(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095021
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】枠体の製造方法及び枠体
(51)【国際特許分類】
E06B 3/96 20060101AFI20220621BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
E06B3/96 B
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208098
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】宇山 健
【テーマコード(参考)】
2E035
4F211
【Fターム(参考)】
2E035AA05
2E035BA01
2E035CA03
2E035CB06
2E035DA07
2E035DB08
2E035DC04
4F211AH48
4F211TA01
4F211TH03
4F211TH19
(57)【要約】
【課題】バリの発生を抑制することができる枠体の製造方法及び枠体を提供する。
【解決手段】枠体の製造方法は、本体部40と、内装材に固定されるアングル49と、を有する枠部材12,13を用いて枠体を製造する枠体の製造方法であって、枠部材12,13どうしを溶着する際に、本体部40どうしを溶着し、アングル49どうしを溶着せず、枠部材12,13どうし溶着する前に、枠部材12,13からアングル49を溶着代分切断する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、内装材に固定されるアングルと、を有する枠部材を用いて枠体を製造する枠体の製造方法であって、
前記枠部材どうしを溶着する際に、前記本体部どうしを溶着し、前記アングルどうしを溶着しない枠体の製造方法。
【請求項2】
前記枠部材どうし溶着する前に、前記枠部材から前記アングルを溶着代分切断する請求項1に記載の枠体の製造方法。
【請求項3】
前記枠部材の基材に表面層を設けた後に、前記枠部材どうしを溶着する請求項1または2に記載の枠体の製造方法。
【請求項4】
本体部と、内装材に固定されるアングルと、を有する枠部材と、
前記枠部材どうしを接合する接合部と、を備え、
前記接合部は、
前記本体部どうしが溶着された溶着部と、
前記アングルどうしが溶着されていない非溶着部と、を有する枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、枠体の製造方法及び枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、引違いサッシ等の建具の枠体の角部では、縦枠及び横枠が溶着代を含む長さにそれぞれ斜め45度に切断され、縦枠の端部と横枠の端部とが溶着されている(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦枠と横枠との溶着部分では、表面から盛り上がるようにバリが発生してしまい外観が悪くなることがある。バリを除去するには時間を要し施工手間となるという問題点がある。枠体が基材にラッピング等の表層材が貼着された構成の場合、バリを取り除くと基材が露出する。基材の色と表層材の色とが異なる場合には、露出した部分を表層材と同じ色に塗装する必要があるという問題点もある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バリの発生を抑制することができる枠体の製造方法及び枠体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る枠体の製造方法は、本体部と、内装材に固定されるアングルと、を有する枠部材を用いて枠体を製造する枠体の製造方法であって、前記枠部材どうしを溶着する際に、前記本体部どうしを溶着し、前記アングルどうしを溶着しない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】建具の下枠及び縦枠の溶着前を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係る建具の一例として引違い窓について、図面に基づいて説明する。
図1から
図3に示すように、引違い窓100は、建築物の外壁の外壁開口部Waに設けられている。引違い窓100は、枠体1と、外障子2Aと、内障子2Bと、を備えている。
【0009】
