(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094765
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】農産物選別用のトレイとそれを用いた農産物選別システム
(51)【国際特許分類】
B65D 85/34 20060101AFI20220620BHJP
B07C 5/34 20060101ALI20220620BHJP
B65B 25/04 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B65D85/34
B07C5/34
B65B25/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207844
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】508134337
【氏名又は名称】シブヤ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 剛政
(72)【発明者】
【氏名】田原 直行
(72)【発明者】
【氏名】藤木 良太
(72)【発明者】
【氏名】加納 裕基
【テーマコード(参考)】
3E028
3E096
3F079
【Fターム(参考)】
3E028AA02
3E028BA10
3E028CA02
3E028CA07
3E028EA01
3E028HA03
3E096AA01
3E096BA27
3E096BB04
3E096CA06
3E096DA04
3E096DC04
3E096EA03X
3E096FA09
3E096FA10
3E096FA11
3E096FA16
3E096FA27
3E096GA11
3F079AC21
3F079AC23
3F079CA31
3F079CA34
3F079CB24
3F079CC07
3F079CC13
3F079DA18
3F079EA08
(57)【要約】
【課題】上下両面を農産物が載置される保持面として使用可能な農産物選別用のトレイを提供し、該トレイを搬送する搬送手段の構造を簡素化する。
【解決手段】農産物選別用のトレイ3は、軸方向寸法が短い略円筒状に形成されている。このトレイ3は、胴部の一端(上面)に形成されて農産物2が載置される第1保持部3Aと、胴部の他端(下面)に形成されて農産物2が載置される第2保持部3Bと、両保持部3A、3Bの中央部に穿設された貫通孔3Cとを備えている。トレイ3は、第1保持部3A又は第2保持部3Bのいずれかが上方を向けた状態でそこに農産物2(トマト)を保持することができる。
トレイ3の上下両面を農産物2が載置される保持面として使用できるので、搬送手段4によってトレイ3を搬送する際に一方の保持面だけを常に上方に向けて搬送するという制約がなく、搬送手段4の構造を簡素化できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物が載置されるとともに、搬送手段によって搬送される農産物選別用のトレイにおいて、
胴部の一端に形成されて農産物が載置される第1保持部と、上記胴部の他端に形成されて農産物が載置される第2保持部と、さらに上記第1保持部と第2保持部とを連通する貫通孔とを備え、
上方を向けた状態の上記第1保持部または第2保持部に農産物が載置されることを特徴とする農産物選別用のトレイ。
【請求項2】
上記胴部、第1保持部および第2保持部は、発泡性樹脂によって一体的に成型されていることを特徴とする請求項1に記載の農産物選別用のトレイ。
【請求項3】
上記胴部は円筒状に形成されており、胴部の外周部の円周方向全域にわたって環状溝又は環状突起が形成されており、
上記環状溝及び環状突起は、上記胴部の軸方向の中央に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の農産物選別用のトレイ。
【請求項4】
