(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094856
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】プレス機械のブレークスルー緩衝装置
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20220620BHJP
B30B 15/06 20060101ALI20220620BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B30B15/00 A
B30B15/06 B
B21D28/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207977
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】720001174
【氏名又は名称】末澤 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】末澤 丈夫
【テーマコード(参考)】
4E048
4E088
【Fターム(参考)】
4E048AD03
4E088DA12
4E088EA05
4E088GA07
(57)【要約】
【課題】金型交換毎にブレークスルー緩衝油圧シリンダーのピストン高さ調整や、ブレークスルー発生時のスライド位置検出も無しでブレークスルー緩衝を行い、しかもブレークスルー緩衝後のスライドへの反動も無く、連続作動による油温上昇も無いブレークスルー緩衝装置を開発する。
【解決手段】(1)スライドを下から支える油圧バランスシリンダーを、油圧緩衝シリンダーにして、スライドストロークの、どの位置でもブレークスルーに対応させる。
(2)プレスフレームの歪み量を計測して、歪み量からブレークスルーの発生時期を検知して、緩衝装置を作動させる。
(3)電磁式流量制御弁等と逆止弁で、油圧の流れと流量を制御して、スライドへの反動を抑える。
(4)油圧バランスシリンダーの圧油を、空・油圧ブースターに伝播して、空圧側でブレークスルーエネルギーを吸収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のスライドを下から上向きに支える、油圧バランスシリンダーを空・油圧コンバーター又は空・油圧ブースターで作動させて、打ち抜き加工時のプレスフレームの歪量を計測する事で、素材の破断時期を検知して、電磁式制御弁等で油圧バランスシリンダーを操作して、油圧バランスシリンダーを油圧緩衝シリンダーとして、ブレークスルーのエネルギーを受けて、油圧バランスシリンダー内に発生した高圧油を、別に設けた高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に排出して、空圧側を圧縮する事で、ブレークスルーエネルギーによる衝撃振動の吸収緩和を行うブレークスルー緩衝装置
【請求項2】
ブレークスルーエネルギーにより発生した油圧バランスシリンダー内の高圧油を、逆止弁を通して高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に流入させて、ブレークスルー終了後の高圧用の空・油圧ブースター内の高圧油が、油圧バランスシリンダーへ逆流するのを逆止弁で止めておいて、高圧用の空・油圧ブースター内の高圧油を流量調整しながらショック無く、油圧バランスシリンダー回路に戻し、加工を終えて上昇行程中のスライドに2段上げ状態等を起こすことなく、プレス機械を作動させる事が出来る請求項1記載のブレークスルー緩衝装置
【請求項3】
打ち抜き加工毎の荷重によるプレスフレームの歪量を基に、破断時期を検出すると共に、破談の進行状態に合わして変化するプレスフレームの歪量を基にして、電磁式制御弁等の切り換え時期と流量調整をして、破断時に加工素材からの反抗推力に代わって、油圧バランスシリンダーがプレス荷重を受け持てるように、油圧バランスシリンダー内圧を調整しながら、ブレークスルーエネルギーを吸収緩和できるようにした請求項1記載のブレークスルー緩衝装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス機械で打ち抜き加工を行なった際に起こる、ブレークスルーによる衝撃振動を吸収緩和するブレークスルー緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス機械で打ち抜き加工を行なう際に発生するブレークスルーによる衝撃振動を軽減する為に、油圧を用いて行なう従来技術の例として特開平10-58200号の提案がある。
