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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095148
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】乗用車用空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220621BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20220621BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C3/04 B
B60C11/12 B
B60C11/12 C
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208302
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
(72)【発明者】
【氏名】畠中 慎太郎
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC18
3D131CA03
3D131CB05
3D131EB02U
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EB90V
3D131EB90X
3D131EB91V
3D131EB91X
3D131EB99V
3D131EB99X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】本発明は、雪上性能の低下を抑制しつつも、燃費性を向上することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備え、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとが所定の関係を満たし、陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たし、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たし、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記拡幅部を有する前記幅方向サイプは、前記ブロックのタイヤ周方向長さの中央50%の領域である中央領域に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記拡幅部を有する前記幅方向サイプは、前記ブロックのタイヤ周方向一方側において、タイヤ周方向他方側よりも多く配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記ブロックのタイヤ周方向一方側に配置された前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅は、前記ブロックのタイヤ周方向他方側に配置された前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅よりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】
前記ブロックの前記タイヤ周方向一方側は、車両装着時における前記ブロックの踏み込み側である、請求項5又は6に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人により、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤの形状を狭幅、大径化することにより燃費性等を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-207283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなタイヤはリング剛性が高いため、上記のようなタイヤを装着した車両が雪上路面を走行する際に、固まった雪との間で点接触に近い局所的な接触を生じさせてしまい、そのような局所的な接触をした際に入力される車両の振動により、車体が跳ねてしまう現象が生じて、雪上性能が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、雪上性能の低下を抑制しつつも、燃費性を向上することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0007】
(2)一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たし、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0008】
(3)一対のビード部間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカスを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たし、
前記タイヤは、トレッド部を有し、
前記トレッド部の踏面に1つ以上の陸部を有し、
前記陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、
前記複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、
前記幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が前記踏面側より大きくなる拡幅部を有することを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0009】
ここで、「踏面」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなる接地面のタイヤ周方向全域にわたる面をいう。
【0010】
ここで、「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0011】
(4)前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記拡幅部を有する前記幅方向サイプは、前記ブロックのタイヤ周方向長さの中央50%の領域である中央領域に位置する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0012】