農産物が載置された複数のトレイを搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送されるトレイ上の農産物の品質検査を行う品質検査装置と、上記品質検査装置による検査結果を基にして、トレイ上の農産物の等階級を判定する制御装置と、等階級が判定された農産物を載置したトレイを搬送手段から排出させる複数の排出装置と、該排出装置によって搬送手段から排出されたトレイを貯溜する複数のプールコンベヤと、それらプールコンベヤの位置で農産物が取り出されて空になったトレイを回収して上記搬送手段上に戻すトレイ回収手段とを備える農産物選別システムであって、
上記トレイ回収手段は、空のトレイを搬送する第1回収コンベヤと、上記各プールコンベヤの下方側に配置されるとともに、上記第1回収コンベヤに接続される複数の第2回収コンベヤと、プールコンベヤから落下する空のトレイを第2回収コンベヤ上へ案内する回収シュートとを備えており、
上記トレイとして請求項1から請求項3のいずれかに記載のトレイを用いることを特徴とする農産物選別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農産物選別用のトレイとそれを用いた農産物選別システムに関し、より詳しくは、上下両面を農産物が載置される保持面として用いることが可能な農産物選別用のトレイとそれを用いた農産物選別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農産物選別用のトレイとそれを用いた農産物選別装置として各種のものが知られている(例えば特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3071249号公報
【特許文献2】特許第4043130号公報
【特許文献3】特開2004-231233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の農産物選別用のトレイは、一方の面(上面)のみが農産物の保持に使用されるものであり、この農産物の保持面が常に上方を向くようにトレイを搬送しなければならないという制約がある。そのため、従来のトレイを用いた農産物選別装置においては、トレイを搬送するための搬送手段の構造が複雑化する、という問題があった(例えば、特許文献1の
図5参照)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、農産物が載置されるとともに、搬送手段によって搬送される農産物選別用のトレイにおいて、
胴部の一端に形成されて農産物が載置される第1保持部と、上記胴部の他端に形成されて農産物が載置される第2保持部と、さらに上記第1保持部と第2保持部とを連通する貫通孔とを備え、
上方を向けた状態の上記第1保持部または第2保持部に農産物が載置されることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1において、上記胴部、第1保持部および第2保持部は、発泡性樹脂によって一体的に成型されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の本発明は、上記請求項1において、上記胴部は円筒状に形成されており、胴部の外周部の円周方向全域にわたって環状溝又は環状突起が形成されており、
上記環状溝及び環状突起は、上記胴部の軸方向の中央に形成されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項4に記載の本発明は、農産物が載置された複数のトレイを搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送されるトレイ上の農産物の品質検査を行う品質検査装置と、上記品質検査装置による検査結果を基にして、トレイ上の農産物の等階級を判定する制御装置と、等階級が判定された農産物を載置したトレイを搬送手段から排出させる複数の排出装置と、該排出装置によって搬送手段から排出されたトレイを貯溜する複数のプールコンベヤと、それらプールコンベヤの位置で農産物が取り出されて空になったトレイを回収して上記搬送手段上に戻すトレイ回収手段とを備える農産物選別システムであって、
上記トレイ回収手段は、空のトレイを搬送する第1回収コンベヤと、上記各プールコンベヤの下方側に配置されるとともに、上記第1回収コンベヤに接続される複数の第2回収コンベヤと、プールコンベヤから落下する空のトレイを第2回収コンベヤ上へ案内する回収シュートとを備えており、
