(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095083
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
H01H 13/20 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H01H13/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208194
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】平谷 光利
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS33H
5G206AS33J
5G206AS33M
5G206BS55H
5G206BS55J
5G206BS55M
5G206CS04H
5G206DS17H
5G206DS17J
5G206GS05
5G206GS11
5G206GS14
5G206GS21
5G206KS34
5G206KS39
5G206KS57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】キートップの復帰不良を抑制し、操作性の良好な押釦スイッチ用部材を提供する。
【解決手段】厚さ方向に窪む又は貫通する空間32を備えたベース部30と、空間32内を往復可動なキートップ11と、キートップ11に固定され空間32内を往復可動な第1磁石12と、第1磁石12よりキートップ11の押圧方向と逆側に固定され第1磁石12と磁力で引き合う第2磁石13と、を備える押釦スイッチ用部材1であって、第2磁石13は、キートップ11の往復移動時に挿通可能な第1貫通孔14を備え、第1磁石12は、第1貫通孔14の外周領域にて第2磁石13に吸着可能で、キートップ11の押圧前は第1磁石12と第2磁石13とが磁力で吸着し、キートップ11を押圧すると磁力に反して第1磁石12を第2磁石13から引き離し、押圧解除後は第1磁石12が第2磁石13側に移動して再び吸着する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に窪む若しくは貫通する空間を備えたベース部と、
前記空間内にて往復可動であり、ゴム状弾性体からなるキートップと、
前記キートップに固定されていて、前記キートップの前記空間内への押圧と当該押圧の解除によって前記空間内を往復可動な第1磁石と、
前記第1磁石よりも前記キートップを押圧する方向と逆側の先端方向において固定され、前記第1磁石と磁力を通じて引き合う第2磁石と、
を備える押釦スイッチ用部材であって、
前記第2磁石は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔を備え、
前記第1磁石は、前記第1貫通孔の外周領域にて前記第2磁石に吸着可能であって、
前記キートップを押圧する前には、前記第1磁石と前記第2磁石とが磁力で吸着しており、
前記キートップを前記空間内に向けて押圧すると、前記磁力に反して前記第1磁石を前記第2磁石から引き離し可能であり、
前記キートップの押圧を解除すると、前記第1磁石と前記第2磁石とが引き合い、前記第1磁石が前記第2磁石の方向に移動して再び吸着可能であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記第2磁石は、前記ベース部において前記キートップの押圧方向と逆側の先端方向に開口する開口部を跨ぐように、前記第2磁石の径方向における外周端部が前記ベース部に保持されることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記第1磁石と前記第2磁石との間に配置され、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔を有するプレートを備え、
前記プレートは、前記開口部を跨ぐように、前記プレートの径方向における外周端部が前記ベース部に保持され、
前記第2磁石は、前記径方向において前記第2貫通孔より大きくかつ前記開口部より小さい磁石であって、前記プレート上に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記第1磁石は、前記キートップの押圧方向の先端に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記第1磁石または前記キートップにおける押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載機器、通信機器、オーディオ機器、家庭用電気機器等の多種多様な機器のスイッチとして、キートップ、ドーム部およびベース部を備える押釦スイッチ用部材を用いたものが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
図6は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【0004】
図6に示す押釦スイッチ用部材100は、基板110上に配置され、基板110に向かう方向(
図6の下方向)およびその逆方向(
図6の上方向)に弾性的に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材100は、キートップ101と、キートップ101から基板110側へ突出するプッシャー部102と、キートップ101の平面視にて径方向外側にスカート状に接続されるドーム部103と、ドーム部103の径方向外側に連接するベース部104と、を備える。押釦スイッチ用部材100は、プッシャー部102の先端に、基板110上の固定接点106,106に対して接触と非接触とを可能とする可動接点105を備える。キートップ101、プッシャー部102、ドーム部103およびベース部104は、同一種類のゴム状弾性体からなる。
