(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009507
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】継手の製造装置及び継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20220106BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/37
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174636
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2020181475の分割
【原出願日】2016-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2015102614
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
(72)【発明者】
【氏名】岩原 善行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寿人
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA03
4F202AD03
4F202AD15
4F202AG08
4F202AG12
4F202AG25
4F202AG29
4F202AH11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK33
4F202CK53
4F202CK56
4F202CK59
4F202CK67
4F202CK82
4F202CQ01
4F202CQ05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で継手の製造効率を向上させることができる継手の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】継手の製造装置は、U字継手の直線流路及びU字流路を成形する流路成形型26がU字継手の外周部を成形する外周部成形型25内に配置され、溶融した合成樹脂が射出されるキャビティ27が形成される。流路成形型26は直線流路を成形する直線流路成形型37、38とU字流路を成形するU字流路成形型39とで構成されている。U字流路成形型39は、回動されるとともに直線流路成形型37、38の型抜き方向に沿って型抜き可能に構成されている。直線流路成形型37、38は、直線流路のみを成形し、U字流路成形型39は、U字流路のみを成形する。直線流路成形型37、38の外径はU字流路成形型39の外径よりも大きく、直線流路成形型37、38とU字流路成形型39との境界が形成する段差によって継手の段差を成形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線流路と、前記直線流路の一端部に接続され、前記直線流路の軸線に対して湾曲して延在する、前記直線流路よりも内径が小さい湾曲流路とを有する継手を射出成形により成形する継手の製造装置であって、
前記継手の外周部を成形する外周部成形型と、
前記外周部成形型内に配置され、前記直線流路及び前記湾曲流路を成形する流路成形型と、を備え、
前記外周部成形型と前記流路成形型との間には、溶融した合成樹脂が射出されるキャビティが形成され、
前記流路成形型は、前記直線流路を成形する直線流路成形型と、前記湾曲流路を成形する湾曲流路成形型とを有し、
前記湾曲流路成形型は、回動されるとともに前記直線流路成形型の型抜き方向に沿って型抜き可能に構成されており、
前記継手は、前記直線流路と前記湾曲流路との境界に段差を有しており、
前記直線流路成形型は、前記直線流路及び前記湾曲流路のうちの前記直線流路のみを成形するものであって、
前記湾曲流路成形型は、前記直線流路及び前記湾曲流路のうちの前記湾曲流路のみを成形するものであって、
前記直線流路成形型の外径は前記湾曲流路成形型の外径よりも大きく、
前記直線流路成形型と前記湾曲流路成形型との境界が形成する段差によって、前記継手の前記段差を成形する、
継手の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の継手の製造装置を使用した継手の製造方法であって、
前記外周部成形型内に前記流路成形型を配置した後、前記キャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して射出成形体を成形し、次いで前記湾曲流路成形型を回動させて前記外周部成形型から前記流路成形型を抜き出すことにより前記継手を製造する、
