(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095190
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】荷台制御装置、荷台制御方法、および荷台制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/017 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B60G17/017
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208370
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA05
3D301AA48
3D301BA02
3D301CA21
3D301DA25
3D301DA67
3D301DA69
3D301EA03
3D301EA31
3D301EA59
3D301EB01
3D301EB09
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC37
(57)【要約】
【課題】人の作業工程が煩雑なものとなることを抑制しつつも人による搬入または搬出作業にかかる負荷を軽減できるようにした荷台制御装置を提供する。
【解決手段】CPU42は、荷室内の画像データDlugに基づき、荷室内で人が荷物を搬入しているか否かを判定する。CPU42は、荷物を搬入していると判定する場合、荷台の後方に対する前方の相対的な高さを所定量だけ低下させる指令値をサスペンションECU10に出力する。サスペンションECU10は、荷台の後方に対する前方の相対的な高さを所定量だけ低下させるべく、サスペンション12~18を操作する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室(LR)を備えた車両(VC)に適用される荷台制御装置(40)において、
前記車両は、前記荷室内の画像を撮影する撮像装置(50)と、荷台の傾きを調整する調整装置(12~18)と、を備え、
前記撮像装置が出力する画像データが示す人の動作に基づき、前記荷台の傾きの指令値(ΔH)を設定する設定処理(S16,S20:S16a,S20a)と、
前記荷台の傾きを前記指令値に制御すべく、前記指令値に関する信号を前記調整装置に出力する出力処理(S22)と、を実行する荷台制御装置。
【請求項2】
前記設定処理は、前記画像データが示す人の動作が荷物の搬入動作または搬出動作であると判定される場合に、想定される人の進行方向後方と比較して進行方向前方の方が低くなるように前記指令値を設定する処理を含む請求項1記載の荷台制御装置。
【請求項3】
前記設定処理は、前記搬出動作であると判定する場合、前記進行方向後方である前記荷室の奥側よりも、前記進行方向前方である前記荷室の入り口側の方が低くなるように前記指令値を設定する処理を含む請求項2記載の荷台制御装置。
【請求項4】
前記設定処理は、前記搬入動作であると判定する場合、前記進行方向後方である前記荷室の入り口側よりも前記進行方向前方である前記荷室の奥側の方が低くなるように前記指令値を設定する処理を含む請求項2記載の荷台制御装置。
【請求項5】
前記設定処理は、
前記車両の位置する路面の勾配情報を取得する取得処理(S50)と、
前記取得処理によって取得された前記勾配情報を加味して前記指令値を設定する処理(S16a,S20a)と、を含む請求項2~4のいずれか1項に記載の荷台制御装置。
【請求項6】
前記設定処理は、前記勾配情報が、前記進行方向後方に対向する路面の高度と比較して前記進行方向前方に対向する路面の高度の方が低いことを示す場合、前記路面の勾配がない場合と比較して、前記進行方向後方に対する前記進行方向前方の相対的な高さの低下量を小さくする処理を含む請求項5記載の荷台制御装置。
【請求項7】
前記設定処理は、
前記指令値が示す前記傾きを複数段階に設定可能であって、
前記傾きの大きさについての要求を受け付ける受付処理(S30)と、
前記受付処理によって受け付けた要求に応じて前記指令値を設定する処理と、
を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の荷台制御装置。
【請求項8】
記憶装置(46)を備え、
前記記憶装置には、写像を規定する写像データ(46a)が記憶されており、
前記写像は、前記画像データを入力とし、人の動作が搬入および搬出の2つの動作の少なくとも1つを示すか否かに関する出力変数の値を出力するものであり、
前記写像に前記画像データを入力した際の出力変数の値に基づき、前記搬入動作または前記搬出動作であるか否かを判定する判定処理(S14,S18)を実行する請求項2~6のいずれか1項に記載の荷台制御装置。
【請求項9】
前記設定処理は、
前記撮像装置が出力する前記画像データを送信する送信処理(S70)と、
