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特開2022-94911海藻類及びその抽出物による口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094911
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】海藻類及びその抽出物による口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/03 20060101AFI20220620BHJP
   A61K 8/9711 20170101ALI20220620BHJP
   A61K 8/9722 20170101ALI20220620BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220620BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K36/03
A61K8/9711
A61K8/9722
A61Q11/00
A61K8/73
A61K36/05
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/16
A61P31/14
A61P1/02
A61P11/04
A61P11/02
A61K33/00
A61K31/352
A61K31/194
A61K31/197
A61K31/198
A61K31/05
A61K31/045
A61K31/015
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/68
A61K9/20
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153970
(22)【出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020207665
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020216563
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021018181
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505425878
【氏名又は名称】中村 正一
(71)【出願人】
【識別番号】592248835
【氏名又は名称】日本エー・シー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】中村 正一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LE03
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD19
4B018MD67
4B018ME09
4B018MF01
4C076AA12
4C076AA36
4C076AA69
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC32
4C076CC35
4C083AA111
4C083AB101
4C083AC101
4C083AC301
4C083AC471
4C083AC581
4C083AC621
4C083AC841
4C083AD211
4C083AD301
4C083AD621
4C083BB48
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C086AA01
4C086BA08
4C086HA02
4C086HA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA27
4C086MA35
4C086MA47
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA05
4C086ZA34
4C086ZA67
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C088AA13
4C088AA15
4C088BA08
4C088BA12
4C088MA02
4C088MA03
4C088MA13
4C088MA16
4C088MA27
4C088MA35
4C088MA47
4C088MA57
4C088MA59
4C088NA14
4C088ZA34
4C088ZA67
4C088ZB33
4C088ZB35
4C206AA01
4C206BA04
4C206CA03
4C206CA17
4C206DA34
4C206FA47
4C206FA53
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4C206MA36
4C206MA47
4C206MA55
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4C206MA77
4C206MA79
4C206NA05
4C206ZA34
4C206ZA67
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】海藻類及びその抽出物による口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品を提供する。
【解決手段】昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物から成る、SARS-CoV-2、インフルエンザウイルス、ノロウイルス等を含むウイルスに対する不活性化作用と共に、大腸菌、黄色ブドウ球菌を含む細菌に対する殺菌作用を有する、洗口液、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の洗浄剤を含む口腔用又は鼻孔用の衛生用品。ここで、前記口腔用衛生用品は、口内に一定時間留まって唾液の分泌を促す喉飴、チューイングガム、おしゃぶり食品を含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物から成るウイルスに対する不活性化作用と共に、大腸菌、黄色ブドウ球菌を含む細菌に対する殺菌作用を有する、洗口液、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の洗浄剤を含む口腔用又は鼻孔用の衛生用品。
【請求項2】
前記ウイルスは、SARS-CoV-2が含むことを特徴とする請求項1に記載の衛生用品。
【請求項3】
前記ウイルスは、インフルエンザウイルスとノロウイルスが含むことを特徴とする請求項1に記載の衛生用品。
【請求項4】
前記口腔用衛生用品は、口内に一定時間留まって唾液の分泌を促す喉飴、チューイングガム、おしゃぶり食品を含む、請求項2又は3に記載の衛生用品。
【請求項5】
前記海藻類の抽出物は、粘性多糖類であるフコイダン、アルギン酸、ラミナラン、マンヌロン酸、グルロン酸、またはヨウ素の何れか一つ又は複数を含む、請求項2又は3に記載の衛生用品。
【請求項6】
前記衛生用品に、クエン酸又は重曹の何れか一方又は両方が添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項7】
前記衛生用品に、アミノレブリン酸が添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項8】
前記衛生用品に、L-グルタミン酸が添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項9】
前記衛生用品に、ポリフェノールが添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項10】
前記衛生用品に、飲料用のアルコールが添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項11】
前記衛生用品に、βカロテンが添加された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項12】
前記海藻類の抽出物は、海藻類の乾燥パウダーを食塩水又は生理食塩水に溶かして生成された請求項5に記載の衛生用品。
【請求項13】
前記海藻類の乾燥パウダーの粒径は、概ね5μmである請求項12に記載の衛生用品。
【請求項14】
前記食塩水又は生理食塩水における前記海藻類の乾燥パウダーの重量比率は、概ね2%である請求項12又は13に記載の衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が長年食し摂取してその安全性が確認されてきた自然食材である海藻類及び/又はその抽出成分によってウイルスを不活性化させると共に細菌を殺菌する効果を有する、歯磨き剤(ペースト状、液状又は粉状剤を含む)、舌磨き剤、口内洗浄剤、デンタルリンス、マウスウォッシュ等の洗口液、および、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の洗浄剤、口腔、咽喉、若しくは鼻孔用のスプレー液を含む衛生用品に関し、さらには、口腔内に一定時間留まって、歯及び歯肉、舌、喉等の口腔内及び咽喉内の衛生維持に役立つ、喉飴、チューイングガム等の食品類に関する。
【0002】
ここで、本発明は、口腔、鼻孔又は咽喉内の健康状態及び衛生状態を保持するための衛生用品であって、特定のウイルスを不活性化させるワクチンや殺菌剤、若しくは特定の疾患を治療するための治療薬や医薬品ではない。
【背景技術】
【0003】
人間の口(口腔)は、飲食物を摂取する際に、食物を最初に体内に取り入れる消化器官であり、それゆえに、外界から黴菌、細菌、ウイルス等の異物に最初に侵食され易い場所である。
【0004】
さらに、鼻孔及び咽喉は、呼吸による空気(酸素)を体内(肺)に最初に取り入れる呼吸器官であり、口腔と一体的に形成され、さらに、鼻及び咽喉は、気道(気管)と肺(肺胞)の呼吸器官に繋がっている。それゆえに、口腔と同様に、外界から黴菌やウイルス等の異物に最初に侵食され易い場所である。
【0005】
人間は、口腔から摂取した飲食物を胃で消化し、胃で消化された食物の栄養素を、主に小腸で吸収し、大腸において水分が吸収される。このようにして体内に取り入れられた栄養素や水分は、身体の各部において、咽喉器官(鼻、口、喉)及びそれに繋がる呼吸器官(気道及び肺)から取り込まれた酸素と結合して酸化され、それによって生命体の活動エネルギーを発生させると共に、肉や骨等の人体組織を形成させている。
【0006】
人間が、例えば肺炎や気管支炎等の呼吸器疾患に感染するのは、呼吸によって鼻、喉又は気管等の咽喉の粘膜等にその原因となるウイルスや細菌が付着することにより発生する。
【0007】
また、人間が消化器系の食中毒等の消化器疾患に生じるのは、食物や飲料内に入り込んでいるノロウイルス等のウイルスや黴菌が、口腔から食道を介して体内の消化器官によって取り込まれることにより発生する。
【0008】
このように、ウイルスや細菌による呼吸器疾患や消化器疾患は、稀に、皮膚又は眼等の粘膜経由の場合があるが、その多くは、呼吸のための咽喉(口、喉と気管)と、飲食物を取り入れる口腔(唇、口の中、歯、舌、食道)を経由して体内に入り込むことから生じる。
【0009】
ところで、口は、ヒトや動物の消化器官系の初端の気管となっており、専ら栄養素の摂取や酸素の摂取に用いられる。多く動物の口には消化器官の付属器官である舌や歯、外分泌器等を備え、歯による咀嚼のための食餌補助に限らず、外敵に対抗し、身を守る手段としても利用している。
【0010】
人を含め多くの脊椎動物の口腔内には歯に相当する咀嚼器官が付属しており、摂食に伴う咀嚼や消化液(唾液)との攪拌という機能以外に、味覚や発声の補助、呼吸等の様々な行動を補助する器官となっている。また、外部唇と開閉部のみを指して口と呼ぶ事がある。
【0011】
形態学的には、口とは、顔面前面部に顎関節の補助によって開閉する開口部を指し、その内表面が粘膜に覆われ様々な付属器官を持つ消化器官の開口端とされる。