【0005】
操作者がキートップ101をその上から押圧していくと、ドーム部103が弾性変形(座屈)し、可動接点105が固定接点106,106に接触して、固定接点106,106を導通させる。操作者がキートップ101の押圧を解除すると、ドーム部103は自身の弾性力により元の形状に戻るため、キートップ101、プッシャー部102および可動接点105は上昇し、初期状態に戻る。押釦スイッチ用部材100によれば、ドーム部103の弾性変形により操作者に良好なクリック感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-233973号公報
【特許文献2】特開2000-76959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子機器の高性能化により、押釦スイッチ用部材の使用頻度は高まり、押釦スイッチ用部材の繰り返し打鍵に対する長寿命化が求められている。しかしながら、このような押釦スイッチ用部材は、スイッチがオンになった後の急激な荷重の上昇を十分に抑えることが困難である。ドーム部はゴム状弾性体で形成されているため、スイッチがオンになった後もキートップに押圧荷重が加わることが繰り返されると、プッシャー部とキートップとに生じる撓みにより薄いドーム部にストレスが加わり、ドーム部が破断してキートップの復帰不良が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、キートップの復帰不良を抑制し、操作性の良好な押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、厚さ方向に窪む若しくは貫通する空間を備えたベース部と、前記空間内にて往復可動であり、ゴム状弾性体からなるキートップと、前記キートップに固定されていて、前記キートップの前記空間内への押圧と当該押圧の解除によって前記空間内を往復可動な第1磁石と、前記第1磁石よりも前記キートップを押圧する方向と逆側の先端方向において固定され、前記第1磁石と磁力を通じて引き合う第2磁石と、を備える押釦スイッチ用部材であって、前記第2磁石は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔を備え、前記第1磁石は、前記第1貫通孔の外周領域にて前記第2磁石に吸着可能であって、前記キートップを押圧する前には、前記第1磁石と前記第2磁石とが磁力で吸着しており、前記キートップを前記空間内に向けて押圧すると、前記磁力に反して前記第1磁石を前記第2磁石から引き離し可能であり、前記キートップの押圧を解除すると、前記第1磁石と前記第2磁石とが引き合い、前記第1磁石が前記第2磁石の方向に移動して再び吸着可能である。
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記第2磁石は、前記ベース部において前記キートップの押圧方向と逆側の先端方向に開口する開口部を跨ぐように、前記第2磁石の径方向における外周端部が前記ベース部に保持されても良い。
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記第1磁石と前記第2磁石との間に配置され、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔を有するプレートを備え、前記プレートは、前記開口部を跨ぐように、前記プレートの径方向における外周端部が前記ベース部に保持され、前記第2磁石は、前記径方向において前記第2貫通孔より大きくかつ前記開口部より小さい磁石であって、前記プレート上に保持されていても良い。
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記第1磁石は、前記キートップの押圧方向の先端に固定されていても良い。
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記第1磁石または前記キートップにおける押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キートップの復帰不良を抑制し、操作性の良好な押釦スイッチ用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重-ストローク曲線を示す。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【
図6】
図6は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
図2は、
図1の平面図のA-A線断面図を示す。
【0014】
(1)概略構成
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、厚さ方向(
図2の上下方向)に窪む若しくは貫通する空間32を備えたベース部30と、空間32内にて往復可動であり、ゴム状弾性体からなるキートップ11と、キートップ11に固定されていて、キートップ11の空間32内への押圧と当該押圧の解除によって空間32内を往復可動な第1磁石12と、第1磁石12よりもキートップ11を押圧する方向と逆側の先端方向(
図2の上方向)において固定され、第1磁石12と磁力を通じて引き合う第2磁石13と、を備える。第2磁石13は、キートップ11の往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔14を備える。第1磁石12は、第1貫通孔14の外周領域にて第2磁石13に吸着可能である。押釦スイッチ用部材1は、キートップ11を押圧する前には、第1磁石12と第2磁石13とが磁力で吸着している(
