(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094860
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】構造体、基礎構造物、基礎構造物の製造方法、および建物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20220620BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20220620BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20220620BHJP
E02D 5/30 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D5/34 Z
E02D27/12 Z
E02D5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207984
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】595012110
【氏名又は名称】伊田テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 亘
(72)【発明者】
【氏名】及川 直哉
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 洋介
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041CA01
2D041CB01
2D041CB06
2D046CA01
2D046DA00
(57)【要約】
【課題】熱交換を行う流体が内部を流れる杭を用いた建物の基礎構造を容易に形成する。
【解決手段】本発明の構造体は、熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、下側端部に杭が挿入される本体部と、本体部の上側端部に設けられ上側端部を覆うとともに、基礎と対向する覆い部とを備え、本体部は、上側端部から下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、覆い部は、本体部の上側端部と対向する対向面に突起を有し、突起は切り欠き内に配置され、突起の先端部と切り欠きの底部との間に案内管が通る開口が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、
上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、
前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部と
を備え、
前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、
前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面に突起を有し、
前記突起は前記切り欠き内に配置され、当該突起の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成される
構造体。
【請求項2】
前記覆い部は、前記対向面における前記突起より中央側の位置に当該対向面から突出する中央突出部を有する請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記中央突出部は、
前記本体部の前記上端部から当該本体部の内部に向けて突出するよう配置され、かつ
前記本体部の内部に突出している状態において前記中央突出部が移動することを許容する寸法で形成されている
請求項2記載の構造体。
【請求項4】
前記突起の前記先端部は、前記切り欠きの前記底部から離間する向きに凹んだ湾曲面である突起湾曲面を有し、
前記切り欠きの前記底部は、前記突起の前記先端部から離間する向きに凹んだ湾曲面である切り欠き湾曲面を有する
請求項1乃至3のいずれか1項記載の構造体。
【請求項5】
前記本体部は、円筒状であり、前記下端部側から前記上端部側に進むに従い当該本体部の外径が小さくなる縮径部を有する
請求項1乃至4のいずれか1項記載の構造体。
【請求項6】
前記本体部および前記覆い部は、鋳物により構成されている
請求項1乃至5のいずれか1項記載の構造体。
【請求項7】
熱交換を行う流体が流れる案内管と、
前記案内管が内部に配置される杭と、
前記杭に設けられる構造体と、
前記構造体によって支持される建物の基礎と
を備える基礎構造物であって、
前記構造体は、
上側端部および下側端部が開放された円筒状の部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、
前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆う円板状の部材であり、前記基礎と対向する覆い部と
を備え、
前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、
