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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095065
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】地山固結用薬液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/30 20060101AFI20220621BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20220621BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C09K17/30 P
C09K17/18 P
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208166
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】本村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 智裕
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040CA10
2D040CB03
4H026CB08
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】反応活性に優れ、環境汚染の少ないウレタン系の地山固結用薬液組成物を提供すると共に、高強度で且つ柔軟性に優れ、靭性や難燃性の高い固結体を形成し得る、漏水や湧水等の水に接触した際の白濁化や泡立ちの如き問題を惹起することのない、ウレタン系地山固結用薬液を提供する。
【解決手段】活性水素基含有化合物と触媒とを必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地山固結用薬液組成物にして、前記A液が、前記活性水素基含有化合物として、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物を少なくとも含有し、且つ前記触媒として、カルボン酸金属塩を少なくとも含有すると共に、前記B液が、前記ポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を少なくとも含有せしめるようにした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基含有化合物と触媒とを必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地山固結用薬液組成物にして、
前記A液が、前記活性水素基含有化合物として、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物を少なくとも含有し、且つ前記触媒として、カルボン酸金属塩を少なくとも含有すると共に、前記B液が、前記ポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を少なくとも含有していることを特徴とする地山固結用薬液組成物。
【請求項2】
前記活性水素基含有有機化合物の環式構造が、芳香環式構造、脂環式構造、又は複素環式構造であることを特徴とする請求項1に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項3】
前記活性水素基含有有機化合物が、フェノール系化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項4】
前記活性水素基含有有機化合物が、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項5】
前記活性水素基含有有機化合物における環式構造の割合が、15質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項6】
前記A液中における活性水素基の総モル数(X)と、前記B液中におけるイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)が、0.3~3.0であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項7】
前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物がプレポリマーであり、且つ、5質量%未満の残留モノマー含有率であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項8】
前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれた脂肪族系ポリイソシアネート化合物より誘導されたアダクト体、ビウレット体、アロファネート体及びイソシアヌレート体の何れかであることを特徴とする請求項7に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項9】
前記A液が、触媒として、更に3級アミンを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項10】
前記A液及び/又は前記B液に、更に難燃剤が含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項11】
前記A液及び前記B液が、それぞれ、25℃の温度下において6000mPa・s以下の粘度を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山固結用薬液組成物に係り、特に、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物と脂肪族系ポリイソシアネート化合物とを組み合わせて、高強度の固結体を与え得る、反応活性に優れた、環境汚染の少ないウレタン系の地山固結用薬液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地山の不安定な岩盤や地盤の安定強化のための地盤改良用途や、人工構造物のクラックや空隙を充填する空洞充填用途において採用される方策の一つとして、無機乃至有機系グラウトを注入して、地山等を固結せしめる方法が知られており、例えば、特開平4-283290号公報においては、そのようなグラウトの一つとして、ケイ酸ソーダ水溶液(A)と、ポリイソシアネート及び、ポリイソシアネートとは反応しないが、ケイ酸ソーダ水溶液で加水分解されて、ケイ酸ソーダ水溶液及び/又はポリイソシアネートと反応する反応性希釈剤からなるポリイソシアネート組成物(B)とからなる注入薬液組成物が、知られている。また、特開平5-78667号公報においては、岩盤固結用薬液として、水及びケイ酸のアルカリ金属塩を主成分とするA液と、イソシアネートプレポリマーを主成分とするB液とを組み合わせてなる二液タイプの発泡ウレタン樹脂が明らかにされ、更に、特開2016-175982号公報においては、水ガラスとポリオールとを配合し、更に水を加えて調製されるA液と、ポリイソシアネートを必須成分とするB液とからなる二液型地山固結用薬液において、かかるA液中の水含有量を規制し、また、水とポリオールとが所定割合となるように調製すると共に、分散剤を、更に添加してなる構成のものが、提案されている。