(5)前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記拡幅部を有する前記幅方向サイプは、前記ブロックのタイヤ周方向一方側において、タイヤ周方向他方側よりも多く配置されている、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0013】
(6)前記陸部は、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画され、
前記ブロックのタイヤ周方向一方側に配置された前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅は、前記ブロックのタイヤ周方向他方側に配置された前記幅方向サイプの前記拡幅部のサイプ幅よりも大きい、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
ここで、「拡幅部のサイプ幅」は、拡幅部におけるサイプ幅の最大値をいうものとする。
【0014】
(7)前記ブロックの前記タイヤ周方向一方側は、車両装着時における前記ブロックの踏み込み側である、上記(5)又は(6)に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、雪上性能の低下を抑制しつつも、燃費性を向上することのできる、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
図2】本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図3】本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の踏面を模式的に示す、平面図である。
図4】幅方向サイプの断面形状を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤについて、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0018】
図1は、タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
本発明の第1の態様における一実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)は、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、狭幅・大径の形状をなしている。タイヤの断面幅SWをタイヤの外径ODに比して狭くすることにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、タイヤの外径ODをタイヤの断面幅SWに比して大きくすることにより、タイヤの接地面付近でのトレッドゴムの変形を抑制して、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。上記SW/ODは、0.25以下とすることが好ましく、0.24以下とすることがより好ましい。
上記比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記比を満たす範囲において、105mm以上とすることが好ましく、125mm以上とすることがより好ましく、135mm以上とすることがさらに好ましく、145mm以上とすることが特に好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、155mm以下とすることが好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、500mm以上とすることが好ましく、550mm以上とすることがより好ましく、580mm以上とすることがさらに好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記比を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、720mm以下とすることがより好ましく、650mm以下とすることがさらに好ましく、630mm以下とすることが特に好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、16インチ以上とすることが好ましく、17インチ以上とすることがより好ましく、18インチ以上とすることがさらに好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましく、20インチ以下とすることがさらに好ましく、19インチ以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
【0019】
本発明の第2の態様における一実施形態のタイヤは、タイヤの断面幅SWが165(mm)以上であり、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第2の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、175mm以上とすることが好ましく、185mm以上とすることがより好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、230mm以下とすることが好ましく、215mm以下とすることがより好ましく、205mm以下とすることがさらに好ましく、195mm以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、630mm以上とすることが好ましく、650mm以上とすることがより好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、750mm以下とすることがより好ましく、720mm以下とすることがさらに好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、18インチ以上とすることが好ましく、19インチ以上とすることがより好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましい。また、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、タイヤの扁平率は、45~70とすることが好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、165/45R22、165/55R18、165/55R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/65R19、165/70R18、175/45R23、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/45R22、185/50R20、185/55R19、185/55R20、185/60R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20、195/60R19、205/50R21、205/55R20、215/50R21のいずれかとすることができる。
