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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095054
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】経路検索システム及び経路検索方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220621BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208143
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勤
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】ユーザが移動経路及び目的地の混雑状況を考慮した上で、適切な移動経路及び目的地を選択することを可能とする経路検索システム及び経路検索方法を提供する。
【解決手段】検索条件データD6を取得する第1取得手段(通信部13)と、ユーザの目的と合致する目的地を抽出する目的地抽出手段(制御部51)と、ユーザの現在地又はユーザが希望する出発地から目的地までの移動経路を検索する経路検索手段(制御部11)と、目的地の混雑率及び移動経路における交通機関の混雑率を用いて、目的地と移動経路との組み合わせのそれぞれについて、不効用値を算出する第1不効用値算出手段(制御部11)と、目的地と、移動経路と、不効用値と、を関連付けてユーザに提示する第1提示手段(通信部13)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともユーザの目的に係る情報と、前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地に係る情報と、を含む検索条件情報を取得する第1取得手段と、
前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出する目的地抽出手段と、
前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地から前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地までの移動経路を検索する経路検索手段と、
少なくとも前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地の混雑率及び前記経路検索手段が検索した前記移動経路における交通機関の混雑率を用いて、前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地と前記経路検索手段が検索した前記移動経路との組み合わせのそれぞれについて、不効用値を算出する第1不効用値算出手段と、
前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地と、前記経路検索手段が検索した前記移動経路と、前記第1不効用値算出手段が算出した前記不効用値と、を関連付けて前記ユーザに提示する第1提示手段と、
を備えることを特徴とする経路検索システム。
【請求項2】
前記第1取得手段が取得する前記検索条件情報は、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間に係る情報を含み、
前記第1不効用値算出手段は、少なくとも、
前記目的地の混雑率と、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間と、を用いて算出した目的地不効用値と、
前記移動経路における交通機関の混雑率と、当該交通機関の乗車時間と、を用いて算出した経路不効用値と、
を加算して前記不効用値を算出することを特徴とする請求項1に記載の経路検索システム。
【請求項3】
前記第1不効用値算出手段は、
前記目的地の混雑率と、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間と、を乗じて前記目的地不効用値を算出し、
前記移動経路における交通機関の混雑率と、当該交通機関の乗車時間と、を乗じて前記経路不効用値を算出することを特徴とする請求項2に記載の経路検索システム。
【請求項4】
前記第1不効用値算出手段は、前記目的地不効用値及び/又は前記経路不効用値に、前記ユーザの希望に応じて設定された係数を乗じて重み付けを調整した上で、調整後の前記目的地不効用値と、調整後の前記経路不効用値と、を加算して前記不効用値を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の経路検索システム。
【請求項5】
前記第1不効用値算出手段は、
前記経路検索手段が検索した前記移動経路において交通機関を乗り換える乗換施設の混雑率と、前記乗換施設における乗り換え時の乗換時間と、を用いて算出した乗換不効用値をさらに加算して前記不効用値を算出することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の経路検索システム。
【請求項6】
前記検索条件情報は、前記目的地の料金の上限値、前記移動経路の料金の上限値、前記移動経路の所要時間の上限値及び/又は前記不効用値の上限値に係る情報を含み、前記第1提示手段は、前記目的地、前記移動経路及び前記不効用値の組み合わせのうち、前記上限値に係る情報と合致する組み合わせのみを、前記ユーザに提示することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の経路検索システム。
【請求項7】
前記ユーザの目的地の候補となる施設に係る情報である施設情報を取得する第2取得手段をさらに備え、
前記目的地抽出手段は、前記検索条件情報に含まれるユーザの目的に係る情報と、前記施設情報と、を対照して、前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の経路検索システム。
【請求項8】
前記施設に係るユーザの予約状況に係る情報を、当該施設の管理者に提示する第2提示手段と、
前記予約状況に係る情報の提示を受けた前記管理者による前記施設情報の更新に係る情報を取得する第3取得手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の経路検索システム。
【請求項9】
ユーザが利用を希望する目的地及び移動経路に係る情報を取得する第4取得手段と、
少なくとも前記第4取得手段が情報を取得した前記目的地及び前記移動経路の混雑率を用いて、前記第4取得手段が情報を取得した前記目的地及び前記移動経路の組み合わせについて、不効用値を算出する第2不効用値算出手段と、
前記第2不効用値算出手段が算出した不効用値が、所定の閾値を超過しているかを判定する閾値超過判定手段と、
前記閾値超過判定手段が、閾値を超過していると判定した場合に、前記ユーザに通知する通知手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の経路検索システム。
【請求項10】
少なくともユーザの目的に係る情報と、前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地に係る情報と、を含む検索条件情報を取得する取得ステップと、
前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出する目的地抽出ステップと、
前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地から前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地までの移動経路を検索する経路検索ステップと、
少なくとも前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地の混雑率及び前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路における交通機関の混雑率を用いて、前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地と前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路との組み合わせのそれぞれについて、不効用値を算出する不効用値算出ステップと、
前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地と、前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路と、前記不効用値算出ステップにおいて算出した前記不効用値と、を関連付けて前記ユーザに提示する提示ステップと、
