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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094882
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】認知評価システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20220620BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A61B10/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026324
(22)【出願日】2021-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】109143949
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】502250743
【氏名又は名称】國立成功大學
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フ-ツェン シャウ
(72)【発明者】
【氏名】シェン-フ リアン
(72)【発明者】
【氏名】レン-イ リン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スポーツ認知評価システム及び方法を提供する。
【解決手段】認知評価方法は、脳状態測定器によって被験者に関連する脳生理学情報を取得すること、脳生理学情報に応じて複数の認知的側面を取得すること、スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択すること、少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得すること、及び認知タスクの結果に応じて少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力すること、を含む。本開示はさらに、認知評価システムを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳状態測定器によって被験者に関連する脳生理学情報を取得すること、
前記脳生理学情報に応じて複数の認知的側面を取得すること、
スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択すること、
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得すること、及び
前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力すること、
を含む、認知評価方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面は、少なくとも抑制制御の側面及び意味的側面を含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項3】
前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価することは、複数の一般的な認知タスクの結果を用いた正規分布モデルを確立すること、ここで、前記正規分布モデルは、複数の値ドメインを有し、各値ドメインは、レベルに対応し、及び
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用すること、
を含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項4】
前記スポーツ認知レベルを評価した後、
前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルか低いスポーツ認知レベルかを判定すること、
前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルであると判定すると、高強度トレーニング提案を出項スポーツ力すること、及び
前記スポーツ認知レベルが低いスポーツ認知レベルであると判定すると、低強度トレーニング提案を出力すること、をさらに含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項5】
前記レベルは、高いスポーツ認知レベルを含み、前記正規分布モデルを確立することは、前記高いスポーツ認知レベルの境界値をスポーツスケールに応じて調整すること、を含む、請求項3に記載の評価方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用した後、前記認知タスクの結果を使用して、前記認知タスクの結果が位置するレベルの境界値を更新すること、をさらに含む。請求項3に記載の認知評価方法。
【請求項7】
前記認知的側面は、抑制制御の側面、視知覚の側面、視覚的注意の側面、記憶の側面、感情的側面、及び意味的側面を含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項8】
被験者に関連付けられた脳生理学的情報を取得するように構成された脳状態測定器、及び
