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特開2022-94927接合システム、接合部材、および、接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094927
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】接合システム、接合部材、および、接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/61 20060101AFI20220620BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E04B1/61 502Z
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186186
(22)【出願日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020207309
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 俊之
【テーマコード(参考)】
2D059
2E125
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG55
2E125AA57
2E125AE02
2E125BA41
2E125BB02
2E125BD01
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】第1のループ状部と第2のループ状部との間で軸力を確実性高く伝達させることができる接合システムを提供する。
【解決手段】接合システム1Aは、一対の板状セグメント10,20の対向部12,22同士を対向させて、一対の板状セグメント10,20を接合する。接合システム1Aは、第1の板状セグメント10の対向部12から突出し、一対の板状セグメント10,20の対向方向FDに対して交差する第1の交差方向CD1に開口する第1のループ状部40と、第2の板状セグメント20の対向部22から突出し、対向方向FDに対して交差する第2の交差方向CD2に開口する第2のループ状部50と、第1のループ状部40および第2のループ状部50を機械的接合によって接合する金属製の接合部材60とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントを接合する接合システムであって、
前記第1の板状セグメントの対向部から突出し、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向方向に対して交差する第1の交差方向に開口する第1のループ状部と、
前記第2の板状セグメントの対向部から突出し、前記対向方向に対して交差する第2の交差方向に開口する第2のループ状部と、
前記第1のループ状部および前記第2のループ状部を機械的接合によって接合する金属製の接合部材とを備える、接合システム。
【請求項2】
前記接合部材は、前記第1のループ状部の開口に挿入され前記第1のループ状部に接する第1の接触部材と、
前記第2のループ状部の開口に挿入され前記第2のループ状部に接する第2の接触部材とを含む、請求項1に記載の接合システム。
【請求項3】
前記接合部材は、前記第1の接触部材と前記第2の接触部材との間に嵌め込まれ、前記第1の接触部材および前記第2の接触部材をそれぞれ前記第1のループ状部および前記第2のループ状部に向けて押し付けるくさび部材をさらに含む、請求項2に記載の接合システム。
【請求項4】
前記接合部材は、前記くさび部材を前記第1の接触部材および前記第2の接触部材に対して締め付け、締付度合に応じて前記くさび部材を前記第1の接触部材および前記第2の接触部材の両方に対して押し付ける押付力を調整可能な締付部材をさらに含む、請求項3に記載の接合システム。
【請求項5】
前記第1の交差方向および前記第2の交差方向は同一方向であり、前記第1のループ状部の開口および前記第2のループ状部の開口は前記対向方向に対する直交方向から見て重なっている、請求項1~4のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項6】
前記第1のループ状部は、前記第1の交差方向が水平方向に対して交差した状態で、鉛直方向に対して交差する第1の方向に沿って前記第1の板状セグメントの対向部に複数設けられ、
前記第2のループ状部は、前記第2の交差方向が水平方向に対して交差した状態で、前記第1の方向に沿って前記第2の板状セグメントの対向部に複数設けられ、
複数の前記第1のループ状部に対して鉛直方向の少なくとも一方側がそれぞれ開放された複数の開放部をさらに備え、
複数の前記第2のループ状部の開口は、鉛直方向の前記一方側から複数の前記開放部のそれぞれを通って複数の前記第1のループ状部のそれぞれに対して近づくことにより、複数の前記第1のループ状部の開口のそれぞれと鉛直方向に1つずつ重なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項7】
前記接合部材は、前記第1のループ状部または前記第2のループ状部に対する前記接合部材の回転を抑制する回転抑制部をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項8】
前記回転抑制部は、前記第1のループ状部または前記第2のループ状部に接する接触部を含み、
前記接触部は、前記接合部材に作用する回転力に対する抵抗力を、前記接触部に接する前記ループ状部から受ける接触抵抗力受け部を含む、請求項7に記載の接合システム。
【請求項9】
第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントを接合する際に、前記第1の板状セグメントの対向部から突出し、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向方向に対して交差する第1の交差方向に開口する第1のループ状部と、前記第2の板状セグメントの対向部から突出し、前記対向方向に対して交差する第2の交差方向に開口する第2のループ状部とを機械的接合によって接合する、金属製の接合部材。
【請求項10】
第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントを接合する接合方法であって、
前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向部同士を対向させることと、
前記第1の板状セグメントの対向部から突出する第1のループ状部と、前記第2の板状セグメントの対向部から突出する第2のループ状部とを機械的接合によって接合することとを含み、
前記接合することは、前記第1のループ状部に接するように前記第1のループ状部に第1の接触部材を挿入することと、
前記第2のループ状部に接するように前記第2のループ状部に第2の接触部材を挿入することと、
前記第1の接触部材および前記第2の接触部材をそれぞれ前記第1のループ状部および前記第2のループ状部に接させた状態で、前記第1の接触部材および前記第2の接触部材を固定することとを含む、接合方法。
【請求項11】
一対の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記一対の板状セグメントを接合する接合システムであって、
一方の前記板状セグメントに設けられる第1の接合部と、
他方の前記板状セグメントに設けられる第2の接合部と、
前記第1の接合部および前記第2の接合部を機械的接合によって接合する金属製の接合部材とを備える、接合システム。
【請求項12】
前記接合部材は、前記第1の接合部および前記第2の接合部の両方に接し、前記第1の接合部および前記第2の接合部の間で力を伝達する力伝達部材を含む、請求項11に記載の接合システム。
【請求項13】
前記接合部材は、前記力伝達部材を前記第1の接合部および前記第2の接合部に対して締め付け、締付度合に応じて前記力伝達部材を前記第1の接合部および前記第2の接合部の両方に対して押し付ける押付力を調整可能な締付部材をさらに含む、請求項12に記載の接合システム。
【請求項14】
前記第1の接合部は、
前記一方の板状セグメントの対向部から突出する外側ループ状部と、
前記外側ループ状部および前記接合部材に接するように前記外側ループ状部の開口に挿入される接触部材とを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項15】
前記第2の接合部は、前記他方の板状セグメントの対向部から突出し、前記接合部材に接する外側接触部を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項16】
前記第2の接合部は、
前記他方の板状セグメントの内部に配置される内側ループ状部と、
前記内側ループ状部に接するように前記内側ループ状部の開口に挿入される内側接触部とを含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の接合システム。
【請求項17】
一対の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記一対の板状セグメントを接合する際に、一方の板状セグメントに設けられる第1の接合部と、他方の板状セグメントに設けられる第2の接合部とを機械的接合によって接合する、金属製の接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対の板状セグメントを接合する接合システム、一対の板状セグメントを接合する際に用いられる接合部材、および、一対の板状セグメントを接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のプレキャスト床版同士を接合する接合構造が開示されている。この接合構造では、各プレキャスト床版の端面から複数の継手鉄筋が延出しており、複数の継手鉄筋が床版端面の幅方向において間隔を空けて設けられている。プレキャスト床版を架設する際、一方のプレキャスト床版側の各継手鉄筋と他方のプレキャスト床版側の各継手鉄筋とが、橋軸直交方向(床版端面の幅方向)に交互に位置するように配置され、プレキャスト床版端面間にコンクリート等の間詰め材が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-2164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の接合構造では、一方のプレキャスト床版の継手鉄筋と他方のプレキャスト床版の継手鉄筋とが、コンクリート等の間詰め材を介して連結されており、継手鉄筋と間詰め材との間に生ずる付着力および支圧力によって橋軸方向の引張強度を発現させている。そのため、コンクリート等の間詰め材が劣化等した場合、継手鉄筋と間詰め材との間における軸力伝達が不充分となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一態様は、第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントを接合する接合システムである。この接合システムは、前記第1の板状セグメントの対向部から突出し、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向方向に対して交差する第1の交差方向に開口する第1のループ状部と、前記第2の板状セグメントの対向部から突出し、前記対向方向に対して交差する第2の交差方向に開口する第2のループ状部と、前記第1のループ状部および前記第2のループ状部を機械的接合によって接合する金属製の接合部材とを備える。
【0006】
この接合システムによれば、第1のループ状部と第2のループ状部とが、金属製の接合部材によって機械的に接合される。すなわち、第1のループ状部と第2のループ状部とが、コンクリート等の間詰め材を介することなく連結される。これにより、コンクリート等の間詰め材が劣化等した場合であっても、第1のループ状部と第2のループ状部との間で軸力を確実性高く伝達させることができる。
【0007】
前記接合部材は、前記第1のループ状部の開口に挿入され前記第1のループ状部に接する第1の接触部材と、前記第2のループ状部の開口に挿入され前記第2のループ状部に接する第2の接触部材とを含むことが好ましい。
【0008】
この接合システムによれば、接合部材に含まれる各接触部材が、対応するループ状部の開口内でループ状部に接しているため、第1のループ状部と第2のループ状部との間で軸力を直接伝達させやすい。したがって、第1のループ状部と第2のループ状部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0009】
前記接合部材は、前記第1の接触部材と前記第2の接触部材との間に嵌め込まれ、前記第1の接触部材および前記第2の接触部材をそれぞれ前記第1のループ状部および前記第2のループ状部に向けて押し付けるくさび部材をさらに含むことが好ましい。
【0010】
くさび部材が第1の接触部材と第2の接触部材との間に嵌め込まれることによって、くさび効果を発現させることができる。そのため、各接触部材を対応するループ状部に対して押し付けることができる。したがって、第1のループ状部と第2のループ状部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0011】
前記接合部材は、前記くさび部材を前記第1の接触部材および前記第2の接触部材に対して締め付け、締付度合に応じて前記くさび部材を前記第1の接触部材および前記第2の接触部材に対して押し付ける押付力を調整可能な締付部材をさらに含むことが好ましい。
【0012】
この接合システムによれば、くさび部材は、締付部材の締付度合に応じた押付力で第1の接触部材および第2の接触部材に押し付けられる。そのため、締付部材の締付度合を調整することによって、第1のループ状部と第2のループ状部との間での軸力の伝達に適したくさび部材の押付力を第1の接触部材および第2の接触部材に付与できる。
【0013】