【0012】
歯は、食物の消化の一環として咀嚼の他、外部に対する攻撃、モノの把持を行う。舌は、味覚を司るだけでなく、口腔内に入ってきた食物の攪拌を行う。ここで、唾液腺には顎下腺、耳下腺、舌下腺等多数の唾液腺があり、消化の補助として唾液を分泌する。
【0013】
口腔内粘膜は、消化器粘膜の一部であり、味覚の補助機関でもある。粘膜は外皮に比べ分子量の小さな化学物質を吸収しやすいため、口腔内に食べ物が滞留しやすい事からも吸収器官の役割も担っていると言える。
【0014】
このように、口は、消化系の入り口であると共に酸素の取り入れ口であり、身体表面に開いた極めて重要な孔の一つである。その周辺には、餌を取り込む(飲み込む)ための筋肉が発達している。また、周辺に食物を取り込み、裁断するための器官が付属している。それらの形は、取り込む食物の種類によっても大きく変化する。
【0015】
流行性インフルエンザ、パラインフルエンザ、ノロウイルス等によって発症する食中毒、中東呼吸器症候群(MERS)、ウイルス性急性気管支炎及び肺炎、麻疹、さらに、最近ではWHOにより2020年春にパンデミックに認定された新型コロナウイルス疾患(COVID-19)を発症させる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)等のウイルス感染による疾患は、ウイルスに感染した人が咳やくしゃみすることによって主に気管から排出される飛沫、空気中に漂うウイルスが存在している微粒子、電車のつり革等の把手や身近な物品等に付着したウイルスやこれらのウイルスに感染した黴菌や細菌を介して、人から人へ、または動物から人へ伝播することによって感染する。
【0016】
また、新型コロナウイルスを含む多くのウイルスや細菌は、感染者の唾液中にも多く存在していることか確認されている。
【0017】
後述するように、唾液には抗ウイルス作用や殺菌作用があることが認められているものの、一日当たりの唾液分泌量は年齢を重ねる毎に減少していくことから、高齢者ほどウイルスや菌に感染し易くなると共に、感染した場合は重症化し易い。
【0018】
また、ウイルスは、寒冷下の環境(低温及び低湿度)下において物品や人体表面に付着した場合比較的長時間死滅せずに生き続け、特に、人間の咽喉部を含む呼吸器官の低温化にとって上気道内壁の繊毛の乾燥化と繊毛活動(上気道バリア機能)が低下することにより、温暖期の環境下におけるよりも、人から人への感染が拡大する。
【0019】
これらのウイルスに感染した患者に対しては、治療薬として、例えばインフルエンザに対する治療薬としてタミフル等、エボラ出血熱や新型コロナウイルス等の治療薬としてレムデシベル(一般名:ベクルリー)やファビピラブル(一般名:アビガン)が用いられ、その治療効果の治験が進められている。しかし、これらの治療薬は、妊婦や特異体質者等に対する副作用を発症させる危険性を有し、且つ耐性ウイルスの出現等のリスクを考慮すると、先ずは、感染しないこと、そして他人に感染させないことが重要である。
【0020】
そこで、ウイルス感染の予防の観点から、咳やくしゃみによるウイルスの空気中への飛沫の発散範囲を極力減少させ、そして外部大気中への飛沫量を減少させるためのマスク着用が効果的であることは世界中の使用事例や各種実験で立証されている。また、手洗いやうがいを頻繁に行うことも、言うまでもなく重要である。
【0021】
さらに、例えば、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム水等のウイルスや細菌を死滅させるのに有効な各種消毒薬を用いて人の手指や人が触れる身近な物を頻繁に消毒することも大切である。
【0022】
しかし、一般的に、これらの消毒薬や殺菌剤は皮膚や粘膜等の組織障害作用を持ち、その使用にあたっては一定の制限がある。特に皮膚や粘膜表面への直接接触の使用においては、ウイルス消毒薬毎に明確な使用制限がある。特に、乳幼児は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム水に触れることにより皮膚のかぶれや炎症を生じさせ易く、特にアレルギー患者に対してはアトピー性皮膚炎等を悪化させる危険性もある。
【0023】
このように、ウイルス感染の拡大抑制には、人から人にウイルスを伝播させないようにするために、先ずは、マスク着用、頻繁な手洗いやうがいの励行、アルコール等の消毒液による手指や人が触れる可能性がある物品の消毒が重要である。
【0024】
ところで、日本のみならず世界各国において、ウイルス感染が生じ得る環境や状況下に複数の人が置かれた場合において、ある人はウイルスに感染したが、他方のそれ以外の人はウイルスに感染しなかった事象が多くの事例で観られている。例えば、流行性インフルエンザの感染状況においても、当該インフルエンザワクチンの接種有無に拘わらず、日常的に混雑している電車通勤している多数人の内、数十年に亘って一度もこのような流行性インフルエンザに感染しない人もいれば、毎年のようにインフルエンザに感染している人もいる。
【0025】
また、2020年に全世界的なパンデミック感染となった新型コロナウイルス疾患(COVID-19)についても、例えば無発症の一人又は数人の感染者を含む他人数の者が、極めて狭い密閉空間において、密集状態で且つ密接した環境下において長時間大声で会話したり歌ったり飲食を共にした場合でも、必ずしもその場に居た全員が新型コロナウイルスに感染しなかったり、感染しても新型コロナウイルスによる疾患を発症しなかったりする事例が多く報告されている。
【0026】
このような、同一の環境下に置かれた個々の人によってウイルスに感染したり感染しなかったりする理由として、各人それぞれの過去における同一又は同類型のウイルス感染歴、ある種のウイルスに対する免疫抗体の有無、体質、または個人個人のその時々の健康状態や栄養状態の違いが考えられるが、唾液の分泌量や人の上気道に入り込んだウイルスや菌を排除する繊毛活動(上気道バリア機能)の違いも影響しているものと推察される。
【0027】
また、新型コロナウイルスの場合、現時点において、例えば日本人(中国、韓国、台湾等の東アジアの人々を含む)の当該コロナウイルスの感染者数や死亡者数は、人口比において他の先進国である欧米諸国との比較でかなり低く収まっているのも事実である。
【0028】
このような人口比感染者数や死亡者数に大きな差異が生じている理由としては、欧米における日常生活における握手やハグ等の社会習慣における違い、低温度低湿度のウイルス感染期間中における通常時からのマスク着用に対する抵抗感の有無、社会的規範意識の強弱の相違等が指摘されているが、欧米諸国では感染の蔓延に伴って、いわゆる地域毎のロックダウンによって外出禁止令が発令され、レストランでの食事が禁止され、マスク着用が励行された段階後に至ってもなお、新型コロナウイルスの蔓延は、日本と比較してその人口比において極めて深刻な状況が続いている。
【0029】
一方、後述するように、人類の長い歴史において、ウイルスや菌に対して殺菌作用や不活性化作用を有し、これを食したり、口腔内の粘膜に接触させたとしても、長年に亘ってその安全性が確認されている食品やその抽出物が存在している。
【0030】
このため、本願の発明者は、ウイルス等の感染レベルにおいてこのような差異が生じている理由の一つとして食生活の違い、特に日本人を含む東アジアの人々が、普段から日常的に多く食している食物や食材であって、欧米諸国の方が普段食することがない食材に着目し、そのような食材を複数選択し、個々の食材において人のウイルス感染を妨げる抗ウイルス効果、ウイルス不活性化効果及び、大腸菌や黄色ブドウ球菌の殺菌効果を確認するための試験を行ったのである。
【0031】
ところで、このような食材含有の要素によるウイルス不活性化効果を確認した従来例として、プロテオグリカン、ムコ多糖(例えば、グリコサミノグリカン等)、及びプロテオグリカンの糖鎖-ペプチド間分離物からなる群より選択される少なくとも1種がウイルス不活性化効果を有し、さらに、アメフラシ及びナマコから、特にナマコから得られたプロテオグリカン含有抽出物、及び該抽出物中のプロテオグリカンの糖鎖-ペプチド間分離物が、高いウイルス不活性化効果を有することを示した文献が開示されている(特許文献1を参照)。
【0032】
また、昔から、メントールや香草(ハーブ)の一部に抗ウイルス作用があることが報告されており、そのような香草の例として、ビタミンCを豊富に含むローズヒップ、タイム、エキナセア等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2019-19085
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかし、特許文献1に開示されているウイルス不活性化効果が認められたナメコやアメフラシ及びこれらからの抽出物は、日本人等が日常的に食する食材ではない。また、これらの食品やその加工物は高価であり、これらの食材に高いウイルス不活性化効果が認められたとしても、多くの人が日常的に食するのは困難である。
【0035】
また、ビタミンンCや香草の一部が抗ウイルス作用を奏するとの伝聞については、科学的な治験によっては明確に確認されておらず、若しくはそれらの生理的作用効果を否定又は疑問視する研究報告も多々確認されている。
【0036】
本発明は、ワクチンのように特定のウイルスにのみに対して免疫効果を発揮するものではなく、また、ワクチンのように一部の人に重篤な副作用を生じる危険性がなく、日常的にこれを食し又はその成分を摂取することにより、種々のウイルスに感染しにくくするか、若しくはウイルスに感染しても重篤化を防ぐべき、ウイルスを不活性化させる天然由来のウイルス不活性化剤を含有する口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品を提供することを目的とする。
【0037】
ところで、ウイルスや細菌による呼吸器疾患や消化器疾患は、すべからく、最初は、呼吸のための咽喉(口、喉と気管)若しくは飲食物を取り入れる口腔(唇、口の中、歯、舌、食道)を経由して体内に入り込むことに鑑みて、本発明は、口腔と咽喉内において、外界から入り込んだ新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」を含むウイルスを不活性化すると共に細菌を死滅させる口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品を提供することを目的とする。
【0038】
本発明は、さらに、唾液の良好な分泌を促し、喉頭部や上気道に入り込んだウイルスや菌を排除するための繊毛活動を活発化させて上気道バリア機能を高めると共に、安全性が確認されている自然食品又はその抽出物によりと、以前からその安全性が確認されている特定の添加物の組み合わせによるウイルス不活性化作用及び細菌の死滅作用を有する口腔用、鼻孔用の衛生用品を提供することを目的とする。
【0039】
本発明に係る衛生用品が果たすべき特に重要な課題は種々あるが、以下の(1)乃至(4)の目的達成に集約される。すなわち、
(1)特定のウイルスを不活性化させるワクチンや、特定の細菌を殺菌する薬剤ではなく、種々のウイルスを不活性化させ、種々の細菌を殺菌すること。
(2)特定の疾患を治療するための治療薬や医薬品ではなく、長期間に亘って摂取/服用しても健康上の安全性に何ら起こさせる心配がない。また、耐性ウイルスや耐性菌が生じる恐れもないこと。
(3)本発明に係る海藻類及びその抽出物が、咽喉、鼻孔、口腔、または気管支等の呼吸器官等の人体における敏感な粘膜に触れた状態で摂取又は服用されても、痛み、苦痛、違和感を生じさせず、食感、味覚、嗅覚においても問題がないこと。
【0040】
本願出願人は、本願の明細書において詳しく記載する第1次乃至第8次の綿密で長期間に及ぶ種々の効果確認試験を実行するに先立って、本発明に係る海藻類及び/又はその抽出物を人体の敏感な咽喉、鼻孔、口腔、または気管支等に触れでも、痛み、苦痛、違和感を生じさせず、食感、味覚、嗅覚において問題がない服用及び摂取状態の確認試験を行ったのである。
【0041】