上記トレイとして請求項1から請求項3のいずれかに記載のトレイを用いたものである。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1の発明によれば、最終的に保持面として第1保持部と第2保持部のいずれか一方が上方に向いていれば良いため、トレイを搬送する際の制約が緩和されて、トレイを搬送する搬送手段の構造を簡素化することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、トレイは発泡樹脂を一体成型してなるので、構造が簡素で低価格のトレイを提供することができる。しかも、軽量かつ発泡樹脂であるため、トレイ同士の衝突音が従来に比べて低減されることになる。
また、請求項3に記載の発明によれば、第1保持部と第2保持部のどちらか一方を上方に向けた場合であっても、トレイ同士が接触した状態であっても、光電センサ等によって、トレイ同士の切れ目を正確に検出することができる。
さらに、請求項4に記載の発明によれば、トレイ回収手段は、搬送手段及びプールコンベヤの下方側に配置されているので、農産物選別システムの設置スペースが増大するのを抑制して、トレイを効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例を示す農産物選別システムの平面図。
【
図7】
図1におけるトレイ同士の位置関係を示す拡大図。
【
図8】
図1におけるトレイ同士の位置関係を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1において1は農産物選別システムであり、この農産物選別システム1は農産物2(例えばトマト)を載置した多数のトレイ3を搬送手段4によって搬送しながら各トレイ3上の農産物2の等階級を判定し、判定された等階級の違いに応じて農産物2を選別できるようになっている。
【0009】
農産物選別システム1の構成を説明する前に、先ず、本実施例で使用される農産物選別用のトレイ3の構成について説明する。
図5ないし
図6に示すように、トレイ3は発泡性樹脂を一体成型して製造されており、軸方向寸法(上下方向寸法)が短い略円筒状に形成されている。このトレイ3には、ICチップやバーコードは装着されておらず、搬送手段4によって搬送されるトレイ3がトレイ検出センサ6によって検出された時点で当該個別のトレイ3を制御装置15で認識し、その後、搬送手段4によるトレイ3の移動を追尾するようになっている(
図1参照)。
トレイ3は、胴部の一端(上面)側に形成された円形の凹部からなる第1保持部3Aと、胴部の他端(下面側)に形成された円形の凹部からなる第2保持部3Bと、上記第1保持部3Aと第2保持部3Bの中央部(胴部の軸心)に穿設された上下方向の貫通孔3Cと、胴部の外周部の円周方向全域にわたって形成された環状溝3Dとを備えている。
第1保持部3Aと第2保持部3Bは、上下逆さまの位置関係となっているが、それらの寸法と断面形状は同一に設定されている。これら第1保持部3A及び第2保持部3Bが、農産物2を載置する保持面となる。つまり、本実施例のトレイ3は、第1保持部3A又は第2保持部3Bが上方を向けた状態で搬送手段4上に供給されると、第1保持部3A及び第2保持部3Bに農産物2を保持できるようになっている。
貫通孔3Cは、後に詳述する内部品質検査機構5の光源5Aから照射される透過光L1を通過させるために設けられている(
図6参照)。
環状溝3Dは、トレイ3の胴部の上下方向の中央に形成されており、この環状溝3Dの深さは、その底部3Daが上記第1保持部3A、第2保持部3Bの外周縁よりも内方側に位置する深さとなっている。つまり、トレイ3の半径方向において、環状溝3Dは第1保持部3A及び第2保持部3Bとオーバーラップする深さで形成されている。
後に詳述するが、トレイ3は外周部に環状溝3Dが形成されていることにより、相前後する2つのトレイ3の外周部が当接した状態であっても、トレイ検出センサ6の検査光L2によって個々のトレイ3を正確に区別して検出できるようになっている(
図1、
図7、
図8参照)。