前記第1の交差方向および前記第2の交差方向は同一方向であり、前記第1のループ状部の開口および前記第2のループ状部の開口は前記対向方向に対する直交方向から見て重なっていることが好ましい。第1のループ状部と第2のループ状部とを重ねた状態で、第1のループ状部および第2のループ状部を接合部材によって接合することができるため、一対の板状セグメント同士を効率良く接合できる。
【0014】
前記第1のループ状部は、前記第1の交差方向が水平方向に対して交差した状態で、鉛直方向に対して交差する第1の方向に沿って前記第1の板状セグメントの対向部に複数設けられる。前記第2のループ状部は、前記第2の交差方向が水平方向に対して交差した状態で、前記第1の方向に沿って前記第2の板状セグメントの対向部に複数設けられる。この接合システムは、複数の前記第1のループ状部に対して鉛直方向の少なくとも一方側がそれぞれ開放された複数の開放部をさらに備える。そして、複数の前記第2のループ状部の開口は、鉛直方向の前記一方側から複数の前記開放部のそれぞれを通って複数の前記第1のループ状部の開口のそれぞれに対して近づくことにより、複数の前記第1のループ状部のそれぞれと鉛直方向に1つずつ重なることが好ましい。
【0015】
この接合システムでは、鉛直方向に対して交差する第1の方向に沿って設けられる複数の第1のループ状部の鉛直方向の少なくとも一方側が開放されている。そのため、複数の第1のループ状部と複数の第2のループ状部とを鉛直方向に重ねるために、第1の板状セグメントに対して第2の板状セグメントを、鉛直方向の一方側(典型的には上方側)から直線的に近づける(下降させる)ことができる。
【0016】
そのため、第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメント(一対の板状セグメント)の対向部同士を対向させた状態、すなわち、一対の板状セグメントが接合可能となる位置に、一対の板状セグメントを効率良く配置できる。したがって、一対の板状セグメントを接合する際の施工性を向上させることができる。
【0017】
前記接合部材は、前記第1のループ状部または前記第2のループ状部に対する前記接合部材の回転を抑制する回転抑制部をさらに含むことが好ましい。
【0018】
この接合システムによれば、第1のループ状部または第2のループ状部に対する接合部材の回転を抑制することができる。そのため、第1のループ状部または第2のループ状部に対する接合部材の位置ずれを抑制できる。したがって、第1のループ状部と第2のループ状部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0019】
前記回転抑制部は、前記第1のループ状部または前記第2のループ状部に接する接触部を含み、前記接触部は、前記接合部材に作用する回転力に対する抵抗力を、前記接触部に接する前記ループ状部から受ける接触抵抗力受け部を含むことが好ましい。
【0020】
この接合システムによれば、第1のループ状部または第2のループ状部に接触部が接することで、接触抵抗力受け部は、対応するループ状部から抵抗力を受けることができる。そのため、接合部材に作用する回転力に起因する、第1のループ状部および第2のループ状部に対する接合部材の位置ずれを抑制できる。したがって、第1のループ状部と第2のループ状部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0021】
この発明の他の態様は、第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントを接合する際に、前記第1の板状セグメントの対向部から突出し、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向方向に対して交差する第1の交差方向に開口する第1のループ状部と、前記第2の板状セグメントの対向部から突出し、前記対向方向に対して交差する第2の交差方向に開口する第2のループ状部とを機械的接合によって接合する、金属製の接合部材である。
【0022】
この発明の他の態様は、第1の板状セグメントおよび第2の板状セグメントを接合する接合方法である。この接合方法は、前記第1の板状セグメントおよび前記第2の板状セグメントの対向部同士を対向させることと、前記第1の板状セグメントの対向部から突出する第1のループ状部と、前記第2の板状セグメントの対向部から突出する第2のループ状部とを機械的接合によって接合することとを含む。前記接合することは、前記第1のループ状部に接するように前記第1のループ状部に第1の接触部材を挿入することと、前記第2のループ状部に接するように前記第2のループ状部に第2の接触部材を挿入することと、前記第1の接触部材および前記第2の接触部材をそれぞれ前記第1のループ状部および前記第2のループ状部に接させた状態で、前記第1の接触部材および前記第2の接触部材を固定することとを含む。
【0023】
この発明の他の態様は、一対の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記一対の板状セグメントを接合する接合システムである。この接合システムは、一方の板状セグメントに設けられる第1の接合部と、他方の板状セグメントに設けられる第2の接合部と、前記第1の接合部および前記第2の接合部を機械的接合によって接合する金属製の接合部材とを備える。
【0024】
この接合システムによれば、第1の接合部と第2の接合部とが、金属製の接合部材によって機械的に接合される。すなわち、第1の接合部と第2の接合部とが、コンクリート等の間詰め材を介することなく連結される。これにより、コンクリート等の間詰め材が劣化等した場合であっても、第1の接合部と第2の接合部との間で、対向部同士が対向する方向の力である軸力を確実性高く伝達させることができる。
【0025】
前記接合部材は、前記第1の接合部および前記第2の接合部の両方に接し、前記第1の接合部および前記第2接合部の間で力を伝達する力伝達部材を含むことが好ましい。この接合システムによれば、第1の接合部および第2の接合部の両方に接する力伝達部材を介して、第1の接合部と第2の接合部との間で軸力を直接伝達させやすい。したがって、第1の接合部および第2の接合部の間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0026】
前記接合部材は、前記力伝達部材を前記第1の接合部および前記第2の接合部に対して締め付け、締付度合に応じて前記力伝達部材を前記第1の接合部および前記第2の接合部の両方に対して押し付ける押付力を調整可能な締付部材をさらに含むことが好ましい。
【0027】
この接合システムによれば、力伝達部材は、締付部材の締付度合に応じた押付力で第1の接合部および第2の接合部に押し付けられる。そのため、締付部材の締付度合を調整することによって、第1の接合部と第2の接合部との間での軸力の伝達に適した力伝達部材の押付力を第1の接合部および第2の接合部に付与できる。
【0028】
前記第1の接合部は、前記一方の板状セグメントの対向部から突出する外側ループ状部と、前記外側ループ状部および前記接合部材に接するように前記外側ループ状部の開口に挿入される接触部材とを含むことが好ましい。この接合システムによれば、接触部材は、外側ループ状部の開口内で外側ループ状部および接合部材に接する。そのため、接合部材と外側ループ状部との間で軸力を直接伝達させやすい。したがって、第1の接合部と第2の接合部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0029】
前記第2の接合部は、前記他方の板状セグメントの対向部から突出し、前記接合部材に接する外側接触部を含むことが好ましい。この接合システムによれば、外側接触部と第1の接合部との間で軸力を直接伝達させやすい。したがって、第1の接合部と第2の接合部との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0030】
前記第2の接合部は、前記他方の板状セグメントの内部に配置される内側ループ状部と、前記内側ループ状部に接するように前記内側ループ状部の開口に挿入される内側接触部とを含むことが好ましい。この接合システムによれば、第2の接合部の内側接触部が、内側ループ状部の開口内で内側ループ状部に接しているため、内側ループ状部および内側接触部との間で軸力を確実性高く伝達することができる。したがって、板状セグメントの内部にループ状部が配置されている場合であっても、第1の接合部と第2の接合部との間で軸力を確実性高く伝達させることができる。
【0031】
この発明の他の態様は、一対の板状セグメントの対向部同士を対向させて、前記一対の板状セグメントを接合する際に、一方の板状セグメントに設けられる第1の接合部と、他方の板状セグメントに設けられる第2の接合部とを機械的接合によって接合する金属製の接合部材である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、この発明の第1の実施形態の第1の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概要を示す斜視図である。
図2図2は、前記接合体に備えられる一対の板状セグメントの対向部同士を対向させる前の様子を示す斜視図である。
図3図3は、前記接合システムに備えられる各一対のループ状部に対して一対の接触部材を取り付けた後の様子を示す断面図である。
図4図4は、前記一対の接触部材の間にくさび部材を嵌め込む様子を示す断面図である。
図5図5は、前記一対の接触部材の間に前記くさび部材を嵌め込んだ後の様子を示す断面図である。
図6図6は、この発明の第1の実施形態の第2の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概要を示す斜視図である。
図7図7は、第1の実施形態の第2の実施例に係る接合システムの側面図である。
図8図8は、この発明の第1の実施形態の第3の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概略を示す斜視図である。
図9図9は、第1の実施形態の第3の実施例に係る接合システムの断面図である。
図10図10は、第1の実施形態の第4の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概略を示す斜視図である。
図11図11は、第1の実施形態の第4の実施例に係る接合システムの断面図である。
図12図12は、第1の実施形態の第5の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概略を示す斜視図である。
図13図13は、第1の実施形態の第5の実施例に係る接合システムの断面図である。
図14図14は、この発明の第2の実施形態の第1の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概要を示す斜視図である。
図15図15は、第2の実施形態の第1の実施例の前記接合体に備えられる一対の板状セグメントの対向部同士を対向させたときの一対の接合部およびその周辺を抜き出して示す断面図である。
図16図16は、図15に示す一対の接合部に対して、接触部材を取り付けた後の様子を示す断面図である。
図17図17は、図16に示す第2接合部および接触部材の間に力伝達部材を嵌め込む様子を示す断面図である。
図18図18は、図17に示す第2接合部および接触部材の間に前記力伝達部材を嵌め込んだ後の様子を示す断面図である。
図19図19は、この発明の第2の実施形態の第2の実施例に係る接合システムを備えた接合体の概要を示す斜視図である。
図20図20は、第2の実施形態の第2の実施例に係る接合システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1の実施形態>
[第1の実施例]
図1は、この発明の第1の実施形態の第1の実施例に係る接合システム1Aを備えた接合体2Aの概要を示す斜視図である。図1に示すように、接合体2Aは、一対の板状セグメント10,20(第1の板状セグメント10および第2の板状セグメント20)と、一対の板状セグメント10,20同士を水平方向に対向させた状態で接合する接合システム1Aと、一対の板状セグメント10,20の継ぎ目Sに充填された経時硬化性充填材が硬化した充填材硬化部(間詰材)30とを備える。経時硬化性充填材の一例は、モルタル、コンクリート等である。なお、図1において、説明の便宜上、充填材硬化部30を透過させることにより接合システム1Aを図示している。
【0034】
典型的な板状セグメント10,20は、鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版であり、橋梁や高架道路等(以下、「橋梁等」という。)の上部構造物を施工する場合等に用いられる。板状セグメント10,20の大きさおよび形状の一例は、橋梁等の延長方向(橋軸方向)に沿う方向を長さ方向X、橋軸方向に直角な水平方向(以下、「橋軸直角方向」という。)に沿う方向を幅方向Y、長さ方向Xおよび幅方向Yに直角な方向を厚み方向Zとした場合、長さ約2.0~2.5m×幅約2.0~11.0m×厚み約0.2~0.3mの平板状である。
【0035】
なお、板状セグメント10,20の材質、構造、大きさおよび形状等は、これらに限定されない。例えば、板状セグメント10,20は、金属製(鋼製、鋳鉄製等)や樹脂製等のように、コンクリート製以外の材料により構成されていてもよい。また、板状セグメント10,20は、PC床版(プレストレスを導入した床版)、鋼床版、合成床版(鋼とコンクリートとを合成した床版)等のように、RC床版(鉄筋コンクリートを用いた床版)以外の構造であってもよい。また、板状セグメント10,20は、曲板状や湾曲板状等のように、平板状以外の板状に形成されていてもよい。曲板状の板状セグメント10,20は、トンネルの内壁等の円弧状や円筒状の構造物を施工する場合等に好適である。
【0036】
