(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095123
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】磁性流体ブレーキ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
F16D63/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208268
(22)【出願日】2020-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】吉地 輝朗
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA78
3J058AA87
3J058AB27
3J058BA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、可動部以外の磁気回路の割合を小さくし、小型化及び軽量化することである。
【解決手段】本発明による磁性流体ブレーキ及びその制御方法は、固定子体(60)に軸受(60B)を介して回転自在に設けられた回転子体(63)と、前記回転子体(63)の周壁(63A)に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスク(64)と、前記固定子体(60)に設けられ、一対又は一個の固定子片(70A,70B)からなる複数の固定ディスク(70)と、前記固定ディスク(70)に設けられた固定励磁巻線(51)と、前記各回転ディスク(64)及び固定ディスク(70)に対して磁性流体(80)を供給するための磁性流体用流路(111)と、からなり、前記固定励磁巻線(51)への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体(63)の回転/停止が前記磁性流体(80)を介して制御される構成と方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子体(60)に軸受(60B)を介して回転自在に設けられた回転子体(63)と、前記回転子体(63)の周壁(63A)に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスク(64)と、前記固定子体(60)に設けられ、一対又は一個の固定子片(70A,70B)からなる複数の固定ディスク(70)と、前記固定ディスク(70)に設けられた固定励磁巻線(51)と、前記各回転ディスク(64)及び固定ディスク(70)に対して磁性流体(80)を供給するための磁性流体用流路(111)と、からなり、
前記固定励磁巻線(51)への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体(63)の回転/停止が前記磁性流体(80)を介して制御される構成としたことを特徴とする磁性流体ブレーキ。
【請求項2】
前記磁性流体用流路(111)は、前記回転ディスク(64)による回転ディスク群(100)の軸方向(P)における両側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁性流体ブレーキ。
【請求項3】
前記固定子片(70A,70B)が一対の時、前記各固定子片(70A,70B)に形成された凹部(130)によって形成された保持空間(110)内に前記固定励磁巻線(51)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の磁性流体ブレーキ。
【請求項4】
前記固定子片(70A,70B)が一個の時、前記固定子片(70A又は70B)の一面のみに形成された前記凹部(130)内に前記固定励磁巻線(51)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の磁性流体ブレーキ。
【請求項5】
前記固定励磁巻線(51)は、平角線(140)を輪状に巻回した構成よりなることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の磁性流体ブレーキ。
【請求項6】
固定子体(60)に軸受(60B)を介して回転自在に設けられた回転子体(63)と、前記回転子体(63)の周壁(63A)に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスク(64)と、前記固定子体(60)に設けられ、一対又は一個の固定子片(70A,70B)からなる複数の固定ディスク(70)と、前記固定ディスク(70)に設けられた固定励磁巻線(51)と、前記各回転ディスク(64)及び固定ディスク(70)に対して磁性流体(80)を供給するための磁性流体用流路(111)と、を用い、
