(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095186
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】加圧用包装体および加圧用包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 30/26 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B65D30/26 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208363
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】710006932
【氏名又は名称】株式会社パックプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 希
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA14
3E064AB13
3E064AB23
3E064AC23
3E064BA26
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC16
3E064BC18
3E064FA01
3E064HM01
3E064HR02
3E064HR05
3E064HR08
3E064HU03
(57)【要約】
【課題】収容空間に簡単かつ確実に充填することができる加圧用包装体および加圧用包装体の製造方法を提供する。
【解決手段】気体が充填された球体100を加圧しながら収容する加圧用包装体10であって、前記球体100を収容する収容空間10Aが形成された可撓性のシート20と、前記シート20に形成され、前記収容空間10Aと外部を連通する連通部70と、前記連通部70に設けられた逆止弁40とを備え、前記逆止弁40は、該逆止弁40を介して前記収容空間10Aに気体が充填されるとともに、前記収容空間10Aに充填された気体が外部に抜けることを規制することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が充填された球体を加圧しながら収容する加圧用包装体であって、
前記球体を収容する収容空間が形成された可撓性のシートと、
前記シートに形成され、前記収容空間と外部を連通する連通部と、
前記連通部に設けられた逆止弁とを備え、
前記逆止弁は、該逆止弁を介して前記収容空間に気体が充填されるとともに、前記収容空間に充填された気体が外部に抜けることを規制することを特徴とする加圧用包装体。
【請求項2】
前記逆止弁は、貫通する挿通孔を備える本体部と、前記挿通孔を開閉するプラグと、前記本体部と前記プラグを連結する柔軟部材とを備え、
前記プラグは、前記収容空間に気体が充填される際、挿入口を開く一方、前記収容空間に気体が所定の圧力で充填された後、挿入口を閉じるものとなされている請求項1に記載の加圧用包装体。
【請求項3】
前記シートは、複数枚のヒートシール可能な材料によって構成され、所定のシール部においてヒートシールされることにより前記収容空間が形成される請求項1または請求項2に記載の加圧用包装体。
【請求項4】
前記シートは、本体部および分離予定部を含み、
シール部は、前記本体部および前記分離予定部を分離するためのノッチが設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の加圧用包装体。
【請求項5】
前記シートは、前記分離予定部が前記本体部から切り離されることによって形成される開口を開閉するためのチャックを備える請求項4に記載の加圧用包装体。
【請求項6】
シール部は、前記収容空間に収容された前記球体が前記逆止弁に接触することを妨げる接触防止シール部を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の加圧用包装体。
【請求項7】
前記接触防止シール部は、前記シートの側縁に沿って設けられた側部シール部から前記逆止弁に近づくにつれて幅が広くなるように構成される請求項6に記載の加圧用包装体。
【請求項8】
前記収容空間は、25℃において、0.07MPa以上~0.2MPa以下の範囲の圧力で加圧される請求項1~7のいずれか一項に記載の加圧用包装体。
【請求項9】
前記収容空間に収容される前記球体を備える請求項1~8のいずれか一項に記載の加圧用包装体。
【請求項10】
気体が充填された球体を収容する収容空間が形成された可撓性のシートと、前記シートに形成され、前記収容空間と外部を連通する連通部と、前記連通部に設けられ、前記収容空間に充填された気体が外部に抜けることを規制する逆止弁とを備えた加圧前の加圧用包装体を準備する工程と、