ボルスター側に緩衝油圧シリンダーを設けて、打ち抜き加工時のみスライドが緩衝油圧シリンダーのピストンを押し圧作動して、油圧力でブレークスルーエネルギーを吸収緩和出来るように、緩衝油圧シリンダー内のピストン高さを適正な位置に調整して、発生した油圧を空・油圧コンバーター的なアキュムレータに送り込んで、ブレークスルーエネルギーを吸収する形式のものである。
【0003】
緩衝油圧シリンダーのピストン高さを調整しなくても良い方法として、スライドストロークと同等のストローク長さを持った緩衝油圧シリンダーをボルスター側に設けて、緩衝ピストンをスライド側に取付けて、スライドのストロークに伴って緩衝ピストンを作動させる機構で、ブレークスルー発生時のみ、緩衝油圧シリンダー内の油圧を絞り弁またはリリーフバルブ等を通して排出する事で、ブレークスルーエネルギーを吸収する形式の例として、特開2004-237341号公報の提案がある。
【0004】
油圧(液圧)ではなく圧縮ガス等を、なお圧縮する事でブレークスルーエネルギーを吸収しようとする形式の例として、特開平09-253898(特許3792292)の提案があるが、本公報提案では上型が素材ブランクに接触する直前から、装置を作動するように調整して、圧縮ガスを、なお圧縮しながら打ち抜き加工を進めて行き、その反力が最高になったところで、ブレークスルーに対応出来るようにタイミングを調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-058200号公報 特開2004-237341号公報 特開平09-253898(特許3792292)号公報
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開平10-058200号公報提案では緩衝油圧シリンダー内の緩衝ピストンの高さ位置を調整するのに、上昇用と下降用の一定吐出量の油圧プランジャーポンプを設けて、夫々を上昇時と下降時に別々に作動させて、緩衝ピストンを各プランジャーポンプの作動量に応じて上下動させる機構になっているものだが、複数の油圧ジャッキを低圧駆動する場合には、各々の油圧ジャッキの戻しバネのバネ定数のバラツキやパッキン抵抗の若干の差でも、抵抗値の少ない方から作動していくので、一斉に同調作動させる事が出来なくて、緩衝ピストンの高さをストローク途中で一様に揃える事は困難なものであり、また上昇時と同じように下降時に於いても、戻りバネの強弱やパッキン抵抗および管路抵抗の差等の抵抗値の少ない方から作動するものであるから、戻りの緩衝ピストン位置も不揃いで一様の高さにはならないものである。
【0008】
特開2004-237341号公報提案では緩衝(ピストン)ラムを作動させる為の油圧源を持たないで、連接されたスライドの引き上げ力で、緩衝(ピストン)ラムが引き上げられた時の緩衝油圧シリンダー内に発生する負圧で、パイロットチェックバルブを通して、緩衝油圧シリンダー内に油タンクの作動油を吸入する機構になっているので、高速作動時に於いて吸い込み不良を起こせばバキューム状態になり、緩衝油圧シリンダー内に作動油不足を起こして、緩衝(ピストン)ラムに空突き作動を起こさせる事になるので、スライドと連動して緩衝油圧シリンダー内には作動油が充分に流入出来るようにしなければならないものであり、ブレークスルー発生時には検出器からの信号でパイロットチェックバルブを閉じて、ブレークスルーエネルギーで緩衝油圧シリンダー内に発生した高圧油を流量制御弁とリリーフバルブを通して、油タンクへ逃がす事でブレークスルーエネルギーを吸収するものであるが、絞り弁やリリーフバルブ等を通して圧油を排出するので、連続打ち抜き加工等の連続作動では圧油の流動摩擦により油温の上昇が起こるものである。
【0009】