第1の板状セグメント10は、平板状の本体部11と、本体部11の側面を構成し、第2の板状セグメント20に対向する対向部12と、長さ方向Xに沿う一対の板状セグメント10,20の対向方向(水平方向)FDに対向部12から突出する突出部13とを含む。対向部12は、第1の方向D1に延びる。第1の実施形態では、第1の方向D1は、幅方向Yに沿う水平方向であり、以降、第1の方向D1を水平方向D1と称する場合がある。突出部13は、対向部12において、厚み方向Zに沿う鉛直方向D2の一方側(上方側)D21の端部よりも他方側(下方側)D22の端部に近接する位置に設けられている。
【0037】
第2の板状セグメント20は、平板状の本体部21と、本体部21の側面を構成し、第1の板状セグメント10に対向する対向部22とを含む。対向部22は、水平方向D1に延びる。
【0038】
接合システム1Aは、第1の板状セグメント10の対向部12から対向方向FDに突出する複数の第1のループ状部40と、第2の板状セグメント20の対向部22から対向方向FDに突出する複数の第2のループ状部50と、第1のループ状部40および第2のループ状部50を機械的接合によって1つずつ接合する金属製の複数の接合部材60とを含む。
【0039】
各接合部材60は、共通の構成を有している。各接合部材60は、鉛直方向D2から見て重なった第1のループ状部40および第2のループ状部50の両方に挿入された一対の接触部材80,90(第1の接触部材80および第2の接触部材90)と、一対の接触部材80,90との間に嵌め込まれたくさび部材100と、くさび部材100を一対の接触部材80,90に対して締め付ける締付部材110とを含む。
【0040】
次に、接合システム1Aによって、一対の板状セグメント10,20を接合する様子について説明する。図2は、一対の板状セグメント10,20の対向部12,22同士を対向させる前の様子を示す斜視図である。図2では、説明の便宜上、第2の板状セグメント20を透過させることにより、第2のループ状部50を図示している。
【0041】
図2に示すように、各第1のループ状部40は、水平方向FDに対して交差する第1の交差方向CD1に開口している。典型的な第1のループ状部40は、ループ状に形成された鉄筋(ループ筋)である。第1のループ状部40は、水平方向D1に互いに間隔を隔てて対向部12から水平方向FDに突出する2つの直線状部41,42と、2つの直線状部41,42同士を連結するU字状の曲線状部43と、直線状部41,42および曲線状部43に囲まれ、第1の交差方向CD1に開口する開口40hとを含む。第1の交差方向CD1は、典型的には、鉛直方向D2に沿う方向であり、水平方向FDに対して直交する方向である。第1の板状セグメント10は、各第1のループ状部40の2つの直線状部41,42と一体または別体として連なり、第1の板状セグメント10に埋め込まれた複数の直線状鉄筋14を含む。図1には、各第1のループ状部40の2つの直線状部41,42と複数の直線状鉄筋14とが一体として連なる例を図示している。
【0042】
各第2のループ状部50は、水平方向FDに対して交差する第2の交差方向CD2に開口している。典型的な第2のループ状部50は、ループ状に形成された鉄筋(ループ筋)である。第2のループ状部50は、水平方向D1に互いに間隔を隔てて対向部22から水平方向FDに突出する2つの直線状部51,52と、2つの直線状部51,52同士を連結するU字状の曲線状部53と、直線状部51,52および曲線状部53に囲まれ、水平方向FDに対して交差する第2の交差方向CD2に開口する開口50hとを含む。第2の交差方向CD2は、典型的には、第1の交差方向CD1と同一方向であり、鉛直方向(直交方向)D2に沿う方向である。第2の板状セグメント20は、各第2のループ状部50の2つの直線状部51,52と一体または別体として連なり、第2の板状セグメント20に埋め込まれた複数の直線状鉄筋24を含む。図2には、各第2のループ状部50の2つの直線状部51,52と複数の直線状鉄筋24とが一体として連なる例を図示している。
【0043】
この実施例のように、各ループ状部40,50の直線状部41,42,51,52と複数の直線状鉄筋14,24とが一体として連なる場合には、棒状の素材を折り曲げて直線状鉄筋14,24およびループ状部40,50を同時に形成でき、棒状の素材を折り曲げて形成された直線状鉄筋14,24およびループ状部40,50を、板状セグメント10,20に対して同時に固定することができる。そのため、接合部材60と板状セグメント10,20との接合に必要な部材(第1の実施例のループ状部40,50に相当する部材)を、専用品として鉄筋とは別に形成し板状セグメント10,20に埋め込む必要がない。したがって、ループ状部40,50の準備を簡素化できる。ひいては、接合システム1Aに必要なコストを低減できる。
【0044】
複数の第1のループ状部40は、水平方向D1に延びる2つの列L1,L2を構成している。2つの列L1,L2は、鉛直方向D2に並んでいる。各列L1,L2は、第1の交差方向CD1が水平方向FDに対して交差した状態で水平方向D1に沿って対向部12に設けられた複数(この実施例では、4つ)の第1のループ状部40によって構成されている。鉛直方向D2の下方側D22の列L2を構成する複数の第1のループ状部40の一対の直線状部41,42は、突出部13に埋め込まれており、突出部13の先端よりも対向部12側に位置している。鉛直方向D2の上方側D21の列L1を構成する複数の第1のループ状部40と、鉛直方向D2の下方側D22の列L2を構成する複数の第1のループ状部40とは、水平方向D1にずれている。そのため、全ての第1のループ状部40の鉛直方向D2の上方側D21には、他のループ状部が存在しておらず、各第1のループ状部40の上方側D21の空間は開放されている。言い換えると、接合システム1Aは、複数の第1のループ状部40のそれぞれの上方側D21に向けて1つずつ開放された複数の第1の開放部70aを含む。
【0045】
複数の第2のループ状部50は、水平方向D1に延びる2つの列L3,L4を構成している。2つの列L3,L4は、鉛直方向D2に並んでいる。各列L3,L4は、第2の交差方向CD2が水平方向FDに対して交差した状態で水平方向D1に沿って対向部22に設けられた複数(この実施例では、4つ)の第2のループ状部50によって構成されている。鉛直方向D2の上方側D21の列L3を構成する複数の第2のループ状部50と、鉛直方向D2の下方側D22の列L4を構成する複数の第2のループ状部50とは、水平方向D1にずれている。そのため、全ての第2のループ状部50の鉛直方向D2の下方側D22には、他のループ状部が存在しておらず、各第2のループ状部50の下方側D22の空間は開放されている。言い換えると、接合システム1Aは、複数の第2のループ状部50のそれぞれの下方側D22に向けて1つずつ開放された複数の第2の開放部70bを含む。
【0046】
全ての第1のループ状部40の上方側D21の空間が開放されており、全ての第2のループ状部50の下方側D22の空間が開放されている。そのため、クレーン等により第2の板状セグメント20を第1の板状セグメント10の上方側D21に位置させた後、第2の板状セグメント20を鉛直方向D2の上方側D21から降下させることで、第1の板状セグメント10の対向部12と第2の板状セグメント20の対向部22とを対向させることができる(対向工程)。その際、複数の第2のループ状部50が、上方側D21から複数の第1の開放部70aのそれぞれを通って複数の第1のループ状部40のそれぞれに対して近づき、複数の第1のループ状部40のそれぞれと鉛直方向D2に1つずつ重なる。
【0047】
このように、各第1のループ状部40と各第2のループ状部50とを鉛直方向D2に重ねるために、第1の板状セグメント10に対して第2の板状セグメント20を水平方向D1,FDに移動させることなく、鉛直方向D2の上方側D21から直線的に降下させることができる。このため、一対の板状セグメント10,20の対向部12,22同士を対向させた状態、すなわち板状セグメント10,20同士が接合可能となる位置に、各板状セグメント10,20を効率良く配置することができる。さらに、主桁(図示せず)と各板状セグメント10,20との間にシールスポンジ等のシール材が設置されている場合であっても、第1の板状セグメント10に対して第2の板状セグメント20を水平方向D1,FDに移動させる必要がないため、シール材に対する損傷を抑制できる。したがって、各ループ状部40,50を鉛直方向D2に重ねて接合する構成において、一対の板状セグメント10,20を接合する際の施工性を向上させることができる。
【0048】
次に、図3図5を用いて、第1のループ状部40と第2のループ状部50とを接合部材60によって機械的接合によって接合する様子について説明する(接合工程)。
【0049】
図3は、板状セグメント10,20の対向部12,22同士を対向させた後、各一対のループ状部40,50に対して一対の接触部材80,90を取り付けた後の様子を示す断面図である。図4は、各一対の接触部材80,90の間にくさび部材100を嵌め込む様子を示す断面図である。図5は、各一対の接触部材80,90の間にくさび部材100を嵌め込んだ後の様子を示す断面図である。
【0050】
図3に示すように、第1の接触部材80は、第1のループ状部40およびくさび部材100に接する略半円筒形状の本体部81を含む。本体部81は、第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに沿う外周面82と、くさび部材100に接する内周面83とを含む。内周面83は、上方側D21から下方側D22に向けて第2の接触部材90に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面84を含む。
【0051】
第2の接触部材90は、第2のループ状部50およびくさび部材100に接する略半円筒形状の本体部91を含む。本体部91は、第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに沿う外周面92と、くさび部材100に接する内周面93とを含む。内周面93は、上方側D21から下方側D22に向けて第1の接触部材80に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面94を含む。
【0052】
このような一対の接触部材80,90が各一対のループ状部40,50に対して取り付けられる。詳しくは、第1のループ状部40に接するように第1のループ状部40に第1の接触部材80が挿入され(第1の挿入工程)、第2のループ状部50に接するように第2のループ状部50に第2の接触部材90が挿入される(第2の挿入工程)。この実施例では、第1の板状セグメント10と第2の板状セグメント20とを対向させた状態で、第1のループ状部40の開口40hおよび第2のループ状部50の開口50hは、鉛直方向D2から見て重なっており同一方向(鉛直方向D2)に開口している。そのため、一対のループ状部40,50を重ねた状態で、各一対のループ状部40,50の開口40h,50hの両方に第1の接触部材80を鉛直方向D2の上方側D21から挿入でき、各一対のループ状部40,50の開口40h,50hの両方に第2の接触部材90を鉛直方向D2の上方側D21から挿入できる。つまり、対応する一対のループ状部40,50の両方に対して第1の接触部材80を一作業で取り付けることができ、第2の接触部材90を対応する一対のループ状部40,50の両方に対して一作業で取り付けることができる。
【0053】
第1の接触部材80は、本体部81を第1のループ状部40および第2のループ状部50に仮止めする一対の仮止め部85,86(第1の仮止め部85および第2の仮止め部86)をさらに含む。第1の仮止め部85は、本体部81の外周面82から突出し鉛直方向D2の上方側D21から第2のループ状部50に接する。第2の仮止め部86は、外周面82の周方向において第1の仮止め部85とは異なる位置から突出し鉛直方向D2の下方側D22から第1のループ状部40に接する。第1の接触部材80を一対のループ状部40,50の開口40h,50hに挿入した後、第1の接触部材80とは別の部材で第1の接触部材80を支持することなく、第1の接触部材80に設けられた一対の仮止め部85,86によって第1の接触部材80が一対のループ状部40,50に挿入された状態を維持することができる。
【0054】
第2の接触部材90は、本体部91を第1のループ状部40および第2のループ状部50に仮止めする仮止め部95をさらに含む。仮止め部95は、本体部91の外周面92から突出し鉛直方向D2の上方側D21から第2のループ状部50に接する。第2の接触部材90を一対のループ状部40,50の開口40h,50hに挿入した後、第2の接触部材90とは別の部材で第2の接触部材90を支持することなく、第2の接触部材90に設けられた仮止め部95によって第2の接触部材90が一対のループ状部40,50に挿入された状態を維持することができる。
【0055】
図4に示すように、くさび部材100は、鉛直方向D2の上方側D21から下方側D22に向けて先細りする先細り形状を有する。くさび部材100は、第1の接触部材80の本体部81の内周面83および第2の接触部材90の本体部91の内周面93に接する外周面101を有する。
【0056】
締付部材110は、ボルト111と、ボルト軸部111aに取り付けられるナットプレート112と、ボルト頭部111bを載せるワッシャ113とを含む。ナットプレート112は、鉛直方向D2の下方側D22から一対の接触部材80,90に接するプレート部112aと、その内周部にねじが形成された筒状部112bとを含む。
【0057】
くさび部材100は、ワッシャ113を介してボルト頭部111bを載置する載置面102と、ボルト軸部111aが挿入可能となるようにくさび部材100を貫通する貫通孔103と、ナットプレート112の筒状部112bを収容する収容凹部104とをさらに含む。くさび部材100の外周面101は、第1の接触部材80の傾斜面84および第2の接触部材90の傾斜面94のそれぞれに沿うように鉛直方向D2に対して傾斜する一対の傾斜面105,106(第1の傾斜面105および第2の傾斜面106)を含む。
【0058】