前記加圧用包装体に形成された開口部から前記収容空間に前記球体を収容する工程と、
前記加圧用包装体の前記開口部を閉鎖する工程と、
前記加圧用包装体の収容空間に前記逆止弁を介して気体を充填することにより、前記球体の内圧以上に加圧する工程とを備えることを特徴とする加圧用包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体が充填された球体を加圧しながら収容する加圧用包装体および加圧用包装体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素等の気体が充填された球体を収容する加圧用包装体が知られている。例えば、特許文献1は球体の一例であるテニスボールを収容するプラスチック製ブロー成形容器(1)を開示している。プラスチック製ブロー成形容器(1)はテニスボールを収容する胴部(11)、および、胴部(11)の開口部に取り付けられるアルミニウム製蓋(2)を備える。胴部(11)は例えば内圧が1kg/cm2となるように気体が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記プラスチック製ブロー成形容器(1)では、内部に気体を充填して加圧することは容易ではないという問題があった。また、構造的に胴部(11)の開口部が撓むなどして、気体が胴部(11)の開口部とアルミニウム製蓋(2)との間から抜けるおそれがあり、球体の内圧が低下しやすいという問題があった。さらに、容器(1)が剛性を有しているため、容器(1)から球体を取り出した後、廃棄物の減容化が難しいという問題もあった。さらにまた、容器内部の気体の漏れをできるだけ防止するべく、アルミニウム製蓋(2)により胴部(11)の開口部が強固に閉蓋されているため、アルミニウム製蓋(2)を開封しにくく、球体を取り出しにくいという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、気体が充填された球体を加圧しながら収容する加圧用包装体であって、前記球体を収容する収容空間が形成された可撓性のシートと、前記シートに形成され、前記収容空間と外部を連通する連通部と、前記連通部に設けられた逆止弁とを備え、前記逆止弁は、該逆止弁を介して前記収容空間に気体が充填されるとともに、前記収容空間に充填された気体が外部に抜けることを規制することを特徴とする。
上記加圧用包装体によれば、気体を逆止弁を介して収容空間に簡単かつ確実に充填することができる。また、気体が逆止弁やシートから抜ける虞がない、あるいはほとんど抜けない構成であるため、球体の内圧の低下を防止することができる。また、主に可撓性のシートから構成されるため、加圧用包装体から球体を取り出した後、コンパクトに折り畳むなどすれば廃棄物の減用化を実現することができる。また、シートを引き裂くなどして加圧用包装体を開封し得るため、球体を容易に取り出すことができる。
【0006】
また、前記逆止弁は、貫通する挿通孔を備える本体部と、前記挿通孔を開閉するプラグと、前記本体部と前記プラグを連結する柔軟部材とを備え、前記プラグは、前記収容空間に気体が充填される際、挿入口を開く一方、前記収容空間に気体が所定の圧力で充填された後、挿入口を閉じるものとなされてもよい。
これによれば、気体を逆止弁を介して収容空間に簡単かつ確実に充填することができるとともに、収容空間に充填された気体が外部に抜けることを確実に規制することができる。
【0007】
また、前記シートは、複数枚のヒートシール可能な材料によって構成され、所定のシール部においてヒートシールされることにより前記収容空間が形成されてもよい。
これによれば、所望の形状および大きさの収容空間を形成することができるとともに、収容空間に充填された気体がシートから外部に抜けることを確実に規制することができる。
【0008】
また、前記シートは、本体部および分離予定部を含み、シール部は、前記本体部および前記分離予定部を分離するためのノッチが設けられてもよい。
これによれば、シール部に設けられたノッチを起点としてシートを引き裂くだけで加圧用包装体を簡単かつ確実に開封することができる。
【0009】
また、前記シートは、前記分離予定部が前記本体部から切り離されることによって形成される開口を開閉するためのチャックを備えてもよい。これによれば、分離予定部を本体部から切り離した後であっても、開口を閉じることができるため、球体を本体部に収容した状態で持ち運べることができ、利便性が高められる。
【0010】