を含むことを特徴とする経路検索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路検索システム及び経路検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、経路検索に係るWEBサイト等において、ユーザに移動経路に係る情報を提供するに際しては、通常、ユーザが設定した出発地及び到着地に応じて、所要時間や料金等の点で適切な経路に係る情報を提供することとなるが、この場合、ユーザは、移動経路に関する検索とは別に、移動目的に応じた検索、例えば、仕事目的である場合の利用するオフィスの検索、買い物目的である場合の利用する店舗の検索、旅行目的である場合の利用する宿泊施設の検索等を、別途行うことが必要となってしまう。
【0003】
そこで、仕事、買い物、旅行等のユーザの移動目的に応じて、移動経路に加えて、目的地となる施設の検索を行い、適切な移動経路のみならず、適切な目的地に係る情報も提供することを可能としたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-269480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザが移動経路及び目的地を決定するに際して重視する可能性のある要素の一つとして、移動経路及び目的地の混雑状況が挙げられる。すなわち、ユーザは、他の条件に大きな差がなければ、空いている移動経路を利用して移動することを好むことが予測され、また、他の条件に大きな差がなければ、空いている目的地を訪れることを好むことが予測される。
【0006】
この点、特許文献1に記載のシステムにおいては、単にユーザの移動目的に応じて、移動経路及び目的地につき検索することができるにとどまり、ユーザが、移動経路及び目的地の混雑状況を考慮した上で適切な移動経路及び目的地を選択することを可能とするものではなかった。
【0007】
本発明の課題は、ユーザが移動経路及び目的地の混雑状況を考慮した上で、適切な移動経路及び目的地を選択することを可能とする経路検索システム及び経路検索方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、経路検索システムにおいて、
少なくともユーザの目的に係る情報と、前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地に係る情報と、を含む検索条件情報を取得する第1取得手段と、
前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出する目的地抽出手段と、
前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地から前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地までの移動経路を検索する経路検索手段と、
少なくとも前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地の混雑率及び前記経路検索手段が検索した前記移動経路における交通機関の混雑率を用いて、前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地と前記経路検索手段が検索した前記移動経路との組み合わせのそれぞれについて、不効用値を算出する第1不効用値算出手段と、
前記目的地抽出手段が抽出した前記目的地と、前記経路検索手段が検索した前記移動経路と、前記第1不効用値算出手段が算出した前記不効用値と、を関連付けて前記ユーザに提示する第1提示手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の経路検索システムにおいて、
前記第1取得手段が取得する前記検索条件情報は、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間に係る情報を含み、
前記第1不効用値算出手段は、少なくとも、
前記目的地の混雑率と、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間と、を用いて算出した目的地不効用値と、
前記移動経路における交通機関の混雑率と、当該交通機関の乗車時間と、を用いて算出した経路不効用値と、
を加算して前記不効用値を算出することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の経路検索システムにおいて、
前記第1不効用値算出手段は、
前記目的地の混雑率と、前記ユーザの前記目的地での滞在希望時間と、を乗じて前記目的地不効用値を算出し、
前記移動経路における交通機関の混雑率と、当該交通機関の乗車時間と、を乗じて前記経路不効用値を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の経路検索システムにおいて、
前記第1不効用値算出手段は、前記目的地不効用値及び/又は前記経路不効用値に、前記ユーザの希望に応じて設定された係数を乗じて重み付けを調整した上で、調整後の前記目的地不効用値と、調整後の前記経路不効用値と、を加算して前記不効用値を算出することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の経路検索システムにおいて、
前記第1不効用値算出手段は、
前記経路検索手段が検索した前記移動経路において交通機関を乗り換える乗換施設の混雑率と、前記乗換施設における乗り換え時の乗換時間と、を用いて算出した乗換不効用値をさらに加算して前記不効用値を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の経路検索システムにおいて、
前記検索条件情報は、前記目的地の料金の上限値、前記移動経路の料金の上限値、前記移動経路の所要時間の上限値及び/又は前記不効用値の上限値に係る情報を含み、前記第1提示手段は、前記目的地、前記移動経路及び前記不効用値の組み合わせのうち、前記上限値に係る情報と合致する組み合わせのみを、前記ユーザに提示することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の経路検索システムにおいて、
前記ユーザの目的地の候補となる施設に係る情報である施設情報を取得する第2取得手段をさらに備え、
前記目的地抽出手段は、前記検索条件情報に含まれるユーザの目的に係る情報と、前記施設情報と、を対照して、前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の経路検索システムにおいて、
前記施設に係るユーザの予約状況に係る情報を、当該施設の管理者に提示する第2提示手段と、
前記予約状況に係る情報の提示を受けた前記管理者による前記施設情報の更新に係る情報を取得する第3取得手段と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の経路検索システムにおいて、
ユーザが利用を希望する目的地及び移動経路に係る情報を取得する第4取得手段と、
少なくとも前記第4取得手段が情報を取得した前記目的地及び前記移動経路の混雑率を用いて、前記第4取得手段が情報を取得した前記目的地及び前記移動経路の組み合わせについて、不効用値を算出する第2不効用値算出手段と、
前記第2不効用値算出手段が算出した不効用値が、所定の閾値を超過しているかを判定する閾値超過判定手段と、
前記閾値超過判定手段が、閾値を超過していると判定した場合に、前記ユーザに通知する通知手段と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、経路検索方法において、
少なくともユーザの目的に係る情報と、前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地に係る情報と、を含む検索条件情報を取得する取得ステップと、
前記ユーザの目的と合致する目的地を抽出する目的地抽出ステップと、
前記ユーザの現在地又は前記ユーザが希望する出発地から前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地までの移動経路を検索する経路検索ステップと、
