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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095226
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20220621BHJP
   F16K 1/38 20060101ALI20220621BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20220621BHJP
   F16K 41/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F16K1/38 C
F16K31/04 Z
F16K41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208420
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 悠希
(72)【発明者】
【氏名】西田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 広之
【テーマコード(参考)】
3H052
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA35
3H052CA17
3H052CC03
3H052CC07
3H052CD03
3H052DA02
3H052EA01
3H052EA16
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB26
3H062CC01
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
3H062FF39
3H062HH03
3H062HH10
3H066AA01
3H066BA38
3H066DA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能な流量制御弁を提供すること。
【解決手段】薬液の流量制御を行うニードル弁において、ロッド60が間隙を持って挿通され、ロッド60の移動をガイドするガイド部121を備えること、ロッド60は、ガイド部121に挿通されている部分の外周面に、Oリング77を備え、ガイド部121に対して、摺動可能に保持されていること、ロッド60は、少なくとも間隙により、Oリング77を支点に、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度を備えること、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節され、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合に、自由度により、ロッド60が傾斜することで、片当たりによりニードル弁体41に負荷される接触圧が緩和されること、を特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置と、前記駆動装置の動作によって移動が行われるロッドと、前記ロッドに接続され、前記ロッドの移動により環状弁座に対して進退するニードル弁体と、を備え、前記ニードル弁体の前記環状弁座に対する開度の調節を行うことで、制御流体の流量制御を行う流量制御弁において、
前記ロッドが間隙を持って挿通され、前記ロッドの移動をガイドするガイド部を備えること、
前記ロッドは、前記ガイド部に挿通されている部分の外周面に、環状の弾性体を備え、前記ガイド部に対して、摺動可能に保持されていること、
前記ロッドは、少なくとも前記間隙により、前記弾性体を支点に、前記環状弁座の中心軸線に対して傾斜可能な自由度を備えること、
前記制御流体を所定の微少流量に制御するために前記開度が微小な開度に調節され、前記ニードル弁体が前記環状弁座に対して片当たりした場合に、前記自由度により、前記ロッドが傾斜することで、前記片当たりにより前記ニードル弁体に負荷される接触圧が緩和されること、
を特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁において、
前記ニードル弁体が前記環状弁座に対して片当たりした場合の、前記自由度による前記ロッドの傾斜は、2度以上6度以下の範囲内であること、
を特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流量制御弁において、
前記駆動装置は、駆動軸を有するモータであること、
前記駆動軸には、前記駆動軸の回転動作を直動動作に変換する送りねじ部材が接続されており、
前記ロッドは、送りねじ部材に遊びを持って螺着されていること、
前記自由度は、前記間隙と前記遊びとにより確保されること、
を特徴とする流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
駆動装置と、前記駆動装置の動作によって移動が行われるロッドと、ロッドに接続され、ロッドの移動により環状弁座に対して進退するニードル弁体と、を備え、ニードル弁体の環状弁座に対する開度の調節を行うことで、制御流体の流量制御を行う流量制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程中のウエハ洗浄には、薬液(例えば、塩酸、アンモニア、フッ酸等)を希釈した洗浄液が用いられる。薬液の濃度管理のため、薬液の流量制御が行われており、この流量制御を行う流量制御弁として、例えば特許文献1に開示されるニードル弁が知られている。
【0003】
このニードル弁は、駆動装置(特許文献1に開示されるモータ110)と、駆動装置の動作によって直動するロッド(特許文献1に開示されるロッド60)と、ロッドの先端に接続されたニードル弁体(特許文献1に開示される弁体41)と、を備えている。また、ロッドは、ガイド部(特許文献1に開示される第1収容部31)に挿通されており、該ガイド部によりロッドの直動がガイドされる。そして、ロッドの直動により、ニードル弁体が環状弁座(特許文献1に開示される弁座部24)に対して進退する。