一対の接触部材80,90が対応する一対のループ状部40,50の開口40h,50hに挿入された状態で、第1の接触部材80および第2の接触部材90の間にくさび部材100が嵌め込まれる(嵌め込み工程)。第1の実施例では、第1のループ状部40の開口40hおよび第2のループ状部50が鉛直方向D2に開口しているため、くさび部材100が鉛直方向D2から一対の接触部材80,90の間に嵌め込まれる。
【0059】
図5に示すように、ナットプレート112の回転を止めた状態でボルト頭部111bを回転させると、くさび部材100がボルト頭部111bによって押されて下方側D22に移動する。これにより、くさび部材100は、一対の接触部材80,90の内周面83,93の間に押し込まれて、締付部材110の締付度合に応じた押付力で第1の接触部材80および第2の接触部材90をそれぞれ第1のループ状部40および第2のループ状部50に向けて押し付ける。詳しくは、第1の接触部材80の外周面82が第1のループ状部40の内周部43iに押し付けられることによって、第1のループ状部40を介して第1の板状セグメント10が第2の板状セグメント20側に引っ張られる。第2の接触部材90の外周面92が第2のループ状部50の内周部53iに押し付けられることによって、第2のループ状部50を介して第2の板状セグメント20が第1の板状セグメント10側に引っ張られる。その結果、一対の板状セグメント10,20が対向方向FDに引き寄せられる。
【0060】
第1の接触部材80の本体部81が第1のループ状部40の開口40hおよび第2のループ状部50の開口50hの両方に挿入された状態で、本体部81の外周面82がその周方向の全域において第1のループ状部40の曲線状部43に接している(図1も参照)。また、第2の接触部材90の本体部91が第1のループ状部40の開口40hおよび第2のループ状部50の開口50hの両方に挿入された状態で、本体部91の外周面92がその周方向の全域において第2のループ状部50の曲線状部53に接している(図1も参照)。そのため、一対の接触部材80,90は、それぞれ、一対のループ状部40,50の曲線状部43,53の周方向の各位置に均一性高く押し付けられる。
【0061】
締付部材110によって一対の接触部材80,90に対してくさび部材100を締め付けることによって、一対の接触部材80,90をそれぞれ各一対のループ状部40,50に接させた状態で、一対の接触部材80、90を固定することができる(固定工程)。一対のループ状部40、50を鉛直方向D2に重ねた状態で一対のループ状部40,50に対して接合部材60の各部材を取り付けることができるため、一対の板状セグメント10,20同士を速やかに接合できる。
【0062】
第1の実施形態の第1の実施例によれば、第1のループ状部40と第2のループ状部50とが、金属製の接合部材60によって機械的に接合される。すなわち、第1のループ状部40と第2のループ状部50とが、充填材硬化部30を介することなく直に連結される。そのため、充填材硬化部30が劣化等した場合であっても、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で軸力(直線状部41,42,51,52が延びる方向、すなわち、対向方向FDの力)を確実性高く伝達させることができ、所望の引張強度を発現させることができる。
【0063】
さらに、第1の実施例によれば、第1のループ状部40と第2のループ状部50とが、充填材硬化部30を介することなく直に連結されるため、例えば、コンクリートを経時硬化性充填材として用いる場合、充填材硬化部30に荷重が繰り返し加わることで、充填材硬化部30にひび割れが生じたり、ひび割れが生じた部分がすり合わされることで充填材硬化部30が土砂化したりする事態を未然に防止することができる。
【0064】
さらに、第1の実施例によれば、第1のループ状部40と第2のループ状部50とが、充填材硬化部30を介することなく直に連結されるため、例えば、コンクリートを経時硬化性充填材として用い、板状セグメント10,20をプレキャスト床版として用いる場合に、車両が通過する度に充填材硬化部30に荷重が加わり、充填材硬化部30にひび割れが生じ、当該ひび割れから充填材硬化部30内に水が浸透し、充填材硬化部30を構成するアルカリ金属成分(ナトリウムおよびカリウム等)と骨材(砂利および砂等)とが反応し、充填材硬化部30が劣化する事態を未然に防止することができる。
【0065】
また、第1の実施例によれば、各接触部材80,90が、対応するループ状部40,50の開口40h,50hに挿入された状態で対応するループ状部40,50に接しているため、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で軸力を直接伝達させやすい。また、くさび部材100が一対の接触部材80,90の間に嵌め込まれることによって、くさび効果を発現させることができる。そのため、各接触部材80,90を対応するループ状部40,50に対して押し付けることができる。そのため、一対のループ状部40,50の間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0066】
さらに、くさび部材100は、締付部材110の締付度合に応じた押付力で一対の接触部材80,90に押し付けられる。そのため、締付部材110の締付度合を調整することによって、一対のループ状部40,50の間での軸力の伝達に適したくさび部材100の押付力を一対の接触部材80,90に付与できる。
【0067】
さらに、第1の実施例によれば、一対のループ状部40,50が、金属製の接合部材60によって機械的に接合されているため、一対の板状セグメント10,20の位置を強固に固定できる。そのため、ループ状部40,50間で力が伝達される際の第1のループ状部40および第2のループ状部50の相対変位を抑制できる。これにより、充填材硬化部30の剛性の向上を図ることができる。また、充填材硬化部30の内部における第1のループ状部40および第2のループ状部50の相対移動量を低減できるため、充填材硬化部30のひび割れの発生を抑制することができる。
【0068】
ここで、第1の板状セグメント10の突出部13と第2の板状セグメント20の対向部22との隙間の少なくとも一部を塞ぐように閉塞部材120を設置した場合、くさび部材100が一対の接触部材80,90の間に押し込まれて一対の板状セグメント10,20が対向方向FDに引き寄せられることにより、閉塞部材120を挟んで互いに押し当て合う。突出部13と対向部22とが閉塞部材120を挟んで互いに押し当て合う状態から、くさび部材100をさらに押し込むと、各板状セグメント10,20は、閉塞部材120から反力を受けるが、この反力に逆らうようにくさび部材100を押し込むことで、一対の板状セグメント10,20の位置を強固に固定できる。なお、閉塞部材120を設置せずに突出部13と対向部22とが直に押し当て合うようにしてもよい。
【0069】
[第2の実施例]
図6は、この発明の第1の実施形態の第2の実施例に係る接合システム1Bを備えた接合体2Bの概要を示す斜視図である。図7は、接合システム1Bの側面図である。第2の実施例において、第1の実施例と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0070】
図6に示すように、第2の実施例に係る接合システム1Bが第1の実施例に係る接合システム1Aと主に異なる点は、各ループ状部40,50の開口40h,50hが水平方向D1に開口している点である。すなわち、第1のループ状部40が開口する第1の交差方向CD3および第2のループ状部50が開口する第2の交差方向CD4が同一の方向で、かつ、水平方向D1に沿う方向である。以下では、第2の実施例に係る接合システム1Bが第1の実施例に係る接合システム1Aと異なる点について詳しく説明する。
【0071】
接合システム1Bの複数の第1のループ状部40は、水平方向D1に延びる単一の列L5を構成している。列L5を構成する複数(この実施例では、9つ)の第1のループ状部40は、水平方向D1に沿って等間隔で配列されている。接合システム1Bの複数の第2のループ状部50は、水平方向D1に延びる単一の列L6を構成している。列L6を構成する複数(この実施例では、9つ)の第2のループ状部50は、水平方向D1に沿って等間隔で配列されている。なお、第2の板状セグメント20は、対向部22から水平方向FDに突出する突出部23をさらに含む。突出部23は、対向部22において、鉛直方向D2の上方側D21の端部よりも下方側D22の端部に近接する位置に設けられている。
【0072】
図7に示すように、接合システム1Bの各第1のループ状部40の2つの直線状部41,42は、鉛直方向D2に互いに間隔を隔てて対向部12から水平方向FDに突出しており、接合システム1Bの各第2のループ状部50の2つの直線状部51,52は、鉛直方向D2に互いに間隔を隔てて対向部22から水平方向FDに突出している。
【0073】
第1の接触部材80は、本体部81の外周面82に設けられ、第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに押し当てられる押し当て凹部87をさらに含む。押し当て凹部87は、第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに沿って窪んでいる。第2の接触部材90は、本体部91の外周面92に設けられ、第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに押し当てられる押し当て凹部97をさらに含む。押し当て凹部97は、第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに沿って窪んでいる。
【0074】
第2の実施例に係る接合システム1Bを用いた場合であっても、第1の実施例に係る接合システム1Aと同様の方法で一対の板状セグメント10,20を接合することができる。ただし、接合システム1Bを用いて一対の板状セグメント10,20を接合する場合、一対のループ状部40,50への一対の接触部材80,90の挿入方向、および、一対の接触部材80,90の間へのくさび部材100の嵌め込み方向は、第1の実施例とは異なり、水平方向D1に沿う方向である。
【0075】
第2の実施例においても、第1の実施例と同様に、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で軸力を確実性高く伝達させることができ、所望の引張強度を発現させることができ、かつ、一対の板状セグメント10,20間の接合強度の向上を図ることができる。
【0076】
[第3の実施例]
図8は、この発明の第1の実施形態の第3の実施例に係る接合システム1Cを備えた接合体2Cの概略を示す斜視図である。図9は、第3の実施例に係る接合システム1Cの断面図である。第3の実施例において、上述の実施例と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0077】
図8に示すように、第3の実施例に係る接合システム1Cが第1の実施例に係る接合システム1Aと主に異なる点は、各ループ状部40,50の開口40h,50hが鉛直方向D2に重なっておらず、第1のループ状部40の先端40tと第2のループ状部50の先端50tとが水平方向FDに対向する点である。以下では、第3の実施例に係る接合システム1Cが第1の実施例に係る接合システム1Aと異なる点について詳しく説明する。
【0078】
第1のループ状部40が開口する第1の交差方向CD1および第2のループ状部50が開口する第2の交差方向CD2が互いに平行で、かつ、いずれも鉛直方向D2に沿う方向である。接合システム1Cの複数の第1のループ状部40は、水平方向D1に延びる単一の列L7を構成している。列L7を構成する複数(この実施例では、5つ)の第1のループ状部40は、水平方向D1に沿って等間隔で配列されている。接合システム1Cの複数の第2のループ状部50は、水平方向D1に延びる単一の列L8を構成している。列L8を構成する複数(この実施例では、5つ)の第2のループ状部50は、水平方向D1に沿って等間隔で配列されている。
【0079】
接合システム1Cは、第1の板状セグメント10の対向部12から対向方向FDに突出する複数の第1のループ状部40と、第2の板状セグメント20の対向部22から突出する複数の第2のループ状部50と、第1のループ状部40および第2のループ状部50を機械的接合によって1つずつ接合する金属製の複数の接合部材130とを含む。各接合部材130は、共通の構成を有している。
【0080】
図9に示すように、各接合部材130は、第1のループ状部40の開口40hに挿入され第1のループ状部40に接する第1の接触部材140と、第2のループ状部50の開口50hに挿入され第2のループ状部50に接する第2の接触部材150と、第1の接触部材140および第2の接触部材150に対して締め付ける一対の締付部材160,170(第1の締付部材160および第2の締付部材170)とを含む。
【0081】
第1の接触部材140は、第1のループ状部40の内側に配置され第1のループ状部40に接する略円柱形状の本体部141を含む。第1の接触部材140の本体部141は、第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに沿う外周面143を含む。第2の接触部材150は、第2のループ状部50の内側に配置され第2のループ状部50に接する略円柱形状の本体部151を含む。第2の接触部材150の本体部151は、第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに沿う外周面153を含む。
【0082】
第1の接触部材140は、第2の交差方向CD2から見て第2の接触部材150の本体部151と重なる位置にまで、本体部141から第2の板状セグメント20側に延びる平板状の延長部142をさらに含む。第2の接触部材150は、第1の交差方向CD1から見て第1の接触部材140の本体部141と重なる位置にまで、本体部151から第1の板状セグメント10側に延びる平板状の延長部152をさらに含む。
【0083】