また、シール部は、前記収容空間に収容された前記球体が前記逆止弁に接触することを妨げる接触防止シール部を有してもよい。例えば、前記接触防止シール部は、前記シートの側縁に沿って設けられた側部シール部から前記逆止弁に近づくにつれて幅が広くなるように構成されることが挙げられる。
これらによれば、球体が逆止弁に接触することが妨げられ、逆止弁が不用意に開いたり、破損したりすることを防止できる。
【0011】
また、前記収容空間は、25℃において、0.07MPa以上~0.2MPa以下の範囲の圧力で加圧されるのがよい。
これによれば、シートの耐圧の範囲内において収容空間に収容された球体の内圧以上に加圧することができる。
【0012】
また、前記加圧用包装体は、前記収容空間に収容される前記球体を備えてもよい。
これによれば、上記加圧用包装体と同様の効果が得られる。
【0013】
また、本発明に係る加圧用包装体の製造方法は、気体が充填された球体を収容する収容空間が形成された可撓性のシートと、前記シートに形成され、前記収容空間と外部を連通する連通部と、前記連通部に設けられ、前記収容空間に充填された気体が外部に抜けることを規制する逆止弁とを備えた加圧前の加圧用包装体を準備する工程と、前記加圧用包装体に形成された開口部から前記収容空間に前記球体を収容する工程と、前記加圧用包装体の前記開口部を閉鎖する工程と、前記加圧用包装体の収容空間に前記逆止弁を介して気体を充填することにより、前記球体の内圧以上に加圧する工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、上記加圧用包装体を簡単かつ確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体を逆止弁を介して収容空間に簡単かつ確実に充填することができる。また、気体が逆止弁やシートから抜ける虞がない、あるいはほとんど抜けない構成であるため、球体の内圧の低下を防止することができる。また、主に可撓性のシートから構成されるため、加圧用包装体から球体を取り出した後、コンパクトに折り畳むなどすれば廃棄物の減用化を実現することができる。また、シートを引き裂くなどして加圧用包装体を開封し得るため、球体を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】
図3の逆止弁にノズルが挿入された状態の断面図。
【
図7】
図6の閉鎖前の加圧用包装体に球体が収容された状態の斜視図。
【
図8】第1実施形態の実施例および比較例の試験条件および試験結果を示す表。
【
図9】第2実施形態の閉鎖前の加圧用包装体の正面図。
【
図10】第2実施形態の閉鎖前の加圧用包装体の第1変形例の正面図。
【
図11】第2実施形態の閉鎖前の加圧用包装体の第2変形例の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は気体が充填された球体100を収容する加圧用包装体10の一例を示している。球体100は例えば、硬式テニスボールである。球体100に充填される気体の種類は任意に選択可能である。球体100に充填される気体は例えば、窒素または空気である。球体100の内圧は任意に選択可能である。球体100の内圧は例えば、25℃において0.07Mpa以上~0.08Mpa以下の範囲に含まれる。加圧用包装体10に収容される球体100の数は任意に選択可能である。
図1等に示される例では、加圧用包装体10に収容される球体100の数は2個である。
【0017】
加圧用包装体10を構成する主な要素はシート20、シール部30、および、逆止弁40である。
図1等のドットはシール部30を表している。以下では、加圧用包装体10の正面視における加圧用包装体10の左右方向を標準幅方向XAと称し、標準幅方向XAと直交する方向を標準高さ方向XBと称する。
【0018】
シート20は第1シート21および第2シート22を含む。第1シート21および第2シート22は球体100を収容する収容空間10Aが各シート21、22の間に形成されるようにシール部30によって接合される。収容空間10Aには、球体100に充填されている気体が球体100から抜けないように、任意の気体が充填される。収容空間10Aに充填される気体は任意に選択可能である。一例では、収容空間10Aに充填される気体は窒素または空気である。収容空間10Aの圧力は球体100の内圧以上の範囲に設定される。収容空間10Aの圧力は例えば、25℃において、0.07Mpa以上~0.2Mpa以下の範囲に含まれる。一例では、収容空間10Aの圧力は0.1Mpaである。
【0019】
第1シート21および第2シート22は個別に形成された2枚のシートである。シート20は複数の層が積層された層構造を備えている。シート20の層構造は任意に選択できる。第1例では、各シート21、22は同じ層構造を備える。第2例では、各シート21、22はそれぞれ異なる層構造を備える。