【0004】
このようなニードル弁は、ニードル弁体の環状弁座に対する開度の調節を行うことで、制御流体の流量制御を行う。例えば、薬液を所定の微少流量(例えば、1~10ml/min)に制御する場合には、ニードル弁体の環状弁座に対する開度が、ニードル弁体と環状弁座との隙間が数十μm以下という微小な開度に調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5150009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなニードル弁は、ニードル弁体の中心軸線と環状弁座の中心軸線とが同心同軸上にあることが理想的であり、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節された場合には、ニードル弁体の全周において、環状弁座との間に均一な隙間が形成されていることが望ましい。しかし、実際には、製造公差等により、ニードル弁体の中心軸線と環状弁座の中心軸線との間に、環状弁座の径方向に微小な位置ずれが生じる。そうすると、微小な開度に調節された場合に、ニードル弁体の全周において環状弁座との間に均一な隙間が形成されず、ニードル弁体の一部が環状弁座と接触(すなわち片当たり)するおそれがある。ニードル弁は、流量制御を行っている間、微小な開度の調節を繰り返しているため、ニードル弁体に片当たりが発生すると、片当たりしている箇所が環状弁座と摩擦し、片当たりしている箇所で摩耗が発生するおそれがある。
【0007】
特に、従来のニードル弁は、上記のような摩耗が発生しやすかった。これは、ロッドの直進性の確保や、流体圧によるニードル弁体の軸心のぶれ防止を目的として、ロッドとガイド部との間の間隙が可能な限り小さく設定されているためである。ロッドとガイド部との間の間隙を可能な限り小さくすると、ロッドおよびニードル弁体を動作させようとするモータの推力(約50N以上)が、逃げることが出来ず、片当たりした箇所に負荷される。そうすると、ニードル弁体に対する環状弁座による接触圧が過剰となり、上記した摩耗が発生しやすくなるのである。
【0008】
上記のようにニードル弁体に摩耗が発生すると、その摩耗粉がパーティクルとして薬液に混入するおそれがある。パーティクルが薬液に混入すると、ウエハの洗浄液へのパーティクルの混入につながる。
【0009】
また、上記摩耗の大きさは、ニードル弁体の中心軸線と環状弁座の中心軸線との間の位置ずれ量によっては、大きくなり、ニードル弁体の形状の変形が大きくなるおそれがある。そうすると、ニードル弁が同一の開度に調節されていても、ニードル弁体に摩耗が生じる前と後では薬液の流量が変化してしまい、ウエハの洗浄液における薬液の濃度が変動するおそれがある。
【0010】
洗浄液のパーティクルの混入や薬液濃度の変動は、ウエハの製造不良を招き、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能な流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の流量制御弁は、次のような構成を有している。
(1)駆動装置と、駆動装置の動作によって移動が行われるロッドと、ロッドに接続され、ロッドの移動により環状弁座に対して進退するニードル弁体と、を備え、ニードル弁体の環状弁座に対する開度の調節を行うことで、制御流体の流量制御を行う流量制御弁において、ロッドが間隙を持って挿通され、ロッドの移動をガイドするガイド部を備えること、ロッドは、ガイド部に挿通されている部分の外周面に、環状の弾性体を備え、ガイド部に対して、摺動可能に保持されていること、ロッドは、少なくとも間隙により、弾性体を支点に、環状弁座の中心軸線に対して傾斜可能な自由度を備えること、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節され、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合に、自由度により、ロッドが傾斜することで、片当たりによりニードル弁体に負荷される接触圧が緩和されること、を特徴とする。
【0013】
(1)に記載の流量制御弁によれば、ロッドは、ガイド部に間隙を持って挿通されており、少なくとも当該間隙により、環状弁座の中心軸線に対して傾斜可能な自由度を備えている。この自由度により、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節され、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合でも、ロッドが傾斜することができる。ロッドが傾斜することができれば、片当たりが発生したとしても、ロッドおよびニードル弁体を動作させようとする駆動装置の推力を逃がすことが可能となり、片当たりによって環状弁座からニードル弁体に負荷される接触圧が緩和される。よって、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。
【0014】
摩耗の発生を抑えることができれば、摩耗粉の発生を抑えることができ、例えば薬液等の制御流体にパーティクルが混入することを防ぐことができる。 さらに、従来は、摩耗によるニードル弁体の変形が大きくなると、ニードル弁体が同一の開度に調整されていても、ニードル弁体に摩耗が生じる前と後で薬液の流量が変化し、薬液の濃度が変動してしまうおそれがあったが、摩耗の発生を抑えることができれば、このおそれも低減される。薬液へのパーティクルの混入防止や薬液濃度の変動のおそれの低減は、ウエハの製造不良の発生を防止することが出来る。
【0015】
なお、ロッドが傾斜することができるということは、流体圧によりニードル弁体の軸心がぶれてしまい、流量制御に悪影響があると考えられるが、出願人は実験により、(1)に記載の流量制御弁は、従来の流量制御弁と同等の精度で流体制御を行うことができることを確認した。
