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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095105
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220621BHJP
   B65D 51/16 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D51/16 300
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208231
(22)【出願日】2020-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】広末 康弘
(72)【発明者】
【氏名】川崎 昭孝
【テーマコード(参考)】
3E013
3E084
【Fターム(参考)】
3E013BA06
3E013BA08
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BD01
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF24
3E013BF33
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084FA09
3E084FD02
3E084GB12
3E084KA06
3E084LB02
(57)【要約】
【課題】電子レンジ加熱した際に発生する蒸気を容器外部にスムーズに放出できると共に、容器内部への異物の侵入を防止することができ、しかも、薄肉の合成樹脂製シートでも成形不良を起こしにくくて安価に製造できる、包装用容器を提供する。
【解決手段】合成樹脂製シートから成形された容器本体1と、容器本体1に嵌合する蓋体2と、を備えた、電子レンジ対応の包装用容器であって、蓋体2の天面部20には、第1方向に沿って下側に湾曲すると共に第1方向と直交する第2方向に沿って下側に湾曲する半球状凹面部29が設けられ、半球状凹面部29には、シートが第1方向に沿って線状に切断された2本のスリット30が第2方向に間隔を空けて設けられ、半球状凹面部29における各スリット30よりも第2方向の外側にはそれぞれ変形抑制リブ34が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製シートから成形された容器本体と、容器本体に嵌合する蓋体と、を備えた、電子レンジ対応の包装用容器であって、
蓋体の天面部には、第1方向に沿って下側に湾曲すると共に第1方向と直交する第2方向に沿って下側に湾曲する半球状凹面部が設けられ、
半球状凹面部には、シートが第1方向に沿って線状に切断された2本のスリットが第2方向に間隔を空けて設けられ、
半球状凹面部における各スリットよりも第2方向の外側にはそれぞれ、第1方向に沿ってスリットよりも長く延び、上向き又は下向きに突出した凸条である変形抑制リブが設けられている、包装用容器。
【請求項2】
変形抑制リブは、半球状凹面部の第1方向の中央部において、スリットに接近して設けられている、請求項1記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容された食品を閉蓋状態のままで電子レンジによって加熱することができる、電子レンジ対応の包装用容器に関する。特に、レンジ麺等のような調理済み食品の収容に適した包装用容器に関し、電子レンジ加熱した際に発生する蒸気をスムーズに放出するとともに、虫などの異物の混入を防ぎ、さらには安価で薄肉な合成樹脂製シートで製造可能な包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、コンビニエンスストアなどに、調理済みのスープやレンジ麺などが包装用容器に包装されて陳列されている。これらの包装用容器には、電子レンジで加熱した際に発生する蒸気をスムーズに放出することができるとともに、虫などの異物の混入を防ぐことが求められている。さらにこの種の容器は一度に大量生産されるため、安価で品質の良い製品が求められる。
【0003】
このような容器として、下記特許文献1には、蓋体天板部に設けられた凹部の底面に、本体側に一方向のみに湾曲した凹面が設けられ、この凹面に、凹面の湾曲方向に沿った複数本の切込みが所定間隔で設けられたものが記載されている。