【0020】
本発明の第3の態様における一実施形態のタイヤは、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第3の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、接地面積を確保する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、105mm以上とすることが好ましく、125mm以上とすることがより好ましく、135mm以上とすることがさらに好ましく、145mm以上とすることが特に好ましい。一方で、タイヤの断面幅SWは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、230mm以下とすることが好ましく、215mm以下とすることがより好ましく、205mm以下とすることがさらに好ましく、195mm以下とすることが特に好ましい。また、タイヤの外径ODは、転がり抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、500mm以上とすることが好ましく、550mm以上とすることがより好ましく、580mm以上とすることがさらに好ましい。一方で、タイヤの外径ODは、空気抵抗を低減する観点からは、上記関係式を満たす範囲において、800mm以下とすることが好ましく、750mm以下とすることがより好ましく、720mm以下とすることがさらに好ましい。また、リム径は、転がり抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、16インチ以上とすることが好ましく、17インチ以上とすることがより好ましく、18インチ以上とすることがさらに好ましい。一方で、リム径は、空気抵抗を低減する観点からは、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、22インチ以下とすることが好ましく、21インチ以下とすることがより好ましく、20インチ以下とすることがさらに好ましい。また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19、165/45R22、165/55R18、165/55R19、165/55R20、165/55R21、165/60R19、165/6R19、165/70R18、175/45R23、175/55R18、175/55R19、175/55R20、175/55R22、175/60R18、185/45R22、185/50R20、185/55R19、185/55R20、185/60R19、185/60R20、195/50R20、195/55R20、195/60R19、205/50R21、205/55R20、215/50R21のいずれかとすることができる。
【0021】
図2は、本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。図2は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした際のタイヤの幅方向断面を示している。図2に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカス3を備えている。また、このタイヤ1は、カーカス3のタイヤ径方向外側に、図示例で2層のベルト層4a、4bからなるベルト4及びトレッド5を順に備えている。
【0022】
この例では、一対のビード部2には、ビードコア2aがそれぞれ埋設されている。本発明では、ビードコア2aの断面形状や材質は特に限定されず、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて通常用いられる構成とすることができる。本発明では、ビードコア2aは、複数の小ビードコアに分割されたものとすることもできる。あるいは、本発明では、ビードコア2aを有しない構成とすることもできる。
【0023】
図示例のタイヤ1は、ビードコア2aのタイヤ径方向外側に、断面略三角形状のビードフィラ2bを有している。ビードフィラ2bの断面形状は、この例に限定されるものではなく、材質も特に限定されない。あるいは、ビードフィラ2bを有しない構成としてタイヤを軽量化することもできる。
【0024】
本実施形態において、ビードフィラ2bのタイヤ幅方向断面積S1は、ビードコア2aのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上4倍以下とすることが好ましい。上記断面積S1を上記断面積S2の1倍以上とすることにより、ビード部2の剛性を確保することができ、上記断面積S1を上記断面積S2の4倍以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。また、本実施形態において、タイヤ最大幅位置(タイヤ幅方向の幅が最大となるタイヤ径方向位置であって、それがタイヤ径方向領域となる場合は、その領域のタイヤ径方向中心位置)におけるサイドウォール部のゲージTsと、ビードコア2aのタイヤ径方向中心位置におけるビード幅(ビード部2のタイヤ幅方向の幅)Tbとの比Ts/Tbを、15%以上40%以下とすることが好ましい。上記比Ts/Tbを15%以上とすることにより、サイドウォール部の剛性を確保することができ、一方で、上記比Ts/Tbを40%以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。なお、ゲージTsはゴム、補強部材、インナーライナーなど全ての部材の厚みの合計となる(ただし、サイドウォール部の内面に制音体が配置されている場合であっても、制音体の厚さは含まない)。ここで、「サイドウォール部」とは、接地端Eのタイヤ幅方向外側であって、接地端Eからビード部のタイヤ径方向外側端(ビードフィラ2bを有する場合には、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端であって、ビードフィラ2bを有しない場合には、ビードコア2aのタイヤ径方向外側端)までにかけてのタイヤ径方向領域をいう。また、ビードコア2aがカーカス3によって複数の小ビードコアに分割されている構造の場合には、全小ビードコアのうちタイヤ幅方向最内側端部と最外側端部の距離をTbとする。また、本実施形態では、タイヤ最大幅位置におけるサイドウォール部のゲージTsと、カーカスコードの径Tcとの比Ts/Tcを5以上10以下とすることが好ましい。上記比Ts/Tcを5以上とすることにより、サイドウォール部の剛性を確保することができ、一方で、上記比Ts/Tcを10以下とすることにより、タイヤを軽量化して燃費性をさらに向上させることができるからである。本実施形態では、タイヤ最大幅位置は、例えば、ビードベースライン(ビードベースを通りタイヤ幅方向に平行な仮想線)からタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。
