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  • 特開-プロペラシャフト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095218
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】プロペラシャフト
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/06 20060101AFI20220621BHJP
   F16D 3/40 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16D3/06 P
F16D3/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208410
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴明
(57)【要約】
【課題】プロペラシャフトが備える蓋体を外れにくくする。
【解決手段】プロペラシャフト1は、互いにスプライン嵌合する雄型スプライン軸部2及び雌型スプライン軸部3を有し、雄型スプライン軸部2の一側の軸端部21が雌型スプライン軸部3内のスプライン空間3sに配置された伸縮自在のプロペラシャフトであって、スプライン空間3sの一側の開口31hを囲む開口端縁31eに嵌合し、スプライン空間3sと連通する拡張空間5sを内部に有する筒状の枠体5と、枠体5の一側の縁部51に接合され、スプライン空間3sを一側から塞ぐ蓋体4と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにスプライン嵌合する雄型スプライン軸部及び雌型スプライン軸部を有し、前記雄型スプライン軸部の一側の軸端部が前記雌型スプライン軸部内のスプライン空間に配置された伸縮自在のプロペラシャフトであって、
前記スプライン空間の前記一側の開口を囲む開口端縁に嵌合し、前記スプライン空間と連通する拡張空間を内部に有する筒状の枠体と、
前記枠体の前記一側の縁部に接合され、前記スプライン空間を前記一側から塞ぐ蓋体と、を備える
ことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項2】
前記雌型スプライン軸部の前記一側の軸端部には、自在継手の一部であって、互いに対向するとともに十字状のスパイダで連結される一対のアーム部を有するヨークが設けられ、
前記蓋体は、前記枠体の前記縁部に接合されるウェブ部、及び、前記ウェブ部から屈曲されて一対の前記アーム部の内側面に沿ってそれぞれ配置されるとともに先端部が前記スパイダに当接するように形成された一対のフランジ部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のプロペラシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、互いにスプライン嵌合する雄型スプライン軸部及び雌型スプライン軸部を有する伸縮自在のプロペラシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄型スプライン軸部がスライド可能な内部空間を有する雌型スプライン軸部の一側の開口を蓋体で塞いだプロペラシャフトが知られている。このような蓋体が設けられることで、外部からのダストの浸入を防止することができるとともに、雌型スプライン軸部の内部空間に給脂された潤滑用のグリースの漏洩を防止することができる。例えば、特許文献1には、雌型スプライン軸部の開口に挿入嵌合された湾曲板状の奥端部(蓋体)を備えるプロペラシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2521695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のプロペラシャフトでは、蓋体が雌型スプライン軸部の開口に直接取り付けられているため、雄形スプライン軸部がスライドして雌型スプライン軸部の開口まで達すると、開口を塞いでいる蓋体に当接してしまう。これにより、蓋体が押されて外れるおそれがある。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、プロペラシャフトが備える蓋体を外れにくくすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示するプロペラシャフトは、互いにスプライン嵌合する雄型スプライン軸部及び雌型スプライン軸部を有し、前記雄型スプライン軸部の一側の軸端部が前記雌型スプライン軸部内のスプライン空間に配置された伸縮自在のプロペラシャフトであって、前記スプライン空間の前記一側の開口を囲む開口端縁に嵌合し、前記スプライン空間と連通する拡張空間を内部に有する筒状の枠体と、前記枠体の前記一側の縁部に接合され、前記スプライン空間を前記一側から塞ぐ蓋体と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このように、スプライン空間が枠体の有する拡張空間と連通して拡張されるとともに、蓋体が枠体の一側の縁部に接合されることで、雄型スプライン軸部の軸線方向に移動できる量(ストローク量)を増加させることができる。したがって、プロペラシャフトが縮んだ時に、雄型スプライン軸部の一側の軸端部が蓋体に当接しにくくなるため、プロペラシャフトが備える蓋体を外れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