継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線流路と、直線流路の一端部に接続され、直線流路の軸線に対して湾曲して延在する湾曲流路とを有する継手を射出成形により成形する継手の製造装置及び同装置を使用した継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の継手としては、例えばU字継手がある。U字継手としてのエレクトロフュージョン継手(電気融着継手)は、合成樹脂製の継手本体の内周部に電熱線がコイル状に巻回された電熱層を有し、継手本体の外周部には電熱線の両端が接続される一対の端子を有している。一方、樹脂パイプは、外周部が未架橋樹脂で形成され、内周部が架橋樹脂で形成されている。そして、継手本体内に樹脂パイプを挿入した状態で、一対の端子間に通電して電熱線を発熱させ、継手本体の電熱層と樹脂パイプの外周部とを熱融着するようになっている。このようなU字継手は、合成樹脂の射出成形により成形することができる。
【0003】
この種のU字継手の製造方法が例えば特許文献1に開示されている。すなわち、このU字継手の製造方法の1つとして、U字形状のコアを金属等で作製し、このコアをインサートとして使用する方法が挙げられている。つまり、コアを射出成形型内にセットした後、コアの周囲に樹脂を射出して成形し、その後、コアとともに成形品を脱型し、続いてコアを成形品から抜き取る方法である。
【0004】
しかしながら、コアの外周に形成されたU字形の管部からコアを抜き取らねばならず、抜き取りを可能にするための工夫及びU字継手における形状の制限がある。例えば、コアをU字形の折り返し部で半割にしても、コアの半割体がJ字形状をなすアンダーカット形状となるため、U字形の管部を通常のU字形としたのでは、コアの半割体が抜けなくなる。そこで、U字形の管部をコアの半割体が抜ける形状にしなければならず、U字形の折り返し部付近を滑らかなU字形にできなくなって熱媒体のスムーズな流れが損なわれるおそれがある。
【0005】
従って、特許文献1に記載の発明におけるU字継手の製造方法では、中空部を有する樹脂成形体をブロー成形する樹脂成形体成形工程と、前記中空部に液体を注入して凍結する凍結工程と、樹脂成形体をインサートとして外殻を射出成形する外殻形成工程と、中空部の液体を排出する液体排出工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載されている従来構成のU字継手の製造方法においては、ブロー成形による樹脂成形体成形工程、中空部に液体を注入して凍結させる凍結工程及びその液体を排出する液体排出工程が設けられている。このため、樹脂成形体を成形するブロー成形装置、液体を凍結させる冷凍装置、その液体を排出する排出装置等を必要とし、設備が複雑であるとともに、製造工程が煩雑であった。従って、U字継手の製造に時間を要し、製造効率が低いという問題があった。
【0008】
なお、こうした問題は、上述したU字継手に限られるものではなく、直線流路と、直線流路の一端部に接続され、直線流路の軸線に対して湾曲して延在する湾曲流路とを有する継手においては共通して生じ得るものである。
【0009】
そこで本発明の目的とするところは、簡易な構成で継手の製造効率を向上させることのできる継手の製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための継手の製造装置は、直線流路と、前記直線流路の一端部に接続され、前記直線流路の軸線に対して湾曲して延在する、前記直線流路よりも内径が小さい湾曲流路とを有する継手を射出成形により成形する継手の製造装置であって、前記継手の外周部を成形する外周部成形型と、前記外周部成形型内に配置され、前記直線流路及び前記湾曲流路を成形する流路成形型と、を備え、前記外周部成形型と前記流路成形型との間には、溶融した合成樹脂が射出されるキャビティが形成され、前記流路成形型は、前記直線流路を成形する直線流路成形型と、前記湾曲流路を成形する湾曲流路成形型とを有し、前記湾曲流路成形型は、回動されるとともに前記直線流路成形型の型抜き方向に沿って型抜き可能に構成されており、前記継手は、前記直線流路と前記湾曲流路との境界に段差を有しており、前記直線流路成形型は、前記直線流路及び前記湾曲流路のうちの前記直線流路のみを成形するものであって、前記湾曲流路成形型は、前記直線流路及び前記湾曲流路のうちの前記湾曲流路のみを成形するものであって、前記直線流路成形型の外径は前記湾曲流路成形型の外径よりも大きく、前記直線流路成形型と前記湾曲流路成形型との境界が形成する段差によって、前記継手の前記段差を成形する。
【0011】
上記継手の製造装置において、前記継手は、2つの前記直線流路と、2つの前記直線流路の一端部にそれぞれ接続され、U字流路を形成する2つの前記湾曲流路とを有するU字継手であり、前記流路成形型は、2つの前記直線流路成形型と、2つの前記湾曲流路成形型とを有し、2つの前記湾曲流路成形型により前記U字流路を成形するU字流路成形型が構成され、2つの前記湾曲流路成形型が回動されて型抜き可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
