(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094993
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】視線誘導標
(51)【国際特許分類】
E01F 9/615 20160101AFI20220621BHJP
E01F 9/608 20160101ALI20220621BHJP
E01F 15/06 20060101ALI20220621BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20220621BHJP
【FI】
E01F9/615
E01F9/608
E01F15/06 A
H04W4/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208056
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】511151352
【氏名又は名称】REXARD JAPAN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100073483
【弁理士】
【氏名又は名称】八鍬 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100164286
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 正大
【テーマコード(参考)】
2D064
2D101
5K067
【Fターム(参考)】
2D064AA12
2D064AA22
2D064AA24
2D064CA02
2D064CA03
2D064CA04
2D064DA05
2D064DA06
2D064DA09
2D064DA17
2D064EA03
2D064EB22
2D064HA11
2D101GA22
5K067BB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熟練した技術などを必要とせず、作業時間を低減させ、容易に取り付け可能な視線誘導標を提供する。
【解決手段】視線誘導標1は、道路に設けられる設備に巻き付いて取り付けられる視線誘導標であって、設備に巻き付いた状態で最表層となり、その表面に、透明UVカットフィルム101で覆われて密閉状態となった反射フィルム110が設けられている第1層と、第1層の、反射フィルムが設けられている面の反対面と密接した層であり、湾曲面が形成されている長尺の板部材であり、当該板部材の板面が変形することで、延伸した形態と巻き付いた形態との二つの形態に変化する板バネを収納した第2層と、一方の面が第2層と密接し、他方の面が設備の表面と接する層であり、当該設備の表面と接する面がゴム素材となっている第3層と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設けられる設備に巻き付いて取り付けられる視線誘導標であって、
前記設備に巻き付いた状態で最表層となり、その表面に、透明UVカットフィルムで覆われて密閉状態となった反射フィルムが設けられている第1層と、
前記第1層の、前記反射フィルムが設けられている面の反対面と密接した層であり、
湾曲面が形成されている長尺の板部材であり、当該板部材の板面が変形することで、延伸した形態と巻き付いた形態との二つの形態に変化する板バネを収納した第2層と、
一方の面が前記第2層と密接し、他方の面が前記設備の表面と接する層であり、当該設備の表面と接する面がゴム素材となっている第3層と、
を有する視線誘導標。
【請求項2】
前記第1層に設けられる前記反射フィルムは、前記視線誘導標の巻き付く方向において一方に寄って設けられており、
前記第1層の、前記反射フィルムの設けられていない残余の領域の表面には、面ファスナーの一方側の面が設けられ、
前記第3層の前記ゴム素材の面には、前記視線誘導標が前記設備に巻き付いた際に面ファスナーの前記一方側の面と係合する相手側の面が設けられている
ことを特徴とする、請求項1に記載の視線誘導標。
【請求項3】
前記面ファスナーの前記一方側の面または前記相手側の面のいずれか一方または両方は、前記視線誘導標の巻き付く方向に長尺となっていることを特徴とする、請求項2に記載の視線誘導標。
【請求項4】
前記設備は、道路に沿って延設されているワイヤーガードレールであり、前記視線誘導標は、ワイヤーガードレールの支柱に巻き付いて取り付けられることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の視線誘導標。