【0004】
しかしながら、この容器では、凹面が一方向のみに湾曲していることから、凹部の壁面の上下方向の寸法は、湾曲方向の中央部において最大となり、湾曲方向の両端部において最小となる。このように凹部の壁面の上下方向の寸法が湾曲方向に沿って変化していると、薄肉の合成樹脂製シートで成形した際に、合成樹脂製シートが湾曲方向の両端部においては小さく引き延ばされる一方、湾曲方向の中央部においては大きく引き延ばされることになる。そのため、凹部の壁面の形状が安定しにくく、更には、凹部の底面の形状も安定しにくく、成形不良が生じやすい。また、成形不良を改善するために合成樹脂シートの厚みを厚くすると、容器が高価なものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6752539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子レンジ加熱した際に発生する蒸気を容器外部にスムーズに放出できると共に、容器内部への異物の侵入を防止することができ、しかも、薄肉の合成樹脂製シートでも成形不良を起こしにくくて安価に製造できる包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装用容器は、合成樹脂製シートから成形された容器本体と、容器本体に嵌合する蓋体と、を備えた、電子レンジ対応の包装用容器であって、蓋体の天面部には、第1方向に沿って下側に湾曲すると共に第1方向と直交する第2方向に沿って下側に湾曲する半球状凹面部が設けられ、半球状凹面部には、シートが第1方向に沿って線状に切断された2本のスリットが第2方向に間隔を空けて設けられ、半球状凹面部における各スリットよりも第2方向の外側にはそれぞれ、第1方向に沿ってスリットよりも長く延び、上向き又は下向きに突出した凸条である変形抑制リブが設けられている。
【0008】
この構成によれば、半球状凹面部が第1方向と第2方向の2方向に湾曲しているので、成形不良が生じにくく、半球状凹面部を安定して成形することができる。半球状凹面部には、第1方向に沿って2本のスリットが設けられているが、このスリットは、シートが線状に切断されたものであるので、電子レンジによる加熱前において、スリットからの容器内部への異物の侵入を阻止することができる。そして、2本のスリットにより、半球状凹面部は、2本のスリット間の弁部と、弁部の第2方向の両側に位置する一対のベース部に区画される。電子レンジ加熱時に、容器内部で発生する蒸気によって容器の内圧が上昇すると、その内圧を受けて半球状凹面部は上側に変形しようとするが、一対のベース部にはそれぞれ凸条である変形抑制リブが設けられているため、一対のベース部は相対的に上側に変形しにくく、弁部は相対的に変形しやすい。そのため、電子レンジ加熱時に、一対のベース部は上側に変形せず、弁部のみが上側に変形する。一対のベース部に対して弁部が上側に浮上するように変形することによって、弁部と一対のベース部との間に隙間が形成される。その隙間が蒸気排出通路となって、容器内の蒸気が隙間から容器外部に排出される。従って、内圧の過度の上昇によって蓋体が容器本体から外れることを防止できる。
【0009】
特に、変形抑制リブは、半球状凹面部の第1方向の中央部において、スリットに接近して設けられていることが好ましい。ベース部のうち第1方向の中央部が最も変形しやすい部分である。ベース部の第1方向の中央部において変形抑制リブがスリットに接近して設けられていると、電子レンジ加熱時に、ベース部の変形を効果的に抑制することができ、弁部のみを確実に上側に変形させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、スリットが半球状凹面部に設けられているので、薄い合成樹脂製シートであっても、成形不良が生じにくく、蓋体を安価に製造できる。店頭での陳列時においては、スリット間の弁部は上側に変形せずに閉じた状態にあるので、埃や虫等の異物の侵入を阻止することができる。電子レンジ加熱時には、弁部がその外側のベース部に対して浮上して開いた状態となり、弁部とベース部との間には蒸気排出通路となる隙間が形成されるので、容器内部で発生した蒸気を隙間から容器外部に確実に排出させることができ、蓋体の外れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における包装用容器の開蓋状態を示す斜視図。