ここで、「ビード部」とは、ビードフィラを有する場合には、リムベースラインからビードフィラのタイヤ径方向最外側端までのタイヤ径方向領域にある部分をいい、ビードフィラを有しない場合には、リムベースラインからビードコアのタイヤ径方向最外側端までのタイヤ径方向領域にある部分をいう。
【0025】
本実施形態では、タイヤ1は、リムガードを有する構造とすることもできる。また、本実施形態では、ビード部2には補強等を目的としてゴム層やコード層等の追加部材をさらに設けることもできる。このような追加部材はカーカス3やビードフィラ2bに対して様々な位置に設けることができる。
【0026】
図2に示す例では、カーカス3は、1枚のカーカスプライからなる。一方で、本発明では、カーカスプライの枚数は特に限定されず、2枚以上とすることもできる。また、図2に示す例では、カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、該カーカス本体部3aからビードコア2a周りに折り返されてなる折り返し部3bと、を有している。一方で、本発明では、カーカス折り返し部3bは、ビードコア2aに巻き付けることもでき、あるいは、分割された複数の小ビードコアで挟みこむ構造とすることもできる。図示例では、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側、且つ、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置している。これにより、サイドウォール部の剛性を確保しつつも、タイヤを軽量化することができる。一方で、本発明においては、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に位置していても良く、あるいは、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側に位置していても良い。あるいは、カーカス折り返し部3bの端3cは、カーカス本体部2aとベルト4とのタイヤ径方向の間に位置するように、ベルト4の端(例えばベルト層4bの端)よりタイヤ幅方向内側に位置する、エンベロープ構造とすることもできる。さらに、カーカス3が複数枚のカーカスプライで構成される場合には、カーカスプライ間で、カーカス折り返し部3bの端3cの位置(例えばタイヤ径方向位置)を同じとすることも異ならせることもできる。カーカス3のコードの打ち込み数としては、特に限定されるものではないが、例えば、20~60本/50mmの範囲とすることができる。また、カーカスラインには様々な構造を採用することができる。例えば、タイヤ径方向において、カーカス最大幅位置をビード部2側に近づけることも、トレッド5側に近づけることもできる。例えば、カーカス最大幅位置は、ビードベースラインからタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。上記「ラジアル配列」は、タイヤ周方向に対して85°以上、好ましくはタイヤ周方向に対して90°である。
【0027】
本実施形態のタイヤは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなる1層以上の傾斜ベルト層を有することが好ましく、軽量化と接地面形状の歪みの抑制との兼ね合いから2層とすることが最も好ましい。なお、軽量化の観点からはベルト層を1層とすることもでき、接地面形状の歪みを抑制する観点からは3層以上とすることもできる。図2に示す例では、2層のベルト層4a、4bのうち、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より小さい。一方で、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より大きくすることもでき、同じとすることもできる。タイヤ幅方向の幅が最も大きいベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の90~115%であることが好ましく、接地幅の100~105%であることが特に好ましい。なお、「接地幅」とは、上記接地面における上記接地端E間のタイヤ幅方向の距離をいう。
本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードとしては、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も好ましいが、有機繊維コードを用いることもできる。スチールコードはスチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むことができる。本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードはモノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。撚り構造も種々のものを採用することができ、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものとすることができる。さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを用いることもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度を高角度、具体的にはタイヤ周方向に対して20°以上、好ましくは35°以上、特にタイヤ周方向に対して55°~85°の範囲とすることが好ましい。傾斜角度を20°以上(好ましくは35°以上)とすることにより、タイヤ幅方向に対する剛性を高め、特にコーナリング時の操縦安定性能を向上させることができるからである。また、層間ゴムのせん断変形を減少させて、転がり抵抗を低減することができるからである。
【0028】