前記脳生理学的情報に応じて複数の認知的側面を取得し、スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択するように構成されたコンピュータ装置を含み、前記コンピュータ装置は、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得し、さらに前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力するように構成される、認知評価システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面は、少なくとも抑制制御の側面及び意味的側面を含む、請求項8に記載の認知評価システム。
【請求項10】
前記コンピュータ装置は、複数の一般的な認知タスクの結果を用いた正規分布モデルを確立すること、ここで、前記正規分布モデルは、複数の値ドメインを有し、各値ドメインは、レベルに対応し、及び前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用すること、によって前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価する、請求項8に記載の認知評価システム。
【請求項11】
前記コンピュータ装置は、前記コンピュータ装置が前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルであると判定すると、高強度トレーニング提案を出力し、前記コンピュータ装置が前記スポーツ認知レベルが低いスポーツ認知レベルであると判定すると、低強度トレーニング提案を出力する、請求項8に記載の認知評価システム。
【請求項12】
前記レベルは、高いスポーツ認知レベルを含み、前記コンピュータ装置によって前記正規分布モデルを確立することは、前記コンピュータ装置によって高いスポーツ認知レベルの境界値をスポーツスケールに応じて調整すること、を含む、請求項10に記載の認知評価システム。
【請求項13】
前記コンピュータ装置が、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用した後、前記コンピュータ装置は、前記スポーツ認知レベルを使用して前記スポーツ認知レベルが位置するレベルの境界値をさらに更新する、請求項10に記載の認知評価システム。
【請求項14】
前記認知的側面は、抑制制御の側面、視知覚の側面、視覚的注意の側面、記憶の側面、感情的側面、及び意味的側面を含む、請求項8に記載の認知評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この非仮出願は、2020年12月11日に台湾で出願された特許出願第10914394949号の第35 U.S.C.§119(a)に基づく優先権を主張しており、その内容の全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、認知評価システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
認知機能とは、人間の脳が情報を処理し、記憶し、アクセスする能力のことである。すなわち、認知機能とは、物事の構成、パフォーマンスと他の関連するものとの関係、発達の原動力、発達の方向性、基本的な規則性などを把握する人の能力を示す。多くのベテランスポーツ選手は、身体能力(筋力、筋持久力、協調性)をピークに維持できない場合でも、経験とスキルを活かして試合に勝つことができ、これは主に認知機能の総合的なパフォーマンスに依存している。これらの認知機能には、スポーツ選手の動体視力、選択的注意力、作業記憶力、動体客観計画力、及び周辺視野が含まれる場合がある。従来、これらの認知機能は、「ギフト」と呼ばれていた。
【0004】
体力の測定のために、現代のスポーツ科学は、多くの効果的な測定方法、評価方法、トレーニング方法を提案している。例えば、体力測定には、筋電図検査、心電図、肺活量、血液検査が用いられている。その他の方法としては、ビデオ録画とモーションアナライザーによる選手のスキル評価を含む。しかし、多くのプロスポーツは、認知機能の分野をまだ模索している。その多くは、スポーツに関連するシミュレーショントレーニングの実行の正確さをスポーツ選手の能力評価に利用しており、タスクを実行するときに、スポーツ選手の脳の状態の変化をスポーツ選手の能力評価ために利用することはほとんどない。したがって、スポーツ選手の総合的なスポーツ認知機能の評価、又はスポーツ選手への適切なトレーニングセッションの提供は、依然としてトレーナー又はコーチの過去の経験に依存している。
【0005】
さらに、脳信号を測定することによるスポーツ選手の認知機能の決定は、通常、シミュレーショントレーニングを通じて達成される。しかし、シミュレーショントレーニングには様々な認知機能が含まれていることが多く、スポーツごとに脳信号の測定方法が異なることが多い。類推の欠如は、脳の反応を正確に測定することを困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本開示は、認知評価システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、認知評価方法は、脳状態測定器によって被験者に関連付けられた脳生理学的情報を取得すること、前記脳生理学的情報に応じて複数の認知的側面を取得すること、スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択すること、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得すること、及び前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力すること、を含む。