【0003】
そして、それら固結用薬液におけるB液の主成分であるポリイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種の有機系イソシアネート化合物やその変性体(プレポリマー)が使用され得るとされているのであるが、反応活性や得られる固結体の強度等の観点から、実用的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のポリイソシアネート化合物が用いられているのである。けだし、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等の脂肪族系のポリイソシアネート化合物をポリイソシアネート成分として用いて構成したB液を、前述の如きA液と組み合わせて、固結用薬液を構成した場合にあっては、それらA液とB液との反応が遅く、そのために、大量の漏水や湧水を止水する際に、注入した薬液の一部が漏水や湧水と共に流出することで、水の白濁や泡立ち等の問題が惹起されて、環境に悪影響をもたらすようになることに加えて、A液とB液の反応によって形成される固結体の強度や難燃性も充分ではなく、そのために、地山の安定強化や空洞充填の目的に充分に応え得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-283290号公報
【特許文献2】特開平5-78667号公報
【特許文献3】特開2016-175982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き事情を背景にして、本発明者らが、ポリイソシアネートとして脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いてなる固結用薬液について種々検討した結果、かかる脂肪族系ポリイソシアネート化合物に対して、活性水素基含有化合物として、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物を組み合わせ、更に触媒として、少なくともカルボン酸金属塩を用いることによって、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いた際における問題が、悉く解消され得る、ことを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
従って、本発明の解決課題とするところは、反応活性に優れ、環境汚染の少ないウレタン系の地山固結用薬液組成物を提供することにあり、また他の課題とするところは、高強度で且つ柔軟性に優れ、靭性や難燃性の高い固結体を形成し得る、漏水や湧水等の水に接触した際の白濁化や泡立ちの如き問題を惹起することのない、ウレタン系地山固結用薬液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0008】
先ず、本発明の第一の態様は、活性水素基含有化合物と触媒とを必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地山固結用薬液組成物にして、前記A液が、前記活性水素基含有化合物として、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物を少なくとも含有し、且つ前記触媒として、カルボン酸金属塩を少なくとも含有すると共に、前記B液が、前記ポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を少なくとも含有していることを特徴とする地山固結用薬液組成物にある。
【0009】
また、本発明の第二の態様は、前記活性水素基含有有機化合物の環式構造が、芳香環式構造、脂環式構造、又は複素環式構造を有していることにある。
【0010】
さらに、本発明に従う第三の態様は、記活性水素基含有有機化合物として、フェノール系化合物を用いることにある。
【0011】
更にまた、本発明に従う第四の態様は、記活性水素基含有有機化合物として、フェノール樹脂を用いることにある。
【0012】
加えて、本発明の第五の態様は、前記活性水素基含有有機化合物における環式構造の割合が、15質量%以上であるように構成されている。
【0013】
そして、本発明に従う第六の態様は、前記A液中における活性水素基の総モル数(X)と、前記B液中におけるイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)が、0.3~3.0であるように構成されている。
【0014】
また、本発明の第七の態様は、前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物がプレポリマーであり、且つ、5質量%未満の残留モノマー含有率であるように構成されている。
【0015】
さらに、本発明の第八の態様は、前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれた脂肪族系ポリイソシアネート化合物より誘導されたアダクト体、ビウレット体、アロファネート体及びイソシアヌレート体の何れかであることである。
【0016】
加えて、本発明に従う第九の態様は、触媒として、更に3級アミンを含有せしめられていることにある。
【0017】
更にまた、本発明の第十の態様は、前記A液及び/又は前記B液に、更に難燃剤が含有せしめられているように構成されている。
【0018】
そして、本発明の第十一の態様は、前記A液及び前記B液が、それぞれ、25℃の温度下において6000mPa・s以下の粘度を有していることにある。
【発明の効果】
【0019】
そして、このような本発明に従う地山固結用薬液組成物の構成によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が、奏され得ることとなる。
(1)反応活性に優れ、環境汚染の少ないウレタン系地山固結用薬液が提供され、そのような薬液の使用によって、高強度で且つ柔軟性に優れ、靭性や難燃性の高い固結体が有利に形成され得ることとなる。
(2)地山に対して薬液を注入した後、直ちに、硬化反応が進行するようになるところから、環境への薬液の流出を抑えて、漏水や湧水の白濁や泡立ちを有利に低減することが出来る。
(3)触媒としてカルボン酸金属塩が用いられ、これに、3級アミン触媒が併用されることにより、水の存在下においても反応速度に影響を受け難くなり、迅速に、目的とする固結体を形成することが出来ることから、その実用性が有利に高められ得ることとなる。
(4)B液の必須成分であるポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物、中でも、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーを使用することによって、強固な固結体を有利に形成することが出来ると共に、薬液注入現場における作業環境の汚染も、効果的に抑制乃至は回避することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