前記送信した前記画像データに基づき前記搬入動作または前記搬出動作である旨の判定結果を受信する受信処理(S72)と、
を含む請求項2~6のいずれか1項に記載の荷台制御装置。
【請求項10】
前記撮像装置は、前記荷室内の画像に加えて、前記車両の運転席の画像を撮影する撮像装置である請求項1~9のいずれか1項に記載の荷台制御装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の荷台制御装置における前記設定処理および前記出力処理の各処理を実行するステップを有する荷台制御方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の荷台制御装置における前記設定処理および前記出力処理をコンピュータに実行させる荷台制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台制御装置、荷台制御方法、および荷台制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、荷台の高さを調整可能なトラック等の車両が記載されている。また、荷台のうちの車両後方側に対する車両前方側の相対的な高さを手動で操作する技術が周知である。この技術によれば、たとえば荷物の搬出時に、荷台のうちの車両後方側に対する車両前方側の高さを高くすることにより、荷物の搬出にかかる人の負荷を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術では、荷物の搬送および搬出時に、荷台のうちの車両後方側に対する車両前方側の相対的な高さを手動で操作する必要があることから、作業工程が煩雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
荷室(LR)を備えた車両(VC)に適用される荷台制御装置(40)において、前記車両は、前記荷室内の画像を撮影する撮像装置(50)と、荷台の傾きを調整する調整装置(12~18)と、を備え、前記撮像装置が出力する画像データが示す人の動作に基づき、前記荷台の傾きの指令値(ΔH)を設定する設定処理(S16,S20:S16a,S20a)と、前記荷台の傾きを前記指令値に制御すべく、前記指令値に関する信号を前記調整装置に出力する出力処理(S22)と、を実行する荷台制御装置である。
【0006】
上記構成では、画像データが示す人の動作に基づき、荷台の傾きの指令値を設定し、指令値を調整装置に出力する。そのため、荷台の傾きを人の動作に応じて制御することができる。そのため、搬入または搬出の作業時において、人の手動の入力操作によらずに荷台の傾きを作業にとって適切な値に設定することが可能となる。したがって、人の作業工程が煩雑なものとなることを抑制しつつも人による搬入または搬出作業にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】同実施形態にかかる車載装置の構成を示すブロック図。
【
図3】同実施形態にかかる画像ECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図4】(a)および(b)は、同実施形態の効果を示す図。
【
図5】第2の実施形態にかかる画像ECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図6】第3の実施形態にかかる画像ECUが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図9】第4の実施形態にかかる荷台制御システムの構成を示すブロック図。
【
図10】(a)および(b)は、上記システムが実行する処理の手順を示す流れ図。
【
図11】上記実施形態の変更例における車両の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる車両VCを示す。
図1に示すように、車両VCは、荷台LFの上に荷物を載置する荷室LRを有する。
【0009】
図2に、車両VCが備える機器の一部を示す。
サスペンションECU10は、サスペンション12~18を操作することによって、車両VCの高さを調整する。サスペンション12~18は、車両の高さを調整するアクチュエータである。詳しくは、サスペンション12は、
図1に示す前輪WFのうちの右側に備えられたアクチュエータであり、サスペンション14は、前輪WFのうちの左側に備えられたアクチュエータである。サスペンション16は、
図1に示す後輪WRのうちの右側に備えられたアクチュエータであり、サスペンション18は、後輪WRのうちの左側に備えられたアクチュエータである。
【0010】