以下の説明において、屋外側と屋内側とを結ぶ方向を屋内外方向と称する。屋内外方向と直交する見付け方向のうち、水平方向に沿う方向を幅方向と称し、鉛直方向を上下方向と称する。
【0010】
図1に示すように、枠体1は、四方枠状に形成されている。枠体1は、上枠(枠部材)11と、下枠(枠部材)12と、一対の縦枠(枠部材)13と、を有している。本実施形態では、枠体1は樹脂製である。
【0011】
上枠11及び下枠12は、幅方向に延びている。縦枠13は、上下方向に延びている。
縦枠13は、上枠11の幅方向の端部11aと下枠12の端部12aとを連結している。
【0012】
外障子2Aは、内障子2Bよりも屋外側に配置されている。外障子2A及び内障子2Bは、枠体1に幅方向にスライド可能に設けられている。外障子2A及び内障子2Bが閉じた状態で、外障子2A及び内障子2Bは枠体1内を閉塞する。
【0013】
外障子2Aと内障子2Bとは、同様の構成をしている。外障子2A及び内障子2Bを総称して、障子2と称することがある。障子2は、框体20と、ガラス29と、を有している。框体20は、四方枠状に形成されている。框体20は、上框21と、下框22と、一対の縦框23と、を有している。本実施形態では、框体20は樹脂製であるが、アルミ合金等の金属形材から構成されたものやアルミ樹脂複合であってもよい。上框21及び下框22は、幅方向に延びている。縦框23は、上下方向に延びている。各縦框23は、上框21の幅方向の端部と下框22の幅方向の端部とを連結している。ガラス29は、框体20内に納められている。
【0014】
枠体1の構成について詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、上枠11、下枠12及び縦枠13は、同じ断面形状で形成されている。
図1に示すように、上枠11の幅方向の端部11aの端面及び縦枠13の上端部13aの端面は、それぞれ軸方向(長さ方向)に対して45°に切断されている。上枠11の端部11aと縦枠13の上端部13aとは、突き合わせられて接合されている。下枠12の幅方向の端部12aの端面及び縦枠13の下端部13bの端面は、それぞれ軸方向(長さ方向)に対して45°に切断されている。下枠12の端部12aと縦枠13の下端部13bとは、突き合わせられて接合されている。
【0015】
上枠11、下枠12及び縦枠13は略同一断面形状であるため、下枠12を例に挙げて説明する。
【0016】
図4に示すように、下枠12は、本体部40と、第二固定フィン48と、アングル49と、を有している。本体部40は、外板部41と、内板部42と、屋内側壁部43と、内レール部44と、外レール部45と、屋外側壁部46と、第一固定フィン47と、を有している。
【0017】
外板部41は、外壁Wの外壁開口部Waの下縁部に沿って配置されている。外板部41は、板状に形成されている。外板部41の板面は、上下方向を向いている。
【0018】
内板部42は、外板部41の上方に間隔を有して配置されている。内板部42は、板状に形成されている。内板部42の板面は、上下方向を向いている。
【0019】
屋内側壁部43は、第一板部431と、第二板部432と、連結板部433と、を有している。
【0020】
第一板部431は、外板部41の屋内側の端部から上方に延びている。第一板部431は、板状に形成されている。第一板部431の板面は、屋内外方向を向いている。第二板部432は、第一板部431よりも屋外側に配置されている。第二板部432は、内板部42の屋内側の端部近傍から上方に延びている。第二板部432は、板状に形成されている。第二板部432の板面は、屋内外方向を向いている。連結板部433は、第一板部431の上端部と第二板部432の上端部とを連結している。
【0021】
内レール部44は、屋内側壁部43よりも屋外側に配置されている。内レール部44は、第一内板部441と、第二内板部442と、内レール支持壁部443,444と、中間内板部445と、を有している。
【0022】
第一内板部441は、外板部41から上方に延びている。第一内板部441は、板状に形成されている。第一内板部441の板面は、屋内外方向を向いている。第二内板部442は、第一内板部441よりも屋外側に配置されている。第二内板部442は、内板部42から上方に延びている。第二内板部442は、板状に形成されている。第二内板部442の板面は、屋内外方向を向いている。
【0023】
内レール支持壁部443は、第一内板部441の上端部から屋外側に延びている。内レール支持壁部444は、第二内板部442の上端部から屋内側に延びている。内レール支持壁部443の先端部と内レール支持壁部444の先端部との間には隙間が形成されている。内レール支持壁部443の先端部と内レール支持壁部444の先端部との間の隙間には、内レール本体447が嵌合されている。内障子2B(