【請求項5】
さらに、無線通信によって情報をやり取りする回路を収納することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の視線誘導標。
【請求項6】
前記回路は、前記板バネと配線接続されることを特徴とする、請求項5に記載の視線誘導標。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードレールや道路標識などの道路に設けられた設備に、視線誘導標を取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
反射板などの視線誘導標を、ガードレールや道路標識などの道路に設けられた設備(以下、「道路設備」と称する)に取り付けることは、夜間走行する車両との接触防止の観点で有効な手段となっている。特に電灯の無い道路では、電灯を新規に設けるよりも安価となるため、視線誘導標を後付けで道路設備に取り付けることがある。
【0003】
取り付け可能な視線誘導標として、粘着面を有する反射フィルムを道路設備に巻き付けて貼着するものが知られている(例えば特許文献1)。また、トラ縞模様が施されたバンドや光反射するバンドを道路設備などに巻き付けて、留め具で固定するものが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-62715号公報
【特許文献2】実用新案登録第3203813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、反射フィルムを貼り付けることで視線誘導標を設ける場合、正しい位置に正確に水平および垂直となるように貼着するには、相応の熟練した技術が必要となり、加えて慎重を期すため相応の作業時間を要する。特に作業時間については、1つや2つの反射フィルムを貼着する小規模作業の場合では、さほど問題にならないが、例えば高速道路に沿って設けられているガードレールの支柱全てに反射フィルムを貼着する場合、膨大な時間や労力が必要になる。
【0006】
また、貼着の際に内部に気泡が混入してしまうと、当該反射フィルムを剥がして貼り直す必要があり、さらに作業時間や手間が発生する上、フィルムの破棄が発生する場合は資源の無駄となる。
【0007】
加えて、経時劣化した反射フィルムを新しいものに貼り替える場合において、反射フィルムを剥がすときに粘着剤が道路設備側に残ってしまうと、これを除去してから新しい反射フィルムを貼ることとなり、更なる手間が発生する。
【0008】
対して特許文献2には、留め具などを用いることで、粘着力では無く締め付け力により、バンド状の視線誘導標を取り付ける技術が開示されている。特許文献2には留め具の具体例について開示されていないが、留め具で留める作業は少なからず時間を要するため、取り付け対象となる道路設備の数に比例して、作業時間も累積的に加算される。また、たるみの生じないようにバンドを押さえつつ留め具を用いて留める作業は、相応の技術が必要となるか、もしくは一人が押さえつつ他の人が留め具を操作するなど、複数人での作業が必要となる。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決するためのものであり、熟練した技術などを必要とせず、作業時間を低減させ、容易に取り付け可能な視線誘導標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る視線誘導標は、道路に設けられる設備に巻き付いて取り付けられる視線誘導標であって、設備に巻き付いた状態で最表層となり、その表面に、透明UVカットフィルムで覆われて密閉状態となった反射フィルムが設けられている第1層と、第1層の、反射フィルムが設けられている面の反対面と密接した層であり、湾曲面が形成されている長尺の板部材であり、当該板部材の板面が変形することで、延伸した形態と巻き付いた形態との二つの形態に変化する板バネを収納した第2層と、一方の面が第2層と密接し、他方の面が設備の表面と接する層であり、当該設備の表面と接する面がゴム素材となっている第3層と、を有する。
上記の視線誘導標において、第1層に設けられる反射フィルムは、視線誘導標の巻き付く方向において一方に寄って設けられており、第1層の、反射フィルムの設けられていない残余の領域の表面には、面ファスナーの一方側の面が設けられ、第3層のゴム素材の面には、視線誘導標が設備に巻き付いた際に面ファスナーの一方側の面と係合する相手側の面が設けられていることを特徴とする。