開示のプロペラシャフトによれば、プロペラシャフトが備える蓋体を外れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るプロペラシャフトの側面図であって、実施形態に係るプロペラシャフトの雌型スプライン軸部に連結する自在継手のヨークとスパイダとを併せて示す模式図である。
図2図1のX-X矢視断面図であって、雌型スプライン軸部及び雄型スプライン軸部のそれぞれに連結する自在継手のヨークを併せて示す模式図である。
図3図1のY部の縦断面図であって、雌型スプライン軸部に連結する自在継手のヨークを併せて示す模式図である。
図4】変形例に係るプロペラシャフトの一部(図1のY部に相当する部分)の縦断面図であって、雌型スプライン軸部に連結する自在継手のヨークを併せて示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0011】
[1.構成]
本実施形態に係るプロペラシャフト1を図1に示す。プロペラシャフト1は、互いにスプライン嵌合する雄型スプライン軸部2及び雌型スプライン軸部3を有し、雄型スプライン軸部2の一側の雄軸端部21(軸端部)が雌型スプライン軸部3内のスプライン空間3sに配置された伸縮自在のプロペラシャフトである。プロペラシャフト1は、例えば、トラックなどの車両の動力伝達部材として適用される。
【0012】
以下、雄型スプライン軸部2及び雌型スプライン軸部3の軸線方向のうち、雄型スプライン2が雌型スプライン3に挿入される方向を「一側」とよび、その反対を「他側」とよぶ。また、軸線方向に対して直交する方向を「径方向」とよび、雄型スプライン軸部2及び雌型スプライン軸部3の軸芯に接近する側を「径方向内側」とよび、その反対側を「径方向外側」とよぶ。
【0013】
雄型スプライン軸部2は、図2に示すように、中実の軸部材であって、雄軸端部21側の外周面23に軸線方向に延在する雄型スプライン23pを有する。
【0014】
雌型スプライン軸部3は、一側及び他側の双方が開放した中空の軸部材であって、内部にスプライン空間3sを有する。スプライン空間3sを形成する内周面33には、雌型スプライン33pが形成される。スプライン空間3s内において、雌型スプライン33pと雄型スプライン軸部2の雄型スプライン23pとは、軸線方向に摺動可能に嵌合する。また、雌型スプライン軸部3には、雌型スプライン33pと雄型スプライン23pとのスプライン嵌合部に潤滑グリースを給脂する給脂孔35が形成される。
【0015】
雌型スプライン軸部3の一側の雌軸端部31(軸端部)には、スプライン空間3sの一側の開口31hが設けられる。同様に、雌型スプライン軸部3の他側の軸端部にも、スプライン空間3sの他側の開口が設けられる。図3に示すように、雌軸端部31の開口31h周辺では、スプライン空間3sを形成する内周面33が径方向外側に切り欠かれて、内周面33よりも径方向外側で開口31hを囲む開口端縁31eが形成される。開口端縁31eには、後述する枠体5が嵌る。なお、本実施形態において、開口端縁31eの他側の一部には、後述する枠体5を嵌りやすく且つ抜けにくくするための溝が設けられている。
【0016】
雌型スプライン軸部3の雌軸端部31には、自在継手(ユニバーサルジョイント)の一部であるヨーク11が連結される。本実施形態において、ヨーク11は、雌型スプライン軸部3に一体に形成される。ヨーク11は、互いに対向する一対のアーム部11aを有する。一対のアーム部11aのそれぞれは、径方向内側を向く内側面11aiと径方向外側を向く外側面11aoとを備える。また、アーム部11aには、それぞれ支持孔11ahが形成されている。一対のアーム部11aは、図1に示すように、支持孔11hに自在継手の一部である十字状のスパイダ12が挿通されて、連結される。本実施形態において、スパイダ12は、ベアリング部13を介してヨーク11に取り付けられる。なお、本実施形態では、雄型スプライン軸部2の他側の軸端部にも、雌型スプライン軸部3の端部31に連結される自在継手とは別の自在継手の一部であるヨークが連結されている。
【0017】
上記のように構成されたプロペラシャフト1には、スプライン空間3s内に充填された潤滑グリースの漏洩及びスプライン空間3s内へのダストの侵入を防止するための構造が設けられる。具体的には、プロペラシャフト1には、スプライン空間3sを一側から塞ぐ蓋体4、及び、雌型スプライン軸部3と枠体4との間に位置して、スプライン空間3sを拡張する枠体5が設けられる。
【0018】