駆動系ECU20は、内燃機関や回転電機等の車両の推力生成装置22を操作することによって、車両VCの駆動を制御する。駆動系ECU20は、駆動の制御に際して、勾配計測センサ24等の各種センサの検出値を参照する。勾配計測センサ24は、たとえば、車両VCの前後方向に加わる加速度成分を感知する前後加速度センサである。また、これに代えて、車両VCの勾配の検出値を出力するセンサであってもよい。ここで、勾配の検出値は、センサに加わる加速度成分に基づきセンサ内部で算出されるものとしてもよい。なお、駆動系ECU20は、通信線30を介して全地球測位システム(GPS32)からの位置データDgpsや地図データ34を参照し、これに基づき車両の位置する路面の勾配を算出することもある。すなわち、位置データDgpsが示す位置における勾配情報が地図データ34に示されている場合、その勾配情報を単独で車両VCの位置する路面の勾配情報として利用してもよい。もっとも、これに代えて、地図データ34が示す勾配情報と勾配計測センサ24の検出値とを参照して、車両VCの位置する路面の勾配を特定してもよい。
【0011】
画像ECU40は、車両VCの荷室LR内に備えられたカメラである荷室カメラ50が出力する画像データDlugを処理する。また、画像ECU40は、ヒューマンインターフェース52の出力信号を参照することもある。画像ECU40は、CPU42、ROM44、記憶装置46および周辺回路48を備えており、それらが通信線49を介して通信可能となっている。記憶装置46は、電気的に書き換え可能な不揮発性のメモリである。周辺回路48は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。
【0012】
画像ECU40は、荷室LR内の人の動きに応じて、荷台LFのうちの
図1に示す車両VCの後方DRに対する車両VCの前方DFの相対的な高さを調整するための指令値ΔHを生成してサスペンションECU10に出力する。以下、これについて詳述する。
【0013】
図3に、指令値ΔHに関する処理の手順を示す。
図3に示す処理は、ROM44に記憶された荷台制御プログラム44aおよび行動解析プログラム44bをCPU42がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0014】
図3に示す一連の処理において、CPU42は、まず画像データDlugを取得する(S10)。次に、CPU42は、
図2に示す、記憶装置46に記憶された写像データ46aによって規定される写像に画像データDlugを入力することによって、荷室内の人の行動を判定する(S12)。この写像は、「動画像認識のための3次元畳み込みRNNの提案(浅谷ら)」に記載されているように、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と、回帰結合型ニューラルネットワーク(RNN)とを結合したものである。詳しくは、CNNで用いられる畳み込み層のノードが時間軸方向にも結合した3次元畳み込み層、画像の位置変動に対応するためのプーリング層、時系列の情報に対して認識を行うRNN層が結合した構造である。そしてニューラルネットワークの出力層は、3つのノードを有し、それぞれの出力変数が、搬入時である旨、搬出時である旨、およびそれ以外である旨の確率を示す。これは、出力層の活性化関数をソフトマックス関数とすることで実現できる。
【0015】
写像は、以下のデータを訓練データとして学習された学習済みモデルである。
1.荷室LR内において人が荷物を搬入している画像データDlug、および搬入に関する出力変数の値を「1」、それ以外をゼロとするデータ
2.荷室LR内において人が荷物を搬出している画像データDlug、および搬出に関する出力変数の値を「1」、それ以外をゼロとするデータ
3.荷室LR内において、荷物の搬入および搬出がなされていないときの画像データDlug、および搬入および搬出以外を示す出力変数の値を「1」、それ以外をゼロとするデータ
次にCPU42は、S12の処理によって算出された出力変数の値のうち一番大きいものが搬入に関する出力変数の値であるか否かを判定する(S14)。CPU42は、搬入に関する出力変数の値であると判定する場合(S14:YES)、荷台LFのうち後方に対する前方の相対的な高さの指令値ΔHに、規定量ΔH0に「-1」を乗算した値を代入する(S16)。すなわち、
図1に示す荷台LFの後方DRの高さよりも前方DFの高さの方が、規定量ΔH0だけ低くなるように、指令値ΔHを設定する。
【0016】
一方、CPU42は、S12の処理によって算出された出力変数の値のうち一番大きいものが搬入に関する出力変数の値ではないと判定する場合(S14:NO)、搬出に関する出力変数の値であるか否かを判定する(S18)。CPU42は、搬出に関する出力変数の値であると判定する場合(S18:YES)、指令値ΔHに、規定量ΔH0を代入する(S20)。すなわち、
図1に示す荷台LFの後方DRの高さよりも前方DFの高さの方が、規定量ΔH0だけ高くなるように、指令値ΔHを設定する。
【0017】
CPU42は、S16の処理またはS20の処理を完了する場合、指令値ΔHをサスペンションECU10に出力する(S22)。なお、CPU42は、S22の処理を完了する場合や、S18の処理において否定判定する場合には、