【0016】
(2)(1)に記載の流量制御弁において、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合の、自由度によるロッドの傾斜は、2度以上6度以下の範囲内であること、を特徴とする。
【0017】
(2)に記載の流量制御弁によれば、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。例えば、ニードル弁体が環状弁座に片当たりした場合のロッドの傾斜が2度より小さい角度(例えば1度)であると、駆動装置の推力を逃がしきれず、片当たりによって環状弁座24からニードル弁体に負荷される接触圧により、ニードル弁体に摩耗が発生するおそれがある。また、6度よりも大きい角度で傾斜をすると、流体圧(90kPa)によるニードル弁体のぶれが過剰となり、振動や異音が発生する原因となるおそれがある。よって、自由度によるロッドの傾斜は、2度以上6度以下の範囲内であることが望ましい。
【0018】
(3)(1)または(2)に記載の流量制御弁において、駆動装置は、駆動軸を有するモータであること、駆動軸には、駆動軸の回転動作を直動動作に変換する送りねじ部材が接続されており、ロッドは、送りねじ部材に遊びを持って螺着されていること、自由度は、間隙と遊びとにより確保されること、を特徴とする。
【0019】
(3)に記載の流量制御弁によれば、ロッドは、送りねじ部材が駆動軸の回転動作を直動動作に変換することにより、移動可能となっている。そして、ロッドは、送りねじ部材に遊びを持って螺着されている。つまり、当該遊びにより、ロッドは送りねじ部材に対して、自由度を持って結合されている。したがって、ロッドが環状弁座の中心軸線に対して傾斜可能な自由度は、ロッドとガイド部の間隙による自由度と、上記の遊びによる自由度とにより確保されることになる。ロッドが環状弁座の中心軸線に対して傾斜可能な自由度が確保されることで、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流量制御弁によれば、ニードル弁体が環状弁座に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る流量制御弁(ニードル弁)の断面図である。
図2図1の部分Aの部分拡大図であり、ニードル弁体の中心軸線と環状弁座の中心軸線との間に、環状弁座の径方向の位置ずれが生じ、ニードル弁体が環状弁座に片当たりしている状態を示す図である
図3】本実施形態に係るニードル弁と従来品のパーティクル数について、5000サイクル目以降の平均値を表したグラフである。
図4】本実施形態に係るニードル弁と従来品において、モータのステップ数(ニードル弁体の開度)と、Cv値の関係を比較したグラフである。
図5図4のステップ数380からステップ数400までを拡大したグラフである。
図6】(a)は、ニードル弁体の摩耗の発生具合を評価するための試験回路を表す図である。(b)は、評価対象のニードル弁の動作シーケンスを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る流量制御弁の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る流量制御弁(ニードル弁)の断面図である。図2は、図1の部分Aの部分拡大図であり、ニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2との間に、環状弁座24の径方向の位置ずれが生じ、ニードル弁体41が環状弁座24に片当たりしている状態を示す図である。
【0023】
本実施形態に係る流量制御弁は、例えば、半導体製造工程において洗浄液に用いられる薬液(制御流体の一例)の流量を調整するニードル弁1である。 薬液は、例えば、塩酸、アンモニア、フッ酸等であり、その流量は、ニードル弁1において所定の微少流量(例えば、1~10ml/min)に制御される。そして、微少流量に制御された薬液は、希釈され、ウエハの洗浄液として用いられる。
【0024】
ニードル弁1は、バルブボディ20と、駆動部30と、から構成されている。バルブボディ20は、射出成型または削り出し加工により形成され、その材質は、耐薬品性に優れたフッ素樹脂(例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエアーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE))である。
【0025】
バルブボディ20は、薬液が流入する入力ポート25と、薬液が流出する出力ポート26と、を備えている。また、バルブボディ20は、その内部に、入力ポート25に接続された入力側流路21と、出力ポート26に接続された出力側流路23と、入力側流路21と出力側流路23とを接続する弁室22と、を備えている。弁室22は、バルブボディ20の駆動部30側の端面(図1中の上端面)に開口した円柱状の空間として形成されており、入力ポート25から入力される所定圧力の薬液が流入される。また、バルブボディ20は、入力側流路21と弁室22 との接続部に、環状弁座24を備えている。
【0026】
バルブボディ20において弁室22が開口する上端面には、駆動部30が固定されている。駆動部30は、第1シリンダ部材120と、第2シリンダ部材50と、モータ110(駆動装置の一例)と、が積み重なるようにしてなり、内部には、送りねじ部材80と、ロッド60と、を有する。
【0027】
第1シリンダ部材120は、射出成型または削り出し加工により円柱状に形成されており、その材質は、例えば、PP、PPS、PEEK、PVDF等の樹脂である。第1シリンダ部材120の第2シリンダ部材50側の端面(図1中の上端面)には、円柱状の空間である第1収容部124が穿設されている。さらに、第1シリンダ部材120は、第1収容部124とバルブボディ20側の端面とを貫通する、円柱状のガイド部121が形成されている。このガイド部121は、ガイド部121の中心軸線が、弁室22の中心軸線と略一致するように形成されている。