第1の締付部材160は、ボルト161と、ボルト軸部161aに取り付けられるナット162と、ボルト頭部161bと第1の接触部材140の本体部141との間に挟まれるワッシャ163と、ナット162と第2の接触部材150の延長部152との間に挟まれるワッシャ164とを含む。第2の締付部材170は、ボルト171と、ボルト軸部171aに取り付けられるナット172と、ボルト頭部171bと第1の接触部材140の延長部142との間に挟まれるワッシャ173と、ナット172と第2の接触部材150の本体部151との間に挟まれるワッシャ174とを含む。
【0084】
第1の接触部材140の本体部141は、ボルト軸部161aが挿入可能となるように本体部141を貫通する貫通孔144をさらに含み、第1の接触部材140の延長部142は、ボルト軸部171aが挿入可能となるように延長部142を貫通する貫通孔145をさらに含む。第2の接触部材150の本体部151は、ボルト軸部171aが挿入可能となるように本体部151を貫通する貫通孔154をさらに含み、第2の接触部材150の延長部152は、ボルト軸部161aが挿入可能となるように延長部152を貫通する貫通孔155をさらに含む。
【0085】
第3の実施例に係る接合システム1Cを用いた場合であっても、第1の実施例に係る接合システム1Aと同様の方法で一対の板状セグメント10,20を接合することができる。第3の実施例に係る接合システム1Cを用いて一対の板状セグメント10,20を接合する場合、くさび部材100の嵌め込みが行われず、一対の接触部材140,150を一対の締付部材160,170により締め付けことによって、一対の接触部材80,90をそれぞれ各一対のループ状部40,50に接させた状態で固定することができる。
【0086】
第3の実施例においても、第1の実施例と同様に、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で軸力を確実性高く伝達させることができ、所望の引張強度を発現させることができ、かつ、一対の板状セグメント10,20間の接合強度の向上を図ることができる。
【0087】
[第4の実施例]
図10は、第1の実施形態の第4の実施例に係る接合システム1Dを備えた接合体2Dの概略を示す斜視図である。図11は、第4の実施例に係る接合システム1Dの断面図である。第4の実施例において、上述の実施例と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0088】
図10に示すように、第4の実施例に係る接合システム1Dが第1の実施例に係る接合システム1Aと主に異なる点は、鉛直方向D2の上方側D21の列L1,L3を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50の接合、および、鉛直方向D2の下方側D22の列L2,L4を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50の接合が、単一の接合部材180によって行われる点である。以下では、第4の実施例に係る接合システム1Dが第1の実施例に係る接合システム1Aと異なる点について詳しく説明する。
【0089】
各接合部材180は、2つの第1のループ状部40および2つの第2のループ状部50を機械的接合によって接合する金属製の部材である。各接合部材180は、共通の構成を有している。接合システム1Dでは、各列L1~L4を構成するループ状部40,50が、鉛直方向D2から見て重なっている。詳しくは、鉛直方向D2の上方側D21の列L1を構成する複数の第1のループ状部40の開口40hと、鉛直方向D2の下方側D22の列L2を構成する複数の第1のループ状部40の開口40hとが、鉛直方向D2から見て1つずつ重なっている。同様に、鉛直方向D2の上方側D21の列L3を構成する複数の第2のループ状部50の開口50hと、鉛直方向D2の下方側D22の列L4を構成する複数の第2のループ状部50の開口50hとが、鉛直方向D2から見て1つずつ重なっている。
【0090】
図11を参照して、各接合部材180は、第1の実施例の接合部材60と同様に、一対の接触部材80,90(第1の接触部材80および第2の接触部材90)と、くさび部材100と、締付部材110とを含む。ただし、一対の接触部材80,90は、鉛直方向D2から見て重なる2つの第1のループ状部40および2つの第2のループ状部50に共通に挿入されている。
【0091】
第1の接触部材80の本体部81は、くさび部材100と鉛直方向D2に並ぶ2つの第1のループ状部40とに接する。本体部81の外周面82は、鉛直方向D2に並ぶ2つの第1のループ状部40のそれぞれの曲線状部43の内周部43iに沿う面である。第2の接触部材90の本体部91は、くさび部材100と鉛直方向D2に並ぶ2つの第2のループ状部50とに接する。本体部91の内周面93は、鉛直方向D2に並ぶ2つの第2のループ状部50のそれぞれの曲線状部53の内周部53iに沿う面である。
【0092】
第1の接触部材80は、本体部81の外周面82に設けられ、2つの第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iのそれぞれに押し当てられる2つの押し当て凹部87をさらに含む。各押し当て凹部87は、対応する第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに沿って窪んでいる。第2の接触部材90は、本体部91の外周面92に設けられ、2つの第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iのそれぞれに押し当てられる2つの押し当て凹部97をさらに含む。各押し当て凹部97は、対応する第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに沿って窪んでいる。
【0093】
第4の実施例に係る接合システム1Dを用いて一対の板状セグメント10,20を接合する場合、1つの接合部材180で、鉛直方向D2の上方側D21の列L1,L3を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50と、鉛直方向D2の下方側D22の列L2,L4を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50とを共通に接合できる。そのため、第1の実施例と比較して、第1の板状セグメント10および第2の板状セグメント20を接合するために必要な接合部材180の数を削減できる。
【0094】
[第5の実施例]
図12は、第1の実施形態の第5の実施例に係る接合システム1Eを備えた接合体2Eの概略を示す斜視図である。図13は、第5の実施例に係る接合システム1Eの断面図である。第5の実施例において、上述の実施例と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0095】
図12に示すように、第5の実施例に係る接合システム1Eが第1の実施例に係る接合システム1Aと主に異なる点は、接合システム1Eに含まれる接合部材190が、第1のループ状部40および第2のループ状部50に対する接合部材190の回転を抑制する機能を有する点である。以下では、第5の実施例に係る接合システム1Eが第1の実施例に係る接合システム1Aと異なる点について詳しく説明する。
【0096】
各接合部材190は、第1のループ状部40および第2のループ状部50を機械的接合によって1つずつ接合する金属製の部材である。各接合部材190は、共通の構成を有している。各接合部材190は、鉛直方向D2から見て重なった第1のループ状部40および第2のループ状部50のそれぞれに接する一対の接触部材200,210(第1の接触部材200および第2の接触部材210)と、一対の接触部材200,210の両方に接するくさび部材220と、くさび部材220を一対の接触部材200,210に対して締め付ける締付部材230とを含む。
【0097】
図13に示すように、第1の接触部材200は、断面視略L字形状を有している。第1の接触部材200は、第1のループ状部40およびくさび部材220に接し、水平方向FDに延びる平板形状の本体部201と、本体部201から鉛直方向D2に延びるフランジ部202とを含む。本体部201は、くさび部材220に押し付けられる第1の押付部204と、鉛直方向D2の上方側D21から第1のループ状部40の曲線状部43に接する第1の接触部205と、曲線状部43の内周部43iに接する第1の内周接触部209とを含む。第1の押付部204は、上方側D21から下方側D22に向けて第2の接触部材210に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面204aを有する。
【0098】
第2の接触部材210は、くさび部材220に押し付けられる第2の押付部211と、鉛直方向D2の下方側D22から第2のループ状部50の曲線状部53に接する第2の接触部212と、曲線状部53の内周部53iに接する第2の内周接触部215とを含む。第2の押付部211は、くさび部材220を挟んで第1の押付部204に対向する。第2の押付部211は、鉛直方向D2に沿う鉛直面211aを有する。
【0099】
フランジ部202は、本体部201と交差するように延びている。鉛直方向D2の上方側D21の列L1,L3を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50を接合する接合部材190のフランジ部202は、対応する本体部201から鉛直方向D2の下方側D22に向けて延びている。鉛直方向D2の下方側D22の列L2,L4を構成する第1のループ状部40および第2のループ状部50を接合する接合部材190のフランジ部202は、対応する本体部201から鉛直方向D2の上方側D21に向けて延びている。
【0100】
第1の板状セグメント10および第2の板状セグメント20が互いに離れる方向に第1のループ状部40および第2のループ状部50の少なくとも一方が引っ張られた場合、接合部材190に回転力が作用する可能性がある。この回転力は、接合部材190において第1のループ状部40の曲線状部43の内周部43iに接する部分(第1の内周接触部209)が鉛直方向D2の下方側D22を向くように、かつ、接合部材190において第2のループ状部50の曲線状部53の内周部53iに接する部分(第2の内周接触部215)が鉛直方向D2の上方側D21を向くように、接合部材190を回転させようとする力である。
【0101】
第1の接触部205は、鉛直方向D2の上方側D21から第1のループ状部40の曲線状部43に接する。そのため、第1のループ状部40の曲線状部43は、接合部材190に作用する回転力を受け、第1の接触部205は、第1のループ状部40の曲線状部43から抵抗力を受ける。すなわち、第1の接触部205は、接合部材190に作用する回転力に対する抵抗力を受ける第1の接触抵抗力受け部206を含む。
【0102】
第2の接触部212は、鉛直方向D2の下方側D22から第2のループ状部50の曲線状部53に接する。そのため、第2のループ状部50の曲線状部53は、接合部材190に作用する回転力を受け、第2の接触部212は、第2のループ状部50の曲線状部53から回転力に対する抵抗力を受ける。すなわち、第2の接触部212は、接合部材190に作用する回転力に対する抵抗力を受ける第2の接触抵抗力受け部213を含む。
【0103】
フランジ部202は、第1の板状セグメント10および第2の板状セグメント20が互いに離れるように引っ張られる方向に対する交差方向(この実施例では、鉛直方向D2)に延びており、ループ状部40,50には接しておらず、充填材硬化部30に接する。そのため、充填材硬化部30は、接合部材190に作用する回転力を受け、フランジ部202は、充填材硬化部30から抵抗力を受ける。すなわち、フランジ部202は、接合部材190に作用する回転力に対する抵抗力を、第1のループ状部40および第2のループ状部50を介さずに、充填材硬化部30から受ける抵抗力受け部207を含む。
【0104】
第1の接触抵抗力受け部206、第2の接触抵抗力受け部213、および、抵抗力受け部207のうちの少なくともいずれかによって抵抗力を受けることで、第1のループ状部40および第2のループ状部50に対する接合部材190の回転が抑制される。すなわち、第1の接触抵抗力受け部206、第2の接触抵抗力受け部213、および、抵抗力受け部207は、第1のループ状部40および第2のループ状部50に対する接合部材190の回転を抑制する回転抑制部として機能する。
【0105】
締付部材230は、ボルト軸部231aおよびボルト頭部231bを有するボルト231と、ボルト頭部231bを載せるワッシャ232とを含む。第1の接触部材200の本体部201は、ボルト軸部231aに嵌合するねじ孔208を有する。
【0106】
くさび部材220は、鉛直方向D2の上方側D21から下方側D22に向けて先細りする先細り形状を有する。くさび部材220は、ワッシャ232を介してボルト頭部231bを載置する載置面221と、ボルト軸部231aが挿入可能となるようにくさび部材220を貫通する貫通孔222とを含む。
【0107】
くさび部材220は、第1の押付部204および第2の押付部211の間に嵌め込まれる。くさび部材220は、第1の押付部204および第2の押付部211に押し付けられる外周面223を有する。くさび部材220の外周面223は、第1の押付部204の傾斜面204aに沿うように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面223aと、第2の押付部211の鉛直面211aに沿うように鉛直方向D2に延びる鉛直面223bとを有する。
【0108】
第5の実施例に係る接合システム1Eを用いた場合であっても、第1の実施例に係る接合システム1Aと同様の方法で一対の板状セグメント10,20を接合することができる。第5の実施例に係る接合システム1Eを用いて一対の板状セグメント10,20を接合する場合、第1の接触部材200の第1の接触部205が第1のループ状部40に接し、かつ、第2の接触部材210の第2の接触部212が第2のループ状部50に接する。そのため、各接触抵抗力受け部206,213は、接合部材190に作用する回転力に対する抵抗力を、対応するループ状部40,50から受けることができる。したがって、接合部材190に作用する回転力に起因する、第1のループ状部40および第2のループ状部50に対する接合部材190の位置ずれを抑制できる。その結果、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0109】