【0008】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、認知評価システムは、被験者に関連付けられた脳生理学的情報を取得するように構成された脳状態測定器、及び前記脳生理学的情報に応じて複数の認知的側面を取得し、スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択するように構成されたコンピュータ装置を含み、前記コンピュータ装置は、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得し、さらに前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
上記の説明に鑑み、本開示の認知評価システム及び方法によれば、スポーツ選手の認知機能を効果的に評価することができる。グラフ、表、及び記号を生成するために、結果は、複数の認知タスクの結果と統合されてもよい。そうすれば、トレーナーまたはコーチが、スポーツ選手の認知機能に応じて、スポーツ選手のためのトレーニングセッションをアレンジしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による認知評価システムを示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による認知評価方法を示すフローチャートである。
図3】本開示の別の実施形態による認知評価方法を示すフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態によるスポーツ認知レベルを評価するための正規分布モデルを示すの例示的な図でる。
図5】本開示のさらに別の実施形態による認知評価方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、例示としてのみ与えられ、したがって本開示を限定するものではない以下の詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【0012】
本開示の一実施形態による認知評価システムを示すブロック図である図1を参照されたい。本開示によって提供される認知評価システムは、好ましくは、脳状態測定器10、及びコンピュータ装置20を含む。脳状態測定器10は、被験者に関連付けられた脳生理学的情報を取得するように構成されている。脳状態測定器10は、コンピュータ装置20と信号伝達可能に接続されており、コンピュータ装置20が、脳状態測定器10によって得られた脳生理学的情報を分析し、さらに被験者に対応するスポーツ認知レベルを出力するように構成されている。脳生理学的情報は、被験者の脳の生理的活動及び発達レベルによって形成される。脳生理学的情報は、脳波、血中酸素濃度、磁束などの時間的な信号、灰白質分布、神経接続、及び脳構造などの空間的な情報を含むが、これらに限定されるものではない。
【0013】
脳状態測定器10は、磁気共鳴構造画像法(sMRI)、磁気共鳴機能画像法(fMRI)、脳磁図(MEG)、脳波(EEG)、近赤外分光法(NIRS)、X線などを用いた測定機器であることができ、コンピュータ装置20は、サーバ、中央処理装置、又は計算能力を備える他の装置であることができ、本開示は、脳状態測定器10およびコンピュータ装置20の種類を限定しない。
【0014】
図1及び図2の両方を参照されたい。ここで、図2は、本開示の一実施形態による認知評価方法を示すフローチャートである。
【0015】
ステップS101:複数の認知的側面を取得する。
【0016】
脳状態測定器10は、被験者の所定のタスク(例えば、ランニング、スイング、ピッチング等)の実行中に脳の生理学的情報を測定し、脳波の特性を捉えるために使用される。したがって、コンピュータ装置20は、脳生理学的情報に基づいて、被験者に関連付けられた複数の認知的側面を決定することができる。
【0017】
詳細には、コンピュータ装置20は、脳状態測定器10によって得られた脳生理学的情報を評価して、認知的側面を得ることができ、ここで、コンピュータ装置20は、脳生理学的情報を評価し、脳波または脳画像の機能的評価であることができる。例えば、機能評価としては、大規模脳ネットワーク(large scale brain network)評価、領域間接続性(inter-area connectivity)評価、タスク関連経路(task-related pathway)評価などを挙げることができる。大規模脳ネットワークは、デフォルトモードネットワーク、背側注意ネットワーク、腹部注意ネットワーク、顕著性ネットワーク、前頭-頭頂ネットワーク(FPN)、視覚ネットワーク、及び大脳辺縁系ネットワークをさらに含むことができるが、本開示はこれに限定されない。さらに、コンピュータ装置20は、灰白質評価などの脳の生理学的情報の構造評価を行うか、又は拡散テンソル画像(DTI)、拡散強調画像(DWI)の評価を行って、神経接続の程度を判定することができるが、本開示はこれに限定されない。