【0028】
第1シリンダ部材120の上端面には第2シリンダ部材50が結合されている。第2シリンダ部材50は、射出成型または削り出し加工により形成され、その材質は、例えば、PP、PPS、PEEK、PVDF等の樹脂である。第2シリンダ部材50は、モータ110側の端面(図1中の上端面)から第1シリンダ部材120側の端面(図1中の下端面)までを貫通する、円柱状の空間である第2収容部55を有する。この第2収容部55は、第1シリンダ部材120の第1収容部124と互いに連通しており、これらの中心軸線はガイド部121の中心軸線と略一致している。また、第2収容部55の、第1シリンダ部材120側の端部(下端部)は、内周面が内側に張り出すことにより、円環状の張出部51が設けられている。この張出部51が第1収容部124と第2収容部55との境界をなしている。
【0029】
第2シリンダ部材50の上端面には、モータ110(例えば、ステッピングモータ)が固定されている。モータ110 は、駆動軸111を備えている。駆動軸111は、第2シリンダ部材50の第2収容部55内に挿入されており、その先端には、例えばステンレスにより直方体状に形成された係合部材90が結合されている。なお、係合部材90の図1中の左右方向の両端面は、互いに平行な面となっている。
【0030】
また、モータ110は、駆動回路112を備えている。駆動回路112 は信号線132により、ニードル弁1が備える制御回路(不図示)と接続されており、制御回路から出力される駆動軸111の回転量(ステップ数)が、信号線132を介して駆動回路112に入力される。そして、駆動回路112は入力されるステップ数に基づき、駆動軸111の回転量を制御する。なお、ステップ数は、制御回路が、外部の制御装置(不図示)から制御回路に入力される指令に基づいて設定するものである。
【0031】
モータ110の下方、第2シリンダ部材50の第2収容部55には、送りねじ部材80が収容されている。送りねじ部材80の材質は、例えばステンレスが用いられる。
【0032】
送りねじ部材80の、モータ110側の端面(図中上端面)には、溝部83が穿設されている。この溝部83の図中左右方向の両端の内面は、互いに平行な面となっている。溝部83の幅は、モータ110の駆動軸111に結合されている係合部材90の幅よりも微少に大きくされており、溝部83には、駆動軸111の中心軸線と送りねじ部材80の中心軸線とが略一致された状態で、係合部材90が挿入されている。これにより、係合部材90と送りねじ部材80とは、駆動軸111の軸線方向に相対移動可能であるとともに、モータ110の回転力を送りねじ部材80に伝達可能となっている。そして、モータ110の回転力が伝達された送りねじ部材80は、駆動軸111の中心軸線CL4を中心に回転される。なお、送りねじ部材80と張出部51との間には、ラジアル軸受76が設けられているため、このラジアル軸受76により、送りねじ部材80の回転軸が規制されるとともに、回転が滑らかにされている。また、送りねじ部材80の、モータ110とは反対側の端面(図1中の下端面)には、雄ねじの切られた雄ねじ部82が突設されている。
【0033】
送りねじ部材80の下方には、ガイド部121と第1収容部124とに渡って、送りねじ部材80の雄ねじ部82に螺着されるロッド60が収容されている。ロッド60 は、射出成型または削り出し加工により円柱状に形成されており、その材質は、例えば、PP、PPS、PEEK、PVDF等の樹脂である。
【0034】
ロッド60は、ガイド部121に間隙を持って挿通された第1ロッド部61と、第1収容部124に収容された第2ロッド部62とを備えている。第2ロッド部62の径は、第1ロッド部61の径よりも大きくなっている。
【0035】
ロッド60は、第1ロッド部61がガイド部121に挿通されていることで、ガイド部121にガイドされて、その軸線方向に移動可能となっている。なお、ロッド60の第2ロッド部62には、外径方向へ延びるピン72が設けられており、このピン72が第1シリンダ部材120の溝122に挿入されているため、ロッド60は、その中心軸線CL1を中心とした回転が規制されている。
【0036】
また、第1ロッド部61の外周面には、円環状の溝部65が設けられており、溝部65には、シール部材としてOリング77(弾性体の一例)が嵌合されている。Oリング77によって、ガイド部121の内周面と第1ロッド部61の外周面との間がシールされるとともに、ロッド60がガイド部121に対して滑らかに摺動可能とされている。
【0037】
また、Oリング77は、ロッド60が環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜する場合の支点として作用する。この傾斜とは、第1ロッド部61はガイド部121に間隙を持って挿通されているためにロッド60が備える自由度のことである。例えば、図2に示すように、ロッド60は、ガイド部121の中で、Oリング77を支点として、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能となっている。なお、第2ロッド部62の外周面と第1収容部124の内周面との間には十分な間隙が設定されており、第2ロッド部62の外周面と第1収容部124の内周面とが干渉してロッド60の傾斜を妨げることがないようにされている。
【0038】
第2ロッド部62のモータ110側の端面には、スプリング71の一端(図1中の下端)が当接されている。また、スプリング7 1 の他端(図1中の上端)は張出部51に接している。スプリング71は、ロッド60と張出部51とに弾性力を作用させており、ロッド60が張出部51から離れる方向、すなわちニードル弁体41が環状弁座24に近付く方向へ、ロッド60を付勢している。
【0039】
