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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095030
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】作業安全管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20220621BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20220621BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220621BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20220621BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B25/10
G08B21/02
G01S5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208111
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591012680
【氏名又は名称】柳井電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】倉重 知行
(72)【発明者】
【氏名】永野 弘信
(72)【発明者】
【氏名】仲井 聡
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5J062
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA20
5C086DA08
5C086DA14
5C086EA45
5C086GA09
5C087AA02
5C087AA03
5C087BB20
5C087BB74
5C087BB76
5C087DD03
5C087DD20
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087FF19
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5J062AA07
5J062BB05
5J062CC07
5J062CC15
5J062DD21
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】屋内施設の構造的特性および屋内作業の作業特性に対応して、作業員の健康や安全を管理する作業安全管理システムを提供する。
【解決手段】本発明の作業安全管理システムは、作業員が屋内施設での作業をしている作業状態であることを検出する作業状態検出部と、
前記作業員の所持する携帯端末および前記屋内施設に設置された通信デバイスに基づいて、前記作業員の前記屋内施設での位置情報を受信して作業員位置を検出する位置検出部と、
前記携帯端末から送信される前記作業員の健康指標情報を受信して、前記作業員の作業員健康情報を検出する健康情報検出部と、
前記位置検出部で検出される作業員位置および前記健康情報検出部で検出される前記作業員健康情報に基づいて、前記作業員の安全状態を判断する安全状態判断部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員が屋内施設での作業をしている作業状態であることを検出する作業状態検出部と、
前記作業員の所持する携帯端末および前記屋内施設に設置された通信デバイスに基づいて、前記作業員の前記屋内施設での位置情報を受信して作業員位置を検出する位置検出部と、
前記携帯端末から送信される前記作業員の健康指標情報を受信して、前記作業員の作業員健康情報を検出する健康情報検出部と、
前記位置検出部で検出される作業員位置および前記健康情報検出部で検出される前記作業員健康情報に基づいて、前記作業員の安全状態を判断する安全状態判断部と、を備え、
前記位置検出部および健康情報検出部は、前記作業状態検出部において、前記作業員が前記作業状態である場合において動作し、
前記通信デバイスは、前記屋内施設の複数個所に設置されたビーコン端末を含み、前記位置検出部は、前記携帯端末と前記ビーコン端末との通信、および前記ビーコン端末とGPS信号との通信に基づいて、前記作業員の位置情報を検出する、作業安全管理システム。
【請求項2】
前記位置検出部および前記健康情報検出部は、前記作業状態である場合のみに動作することで、前記作業員のプライバシーを担保可能である、請求項1記載の作業安全管理システム。
【請求項3】
前記作業状態検出部は、前記屋内施設の出入り口に備わる検出装置での前記携帯端末との通信に基づいて、前記作業員が前記屋内施設での作業開始および作業終了を検出し、
前記作業開始および前記作業終了に基づいて、前記作業員が前記作業状態であるか、非作業状態であるかを検出できる、請求項1または2記載の作業安全管理システム。
【請求項4】
前記屋内施設の出入り口に、前記携帯端末の通過を検出する通信可能な前記検出装置を更に備える、請求項3記載の作業安全管理システム。
【請求項5】
前記ビーコン端末での通信信号および前記GPS信号との組み合わせ結果を受信する信号受信部を更に備え、
前記信号受信部は、前記ビーコン信号が前記携帯端末との通信で得る前記屋内施設内部での前記作業員の位置および前記ビーコン端末のGPS上での測位位置に基づくGPS信号に基づいて、前記作業員の位置を特定し、
前記位置検出部は、前記信号受信部からの作業員の位置の特定された情報を受けることで、前記作業員の位置を検出する、請求項1から4のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項6】
前記携帯端末は、前記作業員に所持されることで、前記健康指標情報を前記携帯端末から送信可能である、請求項1から5のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項7】
前記健康指標情報は、前記作業員のバイタルデータ、前記作業員の居る周辺の温度、湿度、不快指数および熱中症指数の少なくとも一つを含む、請求項1から6のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項8】
前記位置検出部での前記作業員の位置検出結果に基づいて、前記作業員の作業動線を検出する動線検出部を更に備え、
前記動線検出部は、前記作業動線を、前記安全状態判断部に出力する、請求項1から7のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項9】
前記安全状態判断部は、前記作業員の正常状態、健康的危険状態、作業異常状態、事故発生状態および消息不明状態の少なくとも一つを判断する、請求項1から8のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項10】
前記安全状態判断部の判断結果を、管理者および前記安全状態の判断対象である前記作業員の周辺にいる他の作業員(以下、「周辺作業員」)に通知する、通知部を更に備える、請求項9記載の作業安全管理システム。
【請求項11】
前記安全状態判断部は、前記作業員健康情報に基づいて、前記作業員の転倒、意識薄弱および容態急変の少なくとも一つを、前記事故発生状態として判断し、