図1では第1例の層構造を備えるシート20により構成された加圧用包装体10を示している。
【0020】
図2は各シート21、22の厚さ方向に沿って各シート21、22を切断した断面構造である。各シート21、22は最外層20A、第1接着層20B、中間層20C、第2接着層20D、および、シーラント層20Eを備える。各シート21、22の製造方法の一例はドライラミネートである。
【0021】
最外層20Aはシート20のうちの最も外側、換言すれば、球体100から最も離れた位置に積層される。最外層20Aは例えば、ガスバリア性に優れた材料によって構成される。このため、球体100の品質が長期間にわたり良好に維持される。最外層20Aを構成する材料は例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートである。最外層20Aによって透過が抑制されるガスは例えば、酸素である。最外層20Aの厚さは任意に選択可能である。最外層20Aの厚さは例えば、12μmである。
【0022】
第1接着層20Bは最外層20Aと中間層20Cとを接着するように最外層20Aと中間層20Cとの間に設けられる。第1接着層20Bを構成する材料は例えば、ポリエステルウレタン系接着剤である。第1接着層20Bの厚さは任意に選択可能である。第1接着層20Bの厚さは例えば、2μmである。
【0023】
中間層20Cは例えば、最外層20Aに対して球体100側に積層される。以下では、任意の層に対して球体100側を内側と称する場合がある。中間層20Cは例えば、突き刺し強度を高めるために優れた材料によって構成される。中間層20Cを構成する材料は例えば、ナイロンである。中間層20Cの厚さは任意に選択可能である。中間層20Cの厚さは例えば、25μmである。
【0024】
第2接着層20Dは中間層20Cとシーラント層20Eとを接着するように中間層20Cとシーラント層20Eとの間に設けられる。第2接着層20Dを構成する材料は例えば、ポリエステルウレタン系接着剤である。第2接着層20Dの厚さは任意に選択可能である。第2接着層20Dの厚さは例えば、2μmである。
【0025】
シーラント層20Eは例えば、シート20のうちの最も内側、換言すれば、球体100に最も近い位置に積層される。シーラント層20Eは例えば、ヒートシール可能な材料によって構成される。シーラント層20Eを構成する材料は例えば、直鎖状低密度ポリエチレンである。シーラント層20Eの厚さは任意に選択可能である。シーラント層20Eの厚さは好ましくは、シール部30の剥離のしにくさとシート20の厚さとの関係に基づいて決められる。シーラント層20Eの厚さの最大値の好ましい一例は160μmである。シーラント層20Eの厚さが160μm以下である場合、シート20の厚さが厚くなりすぎない。シーラント層20Eの厚さの最小値の好ましい一例は80μmである。シーラント層20Eの厚さが80μm以上である場合、シール部30のシール強度を高くすることができ、収容空間10Aの圧力が高い場合であっても、シール部30が剥離しにくい。シーラント層20Eの厚さが取り得る好ましい範囲の一例は80μm以上~160μm以下である。一例では、シーラント層20Eの厚さは120μmである。
【0026】
シール部30は第1シート21と第2シート22とを接合する、または、第1シート21および第2シート22と逆止弁40とを接合する。正面視における加圧用包装体10の外郭形状は任意に選択できる。
図1に示される例では、加圧用包装体10の外郭形状は長方形である。シート20はシール部30によって囲まれた部分(以下では、「内方部23」という)とシール部30とに区分できる。収容空間10Aは第1シート21の内方部23と第2シート22の内方部23とに囲まれた空間であり、加圧用包装体10の外部と連通しないように、シール部30および逆止弁40によって閉じられる。
【0027】
シール部30は上部シール部31、下部シール部32、第1側部シール部33、第2側部シール部34、および、弁シール部35を備える。上部シール部31および弁シール部35は標準高さ方向XBにおいて内方部23の上側に設けられる。下部シール部32は開口部50(
図6参照)を閉鎖している。下部シール部32は標準高さ方向XBにおいて内方部23の下側に設けられる。第1側部シール部33は標準幅方向XAにおいて内方部23の右側または左側に設けられる。第2側部シール部34は標準幅方向XAにおいて内方部23の左側または右側に設けられる。
【0028】