ロッド60のモータ110側の端面には、内周に雌ねじが切られた雌ねじ部64が、ロッド60の軸線方向に穿設されており、この雌ねじ部64が、送りねじ部材80の雄ねじ部82にかみ合うことで、ロッド60は、送りねじ部材80に遊びを持って螺着されている。これにより、送りねじ部材80がモータ110により回転されると、ロッド60は ねじ送りされ、図中上下方向に移動可能である。なお、雌ねじ部64と雄ねじ部82との間には、上記螺着のための遊びが設けられているため、ロッド60は、送りねじ部材80の中心軸線に対して傾斜可能な自由度を備えている。この自由度により、送りねじ部材80がロッド60のガイド部121の中での傾斜を妨げることがないようにされている。
【0040】
ロッド60のバルブボディ20側の端部には、ニードル弁体41が連結されており、図1に示すように、ロッド60の中心軸線CL1とニードル弁体41の中心軸線CL3は一致されている。ニードル弁体41は、射出成型または削り出し加工により円柱状に形成されており、その材質は、摺動性および耐薬品性に優れたフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエアーテル共重合体(PFA))である。
【0041】
ニードル弁体41の外周縁には、薄膜部42が設けられている。この薄膜部42によって、弁室22が ガイド部121の空間と環状弁座24側の空間とに区画されており、弁室22内の液体がガイド部121へ流入することが防止されている。また、薄膜部42の外周縁には、円環状の固定部43が設けられており、この固定部43がバルブボディ20と第1シリンダ部材120とに挟持されることで、ニードル弁体41が固定されている。さらにまた、ニードル弁体41は、ロッド60側とは反対側の端部に向かってニードル弁体41の径を縮小させる縮径部41aを備えている。この縮径部41aは、バルブボディ20の環状弁座24に対向するように位置している。
【0042】
ニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2とは、図1に示すように、同心同軸上に位置されることが望ましいが、製造公差により、ニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2との間には、環状弁座24の径方向に、微小な(例えば、0コンマ数mm程度)の位置ずれが生じ得る。このとき、上述したロッド60の第1ロッド部61とガイド部121との間隙は、製造公差によって考えられるニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2の最大の位置ずれ量よりも大きく設定されている。つまり、第1ロッド部61とガイド部121との間隙を、ガイド部121の内径D12から第1ロッド部61の直径D11を減じた値の半分の値((D12-D11)/2)であるとして、その間隙が上記最大の位置ずれ量よりも大きく設定されていることを意味する。
【0043】
以上のようなニードル弁1は以下のように動作する。図1に示すニードル弁1は、ニードル弁体41の環状弁座24に対する開度(以下、単に開度と言う)が最小にされた状態、すなわち、ニードル弁体41が環状弁座24に当接した閉弁状態にある。この閉弁状態から開度を大きくする動作について説明する。
【0044】
モータ110の駆動軸111は、上述の通り、駆動回路112に入力されるステップ数に基づき、制御される。駆動軸111が中心軸CL4を中心に図1の矢印Xの方向に回転されると、係合部材90から送りねじ部材80へ回転力が伝達され、送りねじ部材80が矢印Xの方向に回転する。送りねじ部材80の回転は、すなわち雄ねじ部82の回転であり、雄ねじ部82が矢印Xの方向に回転されることにより、雄ねじ部82とかみ合っているロッド60の雌ねじ部64が駆動軸111に近付く方向へねじ送りされる。つまり、ロッド60が、図1中の上方に移動し、ロッド60と送りねじ部材80とが近付くことになる。ロッド60が上方に移動するに伴ってニードル弁体41が環状弁座24から離れる方向に移動する。このため、環状弁座24とニードル弁体41との距離、すなわち開度が調節され、出力側流路23へ流出する薬液の流量が調整される。なお、係合部材90と送りねじ部材80とは駆動軸111の軸線方向に相対移動可能となっているため、ロッド60がねじ送りされる際に、その力の反作用が駆動軸111に対して軸線方向に作用することが抑制されている。
【0045】
次に、ニードル弁1において、開度を小さくする動作について説明する。
【0046】
モータ110の駆動軸111は、開度を大きくする場合と同様に、駆動回路112に入力されるステップ数に基づき、制御される。駆動軸111が中心軸CL4を中心に図1の矢印Yの方向に回転されると、係合部材90から送りねじ部材80へ回転力が伝達され、送りねじ部材80(雄ねじ部82)が矢印Yの方向に回転する。この場合には、雄ねじ部82とかみ合っているロッド60の雌ねじ部64が駆動軸111から離れる方向へねじ送りされる。つまり、ロッド60が、図1中の下方に移動し、ロッド60と送りねじ部材80とが離れることになる。ロッド60が下方に移動するに伴ってニードル弁体41が環状弁座24に近づく方向に移動する。このため、環状弁座24とニードル弁体41との距離、すなわち開度が調節され、出力側流路23へ流出する薬液の流量が調整される。
【0047】
開度の調節を行う際、駆動軸111の回転位置は、モータ110のステップ数に基づいて精密に制御されるため、ニードル弁1は、開度を数μmの精度で精密に制御することができる。例えば、薬液を所定の微少流量(例えば、1~10ml/min)に制御する場合には、ニードル弁体41の環状弁座24に対する開度が、ニードル弁体41と環状弁座24との隙間が数十μm以下という微小な開度に調節される。
【0048】