前記通知部は、前記事故発生状態を、救助要請と併せて前記周辺作業員に通知する、請求項10記載の作業安全管理システム。
【請求項12】
前記安全状態判断部は、前記作業動線に基づいて、前記作業員の作業異常状態を判断し、
前記作業動線が、本来の動線と大きく相違する場合には、前記作業員の作業状態に問題があるとして、前記作業異常状態であるとする、請求項9記載の作業安全管理システム。
【請求項13】
前記安全状態判断部は、複数の前記作業員の前記作業員位置に基づいて、一定数以上の前記作業員が密集している状態を、密集状態として判断し、
前記通知部は、前記密集状態にある前記作業員に対して、距離間隔を取るように通知する、請求項1から12のいずれか記載の作業安全管理システム。
【請求項14】
前記安全状態判断部は、ある作業員の前記作業員位置および前記作業員健康情報を検出できない場合には、当該作業員の所持する前記携帯端末が非動作中であると判断し、
前記通知部は、当該作業員の周辺作業員に対して、当該作業員の携帯端末を起動させるよう通知する、請求項1から13のいずれか記載の作業安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内作業を含む作業に従事する作業者の安全状態を管理する作業安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場、配送センター、流通センター、建設現場、大型ショッピングモールなど、屋内作業を中心とする作業を必要とする屋内施設が、様々な場所に存在している。これらの屋内施設では、作業者は主に屋内で作業を行う。勿論、屋内のみならず屋外でも作業する。ただ、屋外と屋内との行き来はあるが、作業の中心は屋内であることが多い。
【0003】
これらの屋内施設は、それぞれの特性に応じて、作業者による屋内作業の種類や状況は変化する。
【0004】
例えば、工場では、製造ラインや製品移動経路に合わせて、作業者が屋内作業を行う。製造ラインの種類や位置、あるいは製品の種類などに応じて、作業者が集中しやすい場所や時間帯、作業者の動線などが変化する特性がある。また、工場であることで、作業時間や休憩時間などの区別がはっきりと生じやすい。一方で、作業内容の変更などによって、作業者が屋内施設での作業を開始したり終了したりする時間が様々に変化する。
【0005】
配送センターや流通センターなどの屋内施設では、作業者は様々な場所を移動することが多い。また移動の仕方も様々となり、作業者の動線は非常に複雑となりやすい。また、屋内と屋外の行き来も多くなりやすい。作業者それぞれの動線が複雑になることで、一時的にある位置や経路に作業者が集中することもあり得ある。また、作業者の移動や作業負荷が大きく、工場での作業と同じく、作業者の疲労が大きくなるようなこともありえる。
【0006】
また、配送センターや流通センターなどの屋内施設では、労働負担が大きいことで、作業者がこまめに休憩時間に入って業務時間外となることもある。また、屋外に出ることで、業務時間外となることもある。大型ショッピングモールなどでも同様である。
【0007】
建設現場や工事現場では、建設や工事の進捗に伴って、屋内施設の構造が変化する特徴がある。例えば、ビルの建設現場では、工事が進捗するにつれて、階数が高くなって行ったり、区画が区分されたりして、3次元的にその構造が変化していく。この構造変化に合わせて、作業者の作業内容、動線、移動場所、作業場所などが変化していく。加えて、ある作業場所での作業員の数も変動しやすい。
【0008】
一方で、建設現場や工事現場でも、休憩時間や中断時間などを含めて、屋内施設と屋外との出入りも多い。他の屋内施設での作業と同じく、作業者は屋内で業務として作業に従事している場合もあり、屋内で業務として作業に従事している作業者が、業務外の時間(業務開始前、業務終了後、休憩時間)で屋内施設の外にいることもある。この屋外に居る場合には、業務時間外であり、作業員のプライベートタイムである。
【0009】
屋内作業に係る状態でも、プライベートタイムもあれば屋内作業中である場合もある。
【0010】
また、上述したように、多くの作業員が、屋内施設での様々な作業に関わっており、作業内容、動線、作業場所、人の粗密度合い、作業状況などの種々の変化や変動が生じる。これに加えて、屋内施設での特性による屋内施設の構造変化や、構造上の複雑性なども加わる。
【0011】
すなわち、多種多様な屋内施設で、多くの作業員が様々な種類の作業に携わっており、これら作業員の作業安全を把握することが難しい状況が増えている。
【0012】
一方で、近年の労働力不足や働き方改革などの進展で、作業員の安全や健康を維持・管理することがますます求められるようになってきている。例えば、建設現場や工事現場での作業員のけがや事故を防止することはもちろんのこと、疲労などによる安全性も求められるようになっている。
【0013】
これは、配送センターや流通センターのように、重い荷物を持ち運びしたり、輸送機器を使用したりする場合などで合っても同様である。作業特性や屋内施設の特性から、作業員が肉体的負担や危険にさらされているからである。
【0014】
加えて、近年の気候変動によって、作業員が作業中に熱中症などの症状に陥る危険性も懸念されている。あるいは、新型コロナウイルスを始めとした感染症の問題も懸念されている。すなわち、作業員の安全のみならず、健康状態の管理や確保も求められるようになっている。これは、建設現場や配送センターだけでなく、ショッピングモールなどでも同様である。
【0015】
このような、作業員の安全や健康を管理するための技術が幾つか提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2014-215703号公報
【特許文献2】特開2019-125151号公報
【特許文献3】特開2017-38839号公報
【特許文献4】国際公開WO2018/131630号公報
【特許文献5】国際公開WO2019/039126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1は、通信装置2は、計測機器3からバイタルデータを受信した場合に、所定のロジックに従って、第1文字列と第2文字列とを生成する文字列生成部21と、第1文字列とバイタルデータとを紐付けてPHRデータサーバ1に送信し、第2文字列をユーザのモバイル端末4に送信する送信部22とを備える。PHRデータサーバ1は、通信装置2から送られてくる第1文字列とバイタルデータとを紐付けて仮登録する仮登録部13と、サービスサイトでユーザに第2文字列の入力を要求するPHRサービス部11と、入力された第2文字列と仮登録された第1文字列とを上記ロジックに従って照合し、第2文字列に対応する第1文字列が得られた場合に、当該第1文字列に紐付けられたバイタルデータとユーザ情報とを紐付けて本登録バイタルDB122に登録する本登録部15を備える健康情報管理システムを開示する。
【0018】
特許文献1は、作業者の健康状態の指標であるバイタルデータを受信して、これをサーバーと連動させることで、作業員の健康管理を行う技術を開示する。しかしながら、屋内施設にいる作業員の位置情報を得ることが難しいといった問題を有している。また、バイタルデータに頼っているので、作業員の作業状態などに基づいた健康管理を行うことができない問題がある。
【0019】