要するに、本発明は、A液とB液とからなる二液型のウレタン系薬液組成物において、かかるA液の必須の成分たる活性水素基含有化合物として、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物を含有せしめると共に、触媒として、カルボン酸金属塩を少なくとも含有せしめる一方、B液における必須の成分であるポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物、特に、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーを含有せしめるようにしたことにより、脂肪族系ポリイソシアネート化合物であっても、優れた反応活性が効果的に実現され得ると共に、高強度な固結体が有利に形成され得ることとなったのであり、以て、所期の目的を有利に達成し得たところに、大きな特徴を有しているのである。
【0021】
ところで、そのような本発明に従う薬液組成物を構成する二液のうちの一つであるA液において、その必須の成分の一つとして含有せしめられる活性水素基含有化合物たる、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物は、分子内に環状構造乃至は環式構造を有すると共に、ヒドロキシル基やアミノ基の如き活性水素基を有する有機化合物であり、その環式構造としては、芳香環式、脂環式、複素環式等の構造を挙げることが出来るが、その中でも、芳香環式、脂環式、複素環式の化合物が好ましく、芳香環式がより好ましく用いられることとなり、特に、芳香環構造に対して、直接に、ヒドロキシル基やアミノ基が結合した構造を有する化合物であることが望ましい。このうち、官能基が2つ以上の多官能のものがより望ましい。また、そのような活性水素基含有有機化合物における環式構造の割合、換言すれば、1分子中の含有比率が、一般に、15質量%以上、好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35%以上となる化合物を用いることが望ましく、更に、かかる活性水素基含有有機化合物は、2官能以上の化合物であることが望ましく、加えて、その分子量は、50~10000、好ましくは80~5000、より好ましくは100~3000の範囲内であることが望ましく、それによって、本発明の目的がより一層有利に達成され得ることとなる。
【0022】
なお、かくの如き環式構造を有する活性水素基含有有機化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、芳香環式、脂環式又は複素環式の構造を有する、フェノール類、アルコール類、アミン類、チオール類等の、公知の各種の化合物の中から、適宜に選定されることとなる。
【0023】
具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、アルキルヒドロキノン、ジアルキルヒドロキノン、トリアルキルヒドロキノン、テトラアルキルヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン等の低分子量のフェノール系化合物や、フェノールやクレゾール等のフェノール系化合物とアルデヒドやケトンとを反応させて得られる、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等の高分子量のフェノール系化合物からなるフェノール系化合物;ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール、ヒドロキシフェネチルアルコール、メトキシフェニルメタノール、ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール、1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等の芳香族アルコール類;1級及び/又は2級のアミノ基を有する、アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、トルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルエーテル、トリメチルフェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、N,N’-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン、アミノベンジルアミン、メチレンビス(エチルメチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)等の芳香族アミン類;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ジシクロヘキサンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、イノシトール等の脂環式アルコール類;シクロヘキサンジアミン、ノルボルネンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式アミン類;ジヒドロキシピリジン、スクロース、グルコシド、メラミン、ソルビタン、ソルビタンモノラウレート等の複素環式化合物;環状構造を有するヒドロキシル基含有化合物や、1級又は2級アミン類とアルキレンオキサイドとを反応させて得られるポリオールであって、例えば、フェノール系化合物、フェノール樹脂、芳香族アルコール類、環状糖類等を開始剤として、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを反応せしめて得られる反応生成物であるポリエーテルポリオール類等を挙げることが出来る。
【0024】
そして、本発明にあっては、上記した活性水素基含有有機化合物の中でも、低分子量や高分子量のフェノール系化合物を含む各種のフェノール系化合物が、その中でも、特にフェノール樹脂が、環式構造である芳香環の密度が高いものであるところから、有利に採用され、これによって、形成される固結体が燃え難く、また高強度を得ることが容易となる。更に、そのようなフェノール樹脂としては、一般に、200~10000、300~5000、400~3000の範囲内の重量平均分子量を有するものが、好適に用いられることとなる。
【0025】
また、本発明を構成するA液における必須成分の他の一つとして、触媒が、更に用いられることとなるが、本発明にあっては、そのような触媒のうちの少なくとも一つとして、カルボン酸金属塩が用いられることとなる。このようなカルボン酸金属塩を用いることにより、上記した活性水素基含有有機化合物と脂肪族系ポリイソシアネート化合物との反応において、その反応速度を実用に適した速度に速めることが可能となるのである。ここにおいて、そのような本発明における触媒の一つとして必須の成分であるカルボン酸金属塩とは、有機カルボン酸のカルボキシル基における水素を、錫、鉛、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス等の金属に置き換えてなる形態の化合物であって、具体的には、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸亜鉛、カルボン酸鉄、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸ビスマス等を挙げることが出来る。