このような微少な開度に調節される場合、ニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2とが、同心同軸上に位置され、ニードル弁体41の縮径部41aの全周において、環状弁座24との間に均一な隙間が形成されていることが望ましい。しかし、実際には、製造公差等により、ニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2との間には、環状弁座24の径方向に微少な(例えば、0コンマ数mm程度)の位置ずれが生じ得る。そうすると、微小な開度に調節された場合に、縮径部41aの全周において環状弁座24との間に均一な隙間が形成されず、縮径部41aの一部が環状弁座24と接触(すなわち片当たり)するおそれがある。ニードル弁1は、流量制御を行っている間、微小な開度の調節を繰り返しているため、片当たりが発生すると、片当たりしている箇所が環状弁座24と摩擦し、片当たりしている箇所で摩耗が発生するおそれがある。
【0049】
しかし、本実施形態に係るニードル弁1は、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。以下に詳しく説明する。
【0050】
第1ロッド部61とガイド部121との間隙および雌ねじ部64と雄ねじ部82との間の遊びを有するため、ロッド60は、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度を備えている。ロッド60が自由度を備えているため、ニードル弁体41に、上記した片当たりが発生した場合、図2に示すように、ロッド60およびニードル弁体41が、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜することができる。この傾斜したときの、ロッド60の中心軸線CL1の、環状弁座24の中心軸線CL2に対する傾斜角度θは、2度以上6度以下であることが望ましく、3度以上5度以下とすることがさらに望ましい。この傾斜角度θは、ロッド60の第1ロッド部61とガイド部121との間隙を、製造公差によって考えられるニードル弁体41の中心軸線CL3と環状弁座24の中心軸線CL2の最大の位置ずれ量よりも大きく設定することで確保されている。
【0051】
ロッド60およびニードル弁体41が、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜することにより、ロッド60およびニードル弁体41を動作させようとするモータ110の推力を逃がすことが可能となり、片当たりによって環状弁座24からニードル弁体41に負荷される接触圧が緩和される。もし、ロッド60の自由度が非常に小さく、傾斜角度θが非常に小さい(1度以下)状態であるか、ロッド60の自由度が全くなく、傾斜できない状態である場合には、片当たりによって環状弁座24からニードル弁体41に負荷される接触圧は、モータ110の推力により50N以上となることが考えられるが、ロッド60の傾斜により、接触圧は、弾性変形している薄膜部42の反力程度、すなわち2~3N程度まで緩和される。以上のように、上記接触圧を、薄膜部42の反力程度にまで緩和することが出来れば、ニードル弁体41は摺動性の高いフッ素樹脂からなるため、片当たりが発生したとしても、ニードル弁体41と環状弁座24との摩擦による摩耗の発生を防止することが可能である。
【0052】
以下に、本実施形態に係るニードル弁1と、従来のニードル弁とにおいて、ニードル弁体の摩耗の発生具合を比較評価した結果について説明する。従来のニードル弁とは、従来品Aおよび従来品Bである(図3参照)。従来品Aは、ロッドの自由度が非常に小さく、傾斜角度θが非常に小さくされた(1度以下)ニードル弁である。従来品Bは、ロッドがリジットに固定されるなどして自由度が無く、傾斜することができないニードル弁である。
【0053】
ニードル弁体の摩耗の発生具合を評価するために、図6(a)に示す試験回路を用いた。この試験回路は以下のように構成されている。上流側の超純水供給源200から順に、超純水供給源200から超純水を試験回路に供給するためのポンプ201と、超純水の流量を250ml/minに制御する流量制御装置202と、10nm以上のパーティクルをろ過するフィルタ203と、が直列に接続されている。そして、フィルタ203の下流側には、評価対象のニードル弁204A(サンプル1)およびニードル弁204B(サンプル2)が並列に接続されている。なお、ニードル弁204Aとニードル弁204Bは同一のニードル弁である。例えば、ニードル弁1の評価を行う場合には、ニードル弁204Aおよびニードル弁204Bは、ともにニードル弁1であり、従来品Aの評価を行う場合には、ニードル弁204Aおよびニードル弁204Bは、ともに従来品Aである。ニードル弁204Aおよびニードル弁204Bの下流側には液中パーティクルカウンタ(LPC)205が接続されており、ニードル弁204Aおよびニードル弁204Bを通過した超純水に含まれる40nm以上の大きさのパーティクルを検出できるようになっている。LPC205には、流量制御装置206が接続されており、LPC205から排出される超純水の流量を5ml/minに制御している。
【0054】
以上のような試験回路を用い、超純水を供給した状態で、ニードル弁204A(サンプル1)およびニードル弁204B(サンプル2)を、図6(b)に示すように、2秒につき1サイクル(弁開動作を1秒,弁閉動作を1秒)で動作させ、液中パーティクルカウンタ205が検出するパーティクルの個数に基づき、ニードル弁体41の摩耗の発生具合を判断する。つまり、液中パーティクルカウンタ205が検出するパーティクルの個数が多いほど、ニードル弁体41に摩耗が発生しており、パーティクルの個数が少ないほど、ニードル弁体41の摩耗が抑えられていると判断する。なお、ここで、図6(b)に記載の弁閉との文言は、ニードル弁体41の縮径部41aが環状弁座24に当接した完全弁閉状態を意味するのではなく、ニードル弁体41と環状弁座24との隙間が数十μm以下という微小な開度に調節し、超純水の流量を、4ml/minという微少流量に制御した状態を意味する。また、図6(b)に記載の弁開との文言は、ニードル弁体41が上限位置にある完全弁開状態を意味する。
【0055】