また、第5の実施例によれば、第1の接触部材200のフランジ部202は、接合部材190に作用する回転力に対する抵抗力を充填材硬化部30から受けることができる。そのため、接合部材190に作用する回転力に起因する、第1のループ状部40および第2のループ状部50に対する接合部材190の位置ずれを抑制できる。したがって、第1のループ状部40と第2のループ状部50との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0110】
[その他の実施例]
なお、第1の実施形態は上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。例えば、板状セグメント10,20において、長さ方向Xを橋軸直角方向に沿う方向、幅方向Yを橋軸方向に沿う方向としてもよく、この場合、第1の方向D1は橋軸方向に沿う方向、対向方向FDは橋軸直角方向に沿う方向となり、板状セグメント10,20同士を橋軸直角方向に接合することができる。
【0111】
また、例えば、対向方向FDは、必ずしも図1等に示すように水平方向に沿う方向である必要はなく、図1等とは異なり、水平方向に対して交差する方向であってもよい。第1の実施例(図1図5を参照)、第4の実施例(図10および図11を参照)、および、第5の実施例(図12および図13を参照)の構成において対向方向FDが水平方向に対して交差する方向(例えば、水平方向に対して0°よりも大きく90°よりも小さい所定の角度θ(図示せず)で傾斜する方向)である場合、第1のループ状部40の開口40hおよび第2のループ状部50の開口50hは、対向方向FDが水平方向に対して傾斜する角度θと同じ角度だけ鉛直方向D2に対して傾斜する方向から見て重なる。
【0112】
また、例えば、各実施例において、第1のループ状部40が開口する第1の交差方向CD1,CD3および第2のループ状部50が開口する第2の交差方向CD2,CD4は、鉛直方向D2および水平方向D1のいずれに対しても交差する方向であってもよい。
【0113】
また、ループ状部40,50が並ぶ方向である第1の方向D1は、必ずしも水平方向に沿う方向である必要はなく、水平方向に対して交差する方向(水平方向に対して0°よりも大きく90°よりも小さい所定の角度で傾斜する方向)であってもよい。この場合、各列L1~L8を構成する複数のループ状部40,50は、水平方向に対して交差する方向に並ぶ。
【0114】
また、各実施例において、くさび部材100,220と一対の接触部材80,90,200,210との間の摩擦力によってくさび部材100が一対の接触部材80,90,200,210の間に嵌め込まれた状態で固定できる場合には、締付部材110,230を省略することができる。
【0115】
また、第1のループ状部40が開口する第1の交差方向CD1および第2のループ状部50が開口する第2の交差方向CD2は、同一の方向である必要はなく、互いに交差していてもよい。
【0116】
また、第2の実施例(図6および図7参照)において、接触部材80に第1の実施例の一対の仮止め部85,86が設けられており、接触部材90に第1実施例の仮止め部95が設けられていてもよい。第1の実施例(図1図5参照)の複数の接触部材80,90に、第2の実施例の押し当て凹部87,97がそれぞれ設けられていてもよい。
【0117】
また、第5の実施例(図12および図13参照)において、一対の接触部材200,210において、第1の押付部204が傾斜面204aを有し、第2の押付部211が鉛直面211aを有する。しかしながら、一対の接触部材200,210の構成はこれに限られず、たとえば、第1の押付部204および第2の押付部211の少なくともいずれかが傾斜面を有していればよい。すなわち、第1の押付部204が鉛直面を有しており第2の押付部211が傾斜面を有していてもよい。また、第1の押付部204および第2の押付部211の両方が傾斜面を有していてもよい。くさび部材220の外周面223は、押付部204,211に沿うように形成されていればよい。すなわち、くさび部材220の外周面223は、第1の押付部204に接する鉛直面および第2の押付部211に接する傾斜面を有していてもよいし、第1の押付部204に接する第1の傾斜面と、第2の押付部211に接する第2の傾斜面とを有していてもよい。
【0118】
また、第5の実施例(図12および図13を参照)において、第1の接触部材200がフランジ部202を有していない構成を採ることも可能である。さらに、第1の接触部205および第2の接触部212のいずれかが設けられていない構成を採ることもできる。回転抑制部として機能する第1の接触部205、第2の接触部212およびフランジ部202の少なくともいずれかが設けられていればよい。
【0119】
なお、第1の実施形態では、「沿う」、「水平」、「直角」、「直交」、「鉛直」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「直角」、「直交」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【0120】
<第2の実施形態>
[第1の実施例]
図14は、この発明の第2の実施形態の第1の実施例に係る接合システム301Aを備えた接合体302Aの概要を示す斜視図である。図14に示すように、接合体302Aは、一対の板状セグメント310,320(第1の板状セグメント310および第2の板状セグメント320)と、一対の板状セグメント310,320同士を水平方向に対向させた状態で接合する接合システム301Aと、一対の板状セグメント310,320の継ぎ目SSに充填された経時硬化性充填材が硬化した充填材硬化部(間詰材)330とを備える。経時硬化性充填材の一例は、モルタル、コンクリート等である。なお、図14において、説明の便宜上、充填材硬化部330を透過させることにより接合システム301Aを図示している。
【0121】
典型的な板状セグメント310,320は、鉄筋コンクリート製のプレキャスト床版であり、橋梁や高架道路等(以下、「橋梁等」という。)の上部構造物を施工する場合等に用いられる。板状セグメント310,320の大きさおよび形状の一例は、橋梁等の延長方向(橋軸方向)に沿う方向を長さ方向X、橋軸方向に直角な水平方向(以下、「橋軸直角方向」という。)に沿う方向を幅方向Y、長さ方向Xおよび幅方向Yに直角な方向を厚み方向Zとした場合、長さ約2.0~2.5m×幅約2.0~11.0m×厚み約0.2~0.3mの平板状である。
【0122】
なお、板状セグメント310,320の材質、構造、大きさおよび形状等は、これらに限定されない。例えば、板状セグメント310,320は、金属製(鋼製、鋳鉄製等)や樹脂製等のように、コンクリート製以外の材料により構成されていてもよい。また、板状セグメント310,320は、PC床版(プレストレスを導入した床版)、鋼床版、合成床版(鋼とコンクリートとを合成した床版)等のように、RC床版(鉄筋コンクリートを用いた床版)以外の構造であってもよい。また、板状セグメント310,320は、曲板状や湾曲板状等のように、平板状以外の板状に形成されていてもよい。曲板状の板状セグメント310,320は、トンネルの内壁等の円弧状や円筒状の構造物を施工する場合等に好適である。
【0123】
第1の板状セグメント310は、平板状の本体部311と、本体部311の側面を構成し、第2の板状セグメント320に対向する対向部312とを含む。対向部312は、第1の方向D1に延びる。第2の実施形態では、第1の方向D1は、幅方向Yに沿う水平方向であり、以降、第1の方向D1を水平方向D1と称する場合がある。
【0124】
第2の板状セグメント320は、平板状の本体部321と、本体部321の側面を構成し、第1の板状セグメント310に対向する対向部322とを含む。対向部322は、水平方向D1に延びる。
【0125】
接合システム301Aは、両板状セグメント310,320に設けられる複数の第1の接合部340と、両板状セグメント310,320に設けられる複数の第2の接合部350と、第1の接合部340および第2の接合部350を機械的接合によって1つずつ接合する金属製の複数の接合部材360とを含む。
【0126】
複数の第1の接合部340は、水平方向D1に延びる2つの列L11,L12を構成している。2つの列L11,L12は、鉛直方向D2に並んでいる。鉛直方向D2の上方側D21の列L11を構成する複数(この実施例では、3つ)の第1の接合部340は、第2の板状セグメント320に設けられている。鉛直方向D2の下方側D22の列L12を構成する複数(この実施例では、3つ)の第1の接合部340は、第1の板状セグメント310に設けられている。列L11を構成する第1の接合部340と列L12を構成する第1の接合部340とは、鉛直方向D2から見て互いに重ならないように水平方向D1にずれている。
【0127】
複数の第2の接合部350は、水平方向D1に延びる2つの列L21,L22を構成している。2つの列L21,L22は、鉛直方向D2に並んでいる。鉛直方向D2の上方側D21の列L21を構成する複数(この実施例では、3つ)の第2の接合部350は、第1の板状セグメント310に設けられている。鉛直方向D2の下方側D22の列L22を構成する複数(この実施例では、3つ)の第2の接合部350は、第2の板状セグメント320に設けられている。列L21を構成する第2の接合部350と列L21を構成する第2の接合部350とは、鉛直方向D2から見て互いに重ならないように水平方向D1にずれている。
【0128】
鉛直方向D2の上方側D21の列L11を構成する各第1の接合部340は、共通の構成を有している。鉛直方向D2の上方側D21の列L21を構成する各第2の接合部350は、共通の構成を有している。これらの第1の接合部340および第2の接合部350を接合する各接合部材360は、共通の構成を有している。
【0129】
鉛直方向D2の上方側D21の列L11、L21を構成する一対の接合部340、350に着目すると、第2の板状セグメント320が「第1の接合部が設けられる一方の板状セグメント」であり、第1の板状セグメント310が「第2の接合部が設けられる他方の板状セグメント」である。鉛直方向D2の下方側D22の列L12,L22を構成する一対の接合部340、350に着目すると、第1の板状セグメント310が「第1の接合部が設けられる一方の板状セグメント」であり、第2の板状セグメント320が「第2の接合部が設けられる他方の板状セグメント」である。
【0130】
第1の接合部340は、対応する板状セグメント310,320の対向部312,322から突出する外側ループ状部341と、外側ループ状部341に接するように外側ループ状部341の開口341hに挿入される接触部材370とを含む。
【0131】
外側ループ状部341は、水平方向FDに対して交差する第1の交差方向CD1に開口している。典型的な外側ループ状部341は、ループ状に形成された鉄筋(ループ筋)である。外側ループ状部341は、水平方向D1に互いに間隔を隔てて配置されており、対応する対向部(対向部312または対向部322)から水平方向FDに突出する2つの直線状部342,343と、2つの直線状部342,343同士を連結するU字状の曲線状部344と、直線状部342,343および曲線状部344に囲まれ、第1の交差方向CD1に開口する開口341hとを含む。第1の交差方向CD1は、典型的には、鉛直方向D2に沿う方向であり、水平方向FDに対して直交する方向である。
【0132】
各板状セグメント310,320は、外側ループ状部341の2つの直線状部342,343と一体または別体として連なり、各板状セグメント310,320に埋め込まれた複数の直線状鉄筋313(後述する図15を参照)を含む。
【0133】
第2の接合部350は、対応する板状セグメント310,320の内部に配置される内側ループ状部351と、対応する板状セグメント310,320の内部に部分的に埋め込まれ内側ループ状部351に接する埋込接触部材380とを含む。
【0134】
内側ループ状部351は、水平方向FDに対して交差する第1の交差方向CD1に開口している。典型的な内側ループ状部351は、ループ状に形成された鉄筋(ループ筋)である。内側ループ状部351は、水平方向D1に互いに間隔を隔てて配置されており、対応する対向部(対向部312または対向部322)から水平方向FDに突出する2つの直線状部352,353と、2つの直線状部352,353同士を連結するU字状の曲線状部354と、直線状部352,353および曲線状部354に囲まれ、第1の交差方向CD1に開口する開口351hとを含む。第1の交差方向CD1は、典型的には、鉛直方向D2に沿う方向であり、水平方向FDに対して直交する方向である。
【0135】
埋込接触部材380は、対応する板状セグメント310,320の対向部312,322から突出し接合部材360に接する外側接触部390と、内側ループ状部351の開口351hに挿入され内側ループ状部351に接する内側接触部400とを含む。外側接触部390および内側接触部400は、一体に形成されている。
【0136】
接合部材360は、第1の接合部340および第2の接合部350の両方に接し、第1の接合部340および第2の接合部350の間で軸力を伝達する力伝達部材420と、力伝達部材420を第1の接合部340および第2の接合部350に対して締め付ける締付部材430とを含む。
【0137】
なお、鉛直方向D2の下方側D22の列L12を構成する第1の接合部340は、鉛直方向D2の上方側D21の列L11を構成する第1の接合部340を上下に反転させ、かつ、対向方向FDに反転させた構成を有する。鉛直方向D2の下方側D22の列L22を構成する第2の接合部350は、鉛直方向D2の上方側D21の列L21を構成する第2の接合部350を上下に反転させ、かつ、対向方向FDに反転させた構成を有する。鉛直方向D2の下方側D22の列L12,L22を構成する第1の接合部340および第2の接合部350を接合する接合部材360は、鉛直方向D2の上方側D21の列L11,L21を構成する第1の接合部340および第2の接合部350を接合する接合部材360を上下に反転させ、かつ、対向方向FDに反転させた構成を有する。