少なくとも前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地の混雑率及び前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路における交通機関の混雑率を用いて、前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地と前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路との組み合わせのそれぞれについて、不効用値を算出する不効用値算出ステップと、
前記目的地抽出ステップにおいて抽出した前記目的地と、前記経路検索ステップにおいて検索した前記移動経路と、前記不効用値算出ステップにおいて算出した前記不効用値と、を関連付けて前記ユーザに提示する提示ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ユーザが移動経路及び目的地の混雑状況を考慮した上で、適切な移動経路及び目的地を選択することを可能とする経路検索システム及び経路検索方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る経路検索システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る経路検索システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1から図2に基づいて、本発明の実施形態である経路検索システム100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
また、以下においては、一例として、ユーザの目的がオフィスでの仕事であり、目的地がオフィスとなる場合について説明する。なお、この場合のオフィスとは、シェアオフィス等の名称に「オフィス」と付されたものに限られず、ホテルの個室、カフェ等、ユーザが仕事を行うことができる施設を広く含むものとする。
【0021】
[第1 構成の説明]
経路検索システム100は、ユーザの目的に応じて、目的地の抽出及び移動経路の検索を行うと共に、目的地及び移動経路の混雑率を用いて算出した不効用値に係る情報をユーザに提供するためのシステムであり、図1に示すように、本システムを管理・運営する特定の事業者が保有する各種サーバ、すなわち、データ分析サーバ1、車両荷重データサーバ2、列車運行データサーバ3、列車ダイヤデータサーバ4及び施設データサーバ5と、列車に設置された車両荷重データ取得部6と、を備えて構成され、各装置の間は、図1に示すように通信ネットワークNを介して接続されている。
【0022】
また、経路検索システム100は、データ分析サーバ1が、通信ネットワークNを介して、経路検索システム100を利用して情報の提供を受ける各ユーザが所持するユーザ端末7と接続され、データ分析サーバ1及び施設データサーバ5が、通信ネットワークNを介して、経路検索システム100によりユーザに目的地として情報が提供される施設であるオフィスを管理する管理者が所持する施設管理者端末8と接続されている。
【0023】
なお、上記各サーバは、必ずしも別個に設けられていることを要せず、単一のPC(Personal Computer)、WS(Work Station)等の情報機器が、これら複数のサーバとしての機能を兼ねていてもよい。
また、反対に、上記各サーバは、必ずしも単一のPC、WS等の情報機器によって実現されていることを要せず、複数台のPC、WS等の情報機器が通信ネットワークNを介して接続されることで、複数台の情報機器により、各サーバとしての機能が実現されていてもよい。
【0024】
[1 データ分析サーバ]
データ分析サーバ1は、例えば、経路検索システム100を管理・運営する企業等が保有するPC、WS等の情報機器であり、後述のように、他のサーバ、ユーザ端末7等から取得した情報を基に、ユーザの目的地となるオフィスの抽出、移動経路の検索、不効用値の算出等の処理を行う。なお、データ分析サーバ1の保有者は、本システムの機能を実現することができれば特に限定されるものではない。この点は、本システムを構成する他のサーバについても同様である。
データ分析サーバ1は、図1に示すように、例えば、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備えて構成されている。
【0025】
[(1) 制御部]
制御部11は、データ分析サーバ1の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部12に記憶されたプログラムデータとCPUとの協働により、データ分析サーバ1の各部を統括制御する。
【0026】
[(2) 記憶部]
記憶部12は、データ分析サーバ1の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等のデータ分析サーバ1の運用に必要となるデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
【0027】
[(3) 通信部]
通信部13は、データ分析サーバ1と、経路検索システム100を構成する他のサーバ、ユーザ端末7及び施設管理者端末8等との間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、制御部11の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0028】
[2 車両荷重データサーバ]
車両荷重データサーバ2は、例えば、経路検索システム100を管理・運営する企業等が保有するPC、WS等の情報機器であり、列車に設置された車両荷重データ取得部6から、列車に乗車していた乗客の重量の合計に係る情報である車両荷重データD1を取得し、蓄積した上で、データ分析サーバ1へと送信する。
車両荷重データサーバ2は、図1に示すように、データ分析サーバ1と同様、例えば、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えて構成されている。
【0029】
制御部21及び通信部23の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部22は、データ分析サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、列車に設置された車両荷重データ取得部6により取得された車両荷重データD1が記憶される。
【0030】
車両荷重データサーバ2においては、通信部23によって、列車に設置された車両荷重データ取得部6から車両荷重データD1を受信する度に、制御部21が、取得したデータを、列車番号及びデータが取得された区間に係る情報と紐付けて、記憶部22に記憶させる。すなわち、車両荷重データサーバ2の記憶部22には、列車が運行される度に、各列車につき、区間毎に、乗車している乗客の重量の合計に係る情報が蓄積されていくこととなる。
【0031】
[3 列車運行データサーバ]
列車運行データサーバ3は、例えば、経路検索システム100を管理・運営する企業等が保有するPC、WS等の情報機器であり、外部の所定のシステムと通信の上、運行中の各路線の各列車についての遅延時間に係るデータである遅延時間データD2を取得し、蓄積した上で、データ分析サーバ1へと送信する。
列車運行データサーバ3は、図1に示すように、データ分析サーバ1と同様、例えば、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を備えて構成されている。
【0032】
制御部31及び通信部33の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部32は、データ分析サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、遅延時間データD2が記憶される。
【0033】
[4 列車ダイヤデータサーバ]
列車ダイヤデータサーバ4は、例えば、経路検索システム100を管理・運営する企業等が保有するPC、WS等の情報機器であり、外部の所定のシステムと通信の上、運行中の各路線についての列車の運転計画(ダイヤ)に係るデータである列車ダイヤデータD3を取得し、蓄積した上で、データ分析サーバ1へと送信する。
列車ダイヤデータサーバ4は、図1に示すように、データ分析サーバ1と同様、例えば、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、を備えて構成されている。
【0034】
制御部41及び通信部43の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部42は、データ分析サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、列車ダイヤデータD3が記憶される。
【0035】