図2に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、S12の処理は、CPU42が、行動解析プログラム44bに規定された指令を実行することによって実現される処理であり、S10,S14~S22の処理は、CPU42が、荷台制御プログラム44aに規定された指令を実行することによって実現される処理である。
【0018】
サスペンションECU10では、指令値ΔHを取り込むと、これに応じてサスペンション12~18を操作する。ここで、サスペンションECU10は、たとえば、まず、荷室LRの開口部である車両の後方側における荷台の高さを、開口部付近に位置するプラットホームの高さに合わせるために、荷台LFのうち車両VCの後方の高さを決定する。そして、サスペンションECU10は、車両VCの後方の高さが決まった段階で、指令値ΔHに応じて車両VCの前方の高さを決定する。
【0019】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
図4(a)に、車両VCの荷室LRにおける荷物LUの搬入時を例示する。CPU42は、荷室カメラ50が出力する画像データDlugに基づき、人の行動を解析する。そして、
図4(a)に示す状況の場合、CPU42は、行動解析の結果、荷物LUの搬入時であると判定して、指令値ΔHを「(-1)・ΔH0」とし、指令値ΔHをサスペンションECU10に出力する。サスペンションECU10では、荷台LFのうちの車両VCの後方の高さを、プラットホームPHの高さに合わせつつ、後方に対する前方の高さが規定量ΔH0だけ低くなるように、サスペンション12~18を操作する。これにより、荷台LF上の荷物LUに加わる重力に、車両VCの前方へと進む成分が生じる。そのため、人が荷物LUを荷室LRの奥へと運搬する際の負荷を軽減できる。
【0020】
図4(b)に、車両VCの荷室LRにおける荷物LUの搬出時を例示する。CPU42は、荷室カメラ50が出力する画像データDlugに基づき、人の行動を解析する。そして、
図4(b)に示す状況の場合、CPU42は、行動解析の結果、荷物LUの搬出時であると判定して、指令値ΔHを規定量ΔH0とし、指令値ΔHをサスペンションECU10に出力する。サスペンションECU10では、荷台LFのうちの車両VCの後方の高さを、プラットホームPHの高さに合わせつつ、後方に対する前方の高さが規定量ΔH0だけ高くなるように、サスペンション12~18を操作する。これにより、荷台LF上の荷物LUに加わる重力に、車両VCの後方へと進む成分が生じる。そのため、人が荷物LUを荷室LRの入り口側へと運搬する際の負荷を軽減できる。
【0021】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)人が荷物LUを搬入しているか否か、搬出しているか否かを、画像データDlugに基づく行動解析によって判定した。これにより、荷物LUの搬入時および搬出時において人に何らタスクを課すことなく、荷台LFの高さを調整することができる。
【0022】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態では、搬入時および搬出時における荷台LFの後方に対する前方の相対的な高さを、予め人が調整することを可能とする。
図5に、本実施形態にかかる規定量ΔH0の設定に関する処理の手順を示す。
図5に示す処理は、CPU42が、荷台制御プログラム44aを、たとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。
【0024】
図5に示す一連の処理において、CPU42は、まず、ヒューマンインターフェース52に対する入力操作によって、荷台LFの傾き要求量が入力されたか否かを判定する(S30)。ここで、荷台LFの傾き要求量は、荷台LFの傾きの大きさが、大、中、小の3つのうちのいずれかを指定するものとする。CPU42は、「大」が選択されたと判定する場合(S32:YES)、規定量ΔH0に、第1量ΔHLを代入する(S34)。
【0025】
一方、CPU42は、「大」が選択されていないと判定する場合(S32:NO)、「中」が選択されたか否かを判定する(S36)。CPU42は、「中」が選択されたと判定する場合(S36:YES)、規定量ΔH0に、第2量ΔHMを代入する(S38)。第2量ΔHMは、第1量ΔHLよりも小さい。
【0026】
また、CPU42は、「小」が選択されたと判定する場合(S36:NO)、規定量ΔH0に、第3量ΔHSを代入する(S40)。第3量ΔHSは、第2量ΔHMよりも小さい。
【0027】
なお、CPU42は、S34,S38,S40の処理が完了する場合や、S30の処理において否定判定する場合には、
図5に示す一連の処理を一旦終了する。
これにより、
図3のS22の処理によってサスペンションECU10に出力される指令値ΔHの絶対値が、ユーザによる要求に応じて調整される。