特開平09-253898(特許3792292)号公報提案の機構では、ブレークスルーが終わった後は圧縮ガスの反発力が、上昇復帰するスライドを強く押し上げる事になり、ウレタンゴムやスプリング等をストリッパーとして用いた場合と同様に反発力として作用して、スライドに対して2段上げ状態を起こす事になるものと思われるものであり、いずれにしても作業前に作動位置を調整しなければならないのは前期公報提案のものと同じである。
以上のような従来の欠点を鑑みて、ブレークスルーエネルギーを油圧力で吸収する為に、金型交換毎に緩衝油圧シリンダーの緩衝ピストン等の高さ調整を行なうことも無く、ブレークスルー発生時のスライド位置を確認する為の検出器の位置調整等の作業を行なう必要も無く、ブレークスルー終了後にブレークスルーエネルギーを蓄えた緩衝装置により、スライドが押し上げられて、2段上げ状態を起こす事も無く、連続打ち抜き加工による油温上昇も抑えて、打ち抜き加工時のプレス機械の振動騒音を緩和する、ブレークスルー緩衝装置及び、その制御方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成する為に請求項1記載の発明は、プレス機械のスライドを支える油圧バランスシリンダーをベッド側に設けて、下から上向きにスライドを支える形式として、従来のバランスシリンダーは空気圧のみで操作されてきたが、空・油圧コンバーター或いは空・油圧ブースター等により、空気圧を油圧に変換された油圧力で、油圧バランスシリンダーを操作して、常にスライドの動きに追随出来る機構にしたものである。
プレス機械のブレークスルー現象は、荷重によるプレスフレームの弾性変形による歪エネルギーが素材の破断により、一気に放出されて起こるものであるから、素材の破断時期を加工駆動中のクランクシャフトの回転位置やスライド位置等から検出するのではなく、プレスフレームに取り付けた歪ゲージ等で、荷重によるプレスフレームの歪み量を計測して、その数値を基にして可変ショックレス機能を持つ電磁比例流量制御弁等で、油圧バランスシリンダーの操作を行うものであり、素材が破断する寸前に油圧バランスシリンダー内の油圧を電磁比例流量制御弁等で固定して、下降するスライドの動きを油圧バランスシリンダーの油圧力で制動するものであり、ブレークスルーのエネルギーによって、油圧バランスシリンダー内に発生した高圧油を、別に設けた高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に流入させることでブレークスルーのエネルギーを吸収させるものである。
ブレークスルーエネルギーの吸収は、高圧用の空・油圧ブースターの空圧側で受けるものであって、油圧側はブレークスルーエネルギーを油圧バランスシリンダーから高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に伝播させるだけのものであるから、リリーフバルブ等から圧油がリークする事による油温の上昇は起こらないものであり、油圧バランスシリンダーを緩衝装置の緩衝シリンダーとして用いるものであるから、プレス機械のスライドストローク範囲内の、どこでも行なえるものであり、金型を変える毎に緩衝油圧シリンダー等の作動位置を調整する必要はないものである。
【0011】
請求項2の発明は油圧バランスシリンダーから高圧用の空・油圧ブースターの油圧側への回路に逆止弁を設けて、ブレークスルー発生時に於いて、電磁比例流量制御弁等で油圧バランスシリンダーの油圧回路を閉じた時に、油圧バランスシリンダー内に発生した高圧油を、逆止弁を通して高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に流入させるものであり、戻りは逆止弁に阻止されるので、高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に高圧油が圧力エネルギーとして蓄えられていても、ブレークスルー緩衝後の油圧バランスシリンダーの低圧油圧回路に高圧油が流入して、ウレタンゴムやスプリング等のようにスライドに反発力が作用しないようにショックレス機能を持つ電磁比例流量制御弁等により、切換え時期と流量調整が行われて、高圧用の空・油圧ブースター内の高圧油は、上昇作動中の油圧バランスシリンダーの油圧回路に、サージ圧を消してショック無く戻される事になるものであり、、上昇行程中のスライドがサージ圧で突き上げられて、2段上げ状態を起こす事が無いようにしたものである。