上記継手の製造装置において、前記U字流路成形型は、2つの前記湾曲流路成形型により前記U字流路の中央部で2分割されており、各湾曲流路成形型が互いに開閉可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
上記継手の製造装置において、2つの前記湾曲流路成形型の対向面には、凹凸関係により互いに係合して位置ずれを防止する位置ずれ防止部が形成されていることが好ましい。
上記継手の製造装置において、前記継手は、前記湾曲流路における前記直線流路に接続された端部とは反対側の端部が接続された接続流路を有するものであり、前記流路成形型は、前記接続流路を成形する接続流路成形型を有することが好ましい。
【0014】
上記継手の製造装置において、前記接続流路は直線状に延在するものであり、前記湾曲流路は前記接続流路に対して前記接続流路の軸線と前記直線流路の軸線とが鋭角にて交わるように接続されるものであり、前記接続流路成形型は、前記接続流路の軸線に沿って互いに離間する方向に型抜き可能に2分割されていることが好ましい。
【0015】
上記継手の製造装置において、前記直線流路成形型内には挿通孔が形成されており、前記湾曲流路成形型内には前記挿通孔に連通される保持孔が形成されており、前記挿通孔及び前記保持孔には連結部材が挿通されており、前記連結部材の先端部は前記保持孔内に固定された回動軸を中心にして回動可能に支持されており、前記挿通孔内には、前記直線流路成形型に対する前記連結部材の先端側への相対移動を規制する規制部が設けられていることが好ましい。
【0016】
上記継手の製造装置において、前記規制部は、前記直線流路成形型を型抜きすべく前記外周部成形型に対して前記直線流路成形型を所定の距離後退させたときに、前記直線流路成形型に対する前記連結部材の先端側への相対移動を規制することが好ましい。
【0017】
上記の目的を達成するための継手の製造方法は、前記継手の製造装置を使用した継手の製造方法であって、前記外周部成形型内に前記流路成形型を配置した後、前記キャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して射出成形体を成形し、次いで前記湾曲流路成形型を回動させて前記外周部成形型から前記流路成形型を抜き出すことにより前記継手を製造する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の継手の製造装置及び継手の製造方法によれば、簡易な構成で継手の製造効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態において、外周部成形型内に流路成形型を配置してキャビティを形成し、そのキャビティに溶融樹脂を射出した状態を示す断面図。
【
図2】同実施形態の射出成形機の金型内に外周部成形型を配置し、その外周部成形型内に流路成形型を配置してキャビティを形成した状態を示す断面図。
【
図3】(a)は同実施形態のU字継手を示す斜視図、(b)は同実施形態のU字継手を示す断面図。
【
図4】同実施形態の外周部成形型を型開きした状態の型割り面を示す正面図。
【
図6】(a)、(b)は同実施形態の流路成形型を示す断面図。
【
図7】(a)、(b)は同実施形態におけるU字流路成形型の一方の分割型を開いた状態を示す断面図。
【
図8】(a)はU字流路成形型の一方の分割型を開き、その分割型にコイル状の電熱線を指で装着している状態を示す正面図、(b)は両分割型にコイル状の電熱線を装着した状態を示す正面図。
【
図9】コイル状の電熱線が装着された流路成形型を外周部成形型に配置した状態を示す正面図。
【
図10】(a)は電熱線の端子を保持する端子保持ピンの上方に端子を配置した状態を示す断面図、(b)は端子保持ピンに端子が保持された状態を示す断面図。
【
図11】同実施形態の作用を説明する図であって、射出成形後、流路成形型を外周部成形型からわずかに抜き出した状態を示す断面図。
【
図12】同実施形態の作用を説明する図であって、
図11の状態から、流路成形型を外周部成形型からさらに抜き出し、両分割型が開き始めた状態を示す断面図。
【
図13】同実施形態の作用を説明する図であって、
図12の状態から、流路成形型を外周部成形型から抜き出し終えた状態を示す断面図。
【
図14】(a)は第2実施形態のY字継手を示す平面図、(b)は、同実施形態のY字継手を示す断面図。
【
図15】コイル状の電熱線が装着された流路成形型を外周部成形型に配置した状態を示す断面図。
【
図16】外周部成形型と流路成形型との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出した状態を示す断面図。
【
図17】同実施形態の作用を説明する図であって、射出成形後、流路成形型を外周部成形型からわずかに抜き出した状態を示す断面図。
【
図18】同実施形態の作用を説明する図であって、
図17の状態から、流路成形型を外周部成形型からさらに抜き出し、湾曲流路成形型が回動し始めた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した第1実施形態を
図1~