上部シール部31の内縁31A、下部シール部32の内縁32A、第1側部シール部33の内縁33A、第2側部シール部34の内縁34Aおよび、弁シール部35の内縁35Aは内方部23の内郭を規定している。上部シール部31の外縁31B、下部シール部32の外縁32B、第1側部シール部33の外縁33B、第2側部シール部34の外縁34B、および、弁シール部35の外縁35Bは加圧用包装体10の外郭を規定している。
【0029】
各シール部31~35の幅は任意に選択できる。各シール部31~35の幅は各シール部31~35の中心線の法線における内縁31A~35Aと外縁31B~35Bとの間の長さである。各シール部31~35の中心線は内縁31A~35Aと外縁31B~35Bとの間を通過する仮想の線分である。各シール部31~35の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各シール部31~35のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。
【0030】
シール部30のシール強度は任意に選択可能である。シール部30のシール強度は好ましくは、シール部30の剥離のしにくさとヒートシールの容易さとの関係に基づいて決められる。シール部30のシール強度の最大値の一例は130N/15mmである。シール部30のシール強度が80N/15mm以下である場合、標準的な条件でシール部30を形成できない。シール部30のシール強度の最小値の一例は70N/15mmである。シール部30のシール強度が90N/15mm以上である場合、収容空間10Aの圧力が高い場合であっても、シール部30が剥離しにくい。シール部30のシール強度が取り得る範囲の一例は90N/15m以上~130N/15mm以下である。一例では、シール部30のシール強度は100N/15mmである。
【0031】
加圧用包装体10の幅および高さは例えば、収容される球体100の数、および、加圧用包装体10の持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。加圧用包装体10の幅は標準高さ方向XBに直交する線分における第1側部シール部33の外縁33Bと第2側部シール部34の外縁34Bとの間の長さである。加圧用包装体10の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、複数の部位の幅の平均が加圧用包装体10の幅を代表する。一例によれば、加圧用包装体10の幅は130mmである。加圧用包装体10の高さは標準幅方向XAに直交する線分における上部シール部31の外縁31Bと下部シール部32の外縁32Bとの間の長さである。加圧用包装体10の高さが部位毎に異なる場合、例えば最大の高さ、または、複数の部位の高さの平均が加圧用包装体10の高さを代表する。一例によれば、加圧用包装体10の高さは200mmである。
【0032】
加圧用包装体10の内方部23の幅は例えば、加圧用包装体10が持ち運ばれているときに球体100が加圧用包装体10の標準幅方向XAにおいて実質的に移動できないように決められることが好ましい。このため、収容空間10Aにおける球体100の位置が安定する。加圧用包装体10の内方部23の幅は標準高さ方向XBに直交する線分における第1側部シール部33の内縁33Aと第2側部シール部34の内縁34Aとの間の長さである。内方部23の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、複数の部位の幅の平均が内方部23の幅を代表する。内方部23の幅は例えば、球体100の外径よりも若干長い。一例では、内方部23の幅は110mmである。
【0033】
開口部50(
図6参照)は球体100を収容空間10Aに投入できるように第1シート21の下部21Aと第2シート22の下部22Aとの間に形成される。
図1に示される加圧用包装体10では、開口部50が下部シール部32により閉鎖されている。開口部50が閉鎖された加圧用包装体10(以下では、「閉鎖後の加圧用包装体10」)は本体部11および分離予定部12を含む。本体部11および分離予定部12はシール部30に設けられるノッチ60によって区分される。本体部11は球体100を収容する部分である。分離予定部12は下部シール部32を含む各シート21、22の一部である。ノッチ60をきっかけとして分離予定部12が本体部11から切り離されることによって、球体100を収容空間10Aから取り出すことが可能な開口(図示略)が第1シート21と第2シート22との間に形成される。球体100を収容空間10Aから取り出した後は例えば、本体部11をコンパクトに折り畳むことができるため、廃棄物の減溶化に貢献できる。また、シート20を引き裂くことによって、球体100を収容空間10Aから取り出すことができるため、従来技術のように、金属製の蓋を開封する場合よりも容易に球体100を取り出すことができる。