[5 施設データサーバ]
施設データサーバ5は、例えば、経路検索システム100を管理・運営する企業等が保有するPC、WS等の情報機器であり、施設管理者端末8から、経路検索システム100によって目的地としてユーザに情報が提供される施設の候補であるオフィスの所在地や、料金等の利用条件についての情報を含む当該オフィスに係る情報であるオフィスデータD4と、当該オフィスのリアルタイムな利用状況(利用者数)や、時間帯別の予約人数等の情報を含む当該施設の利用状況に係る情報であるオフィス利用状況データD5と、を取得し、蓄積した上で、データ分析サーバ1へと送信する。
施設データサーバ5は、図1に示すように、データ分析サーバ1と同様、例えば、制御部51と、記憶部52と、通信部53と、を備えて構成されている。
【0036】
オフィスデータD4及びオフィス利用状況データD5は、例えば、施設管理者端末8における施設管理者による入力に従って、通信部53により通信ネットワークNを介して、施設管理者端末8から取得するようにすればよい。また、オフィス利用状況データD5については、オフィス管理者が使用する予約システム等と連動して、施設データサーバ5において、情報をリアルタイムに自動取得するようにしてもよい。
【0037】
制御部51及び通信部53の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部52は、データ分析サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、オフィスデータD4及びオフィス利用状況データD5が記憶される。
【0038】
[6 車両荷重データ取得部]
車両荷重データ取得部6は、列車の各車両に設置された重量センサを含み、列車の乗客が乗車していない状態の重量と、乗客が乗車した状態の重量との差、すなわち列車に乗車していた乗客の重量の合計に係る情報である車両荷重データD1を取得の上、取得した情報を、通信ネットワークNを介して、車両荷重データサーバ2へと送信する。
なお、車両荷重データ取得部6は、列車の車両(号車)ごとに、乗客が乗車していない状態の重量と、乗客が乗車した状態の重量との差を算出して、列車の車両(号車)ごとに分けて車両荷重データD1を取得するようにしてもよい。
【0039】
各列車に設置された車両荷重データ取得部6は、これが設置された列車の運行中、走行中の区間毎、すなわち、各列車の鉄道路線における隣り合う停車駅と停車駅との間の部分毎に、列車の重量に係るデータを取得の上、取得したデータから、予め記憶された当該列車の乗客が乗車していない状態での重量を減ずることで、区間毎の列車に乗車していた乗客の重量の合計に係るデータ(車両荷重データD1)を取得し、取得したデータを、当該列車の列車番号に係る情報及び当該データが取得された区間に係る情報と紐付けて、通信ネットワークNを介して車両荷重データサーバ2へと送信する。
【0040】
[7 ユーザ端末]
ユーザ端末7は、例えば、経路検索システム100を利用して情報の提供を受けるユーザが所持するスマートフォン、タブレット端末等の情報機器であり、後述のように、ユーザによる検索条件データD6の入力や、検索結果データD7に係る検索結果のユーザへの表示等に用いられる。
ユーザ端末7は、図1に示すように、例えば、データ分析サーバ1と同様に、制御部71と、記憶部72と、通信部73と、を備えると共に、さらに、表示部74と、操作部75と、を備えて構成されている。
【0041】
制御部71、記憶部72及び通信部73の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11、記憶部12及び通信部13と変わるところはない。
【0042】
表示部74は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部71から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。
【0043】
操作部75は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、ユーザ端末7を使用するユーザからの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部71へと出力する。操作部75は、例えば、表示部74と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよく、ユーザからの操作入力を受け付けることができるものであれば特に限定されない。
【0044】
[8 施設管理者端末]
施設管理者端末8は、例えば、経路検索システム100によって目的地としてユーザに情報が提供される施設の候補であるオフィスの管理者が所持するPC等の情報機器であり、オフィスデータD4及びオフィス利用状況データD5の入力等に用いられる。
施設管理者端末8は、図1に示すように、例えば、ユーザ端末7と同様に、制御部81と、記憶部82と、通信部83と、表示部84と、操作部85と、を備えて構成されている。
【0045】
[9 通信ネットワーク]
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等であり、図1に示すように、経路検索システム100を構成する各装置、ユーザ端末7及び施設管理者端末8の間を接続する。
通信ネットワークNとしては、上記のように経路検索システム100を構成する各装置、ユーザ端末7及び施設管理者端末8の間を繋ぎ、これらの間でデータの送受信を行うことが可能なものであれば特に限定されない。
【0046】
[第2 動作の説明]
以下、本実施形態に係る経路検索システム100の動作について、図2のフローチャートに従って説明する。
経路検索システム100の動作は、大きく分けてステップS1からステップS8の8つの工程からなる。
【0047】
[1 ステップS1 検索条件データの取得]
ユーザは、本システムを利用して情報の提供を受けることを希望する場合、まず、ユーザ端末7の操作部75を用いて、ユーザが希望する検索条件に係るデータである検索条件データD6を入力する(ステップS1-1)。
【0048】
検索条件データD6は、例えば、ユーザの目的に係る情報と、ユーザの現在地又は出発希望地に係る情報と、現在時刻又はユーザの出発希望時刻に係る情報と、検索時の優先順位に係る情報(例えば、混雑、料金、時間等のうちいずれを重視するか)と、を含むデータである。
【0049】
ユーザの目的に係る情報は、例えば、オフィスの利用時間(滞在希望時間)に係る情報、希望するオフィスの種類に係る情報、オフィスの所在地の範囲に係る情報等を含む、ユーザによる移動目的に係る情報である。
オフィスの利用時間に係る情報は、例えば、利用開始時刻及び利用終了時刻によって具体的に指定してもよいし、特定の時刻以降に特定の時間(12時以降に3時間等)といった形で抽象的に指定してもよい。
希望するオフィスの種類に係る情報は、例えば、ホテル等の単独で仕事を行うことができる場所又はコワーキングスペース等の共同で利用する場所のいずれを希望するかといった形で指定すればよい。
オフィスの所在地の範囲に係る情報は、例えば市区町村等によって指定すればよい。また、例えばユーザの現在地又は出発希望地から1時間以内といった形で、現在地又は出発希望地からの移動に要する所要時間によって指定してもよい。なお、オフィスの所在地の範囲を指定せず、地域を問わずにオフィスが抽出されるようにすることも可能である。
【0050】
例えば、ユーザが、11月10日13時から15時、コワーキングスペース、新宿区と入力したとすれば、11月10日13時から15時に、新宿区内のコワーキングスペースで仕事をすることがユーザの目的に係る情報として入力されたこととなる。
【0051】
なお、検索条件データD6は、さらに、目的地となるオフィスの利用料金の上限値、オフィスまでの移動経路において掛かる料金の上限値、オフィスまでの移動経路における所要時間の上限値、及び/又は後述の不効用値の上限値に係る情報を含んでもよい。
【0052】
ユーザによって検索条件データD6が入力されると、制御部71は、入力された検索条件データD6を、通信部73から通信ネットワークNを介してデータ分析サーバ1へと送信する(ステップS1-2)。これによって、通信部13によってユーザ端末7から送信されたデータを受信することで、データ分析サーバ1は検索条件データD6を取得することができる。
【0053】
[2 ステップS2 オフィスの抽出]
ユーザ端末7から検索条件データD6を取得すると、続いてデータ分析サーバ1は、施設データサーバ5から、ユーザの目的地の候補として、検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報と合致するオフィスに関する情報を取得する。