本実施形態のタイヤは、ベルト4のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向にほぼ沿って延びるコードからなる1層以上の周方向ベルト層を有しない構成としている。一方で、本発明においては、ベルト4のタイヤ径方向外側に、1層以上の周方向ベルト層からなる周方向ベルトを有する構成とすることもできる。特に、ベルト4を構成するベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度θ1、θ2が35°以上の場合には、周方向ベルトを設けることが好ましく、該周方向ベルトは、センター領域Cの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、ショルダー領域Sの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高いことが好ましい。
なお、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の、タイヤ幅方向断面において、接地端E間のタイヤ幅方向中央50%のタイヤ幅方向領域をセンター領域Cとし、該センター領域よりタイヤ幅方向両外側の25%ずつのタイヤ幅方向領域をショルダー領域Sとする。
例えば、センター領域Cにおける周方向ベルト層の層数をショルダー領域Sより多くすることにより、センター領域Cの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性を、ショルダー領域Sの単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高くすることができる。ここで、ベルト層4a、4bのベルトコードがタイヤ周方向に対して35°以上で傾斜するタイヤの多くは、400Hz~2kHzの高周波域において、断面方向の1次、2次および3次等の振動モードにて、トレッド踏面が一律に大きく振動する形状となるため、大きな放射音が生じる。そこで、トレッド5のセンター領域Cのタイヤ周方向剛性を局所的に増加させると、トレッド5のセンター領域Cがタイヤ周方向に広がり難くなり、トレッド踏面のタイヤ周方向への広がりが抑制される結果、放射音を減少させることができる。
本実施形態では、タイヤ幅方向の幅が最も広いベルト層(図示例ではベルト層4a)のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の幅が最も狭いベルト層(図示例ではベルト層4b)のベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2とが、35°≦θ1≦85°、10°≦θ2≦30°、及び、θ1>θ2を満たすことも好ましい。タイヤ周方向に対して35°以上で傾斜するベルトコードを有するベルト層を備えたタイヤの多くは、400Hz~2kHzの高周波域において、断面方向の1次、2次および3次等の振動モードにて、トレッド踏面が一律に大きく振動する形状となるため、大きな放射音が生じる。そこで、トレッド5のセンター領域Cのタイヤ周方向剛性を局所的に増加させると、トレッド5のセンター領域Cがタイヤ周方向に広がり難くなり、トレッド踏面のタイヤ周方向への広がりが抑制される結果、放射音を減少させることができる。
ここで、本実施形態では、周方向ベルトを設ける場合は、周方向ベルト層は高剛性であることが好ましく、より具体的にはタイヤ周方向に延びるコードのゴム引き層からなり、コードのヤング率をY(GPa)、打ち込み数をn(本/50mm)とし、周方向ベルト層をm層とし、コード径をd(mm)として、X=Y×n×m×dと定義するとき、1500≧X≧225であることが好ましい。なお、ヤング率は、タイヤ周方向に対するヤング率を意味し、JIS L1017 8.5 a) (2002)にて試験を行い、JIS L1017 8.8(2002)に準拠して求めるものである。狭幅・大径サイズの乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいては、路面からの旋回時における入力に対しタイヤ周方向において局所的な変形を起こし、接地面は略三角形状、すなわち、タイヤ幅方向の位置によって周方向の接地長が大きく変化する形状となりやすい。これに対し、高剛性の周方向ベルト層とすることにより、タイヤのリング剛性が向上して、タイヤ周方向の変形が抑制されることとなるため、ゴムの非圧縮性により、タイヤ幅方向の変形も抑制され、接地形状が変化しにくくなる。さらには、リング剛性が向上することにより偏心変形が促進され、転がり抵抗も同時に向上する。さらに、上記のように高剛性の周方向ベルト層を用いた場合には、ベルト層4a、4bのベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を高角度、具体的には35°以上とすることが好ましい。高剛性の周方向ベルト層を用いた場合には、タイヤ周方向の剛性が高くなることにより、タイヤによっては、接地長が減少してしまうことがある。そこで、高角度のベルト層を用いることにより、タイヤ周方向の面外曲げ剛性を低下させて、踏面変形時のゴムのタイヤ周方向の伸びを増大させ、接地長の減少を抑制することができる。また、本実施形態では、周方向ベルト層には、破断強度を高めるために波状のコードを用いてもよい。同様に破断強度を高めるために、ハイエロンゲーションコード(例えば破断時の伸びが4.5~5.5%)を用いてもよい。さらに、本実施形態では、周方向ベルト層には、種々の材質が採用可能であり、代表的な例としては、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ガラス繊維、カーボン繊維、スチール等が採用できる。軽量化の点から、有機繊維コードが特に好ましい。ここで、本実施形態では、周方向ベルトを設ける場合は、周方向ベルト層のコードは、モノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコード、さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたハイブリッドコードを用いることもできる。また、本実施形態では、周方向ベルト層の打ち込み数は、20~60本/50mmの範囲とすることができるが、この範囲に限定されるのもではない。さらに、本実施形態では、タイヤ幅方向に剛性・材質・層数・打ち込み密度等の分布を持たせることもでき、例えばショルダー部Sのみにおいて、周方向ベルト層の層数を増やすこともでき、一方でセンター領域Cのみにおいて、周方向ベルト層の層数を増やすこともできる。また、本実施形態では、周方向ベルト層は、ベルト層4a、4bよりもタイヤ幅方向の幅を大きくすることも小さくすることも同じとすることもできる。例えば、周方向ベルト層のタイヤ幅方向の幅は、ベルト層4a、4bのうちタイヤ幅方向の幅が最も広いベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅の90%~110%とすることができる。ここで、周方向ベルト層は、スパイラル層として構成することが製造の観点から特に有利である。