前記固定励磁巻線(51)への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体(63)の回転/停止を前記磁性流体(80)を介して制御することを特徴とする磁性流体ブレーキの制御方法。
【請求項7】
前記磁性流体用流路(111)は、前記回転ディスク(64)による回転ディスク群(100)の軸方向(P)における両側に形成されていることを特徴とする請求項6記載の磁性流体ブレーキの制御方法。
【請求項8】
前記固定子片(70A,70B)が一対の時、前記各固定子片(70A,70B)に形成された凹部(130)によって形成された保持空間(110)内に前記固定励磁巻線(51)が設けられていることを特徴とする請求項6又は7記載の磁性流体ブレーキの制御方法。
【請求項9】
前記固定子片(70A,70B)が一個の時、前記固定子片(70A又は70B)の一面のみに形成された凹部(130)内に前記固定励磁巻線(51)が設けられていることを特徴とする請求項6又は7記載の磁性流体ブレーキの制御方法。
【請求項10】
前記固定励磁巻線(51)は、平角線(140)を輪状に巻回した構成よりなることを特徴とする請求項6ないし9の何れか1項に記載の磁性流体ブレーキの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体ブレーキ及びその制御方法に関し、特に、固定ディスクに直接、固定励磁巻線を設けることにより、ブレーキトルク発生部以外の磁気回路が小さくでき、全体構成を従来構成に比べて大幅に小型化、かつ、軽量化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の磁性流体ブレーキとしては、例えば、特許文献1の「MR流体ブレーキ構造」の構成を挙げることができる。
図13において、符号61で示されるものは、固定体3に設けられた環状ステータであり、この環状ステータ61の外側には、アウタロータ63が回転自在に設けられており、前記環状ステータ61を保持する断面T字状をなす固定体3には、軸体100が嵌入される筒状をなす筒状突出部60が形成されている。
【0003】
前記筒状突出部60の外周面60Aには、断面でみて一対のU字型をなすと共に全体形状が環状をなす環状ステータ61が嵌入されていることにより、前記固定体3に環状ステータ61が一体状に結合されている。
【0004】
前記環状ステータ61の環状凹部62には、
図13のB部を拡大して示す
図14の断面図に示されるように、前記環状ステータ61の外側に円筒体をなすアウタロータ63が回転可能に設けられている。
【0005】
アウタロータディスク64の側面64Bには、ドーナッツ板型をなすロータスペーサ66(非磁性)が前記環状ステータ61の軸方向Pに沿って所定間隔毎に一体状に軸心P´に向けて延設されている。ロータスペーサ66は非磁性にすることにより、アウタロータディスク64間の漏れ磁束を減少させ、中間ステータ70へ効率よく磁束を流す役割を担っている。
前記環状ステータ61の外周には、
図13で示されるような前記環状凹部62が形成されているが、前記環状凹部62の環状底面65には、励磁を行うための励磁巻線51が設けられ、この励磁巻線51は励磁時に熱を発生する。巻線水冷部52(励磁巻線51エリア―中間ステータの内面70A間)に注水する水冷型とし、それによって、大電流を励磁巻線51に流すことが出来るように構成しても良い。
【0006】
前記各アウタロータディスク64間には、前記環状ステータ61の外側に接続され前記ドーナッツ板型をなす中間ステータ70がステータスペーサ67(非磁性)に挟まれて配設されている。ステータスペーサ67は非磁性にすることにより、中間ステータ70間の漏れ磁束を減少させ、アウタロータディスク64へ効率よく磁束を流す役割を担っている。
前記各中間ステータ70の内面70A、ステータスペーサ67の内側には、前記励磁巻線51が配設され、前記励磁巻線51の内面51Aは、前記環状ステータ61の環状底面65に接している。
図14の断面図において、前記アウタロータ63に接続された前記アウタロータディスク64と前記中間ステータ70との間の部分には、周知のMR流体80が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の磁性流体ブレーキは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、
図13及び
図14の構成の場合、環状ステータ61の溝内に励磁巻線51が設けられているため、可動部、すなわち、ロータ部以外のステータ側の磁気回路の割合が大きく、そのため、大きいブレーキトルクを得ることが困難であると共に、軽量化への要望に応えることは困難であった。このことは従来の磁性流体ブレーキ全般にいえることであった。すなわち、