上記の視線誘導標において、面ファスナーの一方側の面または相手側の面のいずれか一方または両方は、視線誘導標の巻き付く方向に長尺となっていることを特徴とする。
上記の設備は、道路に沿って延設されているワイヤーガードレールであり、視線誘導標は、ワイヤーガードレールの支柱に巻き付いて取り付けられることを特徴とする。
さらに、上記の視線誘導標は、無線通信によって情報をやり取りする回路を収納することを特徴とし、当該回路は、板バネと配線接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熟練した技術などを必要とせず、作業時間を低減させ、容易に取り付け可能な視線誘導標を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は第1実施形態に係る視線誘導標の斜視図であり、(B)は視線誘導標を支柱などの道路設備に取り付けた場合の斜視図である。
【
図2】(A)は第1実施形態に係る視線誘導標の断面図であり、(B)は視線誘導標を各層で分解した図である。
【
図3】第1実施形態に係る視線誘導標の第1層~第3層の各層をそれぞれ例示する平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る板バネを例示する図であると共に、その動作を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係る視線誘導標の取り付け動作例を説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係る視線誘導標をワイヤーガードレールに取り付ける前と取り付けた後とを例示する図である。
【
図7】第1実施形態に係る視線誘導標(大型サイズ)の各層をそれぞれ例示する平面図である。
【
図8】第2実施形態に係る視線誘導標の第2層を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の視線誘導標について、図面を参照しながら説明する。まずは、第1実施形態で視線誘導標の詳細構成について説明する。そして第2実施形態で、この視線誘導標を自動運転車の自立走行を支援する基幹システムの構築に活用するための態様例を説明する。
【0014】
また、各図面内に示されるX軸は、視線誘導標の一辺の方向(ここでは「長尺方向」や「巻き付き方向」とする)を示している。そしてY軸は視線誘導標の他方の辺の方向(ここでは「幅方向」とする)を示している。また、Z軸は視線誘導標の厚さ方向を示している。これらX軸、Y軸、Z軸の方向は、各図面で共通とする。また各図面において、同一の部材が連続して複数描かれている場合などは、一部の符号の記載を省略している。
【0015】
加えて、本実施形態の視線誘導標の大きさをイメージしやすくするため、必要に応じて各図面上に寸法を例示しているが、あくまで一例であり、態様はこれに限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
図1(A)は本実施形態に係る視線誘導標1の斜視図であり、
図1(B)は支柱600に視線誘導標1を取り付けた状態を示す図である。また
図2(A)は
図1(A)に図示するA-A’断面であり、
図2(B)は、
図2(A)に示す各層(第1層、第2層、第3層)ごとに、視線誘導標1を分解した場合の図である。尚、
図2(B)は説明の都合上、Z軸方向を増幅させて厚みが増すように示している。
【0017】
また
図3は、視線誘導標1を構成する第1層、第2層、第3層をそれぞれ示した平面図である。ここで
図3(A)は、支柱600に巻き付いて取り付けられた状態で最表層となる第1層を示す図である。
図3(B)は、第1層と第3層とに挟まれた中間層である第2層を示す図である。そして
図3(C)は、支柱600の側面と当接する最下層である第3層を示す図である。尚、
図3(A)、
図3(B)は、視線誘導標1を
図1(A)の姿勢にした場合の上方から下方を視認したときの平面図であり、
図3(C)は、下方から上方を視認したときの平面図である。
【0018】
視線誘導標1は、道路設備に後付けで取り付けることができるように構成されている。視線誘導標1は、第1~第3層の四方の外周縁400をウェルダー加工により溶接し、これら各層を一体とした構成となっている。以下、各層についてそれぞれ説明する。
【0019】
第1層の本体部100の素材は、不透明の軟質性塩化ビニルであり、その表面に、透明UVカットフィルム101で覆われて密閉状態となった反射フィルム110が設けられている。
【0020】
