(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094979
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ロボット制御装置及びロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20220621BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208020
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】赤路 雄一
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB12
3C269AB33
3C269BB09
3C269EF39
3C269SA04
3C269SA30
3C707AS11
3C707JU12
3C707JU14
3C707LU01
(57)【要約】
【課題】
教示ステップが遠隔地の操作端末より修正された場合に、現地の操作端末を扱う作業者が、その教示ステップを意図せず動作させることを抑制するロボット制御装置及びロボット制御方法を提供する。
【解決手段】
マニピュレータを動作させるための諸条件を含む教示ステップを、少なくとも第1および第2の操作装置からそれぞれ入力可能なロボット制御装置3において、前記教示ステップを入力した前記第1の操作装置の識別情報を前記教示ステップに関連付けて保持する第1保持部31と、前記第1の操作装置によって入力された教示ステップの前記諸条件が前記第2の操作装置によって変更されたとき、前記第2の操作装置の識別情報を変更後の教示ステップに関連付けて保持する第2保持部32と、前記第1保持部と前記第2保持部の保持内容を比較する比較部34と、前記比較部の比較結果に応じた処理を行う処理部35と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータを動作させるための諸条件を含む教示ステップを、少なくとも第1および第2の操作装置からそれぞれ入力可能なロボット制御装置において、
前記教示ステップを入力した前記第1の操作装置の識別情報を前記教示ステップに関連付けて保持する第1保持部と、
前記第1の操作装置によって入力された教示ステップの前記諸条件が前記第2の操作装置によって変更されたとき、前記第2の操作装置の識別情報を変更後の教示ステップに関連付けて保持する第2保持部と、
前記第1保持部と前記第2保持部の保持内容を比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に応じた処理を行う処理部と、
を備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記諸条件は、マニピュレータの位置座標値であり、
前記比較部は、前記教示ステップに関連付けられた前記識別情報が変更前後で一致するか否かを比較し、
前記識別情報が異なると判断した場合、前記処理部は、
不一致の教示ステップにおける移動速度を、予め教示されていた前記教示ステップの移動速度よりも所定値だけ低くする、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記諸条件は、マニピュレータの位置座標値であり、
前記比較部は、前記教示ステップに関連付けられた前記識別情報が変更前後で一致するか否かを比較し、
前記識別情報が異なると判断した場合、前記処理部は、
前記識別情報が一致した他の教示ステップよりも、不一致の教示ステップにおける移動速度を所定値だけ低くする、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記不一致の教示ステップが実行された後は、当該教示ステップの移動速度を、予め教示されていた前記教示ステップの移動速度と同じとする、
請求項2又は3のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記操作装置は前記教示ステップの表示手段を備え、
前記処理部は、
前記比較部の比較結果が一致した教示ステップと、不一致の教示ステップの表示を異なる表示とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
マニピュレータを動作させるための諸条件を含む教示ステップを、少なくとも第1および第2の操作装置からそれぞれ入力可能なロボット制御装置の制御方法であって、
前記教示ステップを入力した第1の操作装置の識別情報を前記教示ステップに関連付けて保持するステップと、
前記第1の操作装置によって入力された教示ステップの位置座標値が第2の操作装置によって変更されたとき、前記第2の操作装置の識別情報を変更後の教示ステップに関連付けて保持するステップと、
前記第1保持部と前記第2保持部の保持内容を比較するステップと、