この先行確認試験の結果、本願出願人は、本発明に係る海藻類及び/又はその抽出物を、概ね5μmのサイズに極めて微細に粉砕し、且つこの極微細化サイズのパウダーを生理食塩水(冷水及び煮沸水)に溶解させて服用又は摂取すれば、口腔用、咽喉用、鼻孔用の衛生用品として何らの違和感なく摂取又は服用できることを確認したのである。従って、後述する第1次乃至第8次の効果確認試験は、発明に係る海藻類及び/又はその抽出物を、概ね5μmのサイズに極めて微細に粉砕し、この極微細化サイズのパウダーを生理食塩水(冷水及び煮沸水)に溶解させて行ったのである。
【0042】
尚、生理食塩水とは、人の体液の浸透圧とほぼ同等に調製された、塩化ナトリウム(NaCl)の水溶液である。日本薬局方・処方箋医薬品では、塩化ナトリウムを0.9w/v%含有する食塩水を「生理食塩水」と定義している。
【0043】
このような条件に基づいて、本願の発明者及び出願人は、日本人が日常的に食している食物や食材中から、欧米諸国の多くの方が食する機会が少ない複数の自然食材に着目し且つ選択し、当該選択された種々の食材についてのウイルスの不活性化と殺菌作用の試験を、長期に亘って数次の試験によって実際に確認したのである。
【0044】
その結果、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類若しくはこのような海藻類の抽出物によるウイルスの顕著な減少効果及びウイルス不活性効果、大腸菌や黄色ブドウ球菌等の細菌を死滅させる顕著な試験効果を確認した。
【課題を解決するための手段】
【0045】
このため、本発明は、昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及びその抽出物若しくは昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類の抽出物(本願では、「昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類及び/又はその抽出物」という)から成る新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2を含むウイルスに対する不活性化作用と共に、大腸菌、黄色ブドウ球菌を含む細菌に対する殺菌作用を有する、洗口液、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の洗浄剤を含む口腔用又は鼻孔用の衛生用品を提供するものである。
【0046】
ここで、前記洗口液は、ペースト状、液状又は粉状剤の歯磨き剤、口内洗浄剤、デンタルリンス、マウスウォッシュを含む。また、前記口腔用の洗浄剤は、口腔スプレー液を含む。また、前記鼻孔用の洗浄剤は、点鼻薬と点鼻スプレー液を含む。さらに、前記咽喉用の洗浄剤は、咽喉スプレー液を含む。
【0047】
これらの口内洗浄剤、デンタルリンス、マウスウォッシュ等の洗口液、および、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の洗浄剤は、暫くの時間(多くの場合10秒乃至1分程度)、口腔内、鼻孔内、咽喉内に留まることから、唾液の分泌を促し、後述するように、唾液との相互作用により、ウイルスに対する不活性化作用の効果を高める。さらに、本発明に係る衛生用品は、後述する試験によって、大腸菌、黄色ブドウ球菌を含む細菌に対する殺菌作用も堅調であることから、自らが自己の細胞を増殖することができないウイルスが細菌に介して人体にウイルスを感染させることを有効に防止しているのである。
【0048】
そこで、本願発明は、喉飴、チューイングガム、おしゃぶり食品を含む。これらの食品は、上記した口腔用衛生用品と同様に、口内に一定時間留まって唾液の分泌を促すと共に、唾液と混ざった溶解物が気管や食道に一定時間接触することかから、口腔、咽喉、食道等の粘膜に存在するウイルスの不活性化と細菌を死滅させるのである。しかも、食品であることから人体の粘膜に浸透したり又は消化吸収されても、薬品や消毒剤にように人体に対して悪影響をもたらす危険性は全くないのである。
【0049】
ところで、本願発明における前記海藻類の抽出物は、後に数次の実験結果にとって明らかになった粘性多糖類であるフコイダン、ラミナラン、アルギニンやアルギン酸(アルギン酸ナトリウム)、マンヌロン酸、グルロン酸、またはヨウ素の何れか又はその複数の組み合わせである。
【0050】
これらの海藻類の抽出物には、後述する本願出願人による数次の厳密な試験結果により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むウイルス不活性化作用や殺菌作用が確認されたのである。
【0051】
フコイダン、ラミナラン、アルギニンやアルギン酸ナトリウム、マンヌロン酸及びグルロン酸は、海藻類やキノコに含まれる貯蔵多糖であって、水によって容易に抽出され、その多くは粘質成分であって、以前から、抗腫瘍作用、抗血栓作用、高血圧抑制作用があることが知られている。これらの抽出分は、今回の試験によって、これらの従来から知られていた作用に加えて、ウイルス不活性化作用及び殺菌作用をも奏することが確認されたのである。
【0052】
また、本発明の衛生用品には、クエン酸又は重曹の何れか一方又は両方が添加されると良い。クエン酸及び重曹は、安全が確認されている栄養素であると共に、その爽やかな酸味や炭酸ガス発生作用により唾液の分泌を促進すると共に、それ自体に抗菌化作用を有するのである。さらに、このようなクエン酸や重曹の爽やかな酸味や穏やかな刺激により、人の咽喉から肺に至る気道の内壁を覆う粘膜と繊毛の働きを活発化させるのである。
【0053】
さらに、唾液はそれ自体が抗ウイルス作用を有するするが、この抗ウイルス作用は、ウイルスが咽喉部や上気道の細胞表面の受容体に到達する前に、唾液中の結合型シアル酸が、ウイルスを吸着することで感染を防止していると推定される。すなわち、舌顎下唾液中の結合型シアル酸の量に応じてウイルス感染が抑制されることから、クエン酸や重曹の摂取は、本発明に係る褐藻類に属する昆布又は海藻類及び海藻抽出物から抽出された生成物と相俟って、ウイルスの感染力を抑制するのである。
【0054】
また、クエン酸や重曹を適量摂取した場合は、耳下線唾液や、舌下線唾液、顎下線唾液等複数の箇所から分泌される唾液のうち、舌顎から分泌される舌顎下唾液を多く分泌するとの試験結果が公表され、この舌顎下唾液が、他の唾液よりも抗ウイルス作用、ウイルス不活性化効果及び殺菌作用が高いことが知られている。
【0055】
ところで、本発明においては、前記衛生用品に、アミノレブリン酸又は/及びL-グルタミン酸が添加される。ここで、アミノレブリン酸は、ポルフィリン合成経路の出発物質であって、原核生物と真核生物の色素体で利用されている物質であるが、最近、5-アミノレブリン酸(5-ALA)によるウイルスを用いて培養細胞実験の結果、ウイルスの感染抑制効果が確認された。本発明においては、海藻類及びその抽出物との併用によってより顕著なウイルス感染抑制効果が確認されたのである。
【0056】
さらに、本願出願人が実施した各種試験よって、本発明に係る衛生用品に、ポリフェノールを添加するとより良好な試験結果が確認された。ここで、ポリフェノールは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素の成分で、一般的には、ビタミンCやビタミンEと同様に、強い抗酸化作用を有し活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える作用や動脈硬化など生活習慣病の予防に役立つことが知られている。本発明においては、海藻類及びその抽出物との併用によって顕著なウイルス感染抑制効果が確認されたのである。
【0057】
また、本発明においては、前記衛生用品に、飲料用のアルコール(赤ワイン)が、海藻類及びその抽出物との併用によって、ウイルス感染抑制効果が確認されたのである。赤ワインは、ポリフェノールとアルコールを含有しており、多少の酸味によって唾液の分泌が促されていることから、ウイルスの不活性化には最適な飲食物の一つであることが理解される。
【0058】
さらに、本発明においては、前記衛生用品に、βカロテン(βカロチン)を添加すると良い。βカロテンは、ビタミンAに変換されて作用することから、生体内では皮膚や粘膜の健康を維持し、粘膜細胞の増殖や分化に寄与する。また、βカロテンは、抗酸化作用および免疫賦活作用などがあることが報告されている。本発明においては、前記衛生用品に、飲料用のアルコールが、海藻類及びその抽出物との併用によって、ウイルス感染抑制効果が確認されたのである。
【0059】
このように、本発明に係る衛生用品は、全てが自然又は天然由来の食材、その構成要素及び添加物の安全な素材であって、後述する厳密な確認試験によりSARS-CoV-2を含む種々のウイルスに対する不活性化作用と、大腸菌、黄色ブドウ球菌を含む細菌に対する殺菌作用を確認したのである。
【0060】
ここで、海藻類の抽出物は。海藻類の乾燥パウダーを食塩水又は生理食塩水に溶かして生成され、当該食塩水又は生理食塩水における食塩重量比率は、0.9乃至3.4%である。
【0061】
ところで、人間が、呼吸により口や鼻から入った空気は、咽喉と気管を経由して肺に入るが、このようにして吸い込んだ空気には、ほこり、ばい煙、カビ、細菌、ウイルスなどの異物が含まれており、この気道内壁を覆う粘膜と繊毛の働きにより、空気中の異物の気管内への侵入や肺まで届かないようにガードしていることが知られている。
【0062】
さらには、本発明に係る口腔、鼻孔及び咽喉用の衛生用品を摂取し、それを一定時間口腔内に留まるようにすれば、口腔内の歯周菌を減少させることができる。
【0063】
ところで、歯周菌は、歯周プラーク(歯垢)の中の歯周病菌がハグキに炎症を起こし、周りの組織を破壊していく細菌感染症であり、近年、糖尿病、脳疾患、心臓疾患の一因になっているとの研究論文が発表されている。さらに、最近、新型コロナウイルスに感染して死亡した多くの方々の口内から、大量の歯周菌が検出されたとの報告、また、新型コロナウイルス感染者の内の重症者の多くが重篤な歯周病感染者である、との報告がなされ、古くから、正しいブラッシングや舌磨きによって口内細菌を減少させることによりインフルエンザ発症率が10分の1程度に低下するとの報告も知られている。
【0064】
このような多くの事例から、自己増殖する能力を有しないウイルスが、その遺伝子を歯周菌等の細菌内に入り込んで、ウイルス細胞を有する細菌が人間の口内や粘膜において増殖していることが推測されている。
【0065】
従って、SARS-CoV-2や種々のインフルエンザ等のウイルスに感染しないためには、唾液を良好に分泌させ、口腔内、咽喉内、及び鼻腔内の細菌を減少させてその衛生状態を良好に保つことが重要である。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、ワクチンのような副作用を生じることがなく、またワクチンのように特定のウイルスのみに対する感染防止作用があるのではなく、日常的にこれを無理なく服用又は摂取することにより、SARS-CoV-2を含む種々のウイルスに感染しにくくし若しくは感染しても症状を悪化させず、さらには、大腸菌や黄色ブドウ球菌等の滅菌若しくは殺菌効果を奏する口腔、鼻腔又は咽喉用の衛生用品の提供を可能としたのである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品による、SARS-CoV-2の形態に近似のコロナウイルスであるPEDウイルスに対する効果の試験結果(1)を示す。
図2】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品である海藻類の昆布について、また、海藻類の主要な構成成分であるアルギン酸、フコイダン、ヨウ素の夫々について、さらには、アルギン酸+フコイダン+ヨウ素の混合成分について、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する効果の試験結果(2)を示す。
図3】本発明の衛生用品にアルコールを添加したPEDウイルスに対する効果の試験結果(3)を示す。