図13に従って詳細に説明する。
まず、本実施形態の継手としての熱融着継手(エレクトロフュージョン継手)について説明する。
【0021】
図3(a)、(b)に示すように、U字継手11を構成するU字継手本体12は一対の平行に延びる直線部13と、それら直線部13の一端部間を連結するU字連結部14とにより構成されている。各直線部13内には、それらの軸線x、yに沿って延びる直線流路15が形成されるとともに、U字連結部14内にはU字流路16が形成されている。前記両直線流路15の他端部には、それぞれ樹脂パイプ17が同方向に延びるように接続される。前記U字連結部14の外側には円弧状の突出部18が延出され、その中心には錘を取付けるための取付孔19が開口されている。
【0022】
前記両直線部13の内周部には、内部にニクロム線等の導電性金属による電熱線20がそれぞれコイル状に巻回された未架橋ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂製の熱融着部21が各々直線部13の内周面に臨むように設けられている。これらの熱融着部21以外のU字継手本体12部分は架橋ポリオレフィン樹脂等の架橋樹脂で形成されている。
【0023】
前記各直線部13にはそれぞれ一対の支持突部22が設けられ、各支持突部22には端子23が支持されている。各直線部13に設けられた一対の端子23には、前記電熱線20の一端及び他端が接続されている。そして、端子23を介して電熱線20に通電することにより、熱融着部21の熱可塑性樹脂を溶融し、樹脂パイプ17を各直線部13に接続するようになっている。前記両直線部13間には、両直線部13を連結する結合部24が設けられている。
【0024】
次に、射出成形によるU字継手11の製造装置について説明する。
図1に示すように、このU字継手11の製造装置においては、U字継手11の外周部を成形する外周部成形型25内に直線流路15及びU字流路16を成形する流路成形型26が配置され、その状態で溶融樹脂の射出空間であるキャビティ27が形成される。このキャビティ27には溶融樹脂が射出されてU字継手11の外周部が成形される。
【0025】
図2に示すように、前記外周部成形型25及び流路成形型26は、射出成形機の金型28、29内に配置され、型締めされる。そして、金型28、29内のスプルー30及び外周部成形型25内のランナー31及びゲート32等を介して溶融樹脂がキャビティ27内に射出されるようになっている。
【0026】
図4に示すように、外周部成形型25は前記流路成形型26を収容する収容部33を有し、インサートとしての流路成形型26を図示しないピン等により収容部33の所定位置に位置決めするとともに、両型25、26は磁力によって結合されるように構成されている。このため、両型25、26の位置ずれを防止でき、さらに射出成形機への両型25、26の組付け作業性を向上させることができる。
図9に示すように、外周部成形型25の収容部33の所定位置に流路成形型26が収容されて、外周部成形型25と流路成形型26との間に前記キャビティ27が形成される。
【0027】
図4に示すように、外周部成形型25の両側部には、それぞれ一対の端子保持部34が設けられている。
図10(a)に示すように、この端子保持部34は、収納孔35から突出する一対の保持ピン36で構成され、それらの保持ピン36は弾力性を有している。そして、
図9及び
図10(b)に示すように、流路成形型26が外周部成形型25内に配置された状態で、前記電熱線20の各端子23がそれぞれ両保持ピン36間に挟着される。
【0028】
図5に示すように、前記流路成形型26は、両直線流路15を形成する一対の第1直線流路成形型37及び第2直線流路成形型38と、U字流路16を形成するU字流路成形型39とで構成されている。前記U字流路成形型39は、その中央部で2分割された第1分割型40及び第2分割型41により構成され、互いに開閉可能になっている。本実施形態では、これらの分割型40、41が湾曲流路成形型として機能する。
【0029】
図5、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、前記第1直線流路成形型37及び第2直線流路成形型38の外周面には、U字継手11の電熱線20が装着される電熱線装着部43が形成されている。
図8(a)に示すように、例えば第1分割型40を開いた状態、すなわち第1分割型40を第2分割型41から離間させた状態で、第1分割型40にコイル状の電熱線20を指45で押圧して嵌挿し、第1直線流路成形型37の電熱線装着部43に装着できるようになっている。
【0030】
図6(a)及び(b)に示すように、第1分割型40と第2分割型41との対向面には、それぞれ位置ずれ防止部を構成する断面半円弧状の係合凸部46と係合凹部47とが設けられ、第1分割型40と第2分割型41の型閉め状態における位置ずれを防止している。係合凸部46と係合凹部47とにより構成される位置ずれ防止部により、滑らかな円弧形状のU字流路16を形成することができる。
【0031】