特許文献2は、安全管理システム1は、ヘルメット2に取り付けられ、該ヘルメットの位置を測定する測位装置(GPS受信機10)を備える。測位装置と通信可能に接続された端末3は、測位装置で測定されたヘルメットの位置を受け取り、該ヘルメットの位置が予め設定された危険区域100内にある場合に、第1警告信号を発信する。警告発生装置(アラーム装置30)は、ヘルメットに取り付けられかつ端末と通信可能に接続され、第1警告信号を受信して警告を発生する安全管理システムを開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献2は、特許文献1と同様の問題を有している。また、ヘルメットに取り付けられた端末を基準とするために、屋内施設での位置把握が難しい問題もある。また、作業内容、作業状態、動線などの作業員動作に基づいた安全管理が確実にできていない問題がある。
【0021】
特許文献3は、生体から心機能に関する情報を取得する第1ウェアラブルセンサ端末2と、生体から血流に関する情報を取得する第2ウェアラブルセンサ端末3と、第1ウェアラブルセンサ端末2によって取得された心機能に関する情報、第2ウェアラブルセンサ端末3によって取得された血流に関する情報、および生体の地理的な位置の温度に関する情報に基づいて、生体の熱障害に対する状態を判定する判定装置1とを有するウェアラブルセンサシステムを開示する。
【0022】
特許文献3も、特許文献1、2と同様の問題を有している。加えて、作業員が業務としての作業中ではないプライベートタイムと作業中とで、安全管理される区別ができてない問題がある。
【0023】
特許文献4は、作業者の関節部位の部位座標と存在位置座標とを検出する座標情報取得部(5、6)、座標情報取得部(5、6)により取得された部位座標と存在位置座標とに基づいて作業者の一連の作業に伴う作業動作の手順と移動経路およびそれらに要する時間を作業内容情報として抽出する作業内容抽出部(9、10)、作業内容抽出部(9、10)により得られる作業内容情報に基づいて作業者が行う作業内容を分析して標準作業から逸脱する標準外作業の有無を判断する作業内容分析部(12)、および作業内容分析部(12)で標準外作業であると判定された場合には作業者に標準作業に復帰するように促すフィードバック部(14)を備える作業分析装置を開示する。
【0024】
特許文献5は、作業者(20)の作業を特定する作業特定部(12)と、作業者(20)の位置座標から作業者(20)の位置を特定する位置特定部(13)と、位置特定部(13)で特定された位置から作業者(20)の作業の様態を特定する様態特定部(14)と、作業、位置、様態を活動刻と関連付けて活動データとして記録する記録部(15)とを備えた活動記録装置(11)であって、さらに位置特定部(13)は、位置推定部と、位置補正部とを備えている活動記録装置を、開示する。
【0025】
特許文献4、5も、特許文献1~3と同様の問題を有している。
【0026】
特許文献1~5の中には、バイタルデータの収集を開示する文献もある。あるいは、作業員の位置情報を検出する技術を開示する文献もある。これらを組み合わせることで、作業員の安全管理を行う技術に繋がる可能性はある。
【0027】
しかしながら、先行技術のそれぞれおよび組み合わせによっても、作業員の安全管理においては、未だに次のような問題を残している。
【0028】
(問題1)作業員が屋内作業を始める前あるいは終えた後のプライベートタイムを区別して、作業員の位置や健康情報を収集することができていない。このため、作業員のプライベートやプライバシーへの配慮ができていない。
【0029】
(問題2)作業員の動線や作業ルーティーンなどに基づいた安全管理ができていない。
【0030】
(問題3)作業員に異常が発生した場合に、管理者ではなく周囲の作業員にこれを通知することができていない。このため、作業員を早期に救護するなどができない。
【0031】
このような問題があることで、屋内施設の構造的特性および屋内作業の作業特性に対応して、健康状態なども含めた作業員の安全管理が不十分である技術的課題があった。
【0032】
本発明は、屋内施設の構造的特性および屋内作業の作業特性に対応して、作業員の健康や安全を管理する作業安全管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題に鑑み、本発明の作業安全管理システムは、作業員が屋内施設での作業をしている作業状態であることを検出する作業状態検出部と、
前記作業員の所持する携帯端末および前記屋内施設に設置された通信デバイスに基づいて、前記作業員の前記屋内施設での位置情報を受信して作業員位置を検出する位置検出部と、
前記携帯端末から送信される前記作業員の健康指標情報を受信して、前記作業員の作業員健康情報を検出する健康情報検出部と、
前記位置検出部で検出される作業員位置および前記健康情報検出部で検出される前記作業員健康情報に基づいて、前記作業員の安全状態を判断する安全状態判断部と、を備え、
前記位置検出部および健康情報検出部は、前記作業状態検出部において、前記作業員が前記作業状態である場合において動作し、
前記通信デバイスは、前記屋内施設の複数個所に設置されたビーコン端末を含み、前記位置検出部は、前記携帯端末と前記ビーコン端末との通信、および前記ビーコン端末とGPS信号との通信に基づいて、前記作業員の位置情報を検出する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の作業安全管理システムは、GPSの電波が到達しない屋内施設においても、作業員の位置情報を検出して作業員の位置、動線、作業状態予測を把握することができる。この位置情報と健康指標情報を併せて、作業員の健康状態を予測したり把握したりすることができる。
【0035】
このとき、作業員が屋内施設での作業を開始する前や終了した後などの、作業員のプライベートタイムにおいては、作業員の位置情報や健康指標情報の収集を停止可能とすることで、作業員のプライベートやプライバシーへの配慮が可能となる。
【0036】
また、作業員の動線や作業ルーティーンに基づいて作業者の健康面での安全および作業者による作業安全手順の遵守を管理することもできる。これにより、作業員個人および作業員の周辺作業員なども含めた安全管理を行うことができる。
【0037】
また、作業員に異常が発生した場合には、作業員に加えて作業員の周辺にいる人である周辺者にも、異常発生を通知することができる。これにより、異常が発生した作業員の早期の救護が可能となったり、異常状態によっては、周辺者に二次被害が生じないように準備させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】屋内施設での作業員による作業状態をイメージとして示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における位置検出を説明する説明図である。
図4】本発明の実施の形態1における作業状態検出部2による作業状態の検出を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。
図6】本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。
図7】本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。
図8】本発明の実施の形態2における周辺作業員への通知を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の第1の発明に係る作業安全管理システムは、作業員が屋内施設での作業をしている作業状態であることを検出する作業状態検出部と、