図4】本発明の衛生用品である海藻類の昆布とワカメについて、さらには、海藻類の構成成分であるヨウ素、アルギニン、フコイダンのそれぞれについて、さらには、ヨウ素+アルギニン+フコイダンの混合成分について、PEDウイルスに対する効果の試験結果(4)を示す。
図5A】本発明の衛生用品による大腸菌に対する殺菌効果の試験結果(5)を示す。
図5B】本発明の衛生用品による黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の試験結果(5)を示す。
図6】本発明の衛生用品を構成する要素又は添加物である、L-グルタミン酸、βカロテン(βカロテン)、アオサ、赤ワイン(アルコール14%とポリフェノールを含有する)、ラミナラン及びフコイダンのそれぞれについて、PEDウイルスに対する効果の試験結果(6)を示す。
図7】本発明の衛生用品による、インフルエンザウイルスに対する作用効果の試験結果(7)を示す。
図8】本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品による、新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する効果の試験結果(8)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明に係る口腔衛生用品や食料品に含有される抗ウイルス剤又はウイルス不活性化剤は、褐藻類に属する昆布又は海藻類及び海藻抽出物から抽出された生成物に由来する。
【0069】
従って、発明を実施するための形態について詳しく説明する前に、昆布及びその成分について簡単に記載する。
【0070】
昆布は、海藻類に属し、海藻は海に生える藻類の総称である。藻類は、海草とは異なり、花は咲かず、胞子によって子孫を増やす。海藻の多くは食用とされる。
【0071】
海藻は、色により藍藻類・珪藻類・緑藻類・褐藻類・紅藻類などの種類に分別され、昆布は褐藻類に属する。ただし、昆布の色の違いは、海藻の生える場所の水深、つまり太陽の光が届く量に左右され、浅瀬は緑色、深い場所は褐色、もっとも光の届きにくい場所では紅色となる。昆布の属す褐藻類には、わかめ、ひじき、もずく、メカブ等、その多くは食材となる。アオノリは緑藻類、フノリやアマノリは紅藻類に属する。
【0072】
海藻の褐藻類の昆布は、日本には14属45種類が確認されている。このうち、寒流系の褐藻類である昆布は、日本では宮城県以北の太平洋岸と北海道全域の海に分布し、とくに北海道が主産地である。昆布の国内生産量は、そのほとんどが北海道から採取されている。
【0073】
昆布には、アルギニンやアルギン酸(Alginic acid)とフコイダン(Fucoidan)と呼ばれる海藻にしか存在しない特有の粘質多糖類が含まれている。ここで、アルギニンは血圧降下作用,フコイダンは血栓やがんの予防効果などの効能が知られている。
【0074】
フコイダン(fucoidan)は、硫酸化多糖の一種。コンブやワカメ(一部位であるメカブを含む)、モズクなど褐藻類の粘質物に多く含まれる食物繊維である。なお、類似の物質は、上述した特許文献1に記載された抗ウイルス作用を有するナマコなどの動物からも見つかっている。
【0075】
昆布に含まれるアルギニンやアルギン酸(Alginic acid)とフコイダン(Fucoidan)は、主にL-フコース(多糖体)がA1-2、A1-4結合で数十から数十万個も繋がった化合物で、平均分子量は約20万である。フコイダン(Fucoidan)は、グルクロン酸を含むU-フコイダン、硫酸化フコースだけからなるF-フコイダン、ガラクトースを含むG-フコイダンなどに分類される。
【0076】
ここで、L-フコースは、キノコ類(アガリクスなど)や他の多糖体(糖鎖)成分と違い、フコースに硫酸基が結合している。そして、このL-フコースは、褐藻類(モズク、メカブ、コンブ、アカモク、ウミトラノオ等ホンダワラ類等)に多く含まれ、海藻のネバネバ成分と表現されることが多い。
【0077】
これに対して、アルギニンは、酸性の多糖類でマンヌロン酸(M)、グルロン酸(G)と呼ばれる2種類のウロン酸によって構成されています。アルギニンは、この(M)と(G)が結合する比率によって固さや弾力性が大きく変化するので、プリンやゼリー、アイスクリーム、ジャムなどの材料として、またヨーグルトやチーズなどの乳化目的、その他、人工イクラなど、様々な用途に使われており、昆布の中ではカルシウムやマグネシウムなどと結合して、ゼリー状態で存在している。
【0078】
ここで、アルギニンは、以下の(1)乃至(3)の生理作用が知られている。
(1)血圧を下げる作用
食塩の摂り過ぎは血中のナトリウムイオンとカリウムイオンのバランスを崩し、血管を収縮させることで血圧の上昇を引き起こす。特に、アルギニンの中でもカリウムと結合した「アルギニン」を食物と一緒に体の中に取り込んだ場合、アルギニンは胃酸によってカリウムを分離する。その後、腸に移って、一緒に摂取した食物に含まれるナトリウムイオンと結合して体外に運び出す。一方で、アルギニンから離れたカリウムは、カリウムイオンとなって腸から吸収され、血中のナトリウムを追い出す働きがある。このように、アルギニンは、二重の働きで血圧を下げる働きを持つ。
(2)消化酵素の働きを活発にする作用
アルギニンを食物と一緒に摂取すると、消化酵素である腸内のアミラーゼやプロテアーゼの働きを高めることで消化を促進させる。
(3)有害物質を除去する作用
有害物質や汚染物質が体内に蓄積すると、様々な異常や疾病を引き起こす。放射性ストロンチウムで汚染された実験動物にアルギニンを与えた実験では、その放射性元素を体外に排泄する働きを持つことが報告されている。
【0079】
ところで、昆布は食物繊維が豊富であり、その食物繊維の主成分は、野菜や穀物に含まれる食物繊維とは異なった化学構造を待つアルギニンやフコイダンである。
【0080】
上述したように、昆布のヌメリ成分には、この二つの多糖類が含まれている。乾物として流通する昆布には、食物繊維以外の成分として、うま味を形成するアミノ酸や甘味をもつマンニトールなどが存在する。さらに、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル分、そしてヨウ素なども栄養成分として含まれており、栄養補助の目的に合致する優れた食品である。
【0081】
本発明に係る昆布海藻などに含まれる滑り成分の「フコイダン」は、多数の生物活性を持つと言われている。例えば、抗凝血作用、細胞接着阻害作用、抗炎症作用、ウイルス感染からの細胞保護、抗腫瘍作用である。
【0082】
また、ヨウ素(ヨード)は、主に昆布等に含まれている人体に必須のミネラルであり、昔から、うがい薬の主成分として利用され、口腔奥部や気管の炎症を軽減させるものとして使用されてきている。しかし、人体に必要なヨウ素は一日当たり0.095~0.13mg(昆布:40~60mg相当)と言われているので、これを日常的に摂取する場合は、この使用制限量を超えないように配慮することも必要である。
【0083】
昆布に含まれるヌルヌル成分である水溶性食物繊維、フコイダンの働きは体内に摂取された食物の胃から小腸への移動を遅くすると言われている。消化の働きが鈍くなった胃にフコイダンが硫酸基をつかって胃の粘膜を刺激する。
【0084】
本発明に係る昆布又は海藻類及び海藻抽出物から抽出された生成物を含有する抗ウイルス剤又はウイルス不活性化剤は、このようなフコイダンの働きの一環である可能性が有る。
【0085】
すなわち、昆布に含まれるフコイダンやその成分が、腸内における粘膜免疫機能を刺激することで、全身の免疫細胞の防御力が高まることに寄与している可能性がある。例えば、人体に存在しているM細胞により抱え込まれたフコイダンを。リンパ球(NK細胞、T細胞、B細胞)が攻撃することにより、免疫に関わるリンパ球の1つNK細胞の活性化が行われ、また、活性化されたリンパ球が血液の流れに乗ると抗体の分泌が進み、ます。それにより、免疫力が高まるのである。
【0086】
さらに、本発明においては、海藻類及び海藻抽出物にクエン酸を添加して生成すると良い。ここで、クエン酸は、柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸のひとつである。爽やかな酸味を持つことから食品添加物として多用されていることからその安全性に問題は無い。
【0087】
また、クエン酸は、解糖系のホスホフルクトキナーゼ活性を阻害し、解糖系からクエン酸回路への流入を調節する因子の1つでもあり、クエン酸回路において間接的に筋肉内の乳酸を分解する点からかつては運動後の疲労軽減効果作用もあると言われている。その理由として、クエン酸は、疲労物質の一つとされるカルシウムともキレート錯体を構成するため、このカルシウムとの結合が乳酸分解におけるアシドーシス低下とのトレードオフにおいて汎的に有位であることから、疲労軽減に効果が認められ得るのである。
【0088】
唾液は、年齢にもよるが一日に約1000乃至1500mL分泌される。そして、年齢を重ねる高齢者ほど、唾液に分泌量は低下してくことも確認されている。このため、高齢者ほどウイルスや菌に感染し易くなると共に、感染した場合は重症化し易い。
【0089】
このようなことから、本発明との関係において極めて重要なのは、クエン酸の酸味作用がこれを食したときに唾液の分泌を促すことである。
【0090】
唾液の水分の大半は、耳下腺、顎下腺で分泌されるが、これに小唾液腺(口蓋腺、舌腺、頬腺、口唇腺、臼歯腺、エブネル腺)由来の唾液が加わる。安静時は、顎下腺からの唾液が60乃至70%である。顎下腺・舌下腺唾液の排出部は、舌下部(口腔底)である。
【0091】
一方、クエン酸等を食したときには、その味覚刺激効果により唾液の分泌が促進されることになる。そして、唾液には、消化作用、口腔自浄作用、口腔粘膜保護作用、PH調節、さらには、抗菌作用、抗ウイルス作用などの機能があることが確認されている。このように、クエン酸による多量の唾液排出作用と唾液のもつ抗ウイルス作用により、ウイルス量と感染力の長期化を抑制するのである。
【0092】
さらに、本発明においては、海藻類及び海藻抽出物に重曹を添加して生成すると良い。ここで、重曹は、上述したように、従来からベーキングパウダーとして、クッキー、パンケーキ等を膨らませる弱アルカリ性の食材として食されてきた安全性の高い食品添加物である。
【0093】
そして、食品衛生法に規定に基づいて作られた重曹は、医薬品としては、胃酸過多に対して制酸剤として使われることもある。そして、胃液には塩酸が含まれていることから重曹を構成する炭酸水素ナトリウムは分解して二酸化炭素の気泡が発生し、この気泡が味覚や胃を刺激し、さらなる唾液や胃液の分泌を促進するのである。
【0094】
I.[確認試験(1)]
上記観点から、本願の出願人は、外部の試験機関を使って、最初に、本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品を構成する海藻類による、SARS-CoV-2の形態に最も近いコロナウイルスであるPEDウイルスに対する不活性化効果の試験(1)行ったのである。
【0095】
尚、以下、本願において順次記載するI.[確認試験(1)]からVIII.[確認試験(8)]については、本願出願人が、外部の権威ある試験機関に委託して行ったものであり、本願において、その試験結果に何らかの操作を加えたりまたは評価することなく、当該試験機関からの第1次乃至第8次の試験結果の報告書を掲載している。但し、確認試験結果を示す試験資材のウイルス減少数は、10の対数表示で記載されていることから、その数値を理解し易くするために、当該対数表示値を10進法に数値化した表を加えた。
【0096】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材I:海藻類及び海藻抽出物を生理食塩水に溶かし2%溶液とした。
【0097】
試験資材II:海藻類及び海藻抽出物を沸騰水(100°C)の生理食塩水に2%になるように溶かし、冷却後使用した。ここで、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0098】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のP-5V株を使用した。
