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特開2022-94981多孔質炭素繊維部材、電極、及び、多孔質炭素繊維部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094981
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】多孔質炭素繊維部材、電極、及び、多孔質炭素繊維部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/15 20170101AFI20220621BHJP
   D01F 9/18 20060101ALI20220621BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220621BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C01B32/15
D01F9/18
H01M4/13
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208027
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】サボ ラスロ
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 泉
【テーマコード(参考)】
4G146
4L037
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB05
4G146AB06
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC08A
4G146AC08B
4G146AC09A
4G146AC10A
4G146AC16B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146BA12
4G146BA15
4G146BB05
4G146BC03
4G146BC33A
4G146BC33B
4L037CS03
4L037FA01
4L037PA44
4L037PC05
4L037PF08
4L037UA04
5H050AA14
5H050BA17
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気化学用途等に適用可能な新たな多孔質炭素繊維部材の提供
【解決手段】多孔質炭素繊維部材であって、BET表面積が500m-1以上であって、BJH法による空孔の体積が0.20cm-1以上であって、MP法による2nm未満の空孔の体積が0.20cm-1以上であって、エネルギー分散型X線回折法による、窒素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の含有質量比が0.05以上である、多孔質炭素繊維部材。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素繊維部材であって、
BET表面積が500m-1以上であって、
BJH法による空孔の体積が0.20cm-1以上であって、
MP法による2nm未満の空孔の体積が0.20cm-1以上であって、
エネルギー分散型X線回折法による、窒素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の含有質量比が0.05以上である、多孔質炭素繊維部材。
【請求項2】
前記BJH法により得られる空孔の体積に対する、MP法により得られる空孔の体積の体積比が、0.5~1.3である、請求項1に記載の多孔質炭素繊維部材。
【請求項3】
バインダーを含有しない、請求項1又は2に記載の多孔質炭素繊維部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の多孔質炭素繊維部材を含む電極。
【請求項5】
多孔質炭素繊維部材の製造方法であって、
キトサンとポリエチレンオキサイドとを含む組成物を調製することと、
前記組成物を用いて繊維を得ることと、
不活性ガス雰囲気で、600℃を超える温度で、前記繊維を炭化し、多孔質炭素繊維部材を得ることと、を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
【請求項6】
前記繊維を大気中で加熱する工程を有さない、請求項5に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
【請求項7】
前記繊維を得ることが、前記組成物を電界紡糸することである、請求項5又は6に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
【請求項8】