【0034】
加圧用包装体10は収容空間10Aと外部とを連通する連通部70をさらに備える。加圧用包装体10において連通部70が設けられる位置は任意に選択可能である。
図1等に示される例では、連通部70は上部シール部31と対応する箇所に設けられる。別の例では、連通部70は下部シール部32、第1側部シール部33、または、第2側部シール部34と対応する箇所に設けられる。
【0035】
逆止弁40は収容空間10Aに充填されている気体が連通部70を介して抜けないように連通部70に設けられる。
図3に示されるように、逆止弁40は本体41および本体41を貫通する挿入孔42を備える。本体41は弁シール部35(
図1参照)によって、第1シート21および第2シート22と接合される。本体41は例えば単一のプラスチックによる射出成形により形成される。挿入孔42には、ノズル80(
図4参照)が挿入される。ノズル80には例えば、チューブ200が接続される。チューブ200は図示しないポンプに接続される。ポンプは気体を収容空間10Aに供給する。逆止弁40はプラグ43および柔軟部材45をさらに備える。プラグ43は環状壁部43Aと端部壁部43Bとを有する。環状壁部43Aと端部壁部43Bとは、空間44を構成する。空間44は挿入孔42に向けて開口する。空間44はノズル80を受容する。柔軟部材45は本体41に対するプラグ43の位置を移動できるように本体41とプラグ43とを連結する。
図3に示されるように逆止弁40とノズル80とが結合していない場合、柔軟部材45は本体41に対してプラグ43が接触する位置にプラグ43を移動する。
図5に示されるように逆止弁40とノズル80とが結合している場合、柔軟部材45は本体41に対してプラグ43が接触しない位置にプラグ43を移動する。逆止弁40とノズル80とが結合する場合のみ、逆止弁40が開き、チューブ200およびノズル80を介して収容空間10Aに気体を充填できる。具体的には、チューブ200に接続されるポンプから送られてくる気体が、ノズル80に設けられる開口81を介して収容空間10Aに充填される。
【0036】
図6は開口部50が閉じられる前の加圧用包装体10(以下では、「閉鎖前の加圧用包装体10」)である。閉鎖前の加圧用包装体10の開口部50から収容空間10Aに球体100(
図1参照)が収容される。球体100が収容された後に下部シール部32が形成されることによって、
図1に示される閉鎖後の加圧用包装体10が得られる。
【0037】
図6および
図7を参照して、加圧用包装体10の製造方法の一例について説明する。加圧用包装体10の製造方法は例えば、シート接合工程、弁取付工程、収容工程、閉鎖工程、および、気体充填工程を含む。
【0038】
シート接合工程では、上部シール部31、第1側部シール部33、および、第2側部シール部34が形成されるように第1シート21と第2シート22とが接合される。弁取付工程はシート接合工程の後に実施される。弁取付工程では、連通部70に逆止弁40が挿入され、弁シール部35が形成されるように第1シート21および第2シート22と、逆止弁40とが接合される。弁取付工程が完了した場合、
図6に示されるように、閉鎖前の加圧用包装体10が製造される。収容工程は弁取付工程の後に実施される。
図7に示されるように、収容工程では、閉鎖前の加圧用包装体10の開口部50を介して球体100が収容空間10Aに収容される。閉鎖工程は収容工程の後に実施される。閉鎖工程では、下部シール部32が形成されるように第1シート21と第2シート22とが接合される。気体充填工程は閉鎖工程の後に実施される。気体充填工程では、逆止弁40にノズル80(
図5参照)が挿入され、収容空間10Aに気体が充填される。
【0039】
第1実施形態の加圧用包装体10によれば、次のような作用および効果が得られる。
シール部30および逆止弁40によって収容空間10Aが密閉されているため、収容空間10Aに充填されている気体が外部に抜けにくい。逆止弁40に設けられるプラグ43および柔軟部材45によって、収容空間10Aの密閉をさらに高めることができる。また、収容空間10Aの気体が外部に抜けた場合には、逆止弁40を介して容易に気体を充填することができる。このため、球体100の内圧が低下しにくい。
【0040】
(実施例)
本願発明者は第1実施形態の実施例および比較例の試料を用いて、加圧用包装体10の構成と球体100の内圧の低下のしにくさとの関係を確認する試験を実施した。