【0099】
このPEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)は、通称、豚感染症ウイルスと呼ばれ、病原体であるPEDウイルスは、コロナウイルス科のアルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属し、エンベロープの表面に放射状(王冠状すなわちコロナ状)に突き出たスパイクをもち、そのゲノムはプラス一本鎖RNAである。2020年にパンデミック感染した新型コロナウイルス(COVID-19)に最も近似している類型のコロナウイルスである。
【0100】
そして、コロナウイルス科のアルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属するウイルスは、このエンベロープの表面に放射状に突き出たコロナ状のスパイクの先端部が、人体を構成する細胞膜の表面に取り付いてウイルスが人体内に浸透しその結果、当該ウイルスへの感染に至ることが科学的に判明しているのである。
【0101】
従って、上述した本願の確認試験において、コロナウイルス科アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属するPEDウイルスに対する不活性化作用が、本願のウイルス不活性化確認試験において確認されたということは、新型コロナウイルス(COVID-19)に対してもその不活性化作用を発揮し得る可能性が極めて高いことが推測され期待されるのである。
【0102】
PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)の培養細胞としては、ベロ細胞(Vero Cell)を用いた。このベロ細胞は、アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来し、細胞培養に使われる細胞株である。ヘラ細胞(Hela Cell)と並んでもっともよく使われている細胞株の一つである。
【0103】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材(海藻類及び海藻抽出物を生理食塩水に溶かした2%溶液)1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後1分とした。
【0104】
対照区としては、上記した試験資材を添加せずに、単にリン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0分及び1分とした。
【0105】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0106】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0107】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。その結果、細胞毒性について試験資材100倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を100倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。この為、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0108】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
【0109】
ウイルス液添加後、混合液として室温(25°C)にて所定の時間静置した。
【0110】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
上記試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0111】
判定は、37°C、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0112】
(F)結果
図1は、本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品による、SARS-CoV-2の形態に近似のコロナウイルスであるPEDウイルスに対する効果の試験結果(1)を示す、表1は、この試験結果を纏めたものである。
【0113】
尚、図1の縦軸は、後続する図2乃至図7も同様に、その縦軸を10の指数表示としており、一枠が下がる毎に十分の一になることを意味する。
【0114】
対照区(試験資材をしない比較対象試験区)では、試験開始後から試験開始後1分までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.1TCID50/mL)。
【0115】
【表1】
【0116】
一方、試験区では開始後1分で<103.5TCID50/mL(検出限界未満:99.7%以上減少)となった。この、「検出限界未満:99.7%以上減少」という結果は、驚嘆すべき極めて高いウイルス不活性化作用を示す値である。
【0117】
(G)考察
今回、試験資材の通常豚感染コロナウイルスと呼ばれているPEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、PEDウイルスに対しては、接触後1分の反応で99.7%以上の驚異的なウイルス不活性化効果があることが判明したのである。
【0118】
上述したように、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のゲノムはプラス一本鎖RNAであり、新型コロナウイルス(COVID-19)に最も近似している類型のコロナウイルスであることから、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する不活性化効果も大きいと推測された。
【0119】
II.[確認試験(2)]
そこで、本願の出願人は、上述したPEDウイルスに対する本発明の衛生用品に係る海藻類の顕著な抗ウイルス効果及びウイルス不活性化効果を確認したことから、次に、新型コロナウイ「SARS-CoV-2」に対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0120】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%アルギニンパウダー生理食塩水溶液
試験資材4:2%フコイダンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材5:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:2%(アルギニン+フコイダン+ヨウ素)パウダー生理食塩水溶液
尚、対照資材として、滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0121】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、SARS-CoV-02(新型コロナウイルス)を使用した。尚、このSARS-CoV-02は、人由来分離株であって、唾液よりvero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株である。
【0122】
尚、培養細胞であるvero細胞は、アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞である。
【0123】
(C)区の設定
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0124】
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0125】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0126】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0127】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0128】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0129】
【表2A】
【0130】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
【0131】
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0132】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0133】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0134】
(F)結果
図2は、本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品である海藻類の昆布について、また、海藻類の主要な構成成分であるアルギン酸、フコイダン、ヨウ素の夫々について、さらには、アルギン酸+フコイダン+ヨウ素の混合成分について、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対する効果の試験結果を示すものである。また、表2A、表2B及び表2Cにおいて、図2に示した試験結果の詳細を纏めた。尚、表2Cは、表2Bを理解しやすくしたものである。
【0135】
対照区においては、試験開始後から試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0136】
一方、試験区1では開始後15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区3では15秒で59.3%、60秒で93.7%、試験区4では15秒で97.5%、60秒で99.7%、試験区5では15秒で90.0%、60秒で99.0%、試験区6では15秒で98.4%、60秒で99.8%ウイルス感染価の減少となった。
【0137】
上記したSARS-CoV-02に対するウイルス感染嫁価は、概ね、検出限界値に近い数値であり、本試験によって驚嘆すべき極めて高いウイルス不活性化作用が確認されたのである。
【0138】
しかも、海藻類及び海藻抽出物の何れも2%溶液であり、昆布パウダーの場合、その粒子径が5μmであることから、本発明は、洗口液、口腔用、鼻腔用又は咽喉用の何れの洗浄剤を含む衛生用品に適用しても、違和感なく使用できることが判明したのである。
【0139】
【表2B】
【0140】
【表2C】
【0141】
(G)考察
今回、試験資材のSARS-CoV-2に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、93.7~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0142】
III.[確認試験(3)]
さらに、本願の出願人は、本発明の衛生用品にアルコールを添加したPEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0143】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:1%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材4:0.5%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材5:アルコール分25度麦焼酎を精製水で 3倍希釈液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:アルコール分25度5%昆布焼酎を精製水で3倍希釈液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0144】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)のP-5V株を使用した。