前記組成物中におけるポリエチレンオキサイドの含有量に対する、キトサンの含有量の含有質量比が、10以下である、請求項5~7のいずれか1項に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
【請求項9】
前記含有質量比が、4以下である、請求項8に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池用である、請求項4に記載の電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素繊維部材、電極、及び、多孔質炭素繊維部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブを含む炭素繊維膜は、電池、及び、キャパシタ等の電極への応用が期待されている。
このような炭素繊維膜として、特許文献1には、「カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の炭素材料とのみからなる炭素繊維膜であって、30~500μmの範囲の繊維長のカーボンナノチューブを全量の3質量%以上100質量%未満の範囲の量で含むことを特徴とする炭素繊維膜。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/072370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電気化学用途の炭素繊維膜においては、優れた導電性を有することに加えて、電解質とイオン供給とが良好になる観点で、繊維間の体積が大きく、表面に存在する小さな孔によって大きな比表面積を有することが求められている。
【0005】
また、電極部材としては、バインダーを使用せずに自立できることが求められ、一方で、ウェアラブルデバイス用としては、薄膜化によって柔軟な織布を形成できることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記用途に適用可能な新たな多孔質炭素繊維部材を提供することを課題とする。また、本発明は、電極、及び、上記多孔質炭素繊維部材の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 多孔質炭素繊維部材であって、BET表面積が500m-1以上であって、BJH法による空孔の体積が0.2cm-1以上であって、MP法による2nm未満の空孔の体積が0.2cm-1以上であって、エネルギー分散型X線回折法による、窒素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の含有質量比が0.05以上である、多孔質炭素繊維部材。
[2] 上記BJH法により得られる空孔の体積に対する、MP法により得られる空孔の体積の体積比が、0.5~1.3である、[1]に記載の多孔質炭素繊維部材。
[3] バインダーを含有しない、[1]又は[2]に記載の多孔質炭素繊維部材。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の多孔質炭素繊維部材を含む電極。
[5] 多孔質炭素繊維部材の製造方法であって、キトサンとポリエチレンオキサイドとを含む組成物を調製することと、上記組成物を用いて繊維を得ることと、不活性ガス雰囲気で、600℃を超える温度で、上記繊維を炭化し、多孔質炭素繊維部材を得ることと、を含む[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
[6] 上記繊維を大気中で加熱する工程を有さない、[5]に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
[7] 上記繊維を得ることが、上記組成物を電界紡糸することである、[5]又は[6]に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
[8] 上記組成物中におけるポリエチレンオキサイドの含有量に対する、キトサンの含有量の含有質量比が、10以下である、[5]~[7]のいずれかに記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
[9] 上記含有質量比が、4以下である、[8]に記載の多孔質炭素繊維部材の製造方法。
[10]
リチウムイオン電池用である、[4]に記載の電極。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記用途に適用可能な新たな多孔質炭素繊維部材が提供できる。また、本発明によれば、電極、及び、上記多孔質炭素繊維部材の製造方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例1の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図2】例1の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図3】例2の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図4】例2の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図5】例3の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図6】例3の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。