以上の条件により試験を行った結果、ニードル弁1は、動作開始時点(0サイクル)から30000サイクルまでの間において、5000サイクル毎に数回程度、数個のパーティクルを検出するに止まった。
【0056】
また、従来品Aは、動作開始時点(0サイクル)から30000サイクルまでの間において、ニードル弁1よりも頻度高く5~10個のパーティクルが検出されたことに加え、5000サイクル毎に数回程度は、10個または20個を超えた個数のパーティクルが検出された。
【0057】
さらにまた、従来品Bは、動作開始時点(0サイクル)から30000サイクルまでの間において、ほぼ常に5個以上のパーティクルが検出されており、30個,40個,50個を超えるケースも確認できた。
【0058】
図3は、本実施形態に係るニードル弁1と従来品A,Bのパーティクル数について、5000サイクル目以降の平均値を表したグラフである。このグラフから、ニードル弁1は平均値が1個以下、従来品Aは平均値が約2個、従来品Bは、平均値が約16個となっていることが分かる。ニードル弁1は、従来品Aと比べて半分以下の個数であるとともに、従来品Bと比べて16分の1以下の個数となっており、ニードル弁体41の摩耗が、従来品Aおよび従来品Bに比べて格段に抑えられていることが分かる。
【0059】
以上の試験結果から、ロッドの自由度が低いほど、検出されるパーティクルの個数が多いことが分かる。これは、ニードル弁1、従来品A、従来品Bにおいて、ニードル弁体と環状弁座との隙間が数十μm以下という微小な開度に調節された時に(すなわち、図6(b)に言う弁閉の状態にされた時に)、上記した片当たりが生じていることが想定されるところ、ロッドの自由度が低いほど、片当たりによってニードル弁体に摩耗が生じやすいためである。
【0060】
つまり、ニードル弁1は、ロッド60が環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度を備えているために、ロッド60およびニードル弁体41を動作させようとするモータ110の推力を逃がすことが可能であり、片当たりによって環状弁座24からニードル弁体41に負荷される接触圧が緩和され、ニードル弁体41の摩耗が抑えられている。一方で、従来品Aは、ロッドの自由度がニードル弁1よりも小さいため、モータ110の推力を逃がしきれず、片当たりによりニードル弁体に摩耗が発生していると考えられる。また、従来品Bは、ロッドが自由度を有しないため、モータ110の推力がニードル弁体の片当たりした箇所に負荷され、従来品Aよりもさら大きい摩耗が発生していると考えられる。
【0061】
従来品A,従来品Bのロッドの自由度が小さくされているのは、ロッドの直進性を高めることを目的とする他、流体圧によりロッドおよびニードル弁体の中心軸線がぶれてしまわないようにすることが目的となっている。これは、流体圧によりロッドおよびニードル弁体の中心軸線がぶれると、流量制御に悪影響があると考えられていたためである。とすれば、本実施形態に係るニードル弁1は、ロッド60が傾斜可能な自由度を備えているため、流体圧によりロッド60およびニードル弁体41の中心軸線がぶれてしまい、流量制御に悪影響があると懸念される。しかし、出願人は実験により、ニードル弁1は、従来のニードル弁と同等の精度で流体制御を行うことができることを確認した。
【0062】
図4は、本実施形態に係るニードル弁1と従来品Aにおいて、モータのステップ数(ニードル弁体の開度)と、Cv値の関係を比較したグラフである。このグラフは、完全弁開状態(ステップ数0)から、完全弁閉状態(ステップ数400)までのCv値を示している。このグラフを見るに、ニードル弁1は、完全弁開状態(ステップ数0)から、完全弁閉状態(ステップ数400)に向かって、従来品Aと同等の直線性を持って、滑らかにCv値が下降していることが分かる。
【0063】
図5は、図4のステップ数380からステップ数400までを拡大したグラフである。このグラフを見るに、ステップ数380からステップ数400までの間、すなわちニードル弁体が微小な開度に制御されている場合も、ニードル弁1は、従来品Aと同等の直線性を持って、滑らかにCv値が下降していることが分かる。
【0064】
以上のように、ニードル弁1は、完全弁開状態(ステップ数0)から、完全弁閉状態(ステップ数400)に向かって、Cv値が乱れることなく、従来品Aと同等の直線性を持って、滑らかにCv値が下降しているため、ニードル弁1は、従来のニードル弁と同等の精度で流体制御を行うことができると言える。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の流量制御弁(ニードル弁1)によれば、
(1)駆動装置(例えば、モータ110)と、駆動装置の動作によって移動が行われるロッド60と、ロッド60に接続され、ロッド60の移動により環状弁座24に対して進退するニードル弁体41と、を備え、ニードル弁体41の環状弁座24に対する開度の調節を行うことで、制御流体(例えば、薬液)の流量制御を行う流量制御弁(ニードル弁1)において、ロッド60が間隙((D12-D11)/2)を持って挿通され、ロッド60の移動をガイドするガイド部121を備えること、ロッド60は、ガイド部121に挿通されている部分の外周面に、環状の弾性体(例えば、Oリング77)を備え、ガイド部121に対して、摺動可能に保持されていること、ロッド60は、少なくとも間隙により、弾性体(Oリング77)を支点に、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度を備えること、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節され、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合に、自由度により、ロッド60が傾斜することで、片当たりによりニードル弁体41に負荷される接触圧が緩和されること、を特徴とする。
【0066】