また、本実施例のトレイ3は発泡性樹脂によって全体が一体成型されているので、軽量で、かつ、僅かに弾性を備えている。そのため、トレイ3が搬送手段4によって搬送される際に相前後するトレイ3同士が当接しても、打音や騒音を小さく抑制することができる。また、トレイ3は軽量であるので手選別作業者W1や作業者W2、W3が手選別作業や取り出し作業等をする際にも作業がしやすくなっている(
図1参照)。また、トレイ3は発泡性樹脂からなるので、従来品よりも低価格で提供することができる。さらに、トレイ3はICチップ等の電子部品を有していないため、全体を洗浄水に浸漬するなどして、容易に洗浄することができる。
このように、本実施例のトレイ3は、軽量であって、かつ上下両面である第1保持部3Aと第2保持部3Bを、農産物2を載置可能な保持面として利用できることが特徴となっている。
【0010】
次に
図1ないし
図4により農産物選別システム1の構成を説明する。
農産物選別システム1は、農産物2を載置した各トレイ3を供給領域Aから検査領域Bさらに選別領域Cへと搬送する搬送手段4と、供給領域Aと検査領域Bとの境界部に近接させて配置されたトレイ検出センサ6及びトラッキング位置検出センサ7と、検査領域Bに配置された重量測定装置8及び内外部品質検査装置11と、選別領域Cの両脇に配置された複数組の排出装置12A、12B及びプールコンベヤ13A、13Bと、プールコンベヤ13A、13B上で農産物2が取り出されて空になったトレイ3を回収して再度搬送手段4の供給領域Aへ戻すトレイ回収手段14と(
図2ないし
図4参照)、これらの構成要素の作動を制御し、かつ各トレイ3上の農産物2の等階級を判定する制御装置15とを備えている。
【0011】
搬送手段4は、上流側から下流側にわたって直列に配置された手選別コンベヤCV1、重量測定用コンベヤCV2、中継コンベヤCV3、品質検査用コンベヤCV4及び選別コンベヤCV5によって構成されている。
手選別コンベヤCV1が最も上流側に位置しており、そこが供給領域Aとなっている。そして、供給領域Aの下流側となる重量測定用コンベヤCV2、中継コンベヤCV3および品質検査用コンベヤCV4の位置が検査領域Bとなっており、さらに、検査領域Bの隣接下流側となる選別コンベヤCV5の位置が選別領域Cとなっている。
各コンベヤCV1~CV5駆動用の各モータM1~M5の作動は制御装置15によって制御されるようになっている。また、プールコンベヤ13A、13B駆動用のモータM6、M7の作動も制御装置15によって制御されるようになっている。
各コンベヤCV1~CV5は基本的に同じ構成であり、制御装置15がモータM1~M5を同期して作動させると、各コンベヤCV1~CV5が所定速度で同一方向に走行されるので、供給領域Aから選別領域Cにわたってトレイ3を搬送することができる。
各コンベヤCV1~CV5駆動用のモータM1~M5にはロータリーエンコーダが取り付けられており、モータM1~M5が回転駆動される際にはロータリーエンコーダによる検出信号が制御装置15に入力されるようになっている。制御装置15は、各モータM1~M5のロータリーエンコーダから入力される検出信号を基にして、各コンベヤCV1~CV5によって搬送されているトレイ3の移動量と現在位置を認識できるようになっている。
【0012】
供給領域Aとなる手選別コンベヤCV1と並列に搬入領域Dが設けられており、そこにコンテナ搬入コンベヤ17が配置されている。コンテナ搬入コンベヤ17によって多数の農産物2(トマト)を収容した複数のコンテナ18(箱)が搬入領域Dに搬入されるようになっている。
供給領域Aと搬入領域Dとの間には手選別作業者W1が配置されており、搬送手段4の各コンベヤCV1~CV5が矢印方向に走行中において、手選別作業者W1は各コンテナ18から順次農産物2(トマト)を取り出してから供給領域Aの手選別コンベヤCV1上の空のトレイ3に載置するようになっている。