【0012】
請求項3の発明は、打ち抜き加工はポンチが素材に接触したところから、打ち抜き工程が始まって、ポンチとダイスとの間で加工素材の部分的な圧縮が始まり、さらに加工が進めばポンチ及びダイスは加工素材に食い込み、楔作用により材料の破壊強度を超える時に、ポンチとダイスの角から割れが生じて、夫々の割れが進行して繋がった時が破断であるが、割れの生じ始めが荷重の最大ピーク時であり、打ち抜き荷重は割れ発生時をピークにして、割れの進行に合わせて発生初期は緩やかに降下して、中期以降は急激に落ちていくものであるから、加圧量を示す歪ゲージからの電気信号も、そのような数値を示すものとなり、油圧バランスシリンダーを操作する電磁比例流量制御弁を制御するパワー増幅器に、指令信号を与える設定器の電子回路を、割れ発生時の加圧力ピーク直後の、荷重が下がり始めた時の歪ゲージの電気信号を基にして、電磁比例流量制御弁が流量調整を始めるように設定しておけば、打ち抜き加工毎のプレスフレームの歪み量の最大値から、素材の破断時期を検知して、電磁比例流量制御弁を操作する事が出来るので、金型が変わって素材の破断位置が、どう変わろうとも、ブレークスルー発生時のスライドが,どの位置にあろうとも関係なくスライドストローク範囲内の、どこでも油圧バランスシリンダーの油圧回路を閉じて、ブレークスルーに対応させる事が出来るものであり、同じ金型であっても素材の材質のばらつき等や、他の条件差で加圧量や破断時期に多少の差は起こるもので、ブレークスルーの発生時期を一定とは出来ないものであるが、プレスサイクル毎に歪ゲージの電気信号で破断時期を検知して、動作するものであるから、この変化にも対応させる事が出来るものである。
素材の破断ピーク時を基に電磁比例流量制御弁等の操作を始めれば、油圧バランスシリンダーの油圧回路の流量調整をおこないながら、スライドは加工素材と油圧バランスシリンダーの両方を押し圧して破断を推し進めていくことになり、この時に割れの進行状態にある、加工素材からのスライドへの反抗推力は小さくなっていくものであり、電磁比例流量制御弁等で油圧バランスシリンダー内の作動油の排出量を調整する事で、直ぐには油圧バランスシリンダー内の油圧が上昇せず、スライドの下降を直ちに固定する事が出来ないものであり、この圧縮ロスを起こさせている間にスライドの下降が進み、加工素材を押し切って破断を終了させる事になるものであるが、割れが進行してスライドへの加工素材からの反抗推力が減少するのと逆行するするように、電磁比例流量制御弁等での流量調整が進行して、油圧バランスシリンダー内の油圧が上昇する事で、加工素材に代わって油圧バランスシリンダーがスライドの推力を肩代わりして受け持つものであり、破断後に荷重で歪んでいたプレスフレームの歪が一気に収縮して起こる、ブレークスルー現象によるスライドの突出するエネルギーを油圧バランスシリンダーの油圧力で受け止める事になるものであり、加工素材の破断開始から終了までの進行に応じて変動する歪ゲージの電気信号に合わせて、電磁比例流量制御弁等で流量調整する事で、加工素材から受けていた反抗推力を油圧バランスシリンダーの油圧力で受け止める為の切換え作業が脈動なく連続して行えるものであり、素材の材質のバラツキや他の条件差により破断状態に変動が有っても対応が出来るものであり、油圧バランスシリンダー内でオイルハンマー現象を起こす事無く、配管やプレス機械の振動騒音を低減できるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は打ち抜き加工時に於ける、プレス機械のブレークスルーエネルギーを油圧力で受ける方式を、スライドを下から上向きに支える、油圧バランスシリンダーの油圧力で常備したことで、金型交換の度に油圧ジャッキの配備や調整をする必要が無くなり、ブレークスルーの発生時期をクランクシャフトやスライドの位置関係から検出するのではなく、歪ゲージ等を用いて、荷重によるプレスフレームの歪量を基に行うので、金型形状寸法等に合わして、ブレークスルー検出器の位置調整を行う作業も無くなり、金型交換作業が簡潔に行なえるものである。
【0014】