また第1層の本体部100の表面において、反射フィルム110の無い残余の面領域には、面ファスナーの一方側の面(オス側またはメス側のいずれか)が2つ並列に設けられている。本実施形態では、面ファスナーのオス側であるフック面130が設けられているものとする。
【0021】
ここで、反射フィルム110の本体部100への取り付け方法について説明する。まずは、第1層の本体部100の一部分を透明UVカットフィルム101で覆う。本実施形態では、
図1(A)において手前側から奥行方向320mm付近までを透明UVカットフィルム101で覆うものとする。そして、透明UVカットフィルム101の外周縁400に沿った三辺を、ウェルダー加工により本体部100に溶接する。これにより、端部400Aを開口部としたポケットが形成される。
【0022】
このポケットの中に、PETフィルム120(
図2(B)参照)でラミネート加工した反射フィルム110を挿入し、その後端部400Aをウェルダー加工により溶接することで、密閉状態にする。
【0023】
引き続き第2層について説明する。第2層は、第1層の、反射フィルム110が設けられている面の反対面と密接する中間層である。第2層は、不透明の軟質性塩化ビニルの本体部200に、端部220Aで開口しているポケット220を2つ設けた構成となっている。このポケット220のそれぞれに板バネ210を挿入し、その後に端部220Aを溶接することで、当該板バネ210を第2層の内部に収納して密閉状態にする。尚、板バネ210については、後に
図4を用いて詳説する。
【0024】
第3層は、一方の面が第2層と密接し、他方の面が支柱600などの道路設備の面と当接する層であり、ゴム素材で形成されている。尚、本実施形態では、本体部300の全体をゴム素材として形成しているが、少なくとも支柱600などの道路設備の面と当接する面がゴム素材で形成されていればよい。
【0025】
また第3層において、支柱600などの道路設備と当接する側の面には、ループ面310が設けられている。ループ面310は、第1層の本体部100に設けられるフック面130の相手側の面であり、フック面130と同様に、2つ並列に設けられている。
【0026】
第1層のフック面130と第3層のループ面310とは、いずれもX軸方向の巻き付き方向が長尺となるように設けられており、視線誘導標1が支柱600などの道路設備に取り付けられる際に、相互で係合することが可能となる位置に設けられている。尚、フック面130とループ面310とを逆転させ、第1層にループ面を設け、第3層にフック面を設けてもよい。
【0027】
次に板バネ210について
図4を参照しつつ説明する。板バネ210は、巻き癖の付いた金属製の長尺板部材を引き延ばし、そして巻き付き状態に戻ろうとする復元力(必要に応じて「巻き付き力」と称する)に抗うために面を湾曲させた、コンベックス形状の板部材である。このように板面を湾曲面とすることで、板バネ210は、
図4(A)に示すような延伸状態で静止し、この状態を維持することができる。
【0028】
この延伸状態のときに、板面の一部を湾曲面から平たい平面に変形させると、抗う力が薄れて当該抗う力と巻き付き力との均衡が崩れ、板バネ210は瞬時に巻き付き状態になる。例えば、
図4(A)の破線枠内に示すように、端部P2に対して指で押さえるなどの外力を加えることで、湾曲面が平たい平面となる。この操作により、
図4(B)に示す太線矢印の方向に端部P2が移動を開始して、巻き付いていく。そして板バネ210は、
図4(C)に示す状態を経由して、最終的には
図4(D)の巻き付き完了状態となる。尚、
図4(B)から
図4(D)には瞬時に遷移する。
【0029】
また、
図4(D)の巻き付き完了状態のときに、今度は手などで外力を加えて板バネ210を引き延ばしていき(
図4(C))、引き延ばしきった状態で(
図4(B))、端部P1およびP2を指で押さえるなどして板面を平面から湾曲面に変形する。この両端部の操作が中央部に向けて伝播していき、最終的には板面の全面が平面から湾曲面に変形し、延伸状態が維持されるようになる(
図4(A)の状態が維持される)。
【0030】
このように、板バネ210は、湾曲面が形成されている長尺の板部材であり、当該板部材の板面が変形することで、延伸した形態と巻き付いた形態との二つの形態に変化する。このような板バネ210を2つ用意し、第2層のポケット220に入れて密閉する。尚、ポケット220に入れる際には、板面が第3層側に凸となるように入れる(
図2参照)。
【0031】
このような構成を有することで、視線誘導標1の長尺方向の端部(板バネ210の端部P1またはP2)を操作して、板バネ210の一部分の面を、湾曲面から平面に変形させる。これにより視線誘導標1は、