前記比較部の比較結果に応じた処理を行うステップと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置及びロボット制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット制御装置を通信回線に接続し、この通信回線を介して遠隔操作によりロボットを操作及び教示を行うシステムが知られている。例えば、特許文献1には、ロボット制御装置と遠隔地の操作端末とを、インターネットを用いて接続し、ロボット制御装置に接続されたマニピュレータを動作させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔地からロボット制御装置に接続されたマニピュレータの教示を行う際に、遠隔地の作業者が、実際のマニピュレータを操作する現地の操作端末で教示された、位置座標や姿勢等が記憶された教示ステップを修正する場合がある。この場合、遠隔地の作業者は、マニピュレータ近傍の環境がどうなっているかを確認できないため、周辺機器や安全柵等の周辺物に干渉する位置座標や姿勢を教示してしまう恐れがある。
【0005】
あるいは、マニピュレータに周辺機器やツールが接続、例えば溶接機が接続されている場合、遠隔地の作業者が、現地の操作端末で教示された溶接条件をより高出力に修正する場合がある。その場合、溶接条件が変更になったと知らずに現地の作業者が溶接を行うと、溶け落ち等の溶接不良が発生する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、教示ステップが遠隔地の操作端末より修正された場合に、現地の操作端末を扱う作業者が、その教示ステップを意図せず動作させることを抑制するロボット制御装置及びロボット制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、マニピュレータを動作させるための諸条件を含む教示ステップを、少なくとも第1および第2の操作装置からそれぞれ入力可能なロボット制御装置において、前記教示ステップを入力した前記第1の操作装置の識別情報を前記教示ステップに関連付けて保持する第1保持部と、前記第1の操作装置によって入力された教示ステップの前記諸条件が前記第2の操作装置によって変更されたとき、前記第2の操作装置の識別情報を変更後の教示ステップに関連付けて保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部の保持内容を比較する比較部と、前記比較部の比較結果に応じた処理を行う処理部と、を備える。
【0008】
この態様によれば、現地の操作端末で教示された教示ステップが、遠隔地から変更されたとしても、変更による意図しない動作を抑制する処理ができる。
【0009】
上記態様において、前記諸条件は、マニピュレータの位置座標値であり、前記比較部は、前記教示ステップに関連付けられた前記識別情報が変更前後で一致するか否かを比較し、前記識別情報が異なると判断した場合、前記処理部は、不一致の教示ステップにおける移動速度を、予め教示されていた前記教示ステップの移動速度に対して、所定割合遅くする。
【0010】
この態様によれば、遠隔地より変更された教示ステップにおいて、マニピュレータが現地の作業者の意図しない位置座標へ移動する前にマニピュレータを停止させることができる。
【0011】
上記態様において、前記諸条件は、マニピュレータの位置座標値であり、前記比較部は、前記教示ステップに関連付けられた前記識別情報が変更前後で一致するか否かを比較し、前記識別情報が異なると判断した場合、前記処理部は、前記識別情報が一致した他の教示ステップよりも、不一致の教示ステップにおける移動速度を所定値だけ低くする。
【0012】
この態様によれば、遠隔地より変更された教示ステップにおいて、マニピュレータが現地の作業者の意図しない位置座標へ移動する前にマニピュレータを停止させることができる。
【0013】
上記態様において、前記処理部は、前記不一致の教示ステップが実行された後は、当該教示ステップの移動速度を、予め教示されていた前記教示ステップの移動速度と同じとする。
【0014】
この態様によれば、遠隔地より変更された教示ステップを、現地の作業者が実際に動作させて確認した後は、予め教示した移動速度に自動で戻すことができ、より簡便な操作が可能となる。
【0015】
上記態様において、前記操作装置は前記教示ステップの表示手段を備え、前記処理部は、前記比較部の比較結果が一致した教示ステップと、不一致の教示ステップの表示を異なる表示とする。
【0016】
この態様によれば、現地の作業者は、遠隔地より変更された教示ステップを判別可能となり、マニピュレータを動作させる前に、変更された教示ステップの影響を判断できるようになる。
【0017】