【0026】
そして、それらカルボン酸金属塩のうちのカルボン酸錫としては、より具体的には、酢酸錫、酪酸錫、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、オクタン酸第一錫、ジラウリン酸第一錫、ジパルミチン酸第一錫、ジステアリン酸第一錫、ジオレイン酸第一錫、ビス(ネオデカン酸)錫、ステアリン酸錫、安息香酸錫等が挙げられる。また、カルボン酸鉛としては、酢酸鉛、酪酸鉛、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オレイン酸鉛、オクタン酸鉛、ネオデカン酸鉛、ラウリン酸鉛、ステアリン酸鉛、安息香酸鉛等が挙げられる。更に、カルボン酸亜鉛としては、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】
加えて、カルボン酸鉄としては、酢酸鉄、酪酸鉄、オクチル酸鉄、ナフテン酸鉄、オレイン酸鉄、オクタン酸鉄、ネオデカン酸鉄、ラウリン酸鉄、ステアリン酸鉄、安息香酸鉄等が挙げられ、またカルボン酸銅としては、酢酸銅、酪酸銅、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、オクタン酸銅、ネオデカン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅等が挙げられる。更に、カルボン酸ニッケルとしては、酢酸ニッケル、酪酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オレイン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、ネオデカン酸ニッケル、ラウリン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、安息香酸ニッケル等が挙げられ、またカルボン酸コバルトとしては、酢酸コバルト、酪酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オレイン酸コバルト、オクタン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ラウリン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
【0028】
更にまた、カルボン酸マンガンとしては、酢酸マンガン、酪酸マンガン、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オレイン酸マンガン、オクタン酸マンガン、ネオデカン酸マンガン、ラウリン酸マンガン、ステアリン酸マンガン、安息香酸マンガン等が挙げられる。また、カルボン酸ジルコニウムとしては、酢酸ジルコニウム、酪酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オレイン酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、ネオデカン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、安息香酸ジルコニウム等が挙げられ、更に、カルボン酸ビスマスとしては、酢酸ビスマス、酪酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ラウリン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、安息香酸ビスマス等が挙げられる。
【0029】
特に、本発明にあっては、上記した多数のカルボン酸金属塩の中でも、カルボン酸ビスマスが、反応速度が速くて、毒性がない等の特徴を有しているところから、有利に用いられることとなる。
【0030】
なお、このような触媒の一つとして用いられるカルボン酸金属塩の使用量は、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、一般に、A液中の活性水素基含有化合物の100質量部に対して、0.1~10質量部程度、好ましくは0.3~5質量部の範囲内において、選択されることとなる。このカルボン酸金属塩の使用量が少なくなり過ぎると、活性水素基含有化合物とポリイソシアネートとの反応速度が遅くなり過ぎる等の問題があり、一方、その使用量が多くなり過ぎると、かかる反応速度が速くなり過ぎる等の問題を惹起する。
【0031】
加えて、本発明に従うA液には、上記したカルボン酸金属塩と共に、公知の各種の他の触媒、即ち、3級アミン触媒や第四アンモニウム塩等の反応触媒が必要に応じて含有せしめられ得るが、本発明にあっては、特に、3級アミン触媒が有利に用いられることとなる。このような3級アミン触媒の併用によって、水の存在下においても、本発明に従う薬液組成物は、その反応速度に影響を受け難くなるのである。従って、本発明に従う薬液組成物を注入する現場において、実質的に水が存在しない場合と、水が存在する場合とにおける反応時間の差が小さくなるという特徴を発揮するのである。
【0032】
ここで、3級アミン触媒としては、水との接触により発泡が意図される場合において、ポリイソシアネートと水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、ポリイソシアネートとポリオールとの反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、更には、ポリイソシアネートの三量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒等があり、それらは、何れも、公知のものの中から、適宜に選択されることとなる。
【0033】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリエチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等を挙げることが出来る。また、樹脂化触媒には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン、N-メチルモルフォリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用しても、何等差し支えない。更に、これらの中でも、泡化触媒又は樹脂化触媒が好適に用いられる。
【0034】
なお、このようなA液に含有せしめられる3級アミン触媒の使用量としては、一般に、活性水素基含有化合物の100質量部に対して、0.5~10質量部、好ましくは0.8~5質量部の割合において決定されることとなる。この触媒含有量が0.5質量部よりも少なくなると、反応に対する寄与が低下し、水の存在下における反応速度の向上に充分に寄与し難くなるからであり、また、10質量部よりも多くなると、反応が速くなり過ぎて、反応速度の制御が困難となる等の問題が惹起されるようになる。更に、このような3級アミン触媒を前記したカルボン酸金属塩触媒と共に用いる場合において、カルボン酸金属塩:3級アミンの比率(質量比)は、一般に5:1~1:5程度、好ましくは3:1~1:3程度とされることとなる。