図1(A)に示す延伸状態から、
図1(A)に示す太線矢印の方向に巻き付いていく。そして最終的には、
図1(B)に示すように、道路設備である支柱600に巻き付いて取り付けられる。
【0032】
ここで、視線誘導標1を道路設備(支柱600)に取り付ける方法を、
図5を用いて説明する。尚、
図5の各図面は、支柱600を上方から視認した場合の図(
図1(B)の姿勢で上方から下方を視認した場合の図)である。
【0033】
まずは、
図5(A)~(C)を用いて第1の取り付け方法について説明する。
(S1-1)作業員は、第3層の面を支柱600の側面に当接させる。この際、ループ面310の設けられていない逆側の端部付近を支柱600に当接させる(
図5(A))。
(S1-2)作業員は、支柱600を軸にして視線誘導標1を折り曲げて、端部を支柱600に寄せる(
図5(A)の矢印参照)。この作業員による初動操作(作用)により、支柱600と当接している付近の板バネ210の面は、支柱600からの反作用により押さえつけられ、湾曲形状から平面形状に変化する。
(S1-3)板バネ210の面形状が変化することで、視線誘導標1は、自らの巻き付き力により支柱600に巻き付くようになる(
図5(B)の太線矢印)。
(S1-4)支柱600に視線誘導標1が巻き付いた後は、作業員は、第1層のフック面130と第3層のループ面310との位置を、必要に応じて調整しながら面ファスナーで係止する(
図5(C))。
【0034】
次に、
図5(D)~(F)を用いて第2の取り付け方法について説明する。上記の第1の取り付け方法では、板バネ210の端部側を変形させて支柱600に巻き付けるようにしているが、これ以外にも、視線誘導標1の例えば中央付近を折り曲げるようにしても、同じことが可能となる。
(S2-1)作業員は、第3層の中央部付近の面を支柱600に当接させる(
図5(D))。
(S2-2)作業員は、支柱600を軸にして視線誘導標1を折り曲げる(
図5(D)の矢印参照)。この作業員による初動操作(作用)により、支柱600と当接している付近の板バネ210の面は、支柱600からの反作用により押さえつけられ、湾曲形状から平面形状に変化する。
(S2-3)板バネ210の面形状が変化することで、視線誘導標1は、自らの巻き付き力により支柱600に巻き付くようになる(
図5(E)の太線矢印)。
(S2-4)支柱600に視線誘導標1が巻き付いた後は、作業員は、第1層のフック面130と第3層のループ面310との位置を、必要に応じて調整しながら面ファスナーで係止する(
図5(F))。
【0035】
ここでは、2つの取り付け方法について例示したが、いずれの方法も動作原理は同じである。すなわち、作業員の動作としては、支柱600に視線誘導標1の第3層の面を当接させ、支柱600を軸にして、支柱600に寄せるように視線誘導標1を折り曲げる。あとは、視線誘導標1が自らで支柱600に巻き付くようになる。この一連の作業は、作業員一人で行うことができ、通常は数秒程度で完了する。
【0036】
視線誘導標1が自らで支柱600に巻き付いた後、視線誘導標1の両端部で位置ズレが生じていることも想定されるため、作業員は、フック面130とループ面310との係合位置を、手動にて調整する。この調整作業自体も、一人で行うことができ、通常は数秒程度で完了する。
【0037】
支柱600から視線誘導標1を取り外す作業は、上記と逆の手順となる。すなわち、面ファスナーによる係止を解除し、視線誘導標1を直線となるように延伸させる。最後に、板バネ210の板面が平面形状から湾曲形状となるように、板バネ210の両端部(実際には視線誘導標1の両端の付近)を指などで操作する。この両端部の操作が中央部に向けて伝播していき、最終的には板面の全面が平面形状から湾曲形状に変化する。これにより視線誘導標1は、
図1(B)の状態から
図1(A)の状態になる。
【0038】
尚、支柱600の断面径が視線誘導標1の巻き付き径よりも短い場合(支柱600の断面が小さい場合)、視線誘導標1の第3層と支柱600の側面との間で隙間が生じ、密着できない。この場合は、面ファスナーのフック面130とループ面310との係合位置を調整して視線誘導標1の巻き付き径を小さくすることで、隙間なく密着させることができる。
【0039】
一方、支柱600の断面径が視線誘導標1の巻き付き径よりも長い場合(支柱600の断面が大きい場合)、視線誘導標1の第3層と支柱600の側面とは隙間なく密着する。よって、面ファスナーを用いなくても、視線誘導標1が支柱600から落下するようなことはない。すなわち視線誘導標1は、面ファスナーを留め具として用いることなく、支柱600に取り付けることができる。