図7】電界紡糸用組成物のゼロせん断粘度である。
図8】電界紡糸用組成物の電気伝導度である。
図9】不活性ガス雰囲気で実施した熱重量分析の結果である。
図10】例1の電界紡糸用組成物を用いて形成した不織布、PEO(ポリエチレンオキサイド)、及び、キトサンのDSC(示差走査熱量計)分析結果である。
図11】窒素ガス雰囲気下で行われたワンステップ炭化工程後の多孔質炭素繊維部材のFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)画像である。
図12】窒素ガス雰囲気下で行われたワンステップ炭化工程後の多孔質炭素繊維部材のFE-SEM画像である。
図13】多孔質炭素繊維部材の窒素吸脱着等温線である。
図14】BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法によるメソポア/マクロポアの孔径分布である。
図15】MP(MicroPore analysis method)法によるミクロポアの孔径分布である。
図16】多孔質炭素繊維部材のラマンスペクトルである。
図17】多孔質炭素繊維部材のEDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[多孔質炭素繊維部材]
本発明の実施形態に係る多孔質炭素繊維部材は、多孔質の炭素繊維の1つ又は複数を含む部材であって、典型的には、多孔質の炭素繊維の単繊維、又は、複数の炭素繊維の複合体(より糸状、不織布状、及び、織布状等であってよい)である。
本発明の実施形態に係る多孔質炭素繊維部材(以下、「本部材」ともいう。)中における炭素繊維の含有量は特に制限されず、用途に応じて適宜選択されればよい。例えば、電極用としては、部材がより優れた電気伝導度を有する観点で、炭素繊維のみからなることが好ましい。この場合、多孔質炭素繊維部材はバインダーを含まないことが好ましい。
【0013】
本部材のBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積は500m-1以上であり、550m-1以上がより好ましい。上限としては特に制限されないが、一般に1000m-1が好ましい。BET比表面積が上記数値範囲内であると、本部材はより優れた電気特性を有する。
なお、本明細書におけるBET比表面積は、実施例に記載された方法により測定、及び、計算されるBET比表面積を意味する。
【0014】
本部材のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法による空孔の体積は、0.20m-1以上であり、0.25m-1以上がより好ましく、上限は特に制限されないが、1.00m-1以下が好ましく、0.50m-1以下がより好ましい。
なお、本明細書におけるBJH法による空孔の体積は、実施例に記載された方法により測定、及び、計算されるものとし、値は、四捨五入して小数第2位まで求めるものとする。
【0015】
BJH法により得られる空孔の体積は、主にメソ孔(本明細書においては、空孔径が2~50nmのもの)、及び、一部マクロ孔(本明細書においては、空孔径が50nm超のもの)の存在を反映したものである。
【0016】
本部材のMP法(MicroPore analysis method、Mikhail-Brunauer-Bodor理論)による2nm未満の空孔の体積は、0.20m-1以上であり、0.21m-1以上が好ましく、上限は特に制限されないが、1.00m-1以下が好ましく、0.50m-1以下がより好ましい。
なお、本明細書におけるMP法による空孔の体積は、実施例に記載された方法により測定、及び、計算されるものとし、値は、四捨五入して小数第2位まで求めるものとする。
【0017】
MP法により得られる空孔の体積は、主にミクロ孔(本明細書においては、空孔径が2nm未満のもの)の存在を反映したものである。
【0018】
本部材がより優れた電気特性を効果を有する点では、ミクロ孔、メソ孔・マクロ孔がそれぞれ含まれる「階層的」な細孔構造を有していることが好ましい。その観点からは、BJH法により得られる空孔の体積に対する、MP法により得られる空孔の体積の体積比(MP/BJH)は、0.5~1.3が好ましく、0.6~1.2がより好ましく、0.7~1.1が更に好ましい。
【0019】