図13から明らかなように、固定子体60部分の磁気回路の割合が大きく、励磁をオンとした時の磁性流体の面積が小さく、ブレーキトルクを大とするためには、アウターロータとステータを大とする必要があり、全体形状が大形化することになっていた。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、固定ディスクに直接、固定励磁巻線を設けることにより、固定子体には磁束が流れず、固定励磁巻線の周囲の回転ディスク及び固定ディスクにのみ磁束が流れる磁気回路が形成され、トルク発生部以外の磁気回路が小さくでき、かつ、トルクに関する磁気回路を従来構成よりも小型化し、最大化させることができる。また、全体構成を従来構成に比べて大幅に小型化、かつ、軽量化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による磁性流体ブレーキは、固定子体に軸受もしくはその他機構を介して回転自在に設けられた回転子体と、前記回転子体の周壁に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスクと、前記固定子体に設けられ、一対又は一個の固定子片からなる複数の固定ディスクと、前記固定ディスクに設けられた固定励磁巻線と、前記各回転ディスク及び固定ディスクに対して磁性流体を供給するための磁性流体用流路と、からなり、前記固定励磁巻線への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体の回転/停止が前記磁性流体を介して制御される構成であり、また、前記磁性流体用流路は、前記回転ディスクによる回転ディスク群の軸方向における両側に形成されている構成であり、また、前記固定子片が一対の時、前記各固定子片に形成された凹部によって形成された保持空間内に前記固定励磁巻線が設けられている構成であり、また、前記固定子片が一個の時、前記固定子片の一面のみに形成された凹部内に前記固定励磁巻線が設けられている構成であり、また、前記固定励磁巻線は、平角線を輪状に巻回した構成よりなる構成である。
また、本発明による磁性流体ブレーキの制御方法は、固定子体に軸受もしくはその他機構を介して回転自在に設けられた回転子体と、前記回転子体の周壁に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスクと、前記固定子体に設けられ、一対又は一個の固定子片からなる複数の固定ディスクと、前記固定ディスクに設けられた固定励磁巻線と、前記各回転ディスク及び固定ディスクに対して磁性流体を供給するための磁性流体用流路と、を用い、前記固定励磁巻線への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体の回転/停止を前記磁性流体を介して制御する方法であり、また、前記磁性流体用流路は、前記回転ディスクによる回転ディスク群の軸方向における両側に形成されている方法であり、また、前記固定子片が一対の時、前記各固定子片に形成された凹部によって形成された保持空間内に前記固定励磁巻線が設けられている方法であり、また、前記固定子片が一個の時、前記固定子片の一面のみに形成された凹部内に前記固定励磁巻線が設けられている方法であり、また、前記固定励磁巻線は、平角線を輪状に巻回した構成よりなる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による磁性流体ブレーキ及びその制御方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、固定子体に軸受を介して回転自在に設けられた回転子体と、前記回転子体の周壁に所定の間隔で設けられた複数の回転ディスクと、前記固定子体に設けられ、一対又は一個の固定子片からなる複数の固定ディスクと、前記固定ディスクに設けられた固定励磁巻線と、前記各回転ディスク及び固定ディスクに対して磁性流体を供給するための磁性流体用流路と、からなり、前記固定励磁巻線への励磁がオン/オフされることにより磁束の発生がオン/オフとなり、前記回転子体の回転/停止が前記磁性流体を介して制御される構成と方法であることにより、ブレーキのトルク発生部以外の磁気回路が従来よりも大幅に小さくでき、高トルクでありながら軽量の磁性流体ブレーキを得ることができる。
また、前記磁性流体用流路は、前記回転ディスクによる回転ディスク群の軸方向における両側に形成され、この流路を介して回転ディスクと固定ディスク間に磁性流体を供給しているため、大容量の磁性流体を介して大トルク化したブレーキ力を発生させることができる。
また、前記固定子片が一対の時、前記各固定子片に形成された凹部によって形成された保持空間内に前記固定励磁巻線が設けられていることにより、磁気回路を構成するための回転ディスク及び固定ディスクを含むブレーキ機構を小型化することができる。
また、前記固定子片が一個の時、前記固定子片の一面のみに形成された前記凹部内に前記固定励磁巻線が設けられていることにより、前述の一対の固定子片を用いた構成と同様の効果を得ることができる。