前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面の中央部に設けられた突出部と、当該対向面における当該突出部よりも外側に設けられた爪部とを有し、
前記爪部は前記切り欠き内に配置され、当該爪部の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成され、
前記爪部の前記先端部は、前記切り欠きの前記底部から離間する向きに凹んだ湾曲面である爪部湾曲面を有し、
前記切り欠きの前記底部は、前記爪部の前記先端部から離間する向きに凹んだ湾曲面である切り欠き湾曲面を有し、
前記突出部は、前記本体部の前記上端部から当該本体部の内部に突出して配置され、かつ当該本体部の内部に突出している状態において当該突出部が移動することを許容する寸法で形成される
基礎構造物。
【請求項8】
熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、
上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、
前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部と
を備え、
前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、
前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面に突起を有し、
前記突起は前記切り欠き内に配置され、当該突起の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成される構造体
を用いて前記建物の基礎構造物を製造する基礎構造物の製造方法であって、
前記杭を地中に設けるステップと、
前記杭に前記本体部を設けるステップと、
前記杭の内部に前記案内管を配置するステップと、
前記本体部の前記上側端部を前記覆い部で覆うステップと、
前記案内管が突出する前記開口を封止するステップと、
前記覆い部の上側に前記基礎を配置するステップと
を含む
基礎構造物の製造方法。
【請求項9】
熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、
上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、
前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部と
を備え、
前記本体部および前記覆い部の間に前記案内管が通る開口が形成される構造体
を用いて前記建物を製造する建物の製造方法であって、
前記杭を地中に設けるステップと、
前記杭に前記本体部を設けるステップと、
前記杭の内部に前記案内管を配置するステップと、
前記本体部の前記上側端部を前記覆い部で覆うステップと、
前記案内管が突出する前記開口を封止するステップと、
前記覆い部の上側に前記基礎を配置するステップと、
前記基礎の上側に前記建物の本体を配置するステップと
を含む
建物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、基礎構造物、基礎構造物の製造方法、および建物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地中に埋設されて使用される地中熱交換器であって、鋼管杭の杭頭側から杭先端側へ循環水を流すための往管と、往管を通って杭先端側に到達した循環水を、該杭先端側から杭頭側へ流すための復管と、地中深部において往管と復管とを接続する折り返し部とからなる、循環水配管と、復管の杭頭側の部位と往管の杭頭側の部位とを離隔する杭頭キャップと、を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば地中の熱を空調などに利用するため、熱交換を行う流体が内部を流れる杭を地中に埋設させ、この杭に建物の基礎を設けることがある。
そこで、本発明は、熱交換を行う流体が内部を流れる杭を用いた建物の基礎構造を容易に形成可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部とを備え、前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面に突起を有し、前記突起は前記切り欠き内に配置され、当該突起の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成される構造体である。
【0006】
ここで、前記覆い部は、前記対向面における前記突起より中央側の位置に当該対向面から突出する中央突出部を有するとよい。
また、前記中央突出部は、前記本体部の前記上端部から当該本体部の内部に向けて突出するよう配置され、かつ前記本体部の内部に突出している状態において前記中央突出部が移動することを許容する寸法で形成されているとよい。
また、前記突起の前記先端部は、前記切り欠きの前記底部から離間する向きに凹んだ湾曲面である突起湾曲面を有し、前記切り欠きの前記底部は、前記突起の前記先端部から離間する向きに凹んだ湾曲面である切り欠き湾曲面を有するとよい。