図3のaを参照)。キートップ11を空間32内に向けて押圧すると、押釦スイッチ用部材1は、磁力に反して第1磁石12を第2磁石13から引き離し可能である(
図3のcを参照)。そして、キートップ11の押圧を解除すると、押釦スイッチ用部材1は、第1磁石12と第2磁石13とが引き合い、第1磁石12が第2磁石13の方向に移動して再び吸着可能である(
図3のaを参照)。押釦スイッチ用部材1の使用例については、
図3を用いて詳細を後述する。
【0015】
この実施形態において、押釦スイッチ用部材1は、回路基板(以後、単に「基板」とも称する)50上に配置され、キートップ11から基板50に向かう方向への押圧と当該押圧の解除によって、キートップ11が押圧方向(
図2の下方向)およびその逆方向(
図2の上方向)に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材1は、好ましくは、第1磁石12またはキートップ11における押圧方向側(
図2の下側)の面に固定される導電性の可動接点15をさらに備える。この実施形態において、可動接点15は、第1磁石12における押圧方向側の面(すなわち、第2磁石13と反対側の面)に備えられる。また、可動接点15は、好ましくは、可動接点15よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としている。この実施形態において、可動接点15は、基板50上の当該可動接点15に対向する位置に配置された2つの固定接点16,16に電気的に接続可能としている。なお、固定接点16は、基板50上に3つ以上備えられていても良い。
【0016】
(1)ベース部
ベース部30は、押圧および当該押圧の解除によりキートップ11が往復移動する空間32を備える部材である。ベース部30において、空間32は、キートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(
図2の上方向)に開口する開口部34を備える。この実施形態において、空間32は、厚さ方向に貫通する空間である。すなわち、空間32は、開口部34から基板50まで貫通する空間である。固定接点16,16は、好ましくは、基板50上であって、かつ空間32の内部に配置されている。この実施形態において、空間32は、開口部34を略円形とする円筒形状の空間である。ただし、開口部34は、少なくともキートップ11および第1磁石12が通過可能な形状であれば、その形状に制約はなく、例えば、楕円形状、多角形状等であっても良い。また、空間32は、その内部に固定接点16,16が配置可能であって、可動接点15と固定接点16,16とが接触可能な形状であれば、筒形状以外の形状を有するものであっても良い。
【0017】
ベース部30は、キートップ11の押圧によりキートップ11が基板50側へ移動可能な距離(ストローク)を確保するためのものであり、ベース部30の厚さ(
図2の上下方向の長さ)に応じてストロークを調整することができる。この実施形態において、ベース部30の厚さは、好ましくは、0.5~30mm、より好ましくは、1~2mmである。ただし、ベース部30の厚さは、押釦スイッチ用部材1の用途等に応じて、適宜設計可能である。ベース部30は、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等の樹脂、ガラス、セラミックス、キートップ11より高硬度のゴム状弾性体等により形成されることが好ましい。
【0018】
(2)キートップ
キートップ11は、スイッチのオン、オフまたはその両方のときに、指やその他の押圧操作手段による基板50の方向(
図2の下方向)への押圧を受けて空間32内を基板50の方向に移動可能な部材である。また、キートップ11は、当該押圧の解除を受けて空間32内を基板50の方向と逆方向(
図2の上方向)に移動可能な部材である。キートップ11は、押圧部、押釦部、頭部等と称されることもある。この実施形態において、キートップ11は、円柱形状の部材である。ただし、キートップ11の形状は特に制約されず、例えば、多角柱状等であっても良い。
【0019】
キートップ11は、ゴム状弾性体からなる部材である。ゴム状弾性体としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いるのが好ましい。上記材料の候補の内では、特に、ゴム弾性や耐熱、耐寒性、圧縮永久歪に優れ、酸化防止剤や可塑剤、軟化剤を含まずブリード汚染の心配が殆どないシリコーンゴムが好ましい。また、ゴム状弾性体は、シリカ等のフィラーを含有していても良い。
【0020】
(3)第1磁石
第1磁石12は、好ましくは、キートップ11の押圧方向の先端に固定されていて、キートップ11の往復移動に伴って空間32内を往復可動な磁石である。第1磁石12は、好ましくは、N極およびS極がその厚さ方向(
図2における上下方向)の各側に着磁され、キートップ11の押圧方向の先端面に固定されている。第1磁石12は、好ましくは、その径方向において第1貫通孔14より大きく、かつ開口部34より小さい磁石である。よって、第1磁石12は、空間32内を往復移動可能であり、かつ第1貫通孔14の外周領域にて第2磁石13に吸着可能である。この実施形態において、第1磁石12は、その平面視形状を略円形とする磁石である。ただし、第1磁石12の形状は、特に制約されず、例えば、略楕円形、略多角形等であっても良い。第1磁石12は、ネオジム系、フェライト系、サマリウムコバルト系等の磁石が好ましく、ネオジム磁石がより好ましい。
【0021】
(4)第2磁石
第2磁石13は、第1磁石12よりもキートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(
図2の上方向)に固定され、第1磁石12と磁力を通じて引き合うようにN極およびS極が着磁されている。第2磁石13は、好ましくは、開口部34を跨ぐように、第2磁石13の径方向における外周端部がベース部30に保持される(