その際、手選別作業者W1は、コンテナ18から取り出す際に目視した農産物2の外観に応じて該農産物2を「優」、「秀」、「良」の3種の等級に瞬時に判定してトレイ3に載置するとともに、等級の違いに応じて、手選別コンベヤ4Aの幅方向中央、幅方向の一側、幅方向の他側のいずれかのトラッキング位置に農産物2を載置したトレイ3を振り分ける。具体的には、手選別作業者W1は、等級を「優」と判定した農産物2を載せたトレイ3を手選別コンベヤ4Aの幅方向中央に位置させ、等級を「秀」と判定した農産物2を載せたトレイ3を幅方向一側(左端)に位置させ、さらに、等級を「良」と判定した農産物2を載せたトレイ3を幅方向他側(右端)に位置させるようになっている。
このように、手選別作業者W1は、目視による判定に基づいて3種の等級の農産物2を載置したトレイ3を、手選別コンベヤCV1上における各トラッキング位置(中央と両側)に振り分けるようになっている。
【0013】
供給領域Aと検査領域Bとの境界部にはトレイ検出センサ6及びトラッキング位置検出センサ7が近接して配置されている。
前述したように、供給領域Aとなる手選別コンベヤCV1上の3箇所のトラッキング位置に農産物2を載置したトレイ3が振り分けられると、その後、手選別コンベヤCV1によって搬送されるトレイ3は、トレイ検出センサ6の検出位置を通過し、その後すぐにトラッキング位置検出センサ7の検出位置を通過する。
トレイ検出センサ6は、搬送方向の右側の投光部と搬送方向の左側の受光部とからなり、手選別コンベヤCV1上のトレイ3における環状溝3Dと同じ高さで投光部から受光部に向けて線状の検査光L2が照射されている。
この投光部から受光部に向けて照射されている検査光L2が、搬送中のトレイ3によって遮断されることでトレイ3を検出できるようになっている。
トラッキング位置検出センサ7は、その検査位置をトレイ3が通過すると、該トレイ3のトラッキング位置を検出し、検出結果を制御装置15に入力するようになっている。なお、トラッキング位置検出センサ7の構成は上記特許文献等により既に公知である。
このように、1つのトレイ3がトレイ検出センサ6及びトラッキング位置検出センサ7の位置を通過すると、トレイ検出センサ6によるトレイ3の検出信号が制御装置15に入力されるとともに、当該トレイ3のトラッキング位置がトラッキング位置検出センサ7によって検出されて制御装置15に入力されるようになっている。
これにより、制御装置15は、トレイ検出センサ6の検査位置を通過した個々のトレイ3を認識するとともに、各トレイ3上に載置された農産物3の等級の区別(優、秀、良)を当該トレイ3に紐づけて認識するようになっている。
ところで、トレイ検出センサ6の検査位置をトレイ3が通過する際に、相前後する2つのトレイ3の外周が接触している場合があるが、このような場合であっても、本実施例においては、相前後するトレイ3の切れ目を明確に検出することができる。
すなわち、
図7に示すように相前後するトレイ3、3が同じトラッキング位置であって一直線上に位置して、両者の外周部が当接した状態においては、両トレイ3、3の環状溝3Dは搬送方向において離隔しているので、環状溝3D内をトレイ検出センサ6の検査光L2が通過する。それによって、相前後するトレイ3、3の切れ目を検出し、制御装置15は個々のトレイ3を正確に認識することができる。
また、
図8に示すように、相前後するトレイ3、3のトラッキング位置が異なって相互に斜めに位置した状態で、両者の外周部が当接した時にも、両トレイ3、3の環状溝3Dは搬送方向において離隔しているので、環状溝3D内をトレイ検出センサ6の検査光L2が通過する。それによって、相前後するトレイ3、3の切れ目を検出し、制御装置15は個々のトレイ3を正確に認識することができる。
本実施例においては、このようにして、トレイ検出センサ6によって、その位置を通過する個々のトレイ3を正確に検出できるようになっている。
【0014】
次に、
図1に戻ると、トラッキング位置検出センサ7の隣接下流位置となる重量測定用コンベヤCV2上には、整列ガイド21及び重量測定装置8が順次、配置されている。
整列ガイド21は、搬送方向に沿った左右一対の部材からなり、トラッキング位置検出センサ7の検査位置をトレイ3が通過して重量測定用コンベヤCV2によって搬送されるのに伴って、相前後するトレイ3と接触してそれらを縦一列に整列するようになっている。
そのため、所定間隔を維持して縦一列となった状態のトレイ3が、重量測定装置8の位置を通過するようになっている。