また、前記本体部は、円筒状であり、前記下端部側から前記上端部側に進むに従い当該本体部の外径が小さくなる縮径部を有するとよい。
また、前記本体部および前記覆い部は、鋳物により構成されているとよい。
【0007】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、熱交換を行う流体が流れる案内管と、前記案内管が内部に配置される杭と、前記杭に設けられる構造体と、前記構造体によって支持される建物の基礎とを備える基礎構造物であって、前記構造体は、上側端部および下側端部が開放された円筒状の部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆う円板状の部材であり、前記基礎と対向する覆い部とを備え、前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面の中央部に設けられた突出部と、当該対向面における当該突出部よりも外側に設けられた爪部とを有し、前記爪部は前記切り欠き内に配置され、当該爪部の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成され、前記爪部の前記先端部は、前記切り欠きの前記底部から離間する向きに凹んだ湾曲面である爪部湾曲面を有し、前記切り欠きの前記底部は、前記爪部の前記先端部から離間する向きに凹んだ湾曲面である切り欠き湾曲面を有し、前記突出部は、前記本体部の前記上端部から当該本体部の内部に突出して配置され、かつ当該本体部の内部に突出している状態において当該突出部が移動することを許容する寸法で形成される基礎構造物である。
【0008】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部とを備え、前記本体部は、前記上側端部から前記下側端部に向けて凹む切り欠きを有し、前記覆い部は、前記本体部の前記上側端部と対向する対向面に突起を有し、前記突起は前記切り欠き内に配置され、当該突起の先端部と当該切り欠きの底部との間に前記案内管が通る開口が形成される構造体を用いて前記建物の基礎構造物を製造する基礎構造物の製造方法であって、前記杭を地中に設けるステップと、前記杭に前記本体部を設けるステップと、前記杭の内部に前記案内管を配置するステップと、前記本体部の前記上側端部を前記覆い部で覆うステップと、前記案内管が突出する前記開口を封止するステップと、前記覆い部の上側に前記基礎を配置するステップとを含む基礎構造物の製造方法である。
【0009】
他の観点から捉えると、本明細書に開示される技術は、熱交換を行う流体が流れる案内管が内部に配置される杭に設けられ、建物の基礎を支持する構造体であって、上側端部および下側端部が開放された中空部材であり、当該下側端部に前記杭が挿入される本体部と、前記本体部の前記上側端部に設けられ当該上側端部を覆うとともに、前記基礎と対向する覆い部とを備え、前記本体部および前記覆い部の間に前記案内管が通る開口が形成される構造体を用いて前記建物を製造する建物の製造方法であって、前記杭を地中に設けるステップと、前記杭に前記本体部を設けるステップと、前記杭の内部に前記案内管を配置するステップと、前記本体部の前記上側端部を前記覆い部で覆うステップと、前記案内管が突出する前記開口を封止するステップと、前記覆い部の上側に前記基礎を配置するステップと、前記基礎の上側に前記建物の本体を配置するステップとを含む建物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に開示される技術によれば、本発明は、熱交換を行う流体が内部を流れる杭を用いた建物の基礎構造を容易に形成可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る建物の概略構成を示す図である。
【
図3】接合体の構成部材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の建物の一実施形態について図面を参照して説明する。
<建物1>
図1は、本実施の形態に係る建物1の概略構成を示す図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用される建物1の概略構成を説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、建物1は、建物の本体となる建物本体10と、建物本体10を支持する基礎体30と、基礎体30を支持する補強体50とを有する。建物1は、例えば基礎3階建て以下などの要件を満たす所謂小規模建築物であることが例示されるが、特に限定されない。
ここで、建物本体10は、建物1内部の空気調和設備を構成する室外機15および室内機17を有する。
また、
図1(b)に示すように、基礎体30を支持する補強体50には接合体100(詳細は後述)が設けられている。さらに説明をすると、補強体50を構成する複数の杭70の各々に接合体100が設けれている。
【0014】
<補強体50>
図2は、補強体50の概略構成を示す図である。