【0040】
フック面130とループ面310とは、いずれも巻き付き方向(X軸方向)で長尺となっていることから、支柱600の断面サイズが想定とは異なっていても、この想定との差異を吸収して正しく密着するように巻き付かせることができる。尚、ここでは面ファスナーのフック面130とループ面310の両方とも、視線誘導標1の巻き付き方向に長尺となっているとしたが、いずれか一方のみを巻き付き方向に長尺となるように配置してもよい。
【0041】
図6(A)は、道路設備の一例として、高速道路などに設けられているワイヤーガードレールを示しており、
図6(B)は本実施形態の視線誘導標を取り付けた後の状態例を示している。ワイヤーガードレール50は、道路に沿って延設されており、ワイヤー510同士の上下方向の間隔は、規格上約9cm程度に設計されている。視線誘導標1は、このワイヤー510同士の間に収まる寸法となっており(
図1(A)に示すようにY軸方向の幅寸法=90mm)、ワイヤー510に妨げられることなく支柱500に取り付けることができる。
【0042】
また、夜間走行時の車両のライトは、通常ハイビームではなく下方を向いたロービームとなっていることが多い。よって、下側に反射材を設けた方が、運転手に早期に存在を気付かせることができる。よって、支柱500の下側部分にも、視線誘導標を設けた方が好ましい。地表面から一番下側のワイヤー510Aまでの間隔は、約50cm程度と設計されていることから、例えば
図7に示すような視線誘導標1Aを製造してもよい。
【0043】
図7に示す視線誘導標1Aは、Y軸方向の幅寸法を500mmとし、X軸方向の巻き付き方向はこれまでに説明した視線誘導標1と同様に440mmとしている。そして視線誘導標1Aは、幅広とした分、第1層の面ファスナーのフック面130、および第3層のループ面310の数をそれぞれ11個としている(
図7(A)、
図7(C)参照)。また、板バネ210の数も11本挿入可能となるように、11個のポケット220を設けている(
図7(B)参照)。
【0044】
尚、ここではワイヤーガードレール50の下側の支柱500については、
図7に示す大きいサイズの視線誘導標1Aを設けるものとしているが、視線誘導標1を1つ若しくは上下方向に複数並べて取り付けてもよい。
【0045】
以上、本実施形態により、熟練した技術などを必要とせず、作業時間を低減させ、容易に取り付け可能となる視線誘導標を提供することができる。これに加えて、上記で説明した各特徴により、以下に示す優位性を備えることができる。
【0046】
第1層の本体部100の素材を、本実施形態では一般的に広く用いられている軟質性塩化ビニルとしているが、この軟質性塩化ビニルの耐候性は1~2年程度と短く、太陽に曝されて紫外線を浴び続けると、短期間で劣化して割れてしまう。
【0047】
これに対し、本実施形態では反射フィルム110を透明UVカットフィルム101で覆う構成とした。この構成により、道路設備に取り付けた状態での最表面には、透明UVカットフィルム101が位置することになる。すなわち、道路設備に巻き付いた状態で、透明UVカットフィルム101を露出させ、透明UVカットフィルム101で覆われた反射フィルム110および軟質性塩化ビニルを直接露出させないようにすることで、製品寿命を延ばすことができる。
【0048】
反射フィルム110をPETフィルム120でラミネート加工する構成とした。これにより、反射フィルム110の劣化を抑えて耐候性を向上させることができる。またPETフィルム120でラミネート加工することで、下層(第2層)の板バネ210の湾曲面の形状による凹凸を目立たなくフラットにすることができ、すっきりとした外観となり意匠性を高めることができる。
【0049】
反射フィルム110を透明UVカットフィルム101で覆って密閉することで、反射フィルム110(およびこれをラミネート加工したPETフィルム120)が直接外気に曝されることが無くなる。よって、耐候性を向上させることができる。
【0050】
道路設備と接する第3層の表面をゴム素材としたことで、道路設備に取り付けた後、視線誘導標1Aがズレ落ちないようになる。
【0051】
本実施形態では、高速道路に設けられる道路設備の一つである、ワイヤーガードレールの支柱を取り付け対象とし、これに適したサイズのものを例示した。また、各高速道路で用いられるワイヤーガードレールであれば、高速道路ごとの規格サイズの差が多少あっても、面ファスナーなどで調整することで、おおよそ全てのものに取り付けることができる。
【0052】