図2】同包装用容器の蓋体の平面図。
図3】同蓋体の要部拡大平面図。
図4図3のA-A断面図。
図5図3のB-B断面図。
図6】同包装用容器の電子レンジ加熱時の状態を示す斜視図。
図7】同包装用容器の蓋体の電子レンジ加熱時の状態を示す図4に対応した断面図。
図8】同包装用容器の蓋体の電子レンジ加熱時の状態を示す図5に対応した断面図。
図9】本発明の他の実施形態における包装用容器の蓋体の要部拡大平面図。
図10】本発明の他の実施形態における包装用容器の蓋体の要部拡大平面図。
図11】比較例としての包装用容器の蓋体であって、(a)は要部拡大平面図、(b)は(a)のC-C断面図。
図12】比較例としての包装用容器の蓋体であって、(a)は要部拡大平面図、(b)は(a)のD-D断面図。
図13】蓋体の第1の評価方法を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図。
図14】蓋体の第2の評価方法を示し、(a)は蓋体の要部拡大底面図、(b)は(a)のE-E断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る包装用容器について図面を参酌しつつ説明する。本実施形態における容器は、種々の食品を収容するためのものであって、開封することなく閉蓋状態のままで電子レンジで加熱することができる、電子レンジ対応の容器である。食品としては、例えば、調理済みのスープやレンジ麺などが挙げられる。
【0013】
図1のように、容器は、容器本体1と蓋体2とを備えている。容器本体1と蓋体2は、何れも合成樹脂製のシートから真空成形や圧空成形等の各種の熱成形(シート成形)によって形成されたものである。容器の平面視における形状は任意であって、丸形や小判形、略方形、略多角形等であってよいが、丸形のものが好ましい。容器本体1は上方に開口する開口部を有している。蓋体2は、容器本体1に嵌合して容器本体1の開口部を閉塞する。容器本体1と蓋体2との間の嵌合は、容器本体1の本体嵌合部13に蓋体2の蓋嵌合部23を接触させて嵌合させる内嵌合構造が好ましい。内嵌合構造とすることで、閉蓋時には、収容されたスープなどが漏れないようシール性を向上させることができる。内嵌合と共に外嵌合も併せ持った内外嵌合構造も好ましい。また、必要に応じて、容器本体1と蓋体2との間に図示しない中皿を収容してもよい。
【0014】
容器本体1や蓋体2(必要に応じて中皿)には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンやポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンなどの合成樹脂であって、かつ電子レンジで使用可能な耐熱性を有する合成樹脂製のシートが使用できる。また、これらのシート素材として、前述の合成樹脂に無機物を充填したシート、もしくは前述の合成樹脂を発泡させた発泡シート、さらには、前述のシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。これらの中でも、ポリスチレンとして耐熱性に優れた耐熱性のスチレン系樹脂を使用した耐熱性発泡スチレン系樹脂シート、耐熱性に優れたポリプロピレンに無機物を充填させたり発泡させたシート、ポリエチレンテレフタレート・ポリスチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンなどのシートを延伸して耐熱性を向上させた耐熱シートを使用して熱成形したものを使用できる。特に、これらのシートの中でも、透明性に優れたシートを蓋体2に使用した場合には、収容した食品を視認できるので好適であり、中でも、透明なポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンなどを一軸延伸、もしくは2軸延伸した延伸シートは電子レンジ加熱に必要な耐熱性も備えるので特に好ましい。一方、耐熱性発泡素材を容器本体1に使用した容器は、電子レンジ加熱時に素手で持っても熱くなく、かつ保温性にも優れるので好適である。
【0015】