本部材には炭素繊維を構成する炭素原子が含まれており、更に酸素原子、及び、窒素原子を含む。本部材における各原子の含有量は、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)により求められる質量基準の含有量を意味する。
【0020】
本部材中における炭素原子の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られやすい点で、75.0質量%以上が好ましく、80.0質量%以上がより好ましく、95.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましい。
【0021】
また、本部材中における酸素原子の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られやすい点で、4.0質量%以上が好ましく、8.0質量%以上がより好ましく、12.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましい。
【0022】
また、本部材中における窒素原子の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果が得られやすい点では、2.0質量%以上が好ましく。4.0質量%以上がより好ましく、8.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましい。
【0023】
本部材中における窒素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の含有質量比(N/NCO)は、0.05以上であり、上限は特に制限されないが、0.10以下が好ましい。
【0024】
本部材は、BJH法で求められる空孔の体積(すなわち、メソ孔・マクロ孔の体積)、及び、MP法で求められる空孔の体積(すなわち、ミクロ孔の体積)がそれぞれ所定量以上であり、典型的には、その比率(MP/BJH)が0.5~1.3であり、より小さな孔径の細孔から、より大きな孔径の細孔までを有しており、いわば、階層的な細孔構造を有している。
更に、N/NCOが0.50以上であり、Nドープカーボンファイバーとしての特徴も有する。また、BET比表面積が500m-1であって、比表面積も大きい。
上記の特徴を有する本部材は、電気化学用途に優れた性能を発揮できる。
【0025】
(多孔質炭素繊維部材の製造方法)
本部材は、キトサンと、ポリエチレンオキサイドとを混合した組成物を準備することと、準備した組成物を紡糸することと、紡糸した組成物を、不活性ガス雰囲気で、600℃を超える温度で炭化することとを含む製造方法により製造することができる。以下では、各工程について詳述する。
【0026】
(1)組成物準備工程
組成物準備工程は、後述する紡糸工程で用いるための組成物を準備する工程である。組成物を準備する方法としては特に制限されないが、キトサン、ポリエチレンオキサイド(Poly(ethylene oxide))、及び、必要に応じて溶媒とを公知の方法により混合すればよい。
【0027】
・キトサン
キトサンは、後述する実施例に記載されたとおり、炭化工程を経て、多孔質炭素繊維部材の骨格を提供する。また、ポリエチレンオキサイドとの間では、非相溶系を形成するため、炭化工程においてポリエチレンオキサイドがいわゆる「犠牲ポリマー」として機能することにより、多孔体となる。
【0028】
組成物中におけるキトサンの含有量としては特に制限されないが、より均一な多孔質炭素繊維部材が得られやすい観点では、組成物の全固形分を100質量%としたとき、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。下限としては特に制限されないが、10質量%以上が好ましく、30質量%以上が更に好ましい。
【0029】
後述する紡糸方法として電界紡糸法を採用する場合、電界紡糸により得られる不織布がより均一となりやすい観点から、組成物中におけるポリエチレンオキサイドの含有量に対するキトサンの含有量の含有質量比(キトサン/PEO)が、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。下限は特に制限されないが、1以上が好ましい。
【0030】
使用するキトサンの分子量としては特に制限されないが、粘度平均分子量で、5,000~200,000が好ましく、10,000~150,000がより好ましく、30,000~10,0000が更に好ましい。
キトサンの粘度平均分子量が上記数値範囲内であると、紡糸した際の組織がより均一となりやすく、結果としてより優れた均一性を有する多孔質炭素繊維部材が得られやすい。
【0031】
キトサンは、市販品を用いることができ、その由来も特に制限されないが、カニ、及び、エビ等の甲殻類の外骨格から得られるキチンを脱アセチル化したものであってよい。
【0032】
