの端子電圧Vceが高いほど垂下係数CLが直線的に低減されるものに限らず、電池セルの端子電圧Vceが高いほど垂下係数CLが低減されるものとしてよい。
【0222】
・垂下制御部111は、電池セルの端子電圧Vceに基づいて垂下係数CLを算出することに代えて、電池セルのSOCに基づいて垂下係数CLを算出してもよい。この場合、垂下制御部111は、電池セルのSOCが規定SOC範囲内にある場合、垂下係数CLを1とすればよい。垂下制御部111は、電池セルのSOCが規定SOC下限値を下回った場合、電池セルのSOCが小さいほど垂下係数CLを低減すればよい。垂下制御部111は、電池セルのSOCが規定SOC上限値を上回った場合、電池セルのSOCが大きいほど垂下係数CLを低減すればよい。
【0223】
・制限値に垂下係数CLが乗算されることに代えて、中性点指令電流IM*に垂下係数CLが乗算されてもよい。これにより、電池セルの端子電圧Vceが規定電圧下限値Vminを下回る又は規定電圧上限値Vmaxを上回る場合、中性点指令電流IM*が低減されるため、中性点指令電流IM*のピーク値を低減することができる。
【0224】
・ステップS53の処理は行われなくてもよい。
【0225】
・
図21の構成に代えて、
図27に示す構成によりスイッチング制御を行ってもよい。制御装置70は、フィードバック制御器113及びPWM生成部114に代えて、ヒステリシス制御器116を備えている。ヒステリシス制御器116は、中性点電流偏差ΔIMに基づいて、各上アームスイッチQUH~QWHのゲート信号を生成する。詳しくは、ヒステリシス制御器116は、中性点電流偏差ΔIMに基づいて、中性点指令電流IM*を基準として定められる±ΔIの幅の範囲内に中性点指令電流IM*が収まるように、各上アームスイッチQUH~QWHのゲート信号を生成する。
【0226】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0227】
・回転電機40及びスイッチングデバイス部31としては、5相又は7相等、3相以外のものであってもよい。
図28に、回転電機40及びスイッチングデバイス部31の相数が5相の場合における電力変換システム10を示す。
図28において、先の
図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0228】
図28では、スイッチングデバイス部31において、X相上,下アームスイッチQXH,QXL及び各ダイオードDXH,DXLが追加され、Y相上,下アームスイッチQYH,QYL及び各ダイオードDYH,DYLが追加されている。また、回転電機40において、X相巻線41XとY相巻線41Yとが追加されている。また、電力変換装置11において、X相導電部材32XとY相導電部材32Yとが追加されている。
【0229】
第1実施形態では、
図28に示した構成において、接続スイッチ61がオフされた状態では、スイッチ駆動制御においてU~Y相巻線41U~41Yのうちいずれか1つの相の巻線である同相巻線41aには、組電池20の端子電圧の分圧値が印加される。本実施形態では、巻線電圧の最大値Vmは4/5×Vdcとなる。このため、3相の場合の巻線電圧の最大値Vmよりも5相の場合の方が巻線電圧の最大値Vmが増大する。この場合においても、接続スイッチ61がオンされた状態においてスイッチ駆動制御が行われることにより、巻線電圧の最大値Vmを1/2×Vdcに低減することができる。
【0230】
第2実施形態では、電流が流れる巻線41の相数が3相よりも多い場合でも、電流が流れる巻線41の相数に応じて最大効率電力Pmaxが大きくなる。言い換えると、電流が流れる巻線41の相数が4相の場合の最大効率電力Pmax4は、電流が流れる巻線41の相数が3相の場合の最大効率電力Pmax3よりも大きい。また、電流が流れる巻線41の相数が5相の場合の最大効率電力Pmax5は、電流が流れる巻線41の相数が4相の場合の最大効率電力Pmax4よりも大きい。
【0231】
制御装置70は、要求電力Wreqが第4領域DP4の範囲内にある場合、4相の場合の最大効率電力Pmax4を指令電力W*として算出する。ここで、第4領域DP4とは、4相の場合の電力変換効率が、他の相数の場合の電力変換効率よりも高くなる授受電力の領域である。制御装置70は、要求電力Wreqが第5領域DP5の範囲内にある場合、5相の場合の最大効率電力Pmax5を指令電力W*として算出する。ここで、第5領域DP5とは、5相の場合の電力変換効率が、他の相数の場合の電力変換効率よりも高くなる授受電力の領域である。
【0232】
・第1蓄電池21を構成する電池セル数と、第2蓄電池22を構成するセル数とは同じでなくてもよい。
【0233】
・スイッチングデバイス部31を構成する上,下アームスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、高電位側端子はドレインとなり、低電位側端子はソースとなる。
【0234】
・接続スイッチ61としては、リレーに限らない。接続スイッチ61として、例えば、ソース同士が接続された一対のNチャネルMOSFETや、IGBTが用いられてもよい。
【0235】
・第2実施形態及び第3実施形態において、気圧センサ51及び温度センサ52は備えられていなくてもよい。
【0236】
・電力変換システム10の搭載先としては、車両に限られず、例えば航空機又は船舶等の移動体であってもよい。移動体が航空機の場合、回転電機40は航空機の飛行動力源となり、移動体が船舶の場合、回転電機40は船舶の航行動力源となる。また、電力変換システム10の搭載先としては、移動体に限られない。
【0237】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0238】
21,22…第1,第2蓄電池、30…インバータ、QUH~QYH…U~Y相上アームスイッチ、QUL~QYL…U~Y相下アームスイッチ、60…接続経路、61…接続スイッチ、70…制御装置。