上記態様において、マニピュレータを動作させるための諸条件を含む教示ステップを、少なくとも第1および第2の操作装置からそれぞれ入力可能なロボット制御装置の制御方法であって、前記教示ステップを入力した第1の操作装置の識別情報を前記教示ステップに関連付けて保持するステップと、前記第1の操作装置によって入力された教示ステップの位置座標値が第2の操作装置によって変更されたとき、前記第2の操作装置の識別情報を変更後の教示ステップに関連付けて保持するステップと、 前記第1保持部と前記第2保持部の保持内容を比較するステップと、前記比較部の比較結果に応じた処理を行うステップと、を含む。
【0018】
この態様によれば、現地の操作端末で教示された教示ステップが、遠隔地から変更されたとしても、変更による意図しない動作を抑制する処理ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、教示ステップが遠隔地の操作端末より修正された場合に、現地の操作端末を扱う作業者が、その教示ステップを意図せず動作させることを抑制するロボット制御装置及びロボット制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットシステムの概略を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る位置座標、速度に関する教示ステップの概略を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る溶接条件に関する教示ステップの概略を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る教示プログラムの概略を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、表示を変更した教示プログラムの概略を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る教示ステップ実行時において、処理部35で動作速度を低下させる処理の流れを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る教示ステップ実行時において、処理部35で低下させた動作速度を元に戻す処理の流れを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る教示ステップ表示時において、処理部35で教示ステップの表示を変更する処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0022】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るロボットシステム1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットシステム1の概略を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るロボットシステム1は、いわゆるティーチングプレイバック方式の溶接ロボットシステムであり、マニピュレータ2、ロボット制御装置3、現地で接続された操作端末4、遠隔地で接続された操作端末5、溶接電源6、溶接用トーチ7を備える。
【0023】
ロボット制御装置3は、マニピュレータ2を制御する装置である。ロボット制御装置3には、操作端末4と操作端末5も接続されており、それぞれの操作端末より、当該マニピュレータを制御するための位置座標情報及び動作速度の情報を教示ステップとして記録できる。なお、位置座標情報には姿勢に関する情報も含むものとする。また、ロボット制御装置3は、一以上の一連の教示ステップからなる教示プログラムを再生可能であり、教示された教示ステップの順に、マニピュレータ2を動作させることができる。
【0024】
また、ロボット制御装置3には溶接電源6も接続されており、操作端末4及び操作端末5から入力された溶接条件を教示ステップとして記録可能である。上述の教示プログラムとして教示ステップに記録された溶接条件を再生し、当該溶接電源に伝達することでマニピュレータ2先端に取り付けられた溶接トーチ7で被溶接物を溶接することができる。
【0025】
溶接電源6はアーク溶接を行う機器であり、ロボット制御装置3と、マニピュレータ2の先端に取り付けられた溶接トーチ7と接続されている。溶接電源6は、ロボット制御装置3の実行部36から、溶接の開始、終了等の制御指令が通知され、指令に応じて電流及び電圧を印加し、制御を行う。溶接トーチ7は、設定された溶接条件に従って溶接ワイヤの送給や溶接電源6から出力された電圧の印加がなされ、被溶接物に溶接を行う。なお、溶接電源6、溶接用トーチ7は当該ロボットシステムに接続される各種ツールの一例であり、その他、ロボットハンドや吸着装置等、ロボット制御装置から各種条件を設定できる他ツールでもよい。
【0026】