キトサンの脱アセチル化度は特に制限されないが、特に、紡糸方法として電界紡糸法を採用する場合、アミノ基の含有量は、電界紡糸用組成物のイオン伝導度に影響を及ぼすため、より均一な不織布が得られやすい観点では、脱アセチル化度は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0033】
・ポリエチレンオキサイド
ポリエチレンオキサイドは、後述する実施例に記載されたとおり、炭化工程を経て、ほとんどが分解される。また、キトサンとの間で、非相溶系を形成するため、熱分解して失われることで、キトサンの炭化物を主体とする炭素繊維に多数の孔を形成する作用を有する。
【0034】
更に、ポリエチレンオキサイドは融点が低く、融解しやすいため、炭化工程において、不織布を形成する繊維同士を融着させやすい性質を有している。そのため、結果的に得られる多孔質炭素繊維部材において、繊維同士が接触した状態が作られやすく、これにより優れた電気伝導度が得られる。
【0035】
組成物中におけるポリエチレンオキサイドの含有量としては特に制限されないが、より均一な多孔質炭素繊維部材が得られやすい観点から、組成物の全固形分を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0036】
ポリエチレンオキサイドは市販品を使用でき、その重量平均分子量としては特に制限されないが、より均一な不織布が得られやすい観点では、500,000以上が好ましく、700,000以上がより好ましく、800,000以上が更に好ましく、2,000,000以下が好ましく、1,500,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましい。
【0037】
・溶媒
溶媒としては、キトサン、及び、ポリエチレンオキサイドを溶解又は分散し得るものであれば特に制限されず、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン、キシレン、アセトン、クロロホルム、エチルベンゼン、シクロヘキサン、ベンゼン、スルホラン、メタノール、エタノール、フェノール、ピリジン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、トリクロロエタン、ヘキサフルオロイソプロパノール、及び、ジエチルエーテル等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混合溶媒として用いてもよい。
【0038】
溶媒の含有量としては、特に制限されないが、組成物中に0~99質量%含まれることが好ましく、10~90質量%含まれることがより好ましい。
【0039】
・その他の成分
組成物は、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、界面活性剤、分散剤、電荷調整剤、機能性粒子、接着剤、粘度調整剤、及び、繊維形成剤等が挙げられ、いずれも公知の化合物を用いることができる。
その他の成分としては、例えば、酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0040】
(2)紡糸工程
紡糸工程は、組成物準備工程で得られた組成物を用いて繊維を形成する工程である。繊維を形成する方法としては特に制限されず、電界紡糸法、溶融紡糸法、溶融電界紡糸法、スパンボンド法(メルトブロー法)、及び、湿式法等の公知の方法を使用できる。このうち、より小さな繊維径の繊維が形成しやすく、得られる部材の表面積が大きくなりやすい観点では、電界紡糸法が好ましい。
【0041】
電界紡糸を行う際の印加電圧は、特に制限されないが、一般に、1~100kVが好ましく、5~50kVがより好ましい。
【0042】
本工程で得られる繊維の繊維径としては特に制限されず、10~200nmが好ましい。なお、繊維径の調整方法は当業者にとって公知であるが、例えば、電界紡糸法であれば、湿度を下げる、ノズル径を小さくする、印加電圧を大きくする、又は、電圧密度を大きくすることにより繊維径を小さくできる。
【0043】
本工程で得られる繊維は、単繊維、より糸、織布、及び、不織布のいずれであってもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。紡糸方法として電界紡糸法を使用する場合、容易に形成できる観点では、不織布が好ましい。
【0044】
(3)炭化工程
炭化工程は、紡糸工程で得られた繊維を、不活性ガス雰囲気で、600℃を超える温度で炭化し、多孔質炭素繊維部材を得る工程である。
【0045】
本発明の多孔質炭素繊維部材の製造方法の特徴点の一つとして、ポリアクリロニトリル(PAN)等のプリカーサを用いて炭素繊維を得る場合に実施される耐炎化工程を有しない点がある。
【0046】
耐炎化工程とは、酸化性ガス(一般には空気中)において、~350℃程度の温度で保持することで、その後の高温(1000~2000℃)での処理でも融解しないように変性する処理である。
すなわち、PAN等のプリカーサを用いる場合、空気雰囲気で耐炎化工程を実施し、そのうえで、不活性ガス雰囲気での炭化工程を実施する。