前記第1直線流路成形型37及び第2直線流路成形型38は、ベース部48に対して直交方向に延びるように、それらの基端部がねじにより固定されている。これらの第1直線流路成形型37及び第2直線流路成形型38内には、それぞれ第1分割型40及び第2分割型41内の保持孔49に連通される挿通孔50が形成されている。各挿通孔50内には第1分割型40及び第2分割型41を保持し、かつ開閉させるための連結部材52が挿通されている。これらの連結部材52の先端部は、第1分割型40又は第2分割型41の保持孔49内に固定された回動軸53に回動可能に連結されている。連結部材52の基端部には規制ピン54が挿入され、該規制ピン54は、挿通孔50の基端部に形成された拡幅部51内に位置している。
図6(b)に示すように、該規制ピン54の長さは、挿通孔50の先端側の部分の幅よりも大きく形成されている。このため、規制ピン54が先端側へ相対移動するときには、挿通孔50の拡幅部51を形成する規制面55に当接するようになっている。
【0032】
そして、
図7(a)、(b)に示すように、例えば第1分割型40を型開きするように回動させたときには、連結部材52の規制ピン54は挿通孔50の拡幅部51内を基端側から先端側へ相対移動するものの、拡幅部51を形成する規制面55に当たって先端側への更なる相対移動が規制されるようになっている。また、
図7(a)に示すように、前記挿通孔50は、分割型40、41の回動時に連結部材52の動きが妨げられないように、分割型40、41の対向方向〔
図7(a)の左右方向〕に拡幅されている。
【0033】
図12に示すように、第1分割型40及び第2分割型41の各内周面のうち、第1分割型40及び第2分割型41の対向面側にはガイド部56が形成されている。そして、流路成形型26の型抜き時に第1分割型40及び第2分割型41の各ガイド部56がU字継手11の結合部24(
図11参照)の湾曲した面によって案内され、第1分割型40及び第2分割型41がそれぞれ回動軸53を中心にして互いに逆方向に回動し、型開きできるように構成されている。この場合、
図12に示すように、第1分割型40及び第2分割型41が最も型開きした状態で、第1分割型40及び第2分割型41の直線流路成形型37、38の幅方向における長さdが直線流路成形型37、38の幅Dより短く形成されるため、流路成形型26の型抜き時に第1分割型40及び第2分割型41を型抜きできるようになっている。
【0034】
前記連結部材52、回動軸53、分割型40、41のガイド部56等により、分割型40、41を型抜きする型抜き機構が構成されている。また、前記規制ピン54、直線流路成形型37、38の規制面55等により、連結部材52の先端側への相対移動を規制する規制部が構成されている。
【0035】
次に、上記のように構成されたU字継手11の製造装置を使用したU字継手11の製造方法について説明する。
図1に示すように、流路成形型26を外周部成形型25内に配置した状態で、溶融樹脂をランナー31及びゲート32を介してキャビティ27内へ射出し、U字継手11の一対の直線部13、U字連結部14及び突出部18を有する射出成形体60を成形する。
【0036】
図11に示すように、射出成形体60の成形後、流路成形型26のベース部48を外周部成形型25から後退させる。このとき、両連結部材52の規制ピン54は第1直線流路成形型37及び第2直線流路成形型38の挿通孔50の拡幅部51内を先端側へ相対移動し、規制面55に係合する。
【0037】
図12に示すように、
図11の状態から流路成形型26のベース部48をさらに後退させて外周部成形型25に対する後退距離が所定の距離に達すると、規制ピン54は規制面55に係合して先端側への相対移動が規制されていることから、連結部材52が直線流路成形型37、38とともにベース部48側へ引っ張られる。また、直線流路成形型37、38と分割型40、41との間には、分割型40、41の回動を許容する空間が形成されている。このため、第1分割型40及び第2分割型41のガイド部56がU字継手11結合部24に沿って案内され、第1分割型40が
図12の時計方向及び第2分割型41が
図12の反時計方向に型開きしながら抜き出される。
【0038】
図12の状態から流路成形型26のベース部48をさらに後退させると、分割型40、41は直線流路成形型37、38の型抜き方向に沿って型抜きされる。そして、
図13に示すように、流路成形型26は外周部成形型25から完全に抜き出される。その後、外周部成形型25のキャビティ27に残ったU字継手11は常法に従って取り出される。
【0039】
次に、上記のように構成されたU字継手11の製造装置について作用を説明する。
さて、
図1に示すように、U字継手11の製造装置は、外周部成形型25内に配置される流路成形型26が一対の直線流路成形型37、38とU字流路成形型39とで構成され、U字流路成形型39が第1分割型40及び第2分割型41で構成されている。さらに、両分割型40、41は、連結部材52、その先端部の回動軸53、基端部の規制ピン54により開閉可能に支持されている。
【0040】
このため、