【0035】
また、第四アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール等のヒドロキシアンモニウム化合物、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0036】
なお、かくの如き第四アンモニウム塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0037】
一方、本発明の対象とする地山固結用薬液組成物を構成する二液のうちの、他の一つであるB液の必須の構成成分であるポリイソシアネートとしては、本発明にあっては、脂肪族系ポリイソシアネート化合物そのものが用いられる他、かかる脂肪族系ポリイソシアネート化合物から誘導されるプレポリマー(脂肪族ポリイソシアネートプレポリマー)が、有利に用いられることとなるのである。
【0038】
ここで、脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネートや、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートの他、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートや、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-若しくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネートや、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることが出来る。
【0039】
また、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等の上記した脂肪族系ポリイソシアネート化合物を、活性水素基含有化合物と反応させて得られるアダクト体、ビウレット体、アロファネート体や、そのようなポリイソシアネート化合物を三量化して得られるイソシアヌレート体等が、好適に用いられることとなる。なお、イソシアヌレート体には、二量体のウレトジオン体が含まれていても、何等差支えない。そして、そのような脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーには、固結体の強度や難燃性等の特性を考慮して、イソシアヌレート体が、より好適に用いられることとなる。
【0040】
さらに、かかる脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーは、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用い、それを変性して得られたものであるところから、その変性物であるプレポリマー中には、原料たる脂肪族系ポリイソシアネート化合物が、未反応のモノマー成分として残留することとなるのであるが、本発明にあっては、そのような残留モノマー成分は、5質量%以下であることが好ましく、特に、1質量%以下となるように、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、調製されることとなる。なお、かかる残留モノマー成分が多くなると、固結体の強度等の物性の低下を惹起するようになる他、施工時にモノマー成分が揮発して、作業環境を悪化せしめる等の問題が惹起されるようになる。
【0041】
そして、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーは、B液中に、一般に、50~100質量%の割合において、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%の割合において含有せしめられることとなる。この脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーの含有量が、50質量%よりも少なくなると、固結体の強度が低下する問題があり、そのために、B液における脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーの割合は高い方が望ましく、そのような脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーのみにて、B液を構成することも、可能である。なお、B液中には、公知の芳香族ポリイソシアネートを、10質量%を超えない範囲で含有せしめることも可能である。
【0042】
ところで、本発明に従う地山固結用薬液を構成する、上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、従来と同様な添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液に対する添加剤としては、発泡剤、整泡剤、難燃剤、減粘剤等を挙げることが出来る。それらA液に対する添加剤は、一般に、活性水素基含有有機化合物の100質量部に対して、0.1~50質量部程度、好ましくは0.5~40質量部程度の割合において、適宜に用いられることとなる。また、B液に対する添加剤としては、整泡剤、難燃剤、減粘剤等を挙げることが出来、その中で、整泡剤は、ポリイソシアネート成分の100質量部に対して0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部の割合となるように用いられ、減粘剤は、ポリイソシアネート成分の100質量部に対して0.5~60質量部、好ましくは1~40質量部の割合となるように用いられ、また難燃剤は、ポリイソシアネート成分の100質量部に対して、1~50質量部、好ましくは5~40質量部の割合となるように、用いられることとなる。
【0043】
それら添加剤の中で、発泡剤としては、水、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン等の公知のものを用いることが可能である。この発泡剤は、特に限定されるものではないが、水が好適に用いられる。この水は、薬液組成物の適用される地山からも供給されるものであって、B液のポリイソシアネートと反応して、炭酸ガスを発生するものであるところから、発泡剤として機能するものである。
【0044】
また、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えばシリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましい。
【0045】
さらに、難燃剤としては、液状の難燃剤や粉状の難燃剤を使用することが出来る。そして、それら難燃剤は、A液やB液の何れにも分散、含有せしめることが可能である。また、これらの難燃剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。特に、発泡性組成物の減粘剤としても機能する点から、液状の難燃剤を用いるとよく、更に、液状の難燃剤と粉状の難燃剤を併用することで、難燃性の更なる向上を図ることが出来る。
【0046】
そして、液状の難燃剤としては、リン酸エステルや臭素含有難燃剤等が挙げられ、環境への負荷が少ないことから、リン酸エステルが好ましく用いられる。なお、リン酸エステルとしては、モノリン酸エステルや縮合リン酸エステル等を例示することが出来る。