図2を参照)。第2磁石13は、キートップ11の往復移動において挿通可能な大きさの第1貫通孔14を備える。キートップ11は、指やその他の押圧操作手段による押圧を受けると、弾性変形してキートップ11の径方向に膨張する。そして、キートップ11は、当該弾性変形した状態で空間32内を往復移動する(
図3を参照)。このため、第1貫通孔14は、当該弾性変形により膨張したキートップ11が挿通可能な大きさであることが好ましい。すなわち、第1貫通孔14は、キートップ11が押圧によって最も径方向に膨張しても挿通可能な開口部を有する。この実施形態において、第2磁石13は、その平面視形状を略円形とする第1貫通孔14を中央部に有する略円環状の磁石である。ただし、第2磁石13の形状は、第1貫通孔14を備え、第1磁石14よりもキートップ11の押圧方向と逆側の先端方向に固定可能な形状であれば、略円環形状以外の形状であっても良い。また、第1貫通孔14は、キートップ11の往復移動において挿通可能な大きさの貫通孔であれば、例えば、略楕円形、略多角形等、略円形以外の形状であっても良い。第2磁石13は、ネオジム系、フェライト系、サマリウムコバルト系等の磁石が好ましく、ネオジム磁石がより好ましい。第2磁石13は、第1磁石12と同一種類の材料からなる磁石であっても良いし、異なる種類の材料からなる磁石であっても良い。第1磁石12および第2磁石13は、キートップ11を最下点まで押し下げた位置からキートップ11への押圧を解除した際に、互いに引き合う結果、第1磁石12が第2磁石13に向けて上昇可能なレベルの磁力を有していれば良い。
【0022】
(5)可動接点
可動接点15は、可動接点15よりも押圧方向に位置する別の接点に接触してスイッチをオンまたはオフさせる部材である。この実施形態において、可動接点15は、第1磁石12における押圧方向側の面に接着され、キートップ11の往復移動に伴って基板50上の固定接点16,16に対して接触と非接触とを可能とする部材である。可動接点15は、好ましくは、金属や導電性のゴム状弾性体等の導電性を有する材料から構成される。可動接点15の形状は、固定接点16,16に対して接触と非接触とを可能とする形状であれば、特に制約されない。なお、可動接点15は、押釦スイッチ用部材1にとって必須の部材ではない。例えば、キートップ11の直下にメタルドームを配置して、キートップ11の先端がメタルドームを押下し、メタルドームの直下に配置された固定接点16,16を導通させるようにしても良い。以後の各実施形態においても同様である。
【0023】
次に、押釦スイッチ用部材1の使用例について説明する。
【0024】
図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。
図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重-ストローク曲線を示す。なお、
図4は、操作者がキートップ11を押圧することにより可動接点15が固定接点16,16に接触してから、さらに操作者がキートップ11を押し込み、その後操作者が当該押し込みを解除するまでの往復の変位(ストローク)と荷重との関係を示す曲線である。
図4において、実線で示す曲線は、操作者がキートップ11を押圧する押下げ時のストロークと荷重との関係を示す曲線であり、点線で示す曲線は、操作者がキートップ11への押圧を解除する押上げ時のストロークと荷重との関係を示す曲線である。
【0025】
キートップ11が押圧されていない無荷重状態においては、可動接点15と固定接点16,16とは非接触状態を維持している(
図3のaおよび
図4の点Aを参照)。この無荷重状態において、第1磁石12は、第1貫通孔14の外周領域にて第2磁石13に磁力を通じて吸着している。操作者がキートップ11を押圧していくと、キートップ11の弾性変形によりストロークとともに荷重は増加していく(
図3のbおよび
図4の矢印1を参照)。押釦スイッチ用部材1は、荷重がピーク荷重に達するまで、キートップ11の弾性変形に伴ってストロークおよび荷重が増加していく。ピーク荷重とは、キートップ11の押圧により第1磁石12を第2磁石13から引き離させるのに必要な最大荷重である。
図4に示す点Bは、ピーク荷重を示すピーク荷重点である。荷重がピーク荷重に達すると、第1磁石12が第2磁石13との吸着力に反して第2磁石13から引き離されて荷重が低下する(
図4の矢印2を参照)。
【0026】
第1磁石12が基板50に達すると、第1磁石12の押圧方向側の面に固定された可動接点15と基板50上の2つの固定接点16,16とが接触する(
図3のcおよび
図4の点Cを参照)。
図4に示す点Cは、可動接点15が固定接点16,16に接触した点である。この接触により、一方の固定接点16から可動接点15を通じて他方の固定接点16へと通電経路が形成されるため、スイッチがオン(若しくはオフ)となる。可動接点15と固定接点16,16の接触後も操作者がキートップ11を押圧すると、キートップ11がさらに弾性変形して膨張することにより荷重が再び増加する(
図3のdおよび
図4の矢印3を参照)。
【0027】
操作者がキートップ11への押圧を解除すると、弾性変形していたキートップ11は自身の復元力によって元の形状に戻ろうとし、荷重が低下する(
図3のcおよび
図4の矢印4を参照)。
図4に示す点Dは、キートップ11への押圧が解除された点である。その後、第1磁石12と第2磁石13とが磁力により引き合うことにより第1磁石12が第2磁石13の方向に移動して再び吸着し、弾性変形していたキートップ11が初期状態である無荷重状態に戻る(
図3のb,aおよび
図4の矢印5,6を参照)。
【0028】
この実施形態に係る押釦スイッチ用部材1では、従来の押釦スイッチ用部材(