前記作業員の所持する携帯端末および前記屋内施設に設置された通信デバイスに基づいて、前記作業員の前記屋内施設での位置情報を受信して作業員位置を検出する位置検出部と、
前記携帯端末から送信される前記作業員の健康指標情報を受信して、前記作業員の作業員健康情報を検出する健康情報検出部と、
前記位置検出部で検出される作業員位置および前記健康情報検出部で検出される前記作業員健康情報に基づいて、前記作業員の安全状態を判断する安全状態判断部と、を備え、
前記位置検出部および健康情報検出部は、前記作業状態検出部において、前記作業員が前記作業状態である場合において動作し、
前記通信デバイスは、前記屋内施設の複数個所に設置されたビーコン端末を含み、前記位置検出部は、前記携帯端末と前記ビーコン端末との通信、および前記ビーコン端末とGPS信号との通信に基づいて、前記作業員の位置情報を検出する。
【0040】
この構成により、作業員のプライバシーに配慮したうえで、屋内施設内部での作業員の安全状態を把握・管理することができる。結果として、作業員の安全を確保することができる。
【0041】
本発明の第2の発明に係る作業安全管理システムでは、第1の発明に加えて、前記位置検出部および前記健康情報検出部は、前記作業状態である場合のみに動作することで、前記作業員のプライバシーを担保可能である。
【0042】
この構成により、作業員が作業状態として管理されるべきではない間においては、管理から外れる。これにより、作業員のプライバシーが確保される。
【0043】
本発明の第3の発明に係る作業安全管理システムでは、第1または第2の発明に加えて、前記作業状態検出部は、前記屋内施設の出入り口に備わる検出装置での前記携帯端末との通信に基づいて、前記作業員が前記屋内施設での作業開始および作業終了を検出し、
前記作業開始および前記作業終了に基づいて、前記作業員が前記作業状態であるか、非作業状態であるかを検出できる。
【0044】
この構成により、入退室を基準として、作業員が屋内施設で作業状態であるかどうかを判断できる。
【0045】
本発明の第4の発明に係る作業安全管理システムでは、第3の発明に加えて、前記屋内施設の出入り口に、前記携帯端末の通過を検出する通信可能な前記検出装置を更に備える。
【0046】
この構成により、入退室での通信により、作業状態であることを容易に検出できる。
【0047】
本発明の第5の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記ビーコン端末での通信信号および前記GPS信号との組み合わせ結果を受信する信号受信部を更に備え、
前記信号受信部は、前記ビーコン信号が前記携帯端末との通信で得る前記屋内施設内部での前記作業員の位置および前記ビーコン端末のGPS上での測位位置に基づくGPS信号に基づいて、前記作業員の位置を特定し、
前記位置検出部は、前記信号受信部からの作業員の位置の特定された情報を受けることで、前記作業員の位置を検出する。
【0048】
この構成により、屋内施設であっても、作業員の位置を検出できる。
【0049】
本発明の第6の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記携帯端末は、前記作業員に所持されることで、前記健康指標情報を前記携帯端末から送信可能である。
【0050】
この構成により、作業員のバイタルデータなどの健康指標を得ることができる。
【0051】
本発明の第7の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記健康指標情報は、前記作業員のバイタルデータ、前記作業員の居る周辺の温度、湿度、不快指数および熱中症指数の少なくとも一つを含む。
【0052】
この構成により、作業員の健康状態に影響を与える指標を幅広く把握できる。この把握に基づいて、健康状態などへの問題を早期かつ確実に判断できる。
【0053】
本発明の第8の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記位置検出部での前記作業員の位置検出結果に基づいて、前記作業員の作業動線を検出する動線検出部を更に備え、
前記動線検出部は、前記作業動線を、前記安全状態判断部に出力する。
【0054】
この構成により、作業員の作業動線に基づく正常や異常を把握できる。この把握に基づいて、作業員の問題行動や危険状態などを判断できるようになる。
【0055】
本発明の第9の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記安全状態判断部は、前記作業員の正常状態、健康的危険状態、作業異常状態、事故発生状態および消息不明状態の少なくとも一つを判断する。
【0056】
この構成により、作業員の安全に関する様々な状態を判断できる。
【0057】
本発明の第10の発明に係る作業安全管理システムでは、第9の発明に加えて、前記安全状態判断部の判断結果を、管理者および前記安全状態の判断対象である前記作業員の周辺にいる他の作業員(以下、「周辺作業員」)に通知する、通知部を更に備える。
【0058】
この構成により、周辺作業員による救助などを早期に行わせることができる。
【0059】
本発明の第11の発明に係る作業安全管理システムでは、第9の発明に加えて、前記安全状態判断部は、前記作業動線に基づいて、前記作業員の作業異常状態を判断し、
前記作業動線が、本来の動線と大きく相違する場合には、前記作業員の作業状態に問題があるとして、前記作業異常状態であるとする。
【0060】
この構成により、作業問題に対する早期の対策を行える。
【0061】
本発明の第12の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第11のいずれかの発明に加えて、前記安全状態判断部は、複数の前記作業員の前記作業員位置に基づいて、一定数以上の前記作業員が密集している状態を、密集状態として判断し、
前記通知部は、前記密集状態にある前記作業員に対して、距離間隔を取るように通知する。
【0062】
この構成により、密集状態による問題を回避することができる。
【0063】
本発明の第13の発明に係る作業安全管理システムでは、第1から第12のいずれかの発明に加えて、前記安全状態判断部は、ある作業員の前記作業員位置および前記作業員健康情報を検出できない場合には、当該作業員の所持する前記携帯端末が非動作中であると判断し、
前記通知部は、当該作業員の周辺作業員に対して、当該作業員の携帯端末を起動させるよう通知する。
【0064】
この構成により、作業員の安全管理ができなくなる状態を回避することができる。
【0065】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0066】
(実施の形態1)
(作業員の屋内施設での作業)
図1は、屋内施設での作業員による作業状態をイメージとして示す模式図である。屋内施設100は、工場、配送センター、流通センター、建設現場、大型ショッピングモールなど、屋内作業を中心とする作業を必要とする様々な施設である。このような施設であって、内部での作業員による作業を必要とする屋内施設100は、様々な場所にある。作業員200は、屋内施設100に入室して屋内施設100の中でいろいろな作業を行う。
【0067】
屋内施設100が工場であれば、作業員は製造工程での作業や製造ラインでの運搬作業などを行なう。あるいは、清掃作業を行うこともある。屋内施設100が建設現場であれば、清掃員200は、建設作業、清掃作業などを行なう。屋内施設100が配送センターや流通センターなどであれば、作業員200は、集荷や出荷、これに伴う検品や運搬などの作業を行う。