【0047】
また、モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン、トリス(β―クロロプロピル)ホスフェート等を、挙げることが出来る。
【0048】
さらに、縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名:PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等を、挙げることが出来る。前記したもの以外の市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名:CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名:CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名:CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名:アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名:FP-600、FP-700)等を、挙げることが出来る。
【0049】
加えて、臭素含有難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン-ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物;臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、前記のポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート;臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物;ポリ(臭素化ベンジルアクリレート);臭素化ポリフェニレンエーテル;臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌール及び臭素化フェノールの縮合物;臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン;架橋又は非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマー等を、挙げることが出来る。
【0050】
また、粉状の難燃剤としては、赤リン、リン酸塩含有難燃剤、スズ酸塩含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物や金属酸化物等が挙げられ、取扱いが容易な点で赤リン、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物が好ましく用いられる。なお、赤リンとしては、公知の赤リンを使用することが可能である。
【0051】
そこにおいて、リン酸塩含有難燃剤としては、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等のリン酸塩を挙げることが出来る。モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等を、挙げることが出来る。ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等を挙げることが出来る。
【0052】
また、スズ酸塩含有難燃剤としては、例えば、スズ酸亜鉛、スズ酸バリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、スズ酸コバルト、スズ酸マグネシウム等を挙げることが出来る。
【0053】
さらに、ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等を挙げることが出来る。具体的に、酸化ホウ素としては、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等を例示することが出来る。また、ホウ酸塩としては、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩;ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等を、例示することが出来る。
【0054】
そして、金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウムや水酸化スズ等を挙げることが出来る。加えて、金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることが出来る。
【0055】
加えて、減粘剤は溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものであって、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル類、ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。
【0056】
ところで、本発明に従って調製されるA液及びB液は、それぞれ、25℃の温度下における粘度が6000mPa・s以下、好ましくは10~5000mPa・s、より好ましくは20~3500mPa・sとなるように、調整されることとなる。この粘度が6000mPa・sよりも高くなると、A液やB液が粘調な液となり、混合時の流動性が悪くなる他、圧送時の流動性も悪くなり、注入圧の上昇を引き起こす恐れがある等の問題を惹起するようになる。なお、そのような粘度が20mPa・sよりも低くなると、水に希釈され易くなり、排水の白濁等の問題が惹起され易くなる。また、それらA液やB液は、そのポンプ圧送時において、粘度を低減させるべく、ヒーターを用いて温度調整されてもよく、外気温に応じて0~50℃に加温されるようにすることも、可能である。
【0057】
また、かくの如きA液とB液とから構成される、本発明に従う地山固結用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地山、地盤、岩盤等に対して、公知の手法に従って注入され、反応硬化せしめられることにより、高強度の固結体が形成されることとなるのである。そこで、かかるA液とB液との混合比は、環式構造を有する活性水素基含有有機化合物によって導入されることとなるA液中の活性水素基(OH基、NH2 基)の合計含有量(総モル数:X)と、ポリイソシアネートによって導入されるB液中のイソシアネート基(NCO基)の含有量(モル数:Y)によって、適宜に変化せしめられることとなるが、一般に、モル比において、X/Y=0.3~3.0、好ましくは0.3~2.8、より好ましくは0.4~2.4の範囲内において採用されることとなる。なお、かかるモル比(X/Y)が0.3よりも少なくなると、形成される固結体に充分な強度を付与することが困難となり、地山を充分に改良出来ない恐れがあり、一方、3.0よりも多くなると、反応が充分に進行せずに、固結体の強度や柔軟性が不充分となる恐れがある。
【0058】