【0054】
具体的には、まず、データ分析サーバ1において、制御部11が、通信部13から通信ネットワークを介して、検索条件データD6を施設データサーバ5へと送信する(ステップS2-1)。
検索条件データD6を受信した施設データサーバ5においては、制御部51が、受信した検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報と、記憶部52に記憶されたオフィスデータD4と、を対照して、受信した検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報と合致するデータを、記憶部52に記憶されたオフィスデータD4から抽出する(ステップS2-2)。
抽出が完了すると、施設データサーバ5においては、制御部51が、抽出したオフィスデータD4を通信部53から通信ネットワークNを介してデータ分析サーバ1へと送信する(ステップS2-3)。これによって、通信部13によって施設データサーバ5から送信された情報を受信することで、データ分析サーバ1は、検索条件データD6と合致するオフィスに関するデータを取得することができる。
【0055】
なお、ユーザの目的地の候補となるオフィスとして、移動手段を兼ねた列車を抽出するようにすることも可能である。
すなわち、確実に座ることができ、かつ一定のスペースが確保される指定席の列車においては、ユーザは十分にデスクワークを行うことができる。そこで、このような指定席の列車自体を、検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報に応じて、目的地として抽出するようにしてもよい。
この場合、後述のステップS3の移動経路の検索においては、このような指定席の列車の乗車駅までの移動経路を検索し、ステップS5のオフィスの混雑率の予測においては、このような指定席の列車の混雑率を予測し、ステップS6の不効用値の算出においては、このような指定席の列車を目的地として不効用値を算出することとなる。
【0056】
[3 ステップS3 移動経路の検索]
施設データサーバ5から検索条件データD6に合致するオフィスデータD4を取得すると、続いてデータ分析サーバ1は、オフィスデータD4を取得したオフィスまでの移動経路を検索する。
【0057】
具体的には、まず、データ分析サーバ1は、列車ダイヤデータサーバ4から、記憶部42に記憶された列車ダイヤデータD3を取得する。具体的には、データ分析サーバ1から送信された所定の要求を通信部43によって受信した列車ダイヤデータサーバ4において、制御部41が、記憶部42に記憶された列車ダイヤデータD3を一括して通信部43から通信ネットワークNを介してデータ分析サーバ1へと送信するようにすればよい(ステップS3-1)。これによって、通信部13によって列車ダイヤデータサーバ4から送信された情報を受信することで、データ分析サーバ1は、列車ダイヤデータD3を一括して取得することができる。
【0058】
データ分析サーバ1においては、列車ダイヤデータサーバ4から列車ダイヤデータD3を取得すると、制御部11が、適宜データ形式をデータ分析サーバ1において使用可能なデータ形式に整形する(ステップS3-2)。整形後のデータ形式は特に問わず、後述の処理に使用し易い形式を適宜用いればよい。
【0059】
続いて、データ分析サーバ1は、列車運行データサーバ3から、記憶部32に記憶された遅延時間データD2を取得する。具体的には、データ分析サーバ1から送信された所定の要求を通信部33によって受信した列車運行データサーバ3において、制御部31が、記憶部32に記憶された遅延時間データD2を一括して通信部33から通信ネットワークNを介してデータ分析サーバ1へと送信するようにすればよい(ステップS3-3)。これによって、通信部13によって列車運行データサーバ3から送信された情報を受信することで、データ分析サーバ1は、遅延時間データD2を一括して取得することができる。
【0060】
続いて、データ分析サーバ1においては、制御部11が、ステップS3-2で成形した列車ダイヤデータD3にステップS3-3で取得した遅延時間データD2を反映させる(ステップS3-4)。具体的には、列車ダイヤデータD3に係る運行中の列車につき、遅延時間データD2に遅延時間に係る情報が含まれていた場合に、当該遅延時間を付加して各駅への到着時刻に係るデータを変更することで、列車ダイヤデータD3に遅延時間データD2を反映させればよい。
【0061】
続いて、データ分析サーバ1においては、制御部11が、検索条件データD6に係るユーザの現在地又は出発希望地から、ステップS2で抽出された検索条件データD6と合致するオフィスデータD4に係るオフィスまでの経路の検索を行い、検索条件データD6に係るユーザの現在地又は出発希望地から、検索条件データD6と合致するオフィスデータD4に係るオフィスまでの移動経路に係る情報を取得する(ステップS3-5)。
【0062】
具体的には、ステップS3-4で遅延時間データD2が反映された列車ダイヤデータD3を基に、検索条件データD6に係るユーザの現在地又は出発希望地から、検索条件データD6に係る現在時刻又はユーザの出発希望時刻以降に出発し、検索条件データD6に係るオフィスの利用開始時刻までに各オフィスに到着できる移動経路を検索すればよい。なお、経路検索の具体的なアルゴリズムについては、公知の種々のものを利用できることから、詳細な説明は省略する。
【0063】
また、制御部11は、自ら移動経路の検索を行うことなく、通信部13から通信ネットワークNを介して経路検索に係る所定のWEBサイトにアクセスして、検索条件データD6に係るユーザの現在地又は出発希望地から、検索条件データD6に係る現在時刻又はユーザの出発希望時刻以降に出発し、検索条件データD6に係るオフィスの利用開始時刻までに各オフィスに到着できる経路に係る情報を取得するようにしてもよい。
この場合も移動経路の検索は制御部11によるWEBサイトへの情報の送信等に従ってなされることから、制御部11が、本発明における経路検索手段として機能することとなる。
【0064】
[4 ステップS4 列車の混雑率の予測]
続いて、データ分析サーバ1においては、ステップS3で情報を取得した各オフィスまでの各移動経路について、利用する各列車の混雑率、すなわち、乗車人数を所定の定員の数で除算した値の予測を行う。
【0065】
予測方法は特に限定されないが、例えば、列車の混雑率は、列車の乗車区間に加えて、曜日や時刻が同一であれば、同一の傾向となることが予測されることから、データ分析サーバ1において、予め記憶部12に、各路線の各区間につき、過去の曜日及び時刻毎の混雑率に係るデータを記憶の上、制御部11が、当該データと、各移動経路における利用路線、利用日及び利用時刻に係る情報と、を対比して、混雑率を予測すればよい。この場合、例えば、各移動経路における各利用列車と同一の列車の同一の区間に係る過去の同一の曜日、同一の時刻における混雑率に係るデータの平均値を算出することによって、各移動経路において利用する各列車の混雑率を予測すればよい。
【0066】
また、例えば、車両荷重データサーバ2の記憶部22に記憶されている車両荷重データD1を基に、混雑率を予測してもよい。
すなわち、上記のように、車両荷重データD1は、区間毎の列車に乗車していた乗客の重量の合計に係るデータであることから、データ分析サーバ1において、車両荷重データD1のうち、各移動経路における各利用列車の各利用区間に係る最新のデータを、通信部13によって通信ネットワークNを介して車両荷重データサーバ2から取得し、取得した車両荷重データD1に係る重量を、乗客一人当たりの重量として予め定めた所定の重量で除算する。
これによって当該データの取得時点での乗車人数を割り出すことができることから、これを基にデータ取得時点の混雑率を推定した上で、データ取得時点からの時間経過による変動を適宜加味することで、ユーザによる利用時点における混雑率を予測する。
【0067】
また、例えば、列車の各車両にカメラを設置した上で、当該カメラによって撮影された画像を解析して乗車人数を推定するようにしてもよいし、列車の各車両にビーコンを設置した上で、当該ビーコンから発せられた電波等を受信した携帯端末の数から乗車人数を推定するようにしてもよい。
【0068】
なお、列車の混雑率の予測は、ユーザが同一の列車を利用することとなる区間全体について一括して行ってもよいし、駅間の区間毎に個別に行ってもよい。
例えば、ある移動経路において、ユーザがX列車にA駅からB駅まで乗車することとなる場合において、A駅-B駅間にC駅及びD駅がある場合であれば、前者の予測方法を用いる場合、A駅-B駅間について、例えば各駅間の区間の混雑率の平均値を採るようにして、混雑率を一律に予測する。