【0029】
図示例では、トレッド部5を構成するトレッドゴムは、1層からなる。一方で、本実施形態では、トレッド部5を構成するトレッドゴムは、異なる複数のゴム層がタイヤ径方向に積層されて形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては損失正接(tanδ)、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを用いることができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚さの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向主溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。また、トレッド部5を構成するトレッドゴムは、タイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては損失正接、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の幅の比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向主溝近傍のみ、接地端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
トレッドゴムのゴムゲージは、5mm以上8mm以下とすることが好ましい。本実施形態の場合のゴムゲージは、図2に示すように、タイヤ外表面からタイヤ径方向最外側の補強部材(図示例では2層のベルト層4a、4bのうち、最外側ベルト層4b)までのトレッドゴム5の厚さである。8mm以下とすることにより、タイヤを軽量化して転がり抵抗をさらに低減することができる。一方で、5mm以上とすることにより、ある程度摩耗が進展した際にもウェット性能を確保することができる。
また、本実施形態では、タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面CLにおけるトレッド表面上の点Pを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、タイヤの接地幅をWとするとき、比LCR/Wを0.045以下とすることが好ましい。比LCR/Wを上記の範囲とすることにより、タイヤのクラウン部がフラット化(平坦化)し、接地面積が増大して、路面からの入力(圧力)を緩和して、タイヤ径方向の撓み率を低減し、タイヤの耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
本実施形態のタイヤ1は、タイヤの内面7(単に、タイヤ内面7ともいう)にインナーライナー8を有している。インナーライナー8の厚さは、1.5mm~2.8mm程度とすることが好ましい。80~100Hzの車内騒音を効果的に低減することができるからである。インナーライナー8を構成するゴム組成物の空気透過係数は、1.0×10-14cc・cm/(cm・s・cmHg)以上、6.5×10-10cc・cm/(cm・s・cmHg)以下とすることが好ましい。また、タイヤ内面の100μmの領域当たりに、最大径1.0μm以上のフッ素を含む粒子を1つ以上有することが好ましく、タイヤ内面の周上に、タイヤ幅方向に延びる複数本のブラダーリッヂが形成され、ブラダーリッヂは、前記タイヤ内面のタイヤ幅方向のいずれかの位置で、タイヤ周方向1インチ当たり5本以上形成されていることが好ましい。
本実施形態では、インナーライナー8は、ブチルゴムを主体としたゴム層のほか、樹脂を主成分とするフィルム層によって形成することもできる。本実施形態では、タイヤ内面7には、パンク時の空気の漏れを防ぐためのシーラント部材を備えることもできる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の踏面を示す、平面図である。図3は、本発明の第1~第3の態様の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の踏面を模式的に示す、平面図である。本実施形態では、踏面にタイヤ周方向に延びる1本以上の(図示例で2本の)周方向主溝6を有している。周方向主溝6の本数は、1~4本とすることが好ましい。図3に示すように、周方向主溝6間又は周方向主溝6とトレッド端TEとにより区画される1つ以上の(図示例で3つの)陸部9(9a、9b)を有している。陸部9の個数は、上記の周方向主溝6の本数に対応して2~5つとすることが好ましい。図示例のように、各陸部は、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝によってタイヤ周方向に完全に分断されることのない、リブ状陸部とすることができる。このような構成によれば、陸部の剛性を確保することができ、また、上記のSW及びODの関係式を満たすタイヤは、側方への排水が容易であるため、幅方向溝を有しなくても排水性を確保することもできる。一方で、いずれか1つ以上の陸部が幅方向溝によってタイヤ周方向に完全に分断されたブロック状の陸部であっても良い。
例えば、周方向主溝の本数が2本である場合、接地端E間のタイヤ幅方向領域を4等分して2つの中央領域Cと、2つの側方領域Sとに分けるとき、図示例のように2本の周方向主溝6が中央領域Cに位置することが好ましい。排水性をより確保することができるからである。
ここで、「タイヤ周方向に延びる」とは、タイヤ周方向に対して傾斜せずに延びる場合の他、タイヤ周方向に対して5°以下の傾斜角度で延びる場合も含む。また、図示のように、周方向主溝6は、タイヤ周方向に連続して延びることが好ましい。周方向主溝6の形状は、図示例のように直線状であることが最も好ましいが、ジグザグ状、湾曲状等にすることもできる。
【0032】
周方向主溝6の溝幅(開口幅)は、9mm~16mmとすることが好ましい。溝幅を9mm以上とすることにより、排水性をより向上させることができ、一方で、溝幅を16mm以下とすることにより、陸部9の剛性をより確保することができるからである。同様の理由により、周方向主溝6の溝幅は、10mm~15.5mmとすることがより好ましい。周方向主溝6の溝深さ(最大深さ)は、1~5mmとすることが好ましい。溝深さを1mm以上とすることにより、排水性をより向上させることができ、一方で、溝深さを5mm以下とすることにより、陸部9の剛性をより確保することができるからである。同様の理由により、周方向主溝6の溝深さは、2~4mmとすることがより好ましい。