操作端末4は、ディスプレイ等の出力部と、操作ボタン等の入力部を備える。操作端末4は、ロボット制御装置3と接続され、教示プログラム保持部33の保持内容を読み出し、ディスプレイに表示することができる。また、処理部35の通知に応じて、当該表示内容、特に教示ステップの表示を変更しても良い。なお、操作端末4は有線接続等でロボット制御装置3と直接接続されており、主にマニピュレータ2近傍の作業者が扱い、教示プログラムの作成、変更及び、再生を実施することができる。
【0027】
操作端末5は、一般的なディスプレイ、マウス、キーボード等を備える入出力機器によって実現される。操作端末5は、ロボット制御装置3と接続され、教示プログラム保持部33の保持内容を読み出し、ディスプレイに表示することができる。また、処理部35の通知に応じて、当該表示内容、特に教示ステップの表示を変更しても良い。なお、操作端末5は、インターネット接続等でロボット制御装置3と接続されており、主にマニピュレータ2を設置している場所から離れた、遠隔地の作業者が操作を行う。本実施例では、操作端末5は教示プログラムの作成、変更のみ実施可能だが、再生を実施可能としても良い。
【0028】
ロボット制御装置3の内部の構造について説明する。教示プログラム保持部33は、操作端末4及び操作端末5を用いて作成される教示プログラムを保持する。教示プログラム保持部33は、第1保持部31、第2保持部32をさらに備え、第1保持部31は、教示プログラム作成時の操作端末の識別情報を教示ステップごとに保持する。第2保持部32は、教示プログラムを変更した際の、変更を行った操作端末の識別情報を教示ステップごとに備える。
【0029】
比較部34は、教示プログラム保持部33に保持されている教示プログラムを、教示ステップごとに読み出し、第1保持部31の操作端末の識別情報と、第2保持部32の操作端末の識別情報とを比較する。比較結果及び読み出した教示ステップの内容は、処理部35に通知する。
【0030】
実行部36は、処理部35から通知された位置座標情報及び動作速度の情報を受け取って、当該位置座標まで、通知された動作速度でマニピュレータ2を動作させる。また、処理部35が溶接開始、終了の通知を行った場合、溶接電源6に対して、溶接の開始、終了の制御指令を通知する。また、マニピュレータ2や溶接電源6の動作状態を監視し、指定の教示ステップ及び教示プログラムの動作が完了した場合、動作完了の通知を処理部35に通知する。
【0031】
処理部35は、比較部35から通知された比較結果に応じて、所定の処理を行う。処理の内容として、実行部に対して、教示ステップに記録されている位置座標情報及び動作速度の情報、または、溶接実行、終了等の情報を通知する。このとき、比較結果が一致していない場合、動作速度の情報を所定値低く設定しても良い。具体的な処理としては、比較部34から通知された比較結果が一致していない教示ステップの動作速度を変更、例えば教示された動作速度の50%に減速した速度に変更し、実行部36に通知しても良い。
【0032】
または、比較結果が一致していない場合の処理として、処理部35は、比較結果が一致していない教示ステップの動作速度を、比較結果が一致している教示ステップの動作速度よりも所定値低くしてもよい。具体的な処理として、比較部34に、教示プログラム保持部33から、その当該教示プログラムの他の教示ステップ、あるいは、前後の教示ステップを読み出し、比較するように通知し、その通知を受けた比較部34は、他の教示ステップ、あるいは、前後の教示ステップの比較結果を処理部35に通知する。処理部35は、比較結果が一致している教示ステップの動作速度の中で最も遅い動作速度を選択し、その動作速度より、例えば80%減速した速度に変更し、実行部36に通知しても良い。
【0033】
上述の動作速度の変更により、教示ステップを作成した操作端末と異なる操作端末で当該教示ステップを編集された場合、教示プログラム再生時は、当該教示ステップの動作がもともと教示された値に比べて遅い速度で再生されるため、再生を行った作業者は意図しない位置座標へ移動する前にマニピュレータを停止させることができる。
【0034】
また、処理部35は、操作端末4及び操作端末5に表示される教示プログラムに対して、比較結果が一致していない教示ステップの表示を、比較結果が一致している教示ステップの表示に比べて変えるように通知しても良い。
【0035】
ここで、比較結果が一致していない教示ステップの表示を変更する具体的な処理を説明する前に、
図2、
図3、及び
図4を用いて、操作端末4及び操作端末5に表示される、教示ステップ及び教示プログラムについて一例を用いて説明を行う。
【0036】
図2は、位置座標及びに速度に関する教示ステップの一例である。ステップ番号40は、教示ステップの番号を表す。教示命令41は、マニピュレータの教示座標間の移動方法を示し、PTP(point to point)制御や、直線補間制御等を選択する。移動速度42は、マニピュレータ2の移動速度を教示し、最高速度に対して指定の割合で動くかを指定する方法と、速度自体を指定する方法との2種類がある。位置座標43は、マニピュレータ2の先端が特定の座標系のどの位置に位置しているかと、どういった姿勢をとっているかを指定する。なお、位置座標43は、特定の座標系の座標位置及び姿勢を教示する他、マニピュレータ各軸角度を指定する方法もある。