次に、
図2を参照しながら、補強体50の概略構成を説明する。
図2に示すように、補強体50は、少なくとも一部が地中に埋設される杭70と、杭70の内部に設けられる案内管90と、杭70の上側に設けられる接合体100とを有する。
【0015】
杭70は、内部に空間を有する略円筒状の部材である。杭70は、下側端部が閉鎖されている一方、上側端部が開放されている。杭70は、例えば、建物1(
図1参照)の基礎に用いられる、鋼管杭、コンクリートパイル、ソイルセメント柱体と鋼管杭を一体化させたソイルセメント合成杭などの周知の構造によって形成される。杭70は、例えば一般構造用炭素鋼管で形成される。杭70は、例えば外径80mm~200mmで形成される。また、杭70は、土間スラブ下の主として圧縮力を伝える構造である。
【0016】
案内管90は、熱交換用の熱媒体を流す配管である。案内管90は、建物本体10に設けられた室外機15(
図1(a)参照)と接続される。図示の案内管90は、例えば銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属の内管91と、内管91の外周を覆う例えばポリエチレン樹脂などの樹脂製の外管93とを有する。この外管93は、内管91の保護および保温を行う機能を有する。
【0017】
また、案内管90は、建物1側、言い替えると室外機15側から杭70内部に向けて熱媒体を流すための往管95と、杭70内部から室外機15側へ熱媒体を戻すための配管である復管97と、杭70の内部において往管95と復管97とを接続する折り返し部(不図示)を有する。言い替えると、図示の案内管90は、杭70の下側端部付近で往管95の端部と復管97の端部とが接続されており、その接続部である折り返し部は、例えば、略U字状に折り返した形状となっている。
【0018】
ここで、杭70の内部には、杭70の内面と案内管90の外面との間の空間を埋める充填材が設けられている。この充填剤は、水、オイル、不凍液などの液体によって構成される。なお、充填剤は、砂、砂利、軽量気泡コンクリートの粉砕物、金属体などの固体でもよい。また、案内管90を通る熱媒体は、水、オイル、不凍液、空気などの流体によって構成される。
【0019】
案内管90の内部を通る熱媒体は、
図2における矢印で示すように、往管95側から杭70の内部へ流入し、折り返し部(不図示)を通って復管97から流出する。ここで、杭70の内部を通過する熱媒体が、杭70の内部において、充填材および杭70を介して熱交換をすることにより、熱媒体の温度が変化する。そして、温度が変化した熱媒体が室外機15へと流れ、室外機15および室内機17によって建物1内部の温度が調整される。すなわち、熱媒体を介して地中と地上とで熱交換を行うことで、地中熱が空調等に利用される。
【0020】
接合体100は、杭70の上側端部71を覆う位置に設けられる。すなわち、接合体100は、杭70のキャップとして機能する。また、接合体100は、上側の面、すなわち後述する蓋上面112が平坦であり、蓋上面112に基礎体30が設けられる。すなわち、接合体100は、基礎体30と対向して設けられ、基礎体30を支持する部材である。
【0021】
また、接合体100は、接合体100の側面に、接合体100の内側と外側を連続させる開口部190を有する。この開口部190を介して、杭70の内部に設けられた案内管90が外側に突出する。また、接合体100を杭70に設ける工程において、開口部190を通る位置に案内管90が配置された後、開口部190は封止部材195(後述する
図5(e)参照)によって封止される。
【0022】
なお、以下の説明においては、
図2に示す補強体50の上下方向を、単に上下方向ということがある。
【0023】
<接合体100>
図3は、接合体100の構成部材を説明するための図である。
次に、
図3を参照しながら、接合体100の概略構成を説明する。
図3(a)に示すように、接合体100は、蓋体110と、蓋体110により覆われる本体150とを有する。ここで、蓋体110および本体150は、各々独立した別部材として構成される。図示の接合体100は、鋳造により形成される鋳物であるが、基礎体30を支持可能であれば製法は特に限定されない。付言すると、接合体100は例えば溶接構造用鋳鋼品で形成される。また、接合体100は、例えば外径80mm~200mmで形成される。
【0024】
蓋体110は、略円板状の蓋本体部111を有する。この蓋本体部111は蓋上面112と蓋下面113とを有する。蓋下面113には、蓋下面113の中央部において下側に向けて突出する突出部114と、蓋下面113の外周において下側に向けて突出する爪部115とを有する。ここで爪部115は、突出部114よりも下側に向けて突出する。また、爪部115は、下側の端部である爪下端部116において上側に向けて凹んだ曲面である爪湾曲面117と、爪部115の側面、すなわち上下方向に沿う面である爪側面119とを有する。
【0025】
本体150は、略円筒状の部材である。さらに説明をすると、本体150は、上下方向の両端が開放された断面略環状の中空部材である。本体150は、本体上端151と本体下端153とを有する。
【0026】