【0145】
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0146】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0147】
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0148】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0149】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0150】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0151】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0152】
【表3A】
【0153】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
【0154】
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0155】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0156】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0157】
(F)結果
PEDウイルスに対する試験結果を、図3、表3A、表3B及び表3Cに示す。尚、表3Cは、表3Bの表示を理解し易くしたものである。
【0158】
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.7TCID50/mL)。
【0159】
一方、試験区1では開始後15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区3では60秒で99.8%、試験区4では60秒で97.4%、試験区5では60秒で93.6%、試験区6では開始後60秒で97.4%ウイルス感染価の減少となった。
【0160】
【表3B】
【0161】
【表3C】
【0162】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、93.6~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0163】
IV.[確認試験(4)]
さらに、本願の出願人は、本発明の衛生用品である海藻類の昆布とワカメについて、さらには、海藻類の主要な構成成分であるヨウ素、アルギニン、フコイダンのそれぞれについて、さらには、ヨウ素+アルギニン+フコイダンの混合成分について、PEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0164】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%昆布パウダー水溶液
試験資材4:2%ワカメパウダー生理食塩水溶液
試験資材5:2%ヨウ素パウダー生理食塩水溶液
試験資材6:2%アルギニンパウダー生理食塩水溶液
試験資材7:2%フコイダンパウダー生理食塩水溶液
試験資材8:2%(ヨウ素+フコイダン+アルギニンパウダー)生理食塩水溶液
尚、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0165】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)(豚感染性のコロナウイルス)のP-5V株を使用した。
【0166】
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0167】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0168】
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、15秒、30秒、60秒とした。
【0169】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0170】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0171】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0172】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなった。最大で試験資材100倍液においても細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を100倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0173】
【表4A】
【0174】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
【0175】
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0176】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0177】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0178】
(F)結果
PEDウイルスに対する試験結果を図4、表4A、表4B及び表4Cに示す。尚、表4Cは、表4Bを理解し易くした表である。
【0179】
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0180】
一方、試験区1では開始後30秒で99.8%、試験区2では開始後30秒で99.9%以上、試験区3では試験開始後60秒で99.7%、試験区4では開始後60秒で98.4%、試験区5では試験開始後60秒で98.4%、試験区6では開始後60秒で59.3%、試験区7では試験開始後60秒で99.0%、試験区8では開始後60秒で99.5%のウイルス感染価の減少となった。
【0181】
【表4B】
【0182】
【表4C】
【0183】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、59.3~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0184】
V.[確認試験(5)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用品による、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の確認試験行った。以下、その詳細を記載する。
【0185】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌生理食塩水を使用した。
【0186】
(B)供試微生物
供試微生物については、大腸菌(Escherichia coli ATCC117775)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC6538)を使用した。
【0187】
上記微生物をニュートリエント培地にて前培養し、滅菌精製水にて約10CFU/mLの濃度に調製したものを試験菌液とした。
【0188】
(C)区の設定
試験区としては、対照資材10mLに、0.1mLの試験菌液を添加し、感作時間として、試験開始後30秒、60秒とした。
【0189】
対照区としては、試験資材10mLに、0.1mLの試験菌液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、30秒、60秒とした。
【0190】
(D)試験方法
「JIS Z 2801(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・殺菌効果)」及び石炭酸係数法を参考として実施した。
【0191】
(E)試験手順
(E-1)微生物検査方法(試験液の細菌数測定)
試験液を、滅菌生理食塩水で適時希釈し、ニュートリエント寒天培地及び各選択培地(大腸菌:デソキシコレート寒天培地及び黄色ブドウ球菌:卵黄加マンニット食塩培地)で培養した。培養は、好気条件で35度24~48時間行い、培養後に発育した集落を計数して当該菌数とした。
【0192】
(E-2)試験方法
試験資材及び対照資材を滅菌試験管に入れ、資材10mLに対し試験菌液を0.1mL添加してよく混合した。
【0193】
試験設定に従い、混合直後及び室温で一定時間反応させた後、残存する生菌数を微生物検査方法に従い測定した。
【0194】
(F)結果
[大腸菌]
試験結果を、表5Aに示した。
対照区については試験開始時から終了時まで同数となり、640000CFU/mLであった。試験開始60秒後では、試験区1で360000CFU/mL(43.7%減少)、試験区2で320000 CFU/mL(50.0%減少)となった。
【0195】
【表5A】
【0196】
[黄色ブドウ球菌]
試験結果を、表5Bに示した。
対照区については試験開始時から終了時までほぼ同数となり、2300000CFU/mLであった。試験開始60秒後では、試験区1で1100000CFU/mL(52.1%減少)、試験区2で1600000CFU/mL(30.4%減少)となった。
【0197】
【表5B】
【0198】
(G)考察
試験の結果、大腸菌に対し、試験資材1では接触後60秒で43.7%、試験資材2では50.0%の減少が確認された。また、黄色ブドウ球菌に対し、試験資材1では接触後60秒で52.1%、試験資材2では30.4%の菌数減少が確認された。
【0199】
VI.[確認試験(6)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用品を構成する要素又は添加物である、L-グルタミン酸、βカロテン、赤ワイン(アルコール14%とポリフェノールを含有する)、ラミナラン及びフコイダンのそれぞれについて、PEDウイルスに対する効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0200】
(A)試験資材:海藻類、海藻抽出物及び添加物
試験資材1:2%L-グルタミン酸パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材2:2%βカロテンパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材3:2%アオサ微粒子パウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材4:アルコール分14%赤ワイン液
試験資材5:1%昆布5μmパウダーアルコール分14%赤ワイン液(沸騰水溶解作成)
試験資材6:1%ラミナランパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
試験資材7:フコイダン水溶液
尚、対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0201】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、PEDウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus)(豚感染性のコロナウイルス)のP-5V株を使用した。
【0202】
尚、培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0203】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0204】