図12に示すように、U字継手11の射出成形後に流路成形型26のベース部48を後退させると、規制ピン54及び連結部材52により分割型40、41に引張力が作用し、分割型40、41のガイド部56がU字継手11の結合部24に案内される。そして、分割型40、41は回動軸53を中心にして回動し、両分割型40、41が互いに離間するように開く。その結果、流路成形型26を外周部成形型25から抜き出すことができ、U字継手11内に一対の直線流路15及びU字流路16を形成することができる。
【0041】
この点に関し、前記特許文献1に記載されているように、従来では2分割したコアを用いてU字形の管部を成形することが困難であるとされていたのに対し、本実施形態では前述のような型抜き機構に基づいて両分割型40、41を回動操作することにより、U字流路16を成形することが可能となったのである。
【0042】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態におけるU字継手11の製造装置は、流路成形型26が外周部成形型25内に配置され、それらの間にキャビティ27が形成される。前記流路成形型26は直線流路15を成形する直線流路成形型37、38とU字流路16を成形するU字流路成形型39とで構成され、U字流路成形型39は第1分割型40と第2分割型41に2分割されている。分割型40、41は、直線流路成形型37、38を型抜きすべく外周部成形型25に対して直線流路成形型37、38を後退させたときに直線流路成形型37、38と分割型40、41との間に形成される空間を利用して回動されるとともに直線流路成形型37、38の型抜き方向に沿って型抜き可能に構成されている。
【0043】
このため、射出成形によってU字継手11の外周部を成形した後、流路成形型26を抜き出すとき、直線流路成形型37、38の型抜きに続いて分割型40、41が型抜きされる。従って、通常の射出成形と同様に、流路成形型26を外周部成形型25から抜き出すという簡単な操作でU字継手11の直線流路15及びU字流路16を速やかに形成することができる。
【0044】
よって、この実施形態のU字継手11の製造装置によれば、簡易な構成でU字継手11の製造効率を向上させることができる。
(2)前記U字流路成形型39はU字流路16を中央部で2分割する分割型40、41により構成され、各分割型40、41が開閉可能に構成されている。そのため、両分割型40、41を左右対称状に形成して、両分割型40、41をバランス良く型抜きすることができる。
【0045】
(3)前記2つの分割型40、41の対向面には、凹凸関係により互いに係合して位置ずれを防止する位置ずれ防止部としての係合凸部46及び係合凹部47が形成されている。従って、型開きした両分割型40、41を型閉めしたとき、両分割型40、41の型合せ面での位置ずれを防止でき、滑らかな曲面形状のU字流路16を形成できるとともに、射出成形を円滑に遂行することができる。
【0046】
(4)直線流路成形型37、38内には挿通孔50が形成されており、分割型40、41内には挿通孔50に連通される保持孔49が形成されており、挿通孔50及び保持孔49には連結部材52が挿通されており、連結部材52の先端部は、保持孔49内に固定された回動軸53を中心にして回動可能に支持されている。挿通孔50内には、直線流路成形型37、38に対する連結部材52の先端側への相対移動を規制する規制部が設けられている。
【0047】
このため、直線流路成形型37、38はベース部48とともに型抜きでき、分割型40、41は連結部材52の動きにより回動軸53を中心にして回動し、型抜きすることができる。
【0048】
(5)挿通孔50は、分割型40、41の回動時に連結部材52の動きが妨げられないように形成されている。このため、分割型40、41の回動を円滑にでき、型抜きを速やかに行うことができる。
【0049】
(6)規制部は、直線流路成形型37、38を型抜きすべく外周部成形型25に対して直線流路成形型37、38を所定の距離後退させたときに、直線流路成形型37、38に対する連結部材52の先端側への相対移動を規制する。このため、連結部材52の相対移動の規制が開始されたときには、直線流路成形型37、38と分割型40、41との間に分割型40、41の回動のためのスペースが形成されることとなり、型抜きを円滑に行うことができる。
【0050】
(7)U字継手の製造方法は、外周部成形型25内に流路成形型26を配置した後、キャビティ27内に溶融樹脂を射出して射出成形体60を成形し、次いで流路成形型26を、U字流路成形型39の2つの分割型40、41を型開きして外周部成形型25から抜き出してU字継手11を製造するものである。このため、インサート(入れ子)を用いた通常の射出成形と同様の操作で容易にU字継手11を製造することができ、U字継手11の製造効率を向上させることができる。
【0051】
(8)前記2つの分割型40、41はU字継手11の直線流路15間に成形される結合部24により均等に型開きし、流路成形型26が外周部成形型25から抜き出される。そのため、分割型40、41の型抜きを円滑に行うことができ、U字継手11を安定した状態で製造することができる。