本体150は、本体上端151において、下側に凹んだ切り欠きである本体切欠155を有する。ここで本体切欠155は、本体切欠155の底部、すなわち本体切欠155の下側の端部において下側に凹んだ曲面である切欠湾曲面157と、上下方向に沿う面である切欠側面159とを有する。
【0027】
ここで、本体150は、上記のように略円筒状であり、かつ本体150の仮想軸ILに沿う位置に応じて外径および内径が変化する。さらに説明をすると、図示の本体150は、縮径部161と大径部163とを有する。なお、縮径部161においては、上下方向下側から上側に向かうに従って径が小さくなる。
【0028】
図3(c)に示すように、本体150は、縮径部161の内周面において、縮径部第一内面162と、縮径部第二内面164とを有する。ここで、縮径部第一内面162は上下方向に沿う面である一方、縮径部第二内面164は本体150の内部に向けて突出する湾曲面である。また、本体150は、大径部163の内周面として大径部内面165とを有する。ここで、大径部内面165は上下方向に沿う面である。
【0029】
本体150は、大径部内面165から径方向内側に向けて突出する大径部突出部167を有する。この大径部突出部167は、下側を向く平面である大径部突当面169を有する。ここで、大径部突当面169は、杭70に突き当てられる部分である。付言すると、本体150は、本体下端153から杭70が挿入され、杭70の上側端部71が大径部突当面169に突き当てられることによって、杭70によって支持される。
【0030】
<接合体100の作用>
図4は、接合体100の作用を説明するための図である。
次に、
図4を参照しながら接合体100の作用について説明をする。
【0031】
まず、
図4(a)に示すように、本体150の上側に蓋体110が設けられ、本体150の上側が蓋体110によって覆われる。このとき、本体切欠155内に爪部115が配置される。さらに説明をすると、蓋体110の爪部115に形成された爪湾曲面117と、本体150の本体切欠155に設けられた切欠湾曲面157と、本体切欠155の切欠側面159とによって開口部190が形成される。図示の例においては、開口部190は略楕円形状である。
【0032】
また、蓋本体部111の蓋上面112は、基礎体30(
図1(a)参照)からの圧力を受ける(図中矢印P参照)。この圧力は、本体上端151を介して本体150に伝達され、大径部突当面169から杭70に伝達される。
【0033】
ここで、蓋体110の突出部114は、本体150の内部に配置される。このことにより、蓋体110の本体150に対する位置、さらに説明をすると仮想軸ILと交差する方向における位置がずれることが抑制される。また、図示の例においては、蓋体110の爪部115が本体150の本体切欠155の内部に配置される。このことにより、蓋体110の本体150に対する位置がずれることが抑制される。さらに説明をすると、蓋体110が本体150に対して回転することが抑制される。
【0034】
なお、本実施の形態における蓋体110は、溶接などにより本体150に対し固定される構成ではない。また、本体150の内部の寸法よりも突出部114を小さく形成している。このことにより、蓋体110の本体150に対する相対位置が変化することが許容される。その結果、例えば建築段階において、蓋体110と本体150との位置がずれることで接合体100の損傷が抑制される。同様に、本体切欠155の内部の寸法よりも爪部115を小さく形成している。このことにより、爪部115の本体切欠155に対する相対位置が変化することが許容され、接合体100の損傷が抑制される。
【0035】
また、図示の例においては、本体150の縮径部161が上下方向下側から上側に向かうにしたがって径が小さくなる構造であることにより、本体150の仮想軸ILと交差する方向、すなわち曲げ方向に対する強度が向上する。また、本体150に縮径部161を設けることにより本体150の材料コストが削減される。
【0036】
<建物1の建築方法>
図5は、建物1の建築方法を説明する図である。
次に、
図5を参照しながら、建物1の建築方法、すなわち建物1の製造方法を説明する。
【0037】
まず、
図5(a)に示すように、杭70が地中に埋設される。例えば、杭70は、回転しながら地中に埋め込まれてもよい(図中矢印A参照)。そして、図示は省略するが、杭70の内部に、充填剤として水が注入される。
【0038】
次に、
図5(b)に示すように、杭70の上側端部71(
図5(a)参照)に本体150が設けられる。そして、
図5(c)示すように杭70および本体150の内側に、案内管90が挿入される。さらに説明をすると、案内管90の折り返し部(不図示)が、杭70の下側端部側に向けて挿入される。なお、図示の例においては、案内管90が約90度に曲げられており、開口部190から本体150の外部に向けて案内管90が突出する配置となる。すなわち、図示の案内管90は、本体150の内部から上下方向上側ではなく、上下方向と交差する向きに突出する。
【0039】
次に、
図5(d)に示すように、本体150の上側に、蓋体110が設けられる。このことにより、本体150の上側が蓋体110によって覆われる。そして、