これに対し、後者の予測方法を用いる場合、A駅-C駅間、C駅-D駅間、D駅-B駅間について、個別に混雑率を予測することとなる。
【0069】
[5 ステップS5 オフィスの混雑率の予測]
続いて、データ分析サーバ1においては、ステップS2で抽出した検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報と合致する各オフィスについての混雑率、すなわち、オフィスの利用人数を所定の定員の数で除算した値の予測を行う。
【0070】
予測方法は特に限定されないが、例えば、オフィス利用状況データD5が、オフィスのリアルタイムな利用状況に係る情報、すなわちデータの取得時点の各オフィスの利用人数に係る情報を含む場合であれば、当該データを基に、データの取得時点のオフィスの利用人数を所定の定員の数で除算してデータ取得時点の混雑率を推定した上で、データ取得時点からの時間経過による変動を適宜加味することで、ユーザによるオフィスの利用時点での混雑率を予測すればよい。
【0071】
また、例えば、オフィス利用状況データD5が、オフィスの時間帯別の予約人数に係るデータを含む場合であれば、当該データを基に、ユーザによるオフィスの利用時点でのオフィスの利用人数を予測の上、これを所定の定員の数で除算して、オフィスの利用時点での混雑率を予測すればよい。
【0072】
[6 ステップS6 不効用値の算出]
続いて、データ分析サーバ1においては、制御部11が、ステップS2で抽出された目的地となるオフィスとステップS3で検索された移動経路との組み合わせ毎に、不効用値の算出を行う。
なお、本発明において「不効用値」とは、少なくとも目的地の混雑率及び移動経路における交通機関の混雑率の両者を用いて算出した、ユーザが目的を達成するために移動経路及び目的地において被る負担・不利益の度合いを示すための指標となる数値のことを広く指すものであり、必ずしも、一般的に用いられている「不効用」という用語の意義や、学術上の「不効用」という用語の定義等に合致するものに限定されない。
【0073】
具体的には、ステップS2で抽出された目的地となるオフィスとステップS3で検索された移動経路との各組み合わせについて、目的地となるオフィスの混雑率に目的地となるオフィスでの滞在希望時間を乗じた値(このようにして算出した目的地に係る不効用値を、以下、「目的地不効用値」という。)に、当該目的地への移動経路における各乗車列車の混雑率に乗車時間を乗じたもの(このようにして算出した移動経路に係る不効用値を、以下、「経路不効用値」という。)を加算することで、各経路の不効用値を算出する。
【0074】
なお、ステップS4で述べたように、列車の混雑率の予測は、ユーザが同一の列車を利用することとなる区間全体について一括して行ってもよいし、駅間の区間毎に個別に行ってもよい。これに対応して、列車の混雑率の予測をユーザが同一の列車を利用することとなる区間全体について一括して行う場合においては、経路不効用値の算出も、ユーザが同一の列車を利用することとなる区間全体について一括して行うこととなり、列車の混雑率の予測を駅間の区間毎に個別に行う場合においては、経路不効用値の算出も、駅間の区間毎に個別に行うこととなる。
【0075】
前者の場合、ユーザが同一の列車を利用することとなる区間全体について、当該区間における混雑率の平均と当該区間全体の乗車時間とを乗じた上で、乗車する列車毎に求めた値を加算することで、経路不効用値を算出することとなる。段落0075以下の算出例においては、この場合について説明している。
後者の場合、駅間の区間毎に個別に、当該区間における混雑率と当該区間の乗車時間とを乗じた上で、駅間の区間毎に個別に求めた値を加算することで、経路不効用値を算出することとなる。
【0076】
例えば、ある移動経路において、ユーザがX列車にA駅からB駅まで乗車し、Y列車にB駅からC駅まで乗車することとなる場合において、A駅-B駅間にD駅があり、B駅-C駅間にE駅がある場合を例とすると、前者の算出方法を用いる場合、A駅-B駅間のX列車の混雑率の平均とA駅-B駅間の乗車時間とを乗じた値と、Y列車のB駅-C駅間の混雑率の平均とB駅-C駅間の乗車時間とを乗じた値と、を加算して経路不効用値を算出する。
これに対し、後者の算出方法を用いる場合、X列車のA駅-D駅間の混雑率とA駅-D駅間の乗車時間とを乗じた値と、X列車のD駅-B駅間の混雑率とD駅-B駅間の乗車時間とを乗じた値と、Y列車のB駅-E駅間の混雑率とB駅-E駅間の乗車時間とを乗じた値と、Y列車のE駅-C駅間の混雑率とE駅-C駅間の乗車時間とを乗じた値と、を個別に加算して経路不効用値を算出することとなる。
【0077】
以下、具体的算出例について説明する。
例えば、ユーザが4時間オフィスを利用することを希望する場合において、ユーザの出発地がa駅であり、検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報と合致するオフィスとして、X駅を最寄り駅とするオフィスAと、Y駅を最寄り駅とするオフィスBと、Z駅を最寄り駅とするオフィスCと、が抽出された場合に、各オフィスの混雑率及びa駅から各オフィスの最寄り駅までの移動経路及び混雑率が以下の通りであったとする。
【0078】
(オフィスA)
オフィス混雑率:70%
a駅-X駅間経路:a駅-i駅-j駅-X駅
a駅-i駅:混雑率100%、乗車時間20分
i駅-j駅:混雑率150%、乗車時間30分
j駅-X駅:混雑率80%、乗車時間20分
(オフィスB)
オフィス混雑率:50%
a駅-Y駅間経路:a駅-i駅-Y駅
a駅-i駅:混雑率100%、乗車時間20分
i駅-Y駅:混雑率60%、乗車時間40分
(オフィスC)
オフィス混雑率:90%
a駅-Z駅間経路:a駅-i駅-Z駅
a駅-i駅:混雑率100%、乗車時間20分
i駅-Z駅:混雑率60%、乗車時間40分
【0079】
上記の場合、各オフィスを利用する場合の不効用値は、以下のように算出される。
(オフィスA)
0.7×240分+1×20分+1.5×30分+0.8×20分=249
(オフィスB)
0.5×240分+1×20分+0.6×40分=164
(オフィスC)
0.9×240分+1×20分+0.6×40分=260
【0080】
なお、列車に遅延が発生している場合、各列車の乗車時間は、遅延による乗車時間の延長を考慮して決定することが好ましい。
この場合、列車運行データサーバ3から取得した遅延時間データD2から列車の遅延予測時間、すなわち列車の遅延の影響によって平常時と比較して乗車時間が延長される場合における当該延長分の時間を予測の上、通常時の乗車時間(出発駅の発車時刻から到着駅への到着時刻の間の時間)に、上記遅延予測時間を加算して、各列車の乗車時間を決定することとなる。
【0081】
[7 ステップS7:ユーザへの提示]
不効用値の算出が完了すると、続いて、データ分析サーバ1においては、制御部11が、検索結果に係る情報、すなわち、ステップS2で抽出した各オフィスに関する情報に、各オフィスに対応するステップS3で検索した移動経路に関する情報及びステップS6で算出した不効用値に関する情報を関連付けた情報(検索結果データD7)を、通信部13から通信ネットワークNを介して、ステップS1-2において検索条件データD6を送信したユーザ端末7へと送信する(ステップS7-1)。
すなわち、後述のユーザ端末7における表示は、データ分析サーバ1から送信された検索結果データD7に基いてなされることから、データ分析サーバ1の通信部13が、本発明における第1提示手段として機能することとなる。
【0082】
この際には、制御部11は、検索条件データD6に含まれる検索時の優先順位に係る情報に従って、ユーザ端末7における表示順を決定の上、当該表示順に係る情報も併せてユーザ端末7へと送信する。
表示順は、例えば、検索条件データD6において混雑重視とされていれば、不効用値が低い順、検索条件データD6において料金重視とされていればオフィスの利用及び移動経路における交通費の総額が安い順、検索条件データD6において時間重視とされていればオフィスまでの移動経路における所要時間の短い順に決定すればよい。
【0083】
また、ステップS1で取得した検索条件データD6が、目的地となるオフィスの利用料金の上限値、オフィスまでの移動経路において掛かる料金の上限値、オフィスまでの移動経路における所要時間の上限値及び/又は不効用値の上限値に係る情報を含む場合には、制御部11は、ステップS2で抽出したオフィス、ステップS3で検索した移動経路及びステップS6で算出した不効用値の組み合わせのうち、上限値に合致する組み合わせのみを抽出の上、通信部13から通信ネットワークNを介して、ユーザ端末7へと送信することとなる。