重量測定装置8は、重量測定用コンベヤCV2がトレイ3を搬送中において、該トレイ3上の農産物2の重量を測定し、該測定した重量を当該トレイ3に紐付けして、制御装置15へ入力するようになっている。
重量測定用コンベヤCV2と品質検査用コンベヤCV4は中継コンベヤCV3によって接続されており、品質検査用コンベヤCV4の搬送過程に内外部品質検査装置11が配置されている。
内外部品質検査装置11は、トレイ3に載置された農産物2を上方からカメラで撮像して農産物2の傷などの外観を検査する図示しない外観検査機構と、トレイ3上に載置された農産物2に上方側から透過光L1を透過させることで、内部品質(糖度や酸度、腐敗)を検査する内部品質検査機構5とから構成されている(
図6参照)。
品質検査用コンベヤCV4によって搬送されるトレイ3が内外部品質検査装置11の位置を通過する際に、外観検査機構によってトレイ3上の農産物2の外観が検査されるとともに、内部品質検査機構5による内部品質検査が行われる。その際、
図6に示すように、上方の光源5Aから農産物2に向けて照射された透過光L1は、農産物2を透過してからトレイ3の貫通孔3Cを通過して、下方側の受光部によって検出されるようになっている。
このように検査領域Bを順次トレイ3上の農産物2が通過する際に、重量測定装置8によってトレイ3上の農産物2の重量が測定され、内外部品質検査装置11によってトレイ3上の農産物2の外観検査と内部品質検査が行われて、それらの測定および検査結果(糖度、酸度、腐敗等)は判定手段としての制御装置15へ入力されるようになっている。
すると、制御装置15は、既に紐づけられて入力されていた農産物2の3種の等級(優、秀、良)と、重量測定装置8による重量測定結果と、内外部品質検査装置11による検査結果を基にして、検査対象となった各トレイ3上の農産物2を9種類の等階級(イ~ホ)に判定するようになっている。
【0015】
次に、選別領域Cには、上記複数の等階級に応じて複数のプールコンベヤ13A、13Bが選別コンベヤCV5の横に順次、配置されている。複数のプールコンベヤ13A、13Bは選別コンベヤCV5と直交方向に配置されており、それらの載置面の高さは同一となっている。また、選別コンベヤCV5を挟んでプールコンベヤ13A、13Bの反対側には、それぞれ選別コンベヤCV5上からトレイ3を排出させて、プールコンベヤ13A、13B上に送り出す排出装置12A、12Bが配置されている。排出装置12A、12Bの作動及びプールコンベヤ13A、13B駆動用のモータM6、M7の作動は制御装置15によって制御されるようになっている。また、プールコンベヤ13A、13Bと選別コンベヤCV5との間には、搬送距離が短いローラコンベヤ22が配置されている(
図2参照)。
なお、
図1においては、2つ分の等階級に応じた2組の排出装置12A、12Bとプールコンベヤ13A、13Bのみを表示しているが、図示しない下流側には残りの7つの等階級に応じた7組の排出装置とプールコンベヤが配置されている。
プールコンベヤ13A、13Bは、並列に配置された2台のコンベヤからなり、それらは選別コンベヤCV5と同じ高さで、水平に配置されている。
等階級が判定された農産物2を載置したトレイ3が選別領域Cに搬入されて選別コンベヤCV5によって搬送される際に、当該農産物2の等階級に応じた位置の排出装置12A(12B……)が制御装置15によって作動されると、選別コンベヤCV5上から当該農産物2を載せたトレイ3が排出されてローラコンベヤ22を経由して走行中のプールコンベヤ13A(13B……)上に押し出されて、そこに貯溜されるようになっている。
各プールコンベヤ13A、13Bの位置には、作業者W2、W3が配置されており、プールコンベヤ13A(13B)に貯溜されたトレイ3から作業者W2、W3が農産物2を取り出して、コンテナ23(包装箱)に箱詰めするようになっている。
このようにして、農産物選別システム1は、トレイ3に載置された農産物2を搬送手段4で搬送しながら9つの等階級に判定し、その後、等階級の違いに応じて選別するようになっている。
【0016】
さらに、本実施例は、プールコンベヤ13A、13Bの位置で農産物2が取り出されて空になったトレイ3を上記供給領域Aの手選別コンベヤCV1上に戻すトレイ回収手段14が設けられている。