図8は実施例の試料および比較例の試料に関する試験条件および試験結果を示す。以下の説明では、説明の便宜上、比較例の試料における実施例の試料と共通する部分について、同一の符号を付している。実施例の試料は実施形態に関する加圧用包装体10である。比較例の試料は実施例の試料とは異なる構成を備える加圧用包装体10である。比較例の試料は特開2012-111556の
図1に示される構成を有する。すなわち、比較例の試料は逆止弁40を備えていない。
【0041】
各実施例および各比較例の試料に関する諸元は次のとおりである。各実施例および各比較例の球体100の内圧は0.08Mpaである。実施例1、2の試料、および、比較例1、2の試料の収容空間10Aの圧力は0.08Mpaである。実施例3、4の試料、および、比較例3、4の試料の収容空間10Aの圧力は0.09Mpaである。各実施例および各比較例の試料では、株式会社サン科学製のSealTesterを用いて空気を充填することによって、閉鎖後の加圧用包装体10を製造した。その後、各実施例の試料、および、各比較例の試料を所定の温度および湿度に維持された恒温槽内で保存した。試験に用いた恒温槽は楠本化成株式会社製のSXN412である。実施例1、3の試料、および、比較例1、3の試料が保存される恒温槽の温度は40℃である。実施例2、4の試料、および、比較例2、4の試料が保存される恒温槽の温度は50℃である。各実施例の試料、および、各比較例の試料が保存される恒温槽の湿度は75%である。各実施例の試料、および、各比較例の試料を恒温槽で保存した期間は2週間である。各実施例の試料、および、各比較例の試料の個数はそれぞれ10個である。各実施例、および、各比較例の内圧は株式会社クローネ製のデジタル圧力計KDM30-500kPaGにより測定された。
【0042】
試験では、各実施例の試料、および、各比較例の試料に関して、収容空間10Aから気体が抜けているか否かを目視によって確認した。
図8に示される抜け個数の項目の数は収容空間10Aから気体が抜けて、加圧用包装体10が萎んでいる状態の試料の個数を示している。
【0043】
各比較例の試料によれば、全ての試料について収容空間10Aから気体が抜けたことが確認された。各実施例の試料によれば、収容空間10Aから実質的に気体が抜けなかったことが確認された。各実施例の試料は逆止弁40を備えるため、収容空間10Aから外部に気体が抜けることが好適に抑制されたためであると考えられる。
【0044】
(第2実施形態)
図9を参照して、第2実施形態の包装体10について説明する。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。第2実施形態の包装体10は、第1実施形態の包装体10とシール部30の構成において相違し、その他については第1実施形態の包装体10と同様の構成を備える。
【0045】
図9は閉鎖前の加圧用包装体10である。シール部30は球体100が逆止弁40に接触することを妨げる接触防止シール部130を含む。このため、逆止弁40が破損しにくい。接触防止シール部130は収容空間10Aの圧力が局所的に作用しにくいように構成される。このため、収容空間10Aの圧力が比較的高い場合であっても、接触防止シール部130が剥離することを抑制できる。一例では、接触防止シール部130は上部シール部31、第1側部シール部33、および、第2側部シール部34から収容空間10Aに張り出した部分に角が含まれないように構成される。
【0046】
接触防止シール部130は第1側部シール部33と繋がる第1接触防止シール部131、および、第2側部シール部34と繋がる第2接触防止シール部132を含む。各接触防止シール部131、132は各側部シール部33、34から逆止弁40に近づくにつれて幅が広くなる。換言すれば、標準幅方向XAにおいて、第1接触防止シール部131の内縁131Aと第2接触防止シール部132の内縁132Aとの間隔XCは逆止弁40に近づくにつれて狭くなる。収容空間10Aにおいて球体100が逆止弁40に接近しようと移動した場合、球体100と各接触防止シール部131、132の各内縁131A、132Aとが接触するため、球体100と逆止弁40とが接触しない。
【0047】
各接触防止シール部131、132の幅は各接触防止シール部131、132の中心線の法線における内縁131A、132Aと外縁131B、132Bとの間の長さである。各接触防止シール部131、132の中心線は内縁131A、132Aと外縁131B、132Bとの間を通過する仮想の線分である。各接触防止シール部131、132の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各接触防止シール部131、132のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。各接触防止シール部131、132は各側部シール部33、34から逆止弁40の隣りまで設けられる。