【0138】
次に、接合システム301Aによって、一対の板状セグメント310,320を接合する様子について説明する。
【0139】
第1の板状セグメント310に設けられている第1の接合部340および第2の接合部350は、鉛直方向D2から見て互いに重ならないように水平方向D1にずれている。そのため、第1の板状セグメント310に設けられている全ての接合部340,350の鉛直方向D2の上方側D21には、他の接合部が存在しておらず、各接合部340,350の上方側D21の空間は開放されている。第2の板状セグメント320に設けられている第1の接合部340および第2の接合部350は、鉛直方向D2から見て互いに重ならないように水平方向D1にずれている。そのため、第2の板状セグメント320に設けられている全ての接合部340,350の鉛直方向D2の下方側D22には、他の接合部が存在しておらず、各接合部340,350の下方側D22の空間は開放されている。
【0140】
そのため、第1の実施形態の第1の実施例(図2を参照)と同様に、クレーン等により第2の板状セグメント320を第1の板状セグメント310の上方側D21に位置させた後、第2の板状セグメント320を鉛直方向D2の上方側D21から降下させれば、第1の板状セグメント310の対向部312と第2の板状セグメント320の対向部322とを対向させることができる(対向工程)。その際、第2の板状セグメント320に設けられている接合部340,350が、第1の板状セグメント310に設けられている接合部340,350のそれぞれに対して上方側D21から近づき、第1の接合部340と第2の接合部350とが鉛直方向D2に1つずつ重なる。
【0141】
このように、各第1の接合部340と各第2の接合部350とを鉛直方向D2に重ねるために、第1の板状セグメント310に対して第2の板状セグメント320を水平方向D1,FDに移動させることなく、鉛直方向D2の上方側D21から直線的に降下させることができる。このため、一対の板状セグメント310,320の対向部312,322同士を対向させた状態、すなわち板状セグメント310,320同士が接合可能となる位置に、各板状セグメント310,320を効率良く配置することができる。したがって、各接合部340,350を鉛直方向D2に重ねて接合する構成において、一対の板状セグメント310,320を接合する際の施工性を向上させることができる。
【0142】
次に、図15図18を用いて、第1の接合部340と第2の接合部350とを、接合部材360を用いて、機械的接合によって接合する様子について説明する(接合工程)。図15図18は、第2の板状セグメント320に設けられている第1の接合部340と第1の板状セグメント310に設けられている第2の接合部350とを接合する様子を示している。図15図18では、第1の板状セグメント310に設けられている第1の接合部340と第2の板状セグメント320に設けられている第2の接合部350の図示を省略している。
【0143】
図15は、一対の板状セグメント310,320の対向部312,322同士を対向させたときの一対の接合部340,350およびその周辺を抜き出して示す断面図である。図15を参照して、埋込接触部材380の外側接触部390は、対応する対向部(図15の例では第1の対向部312)から突出する突出部396と、突出部396の先端に設けられ、外側ループ状部341の開口341hに挿入された状態で力伝達部材420(図14を参照)に押し付けられる外側押付部391とを含む。
【0144】
外側押付部391は、鉛直方向D2から見て略U字状を有しており、力伝達部材420を収容している(図14を参照)。外側押付部391は、力伝達部材420に押し付けられる第1の押付面392を有する。第1の押付面392は、外側押付部391の内周面を構成している。第1の押付面392は、鉛直方向D2に沿う鉛直面である。
【0145】
内側接触部400は、内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに接するループ接触部401と、ループ接触部401および突出部396を連結する内側連結部402とを含む。ループ接触部401は、鉛直方向D2から見て略半円柱形状を有する(図14も参照)。ループ接触部401は、内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに沿う湾曲面401a(図14も参照)を有する。ループ接触部401は、湾曲面401aに設けられ、内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに押し当てられる押し当て凹部403をさらに含む。押し当て凹部403は、内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに沿って窪んでいる。
【0146】
図16は、図15に示す一対の接合部340,350に対して接触部材370を取り付けた後の様子を示す断面図である。図16を参照して、接触部材370は、外側ループ状部341および力伝達部材420(図14を参照)に接する略半円柱形状を有する。接触部材370は、力伝達部材420に押し付けられる第2の押付面371と、外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに沿う湾曲面372(図14も参照)とを含む。第2の押付面371および湾曲面372は、接触部材370の外周面を構成している。第2の押付面371は、上方側D21から下方側D22に向けて第1の押付面392に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面である。第2の押付面371は、対向方向FDから外側接触部390の第1の押付面392に対向する。
【0147】
このような接触部材370が各一対の接合部340,350に対して取り付けられる。詳しくは、第1の板状セグメント310と第2の板状セグメント320とを対向させた状態で、接触部材370が外側ループ状部341に接するように各外側ループ状部341の開口341hに鉛直方向D2の上方側D21から挿入される。接触部材370は、埋込接触部材380の外側接触部390の突出部396に載置される。突出部396は、接触部材370が載置される平坦な載置面397を有する。
【0148】
接触部材370は、湾曲面372に設けられ、外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに押し当てられる押し当て凹部373をさらに含む。押し当て凹部373は、外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに沿って窪んでいる。
【0149】
図17は、図16に示す第2の接合部350と接触部材370との間に力伝達部材420を嵌め込む様子を示す断面図である。図17に示すように、力伝達部材420は、鉛直方向D2の上方側D21から下方側D22に向けて先細りする先細り形状を有する。力伝達部材420は、接触部材370の第2の押付面371および外側接触部390の第1の押付面392に接する外周面421を有する。
【0150】
締付部材430は、ボルト431と、ボルト軸部431aに取り付けられるナット432と、ボルト頭部431bを載せるボルトワッシャ433と、ナット432を載せるナットワッシャ434とを含む。
【0151】
力伝達部材420は、ボルトワッシャ433を介してボルト頭部431bを載置する載置面422と、ボルト軸部431aが挿入可能となるように力伝達部材420を貫通する貫通孔423とを含む。外側接触部390は、ナット432およびナットワッシャ434を収容する収容凹部394と、ボルト軸部431aが挿入可能となるように外側接触部390を貫通する貫通孔395とをさらに含む。力伝達部材420の外周面421は、外側接触部390の第1の押付面392に沿う第1の接触面424と、接触部材370の第2の押付面371に沿う第2の接触面425とを有する。第1の接触面424は、鉛直面であり、第2の接触面425は、傾斜面である。
【0152】
接触部材370が外側ループ状部341の開口341hに挿入された状態で、第1の接合部340の接触部材370と第2の接合部350の外側接触部390の外側押付部391との間に力伝達部材420が嵌め込まれる(嵌め込み工程)。
【0153】
図18は、図17に示す第2の接合部350と接触部材370との間に力伝達部材420を嵌め込んだ後の様子を示す断面図である。ナット432の回転を止めた状態でボルト頭部431bを回転させると、力伝達部材420がボルト頭部431bによって押されて下方側D22に移動する。これにより、図18に示すように、力伝達部材420は、接触部材370の第2の押付面371と外側接触部390の第1の押付面392との間に押し込まれる。これにより、力伝達部材420は、締付部材430の締付度合に応じた押付力で接触部材370を外側ループ状部341に向けて押し付ける。詳しくは、接触部材370の湾曲面372が外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに押し付けられることによって、外側ループ状部341を介して第2の板状セグメント320(一方の板状セグメント)が第1の板状セグメント310(他方の板状セグメント)側に引っ張られる。
【0154】
その結果、一対の板状セグメント310,320が対向方向FDに近づく。締付部材430によって接触部材370に対して力伝達部材420を締め付けることによって、接触部材370を固定することができる(固定工程)。
【0155】
第2の実施形態の第1の実施例によれば、第1の接合部340と第2の接合部350とが、金属製の接合部材360によって機械的に接合される。すなわち、第1の接合部340と第2の接合部350とが、充填材硬化部330を介することなく直に連結される。そのため、充填材硬化部330が劣化等した場合であっても、第1の接合部340と第2の接合部350との間で軸力(直線状部342,343,352,353が延びる方向、すなわち、対向方向FDの力)を確実性高く伝達させることができ、所望の引張強度を発現させることができる。
【0156】
さらに、第1の実施例によれば、第1の接合部340と第2の接合部350とが、充填材硬化部330を介することなく直に連結されるため、例えば、コンクリートを経時硬化性充填材として用いる場合、充填材硬化部330に荷重が繰り返し加わることで、充填材硬化部330にひび割れが生じたり、ひび割れが生じた部分がすり合わされることで充填材硬化部330が土砂化したりする事態を未然に防止することができる。
【0157】
さらに、第1の実施例によれば、第1の接合部340と第2の接合部350とが、充填材硬化部330を介することなく直に連結されるため、例えば、コンクリートを経時硬化性充填材として用い、板状セグメント310,320をプレキャスト床版として用いる場合に、車両が通過する度に充填材硬化部330に荷重が加わり、充填材硬化部330にひび割れが生じ、当該ひび割れから充填材硬化部330内に水が浸透し、充填材硬化部330を構成するアルカリ金属成分(ナトリウムおよびカリウム等)と骨材(砂利および砂等)とが反応し、充填材硬化部330が劣化する事態を未然に防止することができる。
【0158】
また、第1の実施例によれば、接触部材370が、外側ループ状部341の開口341hに挿入された状態で外側ループ状部341および接合部材360の力伝達部材420に接している。そのため、外側ループ状部341と力伝達部材420との間で軸力を直接伝達させやすい。したがって、外側ループ状部341と第2の接合部350との間で、軸力を確実性高く伝達できる。
【0159】
また、第1の実施例によれば、接合部材360の内側接触部400が、内側ループ状部351の開口351h内で内側ループ状部351に接しているため、内側ループ状部351および内側接触部400との間で軸力を確実性高く伝達することができる。したがって、ループ状部(内側ループ状部351)が板状セグメント310,320の内部に配置されている場合であっても、第1の接合部340と第2の接合部350との間で軸力を確実性高く伝達させることができる。
【0160】
また、第1の実施例によれば、外側接触部390と内側接触部400とが一体に形成されている。そのため、内側ループ状部351および外側ループ状部341との間で軸力を確実性高く伝達することができる。したがって、第1の接合部340と第2の接合部350との間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0161】
このように、外側ループ状部341および接合部材360の間の軸力伝達および内側ループ状部351および接合部材360の間の軸力伝達が確実性高く行われるため、外側ループ状部341と内側ループ状部351との間で軸力を確実性高く伝達することができる。
【0162】
内側接触部400は、内側ループ状部351の曲線状部354に接している。そのため、内側接触部400は、曲線状部354の周方向の各位置に均一性高く押し付けられる。同様に、接触部材370は、外側ループ状部341の曲線状部344に接している。そのため、外側接触部390は、曲線状部344の周方向の各位置に均一性高く押し付けられる。
【0163】
また、鉛直方向D2の上方側D21から下方側D22に向けて先細りする先細り形状を有する力伝達部材420が接触部材370と埋込接触部材380の外側接触部390との間に嵌め込まれることによって、くさび効果を発現させることができる。そのため、接触部材370を外側ループ状部341に対して押し付けることができる。そのため、一対の接合部340,350の間で一層確実性高く軸力を伝達させることができる。
【0164】
さらに、力伝達部材420は、締付部材430の締付度合に応じた押付力で接触部材370および外側接触部390に押し付けられる。そのため、締付部材430の締付度合を調整することによって、一対の接合部340,350の間での軸力の伝達に適した力伝達部材420の押付力を一対の接合部340,350に付与できる。