図5(e)西示すように、開口部190が封止部材195によって覆われる。このことにより、本体150の外部から開口部190を介して本体150の内部に異物が侵入することが抑制される。また、封止部材195によって案内管90の移動が抑制される。そして、蓋体110の上側に基礎体30が配置される。
【0040】
ここで、杭70は杭状地盤補強体であり、接合体100は開口部190を有する地中熱キャップである。上記のように、杭70の上側端部71、すなわち杭70の頭部と、基礎体30の間に接合体100を設けることにより、杭70を採熱管として利用することが可能となる。
【0041】
ここで、上記のように杭70を設置した後に、杭70に対して本体150が設けられる。このとき、本体150の向き、すなわち杭70の仮想軸ILを中心とする回転角度は調整可能である。なお、例えば杭70を設置する際に、工法によって杭70を回転しながら埋め込むことがある。このような工法においては、最終的に杭70が設置される角度が、地中の状態などにより変化する。したがって、本実施の形態とは異なり例えば杭70自体に案内管90を貫通させる孔を設ける構成とすると、開口部の向きが制限される場合がある。一方で、本実施の形態においては、蓋体110および本体150により開口部190が形成されている。したがって、杭70に載せられた本体150を回転させることなどにより、開口部190の向きを調整可能である。
【0042】
また、杭70を設置する地中の状況などにより、杭70を埋め込む深さが変化することがある。例えば、杭70の下端が岩盤に突き当たるなどした場合、杭70をそれ以上埋め込むことをせずに、杭70の上端側を切断することがある。したがって、本実施の形態とは異なり杭70自体に案内管90を貫通させる孔を設ける構成とすると、孔が形成されている部分が切り離される場合がある。一方で、本実施の形態においては、蓋体110および本体150により開口部190が形成されている。したがって、杭70の上端が切断された場合であっても、切断された杭70に本体150を設けることで、開口部190が確保され得る。
【0043】
<変形例>
次に、本実施の形態における変形例について説明をする。
【0044】
まず、上記においては、本体150の上側に、蓋体110を搭載し、溶接などによる固定を行わないことを説明したが、本体150と蓋体110とが固定される態様でもよい。
また、上記においては、本体150の仮想軸ILに沿う位置に応じて外径あるいは内径が変化することを説明したが、これに限定されない。すなわち、本体150の外径および内径の少なくともいずれか一方が一定となる構成でもよい。
【0045】
また、上記においては、爪部115および本体切欠155において爪湾曲面117および切欠湾曲面157が形成されることを説明したが、これに限定されない。爪湾曲面117および切欠湾曲面157の少なくともいずれか一方が、曲面ではなく平面で形成されてもよい。
【0046】
また、上記においては、本体150が略円筒状であることを説明したが、これに限定されない。上下が開放された中空部材であればよく、外形が直方体や多角柱などにより構成されてもよい。
【0047】
また、上記においては、蓋体110が略円板状であることを説明したが、これに限定されない。平面視略長方形状の板状部材や、直方体や多角柱などの形状の部材により構成されてもよい。
【0048】
また、上記においては、案内管90が往管95と復管97とを有することを説明したが、案内管90が1本の管で形成されることや、3本以上の管で構成されてもよい。例えば、案内管90が4本の管により構成されてもよい。
【0049】
また、上記においては、案内管90が杭70および本体150の内側に設けられた後に、蓋体110を設けることを説明したがこれに限定されない。例えば、案内管90が杭70に設けられた後に、本体150および蓋体110を設けてもよい。また、案内管90が内部に配置された杭70に本体150および蓋体110が設けられた後に、開口部190から案内管90を引き出す態様でもよい。また、杭70に本体150および蓋体110が設けられた後に、開口部190から案内管90を挿入する態様でもよい。
【0050】
また、上記においては、補強体50を構成する複数の杭70の各々に接合体100が設けられていることを説明したが、補強体50を構成する複数の杭70のうちの少なくとも1つに接合体100が設けられていればよい。
【0051】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0052】
なお、接合体100は、構造体の一例である。基礎体30は、基礎の一例である。本体150は、本体部の一例である。蓋体110は、覆い部の一例である。本体切欠155は、切り欠きの一例である。突起は、爪部115の一例である。中央突出部は、突出部114の一例である。突起湾曲面は、爪湾曲面117の一例である。切り欠き湾曲面は、切欠湾曲面157の一例である。基礎体30および補強体50は、基礎構造物の一例である。
【符号の説明】
【0053】
1…建物、10…建物本体、30…基礎体、50…補強体、70…杭、90…案内管、100…接合体、110…蓋体、150…本体、190…開口部