【0018】
さらに、認知的側面は、抑制制御の側面、視知覚の側面、視覚的注意の側面、記憶の側面、感情的側面、及び意味的側面のうちの1つ以上を含むことができる。抑制制御の側面に対応する認知タスクは、ゴーオンゴー(go-on-go)タスク、又はストップシグナルタスクであることができ、視知覚の側面に対応する認知タスクは、コヒーレンス運動タスク、又は運動抑制であることができ、視覚的注意の側面に対応する認知タスクは、注意ネットワークタスク(ANT)、視線キューイング(gaze cueing)タスク、複数対象追跡(multiple object tracking)タスク、又は反応時間タスクであることができ、記憶の側面に対応する認知タスクは、逆唱(backward digit span)タスク、又はNバックタスクであることができ、感情的側面に対応する認知タスクは、知覚されたストレス尺度(PSS)、又は情動ストループタスクであることができ、意味的側面に対応する認知タスクは、視覚運動行動、記号学習理論、又は精神神経筋(psycho-neuromuscular)理論などの異なるスポーツの意味的トレーニングであることができる。しかしながら、上述した認知的側面及び認知タスクは好ましい実施形態であり、本開示は、認知的側面及び認知タスクの種類を限定するものではない。
【0019】
ステップS103:少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択する。
【0020】
コンピュータ装置20は、スポーツの種類に応じて、複数の認知的側面から少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択する。例えば、スポーツの種類が野球である場合、コンピュータ装置20は、スポーツ認知的側面として、複数の認知アスペクトの中から、抑制制御の側面、視覚的注意の側面、視知覚の側面、及び意味的側面を選択することができる。スポーツの種類にかかわらず、スポーツ認知的側面は、好ましくは、抑制制御の側面と意味的側面の両方を含む。具体的には、様々なスポーツを行う場合、スポーツ選手は、スポーツに関する情報を整理し、理解し、処理した(読み取った)上で、行動するかしないかを短時間で判断しなければならない状況が発生する場合がある。そのため、スポーツ選手の抑制制御の側面及び意味的側面を測定することにより、意思決定及び理解力を評価することができる。野球を例にとると、打者がいきなりスイングを崩そうとするのは、打球がヒットゾーン又はホットゾーンから外れているからである。打者の抑制制御の側面の能力は、選手がボールを感知してから数十ミリ秒以内にスイング動作を中断できるかどうかに大きく影響する。さらに、意味的側面の能力は、戦略や戦術の情報にいかに素早くアクセスするかについての選手の能力として理解することができる。その情報は、コーチのサイン、走塁のジェスチャー、相手の守備陣のシフト、その他の意味合いを含むが、これらに限定されない。
【0021】
ステップS105:少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得する。
【0022】
認知タスクの結果は、スポーツ認知的側面における定量的データであってもよい。言い換えると、得られた各スポーツ認知的側面は、タスクの完了の程度、タスクの正確さの度合い、タスクの実行時間、及び完了回数などの定量的なデータを含む。コンピュータ装置20は、各スポーツ認知的側面に基づいて得られた定量的データを、各スポーツ認知側面に対応する認知タスクの結果として使用し、ここで、各スポーツ認知的側面が対応する定量的データは、1つ以上の定量的データであることができ、本開示はこれに限定されるものではない。さらに、認知タスクの結果は、脳状態測定器10によって測定された生理学的状態、例えば、神経接続、血中酸素濃度、又は灰白質分布などをさらに含むことができる。
【0023】
ステップS107:認知タスクの結果に応じて、少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力する。
【0024】
上述したように、認知タスクの結果は、各スポーツ認知的側面が対応する定量的なデータであることができる。したがって、コンピュータ装置20は、認知タスクの成果を評価して、そのスポーツ認知的側面が対応するスポーツ認知レベルを出力することができる。すなわち、スポーツ認知レベルは、対応するスポーツ認知的側面での被験者のスポーツパフォーマンスを表すためのものである。
【0025】
図1図3及び図4を参照されたい。ここで、図3は本開示の別の実施形態による認知評価方法を説明するフローチャートであり、図4は本開示の実施形態によるスポーツ認知レベルを評価するための正規分布モデルを示す例示的な図である。
【0026】
ステップS105において、スポーツ認知側面に対応する認知タスクの結果を取得した後、ステップS107において説明した認知タスクの結果に応じてスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価及び出力することは、図3に示すように、ステップS1071及びステップS1073として実施することができる。
【0027】