このように、本発明に従うA液とB液とを混合するに際しては、A液中の活性水素基含有量とB液中のイソシアネート基含有量を考慮しつつ、それらの混合比(A:B)が適宜に決定されることとなるが、一般に、質量基準にて、A:B=2:1~1:3、好ましくは、1:1~1:2の範囲内において、採用されることとなる。また、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、二液の混合が確実に行なわれ得る手法であれば、特に制限はなく、従来から公知の各種の注入手法が、適宜に採用されることとなる。
【0059】
さらに、A液とB液とを混合したときの反応時間(混合から硬化するまでの時間)は、薬液温度が25℃であるときに、600秒以内であることが好ましく、より好ましくは20~360秒である。この反応時間が600秒よりも長くなると、地山に注入後、固結するまでに、薬液が湧水中に流出して、水の白濁や泡立ちを惹起する等の問題が生じるようになる。なお、反応時間が余りにも短く、例えば、20秒よりも短くなると、反応が進み過ぎて、薬液の注入管を閉塞させる問題や、充分に地山に浸透させ難くなる等の問題が惹起されるようになる。
【実施例0060】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0061】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液の特性(粘度)と共に、それらA液とB液とを混合したときの混合性、それらA液とB液とを水中で反応・発泡せしめた後の水の白濁度合い、A液とB液とを混合して反応硬化せしめたときの反応時間、反応生成物の圧縮強度及び曲げ強度、水の存在下/不存在下における発泡倍率、そして反応生成物の酸素指数については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」、「比率」及び「部」は、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0062】
(1)粘度の測定
実施例及び比較例において得られたA液及びB液の粘度を、それぞれ、JIS-K-7117-1:1999に準拠して、B型粘度測定装置を用いて、測定した。
【0063】
(2)混合性の評価
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び各比較例に規定される混合比において、300mlのカップに、合計100部となるように収容した後、直ちに、スパーテルにて20秒間混合し、その混合開始から混合後の様子を観察した。そして、A液とB液とが20秒経過時点において充分に混合している場合は〇、混合途中で増粘等によって、混合がやや不充分な場合を△、途中で増粘等により混合が充分ではなく、固結物にムラがある場合を×として、評価した。
【0064】
(3)白濁性の評価
25℃の温度に、それぞれ、調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比において、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。次いで、その混合の後、直ちに、2Lのディスカップに収容された25℃の水1L中に、それらA液及びB液の混合物を投入し、反応が収まるまで静置した。そして、かかる反応が終了した後、目視にて水の様子を観察し、反応が収まった直後において、白濁が認められない場合を○、反応が収まった後1時間以内に白濁が認められなくなった場合を△、反応が収まった後1時間以上経過した後においても、白濁が認められる場合を×として、それぞれ評価した。
【0065】
(4)反応時間の測定
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比で混合して、反応を開始させた後、その形成される反応生成物からガスが発生し、発泡高さが変化しなくなるまでの時間、又は反応生成物に串を刺して、内部まで刺さらなくなるまでの時間を測定し、その何れか遅い方を、反応時間とした。
【0066】
(5)圧縮強度試験・曲げ強度試験
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比にて、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。次いで、かかる混合の後、直ちに、内径:50mm、高さ:100mmの有底円筒型内に、所定量のA液及びB液の混合物を投入し、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型した反応生成物を、25℃の温度にて24時間以上養生し、JIS-K-7220:2006に準拠して、圧縮強度の測定を行なった。
【0067】
また、曲げ強度については、上記と同様にして得られた反応生成物からなる試験体を用いて、JIS-K-7221:2006に準拠して、測定を行なった。
【0068】
(6)発泡倍率の測定
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比にて、全量が100mlとなるようにそれぞれ計量して、それらを、2Lのディスカップに収容し、充分に混合撹拌して、硬化せしめた。そして、硬化反応終了後の反応生成物の発泡高さを測定し、発泡倍率を求めた。
【0069】
(7)水存在下での反応時間及び発泡倍率の測定
各実施例及び比較例におけるA液に、更に、整泡剤:B8450(エボニック社製)の0.5部と水2部を添加して、上記の(4)反応時間の測定及び(6)発泡倍率の測定と同様にして、水存在下における反応時間及び発泡倍率を、それぞれ求めた。
【0070】
(8)酸素指数(難燃性)の評価
各実施例及び比較例における25℃の温度に調整されたA液に、更に、整泡剤:B8450(エボニック社製)の0.5部と水2部とを添加し、これに、25℃の温度に調整したB液を、各実施例及び比較例において採用する割合において混合した後、直ちに、250mm×100mm×50mmの型内に3倍発泡となる量において投入し、そして、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型し、25℃にて24時間以上養生した後、得られた反応生成物から試験体を切り出し、JIS-K-7201-2:2007に準拠して、それぞれの試験体の酸素指数を測定した。なお、この酸素指数が大となる程、難燃性が良好であることを示している。
【0071】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられるA液又はB液の構成成分として、以下の各種原料を、準備した。
ポリオール:フェノール樹脂(下記の合成方法に従って調製されたもの)
:レゾルシノール(東京化成工業株会社製、芳香環含有量:69%)
:PF300[旭有機材株式会社製、フェノール樹脂系ポリオール(EOPO 付加物)、芳香環含有量:46%]
:シクロヘキサンジメタノール(三洋化成工業株式会社製、1,4-シクロヘ キサンジメタノール、脂肪環含有量:57%)
:ソルビタンモノラウレート(富士フィルム和光純薬株式会社、ソルビタンモ ノラウレート、複素環含有量:20%)
:PP-400[三洋化成工業株式会社製、サンニックス PP-2000(
ポリエーテルポリオール、分子量400、官能基数2)、環式構造不含]