図1参照)に設けた戸車(不図示)は、内レール本体447上を走行可能である。
【0024】
中間内板部445は、第一内板部441の上下方向の中間と第二内板部442の上下方向に中間とを連結している。中間内板部445は、内板部42よりも上方に配置されている。
【0025】
外レール部45は、内レール部44よりも屋外側に配置されている。外レール部45は、第一外板部451と、第二外板部452と、外レール支持壁部453,454と、中間外板部455と、を有している。
【0026】
第一外板部451は、外板部41から上方に延びている。第一外板部451は、板状に形成されている。第一外板部451の板面は、屋内外方向を向いている。第二外板部452は、第一外板部451よりも屋外側に配置されている。第二外板部452は、外板部41から上方に延びている。第二外板部452は、板状に形成されている。第二外板部452の板面は、屋内外方向を向いている。
【0027】
外レール支持壁部453は、第一外板部451の上端部から屋外側に延びている。外レール支持壁部454は、第二外板部452の上端部から屋内側に延びている。外レール支持壁部453の先端部と外レール支持壁部454の先端部との間には隙間が形成されている。外レール支持壁部453の先端部と外レール支持壁部454の先端部との間の隙間には、外レール本体457が嵌合されている。外障子2A(
図1参照)に設けた戸車(不図示)は、外レール本体457上を走行可能である。
【0028】
中間外板部455は、第一外板部451の上下方向の中間と第二外板部452の上下方向に中間とを連結している。中間外板部455は、内板部42よりも上方に配置されている。
【0029】
屋外側壁部46は、外板部41の屋外側の端部から上方に延びている。屋外側壁部46は、板状に形成されている。屋外側壁部46の板面は、屋内外方向を向いている。網戸(不図示)は、屋外側壁部46上を走行可能である。
【0030】
第一固定フィン47は、外板部41の屋内外方向の中間から下方に延びている。第一固定フィン47は、外壁Wにおける屋外側を向く面Wbに沿って配置されている。第一固定フィン47は、外壁Wに支持されている。
【0031】
第二固定フィン48は、外板部41と第一板部431との角部から屋内側に延びている。第二固定フィン48は外壁Wの外壁開口部Waの下縁部Wcに沿って配置されている。
【0032】
アングル49は、第一板部431の上下方向の中間から屋内側に延びている。アングル49は、板状に形成されている。アングル49の板面は、上下方向を向いている。アングル49の先端部には、下方に延びる突起49aが設けられている。
【0033】
アングル49の下側には、額縁(内装材)15が配置される。アングル49の突起49aは、額縁15の上面15uに当接している。アングル49の下側に配置される内装材は、額縁15の他にも、床材、クロス、石膏ボード等であってもよい。
【0034】
下枠12の樹脂製の基材50における外側に露出する表面は、化粧シート(表面層)51が貼着され被覆されている。
【0035】
図5に示すように、下枠12は、縦枠13と接合される前の状態では、アングル49の長さ方向(幅方向)の端部49bは、下枠12の溶着前端部12cよりも幅方向の内側にセットバックして配置されている。アングル49の端部49bは、下枠12の溶着前端部12cよりも後述する溶着する際の溶着代となる長さL1分セットバックしている。長さL1は、2.5mm程度である。
【0036】
第二固定フィン48の端部48bは、下枠12の溶着前端部12cよりも幅方向の内側に、アングル49の端部49bよりも大きくセットバックして配置されている。
【0037】
上枠11は、下枠12を上下逆にして配置されている。縦枠13は、下枠12が上下方向に延びる向きであって、内レール部44及び外レール部45が外壁開口部Waの幅方向の内側を向く向きに配置されている。
【0038】
上枠11及び縦枠13の構成は、内レール本体447及び外レール本体457が設けられていない以外は、下枠12と同一の構成である。上枠11及び縦枠13における内レール部44では、第一内板部441の先端部と第二内板部442の先端部とは、連結内板部449(
図2及び
図3参照)で連結されている。上枠11及び縦枠13における外レール部45では、第一外板部451の先端部と第二外板部452の先端部とは、連結外板部459(
図2及び
図3参照)で連結されている。
【0039】