容器本体1には、電子レンジでそのまま加熱して食することができるよう、あらかじめゼリー状スープや麺、かやくなどを収容物として収容することができる。容器本体1は、耐熱性樹脂素材を使用したシートを熱成形して得ることができる。容器本体1は、電子レンジで加熱して使用する為に、特に発泡させた耐熱性樹脂素材を使用することが好ましく、加熱後にレンジからの取り出しの際に持って熱くなく、火傷などを抑制することができ、レンジの電磁波を効率よく収容食材へ伝え、加熱を均一にかつ短時間で行うことができる。
【0016】
容器本体1は、底面部10と、底面部10の外縁から上方に向けて拡開しつつ延びる本体側面部11と、本体側面部11の上端から外方に向けて延びる本体フランジ部12とを備えている。本体側面部11の上部には、蓋体2の蓋嵌合部23が内側に嵌合する本体嵌合部13が形成されていることが好ましい。本体嵌合部13は、上側に向けて徐々に縮径していく逆テーパ形状であってもよいし、逆テーパ形状ではなく、垂直形状や順テーパ形状に内側に突出する凸部を設けた構成であってもよい。本体フランジ部12には、開蓋を容易にするための図示しない摘み部を設けてよい。底面部10には種々の形状の図示しない脚部を設けてよい。容器本体1は、透明であってもよいが、断熱性を有する発泡素材であることが好ましい。
【0017】
蓋体2は、透明であることが好ましく、容器に収容した食品を蓋体2を介して外部から視認できる。図1及び図2のように、蓋体2は、天面部20と、天面部20の外縁から下方に向けて延設された蓋側面部21と、蓋側面部21の下端から外側に向けて略水平に延設された水平面部22と、水平面部22の外縁から上側に向けて延設された蓋嵌合部23と、蓋嵌合部23の上端から外側に向けて延設された蓋フランジ部24とを備えている。蓋嵌合部23は、上側に向けて徐々に縮径していく逆テーパ形状であってもよいし、垂直形状や順テーパ形状に外側に突出する凸部を設けた構成であってもよい。蓋フランジ部24には開蓋を容易にするための摘み部25を設けてよい。蓋側面部21には、集荷時に蓋体2同士を多数積み重ねした際に、蓋体2同士が互いにきつく嵌り込んで取れなくなる、いわゆるブロッキング現象を防止するために、ブロッキング防止用の凸部(図示省略)を設けてよい。ブロッキング防止用の凸部は、蓋体2毎にその位置をずらして配置しておく。
【0018】
天面部20の上面は蓋体2の外面であり、天面部20の下面は蓋体2の内面である。天面部20の上面の周縁部には、閉蓋状態の容器同士を上下に積み重ねたときの容器間の位置ずれを防止するための積み重ね用凸部26を形成することが好ましい。積み重ね用凸部26は上側に向けて突設されている。天面部20は円形状であるが、積み重ね用凸部26は、天面部20の周縁部の周方向に沿って長く延びていて、円弧状である。積み重ね用凸部26は、天面部20の周縁部の全周のうち所定角度範囲に形成されている。積み重ね用凸部26は、一対形成されている。一対の積み重ね用凸部26は、互いに対称形状であってよく、180度対向した位置に形成されていてよい。図2のように、一対の積み重ね用凸部26は、X方向(第2方向)に対向して配置されていてよい。一対の積み重ね用凸部26の間の位置には帯状体3が巻き付けられてもよい。帯状体3は、閉蓋状態の容器を上下方向に沿って周回する。天面部20の周縁部のうち、Y方向(第1方向)の二箇所には、積み重ね用凸部26が形成されていない二つの領域が設けられている。積み重ね用凸部26が形成されていない二つの領域がY方向に対向して配置されていることにより、帯状体3の巻回が容易になる。帯状体3は、天面部20の周縁部のうち積み重ね用凸部26が形成されていない二つの領域の上側を通過する。帯状体3は、容器にY方向に沿って巻回される。
【0019】
天面部20には、上向きに突出した環状の凸条27が形成されている。凸条27は、一対の積み重ね用凸部26の平面視内側に配置されている。凸条27は、例えばY方向の一方側に偏心して設けられている。凸条27の平面視内側には、蒸気排出用の凹部28が形成されている。凹部28の底面は、天面部の平坦部よりも低くてよい。凹部28の周囲を囲むように凹部28の開口縁部の全周に凸条27を突設することが好ましい。但し、凹部28の周囲全周のうちの一部において、凸条27が切り欠かれていてもよい。また、凸条27の上面に、凸条27の内側の側面から外側の側面まで凸条27の全幅に亘って図示しない溝を設けてもよい。
【0020】