【0052】
<第2実施形態>
以下、
図14~
図18に従って第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
図14(a)、(b)に示すように、Y字継手71の継手本体71Aは、直線状に延在する本体部72と、本体部72の途中から分岐して延在する分岐部73とを有している。
図14(b)に示すように、本体部72内には、直線状の軸線mに沿って延在する接続流路74が形成されている。接続流路74には、延在方向の中央部に位置する縮径部75と、両端部に位置する拡径部76とが形成されている。
【0054】
分岐部73内には、直線状の軸線nに沿って延在する直線流路77と、直線流路77の一端部と接続流路74の縮径部75とにそれぞれ接続され、直線流路77の軸線nに対して湾曲して延在する湾曲流路78とが形成されている。接続流路74の軸線mと直線流路77の軸線nとは鋭角αにて交わっている。
【0055】
本体部72の両端部及び分岐部73の内周部には、第1実施形態と同様な熱融着部21が設けられている。継手本体71Aにおける熱融着部21以外の部分は、架橋ポリオレフィン樹脂等の架橋樹脂で形成されている。
【0056】
接続流路74の両拡径部76及び直線流路77には、それぞれ樹脂パイプ17が接続される。
図14(a)に示すように、本体部72の両端部及び分岐部73の外周面にはそれぞれ一対の支持突部22が設けられ、各支持突部22には第1実施形態と同様な端子23が支持されている。
【0057】
次に、Y字継手71の製造装置について説明する。
図15に示すように、このY字継手71の製造装置においては、Y字継手71の外周部を成形する外周部成形型79の収容部内に、接続流路74を成形する一対の接続流路成形型82、83、直線流路77を成形する直線流路成形型86、及び湾曲流路78を成形する湾曲流路成形型87からなる流路成形型80が配置される。すなわち、直線流路成形型86、湾曲流路成形型87、及び接続流路成形型82,83は、接続流路成形型82,83の軸線mに対して直線流路成形型86の軸線nが鋭角αにて交わるように配置される。
【0058】
接続流路成形型82、83は、それぞれ直線状に延在するとともに接続流路74の縮径部75の中央部にて2分割されており、接続流路74の軸線方向に沿って互いに離間する方向に型抜き可能になっている。接続流路成形型82、83の互いの対向面には、係合凸部84と係合凹部85とがそれぞれ設けられ、接続流路成形型82,83の型締め状態における位置ずれを防止する。
【0059】
直線流路成形型86の基端部には、ベース部88がねじ(図示略)により固定されている。
直線流路成形型86は、第1実施形態の直線流路成形型37,38と同様な構成を有している。すなわち、直線流路成形型86内には、挿通孔90が形成されている。湾曲流路成形型87内には挿通孔90に連通される保持孔89が形成されている。挿通孔90及び保持孔89には連結部材91が挿通されており、連結部材91の先端部は、保持孔89内に固定された回動軸92を中心にして回動可能に支持されている。挿通孔90内には、直線流路成形型86に対する連結部材91の先端側への相対移動を規制する規制部が設けられている。この規制部は、第1実施形態と同様な構成を有しており、連結部材91の基端部に設けられた規制ピン93、直線流路成形型86の規制面94等により構成される。
【0060】
湾曲流路成形型87は、第1実施形態の分割型40,41と基本的には同様な構成を有している。ただし、湾曲流路成形型87には、係合凸部46や係合凹部47に相当する部位が形成されていない。
図18に示すように、湾曲流路成形型87における接続流路成形型82,83の外周面に対向する対向面は、同外周面に当接可能な湾曲凹面状をなしている。
【0061】
次に、上記のように構成されたY字継手71の製造装置を使用したY字継手71の製造方法について説明する。
図16に示すように、流路成形型80を外周部成形型79内に配置した状態で、溶融樹脂をランナー及びゲート(いずれも図示略)を介してキャビティ81内へ射出し、Y字継手71の本体部72及び分岐部73を有する射出成形体95を成形する。
【0062】
その後、
図17に示すように、外周部成形型79から、接続流路成形型82、83及び直線流路成形型86をそれぞれ後退させる。このとき、連結部材91の規制ピン93は挿通孔90内を先端側へ相対移動し、規制面94に係合する。また、直線流路成形型86と湾曲流路成形型87との間には、湾曲流路成形型87の回動を許容する空間が形成される。
【0063】
図17の状態から直線流路成形型86をさらに後退させると、
図18に示すように、規制ピン93は規制面94に係合しており先端側への相対移動が規制されていることから、連結部材91は直線流路成形型86とともに後退される。このため、湾曲流路成形型87が回動軸92を中心に回動されながら湾曲流路78の湾曲面に沿って案内され、直線流路成形型86の型抜き方向に沿って抜き出される。