図6を参照)のようなスカート状のドーム部を備えず、第1磁石12と第2磁石13との間の磁力によりスイッチのオンおよびオフの切り替えを可能とする。このため、ドーム部の破断によるキートップの復帰不良を抑制することができる。特に、押釦スイッチ用部材1は、第1磁石12と第2磁石13との間の磁力によりスイッチのオンおよびオフの切り替えを行うため、長期的な使用に伴う材料の劣化を低減し、長期にわたり安定した操作性を提供することができる、また、押釦スイッチ用部材1は、キートップ11がゴム状弾性体で形成されるため、操作者がキートップ11を押圧することによりキートップ11をその長さ方向に変形させながら、第1磁石12および第2磁石13によりスイッチのオンおよびオフを切り替えることができ、この結果、操作者に良好な押圧感を提供することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の
図2と同視の縦断面図を示す。
【0031】
第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と類似の構造を有するが、第2磁石13に代えて第2磁石13aを備える点およびプレート20を新たに備える点において、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。
【0032】
第2磁石13aは、第1磁石14よりもキートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(
図5の上方向)に固定され、プレート20を介して第1磁石12と磁力を通じて引き合うようにN極およびS極が着磁されている。この点は、第1実施形態と同様である。第2磁石13aは、第2磁石13と同様に、キートップ11の往復移動において挿通可能な大きさの第1貫通孔14を備える。第2磁石13aは、好ましくは、その径方向において開口部34より小さい磁石であって、プレート20上に保持されている。第2磁石13aの材料および形状については、第2磁石13と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0033】
プレート20は、第1磁石12と第2磁石13aとの間に配置される部材である。プレート20は、好ましくは、開口部34を跨ぐように、プレート20の径方向における外周端部がベース部30に保持される(
図5を参照)。また、プレート20は、キートップ11の往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔22を有する。第2貫通孔22は、第1貫通孔14と同様に、押圧を受けて弾性変形により膨張したキートップ11が挿通可能な大きさであることが好ましい。この実施形態において、プレート20は、その平面視形状を略円形とする第2貫通孔22を中央部に有する略円環状の部材である。ただし、プレート20の形状は、第2貫通孔22を備え、第1磁石12と第2磁石13aとの間に配置され、開口部34を跨ぐようにベース部30に保持される形状であれば、略円環形状以外の形状であっても良い。また、第2貫通孔22は、キートップ11の往復移動において挿通可能な大きさの貫通孔であれば、例えば、略楕円形、略多角形等、略円形以外の形状であっても良い。プレート20は、第1磁石12と第2磁石13aとの間の磁力を遮断しないシート状部材である。すなわち、プレート20は、第1磁石12と第2磁石13aとがプレート20を介して磁力を通じて引き合うことが可能なシート状部材である。プレート20は、その構成材料を問わないが、例えば、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂系、ガラス繊維含浸エポキシ樹脂、アクリル系のシートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートのシートがより好ましい。プレート20の厚さは、0.1mm~3mmが好ましく、0.2mm~2mmがより好ましい。このように構成された押釦スイッチ用部材1aもまた、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0035】
先述の各実施形態において、第1磁石12は、キートップ11の押圧方向の先端(先端面)に固定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1磁石12は、当該先端面ではなく、キートップ11のうち第2磁石13,13aより当該押圧方向の先端側の所定位置に固定されていても良い。この場合、第1磁石12は、キートップ11の外周を囲う略円環状の磁石であって、第1貫通孔14の外周領域にて第2磁石13,13aに吸着可能であることが好ましい。また、この場合、可動接点15は、キートップ11の押圧方向の先端面に固定されていることが好ましい。
【0036】
また、ベース部30は、基板50上に設けられていなくても良い。また、ベース部30の空間32は、厚さ方向に貫通する筒形状の空間に限定されず、例えば、開口部34を有する一端開放型のカップ形状であっても良い。この場合、固定接点16,16は、当該カップ形状の空間32の底部に設けられていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、自動車、車載用電子機器、携帯通信機器、パーソナルコンピューター、カメラ、家庭用オーディオ機器、家庭用電化製品等の押圧式のキーを備える各種機器に用いるための押釦スイッチを構成するために利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,1a・・・押釦スイッチ用部材、11・・・キートップ、12・・・第1磁石、13,13a・・・第2磁石、14・・・第1貫通孔、15・・・可動接点、16・・・固定接点(別の接点の一例)、20・・・プレート、22・・・第2貫通孔、30・・・ベース部、32・・・空間、34・・・開口部。