【0068】
また、作業員200は、屋内施設100に入室(入館)することで、作業を開始し、屋内施設100から退室することで作業を終了する。すなわち、作業員200は、屋内施設100の中にいる間が作業状態であり、屋内施設100の外にいる間は、作業していない状態である。すなわち、入室と退室を管理することで、作業員200が作業状態であるのか、非作業状態であるのかを判別できる。
【0069】
図1においては、屋内施設100内部において作業員200が様々な作業をしている状態を示している。また、屋内施設100への入室と退室とをしている状態を示している。作業状態である場合において、通常作業である状態もあり、これも示されている。
【0070】
一方で、上述した屋内施設100においては、作業員200に種々のアクシデントも生じる。図1においては、作業員200が転倒した転倒状態や、作業員200が事故に巻き込まれた事故状態などが示されている。通常作業をしていたり、転倒状態や事故状態などのアクシデントが起きていたり、アクシデントではないが、通常作業から外れた作業となっていることもあり得る。
【0071】
このように屋内施設100においては、作業員200がスムーズに通常作業しているかも知れないし、作業エラーが生じているかも知れないし、種々のアクシデントに巻き込まれている可能性もある。屋内施設100では、外部からの把握も難しいし、建設現場などでは日に日に屋内施設100の内部構造も変化する。このような状況で、作業員200の作業状態やアクシデントなどを早期に発見することは難しい。また、早期に発見すると同時に、アクシデント状態であれば、作業員200を早期に救出することも必要になる。
【0072】
一方で、屋内施設100であることで、作業員200が携帯端末を所有していても、GPS信号との通信が不可能である。このため、作業員200の位置を把握することができない。これにより、作業員200の様々な状態を把握することが難しい問題がある。上記のように、作業員200の種々の状態を把握することができなければ、作業員200の安全や健康に問題を生じさせるからである。
【0073】
本発明は、このような状況や背景に鑑みて、外部のGPS通信が直接的に使用できない場合でも、屋内施設100内部で作業をしている作業員200の安全状態を管理することを目的としている。また、作業員200のプライバシーにも配慮して、作業状態でないときには、作業員200を過剰管理しないことにも配慮している。
【0074】
(全体概要)
【0075】
図2は、本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。図2では、作業安全管理システム1とこれが管理する屋内施設100との関係も示している。作業安全管理システム1は、屋内施設100における作業員200の安全状態などを管理する。
【0076】
図2では、作業安全管理システム1は、屋内施設100の外側にあって、作業員200の安全状態などを管理するように示されている。作業安全管理システム1は、このように屋内施設100の外部に備わって、外部から管理してもよい。あるいは、屋内施設100の内部に備わり、内部から管理してもよい。作業安全管理システム1は、その物理的な位置において、特段の限定がされるものではない。必要な作業安全の管理が行えれば、その物理的な位置はいずれでもよい。
【0077】
作業安全管理システム1は、コンピューター、専用装置、これらとのソフトウェアとの混在、サーバー装置など、処理を実行可能な種々の装置や設備によって実現されればよい。既述したように、ハードウェアとソフトウェアの混在で実現されてもよい。また、コンピューターやサーバー装置などの汎用装置の中に組み込まれることで実現されてもよい。
【0078】
作業安全管理システム1は、作業状態検出部2、位置検出部3、健康情報検出部4、安全状態判断部5と、を備える。また、上述にも関連するが、作業安全管理システム1が、コンピューターやサーバー装置などの汎用装置に組み込まれる場合には、これらの要素は、ハードウェア、ソフトウェアなどにより実現されればよい。
【0079】
また、図2においては、屋内施設100と作業安全管理システム1の物理的位置が分離しているように示されているが、作業安全間システム1の要素の一部もしくは全部が、屋内施設100の内部に備わることでもよい。例えば、作業状態検出部2を構成する要素の少なくとも一部が、屋内施設100の内部あるいは周縁に備わってもよい。
【0080】
作業状態検出部2は、作業員200が屋内施設100で作業をしている作業状態であることを検出する。すなわち、作業員200が、屋内施設100で作業しているのか、屋内施設100の外に居て屋内作業ではない状態であるかを検出できる。この作業状態検出部2により、作業員200の安全状態の管理をする場合に、屋内施設100内部での作業状態ではない場合、すなわちプライベートな状態では、管理状態としないことができる。すなわち、プライベート状態での過剰な管理を行わないことで、作業員200の人格尊重などを行なえる。
【0081】
作業状態とは、作業員200が屋内施設100(例えば、工事現場や流通センター)の内部にいることを含む。屋内施設100内部にいる場合には、作業員200は、作業に服務している状態であると考えられるので、作業員200が屋内施設100に入れば、作業状態検出部2は、作業員200が作業状態であると判断する。逆に、作業員200が屋内施設100から出れば、作業状態検出部2は、作業員200が作業状態ではないと判断する。
【0082】
図4は、本発明の実施の形態1における作業状態検出部2による作業状態の検出を示すブロック図である。屋内施設100の出入り口付近には、検出装置21が備わる。検出装置21は、作業員200の所持する携帯端末300と通信可能な通信機能を有している。携帯端末300は、作業員200が私物としてあるいは仕事用に支給されたスマートフォン、携帯電話、タブレット端末などである。
【0083】
検出装置21は、屋内施設100の出入り口付近に備わっており、作業員200の所持する携帯端末300が近接すると通信できる。例えば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離通信などの機能により通信できる。この通信において、携帯端末300が屋内施設100に近づいてくることを検出装置21が検出すれば、作業員200が屋内施設100に入る状態である。携帯端末300が屋内施設100から遠ざかることを検出装置21が検出すれば、作業員200が屋内施設100から出る状態である。
【0084】
近付く方向、出る方向ではなく、具体的な移動方向が入室あるいは退室であることで、検出装置21は、作業員200の入退室を検出することもできる。
【0085】
検出装置21は、携帯端末300との通信に基づいて、作業員200が屋内施設100での作業開始あるいは作業終了を検出できる。作業状態検出部2は、この検出部21での作業開始と作業終了に基づいて、作業員200を、作業状態であるか非作業状態であるかを検出できる。作業状態であることを検出できると、作業安全管理システム1は、作業員200の屋内施設100での位置検出や安全管理などを行なう。
【0086】
このように、作業状態検出部2による作業員200の作業状態の検出を安全管理の前提とすることで、作業員200のプライバシーに配慮した安全管理を行える。
【0087】
すなわち、位置検出部3および健康情報検出部4は、作業状態である場合のみにおいて動作する。このような動作によって、作業員200のプライバシーを担保可能である。