ステップS1071:複数の一般的な認知タスクの結果を持つ正規分布モデルを確立する。
【0028】
詳細には、特定の被験者のスポーツ認知レベルを評価する前に、コンピュータ装置20は、まず、複数の一般的な認知タスク結果を取得し、図4に示すように、複数の一般的な認知タスク結果を使用して正規分布モデルを確立することができる。例えば、特定の被験者は22歳のプロの陸上競技選手であり、複数の一般的な認知タスクの成果は、同じ認知タスク(陸上競技)を行う複数の一般的な22歳の人々の認知タスクの成果である。複数の一般的な認知タスクの結果をコンピュータ装置20に使用して、一般人の一般的な認知タスクの結果に基づき、22歳のプロ陸上競技選手のスポーツ認知レベルを決定することができる。したがって、コンピュータ装置20は、陸上競技に関連する認知タスクを実行している一般的な22歳の人々の認知タスクの結果に基づいて、正規分布モデルを確立することができる。さらに、一般的な認知タスクの結果には、一般的な22歳の人々に加えて、同じくプロの陸上競技選手であり且つ同年齢の他の被験者の認知タスクの結果も含めることができ、或いは、同じくプロの陸上競技選手であり且つ同年齢の他の被験者の認知タスクの結果のみを含む。したがって、特定の被験者が参加しているスポーツについて、そのスポーツに対応する正規分布モデルを後で取得することができる。
【0029】
また、認知評価システムは、複数のスポーツ選手の複数の認知タスクの結果を記憶する認知タスク結果データベースと、スポーツ選手の意味的側面の認知タスクの成果を除く全ての認知タスクの結果を記憶する別の認知タスク結果データベースとをさらに含むことができる。したがって、別の認知タスク結果データベースに格納されている認知タスクの結果を、その後の水平的評価(horizontal evaluation)に利用することができる。言い換えると、スポーツ選手がボクサーである場合、別の認知タスク成果データベースに記憶されている認知タスクの結果に基づいて、スポーツ選手(ボクサー)の野球に行う能力を評価することができる。
【0030】
ステップS1073:少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果がスポーツ認知レベルとして位置づけられるレベルを使用する。
【0031】
正規分布モデルは、複数の値ドメインを有することができ、各値ドメインは、例えば、図4に示す第1レベルL1~第6レベルL6といったレベルに対応する。したがって、コンピュータ装置20は、第1レベルL1~第6レベルL6のうち、スポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果がどのレベルに該当するかを判断し、その認知タスクの結果が位置するレベルをスポーツ認知レベルとして用いることができる。したがって、コンピュータ装置20は、スポーツ認知レベルを出力することができ、これにより、被験者、トレーナー及び/又はコーチは、一般の人々、又は同じタイプのスポーツ選手と比較して、被験者のスポーツ認知能力を判定することができる。
【0032】
例えば、第1レベルL1はエリートレベルであることができ、第2レベルL2はプロレベルであることができ、第3レベルL3はアマチュアレベルであることができ、第4レベルL4はルーキーレベルであることができ、第5レベルL5は一般の人々のレベルであることができ、第6レベルL6は正規分布モデルに対応するスポーツを行うのに適していない人々を表すレベルとすることができる。言い換えると、スポーツ認知レベルが第1レベルL1~第4レベルL4である場合、そのスポーツ選手がそのスポーツの潜在能力を持っていることを意味する。
【0033】
さらに、スポーツ認知レベルを決定した後、コンピュータ装置20は、認知タスクの結果を用いて、認知タスクの結果が位置するレベル(スポーツ認知レベル)の境界値をさらに更新することができ、これにより、各レベルは、対応する認知タスクの結果とより一致することができる。詳細には、コンピュータ装置20は、認知タスクの結果を正規分布モデルに組み込み、正規分布曲線とモデルのレベルの境界値とが更新されるようにする。
【0034】
正規分布モデルを用いることにより、決定されたスポーツ認知レベルは、被験者に最も一致するレベルになることができる。言い換えると、年齢、性別、人種、スポーツの種類などの違いに基づいて正規分布モデルが確立されているため、各被験者に適した正規分布モデルを用いて、各被験者のスポーツ認知度を正確に判定することができる。
【0035】
尚、図4に示した第1レベルL1~第4レベルL4は、その横軸の幅が同じであり、図4に示した第5レベルL5及び第6レベルL6は、その横軸の幅が異なることに留意すべきであるが、本開示はこれに限定されない。また、上述のように対応するレベルの境界値を更新した後、対応するレベル及びそれに隣接する他のレベルの幅も変更される。
【0036】
図4及び図5の両方を参照されたい。ここで、図5は、本開示のさらに別の実施形態による認知評価方法を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS109:スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知度レベルであるか、低いスポーツ認知レベルであるかを判定する。
【0038】