【0037】
図3は、溶接条件に関する教示ステップの一例である。ステップ番号45は、教示ステップの番号を表す。溶接命令46は溶接開始や溶接終了、溶接条件変更等の、溶接電源の制御に関する命令を表す。溶接パラメータ47は、溶接命令46で命令された溶接電源の制御に用いる電流、電圧等のパラメータを設定する。
【0038】
図4は、教示プログラムの一例であり、上述の教示ステップを組み合わせたものである。操作端末4及び操作端末5から、本表示画面より、教示ステップを追加又は変更することで教示プログラムを作成する。操作端末4は、作成した教示プログラムを選択して、再生動作を実施することで、マニピュレータに一連の動作を実行させる。
【0039】
比較結果が一致していない教示ステップの表示を変更する具体的な処理を説明する。操作端末4及び操作端末5から、任意の教示プログラム番号を指定し、教示プログラムを表示する際、教示プログラム保持部33から当該教示プログラムを読み出すとともに、処理部35に当該プログラム番号の読み出しの通知を実施する。処理部35は、当該通知を受け取ったら、比較部34に、当該教示プログラムを読み出し、比較するように通知する。比較部34は、当該教示プログラム内の各教示ステップの比較結果を処理部35に返し、処理部35は、比較結果が一致しない教示ステップ番号を操作端末4及び操作端末5に通知する。操作端末4及び操作端末5は、先ほど読み出した教示プログラムの当該ステップの表示を、例えば
図5のステップ番号3のように、オーバーレイ表示するなどして、他の比較結果が一致している教示ステップの表示と変更する。なお、表示の方法はオーバーレイ表示の他に、太字や色文字にしたり、他の比較結果が一致している教示ステップの表示と識別可能な表示であればよい。
【0040】
これにより、作業者は、教示プログラムを再生する前に、別の操作端末で変更された教示ステップを認識できるようになり、再生前に動作確認をするなどして衝突を防ぐことができる。なお、表示の変更は位置座標及び動作速度を教示した教示ステップだけでなく、溶接条件に関する教示ステップについても表示を変更しても良い。この場合、遠隔地の操作端末から溶接条件の電流、電圧等を高出力に変更された際に、知らずに現地の作業者が、変更前の出力に対応した被溶接物を溶接し、溶け落ち等の溶接不良の発生を事前に防止できる。
【0041】
また、処理部35は、動作速度を変更した教示ステップについて、動作が完了した場合、動作速度を予め教示された動作速度に戻しても良い。具体的な処理としては、実行部36から教示ステップの動作完了の通知を受け取った場合、当該教示ステップの第2保持部32の操作端末の識別情報を、第1保持部31の操作端末の識別情報と同じにする。これにより、一度実行された教示ステップの第1保持部31と第2保持部32の操作端末の識別情報は一致するようになるため、以降動作させた際に、当初教示された動作速度で動作させることができる。本処理により、作業者が一度動作確認を完了させた教示ステップについては、改めて動作速度を変更しなおすことなく、自動で動作速度を当初速度に戻すことができ、作業者の操作負担を軽減することができる。
【0042】
ここで、処理部35における処理の流れの一例を、
図6、
図7、
図8を用いて説明する。まず、
図6について説明する。
図6は、教示ステップ実行時に動作速度を低下させる処理の流れを示す図であり、本処理は、例えば、操作端末4から教示プログラム又は教示ステップを再生する際に実施される。
【0043】
(ステップS1)処理部35は動作を開始すると、比較部34に対して、教示ステップを読み出すように通知する。通知を受けた比較部34は、当該教示プログラムの当該教示ステップを教示プログラム保持部33から読み出し、当該教示ステップに関連付けられた第1保持部31及び第2保持部32を比較し、読み出した当該教示ステップの内容と、比較結果を処理部35に通知する。
【0044】
(ステップS2)比較部34から教示ステップの内容と比較結果の通知を受け取った処理部35は、まず、読み出した教示ステップが移動に関する教示ステップ、すなわち、位置座標及び動作速度に関する情報を保持している教示ステップかどうか判断する。移動に関する教示ステップの場合、比較結果を判断する教示ステップ(ステップS3)に進む。溶接の開始、終了といった、移動に関する教示ステップ以外の教示ステップの場合は、実行部36に通知を行う処理(ステップS5)に進む。
【0045】
(ステップS3)比較部34から受け取った、比較結果が一致しているか一致していないか判断する。比較結果が一致している場合は、実行部36に通知を行う処理(ステップS5)に進む。比較結果が一致していない場合は、動作速度を低下させる処理(ステップS4)に進む。