【0033】
トレッド部5の踏面のネガティブ率は、20%以下とすることが好ましく、18%以下とすることがより好ましく、15%以下とすることがさらに好ましい。一方で、排水性を確保する観点からは、トレッド部5の踏面のネガティブ率は、5%以上であることが好ましい。ここで、「ネガティブ率」とは、上記踏面の面積に対する、溝面積の割合をいうものとする。上記の溝面積を算出する際には、溝面積にはサイプ(上記基準状態での開口幅が1mm以下であるもの)の面積を含まないものとする。
【0034】
図3に示すように、陸部9に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプ10を有している。「タイヤ幅方向に延びる」とは、図示のようにタイヤ幅方向に対して傾斜せずに延びる場合の他、タイヤ幅方向に対して50°以下の傾斜角度で傾斜している場合も含まれる。図示例では、複数本の幅方向サイプ10は、タイヤ周方向に等間隔に配置されている。
【0035】
幅方向サイプ10のサイプ幅(開口幅)は、上述の通り1mm以下であれば特に限定されないが、例えば0.3~0.7mmとすることができる。幅方向サイプ10のサイプ深さ(最大深さ)は、特には限定されないものの、周方向主溝6の深さと同程度にすることができる。複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、3mm~10mmであり、好ましくは5mm~10mmである。なお、タイヤの騒音を低減するために、タイヤ周方向のピッチ長にばらつきを持たせて(いわゆるピッチバリエーション)幅方向サイプ10を配設することもできる。
図示例では、幅方向サイプ10は、延在方向の両端が周方向主溝6に連通しているが、一方で、幅方向サイプ10は、一方の端のみが周方向主溝6に連通し、他方の端は陸部9内に留まる、いわゆる片閉じサイプとすることができ、あるいは、両端が陸部9内に留まるサイプとすることもできる。これらのようなサイプを用いればサイプの形成による陸部の剛性の低下を極力抑制することができる。
【0036】
図示例では、幅方向サイプ10は、全ての陸部9a、9bにおいて形成されているが、幅方向サイプ10が形成されていない陸部9を有していても良い。また、図示例では、陸部9aに形成された幅方向サイプ10のタイヤ周方向のピッチ長を、陸部9bに形成された幅方向サイプ10のタイヤ周方向のピッチ長と同じとしているが、長くすることも短くすることもできる。
【0037】
図4は、幅方向サイプの一例を示す断面図である。図4に示すように、本例では、幅方向サイプ10は、平板部10aと拡幅部10bとからなり、サイプ底側にサイプ幅が踏面側より大きくなる拡幅部10bを有している。拡幅部10bを有することにより、摩耗進展時において陸部の圧縮剛性を効果的に低下させることができる。平板部10aのサイプ幅(開口幅)は、幅方向サイプ10(全体)が平板状である場合と同様に、上述の通り1mm以下であれば特に限定されないが、例えば0.3~0.7mmとすることができる。拡幅部10bのサイプ幅(開口幅と同じ方向に測った際の最大幅)は、平板部10aの開口幅の2~30倍とすることが好ましい。2倍以上とすることにより、摩耗進展時において陸部の圧縮剛性をさらに効果的に低下させることができ、一方で、30倍以下とすることにより、摩耗進展時の陸部の剛性が極端に低下しないようにすることができる。より好ましくは、第1の拡幅部10bのサイプ幅は、平板部10aの開口幅の2~20倍とする。また、拡幅部10bのタイヤ径方向の長さ(深さ)は、平板部10aのタイヤ径方向の長さ(深さ)の0.4~9倍とすることができる。0.4倍以上とすることにより、摩耗進展時になるべく早期に、陸部の圧縮剛性を効果的に低下させることができ、一方で、9倍以下とすることにより、陸部の剛性が極端に低下してしまわないようにすることができる。より好ましくは、第1の拡幅部10bのタイヤ径方向の長さ(深さ)は、平板部10aのタイヤ径方向の長さ(深さ)の0.5~7倍とする。拡幅部10bの形状は、図示例では、断面楕円状(横長)であるが、縦長の楕円状、円形、三角形状(タイヤ径方向外側から内側に広がる形状)等、様々な形状とすることができる。特には限定されないものの、拡幅部10bのサイプ幅(開口幅と同じ方向に測った際の最大幅)は、拡幅部10bの形状が円錐状(断面三角形状)の場合は1.5~3.5mm、球状(断面円形又は楕円形)の場合は、1.0~2.0mmとすることが好ましい。平板状のサイプとすることにより乗り心地性能をより向上させることができる。一方で、平板部10aに代えて、ジグザグ形状等の、断面が平板でないサイプも採用することもできる。そのような形状のサイプとすることにより、陸部全体のブロック剛性を維持しやすくなるため、効果的に転がり抵抗を抑えることができる。
【0038】
周方向主溝6は、直線部と拡幅部とからなり、溝底側に溝幅が踏面側より大きくなる拡幅部を有することができる。拡幅部を有することにより、摩耗進展時の排水性をより確保することができる。拡幅部の溝幅(開口幅と同じ方向に測った際の最大幅)は、直線部の開口幅の1.1~1.5倍とすることが好ましい。1.1倍以上とすることにより、摩耗進展時の排水性をより向上させることができ、一方で、1.5倍以下とすることにより、陸部の剛性が低下し過ぎないようにすることができるからである。また、拡幅部のタイヤ径方向の長さ(深さ)は、直線部のタイヤ径方向の長さ(深さ)の0.4倍以上とすることができる。0.4倍以上とすることにより、摩耗進展時になるべく早期に、排水性を向上させることができる。より好ましくは、拡幅部のタイヤ径方向の長さ(深さ)は、直線部のタイヤ径方向の長さ(深さ)の0.5倍以上とする。なお、直線部を設けない場合もあるため、上限は特に限定されない。拡幅部の形状は、図示例では、断面楕円状(横長)であるが、縦長の楕円状、円形、三角形状(タイヤ径方向外側から内側に広がる形状)等、様々な形状とすることができる。特には限定されないものの、拡幅部の溝幅(開口幅と同じ方向に測った際の最大幅)は、拡幅部の形状が円錐状(断面三角形状)の場合は11~22mm、球状(断面円形又は楕円形)の場合は、10~19mmとすることが好ましい。
【0039】
なお、周方向主溝6の断面形状は、通常のU字状やV字状の形状とすることもできる。そして、全ての周方向主溝6を通常のU字状やV字状の形状とすることもでき、あるいは、全ての周方向主溝6を直線部と拡幅部とからなる形状のものとすることもでき、あるいは、これらを任意に組み合わせて配設することもできる。