例えば、オフィスまでの移動経路における所要時間の上限値が1時間と定められていた場合であれば、ステップS2で抽出したオフィス、ステップS3で検索した移動経路及びステップS6で算出した不効用値の組み合わせのうち、ステップS3で検索した移動経路に係る所要時間が1時間以内となっている組み合わせのみを抽出の上、ユーザ端末7へと送信することとなる。
【0084】
通信部73によって、データ分析サーバ1から送信された検索結果データD7を受信したユーザ端末7においては、制御部71が、ステップS2で抽出された各オフィスに関する情報に、各オフィスに対応するステップS3で検索された移動経路に関する情報及びステップS6で算出された不効用値に関する情報を関連付けて、表示部74に表示させる(ステップS7-2)。
【0085】
この際には、制御部71は、データ分析サーバ1から受信した表示順に係る情報に従って、データ分析サーバ1から受信した情報を、優先度の高い順に表示させる。
すなわち、例えば、検索条件データD6において混雑重視とされていれば不効用値が低い順、検索条件データD6において料金重視とされていればオフィスの利用及び移動経路における交通費の総額が安い順、検索条件データD6において時間重視とされていればオフィスまでの移動経路における所要時間の短い順に表示することとなる。
また、
【0086】
[8 ステップS8 予約・決済]
表示部74に検索結果に係る情報が表示されると、ユーザは、操作部75を用いて、利用を希望するオフィスを選択する。利用を希望するオフィスの選択がなされると、制御部71は、選択されたオフィスに係る情報を、直接、又は経路検索システム100のデータ分析サーバ1を介して、外部の所定のシステムに送信し、当該システムにおいて、オフィスの予約及び決済の処理がなされることとなる。
予約及び決済の処理については、既存の公知のシステムにおける処理を利用すればよいことから、詳細な説明は省略する。
【0087】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係る経路検索システム100の効果について説明する。
【0088】
本実施形態に係る経路検索システム100によれば、データ分析サーバ1において、ユーザの目的に係る情報と、ユーザの現在地又はユーザが希望する出発地に係る情報と、を含む検索条件データD6を通信部13によって取得の上、制御部11が、ユーザの目的と合致するオフィスの抽出、ユーザの現在地又はユーザが希望する出発地から抽出したオフィスまでの移動経路の検索、及び抽出したオフィスの混雑率及び検索した移動経路の混雑率の両者を用いた目的地及び移動経路の組み合わせのそれぞれについての不効用値の算出を行い、目的地、移動経路及び不効用値を関連付けて、通信部13からユーザ端末7へと送信し、ユーザに提示する。
これによって、ユーザは、オフィスに係る情報及び移動経路に係る情報と共に、オフィスの混雑率及び移動経路の混雑率の両者を用いて算出された不効用値に係る情報を取得できることから、移動経路及び目的地であるオフィスの両者の混雑状況を考慮した上で、適切な移動経路及びオフィスを選択することが可能となる。
【0089】
また、データ分析サーバ1において、制御部11が、オフィスの混雑率と、ユーザのオフィスでの滞在希望時間と、を乗じて算出した目的地不効用値と、移動経路における交通機関の混雑率と、交通機関の乗車時間と、を乗じて算出した経路不効用値と、を加算してユーザに提示する不効用値を算出することで、ユーザは、混雑率のみならず、オフィスでの滞在希望時間及び移動経路における交通機関の乗車時間も考慮した上で、適切な移動経路及びオフィスを選択することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る経路検索システム100によれば、ユーザは、自ら目的地となるオフィスを検索せずとも、ユーザ端末7の操作部75を用いて検索条件データD6の入力を行うのみで、これと合致する目的地に係る情報の提供を受けることができる。したがって、ユーザを、目的地を自ら検索する煩わしさから解放することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る経路検索システム100によれば、ユーザが混雑していない交通機関の利用を選択し易くなることから、交通機関の混雑緩和を図ることができる。この点は、ユーザのみならず、ラッシュ時の混雑緩和が喫緊の課題となっている鉄道事業者等の交通機関の運営事業者にとっても大きなメリットとなる。
【0092】
また、本実施形態に係る経路検索システム100によれば、ユーザが目的地として、混雑していないオフィスの利用を選択し易くなることから、オフィスの稼働率の平準化を図ることができる。この点は、ユーザの目的地となるオフィス等の施設の管理者にとって大きなメリットとなる。
【0093】
[第4 変形例]
次に、本実施形態に係る経路検索システム100の変形例について説明する。
【0094】
[1 変形例1:目的の変更]
上記においては、一例として、ユーザの目的がオフィスでの仕事であり、目的地としてオフィスを抽出する場合について説明したが、本発明におけるユーザの目的地となる施設はオフィスに限られず、特定の施設でなくとも同種の施設であればユーザが目的を達成できるものであれば、広く本発明の目的地とすることが可能である。
【0095】
例えば、ユーザの目的が店舗での買い物である場合に、混雑していない店舗で買い物をすることを可能とするため、施設データサーバ5において、店舗の所在地や利用条件についての情報を含む当該店舗に係る情報である店舗データ及びその利用状況に係る情報である店舗利用状況データを記憶の上、当該データを用いて、店舗の混雑率とユーザの店舗での滞在希望時間とを乗じて目的地不効用値を算出し、店舗までの移動経路における交通機関の混雑率と交通機関の乗車時間とを乗じて経路不効用値を算出し、これらを加算してユーザに提示する不効用値を算出の上、これをユーザの目的と合致する店舗に係る情報及び各店舗までの移動経路に係る情報と関連付けてユーザに提示するようにしてもよい。
【0096】
また、例えば、ユーザの目的が映画鑑賞である場合に、混雑していない映画館で映画を鑑賞することを可能とするため、施設データサーバ5において、映画館の所在地や利用条件についての情報を含む当該映画館に係る情報である映画館データ及びその利用状況に係る情報である映画館利用状況データを記憶の上、当該データを用いて、映画館の混雑率とユーザの映画館での滞在希望時間(ユーザが鑑賞することを希望する映画の上映時間)とを乗じて目的地不効用値を算出し、映画館までの移動経路における交通機関の混雑率と交通機関の乗車時間とを乗じて経路不効用値を算出し、これらを加算してユーザに提示する不効用値を算出の上、これをユーザの目的と合致する映画館に係る情報及び各映画館までの移動経路に係る情報と関連付けてユーザに提示するようにしてもよい。
【0097】
また、例えば、ユーザが混雑していないホテル・旅館等の宿泊施設に宿泊することを可能とするため、施設データサーバ5において、ホテル・旅館等の宿泊施設の所在地や利用条件についての情報を含む当該宿泊施設に係る情報である宿泊施設データ及びその利用状況に係る情報である宿泊施設利用状況データを記憶の上、当該データを用いて、宿泊施設の混雑率とユーザの宿泊施設での滞在希望時間(チェックインからチェックアウトまでの時間)とを乗じて目的地不効用値を算出し、宿泊施設までの移動経路における交通機関の混雑率と交通機関の乗車時間とを乗じて経路不効用値を算出し、これらを加算してユーザに提示する不効用値を算出の上、これをユーザの目的と合致する宿泊施設に係る情報及び各宿泊施設までの移動経路に係る情報と関連付けてユーザに提示するようにしてもよい。
【0098】
また、ユーザの目的の種類は、一種類に限られず、複数種類の中からユーザが選択するようにしてもよい。
この場合、例えば、上記で例示したオフィスでの仕事、店舗での買い物、映画館での映画鑑賞、ホテル・旅館等の宿泊施設への宿泊等の中からいずれを目的とするかを、ステップS1においてユーザが検索条件データD6に含まれるユーザの目的に係る情報として入力することで、ステップS2において、選択されたユーザの目的に対応した施設の抽出がなされることとなる。
【0099】
[2 変形例2:重み付けの変更]
上記においては、不効用値の算出を、目的地となるオフィスの混雑率に目的地となるオフィスでの滞在希望時間を乗じて算出した目的地不効用値と、当該目的地への移動経路における各乗車列車の混雑率に乗車時間を乗じて算出した経路不効用値と、そのまま加算することで行う場合について説明したが、目的地不効用値及び/又は経路不効用値に、ユーザの希望に応じて設定された係数を乗ずることで、これらの重み付けを調整するようにしてもよい。
【0100】