本実施形態では、視線誘導標1、1Aの全面に反射フィルム110を設けるのではなく、視線誘導標1、1Aの巻き付く方向において一方向に寄せるようにし、残余部分となる領域ができるようにした。これにより、反射フィルム110およびこれを覆う透明UVカットフィルム101の部材の量を抑えることができる。また残余部分の領域にはファスナーを設けた。
【0053】
尚、視線誘導標1が取り外されて持ち出されないように、防犯の観点で、面ファスナーに替えて、もしくは面ファスナーとともに、接着剤で接合しても構わない。
【0054】
<第2実施形態>
周囲の環境を認識しながら自律的に走行する自動運転車の開発が進んでいる。このような自動運転車の自立走行を支援する基幹システムの一つに、道路上または道路周辺の各所に、RFID(Radio frequency identifier)などに代表されるタグ(回路)を配置しておき、車両自らの位置を検知したり、動作を制御したりするシステムが提案されている。
【0055】
現在または将来に向けて、このような基幹システムを構築するためには、RFタグなどの無線通信によって情報をやり取りする回路を、道路上または道路周辺の各所に設置することが急務となっているが、どのようにこれを設置するのかが課題となっている。
【0056】
第2実施形態では、第1実施形態で説明した視線誘導標1を用いて、この課題を解決するための一態様を説明する。
【0057】
第2実施形態に係る視線誘導標の第2層について、
図8を用いて説明する。
図8(A)は、第2実施形態における第2層の平面図であり、
図8(B)は各ユニットを第2層に収納した状態を示す平面図である。また
図8(C)は、
図8(B)のB-B’断面図、
図8(D)は
図8(B)のC-C’断面図である。尚、第1層および第3層は、上記の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また
図8の各図面において、第1実施形態で説明した部位に対しては同じ符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0058】
第2実施形態の視線誘導標2では、RFタグ240を収納するためのポケット230を、第2層内に設けている。ポケット230の端部230Aは開口しており、RFタグ240をこの開口部から挿入して、RFタグ240を収納する。収納後は、端部230Aを溶接してRFタグ240を密封するのが好ましい。
【0059】
視線誘導標2は、延伸状態と巻き付き状態との二つの形態に変化し、加えて屋外に常時曝される。よって、曲げに強く、且つ高い耐候性を有するフレキシブルタグを、RFタグ240として採用するのが好ましい。
【0060】
またRFタグ240は、配線250により板バネ210と電気的に配線接続されている。このようにすることで、板バネ210をアンテナの替わりとして用い、電波の受信感度を向上させることができる。尚、視線誘導標2が延伸状態と巻き付き状態との二つの形態に変化することから、板バネ210とRFタグ240との遠近距離が変化して配線250が断線してしまうことも想定される。よって本実施形態では、この遠近距離の変化を吸収できるように、例えばスプリング状の配線などを配線250として採用する。
【0061】
RFタグ240を収納するポケット230は、RFタグ240と板バネ210とが干渉しない位置に設けられていればよい。本実施形態では、板バネ210と干渉しないように、Z軸方向(厚さ方向)にズラした位置にポケット230を設けている。
【0062】
このように第2実施形態の視線誘導標2は、無線通信によって情報をやり取りする回路(本実施形態ではRFタグ240)を収納することを可能にした。そして、当該回路を事前に視線誘導標2の中に組み込んでおき、視線誘導標の設置工事として視線誘導標2を道路設備に取り付けることで、上記の基幹システムの構築もあわせて行うことができる。
【0063】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替及び改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、2:視線誘導標
50:ワイヤーガードレール
100:本体部
101:透明UVカットフィルム
110:反射フィルム
120:PETフィルム
130:フック面
200:本体部
210:板バネ
220:ポケット
220A:端部
230:ポケット
230A:端部
240:RFタグ
250:配線
300:本体部
310:ループ面
400:外周縁
400A:端部
500:支柱
510、510A:ワイヤー
600:支柱
P1、P2:端部