【0040】
以下、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤの作用効果について説明する。
まず、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとが、上記の所定の関係式を満たすため、空気抵抗値及び転がり抵抗値を低減して、燃費性を向上させることができる。しかし、上述したように、このようなタイヤは、リング剛性が高いことに起因して雪上性能が低下してしまう場合があった。これに対し、本実施形態のタイヤは、陸部に、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向サイプを有し、幅方向サイプは、サイプ底側にサイプ幅が踏面側より大きくなる拡幅部を有している。これにより、陸部の圧縮剛性を低下させて路面との間で局所的な接触が生じるのを抑制しつつ、さらに摩耗進展時の排水性の低下も抑制することができる。そして、複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長を3mm~10mmとしている。複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長が3mm未満だと拡幅部が潰れる空間を十分に確保することができず、一方で、タイヤ周方向のピッチ長が10mm超だと上記の効果を十分に得ることができない。ここで、上記のようなSW及びODの所定の関係式を満たすタイヤは、接地圧が高いためエッジ圧が高く、上記のようにピッチ長を3mm以上としてタイヤ幅方向のエッジ成分(タイヤ周方向に対するエッジ成分)が減少しても、十分に雪上トラクション性能や雪上コーナリング性能を確保することができる。このように、高いエッジ圧、及び、路面との間の局所的な接触を抑制することのより、雪上性能の低下を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤによれば、雪上性能の低下を抑制しつつも、燃費性を向上することができる。
同様の理由により、複数本の幅方向サイプのタイヤ周方向のピッチ長は、好ましくは5mm~10mmである。
【0041】
上記のような効果をより確実に得るためには、全ての幅方向サイプのうち50~100%(本数)を、上記の拡幅部を有する幅方向サイプとすることが好ましい。また、上記の拡幅部を有する幅方向サイプと他の(例えば全体が平板状の)幅方向サイプとを併用する場合には、上記の拡幅部を有する幅方向サイプが、タイヤ周方向に1つおき、2つおきに配列される等、タイヤ周方向に均一となるように配列することが好ましい。なお、本例では、本例では、全ての幅方向サイプ10を、上記のような平板部10aと拡幅部10bとからなるものとしている。
また、上記のような効果を得るためには、いずれかの陸部において、全ての幅方向サイプのうち50~100%を占める上記の拡幅部を有する幅方向サイプが形成されていれば良く、上記の拡幅部を有する幅方向サイプが全体の50%未満の本数(0本を含む)であるような陸部を有していても良い。また、一例としては接地面内に少なくとも1つ、上記のような平板部10aと拡幅部10bとからなる幅方向サイプ10が位置することもできる。
【0042】
また、トレッド端TEとタイヤ幅方向最外側の周方向主溝6とにより区画される陸部9bをショルダー陸部とし、それ以外の陸部9aをセンター陸部とするとき、センター陸部に上記の拡幅部を有する幅方向サイプを形成することにより、雪上路面でのトラクション性能を向上させることができ、ショルダー陸部に上記の拡幅部を有する幅方向サイプを形成することによりコーナリングパワーを増大させることができる。
さらに、車両装着時の内側のショルダー陸部は、摩耗性能への寄与が大きく、車両装着時外側の陸部は、コーナリング性能への寄与が大きいため、タイヤ幅方向一方側(車両装着時外側)における上記拡幅部を有する幅方向サイプの個数密度を、タイヤ幅方向他方側(車両装着時内側)における上記拡幅部を有する幅方向サイプの個数密度より大きくすることにより、耐摩耗性とコーナリングパワーとをより高い次元で両立させることができる。
【0043】
ここで、陸部が、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画される場合は、拡幅部を有する幅方向サイプは、ブロックのタイヤ周方向長さ(ブロックのタイヤ周方向の両端間のタイヤ周方向の長さ)の中央50%の領域(両端部25%ずつでない領域)である中央領域に位置することが好ましい。拡幅部が潰れる空間を十分に確保して、上記の雪上性能の低下を抑制する効果をより一層高めることができるからである。
また、上記の拡幅部を有する幅方向サイプを片閉じサイプとして、一方の周方向主溝(又はトレッド端)に連通する幅方向サイプと、他方の周方向主溝(又はトレッド端)に連通する幅方向サイプとを、タイヤ周方向に交互に、千鳥状に配置して、上記の拡幅部を有する幅方向サイプの密度を高めても良い。この場合のピッチ長は、一方の周方向主溝(又はトレッド端)に連通する幅方向サイプ同士のピッチ長、及び、他方の周方向主溝(又はトレッド端)に連通する幅方向サイプ同士のピッチ長で考えるものとする。
【0044】
また、陸部が、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画される場合は、拡幅部を有する幅方向サイプは、ブロックのタイヤ周方向一方側において、タイヤ周方向他方側よりも多く配置されていることも好ましい。ブロックのタイヤ周方向一方側を、車両装着時におけるブロックの踏み込み側とした場合に、踏み込み側の方が蹴り出し側よりも拡幅部が潰れる効果が高いため、より効率的に雪上性能の低下を抑制することができるからである。
【0045】
また、陸部が、タイヤ幅方向に延びる複数本の幅方向溝によりブロックに区画される場合は、ブロックのタイヤ周方向一方側に配置された幅方向サイプの拡幅部のサイプ幅は、ブロックのタイヤ周方向他方側に配置された前記幅方向サイプの拡幅部のサイプ幅よりも大きいことも好ましい。ブロックのタイヤ周方向一方側を、車両装着時におけるブロックの踏み込み側とした場合に、踏み込み側の方が蹴り出し側よりも拡幅部が潰れる効果が高いため、より効率的に雪上性能の低下を抑制することができるからである。
【符号の説明】
【0046】
1:乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤ)、 2:ビード部、
3:カーカス、 4:ベルト、 5:トレッド部、 6:周方向主溝、
7:タイヤ内面、 8:インナーライナー、 9:陸部、 10:幅方向サイプ
図1
図2
図3
図4