【0047】
一方、本発明の多孔質炭素繊維部材は、プリカーサとしてキトサンを用いているため、後述する実施例に示すとおり、耐炎化工程を必要としない。従って、紡糸工程で得られた繊維を、そのまま、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)で、炭化することができる。
【0048】
炭化の温度は、最高温度が600℃を超えればよく、700℃以上が好ましく、上限は特に制限されないが、1500℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましい。
最高温度での保持時間は、繊維の形状等によって適宜調整されればよいが、例えば、1分~24時間が好ましく、5~180分がより好ましく、10~60分が更に好ましい。
【0049】
実施例に示されるとおり、ポリエチレンオキサイドは本工程において分解され、キトサンにより得られる骨格構造に、多数の孔を生成する。
本発明の多孔質炭素繊維部材の製造方法は、非相溶系であるキトサン-ポリエチレンオキサイドを用いることで、得られる炭素繊維が多孔質となり、かつ、耐炎化工程を含まない点で、従来の炭素繊維(部材)の製造方法とは大きく異なっている。
【0050】
このようにして得られる本発明の多孔質炭素繊維部材は典型的には電界紡糸法により得られた不織布を炭化したシート状の部材であって、バッテリー(又は電池)、コンデンサ、電極、太陽電池、触媒、吸収材、フィルター、膜、センサー、布(又は生地)、及び、組織再生マトリックス等として使用できる。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(使用した試薬等)
・キトサン:シグマアルドリッチ製、カタログ番号448869、文献上の粘度平均分子量と脱アセチル化度はそれぞれ約76kDa、約79%である。北大西洋のアイスランド産のエビの殻に由来するものである。
・ポリエチレンオキサイド:Scientific polymer products製、カタログ番号343、メーカーの提供する情報として、重量平均分子量(Mw)は900kDaである。
・酢酸:ナカライテスク製、カタログ番号00212-85、純度99.7%以上
・超純水:超純水(タイプ1; 25℃で18.2MΩcmの水抵抗率)は、「Simplicity(登録商標)浄水システム(Merck KGaA製)によって提供された。
【0053】
(電界紡糸工程)
キトサンの2質量%酢酸溶液と、PEOの3質量%酢酸溶液を準備した。
これらをPEOに対するキトサンの質量比(キトサン/PEO)が、3/1(例1)、6/1(例2)、及び、9/1(例3)になるよう混合して、電界紡糸用組成物を調製した。
混合物は2時間攪拌して、その後、気泡除去のために2時間静置し、24時間以内に電界紡糸に供した。
【0054】
電界紡糸は、NANONエレクトロスピニングシステム(製品番号H21S00832、MECC製)で、コレクターニードルの距離15cm、22Gの針、13kVの印加電圧、0.09mL/hサンプル供給速度で実施した。2mL分のサンプルをAl箔に付着させてフィルム状(不織布)にし、得られたフィルムを剥がした後、真空デシケーターで一晩乾燥させた。
【0055】
(炭化プロセス)
エレクトロスピニングされたナノ不織布は、デジタルプログラムコントローラー(DZ3000シリーズデジタルコントローラー、チノー製)を備えた管状炉(商品名「ARF-50KC」、朝日理科製)内で、連続的に窒素を流しながら(100mL/min)で炭化させた。
温度プログラムは以下のとおりである。
・室温~105℃:30分
・105℃:30分
・105℃~800℃:120分
・800℃:30分
・100mL/分の流量で窒素を流しながら、4~5時間で室温まで冷却
【0056】
(分析方法)
・電界紡糸用組成物の特性
振動レオメトリーは、PP50アクセサリ(プレート直径50mm)を備えたAnton Paar MCR302レオメーター(Antor Paar製)を使用し、1mmのギャップを適用して行った。粘弾性領域を決定するために、ひずみ掃引(0.1-100%)が最初に行われた。動的周波数掃引試験は、一定の5%ひずみ振幅で0.1~100 rads-1の角周波数で実行された。
電界紡糸用組成物の導電率は、Mettler Toledo SevenExcellence pH / Conductivity Meter S470(Mettler Toledo製)を使用して測定した。
【0057】
・モルフォロジー
「JSM-7001F」(JEOL製)電界放出走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を使用して分析された。必要に応じて、JFC-1600 Auto Fine Coater(JEOL製)を使用して、アルゴン雰囲気下でプラチナ層をサンプルにコーティングした。画像はImageJソフトウェアを使用して分析され、直径分布プロファイルは50本の繊維から求めた。