(1)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)によれば、ロッド60は、ガイド部121に間隙を持って挿通されており、少なくとも当該間隙により、環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度を備えている。この自由度により、制御流体を所定の微少流量に制御するために開度が微小な開度に調節され、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合でも、ロッド60が傾斜することができる。ロッド60が傾斜することができれば、片当たりが発生したとしても、ロッド60およびニードル弁体41を動作させようとする駆動装置の推力を逃がすことが可能となり、片当たりによって環状弁座24からニードル弁体41に負荷される接触圧が緩和される。よって、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。
【0067】
摩耗の発生を抑えることができれば、摩耗粉の発生を抑えることができ、例えば薬液等の制御流体にパーティクルが混入することを防ぐことができる。さらには、従来は、ニードル弁体が同一の開度に調整されていても、ニードル弁体に摩耗が生じる前と後で薬液の流量が変化し、薬液の濃度が変動してしまうおそれがあったが、摩耗の発生を抑えることができれば、このおそれも低減される。薬液へのパーティクルの混入防止や薬液濃度の変動のおそれの低減は、ウエハの製造不良の発生を防止することが出来る。
【0068】
なお、ロッド60が傾斜することができるということは、流体圧によりニードル弁体41の軸心がぶれてしまい、流量制御に悪影響があると考えられるが、出願人は実験により、(1)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)は、従来の流量制御弁と同等の精度で流体制御を行うことができることを確認した。
【0069】
(2)(1)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)において、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合の、自由度によるロッド60の傾斜は、2度以上6度以下の範囲内であること、を特徴とする。
【0070】
(2)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)によれば、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。例えば、上記従来品Aのように、ニードル弁体41が環状弁座24に片当たりした場合のロッド60の傾斜が2度より小さい角度(例えば1度)であると、駆動装置の推力を逃がしきれず、ニードル弁体41に負荷される接触圧により、ニードル弁体41に摩耗が発生するおそれがある。また、6度よりも大きい角度で傾斜をすると、流体圧(90kPa)によるニードル弁体41のぶれが過剰となり、振動や異音が発生する原因となるおそれがある。よって、自由度によるロッド60の傾斜は、2度以上6度以下の範囲内であることが望ましい。
【0071】
(3)(1)または(2)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)において、駆動装置は、駆動軸111を有するモータ110であること、駆動軸111には、駆動軸111の回転動作を直動動作に変換する送りねじ部材80が接続されており、ロッド60は、送りねじ部材80に遊びを持って螺着されていること、自由度は、間隙と遊びとにより確保されること、を特徴とする。
【0072】
(3)に記載の流量制御弁(ニードル弁1)によれば、ロッド60は、送りねじ部材80が駆動軸111の回転動作を直動動作に変換することにより、移動可能となっている。そして、ロッド60は、送りねじ部材80に遊びを持って螺着されている。つまり、当該遊びにより、ロッド60は送りねじ部材80に対して、自由度を持って結合されている。したがって、ロッド60が環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度は、ロッド60とガイド部121の間隙による自由度と、上記の遊びによる自由度とにより確保されることになる。ロッド60が環状弁座24の中心軸線CL2に対して傾斜可能な自由度が確保されることで、ニードル弁体41が環状弁座24に対して片当たりした場合であっても、摩耗の発生を抑えることが可能である。
【0073】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、駆動装置としてモータ110を例示しているが、これに限定されるものではなく、ハンドル等により手動で動作させることが可能な駆動装置とし、流量制御弁を手動弁としても良い。
【0074】
また、環状の弾性体として、Oリング77を例示しているが、Y型パッキンや角型パッキンなどのシール部材を用いても良い。さらには、環状の弾性体は、ロッド60とガイド部121との間をシールすることを目的とする部材に限定されるものでなく、ロッド60をガイド部121に対して摺動可能に保持することのみを目的とする部材を用いることとしても良い。
【0075】
さらにまた、制御流体として、希釈して用いる薬液を例示しているが、希釈用途でない薬液(例えば、ウエハ乾燥用の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール))などを制御することとしても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 ニードル弁(流量制御弁の一例)
24 環状弁座
41 ニードル弁体
60 ロッド
77 Oリング(弾性体の一例)
110 モータ(駆動装置の一例)
121 ガイド部
CL2 環状弁座の中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6