凹部28の底面は、半球状凹面部29である。半球状凹面部29は、平面視円形である。図3に半球状凹面部29の拡大図を示している。半球状凹面部29は、互いに直交する2方向であるX方向とY方向に沿ってそれぞれ下向きに湾曲した湾曲面である。図4は、図3のA-A断面図であって、半球状凹面部29の中心で半球状凹面部29をY方向に沿って切断した断面図であり、図5は、図3のB-B断面図であって、半球状凹面部29の中心で半球状凹面部29をX方向に沿って切断した断面図である。半球状凹面部29は、Y方向に沿って下向きに湾曲していると共に、X方向に沿って下向きに湾曲している。半球状凹面部29のY方向の湾曲度合い(曲率半径)と、半球状凹面部29のX方向の湾曲度合い(曲率半径)は等しくてよいが、互いに異なっていてもよい。半球状凹面部29は、全方向に湾曲した球面状である。
【0021】
半球状凹面部29には、スリット30が2本形成されている。スリット30は、蓋体2を構成しているシートを表裏貫通している。スリット30は、シートが線状に切断されることにより形成されている。シートの切断方法は種々であってよい。例えば、シートを刃で切断したり、レーザー加工によってシートを切断したりすることができる。レーザー加工によってスリット30を形成する場合には、スリット30の幅(スリット30の長さ方向に対して直交する方向のスリット30の寸法)は狭く設定される。スリット30の幅が広くなりすぎると、容器内の圧力が所定圧力に達する前に蒸気がスリット30から容器外部に排出され、容器内での圧力上昇が不足して加熱時間が長くなるうえに、後述する弁部31の上方への浮上変形も起こりにくくなる。従って、スリット30の幅は、圧力上昇が維持でき、しかも、弁部31が浮上変形できる程度の幅とされ、例えば0.2mm以下とされる。
【0022】
スリット30は2本形成されている。スリット30は直線状であってY方向に沿って延びている。2本のスリット30は互いに平行であることが好ましく、また互いに同じ長さであることが好ましい。スリット30は、半球状凹面部29のY方向の全長のうち大部分を占める長さを有している。スリット30の両端部30aは、それぞれ半球状凹面部29のY方向の両端部から所定距離離れている。一対のスリット30は、半球状凹面部29のY方向に延びる中心線(Y方向中心線29a)を対称軸として、線対称に配置されている。スリット30の両端部30aのY方向の位置は、両スリット30同士において互いに同じであるが、多少位置ずれしていてもよい。スリット30は平面視直線状に限定されず、波形状、円弧形状などであってもよく、また、途中で分断されていてもよい。
【0023】
半球状凹面部29に一対のスリット30が形成されることにより、半球状凹面部29は、X方向に沿って、一対のスリット30間の弁部31と、弁部31のX方向の両側に位置する一対のベース部32とに区画される。図3に、両スリット30の端部30a同士を直線で結ぶ2本の仮想線33を二点鎖線で示している。仮想線33は、X方向に延びている。一対のスリット30と2本の仮想線33によって、Y方向に長い長方形状の弁部31が画成される。弁部31は、半球状凹面部29の一部であるため、Y方向に沿って下向きに湾曲していると共にX方向に沿って下向きに湾曲している。弁部31は、その全体に亘って凹凸のない曲面であり、Y方向に段差なく連続して湾曲していると共に、X方向にも段差なく連続して湾曲している。
【0024】
半球状凹面部29の一対のベース部32には、それぞれ変形抑制リブ34が形成されている。一対の変形抑制リブ34は、各スリット30のX方向の外側に位置している。変形抑制リブ34の形状は種々であってよい。変形抑制リブ34は、Y方向に沿って延びている。変形抑制リブ34は、途中で分断されていてもよい。変形抑制リブ34は、半球状凹面部29のX方向に延びる中心線(X方向中心線29b)を跨いで延びている。変形抑制リブ34は、ベース部32のY方向の全長のうち大部分を占める長さを有して設けられることが好ましい。変形抑制リブ34のY方向の長さは、スリット30のY方向の長さよりも長い。変形抑制リブ34の長手方向の端部34aは、スリット30の端部30aよりも凸条27に近い。変形抑制リブ34の長手方向の両端部34aは、凸条27に達していることが好ましい。
【0025】