【0088】
また、図4に示されるように、屋内施設100の出入り口に検出装置21が備わることも好適である。出入り口に備わることで、入室と退室との検出に基づいて、作業状態であるかどうかを検出できる。
【0089】
位置検出部3は、作業員200の所持する携帯端末300および屋内施設100に設置された通信デバイス400に基づいて、作業員200の屋内施設100での位置情報を受信する。この位置情報の受信に基づいて、作業員200の屋内施設100での位置を検出する。
【0090】
作業員200は、屋内施設100内部にいる。作業員200は、携帯端末300を所持しているが、屋内施設においては、携帯端末300が、GPS信号と直接通信できないこともありえる。このため、位置検出部3は、屋内施設100に設置された通信デバイス400と携帯端末300とに基づいて、作業員200の屋内施設100での位置を検出する。このとき、ビーコン端末とGPS信号との組み合わせにより、屋内施設100での作業員200の位置を検出することでよい。
【0091】
ここで、図3のような構成によって、位置検出部2は、作業員200の位置を検出することも好適である。図3は、本発明の実施の形態1における位置検出を説明する説明図である。通信デバイス400は、屋内施設100の必要な場所に設置されている。例えば、作業員200の位置を検出するためのアドレスとなりうる、区画や居室などに対応する位置に通信デバイス400が設置されればよい。
【0092】
図3に示されるように、通信デバイス400は、ビーコン端末410を備える。携帯端末300は、このビーコン端末410と通信する。屋内施設100の内部であっても、携帯端末300とビーコン端末410とは通信可能だからである。ブルートゥース(登録商標)規格などの信号通信で通信すればよい。ビーコン端末410には、屋内施設100での位置に対応するアドレスが割り振られているので、ビーコン端末410の受信により、携帯端末300を所持する作業員200の屋内施設内部での位置が分かる。
【0093】
ビーコン端末410は、GPS信号420(GPS信号源として考えればよい。GPSとしての位置を即位できるデバイスである。あるいは、地図上での位置と関連付けることのできる装置やデバイスでもよい)と通信可能である。ビーコン端末410が、GPS信号410のデバイスとネットワーク接続されているからである。このビーコン端末410とGPS信号420との接続により、ビーコン端末410と通信した携帯端末300を所持する作業員200の位置が分かる。
【0094】
ここで、このようなビーコン端末410での通信信号およびGPS信号420との組み合わせ結果を受信する信号受信部32が更に備わる。信号受信部32は、ビーコン信号が携帯端末300との通信で得る屋内施設100での作業員200の位置を受信する。および、信号受信部32は、ビーコン端末410のGPS上での測位位置(地理的測位での位置)に基づくGPS信号を受信する。
【0095】
信号受信部32は、この結果を位置検出部3に出力する。位置検出部3は、この結果に基づいて、作業員200の屋内施設100での位置を検出する。すなわち、信号受信部からの作業員200の位置の特定された情報(ビーコン信号とGPS信号との相関関係から特定される情報)に基づいて、位置を検出する。
【0096】
このようにして、屋内施設100内部であっても、位置検出部3は、作業員200の位置を検出できる。
【0097】
携帯端末300は、作業員200の健康指標情報を収集してビーコン端末410に出力できる。あるいは、可能であればGPS信号420に係る信号源デバイスやネットワークデバイスに出力できる。健康指標情報は、作業員200のバイタルデータ、作業員200周辺の温度、湿度、不快指数および熱中症指数の巣なくとも一つを含む。バイタルデータは、作業員200の体温、血圧、呼吸数、心拍数などを含む。
【0098】
携帯端末300は、作業員200に所持されていることで、バイタルデータなどを含む、健康指標情報を計測できる。この計測は連続的に行われる。すなわち、連続的に計測された健康指標情報は、ビーコン端末410などを通じて、健康情報検出部4に送信される。健康情報検出部4は、このような通信経路で送信される作業員健康情報を検出できる。
【0099】
携帯端末300は作業員200に所持されることで、収集した健康指標情報を、携帯端末300から送信することができる。
【0100】
図5は、本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。図3図4の構成を含んだ状態を示している。健康情報検出部4は、図3図4のように通信デバイス400から信号受信部32を介して、健康指標情報を受信できる。あるいは、通信デバイス400との通信経路によって、健康指標情報を受信してもよい。ネットワーク接続の構成に応じて、受信経路が選択されればよい。この受信により、作業員健康情報を検出できる。
【0101】
健康情報検出部4は、受信した作業員健康情報を、必要な加工を施してあるいはそのままの状態で、安全状態判断部5に出力する。位置情報検出部3も、検出した作業員の位置情報を、安全状態判断部5に出力する。
【0102】
安全状態判断部5は、作業員200の位置である作業員位置および作業員健康情報に基づいて、作業員200の安全状態を判断する。これらは上述の通り、作業員200が作業状態である場合のみに動作する。
【0103】
安全状態判断部5は、作業員200が安全な作業状態にあるのか、何らかの異変が生じているのか、危険な状態にあるのか、異変や危険が迫っているのかなどを判断できる。また、判断の際に、作業員200の位置も含めている。これにより、どの場所にいる作業員200に、安全上の問題が生じているかを早期に把握することができる。この早期の把握により、作業安全管理システム1は、ある位置にある作業員200の救助などを早期に行える。
【0104】
(安全状態の判断)
安全状態判断部5は、作業員200の正常状態、健康的危険状態、作業異常状態、事故発生状態および消息不明状態の少なくとも一つを判断する。
【0105】
(正常状態)
作業員200の作業員位置および作業員健康情報に基づくことで、作業員200に問題なく正常な状態であることが判断できる。例えば、次のような情報がある場合には、安全状態判断部5は、正常状態であると判断できる。
【0106】
バイタルデータ:正常範囲にある。
周辺情報:温度や湿度などが正常範囲である。不快指数なども正常範囲である。
【0107】
このような条件がそろっていれば、正常状態として判断できる。加えて、
作業員位置情報:作業員200の作業内容から見て適切な位置にある。
【0108】
このような作業員200の居る位置にも異常が無ければ、作業員健康情報と併せて、正常状態と判断することも好適である。このような要素も加えることで、作業員200の正常状態をより正確に判断できる。特に屋内施設100が、工事現場や流通センターなどであれば、健康状態、周辺環境、作業位置などの全体が加味されることで、正確に正常状態であることが判断される。
【0109】
正常状態であれば、作業安全管理システム1を管理する管理者などは、作業員200の安全を把握できる。この把握により、作業員200による作業続行に問題ないと考えることができる。
【0110】
(健康的危険状態)
作業員200の作業員位置および作業員健康情報に基づくことで、作業員200に健康上の問題が発生している、あるいは発生しうる健康的危険状態であることを判断できる。例えば、次のような情報がある場合には、安全状態判断部5は、健康的危険状態であると判断できる。