:450ED[AGC株式会社製、エクセノール 450ED(ポリエーテル ポリオール、分子量400、官能基数4)、環式構造不含]
ポリアミン:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製、エタキュア100、芳香環 含有量:41%)
触媒:ビスマス触媒(日本化学産業株式会社製、オクチル酸ビスマス、ビスマス濃度:2 5%)
:スズ触媒(日本化学産業株式会社製、ジブチル錫ジオクテート)
:カオーライザーNo.26(花王株式会社製、3級アミン触媒)
:カオーライザーNo.390(花王株式会社製、3級アミン触媒)
減粘剤:PC(東京化成工業株式会社製、プロピレンカーボネート)
:DOP(東京化成工業株式会社製、ジオクチルフタレート)
難燃剤:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、トリス(クロロプロピル)ホスフェ ート)
:赤燐(燐化学工業株式会社製、ノーバエクセル140)
:ホスフィン酸塩(クラリアント・ケミカルズ社製、EXOLIT OP-935 )
:水酸化アルミニウム(日本軽金属製、水酸化アルミニウム)
ポリイソシアネート
:HDIヌレート(三井化学株式会社製、タケネートD-170N、ヘキサメチレ ンジイソシアネートプレポリマー、ヌレート型、NCO率:21%)
:HDIビウレット(三井化学株式会社製、タケネートD-165N、ヘキサメチ レンジイソシアネートプレポリマー、ビウレット型、NCO率:23.5%)
:PDIヌレート(三井化学株式会社製、スタビオD-476N、ペンタメチレン ジアミンプレポリマー、ヌレート型/アロファネート型の混合、NCO率:23 .5%)
:XDI(三井化学株式会社製、タケネート500、キシリレンジイソシアネート 、NCO率:47%)
:MDI(錦湖三井化学社製、コスモネートM-200、ポリメリックMDI、N CO率:31%)
【0072】
-フェノール樹脂の合成-
還流器、温度計及び撹拌機を備えた三つ口反応フラスコ内に、フェノールの50部とオルソクレゾールの50部(フェノール/オルソクレゾール=50/50)とを、92%パラホルムアルデヒドの51.9部及び二価金属塩としてナフテン酸亜鉛の0.15部と共に、仕込み、還流温度で90分間反応を行なった後、100部の水で水洗して、水層を除去し、その後、加熱濃縮して、水分含有量が1%以下のフェノール樹脂(オルソクレゾール変性ベンジルエーテル型のフェノール樹脂)を得た。なお、この合成したフェノール樹脂は、遊離フェノール類1%以下、ホルムアルデヒド0.1%以下の含有量を示すものであった。また、芳香環含有量は、65%であった。
【0073】
(実施例1~19)
-A液の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち、活性水素基含有有機化合物(ポリオール、ポリアミン)、触媒、減粘剤及び難燃剤を、それぞれ、下記表1~表2に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~20に係る各種のA液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、その得られたA液配合組成物の粘度を測定し、その結果を、下記表1~2に示した。
【0074】
-B液の調製-
上記で準備した各種のポリイソシアネートを用いて、その100%からなるB液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、この得られたB液配合組成物の粘度を測定し、その結果を、下記表1~2に示した。
【0075】
-A液とB液の反応-
上記で得られたA液とB液とを、表1~2に示される割合において組み合わせて、常温下で、均一に混合して、反応せしめた後、前述せる評価手法に従って、各種の評価試験を行ない、それらの結果を、下記表1~2に示した。
【0076】
(比較例1)
実施例2において、触媒としてビスマス触媒を添加しないこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0077】
(比較例2)
実施例2において、フェノール樹脂に代えて、環式構造を有していないポリエーテルポリオール(450ED)を用いたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0078】
(比較例3)
実施例2において、ポリイソシアネート成分として用いたHDIヌレートに代えて、脂肪族系ポリイソシアネート化合物ではない、芳香族系ポリイソシアネートであるMDIを用いたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
かかる表1~表2の結果より明らかなように、実施例1~20における、本発明に従うA液とB液からなる薬液組成物にあっては、何れも、反応時間が600秒以下となる、反応活性に優れたものであると共に、良好な混合性を有し、高い圧縮強度と曲げ強度に優れた固結体を形成し得るものであり、しかも、白濁試験において、良好な結果を示すものであった。
【0082】
これに対して、比較例1~3において調製された、A液とB液からなる薬液組成物のうち、比較例1に係る薬液組成物にあっては、硬化反応に時間がかかり、反応活性に劣り、固結体の圧縮強度や曲げ強度において、劣るものであることが認められた。また、比較例2に係る薬液組成物にあっては、白濁試験において劣るものとなり、更に、比較例3に係る薬液組成物にあっては、混合性が不良であって、得られる固結体の圧縮強度や曲げ強度が劣るものであることが認められた。
【0083】
-水の存在下における反応時間と発泡倍率の変化-
実施例1、実施例5~7、実施例11、実施例16~17及び比較例1~3で調製された薬液組成物を用いて、それぞれのA液に、更に整泡剤:B8450(エボニック社製)の0.5部と水の2部を添加して、B液と混合することにより反応せしめ、その反応時間と発泡倍率を調べて、その結果を、下記表3に示した。なお、参考までに、水の不存在下においてA液とB液とを反応して得られた表1~2に示される結果を、水の不存在下における反応時間及び発泡倍率として、表4に示した。
【0084】
【表3】
【0085】
かかる表3の結果から明らかな如く、本発明に従う各実施例に係る薬液組成物においては、水の不存在下における反応時間に対する水の存在下における反応時間の変化率(倍)が小さく、それ故に、A液とB液との反応が、水の影響を受け難いことを示している。これに対して、比較例2や比較例3においては、水の存在下における反応時間の変化率が大きく、それ故に、A液とB液との反応が、水によって大きな影響を受けることは明らかである。
【0086】
-酸素指数による難燃性の検討-
実施例4~8及び実施例21~23と比較例2において調製されたA液及びB液を用いて、発泡・硬化させて得られた発泡生成物(固結体)について、それぞれ、酸素指数を測定し、その結果を、下記表4に示した。
【0087】
【表4】
【0088】
かかる表4の結果より明らかなように、本発明に従うA液とB液からなる、実施例4~8及び実施例21~23に係る薬液組成物にあっては、酸素指数が、比較例2に係る薬液組成物から得られる発泡固結体に比べて、大きな値を有しており、これによって、難燃性の良好な発泡固結体を与えるものであることを認めた。