【0048】
標準幅方向XAにおける各接触防止シール部131、132の幅LA、および、標準高さ方向XBにおける各接触防止シール部131、132の長さLBは連通部70の幅LCとの関係に基づいて決められる。一例では、幅LAは35mmである。長さLBは80mmである。幅LCは60mmである。第1接触防止シール部131の幅LAと第2接触防止シール部132の幅LAとは異なっていてもよい。第1接触防止シール部131の長さLBと第2接触防止シール部132の長さLBとは異なっていてもよい。第2実施形態の加圧用包装体10によれば、第1実施形態の加圧用包装体10に準じた作用および効果が得られる。
【0049】
(実施例)
本願発明者は第2実施形態に関する実施例の試料を用いて、加圧用包装体10の構成と逆止弁40の破損のしにくさとの関係を確認する輸送試験および落下試験を実施した。逆止弁の破損の一例は欠けおよび割れである。実施例の試料に関する諸元は次のとおりである。球体100の内圧は0.08Mpaである。収容空間10Aの圧力は0.1Mpaである。実施例の試料に対して株式会社サン科学製のSealTesterを用いて窒素を充填することによって、閉鎖後の加圧用包装体10を12個製造した。閉鎖後の加圧用包装体10はそれぞれ6個の球体100を収容している。
【0050】
輸送試験では、段ボール箱に詰められた12個の閉鎖後の加圧用包装体10を輸送試験機に配置した。試験に用いた輸送試験機は株式会社IMV社製のCV-300-2である。輸送試験の試験方法の規格はJISZ0200のレベル1である。落下試験では、段ボール箱に詰められた12個の閉鎖後の加圧用包装体10を規定高さからコンクリート上に1角3陵6面を各1回ずつ自由落下させた。規定高さは80cmである。落下試験の試験方法の規格はJISZ0202である。
【0051】
輸送試験および落下試験では、実施例の試料について逆止弁40が破損しているか否かを目視によって確認した。実施例の試料によれば、12個のすべての閉鎖後の加圧用包装体10について、逆止弁40の破損は確認されなかった。第2実施形態に関する実施例の試料は接触防止シール部130を備えるため、球体100と逆止弁40とが接触しない。このため、逆止弁40が破損しにくいと考えられる。
【0052】
(変形例)
なお、上記各実施形態は本発明に関する加圧用包装体が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する包装体は各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の一例を示す。
【0053】
・第1実施形態および第2実施形態の変形例の加圧用包装体10は分離予定部12が本体部11から切り離されることによって形成される開口を開閉できるように設けられるチャックを備える。チャックは例えば第1シート21のシーラント層20Eおよび第2シート22のシーラント層20Eに接合される。変形例の加圧用包装体10によれば、分離予定部12を本体部11から切り離した後であっても、開口を閉じることができるため、球体100を本体部11に収容した状態で持ち運べることができる。このため、利便性が高められる。
【0054】
・接触防止シール部130の構成は任意に変更可能である。第2実施形態の第1変形例の加圧用包装体10は
図10に示されるように、上部シール部31、第1側部シール部33、および、第2側部シール部34から収容空間10Aに張り出す四角形状の接触防止シール部230を備える。第2実施形態の第2変形例の加圧用包装体10は
図11に示されるように、上部シール部31から収容空間10Aに張り出す四角形状の接触防止シール部330を備える。第2実施形態の第1変形例および第2変形例では、収容空間10Aにおいて球体100が逆止弁40に接近しようと移動した場合に球体100と逆止弁40とが接触することが接触防止シール部230、330によって妨げられるため、逆止弁40が破損しにくい。ただし、
図10に示される接触防止シール部230では、収容空間10Aに張り出した部分に角が含まれているため、第2実施形態の収容空間10Aの圧力が高い場合に剥離するおそれがある。また、
図11に示される接触防止シール部330では、収容空間10Aの圧力が高い場合に上部シール部31側の根本の部分にエッジ切れが発生するおそれがある。
【符号の説明】
【0055】
10 :加圧用包装体
10A :収容空間
20 :シート
20E :シーラント層
30 :シール部
33 :第1側部シール部(側部シール部)
34 :第2側部シール部(側部シール部)
40 :逆止弁
70 :連通部
100 :球体
130、230、330:接触防止シール部