空・油圧ブースター等を用いて、油圧系統の圧油を制御しているので、油圧ポンプユニット等を必要とせず、工場エアーラインで操作が出来るものであり、油圧の圧力制御を空圧側で行なうと共に、ブレークスルーエネルギーを空圧側で吸収する事で、油温の上昇を抑える事が出来て、連続作動が出来るものであり、油圧回路側に電磁比例流量制御弁等と逆止弁を設けて圧油の流れを制御するので、ブレークスルー発生時の油圧バランスシリンダー内でオイルハンマー現象を起こす事無く、高圧用の空・油圧ブースターの油圧側に圧油を流入させる事が出来るものであり、逆に高圧用の空・油圧ブースターから、高圧油を油圧バランスシリンダー側に戻す場合にも、逆止弁で逆流を防止して、電磁比例流量制御弁等で高圧油を絞りながら油圧回路内にサージ圧を発生させる事無く、ショックレスな切換制御する事が出来るので、ウレタンゴムやスプリング等及び圧縮ガスを用いた場合のように、スライドを強く押し上げて2段上げ状態を起こす事は無く、ブレークスルーの振動騒音を緩衝するだけでなく、プレス機械にスムーズなプレス作動を行わせる事が出来るものである。
【0015】
打ち抜き剪断加工は同じ金型でも、金型の摩耗や素材の品質等が変わるごとに、荷重や破断時期も変わるものであるが、金型や加工素材が変わろうとも、打ち抜き剪断荷重曲線は略似たような曲線を描くものであり、荷重量ピーク直後の、荷重が下がり始めた時が、電磁比例流量制御弁等の作動始めとして制御するものであるから、加工毎の歪ゲージから検出されたピーク荷重と荷重変動の電気信号を基にして、金型状態や素材の変化を荷重の変化として捉えて、その都度、電磁比例流量制御弁等を操作するものであるから、金型や素材の状態とは関係なく、ストローク毎のブレークスルー制御が行なえるものであり、打ち抜き加工の加工素材の反抗推力が破断の進行により変動する状態から、油圧バランスシリンダーの油圧力でブレークスルーエネルギーを受け持つまでの過渡期を、破断進行中の歪ゲージの電気信号を基に電磁比例流量制御弁等を操作して、作動開始時間と流量調整をすることで、ブレークスルー発生時の加工素材から油圧バランスシリンダーへの荷重の移動がスムーズに行なう事が出来るものであり、作動時間に幅を持たせるので、加工素材の品質のバラツキ等により破断時期に多少の変動が有っても対応させる事が出来るものであり、加工ストローク毎の歪ゲージの電気信号を基にブレークスルー対応の操作が自動制御出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1 に示すように、打ち抜き加工用のプレス機械(クランクプレス等)のベッド9側に、油圧バランスシリンダー11a、11bを設けて、クランクシャフト1の回転により摺動するスライド7に、油圧バランスシリンダー11a、11bのピストンロッド10a,10bを連接して、ベッド9側から上向きにスライド7を支える構造を基本実施形態とする
【0018】
油圧バランスシリンダー11a、11b内の油圧は、可変ショックレス機能を有する電磁比例流量制御弁14を通して、低圧用の空・油圧ブースター33と高圧用の空・油圧ブースター16に導通しており、スライド7の動きに連動したピストンロッド10a、10bにより、油圧バランスシリンダー11a、11b内の圧油は、低圧用の空・油圧ブースター33に流出入を繰り返すものである。
【0019】
油圧バランスシリンダー11a、11bへの流出入油量を少なくして、配管機能部品等を小さくすると共に、ベッド9側の限られた空間に油圧バランスシリンダー11a、11bを配備する為に、油圧バランスシリンダー11a、11bは小径シリンダーを用いて、スライド7や金型等との重量平衡を行なう為に、低圧用の空・油圧ブースター33で増圧して、油圧バランスシリンダー11a、11bに空気圧よりも高圧の油圧を供給している。
【0020】