【0111】
バイタルデータ:いずれかの指標あるいは一定以上の種類の指標が、正常範囲から外れている。例えば、体温が平熱よりも高くなっていたり、心拍数が上昇していたりなど。
【0112】
周辺情報:不快指数が正常範囲を超えていたり、熱中症指数が高くなっていたりする。あるいは、気温や湿度が、非常に高い状態にあるなど。
【0113】
このような状態では、作業員200が熱中症で倒れたり、過労で倒れたりする危険性がある。あるいは、その状態になっている可能性もある。このような場合には、作業員200の安全を確保する行動が、管理者や他の作業員200に求められる。例えば、作業員200を救出あるいは救護するなどである。勿論、作業員200に休息をとるように求めるなどである。
【0114】
さらには、位置情報を加味して健康的危険状態を判断してもよい。
位置情報:作業員200の本来作業の位置と異なる位置情報が検出される場合。特に、作業動線(休憩などを含めて)とは、大きく異なる位置にあるとか、危険地帯に位置しているなどの場合。
【0115】
作業安全管理システム1の管理者や他の作業員200、あるいはこの作業安全管理システム1に関わる者が、健康的危険状態にある作業員200を救護する。これにより、作業員200の健康被害などを最小限に抑えたり、発生させたりしないようにできる。特に、危険状態になりそうな段階での救護が行えることで、実際の健康被害を生じさせないメリットがある。
【0116】
(作業異常状態)
作業員200の作業員位置および作業員健康情報に基づくことで、作業員200に作業異常状態が発生している、あるいは発生しうる作業員異常状態であることを判断できる。例えば、次のような情報がある場合には、安全状態判断部5は、作業員異常状態であると判断できる。
【0117】
位置情報:作業員200の作業内容やその特性から判断して、作業員200があるべき位置に居ない状態である。あるいは、危険地帯に作業員200が入ってしまっている状態である。
周辺情報:異常な高温であったり異常な湿度(乾燥あるいは多湿)などの状態であったりする。
【0118】
このような状態では、作業員200が適切な場所であるべき作業をしていないか、間違えて危険地域で作業をしているかなどの可能性がある。このため、作業員200が危険に巻き込まれたり事故に巻き込まれたりする可能性がある。あるいは、作業員200が、好ましくない行動をとっている可能性もある。
【0119】
作業安全管理システム1の管理者は、このような作業員200の危険性や好ましくない状態を放置しないことが求められる。このため、安全状態判断部5は、作業員200が作業異常状態である、と判断する。
【0120】
この判断結果を通知することで、管理者や他の作業員200が、適切な対応を取ることができる。あるいは、作業員200に通知することで、作業員200に状況改善を促すこともできる。
【0121】
また、バイタルデータに含まれるいずれかの健康指標に異常値が見られる場合も加味することで、作業異常状態と判断することもよい。例えば、心拍数が高く、作業員200のいる位置が好ましくない場合には、何らかの不適切行為を行っている懸念がある。安全状態判断部5は、このような不適切行為の可能性を、作業異常状態として判断する。
【0122】
もちろん、作業員200が危険に巻き込まれることを未然防止する意味でも、作業異常状態の判断がなされることは好適である。
【0123】
また、図6のように位置検出部3での作業員200の位置検出結果に基づいて、作業員200の作業動線を検出する動線検出部7を更に備えることも好適である。図6は、本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。動線検出部7を、更に備えている。
【0124】
動線検出部7は、ある作業員200の移動経路である動線を検出できる。作業員位置を連続的に繋ぐことで、作業動線が検出できる。作業員200の動線検出結果を、動線検出部7は、安全状態判断部5に出力する。安全状態判断部5は、作業動線に異常がある場合も、安全状態判断部5は、作業員200の作業異常状態を判断できる。
【0125】
作業動線が、本来の動線と大きく相違する場合には、安全状態判断部5は、作業員200の作業状態に問題があるとして、作業異常状態であると判断してもよい。作業動線が大きく異なることは、作業員200が誤った作業をしている可能性や好ましくない作業をしている可能性があるからである。あるいは、健康状態に問題があって、作業動線に異常をきたしていることもありえる。
【0126】
このような観点から、動線検出部7により検出された作業動線の異常に基づいて、安全状態判断部5は、作業異常状態を判断することも好適である。作業異常状態が判断されれば、作業員200の安全確保や作業是正を行うことができる。
【0127】
(事故発生状態)
安全状態判断部5は、作業員200の位置情報および作業員健康情報に基づいて、事故発生状態を判断できる。例えば、次のような情報がある場合には、事故発生状態として判断できる。
【0128】
バイタルデータ:心拍数などの異常な低下。血圧などの低下などの状態である。
位置情報:作業員200の位置に一定時間以上変化がない。
【0129】
このような場合、作業員200が転倒していたり、作業員200が病気などを訴えていたりする可能性がある。あるいは、作業員200が、作業中に事故に巻き込まれている可能性がある。これらを放置することは、作業員の安全確保の観点から好ましくない。
【0130】
また、動線検出部7での作業動線が、異常な動線である場合(ある場所に泊ったままである、あるいは、作業に関係ない場所を移動している)にも、作業員200が事故やけがに巻き込まれている可能性がある。この場合にも、他の情報と併せてあるいは独立して、安全状態判断部5は、事故発生状態であるとして判断できる。
【0131】
(消息不明状態)
安全状態判断部5は、作業員200の位置情報、作業員健康情報、作業動線に基づいて、作業員200の消息が不明となった消息不明状態を判断することができる。
【0132】
例えば、作業動線が途中で切れて屋内施設100内部に残っていない状態には、消息不明状態と判断できる。あるいは、位置情報が消失した場合には、作業員200が消息不明状態にあると判断できる。
【0133】
消息不明であるのは、作業員200が事故や事件に巻き込まれた可能性もあるし、作業を怠っているという可能性もある。このような状態を放置することは、安全管理でも業務管理でも好ましくない。
【0134】
安全状態判断部5は、消息不明状態を判断することで、管理者による適切な対応を促すことができる。
【0135】
(複数の要素の組み合わせでの判断)
安全状態判断部5は、上述のように位置情報や作業員健康情報などに基づいて、作業尾員200の状態を判断する。上述したように、ある要素に基づいて判断してもよいし、複数の要素の組み合わせに基づいて判断してもよい。あるいは、単一の要素で判断してもよい。また、複数の要素に基づく場合には、この組み合わせについても、多様に処理してもよい。また、必要に応じて、基準とする要素を変化させてもよい。
【0136】
このような柔軟な処理により安全状態を判断することで、適切な安全状態の判断を行える。
【0137】
また、上述した、正常状態、健康的危険状態、作業異常状態、事故発生状態および消息不明状態以外の状態を判断してもよい。これらも、事後的に修正や改良することができる。
【0138】
(通知部)