蓋体4は、枠体5の後述する第一縁部51に接合される平面を有する板状の部材である。本実施形態では、一側に開口する断面コ字形状の枠体4を例示する。すなわち、蓋体4は、図3に示すように、枠体5の後述する第一縁部51に接合してスプライン空間3sを塞ぐ平面のウェブ部41と、ウェブ部41から屈曲されて一側に延出する一対のフランジ部42とを有する。
【0019】
ウェブ部41は、軸線方向視で枠体5を覆うことができる大きさ略矩形状であり、アーム部11aの内側面11aiの延在方向に平行に延びる一対のフランジ側端縁41eを有する。ウェブ部41の中央には、雄型スプライン軸部2が摺動することによりスプライン空間3s内に生じた内圧を逃がすための空気孔41hが設けられる。
【0020】
一対のフランジ部42は、ウェブ部41のフランジ側端縁41eから屈曲されたあと、ヨーク11のアーム部11aの内側面11aiに沿って一側に向かって延出して、フランジ部42の一側の先端部42eがスパイダ12に当接するように形成される。上述のように、本実施形態では、スパイダ12がベアリング部13を介してヨーク11に取り付けられることに対応して、フランジ部42の先端部42eは、ベアリング部13の外周面に当接する。詳述すると、フランジ部42の先端部42eは、図2に示すように、ヨーク11の支持孔11hが設けられた領域まで一側に延出するとともに、一部がベアリング部13の外周面に当接可能にヨーク11の支持孔11hの形状に合わせて円弧状に切り欠かれている。
【0021】
枠体5は、一側及び他側の双方が開放した環状の筒状部材である。枠体5は、図3に示すように、一側の開口を形成する第一縁部51(縁部)と他側の開口を形成する第二縁部52とを有する。枠体5は、内部に拡張空間5sを有し、第二縁部52が雌型スプライン軸部3の開口31hを囲む開口端縁31eに嵌合することで、拡張空間5sとスプライン空間3sとが連通する。また、枠体5の第一縁部51には、蓋体4のウェブ部41が、例えば溶接や接着剤などによって接合される。これにより、スプライン空間3s及び拡張空間5sが閉塞される。
【0022】
枠体5の外径は、開口31hを囲む開口端縁31eに嵌合可能な大きさに設定されるとともに、枠体5の内径は、雄型スプライン軸部2が挿入可能な大きさに設定される。また、枠体5の軸線方向の長さは、開口端縁31eの軸線方向の長さよりも長く設定される。これにより、枠体5が組みつけられた際に、第一縁部51に接合する蓋体4が雌型スプライン軸部3の雌軸端部31よりも一側に位置する。また、枠体5の有する拡張空間5sには雄型スプライン軸部2が侵入可能となる。
【0023】
[2.作用,効果]
(1)プロペラシャフト1によれば、スプライン空間3sの一側の開口31hを囲む開口端縁31eに嵌合してスプライン空間3sと連通する拡張空間5sを有する枠体5が設けられる。さらに、この枠体5の第一縁部51に蓋体4が接合される。これにより、スプライン空間3sが枠体5の拡張空間5sにより拡張されるため、雄型スプライン軸部2が軸線方向に移動できる量(ストローク量)を増加させることができる。したがって、プロペラシャフト1が縮んだ時(雄型スプライン軸部2が一側に移動した時)に雄型スプライン軸部2の雄軸端部21が蓋体4に当接しにくくなるため、プロペラシャフト1が備える蓋体4を外れにくくすることができる。
【0024】
さらに、プロペラシャフト1によれば、枠体5を開口端縁31eに嵌め込むことで、枠体5と、枠体5に接合する蓋体4とをプロペラシャフト1に組み付けることができる。このため、蓋体4を開口端縁31eに圧入して、かしめる作業が不要となるので、組付性を向上させることができる。
【0025】
(2)さらに、プロペラシャフト1によれば、蓋体4の一対のフランジ部42を、自在継手の一部である十字状のスパイダ12に当接させるように配置している。これにより、蓋体4及び蓋体4と接合する枠体5の軸線方向への移動を規制することができるため、蓋体4及び枠体5をプロペラシャフト1からより外れにくくすることができる。
【0026】
[3.変形例]
上述のプロペラシャフト1の構成は一例である。プロペラシャフトの有する蓋体は、枠体の一側の縁部に接合されてスプライン空間を塞ぐものであればよく、上述のものに限らない。例えば、プロペラシャフト1′の備える蓋体4′は、図4に示すような、一側に延出するフランジ部を備えず、軸線方向視で枠体5の外形と同じ形状を有する円形の板状部材として構成されてもよい。蓋体4′をこのように構成することによって、プロペラシャフト1′の軽量化を図ることができるとともに、上述の蓋体4と比較して構造が単純化されるため製造コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0027】
1,1′ プロペラシャフト
2 雄型スプライン軸部
3 雌型スプライン軸部
3s スプライン空間
4,4′ 蓋体
5 枠体
5s 拡張空間
11 ヨーク
11a アーム部
11ai 内側面
12 スパイダ
21 雄軸端部(軸端部)
31 雌軸端部(軸端部)
31e 開口端縁
31h 開口
41 ウェブ部
42 フランジ部
42e 先端部
51 第一縁部(縁部)
図1
図2
図3
図4