【0058】
・構造特性(ラマンおよびEDS分光法)
ラマンスペクトルは、Ar-Kr 514.5nm緑色レーザー(Horiba製)を備えたHoriba Jobin YvonT64000マイクロラマン分光計システムで記録された。
15秒の露光時間を適用して24スペクトルの平均を取得した。ローレンツ関数とOriginソフトウェア(OriginLab製)を使用して、ピークフィッティングを実行した。ピーク強度比(I/I、ピーク高さ)は、ベースライン補正されたスペクトルから計算された。
【0059】
エネルギー分散型X線分光法(EDS)は、「BrukerXFlash(登録商標)5060FQ(Bruker製)」EDS検出器を備えたHitachi SU-8000電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(Hitachi製)を使用して行った。5kVの電圧を印加し、EDSスペクトルを約1μm×500nmの寸法の範囲で記録した。
【0060】
・熱分析
熱重量分析(TGA)は、TG/DTA6200 サーマルアナライザー(日立製作所製)を使用して実行され。サンプルは、10℃/分の加熱速度を使用して、N(窒素)雰囲気下で900℃に加熱された。
【0061】
示差走査熱量測定(DSC)は、DSC7000X装置(日立製作所製)で実施された。測定は、2回の冷却-加熱サイクル(サンプルの熱履歴を消去するため)を使用してN雰囲気下で行われた。最初に、サンプルを50℃/min-1の冷却速度で-150℃まで冷却し、15分保持した。次に、10℃min-1の昇温速度で200℃まで昇温し、5分保持した。その後、サンプルを50℃/min-1の冷却速度で-150℃まで再び冷却され、15分保持した。次に、10℃min-1の昇温速度で250℃まで昇温し、2回目の加熱サイクルを分析に用いた。
【0062】
・細孔特性
細孔特性は、自動比表面積/細孔分布測定装置(「Belsorp-Mini II」、マイクロトラックベル製)を使用して測定した。測定の前に、サンプルを減圧下120℃で一晩保持した。窒素吸脱着等温線は88Kで記録さた。BET理論を適用して、0.03~0.05の相対圧力範囲でBETプロットの線形領域から比表面積(as,BET)を計算した。
【0063】
ミクロポアサイズ分布とミクロポア体積は、MP法を使用してtプロットから決定された。
メソポアサイズ分布とメソポア体積は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法により計算された。
【0064】
(結果)
図1、及び、図2は、例1の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。図1、及び、図2から、繊維径は、平均80nmであり、繊維径の分布は60~120nmであることがわかった。
【0065】
図3、及び、図4、並びに、図5、及び、図6はそれぞれ、例2、及び、例3の電界紡糸用組成物を用いて作製した不織布の走査型電子顕微鏡像である。上記から、例2、及び、例3の電界紡糸用組成物を用いた場合でも不織布は得られることがわかった。
【0066】
一方で、例1の電界紡糸用組成物を用いて調製した不織布は、例2、及び、例3の電界紡糸用組成物を用いて調製した不織布(図3、及び、図5)と比較して、”ビーズ”の発生がより抑制され、繊維径がより均一になりやすいことがわかった。
【0067】
これは、電界紡糸用組成物中のキトサンの含有量が増加したことに起因し、組成物の粘度が低下し、かつ、電気伝導度が増加したからだと推測される。
キトサンのアミノ基は、酢酸水溶液中でプロトン化されており、カチオン性高分子電解質として機能する。
図7は各電界紡糸用組成物のゼロせん断粘度であり、図8は各電界紡糸用組成物の電気伝導度である。
図7及び図8の記載から、例1の電界紡糸用組成物(「CS/PEO3/1」と記載されている。)は、例2(「CS/PEO6/1」と記載されている)及び例3(「CS/PEO9/1」と記載されている)の電界紡糸用組成物よりもゼロせん断粘度が高く、かつ、電気伝導度が低いことがわかる。これが不織布の繊維径の均一性の違いの原因の一つと推測される。
なお、図7及び図8中、「2wt% chitosan」とあるのは、キトサンの2質量%酢酸溶液であり、「3wt% PEO」とあるのは、PEOの3質量%酢酸溶液である。
【0068】
図9は、不活性ガス雰囲気で実施した熱重量分析の結果である。図9から、PEOは、約330℃で熱分解し始め、600℃までに完全に熱分解し、炭素の収率は無視できるほどに小さかった。
また、キトサンは、水分子が除去された後、約230℃からは、分子鎖の切断、官能基の分解、及び、ピラノースの開環等が起こり、最終的に800℃で約30質量%の炭素質残留物が生成された。なお、キトサンは、400℃超で多芳香族構造を形成する