通常のプレス作動中は、電磁比例方向・流量制御弁14のソレノイド13は通電されているが、打ち抜き下降時に於いて、加圧力によるプレスフレームの歪量をプレスフレーム(図示省略)に取り付けた、歪ゲージ8からの電気信号により、打ち抜き加工中の加圧力の変化を計測して、加圧力のピーク直後の加圧力が降下始めた時を、素材の破断開始としてソレノイド13の励磁を切って、電磁比例流量制御弁14で油圧バランスシリンダー11a、11bと低圧用の空・油圧ブースター33との油圧回路を遮断して、油圧バランスシリンダー11a、11b内の油圧を固定することで、下降中のスライド7の動きにブレーキを掛けるものであるが、電磁比例流量制御弁14は切換え時期を電気信号で調整して流量調整する事が出来るので、直ぐにブレーキを掛けるのではなく、加圧力ピーク時から素材の破談の進行状態の変化を歪ゲージ8で計測して、破断進行が進むにつれて、加工素材からの反抗推力が小さくなり、加圧力が下がるのに反比例するように、電磁比例流量制御弁14を閉じる方向に操作して、油圧バランスシリンダー11a、11b内の圧力を高めて行き、加工素材が破断した時に、加工素材に代わって油圧バランスシリンダー11a、11b内の油圧力で、スライド7の反抗推力を受け持って、破断後のブレークスルー現象に対応するものである。
【0021】
ブレークスルー対応の為に電磁比例流量制御弁14を閉じた時に、ブレークスルーエネルギーにより、油圧バランスシリンダー11a、11bを内で急激に発生した高圧油を、逆止弁12で低圧用の空・油圧ブースター33への逆流を防止する一方で、逆止弁15を通して、高圧用の空・油圧ブースター16へ流入させて、ピストン17を押し上げることで,空圧側の圧縮空気を補助エアータンク19へ押し戻して、油圧側の圧力のエネルギーを空気圧に変換して、空圧側に圧力のエネルギーを放出して、ブレークスルーエネルギーを吸収させるものであり、圧力の調整は空圧側のエアー減圧弁22で行うので、油圧側にはリリーフバルブ等の圧力調整機能部品が無く、電磁比例流量制御弁14の切換過渡期に若干の絞り弁的要素が生じるが、圧力のエネルギーの放出は高圧用の空・油圧ブースター16を通して、空圧側で行うので、圧力を伝播する圧油が流出入する際に,配管内の流体摩擦抵抗等が油圧系統に於いての、油温の上昇させる要素になる程度のものであり、ブレークスルーにより、油圧バランスシリンダー11a、11bから高圧用の空・油圧ブースター16へ吐出する油量は略一定の少量のものであるから、熱発生容量としては小さいものであり、油温の上昇を抑えることが出来て、連続作動に対応出来るものである。
【0022】
ブレークスルー状態の終わり(打ち抜き加工の終わり)を、ロータリーエンコーダ3で(ロータリーエンコーダとしているが、従来からのクランクプレス等に取り付けられている、上死点・下死点検出用リミットスイッチや近接スイッチ等で良い)クランクシャフト1が下死点付近に、あることを検出して、ソレノイド13を励磁して電磁比例流量制御弁14で、油圧バランスシリンダー11a、11bと、空・油圧ブースター16,33との油圧回路を導通させると、高圧用の空・油圧ブースター16の油圧側の高圧油は、油圧バランスシリンダー11a、11bと低圧用の空・油圧ブースター33との油圧回路に逆流して、低圧用の空・油圧ブースター33のピストン34を押し戻して、油圧回路内は低圧用の空・油圧ブースター33の油圧側の圧力に下がって油圧バランスシリンダー11a、11bを通常の作動状態に戻して、次のプレス作動に備えるものであるが、高圧用の空・油圧ブースター16の高圧油が、低圧用の空・油圧ブースター33の油圧回路へ急速に流入する事で、サージ圧が発生して、オイルハンマー現象を起こさないように、電磁比例流量制御弁14は戻り行程への切り換わりの時も、切り換わり速度と流量調整をして、流入速度をコントロールするものである。
【0023】
戻り行程への切り換わりのタイミングが遅れて、電磁比例流量制御弁14で油圧回路が閉じた状態のままで、スライド7が上昇行程になっても、高圧用の空・油圧ブースター16の高圧油は、逆止弁15で油圧回路への流入を止められており、低圧用の空・油圧ブースター33の低圧油は逆止弁12を通って、油圧バランスシリンダー11a、11bへの油圧回路に流入するので、油圧バランスシリンダー11a、11bは通常通りの上昇作動が出来るものであり、高圧用の空・油圧ブースター16の油圧側に、ブレークスルーエネルギーが圧力のエネルギーとして蓄えられていても、ウレタンゴムやスプリングや圧縮ガス方式のように、下降終了後のスライド7に反発力として作用しないものであり、スライド7の上昇行程中のどの位置にあっても、上昇行程上端で停止後に於いてでも、ソレノイド13を励磁して電磁比例流量制御弁14によるショックレスな、戻りの切り換わり操作が出来るものであり、近接スイッチ18は、高圧用の空・油圧ブースター16内のピストン17が内部の高圧油を全量放出して、最下端に復帰したことを確認する為のものである。