【0046】
(ステップS4)比較結果が一致していない、移動に関する教示ステップの場合、動作速度を低下させる処理を行う。読み出した教示ステップの内容から、動作速度の情報を変更する。このとき、当該教示ステップの動作速度の情報を所定値低く変更しても良い。例えば、処理対象の教示ステップの動作速度が最高速度の90%で動作するように設定されていた場合、そこから50%に減速し、最高速度の45%の速度で動作するように変更しても良い。または、当該教示ステップの前後少なくとも一つ以上の教示ステップを読み出し比較するように比較部34に通知し、比較結果が一致している教示ステップの動作速度の中で最も遅い動作速度から、さらに所定値減速した値に変更してもよい。例えば、処理対象の前後の教示ステップの動作速度が最高速度の90%と設定されていた場合、さらにそこから50%減速し、最高速度の45%の速度で動作するように変更しても良い。
【0047】
(ステップS5)実行部36に、教示ステップの内容を通知する。移動に関する教示ステップの場合は、位置座標及び動作速度を通知し、前述の処理の中で動作速度が変更されている場合は、変更された動作速度を通知する。また、溶接の開始、又は終了等の溶接の制御に関する教示ステップの場合は、対応した溶接の開始、終了の通知を行う。
【0048】
図7は、前述の
図6の処理で低下させた動作速度を、一度実行した教示ステップについて、元に戻す処理の流れを示す図であり、本処理も、操作端末4から教示プログラム又は教示ステップを再生する際に実施される。なお、ステップS1からステップS5までは
図6の処理と同様のため、説明は省略する。
【0049】
(ステップS6)実行部36による、当該教示ステップのマニピュレータ2又は溶接電源6の制御が完了すると、実行部36は動作完了の通知を処理部35に通知する。処理部35は動作完了の通知を受信すると、動作速度を戻す処理を行う。
【0050】
(ステップS7)処理部35は動作完了の通知を実行部36から受信すると、当該教示ステップの第1保持部31の操作端末の識別情報を読み出し、第2保持部32の操作端末の識別情報に上書きする。これにより、次回以降、当該教示ステップを読み出した際に、第1保持部31と第2保持部32の操作端末の識別情報が一致するため、動作速度を低下させる処理は実施されなくなる。
【0051】
図8は、操作端末4で作成した教示プログラム内の教示ステップの一つを、操作端末5で変更した際に、操作端末4で当該教示ステップの表示を変更する場合の処理の流れを示す図である。本処理は、操作端末4で当該教示プログラムを開いた際に実施される。
【0052】
(ステップS11)処理部35は、操作端末4及び操作端末5から教示プログラム番号の読み出しの通知を受け取ったら、比較部34に対して、指定された教示プログラムの所定の教示ステップを教示プログラム保持部33から一つ読み出し、比較するように通知する。なお、処理開始時は、先頭の教示ステップを読み出すよう通知する。
【0053】
(ステップS12)比較部34から通知された比較結果を判断する。比較結果が一致した場合、当該教示ステップが教示プログラムの最終教示ステップかどうかを判断する処理(ステップS14)に進む。比較結果が一致しない場合、教示ステップの表示を変更する処理(ステップS13)に進む。
【0054】
(ステップS13)比較結果が一致しない場合、当該教示ステップの表示を変更する。なお、変更する表示は、教示ステップをオーバーレイ表示、または太文字や色文字にする等、表示方法は問わない。
【0055】
(ステップS14)当該教示ステップが、当該教示プログラムの最終教示ステップかどうかを判断する。最終教示ステップの場合、処理を終了する、最終教示ステップでない場合、次の読み出す教示ステップを次の教示ステップに移す。なお、読み出した教示ステップには、何番目の教示ステップか、最初または最後の教示ステップかどうかの情報が付与されているものとする。
【0056】
(ステップS15)読み出す教示ステップを次の教示ステップに移す。その後、その教示ステップを読み出す処理(ステップS11)に戻る。
【0057】
以上より、本発明によるロボット制御装置によれば、教示ステップが遠隔地の操作端末より修正された場合に、現地の操作端末を扱う作業者が、その教示ステップを意図せず動作させることを抑制するロボット制御装置及びロボット制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボットシステム
2 マニピュレータ
3 ロボット制御装置
4 操作端末
5 操作端末
6 溶接電源
7 溶接トーチ
31 第1保持部
32 第2保持部
33 教示プログラム保持部
34 比較部
35 処理部
36 実行部
40 ステップ番号
41 教示命令
42 移動速度
43 位置座標
45 ステップ番号
46 溶接命令
47 溶接パラメータ