【0028】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0029】
本実施形態では、車両VCの位置する路面の勾配に応じて指令値ΔHを設定する。
図6に、指令値ΔHに関する処理の手順を示す。
図6に示す処理は、ROM44に記憶された荷台制御プログラム44aおよび行動解析プログラム44bをCPU42がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、
図6において、
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付与して、その説明を省略する。
【0030】
図6に示す一連の処理において、CPU42は、まず、駆動系ECU20に勾配情報をリクエストすることによって、駆動系ECU20から勾配情報を取得する(S50)。次に、CPU42は、勾配情報に基づき、勾配補正量δを算出する(S52)。勾配補正量δは、荷台LFを水平とする上で必要な指令値ΔHの値の絶対値である。次にCPU42は、勾配情報に基づき上り坂であるか否かを判定する(S54)。すなわち、後輪WRが接触する路面の高さよりも前輪WFが接触する路面の高さの方が高いか否かを判定する。そしてCPU42は、上り坂であると判定する場合(S54:YES)、指令値ΔHに、「(-1)・δ」を代入する(S56)。すなわち、指令値ΔHを、路面がフラットである場合に荷台LFの後方に対して前方が低くなる値に設定することによって、上り坂において荷台LFを水平とすることを可能とする。
【0031】
一方、CPU42は、上り坂ではないと判定する場合(S54:NO)、下り坂であるか否かを判定する(S58)。そして、CPU42は、下り坂であると判定する場合(S58:YES)、指令値ΔHに、「δ」を代入する(S60)。すなわち、指令値ΔHを、路面がフラットである場合に荷台LFの後方に対して前方が高くなる値に設定することによって、下り坂において荷台LFを水平とすることを可能とする。
【0032】
これに対しCPU42は、下り坂ではないと判定する場合(S58:NO)、指令値ΔHに「0」を代入する(S62)。
CPU42は、S56,S60,S62の処理を完了する場合、S10の処理に移行する。そして、CPU42は、S14の処理において肯定判定する場合、指令値ΔHを、規定量ΔH0だけ減少補正する(S16a)。また、CPU42は、S18の処理において肯定判定する場合、指令値ΔHを、規定量ΔH0だけ増加補正する(S20a)。
【0033】
なお、CPU42は、S16a,S20aの処理が完了する場合には、S22の処理に移行する。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
【0034】
図7に、車両VCが位置する路面RDが緩やかな上り坂である場合を示す。ここでは、説明の便宜上、勾配補正量δが規定量ΔH0と等しくなる上り坂を想定している。その場合、CPU42が搬出時に指令値ΔHをゼロとすることによって、荷台LFは路面RDと平行となる。そのため、荷台LFに載置された荷物に加わる重力が、車両VCの後方へと進む成分を有して且つ、その成分の大きさがほど良いものとなる。
【0035】
図8に、車両が位置する路面RDが急な上り坂である場合を示す。その場合、勾配補正量δが規定量ΔH0よりも大きくなり、搬出時であっても、指令値ΔHが負の値に算出される。そして、これにより、搬出時において、荷台LFを水平に対してわずかに後方が下がった配置とすることができる。そのため、荷台LFに載置された荷物に加わる重力が、車両VCの後方へと進む成分を有するものの、その成分が過度に大きくなることを抑制できる。
【0036】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0037】
本実施形態では、行動解析を車両VCの外部で実行する。
図9に、本実施形態にかかる荷台制御システムの構成を示す。なお、
図9において、
図2に示した部材に対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0038】
図9に示すように、画像ECU40のROM44には、荷台制御プログラム44aが記憶されているものの、行動解析プログラム44bについては記憶されていない。また、画像ECU40は、通信機45を備えており、ネットワーク60を介して車両VCの外部のデータ解析センター70と通信可能となっている。
【0039】
データ解析センター70は、複数の車両VC(1),VC(2),…と通信し、それら車両VC(1),VC(2),…から送信されたデータを受信する。データ解析センター70は、CPU72,ROM74、通信機75、記憶装置76、および周辺回路78を備えており、それらが通信線79によって通信可能とされている。ROM74には、行動解析プログラム44bが記憶されている。記憶装置76は、電気的に書き換え可能な不揮発性のメモリである。記憶装置76には、写像データ46aが記憶されている。