変形抑制リブ34の一例を図3に示している。本実施形態において、変形抑制リブ34は、平面視において湾曲しており、具体的には、平面視において、X方向の外側に向けて即ちスリット30から遠ざかる方向に向けて湾曲している。但し、図9のように、変形抑制リブ34が平面視においてX方向の内側に向けて即ちスリット30に近づく方向に向けて湾曲していてもよい。また、図10のように、変形抑制リブ34が平面視において湾曲せずにY方向に一直線状に延びていてもよい。一対の変形抑制リブ34は、Y方向中心線29aを対称軸として互いに線対称に配置されることが好ましい。各変形抑制リブ34は、X方向中心線29bを対称軸として線対称形状であることが好ましい。尚、変形抑制リブ34は、各ベース部32に1本ずつ設けられているが、複数本ずつ設けられてもよい。ベース部32に、変形抑制リブ34以外の変形抑制リブが設けられてもよい。また、変形抑制リブ34は、下向きに突出する下向き凸条であってよく、上向きに突出する上向き凸条であってもよい。本実施形態では、変形抑制リブ34は下向き凸条である。変形抑制リブ34の横断面形状は任意であって、本実施形態では矩形状であるが半円状等であってもよい。
【0026】
変形抑制リブ34は、X方向中心線29bにおいて、スリット30に接近していることが好ましい。X方向中心線29bにおいて、変形抑制リブ34とスリット30との間の距離L1と、変形抑制リブ34と凸条27との間の距離L2とを比較したとき、L1<L2の関係を有していることが好ましい。変形抑制リブ34は、X方向中心線29bにおいて、スリット30寄りに偏心して設けられていることが好ましい。
【0027】
尚、天面部20の上面であって凹部28のY方向の隣の位置に、別途、収容凹部40を形成してよい。この収容凹部40には、例えば、各種の小袋を収容できる。小袋には、例えば、容器に収容された食品を味付けするための調味料を入れておくことができる。
【0028】
尚、容器本体1の本体フランジ部12の外縁や蓋体2の蓋フランジ部24の外縁には、略水平の縁取り部36を設けてよい。縁取り部36の外縁側には、極細の多数の凹凸を形成し、補強するとともに、指などがあたっても、指などを切ることがないようにされてよい。この凹凸は、正面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山と谷の方向が各辺において幅方向に短く形成され、角部において角部と中心部とを結ぶ方向(放射方向)に平行に形成されていてよい。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成され、さらには、滑りにくいようにするため、綾目ローレット目によって形成することが好ましい。本体側面部11や蓋側面部21等には、適宜リブを設けてよい。
【0029】
以上のように構成された容器においては、半球状凹面部29が1方向のみに湾曲した湾曲面ではなく球面状の湾曲面であるため、半球状凹面部29を正確に成形することができる。従って、蓋体2を構成するシートを薄肉のものとしても、成形不良が生じにくく、安価に製造することができる。
【0030】
容器本体1には食品が収容され、そして、食品が収容された容器本体1に蓋体2が被せられる。閉蓋作業においては、蓋体2の蓋嵌合部23を容器本体1の本体嵌合部13に嵌合させ、容器本体1の開口部を蓋体2で閉塞するが、その後に、帯状体3を容器に巻き付けても良いし、巻き付けなくてもよい。スリット30は、孔ではなく、シートが線状に切断されたものであるため、店頭に陳列された状態においてスリット30を介しての異物の侵入を防止することができる。
【0031】
収容された食品を電子レンジで加熱する場合、開封せずにそのまま電子レンジに入れることができる。電子レンジで加熱すると、食品から蒸気が発生して、容器内の圧力が上昇する。その圧力は蓋体2の内面全体に作用し、半球状凹面部29の全体に作用するが、一対のベース部32にはそれぞれ変形抑制リブ34が設けられていて、変形抑制リブ34によってベース部32の剛性が高められている。それに対して、弁部31には変形抑制リブ34が設けられておらず、弁部31はその全体に亘って凹凸のない滑らかな湾曲面となっている。そのため、図6のように、半球状凹面部29のうち一対のベース部32は上側に変形せず、弁部31のみが上側に浮上するように変形する。特に、変形抑制リブ34がY方向に沿って延びているので、ベース部32の上側への変形が効率良く抑制される。更に、変形抑制リブ34の両端部24aが凸条27まで達していて変形抑制リブ34がその両端部34aにおいて凸条27に連結されているので、凸条27と変形抑制リブ34が協働してベース部32の変形を阻止する。また、X方向中心線29bにおいて変形抑制リブ34がスリット30に接近しているので、ベース部32において凸条27からの距離が大きい箇所の変形を変形抑制リブ34が効率良く阻止する。