認知タスクの結果が位置するレベルが決定された後、コンピュータ装置20は、認知タスクの結果が、高いスポーツ認知レベルに位置するか、低いスポーツ認知レベルに位置するかをさらに決定することができる。
【0039】
例えば、正規分布モデルの確立に用いる一般的な認知タスクの結果が一般の人々の認知タスクの結果である場合、高いスポーツ認知レベルは図4に示す第1レベルL1であり、低いスポーツ認知レベルは、例えば図4に示す第2レベルL2である。正規分布モデルを確立するために用いられる一般的な認知タスクの結果が、同種のスポーツのスポーツ選手の認知タスクの結果である場合は、高いスポーツ認知度レベルは、例えば、図4に示す第1レベルL1及び第2レベルL2であり、低いスポーツ認知レベルは、例えば、図4に示す第5レベルL5及び第6レベルL6である。しかしながら、記載されているスポーツ認知レベルの高低を表すレベルは単なる例示に過ぎず、本開示はこれに限定されない。
【0040】
コンピュータ装置20は、スポーツ認知レベルが高いと判定すると、コンピュータ20は、ステップS111:高強度トレーニング提案の出力を実行することができる。一方、コンピュータ20は、スポーツ認知レベルが低いと判定すると、コンピュータ装置20は、ステップS113:低強度トレーニング提案の出力を実行することができる。
【0041】
具体的には、コンピュータ装置20が、スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルであると判定すると、それは、被験者がその種類のスポーツで良好なパフォーマンスを発揮することを意味する。したがって、コンピュータ装置20は。それに応じて、被験者、トレーナー及び/又はコーチに対して、被験者のスポーツ認知レベルに合致した高強度トレーニングセッションをアレンジするよう提案する、高強度トレーニング提案を出力することができる。一方、コンピュータ装置20が、スポーツ認知レベルが低いスポーツ認知レベルであると判定すると、それは、被験者のパフォーマンスが十分に理想的ではないことを意味する。したがって。コンピュータ装置20は、それに応じて、低高強度トレーニング提案を出力して、被験者、トレーナー及び/又はコーチに、被験者のスポーツ認知レベルに合致した低強度トレーニングセッションをアレンジするよう提案することができる。低強度トレーニング提案は、例えば、フェーズトレーニングの提案、トレーニングの強度を下げる提案、及びトレーニング量を増やす提案を含む。
【0042】
引き続き図4を参照して説明すると、上述した説明に加えて、コンピュータ装置20は、スポーツスケール(スポーツイベント)に応じて、正規分布モデルの高いスポーツ認知レベルの境界値をさらに調整することができる。例えば、被験者がオリンピックに出場する場合には、コンピュータ20は、高いスポーツ認知レベルの下限値を高くし、被験者が国際大学スポーツ連盟(FISU)によって開催されるユニバーシアードに出場する場合には、コンピュータ装置20は、高いスポーツ認知レベルの下限値を低くすることができるため、その後に出力されるトレーニング提案をよりスポーツイベントのレベルに沿ったものにすることができる。
【0043】
本開示は、異なるシナリオで使用することができる。例えば、被験者が怪我をしたスポーツ選手である場合、本開示の認知評価システム及び方法は、そのスポーツ選手のスポーツ認知レベルを決定し、そのスポーツ選手の認知機能の回復を評価するために、そのスポーツ選手の脳構造、及び身体的接続性をさらに判定し、それに応じてスポーツ選手により適したトレーニングセッションを提供するために使用することができる。同様に、被験者が10代の場合、被験者の脳構造は被験者の加齢に伴って変化する可能性があるため、本開示の認知評価システム及び方法は、被験者のスポーツ認知レベルを判定するとともに、被験者の認知機能の長期的な可塑性を判定するために使用されることができる。
【0044】
上記の認知評価システム及び方法の説明を要約すると、卓球選手である被験者を例にとると、被験者のスポーツ認知的側面は、少なくとも抑制制御の側面、視覚的注意の側面、感情の側面、及び意味的側面を含み、意味的側面は、ボールの配置を予測する被験者の能力に関連している。被験者が卓球に対応する認知タスクを実行しているとき、脳状態測定器10は、被験者に関連付けられた脳生理学情報を取得する。したがって、被験者が認知タスクを終了すると、コンピュータ装置20は、認知タスクの結果の内部データ(各認知的側面)と外部データ(例えば、脳の接続性)とに応じて、対応するスポーツ認知レベルを評価して出力することができる。
【0045】
以上の説明に鑑み、本開示の認知評価システム及び方法によれば、スポーツ選手の認知機能は効果的に評価されることができる。結果は、グラフ、表、及び記号を生成するために、複数の認知タスクの結果と統合されてもよい。そうすれば、トレーナー又はコーチが、スポーツ選手の認知機能に応じて、スポーツ選手のためのトレーニングセッションをアレンジしてもよい。
【0046】
本開示は、上述した実施形態において開示されいるが、本開示を限定することを意図するものではない。本開示の本質及びび範囲から逸脱することなく、変更することは、本開示の範囲内である。本開示の範囲は、以下の請求項及びその等価物によって定義されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳状態測定器によって被験者に関連する脳生理学情報を取得すること、