一方、例1の電界紡糸用組成物を用いて形成された不織布(「CS/PEO 3 to 1」と記載されている。)は、PEO、及び、キトサンのそれぞれのポリマーでみられる遷移を反映しており、800℃で約20質量%の残留物があることがわかった。
【0069】
図10は、例1の電界紡糸用組成物(「Chitosan/PEO 3/1」と記載されている。)を用いて形成した不織布、PEO、及び、キトサンのDSC分析結果である。PEOはガラス転移温度が約-54℃で、63℃を中心として融解ピークがみられた。一方、キトサンについては、ガラス転移温度が約165℃で融解は起こらなかった。
不織布(「Chitosan/PEO 3/1」)は、そのそれぞれのポリマーに由来するガラス転移温度を示した。PEOに由来するガラス転移温度は-53℃であるものの、キトサンに由来するガラス転移温度は約131℃で、やや低かった。これは、キトサン-PEOが弱い相互作用を有する実質的に非相溶のシステムであることを示している。
【0070】
実際、溶解度パラメータを計算すると、Flory-Hugginsの相互作用パラメータは27.9であり、典型的な非相溶システムである。
ここまでに示したとおり、PEOの炭素収率が低く、かつ、キトサンと非相溶なシステムを形成するため、この不織布を炭化させることにより多孔質材料が得られたものと推測される。
【0071】
図11、12は、窒素ガス雰囲気下で行われたワンステップ炭化工程後の多孔質炭素繊維部材のFE-SEM画像である。図11、12から、熱処理により、平均繊維径が約40nmで、繊維径の分布が20~70nmの微細なナノファイバーネットワークが形成されたことがわかった。
【0072】
このナノファイバーネットワークの表面と断面には、多孔質炭素繊維部材を示す溝と隆起のある粗い構造が観察された。また、もとの「繊維」の形状を残しつつ、一部の繊維間で融合が起きた、特徴的な形態であることがわかった。これは、PEOの融点の低さに起因して、炭化工程中に繊維の融合が起こったためと推測される。
このような形態を有する多孔質炭素繊維部材は、より高い電荷移動効率を有しており、この部材が、例えば、電気化学装置の電極等として利用可能であることを示している。
【0073】
図13は、多孔質炭素繊維部材の窒素吸脱着等温線であり、図14は、BJH法によるメソポア/マクロポアの孔径分布、図15はMP法によるミクロポアの孔径分布である。
【0074】
図13の窒素吸脱着等温線のうち、相対圧力の低い領域では、典型的なタイプ1型であることがわかる。一方、相対圧力の高い領域(p/p>0.8)では、タイプ4型のヒステリシスループが観察された。
上記の結果から、計算されるBET比表面積は、564m-1だった。
【0075】
図14、及び、図15の細孔径分布曲線は、マクロ、メソ、及び、ミクロ細孔の存在を示している。したがって、本多孔質炭素繊維部材は、階層的な細孔構造を有することがわかる。メソ/マクロポア(BJH)、及び、ミクロポア(MP)の体積は、それぞれ0.28cm-1、及び、0.22cm-1であった。これらの総細孔体積への寄与はほぼ等しかった。なお、ピーク直径は、ミクロポアでは0.8nm、マクロポアでは147nmたった。
【0076】
図16は、多孔質炭素繊維部材のラマンスペクトルである。この結果からは、グラフェンに由来するGバンドのピーク(1590cm-1)と、欠陥に由来するDバンドのピーク(1352cm-1)が観察された。更に、小さなピーク(D)が観察された。これはカーボンナノファイバーの構造中に残留している酸素原子、及び/又は、窒素原子によるイオン性不純物/不均一相に起因するものと推測される。
【0077】
欠陥密度の尺度としてのI/I強度比は1.04±0.025と計算され、低い炭素化温度(800)にもかかわらず比較的高いグラファイト含有量を示唆しており、これは、セルロースベースの炭素繊維と同等であった。
【0078】
図17は、多孔質炭素繊維部材のEDS分析結果である。その結果、組成は、質量%で、炭素の83.8%、酸素の9.22%、窒素の5.47%、その他の無機不純物の1%未満であった。Nは予想通りグラファイト構造に保持されており、この材料は自己Nドープ多孔質カーボンナノファイバーとみなすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の多孔質炭素繊維部材は、典型的には、持続可能な素材であるキトサンに基づいているという事実に加えて、一般のポリアクリロニトリルに由来する炭素繊維材料の製造に必要な、空気雰囲気下での初期安定化プロセスを必要としない点で、優れた環境適応性を有している。
【0080】
本発明の多孔質炭素材料は、簡単なワンステップ熱処理により製造される、多孔性の高いカーボンナノファイバーであり、階層的な多孔性、高表面積、相互接続構造を備えるため、電気化学的用途で優れた特性をもたらすことが期待される。本発明の多孔質炭素材料は、エネルギー貯蔵デバイス等に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17