また、前記固定励磁巻線は、平角線を輪状に巻回した構成よりなることにより、固定励磁巻線を薄形として固定ディスクの保持空間内に効率よく収めることができ、かつ、内径側での結線が可能となるI-I巻が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態による磁性流体ブレーキの概略を示す斜視図である。
【
図7】
図2の固定ディスク内に固定される固定励磁巻線を示す構成図である。
【
図8】
図2の固定ディスクに通電部を設けた構成を示す平面図である。
【
図9】
図8の通電部を示すA部の拡大斜視図である。
【
図10】
図2の各ディスクからなる回転ディスク群の両側に設けられるロータサイドディスク部を示す分解斜視図である。
【
図11】
図10のロータサイドディスク部のロータサイドプレートの90度部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による磁性流体ブレーキ及びその制御方法は、固定ディスクに直接、固定励磁巻線を設けることにより、固定子体には磁束が流れず、固定励磁巻線の周囲の回転ディスク及び固定ディスクにのみ磁束が流れる磁気回路が形成され、トルク発生部以外の磁気回路を小さくすることが出来、かつ、トルクに関する磁気回路を従来構成よりも小型化し、最大化させることができる。また、全体構成を従来構成に比べて大幅に小型化、かつ、軽量化することである。
【実施例0014】
以下、図面と共に本発明による磁性流体ブレーキ及びその制御方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明する。
図1は、本発明による磁性流体ブレーキの概略構成を示すもので、
図1における磁性流体ブレーキ1の筒状の固定子体60には、所定間隔毎に輪状円板状の固定ディスク70が設けられている。
【0015】
前記固定ディスク70内には、
図2~
図12で示されるような輪状の固定励磁巻線51が内設されており、前記固定子体60と同軸に設けられた回転子体63は、前記固定子体60に対し、Oリング等からなるシーリング60A及び軸受60Bを介して防水及び回転自在に設けられている。前記回転子体63の周壁63Aには、所定の間隔で複数の回転ディスク64が設けられている。
【0016】
前記固定ディスク70は、一例として、
図3に示されるように、一対の固定子片70A、70Bによって構成され、前記各固定子片70A、70Bの内面に形成された凹部130を合わせた形状からなる保持空間110内に前述の固定励磁巻線51が設けられている。
前記各固定子片70A、70Bの外面と、各固定子片70A、70Bと隣接する各回転ディスク64との間には、磁性流体80が流れるための磁性流体用流路111が形成されている。従って、各磁性流体用流路111内の磁性流体80は、各回転ディスク64及び各固定ディスク70に対して直接接触するように構成されている。従って、
図1及び
図2の構成においては、固定励磁巻線51が各固定ディスク70の内部に内設されているため、各固定励磁巻線51の励磁をオンとさせて所定の電流を印加することにより、磁束400は
図1のループに沿って輪状に流れて磁気回路401が形成される。
【0017】
前記各回転ディスク64が前記回転子体63の軸方向Pに沿って複数設けられてなる回転ディスク群100の両側には、
図10及び
図11で示される一対のロータサイドディスク部120、120Aが設けられ、各ロータサイドディスク部120、120Aの外側には、一対のロックプレート3が設けられている。
前記固定子体60の、図で見て右側には、全ての前記磁性流体用流路111に直列接続されたポンプ121が設けられ、このポンプ121によって前記磁性流体80を、図示していない制御部を介して、前記磁性流体用流路111内を循環させ、磁性粒子の濃淡ができないように構成されている。
【0018】
図3においては、前記固定励磁巻線51が一対の固定子片70A、70Bによって形成された保持空間110内に収納・保持された構成について述べたが、この
図3の構成に限ることなく、
図4の他の形態のように、固定ディスク70の片側に固定励磁巻線51を設けることでも可能である。また、
図1の構成では、固定子体60には、磁束400が流れず、磁気回路401が形成されないので、固定励磁巻線51の周囲の回転ディスク64及び固定ディスク70のみに磁束400が流れる磁気回路401が形成され、磁気回路400を従来よりも大きい最大値化させることができる。
すなわち、
図4においては、各固定子片70A、70Bの何れか一方の凹部130内に固定励磁巻線51が設けられている。また、
図5の他の形態においては、各回転ディスク64間の固定ディスク70は、その中央位置に接続部70Eが形成され、この接続部70Eの両側に第1、第2凹部70C、70Dが形成されている。前記各凹部70C、70D内に設けられた各固定励磁巻線51は、固定ディスク70の面70Mと面一に構成されている。
【0019】