図7に示すように、安全状態判断部5での判断結果を通知する通知部8を更に備えることも好適である。図7は、本発明の実施の形態1における作業安全管理システムのブロック図である。
【0139】
通知部8は、安全状態判断部5での結果を通知する。作業安全管理システム1の管理者に通知する。あるいは、他の作業員200に通知する。この通知によって、管理者や他の作業員200は、ある作業員200に問題が発生していることを知ることができる。この認知に基づいて、対応すべき作業を取ることができる。
【0140】
以上のように、実施の形態1における作業安全管理システム1は、作業員200のプライベートに配慮しつつ、作業状態の安全状態や危険状態を正確に判断できる。また、屋内施設100でのGPS信号が直接的に受信できない環境でも、ビーコン通信とGPS信号との組み合わせで、作業員200の位置を確実に把握できる。この位置情報や健康情報に基づいて、作業員200の状態を、より正確に判断できる。
【0141】
このような判断の正確性やリアルタイム性により、作業員の安全を適切に管理できる。結果として、労働災害などを防止できる。
【0142】
(実施の形態2)
【0143】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、種々の工夫やバリエーションについて説明する。
【0144】
(通知部による周辺作業員への通知)
図7に示すように、作業安全管理システム1は、通知部8を備える。実施の形態1で説明したように、通知部8は、安全状態判断部5での判断結果を、管理者等に通知する。管理者に通知することで、作業員200の安全管理を行えるからである。また、作業員200に危険な状態があれば、作業員200の救護などにつなげることができる。
【0145】
ここで、通知部は、管理者に加えて、安全状態判断の対象となった作業員200の周辺にいる他の作業員(以下、「周辺作業員」という)に、通知することも好適である。例えば、図1において、事故状態や転倒状態にある作業員200がいる。安全状態判断部5は、この作業員200について、事故発生状態として判断する。
【0146】
事故状態であると、管理者がこれを認識してから救護活動をしているのでは手遅れになることもありえる。また、管理者が救護に行けない状況にあることもある。通知部8は、周辺作業員に通知する。この通知によって、周辺作業員は、事故発生状態などにある作業員200を、即座に救護あるいは救出することができる。
【0147】
安全状態判断部5は、作業員健康情報や位置情報に基づいて、作業員200の転倒、意識薄弱および容態急変の少なくとも一つを事故発生状態として判断できる。血圧の急激な低下、心拍数の急激な低下(もしくは急激な上昇)などがあると、転倒や容態急変であると判断できる。安全状態判断部5は、これを事故発生状態として判断する。
【0148】
この判断結果を受けた通知部8は、周辺作業員に判断結果を通知する。周辺作業員は、事故発生状態の作業員200を救護できる。通知部8は、事故発生状態を、救助要請と併せて周辺作業員に通知することも好適である。これを受けた周辺作業員は、事故に面している作業員200を救護や救出するようになる。
【0149】
周辺作業員に通知されることで、管理者よりも早期の救護などが可能となる。周辺作業員は、管理者よりも事故状態にある作業員200の近くにいるので、早期に対応できるからである。このような対応により、作業員200の安全確保が、より確実に行えるようになる。
【0150】
図8は、本発明の実施の形態2における周辺作業員への通知を示す模式図である。図8に示されるように、ある作業員が事故発生状態である。この事故発生状態にある作業員200の周辺作業員に、この事故発生状態の通知がなされる。また、通知においては、周辺作業員の周辺のある位置において発生していることや、救助要請も、合わせて通知される。
【0151】
図8では、ある作業員が転倒や事故にあった事故発生状態である。これを判断した安全状態判断部5は、通知部8を通じて、周辺作業員に通知する。この通知に基づいて、周辺作業員は、事故発生状況にある作業員を救助する。
【0152】
(密集状態の判断)
屋内施設100においては、作業員200が密集してしまうことがある。作業員200が密集してしまうと、作業に支障をきたしたり、作業中の事故を生じさせたりする懸念がある。また、感染症が流行ると、密集は、感染症対策として好ましくない。このような密集状態も判断できることは、作業安全管理の観点から好ましい。
【0153】
安全状態判断部5は、動線検出部7や位置検出部3からの情報を得ることができる。複数の作業員200の作業員位置に基づいて、一定数以上の作業員200が密集している状態を密集状態として判断する。ある一定の範囲に、一定数以上の作業員200が集中していることの検出で、密集状態であることが判断できる。
【0154】
すなわち、ある場所での作業員密度により、密集状態を判断できる。この密集状態を判断する一定数や作業員密度の基準は、適宜定められれば良い。屋内施設100の種類、作業員200の作業の種類、外部環境、経験値などによって、種々に定められればよい。また、状況に応じて、変化させてもよい。
【0155】
また、動線検出部7からの複数の作業員200の作業動線に基づいて、密集状態を判断してもよい。複数の作業動線が固まっている場合には、あるいは、複数の作業動線が同じ方向に同じ時間帯に集中すると予測される場合には、密集状態として判断される。
【0156】
安全状態判断部5は、この密集状態を判断すると、通知部8に出力する。通知部8は、この密集状態を、作業員200に対して通知する。ネットワーク接続されている通信デバイスを経由することで、作業員200の携帯端末などに通知することで、密集状態の通知ができる(周辺作業員への通知も同様のルートで可能である)。
【0157】
この通知においては、密集状態にある作業員200に対して、距離間隔を取るようにも指示する。この通知によって、作業員200は、密集状態を解消できる。
【0158】
(非動作の判断)
安全状態判断部5は、ある作業員200の作業員位置および作業員健康情報を検出できない場合には、作業員200の所持する携帯端末300が非動作中であると判断する。勿論、通信障害などの可能性もあるが、作業員200が携帯端末300の電源を切っているとか、携帯端末300の電源が切れているかなどがあり得る。
【0159】
これを放置することは、作業員200の安全管理の観点で好ましくない。
【0160】
安全状態判断部5による非動作中での判断結果を、通知部8は、周辺作業員に通知する。周辺作業員には、携帯端末が非動作であると判断された作業員200に対して、携帯端末300を起動させるように通知する。この通知を受けることで、周辺作業員は、当該作業員200に起動をさせる。
【0161】
この起動によって、作業員200の安全管理が適切に行えるようになる。
【0162】
このように、作業員200の携帯端末200が動作していないことによる安全管理が困難となることについても、作業安全管理システム1は、対応できる。
【0163】
なお、実施の形態1~2で説明された作業安全管理システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0164】
1 作業安全管理システム
2 作業状態検出部
3 位置検出部
4 健康情報検出部
5 安全状態判断部
7 動線検出部
8 通知部
32 信号受信部
100 屋内施設
200 作業員
300 携帯端末
400 通信デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8