図6に示すように、下枠12の端部12aと縦枠13の下端部13bとの接合部6は、非溶着部61と、溶着部62と、を有している。
【0040】
下枠12のアングル49の端部49bと縦枠13のアングル49の端部49bとが溶着されていないことによって、非溶着部61が形成されている。下枠12のアングル49の端部49bと縦枠13のアングル49の端部49bとは、当接またはわずかに隙間を有して配置されている。
【0041】
図5に示す下枠12の溶着前端部12cのうちアングル49の端部49b及び第二固定フィン48の端部48b以外の箇所(本体部40)と、縦枠13の溶着前下端部13cのうちアングル49の端部49b及び第二固定フィン48の端部48b以外の箇所(本体部40)とは、溶着される際に溶着代が溶ける。
図6に示すように、下枠12の端部12aうちアングル49の端部49b及び第二固定フィン48の端部48b以外の箇所と、縦枠13の下端部13bのうちうちアングル49の端部49b及び第二固定フィン48の端部48b以外の箇所とが溶着されることによって、溶着部62が形成されている(
図6で溶着部62は非溶着部61よりも太く示している)。
【0042】
枠体1の製造方法について説明する。上枠11、下枠12及び縦枠13のそれぞれにおいて、樹脂製の基材50の表面に化粧シート51を貼着する。
【0043】
上枠11、下枠12及び縦枠13の端部を、端面が軸方向に対して45°になるように切断する。上枠11の溶着前端部(不図示)、下枠12の溶着前端部12c、縦枠13の溶着前上端部(不図示)及び縦枠13の溶着前下端部13cから、アングル49を溶着代となる長さL1分切断する。
【0044】
上枠11の溶着前端部と縦枠13の溶着前上端部とを溶着する。下枠12の溶着前端部12cと縦枠13の溶着前下端部13cとを溶着する。この際に、アングル49の端部49bは、上枠11の溶着前端部、下枠12の溶着前端部12c、縦枠13の溶着前上端部及び縦枠13の溶着前下端部13cよりも溶着代となる長さL1分セットバックしているため、溶着されず、非溶着部61となる。枠体1の角部において、アングル49の端部49b及び第二固定フィン48の端部48b以外の箇所(本体部40)が溶着されて、溶着部62となる。
【0045】
このように構成された引違い窓100では、枠体1において、アングル49の端部49bどうしは溶着されないため、アングル49の端部49bにはバリが発生しない。これによって、枠体1の角部全体のバリの発生量を抑制することができる。
【0046】
引違い窓100では、溶着前に、上枠11の溶着前端部、下枠12の溶着前端部12c、縦枠13の溶着前上端部及び縦枠13の溶着前下端部13cから、アングル49を溶着代となる長さL1分切断する。これによって、溶着する際に、アングル49の端部49bどうしは長さ方向の内側にセットバックしているために、確実に溶着されない非溶着部61となる。
【0047】
引違い窓100では、枠体1の樹脂製の基材50の表面に化粧シート51を貼着した後に溶着するため、バリが生じてバリを取り除くと基材50が露出する。基材50の色と化粧シート51の色とが異なると、露出した部分(基材50)を化粧シート51と同じ色に塗装する必要がある。非溶着部61では、バリが発生しないため、露出した部分(基材50)を化粧シート51と同じ色に塗装するような作業が生じない。
【0048】
上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、実施形態では、建具の一例として引違い窓を例に挙げて説明しているが、これに限られない。開き窓、すべり出し窓等の他の建具であってもよい。
【0050】
実施形態では、基材50に化粧シート51が接着された構成であるが、これに限られない。化粧シート51等の表面層がなく、基材50が外側に露出した構成であってもよい。
【0051】
実施形態では、基材に表面層が設けられた構成として、基材50に化粧シート51が接着されたものを例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限られない。基材を構成する樹脂とは異なる樹脂であるアクリル樹脂を表面層として、基材の表面に設けたものであってもよい。基材がリサイクル材からなり、表面層がホワイトに塗装されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…枠体、6…接合部、11…上枠(枠部材)、12…下枠(枠部材)、13…縦枠(枠部材)、15…額縁(内装材)、49…アングル、50…基材、51…化粧シート(表面層)、61…非溶着部、62…溶着部