【0040】
図10に、
図9に示す荷台制御システムが実行する処理の手順を示す。詳しくは、
図10(a)に示す処理は、ROM44に記憶された荷台制御プログラムをCPU42がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。また、
図10(b)に示す処理は、ROM74に記憶された行動解析プログラム44bをCPU72がたとえば所定周期で繰り返し実行することによって実現される。なお、
図10において、
図3に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。以下では、処理が実行される時系列の順に
図10に示す一連の処理を説明する。
【0041】
図10(a)に示す一連の処理において、画像ECU40のCPU42は、S10の処理を完了する場合、通信機45を操作することによって、画像データDlugをデータ解析センター70に送信する(S70)。
【0042】
これに対し、
図10(b)に示すように、データ解析センター70のCPU72は、画像データDlugを受信する(S80)。そして、CPU72は、S12の処理を実行し、通信機75を操作することによって、S80の処理において受信したデータの送信元に、ニューラルネットワークの出力変数の値に関するデータを送信する(S82)。なお、CPU72は、S82の処理を完了する場合、
図10(b)に示す一連の処理を一旦終了する。
【0043】
一方、
図10(a)に示すように、画像ECU40のCPU42は、送信されたデータを受信し(S72)、S14~S22の処理を実行する。なお、CPU42は、S22の処理を完了する場合や、S18の処理において否定判定する場合には、
図10(a)に示す一連の処理を一旦終了する。
【0044】
このように、本実施形態では、行動解析を車両VCの外部のデータ解析センター70が実行することから、車載装置が行動解析を実行する場合と比較して、車載装置の演算負荷を軽減できる。また、データ解析センター70では、複数の車両VC(1),VC(2),…から画像データDlugが送信されない場合と比較して、取得する情報量を増やすことができる。
【0045】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
「荷台の傾きの指令値について」
・
図6には、勾配補正量δに基づき指令値ΔHを設定する例を示したが、これに限らない。たとえば、勾配補正量δについては、サスペンションECU10が算出し、サスペンションECU10では、荷台LFを水平に制御する機能を有してもよい。その場合、画像ECU40が
図2の処理を実行することによって、サスペンションECU10は、荷台LFを水平にする制御に、荷台LFの後方に対する前方の相対的な高さを指令値ΔHとする制御を重畳させることができる。そしてこれにより、
図6の処理を実行したのと同等の制御が実現できる。
【0047】
・上記実施形態では、画像ECU40が、荷台LFの後方DRに対する前方DFの相対変位量の指令値ΔHを、荷台LFの傾きの指令値としてサスペンションECU10に出力する例を示したが、これに限らない。たとえば、荷台LFの前方の高さの基準値に対する変位量と、後方の高さの基準値に対する変位量との組を、荷台LFの傾きの指令値としてサスペンションECU10に出力してもよい。その場合、画像ECU40がプラットホームPHの高さに応じて後方の変位量を算出することが望ましい。
【0048】
・上記実施形態では、指令値ΔHを、荷台LFの後方に対する前方の相対的な高さの指令値としたが、これに限らず、サスペンション16,18によって調整される高さに対するサスペンション12,14によって調整される相対的な高さの指令値としてもよい。
【0049】
「勾配補正量δについて」
・
図6には、勾配補正量δが車両の前後方向における勾配の傾きを補償する1次元の量であることを例示したが、これに限らない。たとえば、前後方向の補正量と左右方向の補正量との2次元の量であってもよい。
【0050】
「出力処理について」
・上記実施形態では、指令値に関する信号としての相対変位量の指令値ΔHを、サスペンションECU10に出力したがこれに限らない。たとえば、下記「荷台制御装置について」の欄に記載したように、サスペンションECU10によって荷台制御装置を構成する場合、指令値に関する信号を、各サスペンション12~18に出力する操作信号としてもよい。
【0051】
「学習済みモデルについて」
・上記実施形態では、学習済みモデルの出力を、搬入時である旨、搬出時である旨、およびそれ以外である旨を示す、ラベル変数としたが、これに限らない。たとえば搬入時の荷物の大きさに応じて、大きい荷物の搬入時と、小さい荷物の搬入時とを識別する変数を出力してもよい。これによれば、荷物の大きさに応じて相対変位量の指令値ΔHの大きさを変更することも可能となる。
【0052】