図6において、前記固定励磁巻線51は、前記固定子体60の中心線P´に対して上下の巻線層を作るように、周知の平角線140を用いて平角線I-I巻(α巻きも可)によって形成されている。
また、
図8及び
図9は、固定ディスク70の内径部70aに設けられた通電部70Cを示している。
尚、
図8に示される固定ディスク70の内径を示す内径部70aは、この固定ディスク70を嵌合するための固定子体60の凹凸形状に合わせて、凹凸状に形成されている。
【0020】
図10から
図12は、
図2における前記回転ディスク群100の左側に位置する第1ロータサイドディスク部120を示す図である。
図11に示されるように、非磁性材からなるロータサイドプレート160内には、内側から外側へ向け外径の異なるフィン161を有する磁性材からなるロータサイドディスク162が設けられている。
図10では、前記ロータサイドプレート160に隣接して非磁性のロックプレート163が設けられ、前記ロータサイドプレート160の開放側160aには、多数のフィン162aを有する磁性材からなる前記ロータサイドディスク162が重合配設されている。
図10で示されるロックプレート163、ロータサイドプレート160及びロータサイドディスク162を互いに重合させると、ロータサイドディスク部120,120Aは、互いに重合されている。
【0021】
図12では、前記固定子体60に、前記各固定ディスク70に設けられた固定励磁巻線51に接続される
図8、
図9に示した通電部70Cが電気機械的に接触する通電レール部180が複数設けられている。前記通電レール部180に裏面から接続されたリード線181は、前記中心孔120Aaを経て、図示しない制御部に接続され、前記固定励磁巻線51への励磁のオン/オフを行うように構成されている。
【0022】
前述の構成において、例えば、図示しないモータ又は機器の回転軸(図示せず)を磁性流体ブレーキ1の回転子体63に接続し、前記回転軸を停止させる場合には、前記固定励磁巻線51に電源を印加して固定励磁巻線51への励磁をオンとすると、発生する磁束によって、周知のように、磁性流体80の各磁性粒子が磁界に沿って結合し、半固化するため、ブレーキ用高トルクを発生し、回転子体63の回転停止によってモータやアクチュエータの回転動作を停止させることができる。また、励磁をオフとすることにより、磁束の発生がオフとなり、回転ディスク64が再び回転する。
従って、本実施の形態による磁性流体ブレーキは、ロータ部以外の磁気回路の割合が小さいため、従来よりも軽くすることができる。すなわち、
図13の従来例の磁気回路は、矢印で示されるように、ステータ61を含む固定部分の磁気回路の割合が大きいが、
図1の本発明のように、固定子体60を含まない構成で、トルク発生部以外の磁気回路を小さく出来、高トルクで軽量の磁性流体ブレーキを実現することができる。
【0023】
尚、前記固定ディスク70の製作としては、プレスでの製作が可能(試作はフライス、ワイヤーカット)である。固定ディスク70の密閉は、溶接(EBW、レーザ、TIG、シーム等)が好適であり、注型、モルド成形、FRP、CFRPも可能である。コイル電線の接続は、電線直出し、電極-レール接続、コネクタも可能である。磁性流体の流路の確保は、固定ディスクに磁性流体の流路を追加する、回転ディスクに磁性流体の流路を追加する、例えば、それらに穴をあけることも可能である。
また、磁性流体80の耐熱性を上げるため、磁性粉にパーメンジュールを使用することもできる。また、磁性流体80の耐熱性を上げるため、ベースオイルにシリコンオイルを使用することもできる。また、磁性流体80の熱伝導を良くするためベースオイルに水を使用することもできる。また、磁性流体80の放熱性を良くするためベースオイルの熱交換を行うこともできる。また、放熱性を良くするため回転ディスク64内に空気、水分等が循環する空間を設けることもできる。また、ブレーキトルクアップのため、回転ディスク、固定ディスクに同心上のサイドフィン(磁極)を設けることもできる。また、軸受に含油軸受を用いても良い。また、シーリング60Aに磁性流体シールを用いても良い。また、前記固定励磁巻線51は、固定ディスク70内もしくは外の狭いスペースに効率的に巻線を巻きこむ必要がある。巻線の耐熱性の向上は、耐熱性の高いコイル、例えばポリイミド電線、セラミック電線が使用できる。巻線のコイル占有率の向上には、平角線を使用してα巻又はI-I巻を用いる。巻線の熱伝導の改善には、熱伝導率の良いワニス、成形剤の使用が好適である。巻線の絶縁には、ポリイミドフィルム絶縁塗装が好適である。
本発明による磁性流体ブレーキ及び制御方法は、回転ディスクと共働している固定ディスクに固定励磁巻線が設けられ、固定ディスクと回転ディスクとの間に形成された磁性流体用流路に磁性流体を供給することにより、磁性流体は固定ディスク及び回転ディスクに直接接し、ブレーキトルク発生部以外の磁気回路が小さくでき、小型化、軽量化した構成を得ることができる。