すなわち、
図2ないし
図4に示すように、トレイ回収手段14は、搬送手段4(各コンベヤCV1~CV5)の下方側に配置された第1回収コンベヤ51と、各プールコンベヤ13A、13Bの下方側にそれぞれ配置された複数の第2回収コンベヤ52と、各プールコンベヤ13A、13B毎に設けられて、それらの搬送端から落下する空のトレイ3を第2回収コンベヤ52へ載置させる回収シュート53と、第1回収コンベヤ51の搬送端から上記供給領域Aの手選別コンベヤCV1上に戻す反転供給装置54とを備えている。
第1回収コンベヤ51は、搬送手段4を構成する各コンベヤCV1~CV5の下方側に水平に配置されており、搬送手段4の各コンベヤCV1~CV5が駆動される際には、第1回収コンベヤ51も搬送手段4の搬送方向と反対方向に走行されるようになっている。
第2回収コンベヤ52は、プールコンベヤ13A、13Bとローラコンベヤ22の下方側にわたって水平に配置されており、第2回収コンベヤ52の載置面の高さは、第1回収コンベヤ51の載置面と同じ高さに設定されている。
回収シュート53は、プールコンベヤ13A、13Bの搬送端の隣接外方位置から第2回収コンベヤ52の載置面の上方にわたって配置されている。プールコンベヤ13A、13B上において、農産物2が取り出されて空になったトレイ3は、プールコンベヤ13A、13Bの搬送端から落下すると、回収シュート53上に落下した後に反転されてから第2回収コンベヤ52上に載置されるようになっている。
第2回収コンベヤ52は、第1回収コンベヤ51が駆動される際には同期して駆動されるようになっている。そのため、回収シュート53により第2回収コンベヤ52に載置された空のトレイ3は、第2回収コンベヤ52によって搬送されて、第1回収コンベヤ51上に移送されるようになっている。
反転供給装置54は、所定間隔を維持して配置された左右一対の無端状ベルト55A、55Bを備えており、これら無端状ベルト55A、55Bには等ピッチで、中空丸棒状をしたゴム製の挟持部材56が多数取り付けられている。
無端状ベルト55A、55Bは、側面からみるとC字状に配置されており、その下端部は、第1回収コンベヤ51の下流端の載置面上に位置し、上端部は、手選別コンベヤCV1の載置面上に位置している。
左右の無端状ベルト55A、55Bが同期して同一方向に循環走行されることにより、それらの挟持部材56によって、空のトレイ3が両側から挟持されるようになっている(
図4参照)。そして、左右の無端状ベルト55A、55Bが上方側に向けて移動されることで、空のトレイ3が反転されてから手選別コンベヤCV1上に供給されるようになっている。
トレイ回収手段14は、以上のようにして、プールコンベヤ13A、13Bから反転して落下する空のトレイ3を回収し、その後、反転させたトレイ3を供給領域Aの手選別コンベヤCV1上にさらに反転させて戻すようになっている。
【0017】
以上の構成において、搬送手段4及びトレイ回収手段14が作動されている状態において、手選別作業者W1により供給領域Aの搬送手段4上に農産物2が載置されたトレイ3が供給される。その際、手選別作業者W1の判定によって各トレイ3は搬送手段4上の3種のトラッキング位置に振り分けられる。その後、各トレイ3は、トレイ検出センサ6によって検出されるとともに、トラッキング位置検出センサ7によって搬送コンベヤ4上のトラッキング位置を検出される。
その後、農産物2を載置したトレイ3は、整列ガイド21によって縦一列となって検査領域Bに搬入されるので、重量測定装置8による重量測定と内外部品質検査装置11によって外観および内部品質検査が行われる。この検査領域Bでの品質検査の結果と先のトラッキング位置検出センサ7による検出結果を基にして、制御装置15は各トレイ3上の農産物2を9種の等階級に判定する。
なお、本実施例では、トラッキング位置検出センサ7、重量測定装置8及び内外部品質検査装置11の検査結果を基にして、制御装置15が農産物2の等階級を判定しているが、農産物2の品質検査装置としては、トラッキング位置検出センサ7、重量測定装置8及び内外部品質検査装置11の少なくともいずれか一つを含むものであってもよい。