【0032】
弁部31は、容器内の圧力を受けて、図4及び図5の通常状態から図7及び図8の上向き変形状態へと移行する。弁部31が上方に浮上することにより、弁部31とその両側のベース部32との間にはそれぞれ隙間50が形成される。つまり、上側に浮上した弁部31の両側にそれぞれ隙間50が形成され、その隙間50が蒸気排出通路となる。そして、容器内の蒸気は、弁部31の両側に形成された隙間50から容器外部へと排出される。
【実施例0033】
図3図9及び図10に示す3種類の蓋体2を製作し、それらを実施例1~3とした。また、図11及び図12に示す蓋体2をそれぞれ製作し、それらを比較例1,2とした。比較例1,2は、実施例1~3と同様の蓋体2であって半球状凹面部29に同様に2本のスリット30が形成されたものであるが、実施例1~3とは異なり、ベース部32に変形抑制リブ34が設けられていない。比較例1,2は、ベース部32に変形抑制リブ34が設けられていない点を除いて、実施例1~3と同様の構成である。比較例1のベース部32には凹凸がなく、連続した滑らかな曲面である。比較例2のベース部32には、実施例1~3の変形抑制リブ34に代えて、段差60が設けられている。段差60は、Y方向に沿って直線状に延びていて、その両端部60aは凸条27に達している。段差60は、半球状凹面部29の中心側が下側となる段差である。実施例1~3と比較例1,2について、蒸気排出性能の評価を行った。具体的には、以下のように、第1の評価方法として、内圧を高めた時に蓋外れが発生しないかどうかの検証と、第2の評価方法として、弁部31の上方への変形しやすさの検証を行った。
【0034】
<第1の評価方法(評価試験1)>
第1の評価方法として、内圧を高めた時に蓋外れが発生しないかどうかの検証を行った。図13のように、蓋体2が内嵌合できる容器本体1に対応した治具100を製作した。治具100の底面の中心部には貫通孔101が設けられている。治具100に蓋体2を内嵌合させて、治具100の貫通孔101から飽和蒸気圧0.15Mpaの圧力を内部空間に入れ、そのときに蓋体2が治具100から外れるか否かの試験を行った。蓋体2が治具100から外れなかった場合には、弁部31が上側に変形してベース部32との間に隙間50が発生し、その隙間50から圧力が外部に放出されたことになる。一方、蓋体2が治具100から外れた場合には、弁部31が上側にスムーズに変形せず、圧力が外部に放出されなかったことになる。蓋外れが発生しなかった場合を「OK」と評価し、蓋外れが発生した場合を「NG」と評価した。
【0035】
<第2の評価方法(評価試験2)>
第2の評価方法として、内圧を高めた時に弁部31による蒸気抜きが十分に行われるか否かの検証として、弁部31の上側への変形のしやすさに関する試験を行った。図14のように、蓋体2を天地反転させて、蓋体2の上面が下向きになるように載置し、弁部31とベース部32をそれぞれ上から下向きに押圧して下側に4mm変形させたときの1平方ミリメートルあたりの荷重(単位:N)を測定した。弁部31とベース部32の押圧ポイントは、図14にそれぞれ符号110と符号111で示している。弁部31の押圧ポイント110は、半球状凹面部29の中心であって、Y方向中心線29aとX方向中心線29bの交点とした。ベース部32の押圧ポイント111は、変形抑制リブ34のX方向中心線29b上の位置とした。尚、比較例1,2については、変形抑制リブ34が存在しないため、X方向中心線29b上のベース部32において、図3の変形抑制リブ34に対応した箇所を押圧ポイント111とした。
【0036】
<評価結果>