具体的には、まず、ユーザが、ステップS1-1における検索条件データD6の入力時に、目的地、移動経路のいずれを重視するかに係る情報を入力する。例えば、ユーザ端末7の表示部74に、「目的地重視」、「目的地やや重視」、「標準」、「移動経路やや重視」、「移動経路重視」等の選択肢が表示されるようにして、ユーザが操作部75を用いてこれらの中から希望する選択肢を選択するようにする。
【0101】
その上で、検索条件データD6として上記情報を取得したデータ分析サーバ1において、ステップS6における不効用値の算出時に、ユーザが選択した選択肢に対応して設定され、予め記憶部12に記憶された所定の係数を乗ずることで、目的地不効用値と経路不効用値との重み付けを調整の上、調整後の目的地不効用値と、調整後の経路不効用値と、を加算してユーザに提示する不効用値を算出する。
【0102】
例えば、ユーザが「目的地重視」を選択した場合には目的地不効用値に1.5を乗じ、ユーザが「目的地やや重視」を重視した場合には目的地不効用値に1.2を乗じ、ユーザが「標準」を選択した場合には目的地不効用値、経路不効用値のいずれにも係数を乗ぜず、ユーザが「移動経路やや重視」を重視した場合には経路不効用値に1.2を乗じ、ユーザが「経路重視」を選択した場合には経路不効用値に1.5を乗じた上で、これらを加算して不効用値を算出するようにする。
【0103】
勿論、ユーザに用意する選択肢や、具体的に乗ずる係数は上記のものに限られず、システムの利用目的等に応じて適宜設定すればよい。また、重み付けの調整は、目的地不効用値及び経路不効用値の両者に計数を乗ずることで行ってもよいし、目的地不効用値又は経路不効用値のいずれかにのみ係数を乗ずることによって行ってもよい。
【0104】
[3 変形例3:乗換施設の不効用値の考慮]
上記においては、不効用値の算出を、目的地となるオフィスの混雑率に目的地となるオフィスでの滞在希望時間を乗じて算出した目的地不効用値と、当該目的地への移動経路における各乗車列車の混雑率に乗車時間を乗じて算出した経路不効用値と、を加算することで行う場合について説明した。
【0105】
不効用値の算出において、例えば上記のようにして、目的地及び移動経路の両者の混雑率を考慮することは必須であるが、これら二つのみである必要はなく、さらに、各経路において交通機関を乗り換える乗換施設(例えば、列車を乗り換える駅等)に係る不効用値を考慮することも可能である。
【0106】
具体的には、この場合、データ分析サーバ1の制御部11は、不効用値の算出時に、目的地及び移動経路の組み合わせのそれぞれについて、目的地不効用値及び経路不効用値に加え、各移動経路において交通機関を乗り換える乗換施設の混雑率(乗換施設の入場者数を所定の定員の数で除算した値)と乗換施設における乗り換え時の乗換時間(移動に要する時間及び待ち時間を含む、前の交通機関を降りてから次の交通機関に乗るまでの時間)とを乗じた値(このようにして算出した乗換施設に係る不効用値を、以下、「乗換不効用値」という。)を加算することで、各経路の不効用値を算出することとなる。例えば、特定の移動経路において乗換に利用する駅の混雑率が0.8、乗換に要する時間が10分であれば、0.8×10分が、乗換不効用値となる。
【0107】
以下、上記のようにして乗換不効用値を考慮する場合の不効用値の計算式の一例を記載する。なお、以下に挙げるものは一例であり、具体的な計算式はこれに限られるものではない。
【0108】
各パラメータを以下のように設定する。
・A駅発車時刻:Xb
・B駅到着時刻:Ya
・B駅発車時刻:Yb
・C駅到着時刻:Za
・遅延予測時間;β
・予測列車毎混雑率:γt(a-b)
・運賃:P(a-b)
・A駅構内乗客密度:Ksx
・A駅乗換時間:Msx
・予測オフィス毎混雑率:ζoi
・オフィス利用時間:Woi
・オフィス価格:εoi
【0109】
この場合、不効用値Uは、例えば以下のような計算式から算出することができる。
U=Σtra((Ya-Xb+β)×γt(Ya-Xb) +(Za-Yb+β)×γt(Za-Yb)・・・+Σsta(Msx×Ksx)+Σoff(ζoi×Woi)
【0110】
このようにして不効用値を算出した上で、例えば、検索条件データD6において検索時の優先順位として混雑優先とされ、移動経路の所要時間やオフィスの価格の上限値が設定されていた場合であれば、移動経路の所要時間やオフィスの価格が上限値未満となるオフィス及び移動経路の組み合わせを、不効用値が低い順に列挙してユーザに提示することとなる。
【0111】
[4 変形例4:施設管理者による条件変更]
ユーザの目的地となるオフィスの管理者において、ユーザによる予約状況に係る情報を取得の上、当該情報を基にオフィスデータD4を更新できるようにしてもよい。
【0112】
すなわち、この場合、ステップS8におけるユーザによる各オフィスの予約状況に係る情報(例えば、時間帯別の予約人数に係る情報)を、所定のタイミングで、データ分析サーバ1の制御部11が、通信部13から通信ネットワークNを介して、当該オフィスの管理者が使用する施設管理者端末8へと送信する。
【0113】
これを受信した施設管理者端末8においては、制御部81が受信した情報を表示部84に表示し、これを確認したオフィスの管理者において、予約状況に応じて、操作部85を用いて、オフィスデータD4に係るオフィスの利用条件(例えば利用料金等)の変更を入力する。
【0114】
施設管理者端末8において、オフィスデータD4の変更に係る情報が入力されると、制御部81が、通信部83から通信ネットワークNを介して、入力されたオフィスデータD4の変更に係る情報を、施設データサーバ5へと送信し、これを通信部53によって受信した施設データサーバ5において、制御部51が、受信した情報に従って、記憶部52に記憶されたオフィスデータD4を更新する。
【0115】
これによって、ユーザの目的地となるオフィスの管理者において、ユーザによる予約状況に応じてオフィスデータD4を更新することで、例えば予約が多ければ利用料金を上げる、予約が少なければ利用料金を下げる等、ユーザによる需要に応じて、適切な利用条件を設定することが可能となる。
【0116】
[5 変形例5:閾値超過の警告]
ユーザにより予め移動経路及び目的地の登録を受けた上で、ユーザが当該移動経路及び目的地を利用した場合の不効用値が閾値を超えた場合に、ユーザに警告するための機能をさらに備えてもよい。
【0117】
具体的には、この場合、まず、ユーザは、ユーザ端末7の操作部75を用いて、自らが利用を希望する目的地及び当該目的地までの移動経路に係る情報を入力し、当該情報が入力されると、制御部71が、入力された情報を、通信部73から通信ネットワークNを介して、データ分析サーバ1へと送信する。
【0118】
ユーザ端末7から送信された情報を通信部13によって受信したデータ分析サーバ1においては、制御部11が、受信した情報を、当該情報を入力したユーザに係る識別情報と紐付けて記憶部12に記憶した上で、当該移動経路及び目的地の組み合わせに係る不効用値を、例えば10分間隔当の所定の頻度で、リアルタイムに取得した情報を用いて算出する。不効用値の算出方法自体は、ステップS6で説明したものと変わるところはない。また、この場合も、変形例3において説明した乗換不効用値等、さらなる要素を考慮して不効用値を算出するようにしてもよい。
【0119】
データ分析サーバ1の制御部11は、不効用値を算出する度に、算出した不効用値が所定の閾値を超過していないかを判定する。閾値は、予め一律に定められていてもよいし、ユーザが予め設定するようにしてもよい。
【0120】
不効用値が閾値を超過していた場合、データ分析サーバ1の制御部11は、通信部13から通信ネットワークNを介して、閾値超過につき警告する所定の通知をユーザ端末7へと送信し、これを受信したユーザ端末7において、所定の警告画面を、表示部74に表示する。
【0121】
上記機能を備える場合、ユーザは普段使用する移動経路及び目的地の組み合わせにつき予め登録しておくことで、当該移動経路及び目的地の組み合わせが混雑し、不効用値が閾値を超えた場合に通知を受けることができることから、ユーザが他の移動経路及び目的地の利用を検討し、混雑を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0122】
100 経路検索システム
1 データ分析サーバ
11 制御部(経路検索手段、第1不効用値算出手段、第2不効用値算出手段、閾値超過判定手段)
12 記憶部
13 通信部(第1取得手段、第1提示手段、第2提示手段、第4取得手段、通知手段)
2 車両荷重データサーバ
3 列車運行データサーバ
4 列車ダイヤデータサーバ
5 施設データサーバ
51 制御部(目的地抽出手段)
52 記憶部
53 通信部(第2取得手段、第3取得手段)
6 車両荷重データ取得部
7 ユーザ端末
8 施設管理者端末
N 通信ネットワーク
D4 オフィスデータ(施設情報)
D6 検索条件データ(検索条件情報)
図1
図2