その後、各トレイ3上の農産物2が選別領域Cに搬入されると、判定された等階級の違いに応じて各プールコンベヤ13A、13B上に排出装置12A、12Bによって押し出される。そして、プールコンベヤ13A、13B上に貯溜された複数のトレイ3上の農産物2は、作業者W2、M3によって各プールコンベヤ13A、13Bのトレイ3から取り出されてコンテナ23に箱詰めされるようになっている。
他方、
図2ないし
図4に示すように、プールコンベヤ13A、13B上において農産物2が取り出されて空になったトレイ3は、各プールコンベヤ13A、13Bの搬送端から落下して回収シュート53によって反転されてから第2回収コンベヤ52上に載置される(
図2参照)。その後、第2回収コンベヤ52上の空のトレイ3は、第1回収コンベヤ51上に移送されてから該第1回収コンベヤ51によって搬送手段4の上流端となる供給領域Aの下方側まで搬送される。その後、空のトレイ3は、反転供給装置54によって反転されてから再度、供給領域Aの搬送手段4上(手選別コンベヤCV1)に戻されるようになっている。
【0018】
以上のように本実施例の農産物選別用のトレイ3は、使用される際に第1保持部3A、第2保持部3Bのいずれかが上方に向いていれば良いため、トレイ3を搬送する際の制約が緩和され、搬送手段4の構造を簡素化することができる。そして、トレイ回収手段14を搬送手段4及びプールコンベヤ13A、13Bの下方側に配置することができる。そのため、農産物選別システム1全体の設置スペースが拡大するのを抑制して、トレイ3を効率的に回収することができる。
また、トレイ3は発泡樹脂を一体成型して製造されているため、構造が簡素で低価格のトレイ3を提供することができる。また、軽量かつ発泡樹脂であるため、トレイ3同士の衝突音を低減させることができる。
加えて、トレイ3はICチップ等の電子部品を有していないため、全体を洗浄水に浸漬するなどして、容易に洗浄することができる。
さらに、本実施例のトレイ3には、外周部に環状溝3Dが形成されていることにより、使用時に第1保持部3A、第2保持部3Bのどちらか一方を上方に向けた場合であっても、相前後するトレイ3同士が接触した状態であっても、トレイ検出センサ6によってトレイ3同士の切れ目を正確に検出して、制御装置15によって個別のトレイ3を正確に認識することができる。
【0019】
次に
図9は本発明の他の実施例としてのトレイ3を示したものであり、この実施例においては、上記実施例の環状溝3Dの代わりにトレイ3の外周部に円周方向に連続する環状突起3Fを形成したものである。その他の構成は上記第1の実施例と同じであり、対応する部分には同じ番号を付している。
この
図9に示すトレイ3においては、相前後するトレイ3が接触すると、それらの環状突起3F同士が当接することになり、環状突起3Fの隣接上下位置の空間をトレイ検出センサ6の検査光L2が通過することで、当接したトレイ3同士の切れ目を検出することができる。
本実施例のトレイ3の第1保持部3Aおよび第2保持部3Bは、略椀型形状に形成されているが、円錐台形状やその他の形状であっても良く、第1保持部3Aと第2保持部3Bとが異なる形状であっても良い。
また、本実施例の反転供給装置54は省略しても良く、その場合、第1回収コンベヤ51の終端部近傍を上方に傾斜させながら折り返し、その終端を手選別コンベヤCV1の始端に接続すれば良い。したがって、この場合には、トレイ3は第1回収コンベヤ51で搬送される姿勢のまま、反転されることなく、手選別コンベヤCV1に供給される。
【0020】
なお、上記実施例においては、トレイ3に載置する農産物2としてトマトを想定しているが、農産物としてはその他にリンゴやナシでもよく、またキュウリやナスであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…農産物選別システム 2…農産物(トマト)
3…農産物選別用のトレイ 3A…第1保持部
3B…第2保持部 3C…貫通孔
3D…環状溝 4…搬送手段
7…トラッキング位置検出センサ 8…重量測定装置
11…内外部品質検査装置 12A、12B…排出装置
13A、13B…プールコンベヤ 14…トレイ回収手段
15…制御装置 51…第1回収コンベヤ
52…第2回収コンベヤ 53…回収シュート