【0024】
油圧バランスシリンダー11a、11bと、空・油圧ブースター16,33との油圧回路内の油量が減少して、低圧用の空・油圧ブースター33内のピストン34の作動位置が下がって来れば、近接スイッチ35でピストン34の位置を検出して、エアー電磁弁28のソレノイド29を励磁して、空気圧駆動の油圧ポンプ25を作動させて、一定量の作動油を油圧回路内に補充するものであるが、単に作動油を補充するだけでなく、油圧回路内の作動油を油タンク7へ循環して、入れ替えする為のものものでもあり、クランクシャフト1を下死点で停止させて、調整ボルト6で,スライド7及び連接する油圧バランスシリンダー11a、11bの、ラムロッド10a、10bを最下端まで下げておいて、空気圧駆動の油圧ポンプ25の圧油で、低圧用の空・油圧ブースター33のピストン34を最上端まで押し上げて、なおも圧油を送り込めば、余分な圧油はリリーフバルブ36から、油タンク27へ,リターンするので、低圧用の空・油圧ブースター33内の作動油を入れ替えするものであり、リリーフバルブ36は安全弁的に通常の作動圧よりは高い目に設定されており、通常は作動しないものであり、油圧回路内の作動油を油タンク27へ循環させて、定期的に入れ替えする為に設けられているものであって、連続作動により、閉鎖的な油圧回路内部の作動油の油温が若干上昇しても、定期的に作動油を循環入れ替えする事で、油圧回路内の作動油の劣化と油温の上昇を抑えることが出来るものである。
【実施例0025】
無し
プレス荷重により、プレスフレームに、どれだけの歪と応力が発生しているのかを知る手段として、プレスフレームに歪ゲージを取り付けて計測する方法は、従来から行われてきた公知の技術であり、逆に歪ゲージの数値を、その時の荷重の数値として加圧量を知る方法としても用いられてきた技法でもあり、荷重計として商品化されているものであるが、歪ゲージ8を用いて、プレス機械の荷重を計測して本装置を作動させているが、本装置を作動させるための、計測、指令措置として,(1)荷重を検出する歪ゲージ、(2)歪ゲージからの信号を適切に処理するための演算装置、(3)演算装置からの信号を増幅する為のアンプが、あれば本装置を操作する事が出来るものであるが、このままでは正しい荷重数値で作動しているかが不明であり、(4)演算装置で処理された結果を出力する為の表示装置が必要となるが、加圧荷重に対する歪ゲージの出力はプレス機によって大きく異なるので、プレス加圧量と荷重表示とが一致しないものであり、その為にロードセルを用いて、スライド7でロードセルを加圧する事により、ロードセルの表示荷重数値と、装置の表示荷重数値が一致するように、感度調整を行なう事により、プレス機械自体がロードセルとして校正された事になり、ブレークスルー緩衝装置の計測・指令装置としてだけではなく、プレス荷重計として加圧荷重を知る以外に、金型の状態把握や異常検出等の荷重監視装置として、金型管理にも応用できるものである。
油圧バランスシリンダー11a、11bとしているが、工場エアーラインで作動する低圧用の空・油圧ブースター33の油圧で駆動される、小径の油圧シリンダーを用いて、常にスライド7の動きに追随して作動するような構成になっているので、既設プレス機のボルスター側に油圧緩衝シリンダーとして、スライドの動きに追随作動するように取り付けて、後付けのブレークスルー緩衝装置とすることが出来るものであり、既に歪ゲージを用いた荷重計を備えているプレス機ならば、その荷重計装置を用いて後付け工事が出来るものである。
1 クランクシャフト 2 コンロッド 3 ロータリーエンコーダ 4 プランジャー 5 ピン 6 調整ボルト 7 スライド 8 歪ゲージ 9 ベッド 10a、10b ピストンロッド 11a、11b 油圧バランスシリンダー 12,15,24 逆止弁 13,29 ソレノイド 14 電磁比例流量制御弁 16 高圧用の空・油圧ブースター 33 低圧用の空・油圧ブースター 17,34 ピストン 19,37 補助エアータンク 20,38 ストップバルブ 21,30,39 圧力計 22,31,40 エアー減圧弁 23,32,41 エアーフィルター 25 空気圧駆動の油圧ポンプ 26 ストレーナー 27 油タンク 28 エアー電磁弁 18,35 近接スイッチ 36 リリーフバルブ