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0205】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0206】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0207】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0208】
その結果、細胞毒性について、表6Aの通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0209】
【表6A】
【0210】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0211】
(E-3)本試験・細胞接種
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0212】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0213】
(F)結果
上記試験結果を、図6、表6A、表6B及び表6Cに示した。尚、表6Cは、表6Bを理解し易くした表である。
【0214】
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.5TCID50/mL)。
【0215】
試験区1では開始後15秒で37.5%、60秒で90.0%、試験区2では15秒で75.3%、60秒で90.0%、試験区3では15秒で59.3%、60秒で93.7%、試験区4では15秒で37.5%、60秒で99.7%、試験区5では15秒で99.7%、60秒で99.9%、試験区6では15秒で95.9%、60秒で99.3%、試験区7では15秒で98.4%、60秒で99.8%ウイルス感染価の減少となった。
【0216】
【表6B】
【0217】
【表6C】
【0218】
(G)考察
今回、試験資材のPEDウイルス(豚感染コロナウイルス)に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、90.0~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0219】
VII.[確認試験(7)]
さらに、本願出願人は、本発明の衛生用品による、下記のインフルエンザウイルスに対する作用効果の確認試験を行った。以下、その詳細を記載する。
【0220】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0221】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、インフルエンザウイルス(swine influenza virus H1N1 IOWA 株)を使用した。
【0222】
尚、培養細胞は、MDCK細胞(イヌ腎臓由来株化細胞)である。
【0223】
(C)区の設定
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0224】
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0225】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0226】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0227】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0228】
その結果、細胞毒性について、いずれの試験資材の10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0229】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0230】
(E-3)本試験・細胞接種
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した
【0231】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、各ウェル内の培養上清を回収し、赤血球凝集反応によりウイルスの増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0232】
(F)結果
試験結果を、図7、表7A及び表7Bに示す。
【0233】
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.9TCID50/mL)。
【0234】
試験区1では開始後15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.3%、60秒で99.9%ウイルス感染価の減少となった。
【0235】
【表7A】
【0236】
【表7B】
【0237】
(G)考察
今回、試験資材のインフルエンザウイルスに対する不活性化効果試験を実施した。その結果15秒~60秒の接触で、99.3~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0238】
VIII.[確認試験(8)]
上記した[確認試験(1)]乃至[確認試験(7)]の結果を受けて、本願出願人は、さらに、昆布及びその抽出物から成るSARS-CoV-2を含むウイルスに対する不活性化作用を、さらに詳細に確認するために、確認試験(8)を行った。
【0239】
図8は、本発明に係る口腔用、鼻孔用又は咽喉用の衛生用品による、新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2に対する効果の試験結果(8)を示す。
【0240】
(A)試験資材:海藻類及び海藻抽出物
試験資材1:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材2:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液
試験資材3:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材4:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材5:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材6:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材7:2%昆布パウダー粒子径5μm生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材8:2%ラミナランパウダー生理食塩水溶液
試験資材9:2%フロログルシノールパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶液作成)
試験資材10:2%ツルアラメパウダー生理食塩水溶液(沸騰水溶解作成)
尚、対照資材として、滅菌リン酸緩衝液を使用した。
【0241】
ところで、上記した「試験資材1」と「試験資材2」、そして「試験資材3」-「試験資材7」は同じであるが、これは、同じ試験状態における効果のバラツキを確認し、この試験結果の信頼性を知るために行っている。
【0242】
(B)供試微生物
供試微生物(ウイルス)については、SARS-CoV-02(新型コロナウイルス)を使用した。尚、このSARS-CoV-02は、人由来分離株であって、唾液よりvero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株である。尚、ここで使用した培養細胞は、vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)である。
【0243】
(C)区の設定
対照区としては、リン酸緩衝液1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後0秒、60秒とした。
【0244】
試験区としては、上記した試験資材1mLに、0.1mLのウイルス液を添加し、感作時間として、試験開始後15秒、30秒、60秒とした。
【0245】
(D)試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
【0246】
(E)試験手順
(E-1)予備試験:
試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。
【0247】
試験資材をリン酸緩衝液で10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウイルス濃度を決定した。
【0248】
その結果、細胞毒性について、次表の通りとなり、最大で試験資材10倍液において細胞の発育不良が確認された。このため、試験に際しては、試験資材とウイルス液の混合液を10倍以上希釈した後細胞に接種する必要があると判明した。また、ウイルス添加濃度は10TCID50/mL以上とした。
【0249】
【表8A】
【0250】
(E-2)本試験・試験液混合
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各1mLをそれぞれ分取し、予備試験で決定した濃度にウイルス液を添加した。
【0251】
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0252】
(E-3)本試験・細胞接種及び菌数測定
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。
【0253】
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0254】
(F)結果
上記のSARS-CoV-02に対する試験結果を、図8、表8A、表8B、表8C及び表8Dに示す。尚、表8C及び表8Dは、表8Bを理解しやすくしたものである。
【0255】
対照区では試験開始後から、試験開始後60秒までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.3TCID50/mL)。
【0256】
一方、試験区1では開始後15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区2では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区3では15秒で99.7%、60秒で99.7%、試験区4では15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区5では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区6では15秒で99.3%、60秒で99.9%、試験区7では15秒で99.6%、60秒で99.9%、試験区8では15秒で90.0%、60秒で96.0%、試験区9では15秒で96.0%、60秒で98.4%、試験区10では15秒で99.0%、60秒で99.6%、ウイルス感染価の減少となった。
【0257】
【表8B】
【0258】
【表8C】
【0259】
【表8D】
【0260】
以下、上述したI.[確認試験(1)]からVIII.[確認試験(8)]の詳細な結果を表9乃至表12Dに纏めた。
【0261】
表9は、海藻成分別のウイルス不活性化効果を纏めたものである。
【0262】
表9に示すように、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、この「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の減少)を奏することが確認されたのである。このことから、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」の変異種に対しても同等の顕著な不活性化作用を奏することが予想される。
【0263】
【表9】