・上記実施形態では、搬入時、搬出時の判定を行う学習済みモデルとして、3次元CNNと、RNNとを結合したニューラルネットワークを例示したが、これに限らない。たとえば、互いに結合してない、3次元CNNと、RNNとの双方のモデルであってもよい。これは、たとえば、3次元CNNによって画像から時空間の特徴ベクトルを抽出し、その特徴ベクトルをRNNの入力とすることによって実現できる。もっとも、RNNとCNNとの双方の要素を併せ持つモデルにも限らない。たとえば、RNNのうち、特にLSTM(Long short-term memory)を用いてもよい。
【0053】
・学習済みモデルとしては、ニューラルネットワークにも限らない。たとえば、動画の画像データから抽出した特徴量を入力とする、サポートベクトルマシン等によって構成された識別モデルであってもよい。具体的には、たとえば、搬入時であるか否かに応じて互いに逆符号の数値を出力する識別モデルおよび搬出時であるか否かに応じて互いに逆符号の数値を出力する識別モデルの2つの識別モデルを用いてもよい。
【0054】
「荷台の傾き要求量について」
・
図4においては、ユーザが指令値ΔHの大きさを、3値のうちのいずれかに指定することができる例を示したが、これに限らない。たとえば、2値のいずれかに指定するものであってもよく、またたとえば、4値以上の何れかに指定するものであってもよい。
【0055】
「搬入時、搬出時の判定処理について」
・搬入時、搬出時の判定処理としては、人の実際の搬入時の動作と搬出時の動作とそれ以外の動作とを識別する学習済みモデルを用いた処理に限らない。たとえば、予め定められたジェスチャによって、搬入時または搬出時であるか否かを判定する処理であってもよい。
【0056】
「搬入時、搬出時の進行方向について」
・上記実施形態では、搬入時の人および荷物の進行方向を、後方DRとし、搬出時の人および荷物の進行方向を前方DFとする例を示したが、これに限らない。たとえば、車両VCの荷室LRの出入り口を、車両VCの右方向に設けることができるのであれば、搬入時の人および荷物の進行方向を左方向とし、搬出時の人および荷物の進行方向を右方向としてもよい。
【0057】
「荷台制御装置について」
・上記実施形態では、画像ECU40とサスペンションECU10とを各別の筐体を有する装置としたが、これに限らない。たとえば、サスペンションECU10が、上記実施形態にかかる画像ECU40が実行した処理を全て実行することとしてもよい。すなわち、荷台制御装置をサスペンションECU10によって構成してもよい。
【0058】
・荷台制御装置としては、CPUとプログラムを格納するプログラム格納装置とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、荷台制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0059】
「コンピュータについて」
・
図10に例示した処理では、データ解析センター70のCPU72は、搬入、搬出、およびそれ以外のいずれであるかを識別しその結果を画像ECU40に出力したが、これに限らない。たとえば、CPU72が、S14~S22の処理をさらに実行し、データ解析センター70が指令値ΔHをサスペンションECU10に送信してもよい。
【0060】
・荷台の制御を行うコンピュータとしては、
図1に例示したCPU42や、
図8に例示したCPU42,72に限らない。たとえば、
図10(b)に例示した処理を、データ解析センター70におけるCPU72に代えて、ユーザの携帯端末が実行することとしてもよい。
【0061】
「荷台制御用プログラムについて」
・
図2には、荷台制御プログラム44aと行動解析プログラム44bとを別のプログラムとしたが、単一のプログラムとしてもよい。
【0062】
「調整装置について」
・上記実施形態では、前後および左右の車高を調整するサスペンション12~18によって、荷台の傾きを調整する調整装置を構成したが、これに限らない。たとえば、前後については車高を調整できるものの、左右については車高を調整できないサスペンションであってもよい。
【0063】
「撮像装置について」
・上記実施形態では、荷室LR内の画像を撮影する撮像装置として、単一の荷室カメラ50を例示したが、これに限らない。たとえば、荷室LR内の画像を撮影する複数のカメラを備えてもよい。またたとえば、
図11に示すように、運転席DSに着座している運転者の状態を撮影する撮像装置と荷室LRの画像を撮影する撮像装置とを兼用してもよい。なお、
図11には、運転席DSが存在する車室CRと荷室LRとの間に仕切りがない車両VCを例示したが、車室CRと荷室LRとの間に透明な仕切りが設けられていてもよい。要は、運転席DSに着座している運転者の状態を監視する撮像装置が荷室LR内の画像を撮影可能な構成であれば、運転者の状態を撮影する撮像装置と荷室LRの画像を撮影する撮像装置とを兼用できる。
【符号の説明】
【0064】
VC…車両
LR…荷室
LF…荷台