評価結果を表1に示している。評価試験1の結果は、実施例1~3の何れも、蓋外れが発生しなかった。つまり、実施例1~3においては、弁部31がスムーズに上側に変形して圧力が外部に放出されたことになる。一方、比較例1においては、蓋外れが発生した。このことから、比較例1においては、弁部31がスムーズに上側に変形しなかったことになる。これは、弁部31のみが上側に変形するのではなく、図11(b)に二点鎖線で示しているように、弁部31とベース部32が一体となって、即ち、半球状凹面部29の全体が上側に変形したためと推察される。このように半球状凹面部29の全体が上側に変形すると、弁部31とベース部32との間に隙間50が発生しないため、圧力が外部に逃げることができず、蓋体2が治具100から外れたものと考えられる。比較例2においても同様に蓋外れが発生した。比較例2の場合には、ベース部32に段差60が設けられているが、その効果は小さく、比較例1の場合と同様に半球状凹面部29の全体が上側に変形し、弁部31とベース部32との間に隙間50が発生しなかったものと推察される。
【0037】
評価試験2の結果は、実施例1~3と比較例1,2の何れにおいても、弁部31を変形させるための荷重が相対的に小さいのに対して、ベース部32を変形させるための荷重は相対的に大きくなった。しかしながら、弁部31の荷重とベース部32の荷重を比較し、弁部31の荷重を1としたときのベース部32の荷重の比率を見ると、実施例1~3と比較例1,2との間で顕著な差が生じた。つまり、実施例1~3においては、比率が1:9.6~1:14となって、ベース部32の荷重が弁部31の荷重の10倍程度大きいものであった。これに対して、比較例1では、比率が1:1.9となって、弁部31の荷重とベース部32の荷重との差が極めて小さいものとなった。実施例1~3では、ベース部32に変形抑制リブ34が設けられていることにより、弁部31に対してベース部32が極めて変形しにくいことから、レンジ加熱時に弁部31のみがスムーズに変形できるものと考えられる。一方、比較例1では、ベース部32の荷重は弁部31の荷重の1.9倍と小さく、弁部31とベース部32との間で、変形しやすさの程度に大きな差が生じないことから、レンジ加熱時に弁部31のみが変形することができず、弁部31とベース部32が一体となって変形するものと考えられる。また、比較例2では、ベース部32に段差60が設けられているので、比較例1に比して、ベース部32の荷重が大きくなっている。しかしながら、ベース部32の荷重は弁部31の荷重の5.8倍に過ぎないことから、レンジ加熱時に弁部31のみがスムーズに変形しにくく、弁部31とベース部32との間に隙間が形成されにくい、あるいは、隙間が形成されたとしてもその隙間が小さいために、蒸気が外部にスムーズに排出できないものと考えられる。弁部31とベース部32の変形荷重の比率が1:(6以上)であると、弁部31のみが上側に変形して蒸気がスムーズに外部に排出されることがわかった。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1 容器本体
2 蓋体
3 帯状体
10 底面部
11 本体側面部
12 本体フランジ部
13 本体嵌合部
20 天面部
21 蓋側面部
22 水平面部
23 蓋嵌合部
24 蓋フランジ部
25 摘み部
26 積み重ね用凸部
27 凸条
28 凹部
29 半球状凹面部
29a Y方向中心線
29b X方向中心線
30 スリット
30a 端部
31 弁部
32 ベース部
33 仮想線
34 変形抑制リブ
34a 端部
36 縁取り部
40 収容凹部
50 隙間
60 段差
60a 端部
100 治具
101 貫通孔
110 押圧ポイント
111 押圧ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
合成樹脂製シートから成形された容器本体と、容器本体に嵌合する蓋体と、を備えた、電子レンジ対応の包装用容器であって、
蓋体の天面部には、第1方向に沿って下側に湾曲すると共に第1方向と直交する第2方向に沿って下側に湾曲する半球状凹面部が設けられ、
シートが線状に切断されて第1方向に沿って延びるスリットが、一つの半球状凹面部に2本設けられ、2本のスリットは、互いに第2方向に間隔を空けて対向し、
2本のスリットにより、半球状凹面部は、2本のスリット間の弁部と、弁部の第2方向の両側に位置する一対のベース部とに区画され、
半球状凹面部の一対のベース部にはそれぞれ、第1方向に沿ってスリットよりも長く延び、上向き又は下向きに突出した凸条である変形抑制リブが設けられ
電子レンジ加熱時に、2本のスリットの両端部同士をそれぞれ直線で結んだ2本の仮想線を起点として弁部が一対のベース部に対して上側に変形して、弁部と一対のベース部との間に形成された隙間から蒸気が容器外部に排出される、包装用容器。