【0264】
表10は、SARS-CoV-2、PEDV(PEDウイルス)、インフルエンザウイルス別のウイルス不活性化効果(ウイルス減少率)を纏めた表であり、また、2%昆布パウダー粒子径が5μmの生理食塩水と同2%昆布パウダー粒子径5μmの沸騰水溶液の生理食塩水について試験数を増やし、不活性化の効果のバラツキを確認した。
【0265】
表10に示すように、上記した表10と同様に、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「インフルエンザウイルス」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。このことから、香港型やソ連型等の種々のタイプの「インフルエンザウイルス」、「SARS-CoV-2」の種々の変異種に対しても同等の顕著な不活性化作用を奏することが容易に予想される。
【0266】
【表10】
【0267】
表11は、海藻の複数の種類(昆布、ワカメ、アオサ、ツルアラメ)の2%パウダー微粒子を含む生理食塩水のPEDウイルスに対する不活性化効果を纏めた表である。
【0268】
表11に示すように、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0269】
【表11】
【0270】
表12Aは、本発明に係る海藻類のパウダーの、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0271】
表12Aに示すように、上記した表10と同様、本発明に係る海藻類のパウダーは、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0272】
【表12A】
【0273】
表12Bは、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分及び各種添加物の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」及び「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0274】
表12Bに示すように、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分及び各種添加物は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」及び「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0275】
【表12B】
【0276】
表12Cは、アルコールと昆布成分を含む酒による、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果を纏めた表である。
【0277】
表12Cに示すとおり、従来から知られているように、アルコールと昆布成分を含むワインは、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0278】
【表12C】
【0279】
表12Dは、本発明に係る海藻類のパウダーの、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対対する殺菌効果結果を纏めた表である。
【0280】
表12Dに示すように、本発明に係る海藻類のパウダーは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して顕著な殺菌効果を奏することが確認されたのである。このことから、本発明に係る海藻類のパウダーは、食中毒を引き起こす他の細菌に対する殺菌効果を奏することが理解できる。
【0281】
【表12D】
【0282】
表13は、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分及び各添加物の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対する不活性化効果(ウイルス数の激減)を纏めた表である。
【0283】
表13に示すように、本発明に係る海藻類を構成する主要な成分及び各添加物は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」と、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」に対して、顕著な不活性化効果(ウイルス数の激減)を奏することが確認されたのである。
【0284】
また、表13は、本発明に係る海藻類のパウダー及びその成分の、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」、「ノロウイルス」等のウイルスに対する不活性化効果、及び「大腸菌」と「黄色ブドウ球菌」に対する殺菌効果を纏めた表である。
【0285】
表13に示すように、本発明に係る海藻類のパウダーとその成分は、COVID-21を発症させる新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」、「SARS-CoV-2」と近似の「PEDウイルス」、「ノロウイルス」等のウイルスに対する顕著な不活性化作用のみならず、「大腸菌」や「黄色ブドウ球菌」に対する殺菌効果を奏することが確認されたのである。
【0286】
【表13】
【0287】
(G)考察
今回、試験資材のSARS-CoV-2に対する不活性化効果試験を実施した。その結果、最大60秒の接触で、96.0~99.9%の不活性化効果があることが判明したのである。
【0288】
本発明に係る昆布、ワカメ、アオサ等の海藻類若しくは海藻類のパウダーから抽出された海藻類及び海藻抽出物から抽出された生成物を含有する抗ウイルス剤又はウイルス不活性化剤は、ワクチンのような副作用を生じることがなく、また特定のウイルスのみに対する感染防止作用があるのではなく、日常的にこれを食し又はそれから抽出されたエキス等を摂取することにより、種々のウイルスに感染しにくくするか又はウイルスに感染しても症状を悪化させない効果を奏するウイルス不活性化が期待される。
【0289】
また、本発明に係る海藻類及び海藻抽出物との関係において重要なのは、クエン酸の酸味作用がこれを食したときに唾液の分泌を促すことである。また、クエン酸等を食したときには、その味覚刺激効果により唾液の分泌が促進されることになる。そして、唾液には、消化作用、口腔自浄作用、口腔粘膜保護作用、PH調節、さらには、抗菌作用、抗ウイルス作用を発揮するのである。
【0290】
さらに、本発明に係る海藻類及び海藻抽出物との関係において、重曹は、食品衛生法に規定に基づいて作られた食品添加物であり、医薬品としては、胃酸過多に対して制酸剤として使われることもあり、それ自体に殺菌作用や抗ウイルス作用を有するだけでなく、唾液の分泌を促すのである。
【0291】
ところで、上述したコロナ型ウイルスに対する不活性化作用が確認された海藻類及び海藻抽出物は、食塩水又は生理食塩水(試験では、重量比0.9%で確認)に溶かして生成されたものを使用したことから、例えば、飴や昆布茶等の食品や調理食品にうまみ成分を添加するための食品添加物として日常的に使用することが可能であり望ましい。
【0292】
また、昆布は、通常、粘質多糖類を含有するフコイダンを5%程度含むことから、従来から確認されているフコイダン(F型、U型、G型)による人体の気管等に対するインフルエンザ特異的分泌型Ig抗体産生促進も期待されるのである。
【0293】
また、昆布に豊富に含まれるヨウ素は、人体において甲状腺に存在しており甲状腺ホルモンを構成している。甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的なプロセスを制御しており、特に、胎児や乳幼児において、脳、抹消組織、骨格などの発達と成長を促すものであることから、妊娠中の女性や乳幼児が適量摂取しても何ら問題が無くさらには積極的に摂取することが望ましい栄養素である。
【0294】
歯を失う原因ともいわれている歯周菌は、食生活の欧米化と並行した生活習慣病のひとつ。歯垢(プラーク)を主要な原因とする炎症疾患が多いが、単に歯垢のみでなく、多くの複合的要因によって発生する。また、歯垢が一切関係ない(非プラーク性)歯周疾患も多数存在する。さらに、原因因子には個人差があり、歯周病の罹りやすさや進行度合いは人によって違う。
【0295】
世界保健機構(WHO)の報告によれば、世界の総人口の約38%がヨウ素不足であるとしている。日本人は、ヨウ素を一日当たり平均値として要素を概ね1.5ミリグラム程度摂取していると推定されているが、ヨウ素の摂取に起因する甲状腺機能の低下や甲状腺腫の発生は認められていない。
【0296】
しかし、昆布の出汁を主とした一日当たり28ミリグラムの一年間を通しての摂取により、甲状腺中毒症が発症したと報告があるので長期間に亘る過剰摂取は控えることが望ましく、日本では、一日当たり2.2ミリグラムを上限すべきであるとの報告がなされている。
【0297】
尚、昆布のエキスは、細かく裁断した海藻類及びその抽出物に水(食塩水を含む)等の浸出剤を加えて一定時間そのまま放置して昆布に含まれる種々の成分を浸出させ、当該浸出液を濾過したり又は揮発性の成分が失われないように、例えば85°C以下の減圧化で濃縮して生成させる。
【0298】
このようにした濃縮液は水飴状の濃度にしたものを、飴、のど飴、チューイングガム、おしゃぶり昆布、トローチ、飲料水等の従来の製造工程において添加すれば、食品としての飴、チューイングガム、おしゃぶり昆布等の食品としての飲料水を製造することができる。
【0299】
同様に、昆布エキスを含有する濃縮液は、錠剤又はカプセル等のサプリメントとして、医薬部外品として、うがい薬又は鼻洗浄液として利用できるのである。
【0300】
また、昆布エキスは、体内に摂取するだけなく、うがい薬又は鼻洗浄液、消毒剤、石鹸類(シャンプー、固形石鹸、手洗液等)として利用できる。
【0301】
このように、本発明に係る口腔衛生用品又は食品は、ウイルスや細菌による呼吸器疾患や消化器疾患は、呼吸のための咽喉(口、喉と気管)と、飲食物を取り入れる口腔(唇、口の中、歯、舌、食道)を経由して体内に入り込むことから、口腔と咽喉内において、外界から入り込んだウイルスや細菌を、極めて有効に且つ人体へ何らの副作用を生じさせることが無い腔衛生用品及び食品を提供できるのである。
【0302】
そして、本発明に係る衛生用品においては、特定のウイルスを不活性化させるワクチンや、特定の細菌を殺菌する薬剤ではなく、種々のウイルスを不活性化させ、種々の細菌を殺菌できたことが確認できたのである。
【0303】
そして、本発明に係る衛生用品は、特定の疾患を治療するための治療薬や医薬品ではなく、長期間に亘って摂取/服用しても健康上の安全性に何ら起こさせる心配がなく、耐性ウイルスや耐性菌が生じる恐れもないのである。
【0304】
さらに、特に注目すべき点は、本発明に係る海藻類及びその抽出物が、咽喉、鼻孔、口腔、または気管支等の呼吸器官等の人体における敏感な粘膜に触れた状態で摂取又は服用されても、痛み、苦痛、違和感を生じさせず、食感、味覚、嗅覚においても問題がないように、本発明に係る海藻類及び/又はその抽出物を、概ね5μmのサイズに極めて微細に粉砕し、且つこの極微細化サイズのパウダーを生理食塩水(冷水及び沸騰水)に溶解させての効果確認試験において、顕著なウイルスの不活性化作用及び殺菌作用を確認できたことである。
【0305】
ここで、本発明に係る口腔衛生用品又は食品は、人に対して違和感ない状態で一定時間口腔内に留めるようにして利用することから、ウイルス以外の大腸菌、黄色ブドウ球菌のみならず、虫歯菌や歯周菌を減菌する効果も期待できるのである。
【0306】
さらに、歯周プラーク(歯垢)の中の歯周病菌がハグキに炎症を起こし、周りの組織を破壊していく細菌感染症であり、近年、糖尿病、脳疾患、心臓疾患の一因になっているとの研究論文が発表されており、本発明に係る口腔衛生用品又は食品は、これらの副次的な作用効果を期待できるのである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8