【0165】
さらに、第1の実施例によれば、一対の接合部340,350が、金属製の接合部材360によって機械的に接合されているため、一対の板状セグメント310,320の位置を強固に固定できる。そのため、接合部340,350間で力が伝達される際の第1の接合部340および第2の接合部350の相対変位を抑制できる。これにより、充填材硬化部330の剛性の向上を図ることができる。また、充填材硬化部330の内部における第1の接合部340および第2の接合部350の相対移動量を低減できるため、充填材硬化部330のひび割れの発生を抑制することができる。
【0166】
[第2の実施例]
図19は、第2の実施形態の第2の実施例に係る接合システム301Bを備えた接合体302Bの概要を示す斜視図である。図20は、第2の実施例に係る接合システム301Bの断面図である。第2の実施例において、第1の実施例と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0167】
図19に示すように、第2の実施例に係る接合システム301Bが第1の実施例に係る接合システム301Aと主に異なる点は、接合部材360によって、1つの埋込接触部材440に対して2つの外側ループ状部341が接合されている点である。以下では、第2の実施例に係る接合システム301Bが第1の実施例に係る接合システム301Aと異なる点について詳しく説明する。
【0168】
第2の実施例では、全て(この実施例では、3つ)の第1の接合部340が、第1の板状セグメント310に設けられており、全て(この実施例では、3つ)の第2の接合部350が、第2の板状セグメント320に設けられている。したがって、第2の実施例では、第1の板状セグメント310が「第1の接合部が設けられる一方の板状セグメント」であり、第2の板状セグメント320が「第2の接合部が設けられる他方の板状セグメント」である。
【0169】
第2の実施例において、各第1の接合部340は、第1の板状セグメント310の対向部312から突出し鉛直方向D2に並ぶ2つの外側ループ状部341と、2つの外側ループ状部341に接するように2つの外側ループ状部341の開口341hに挿入される接触部材450とを含む。
【0170】
第1の板状セグメント310から突出する複数の外側ループ状部341は、水平方向D1に延びる2つの列L31,L32を構成している。複数の外側ループ状部341のうちの一部(この実施例では、3つ)の外側ループ状部341が鉛直方向D2の上方側D21の列L31を構成し、残り(この実施例では、3つ)の外側ループ状部341が鉛直方向D2の下方側D22の列L32を構成する。
【0171】
第2の実施例において、各第2の接合部350は、第2の板状セグメント320の内部に配置され、鉛直方向D2に並ぶ2つの内側ループ状部351と、第2の板状セグメント320の内部に部分的に埋め込まれ2つの内側ループ状部351に接する埋込接触部材440とを含む。
【0172】
複数の内側ループ状部351のうちの一部(この実施例では、3つ)の内側ループ状部351が鉛直方向D2の上方側D21の列L41を構成し、残り(この実施例では、3つ)の内側ループ状部351が鉛直方向D2の下方側D22の列L42を構成する。 埋込接触部材440は、第2の板状セグメント320の対向部322から突出し接合部材360に接する外側接触部460と、対応する2つの内側ループ状部351の開口351hに挿入され当該2つの内側ループ状部351に接する内側接触部470とを含む。外側接触部460および内側接触部470は、一体に形成されている。
【0173】
図20に示すように、埋込接触部材440の外側接触部460は、鉛直方向D2に並ぶ2つの外側ループ状部341の間に位置する。外側接触部460は、第2の板状セグメント320の対向部322から突出する突出部466と、突出部466の先端に設けられ、力伝達部材420に押し付けられる外側押付部461とを含む。
【0174】
外側押付部461は、鉛直方向D2から見て略U字状を有しており、力伝達部材420を収容している(図19も参照)。外側押付部461は、外側押付部461の内周面を構成し、力伝達部材420に押し付けられる第1の押付面462を有する。第1の押付面462は、上方側D21から下方側D22に向けて接触部材450に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面である。
【0175】
内側接触部470は、鉛直方向D2に並ぶ2つの内側ループ状部351に跨って鉛直方向D2に延びている。内側接触部470は、複数の内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iにそれぞれ接する一対のループ接触部471と、一対のループ接触部471および突出部466を連結する内側連結部472とを含む。
【0176】
各ループ接触部471は、鉛直方向D2から見て略半円柱形状を有する(図19も参照)。各ループ接触部471は、対応する内側ループ状部351の開口351hに挿入されている。各ループ接触部471は、対応する内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに接する湾曲面471a(図19も参照)を有する。各ループ接触部471は、湾曲面471aに設けられ、対応する内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに押し当てられる押し当て凹部473をさらに含む。各押し当て凹部473は、対応する内側ループ状部351の曲線状部354の内周部354iに沿って窪んでいる。
【0177】
接触部材450は、鉛直方向D2に並ぶ2つの外側ループ状部341の開口341hの両方の内側に配置されるように、2つの外側ループ状部341に跨って鉛直方向D2に延びている。接触部材450は、外側ループ状部341および力伝達部材420に接する略半円柱形状を有する(図19も参照)。接触部材450は、力伝達部材420に接し力伝達部材420に押し付けられる第2の押付面451と、鉛直方向D2に並ぶ2つの外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに沿う湾曲面452(図19も参照)とを含む。第2の押付面451および湾曲面452は、接触部材450の外周面を構成している。第2の押付面451は、鉛直方向D2に沿う鉛直面である。接触部材450は、湾曲面452に設けられ、2つの外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iにそれぞれ押し当てられる2つの押し当て凹部454をさらに含む。各押し当て凹部454は、対応する外側ループ状部341の曲線状部344の内周部344iに沿って窪んでいる。外側接触部460の突出部466は、接触部材450を内部に配置される貫通孔467を有する。
【0178】
力伝達部材420は、鉛直方向D2の上方側D21から下方側D22に向けて先細りする先細り形状を有する。第2の実施例に係る力伝達部材420の外周面421は、外側接触部460の第1の押付面462に沿う第1の接触面426と、接触部材450の第2の押付面451に沿う第2の接触面427とを有する。つまり、第1の実施例(図17および図18を参照)に係る力伝達部材420の外周面421とは傾斜面および押付面の配置が異なっている。第1の接触面426は、上方側D21から下方側D22に向けて第2の接触面427に近づくように鉛直方向D2に対して傾斜する傾斜面であり、第2の接触面427は、鉛直方向D2に沿う鉛直面である。締付部材430は、ボルト431と、ボルト頭部431bを載せるボルトワッシャ433とを含む。外側接触部460は、ボルト軸部431aに嵌合するねじ孔464を有する。
【0179】
第2の実施例においても第1の実施例と同様に、第1の接合部340と第2の接合部350との間で軸力を確実性高く伝達させることができ、所望の引張強度を発現させることができ、かつ、一対の板状セグメント310,320間の接合強度の向上を図ることができる。
【0180】
さらに、第2の実施例によれば、2つの外側ループ状部341および2つの内側ループ状部351を、単一の接合部材360で接合することができる。そのため、接合部材360の部品点数を削減することができ、かつ、一対の板状セグメント310,320を速やかに接合することができる。
【0181】
[その他の実施例]
なお、第2の実施形態は上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。例えば、板状セグメント310,320において、長さ方向Xを橋軸直角方向に沿う方向、幅方向Yを橋軸方向に沿う方向としてもよく、この場合、第1の方向D1は橋軸方向に沿う方向、対向方向FDは橋軸直角方向に沿う方向となり、板状セグメント310,320同士を橋軸直角方向に接合することができる。
【0182】
また、例えば、対向方向FDは、必ずしも図14等に示すように水平方向に沿う方向である必要はなく、図14等とは異なり、水平方向に対して交差する方向であってもよい。各実施例の構成において対向方向FDが水平方向に対して交差する方向(例えば、水平方向に対して0°よりも大きく90°よりも小さい所定の角度θ(図示せず)で傾斜する方向)である場合、外側ループ状部341の開口341hおよび外側接触部390は、対向方向FDが水平方向に対して傾斜する角度θと同じ角度だけ鉛直方向D2に対して傾斜する方向から見て重なる。
【0183】
また、第1の方向D1は、必ずしも水平方向に沿う方向である必要はなく、水平方向に対して交差する方向(水平方向に対して0°よりも大きく90°よりも小さい所定の角度で傾斜する方向)であってもよい。この場合、各列L11,L12,L21,L22,L31,L32,L41,L42を構成する複数のループ状部341,351は、水平方向に対して交差する方向に並ぶ。
【0184】
また、第2の実施形態の各実施例では、接合部材360で第1の接合部340および第2の接合部350を接合する際、外側ループ状部341および内側ループ状部351を重ねる必要がない。そのため、外側ループ状部341および内側ループ状部351は、互いに異なる方向に開口していてもよい。
【0185】
また、第1の実施例(図14図18を参照)および第2の実施例(図19および図20を参照)において、力伝達部材420と接触部材370,450との間の摩擦力によって力伝達部材420が接触部材370,450と外側接触部390,460の間に嵌め込まれた状態で固定できる場合には、締付部材430を省略することができる。
【0186】
また、内側ループ状部351が設けられておらず、埋込接触部材380,440が、対応する板状セグメント310,320に埋め込まれた鉄筋と溶接等により接合されていてもよい。
【0187】
また、第1の実施例(図14図18を参照)では、第1の押付面392が鉛直面であり、第2の押付面371が傾斜面である構成を採っている。しかしながら、外側接触部390及び接触部材370の構成はこれに限られず、第1の押付面392および第2の押付面371の少なくとも一方が傾斜面であればよい。すなわち、第1の押付面392が傾斜面であり、第2の押付面371が鉛直面であってもよい。また、第1の押付面392および第2の押付面371の両方が傾斜面であってもよい。そのため、力伝達部材420の第1の接触面424は、傾斜面であってもよく、第2の接触面425は、鉛直面であってもよい。第1の接触面424が傾斜面である場合、力伝達部材420が締付部材430の締付度合に応じた押付力で外側接触部390に押し付けられる。これにより、埋込接触部材380および内側ループ状部351を介して第1の板状セグメント310が第2の板状セグメント320側に引っ張られる。
【0188】
同様に、第2の実施例(図19および図20を参照)においても、第1の押付面462および第2の押付面451の少なくともいずれかが傾斜面であればよい。力伝達部材420の第1の接触面426は、傾斜面であってもよく、第2の接触面427は、鉛直面であってもよい。第1の接触面426が傾斜面である場合も、第1の実施例(図14図18を参照)において第1の接触面424が傾斜面である場合と同様に、埋込接触部材380および内側ループ状部351を介して第1の板状セグメント310が第2の板状セグメント320側に引っ張られる。
【0189】
なお、第2の実施形態では、「沿う」、「水平」、「直角」、「直交」、「鉛直」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「直角」、「直交」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【符号の説明】
【0190】
1A,1B,1C,1D,1E,301A,301B 接合システム、10 第1の板状セグメント、20 第2の板状セグメント、12 対向部、22 対向部、40 第1のループ状部、40h 開口、50 第2のループ状部、50h 開口、60 接合部材、70a 第1の開放部、80 第1の接触部材、90 第2の接触部材、100 くさび部材、110 締付部材、140 第1の接触部材、150 第2の接触部材、160 第1の締付部材、170 第2の締付部材、180 接合部材、190 接合部材、200 第1の接触部材、206 第1の接触抵抗力受け部(接触抵抗力受け部、回転抑制部)、207 抵抗力受け部(回転抑制部)、210 第2の接触部材、213 第2の接触抵抗力受け部(接触抵抗力受け部、回転抑制部)、301A,301B 接合システム、310 第1の板状セグメント、320 第2の板状セグメント、312 対向部、322 対向部、340 第1の接合部、341 外側ループ状部、341h 開口、350 第2の接合部、351 内側ループ状部、351h 開口、360 接合部材、370 接触部材、390 外側接触部、400 内側接触部、420 力伝達部材、430 締付部材、450 接触部材、460 外側接触部、470 内側接触部、CD1,CD3 第1の交差方向、CD2,CD4 第2の交差方向、D1 第1の方向、D2 鉛直方向、FD 対向方向
図1
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