【0064】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(9)Y字継手71は、湾曲流路78における直線流路77に接続された端部とは反対側の端部が接続された接続流路74を有するものである。流路成形型80は、直線流路77を成形する直線流路成形型86と、湾曲流路78を成形する湾曲流路成形型87とを有し、湾曲流路成形型87が、直線流路成形型の型抜き動作に伴って回動されることにより型抜き可能に構成されている。また、流路成形型80は、接続流路74を成形する接続流路成形型82,83を有している。
【0065】
こうした構成によれば、簡易な構成でY字継手71の製造効率を向上させることができる。
(10)接続流路成形型82,83は直線状に延在するものであり、直線流路成形型86、湾曲流路成形型87、及び接続流路成形型82,83は、接続流路成形型82,83の軸線mに対して直線流路成形型86の軸線nが鋭角にて交わるように配置される。
【0066】
接続流路74の軸線mと直線流路77の軸線nとが鋭角αにて交わる従来構成のY字継手においては、接続流路74に対して直線流路77が直接接続される。この場合、直線流路77の内周面と接続流路74の内周面とによって形成される継手本体71Aのコーナ部96は上記鋭角αにて形成される。そのため、Y字継手を成形する際に該コーナ部にウエルドと称される成形不良が発生しやすい。また、先鋭なコーナ部には応力集中が生じやすく、成形不良と相まって強度が不足するおそれがある。
【0067】
この点、上記構成の製造装置により製造されるY字継手71においては、直線流路77と接続流路74とが湾曲流路78を介して接続される。このため、接続流路74の軸線mと直線流路77の軸線nとが鋭角αにて交わる構成をとりつつ、コーナ部96が上記鋭角αよりも起きた形状になる。したがって、コーナ部96に成形不良が発生することを抑制できるとともに応力が集中することを抑制でき、強度不足を回避できる。
【0068】
なお、前記実施形態を、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記U字継手11の製造装置及び製造方法を、実施形態で製造したU字継手11を2つ以上連結したU字状の継手に適用してもよい。
【0069】
・前記U字継手11の2つの直線部13について、一方の直線部13と他方の直線部13の長さが異なるように構成してもよい。この場合、熱融着部21の位置も、一方の直線部13と他方の直線部13で異なるように構成してもよい。
【0070】
・前記ベース部48への直線流路成形型37、38の固定を、溶接により実施したり、差し込んで回すロック機構により実施したりしてもよい。
・前記型抜き機構を構成する規制ピン54をベース部48に固定するとともに、連結部材52には規制ピン54が収容される長孔を形成してもよい。この場合にも、前記実施形態と同様の操作で分割型40、41を型抜きすることができる。
【0071】
・前記U字継手11として、前記電熱線20を省略し、加熱治具により熱融着部21を加熱溶融するとともに、樹脂パイプ17も加熱治具で加熱溶融するように構成したU字状の熱融着継手に適用してもよい。また、前記電熱線20及び熱融着部21を省略し、樹脂パイプ17の端部を接着剤で接続するU字状の継手に適用してもよい。さらに、電熱線20及び熱融着部21の代わりに、ねじ部材やワンプッシュ継手(ワンタッチ継手)を構成する部材を備えたU字状の継手に適用してもよい。
【0072】
・前記規制ピン54を、連結部材52の基端部に固着するように構成してもよい。
・直線流路成形型86、湾曲流路成形型87、及び接続流路成形型82,83を、接続流路成形型82、83の軸線mに対して直線流路成形型86の軸線nが直交するように配置することもできる。
【0073】
・例えば第2実施形態において、連結部材91を省略することもできる。この場合、外周部成形型79に対して直線流路成形型86を後退させたときに直線流路成形型86と湾曲流路成形型87との間に形成される空間を利用して湾曲流路成形型87を回動させて型抜きする機構を別途設けるようにすればよい。また、第1実施形態についても同様な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
11…U字継手、15…直線流路、16…U字流路、24…結合部、25、79…外周部成形型、26、80…流路成形型、27、81…キャビティ、37…第1直線流路成形型、38…第2直線流路成形型、39…U字流路成形型、40…第1分割型(湾曲流路成形型)、41…第2分割型(湾曲流路成形型)、46、84…係合凸部(位置ずれ防止部)、47、85…係合凹部(位置ずれ防止部)、48、88…ベース部、49、89…保持孔、50、90…挿通孔、52、91…連結部材、53、92…回動軸、54、93…規制ピン(規制部)、55,94…規制面(規制部)、60、95…射出成形体、71…Y字継手、74…接続流路、77…直線流路、78…湾曲流路、82、83…接続流路成形型、86…直線流路成形型、87…湾曲流路成形型、96…コーナ部。