前記脳生理学情報に応じて複数の認知的側面を取得すること、
スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択すること、
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得すること、及び
前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力すること、
を含み、
前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価することは、複数の一般的な認知タスクの結果を用いた正規分布モデルを確立すること、ここで、前記正規分布モデルは、複数の値ドメインを有し、各値ドメインは、レベルに対応し、及び
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用すること、
を含む、認知評価方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面は、少なくとも抑制制御の側面及び意味的側面を含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項3】
前記スポーツ認知レベルを評価した後、
前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルか低いスポーツ認知レベルかを判定すること、
前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルであると判定すると、高強度トレーニング提案を出項スポーツ力すること、及び
前記スポーツ認知レベルが低いスポーツ認知レベルであると判定すると、低強度トレーニング提案を出力すること、をさらに含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項4】
前記レベルは、高いスポーツ認知レベルを含み、前記正規分布モデルを確立することは、前記高いスポーツ認知レベルの境界値をスポーツスケールに応じて調整すること、を含む、請求項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用した後、前記認知タスクの結果を使用して、前記認知タスクの結果が位置するレベルの境界値を更新すること、をさらに含む請求項に記載の認知評価方法。
【請求項6】
前記認知的側面は、抑制制御の側面、視知覚の側面、視覚的注意の側面、記憶の側面、感情的側面、及び意味的側面を含む、請求項1に記載の認知評価方法。
【請求項7】
被験者に関連付けられた脳生理学的情報を取得するように構成された脳状態測定器、及び
前記脳生理学的情報に応じて複数の認知的側面を取得し、スポーツの種類に応じて少なくとも1つの認知的側面を少なくとも1つのスポーツ認知的側面として選択するように構成されたコンピュータ装置を含み、前記コンピュータ装置は、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果を取得し、さらに前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価して出力するように構成され、
前記コンピュータ装置は、複数の一般的な認知タスクの結果を用いた正規分布モデルを確立すること、ここで、前記正規分布モデルは、複数の値ドメインを有し、各値ドメインは、レベルに対応し、及び前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面に対応する認知タスクの結果が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用すること、によって前記認知タスクの結果に応じて前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面のスポーツ認知レベルを評価する、認知評価システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面は、少なくとも抑制制御の側面及び意味的側面を含む、請求項に記載の認知評価システム。
【請求項9】
前記コンピュータ装置は、前記コンピュータ装置が前記スポーツ認知レベルが高いスポーツ認知レベルであると判定すると、高強度トレーニング提案を出力し、前記コンピュータ装置が前記スポーツ認知レベルが低いスポーツ認知レベルであると判定すると、低強度トレーニング提案を出力する、請求項に記載の認知評価システム。
【請求項10】
前記レベルは、高いスポーツ認知レベルを含み、前記コンピュータ装置によって前記正規分布モデルを確立することは、前記コンピュータ装置によって高いスポーツ認知レベルの境界値をスポーツスケールに応じて調整すること、を含む、請求項に記載の認知評価システム。
【請求項11】
前記コンピュータ装置が、前記少なくとも1つのスポーツ認知的側面が位置するレベルを前記スポーツ認知レベルとして使用した後、前記コンピュータ装置は、前記スポーツ認知レベルを使用して前記スポーツ認知レベルが位置するレベルの境界値をさらに更新する、請求項に記載の認知評価システム。
【請求項12】
前記認知的側面は、抑制制御の側面、視知覚の側面、視覚的注意の側面、記憶の側面、感情的側面、及び意味的側面を含む、請求項に記載の認知評価システム。