(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095229
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20220621BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20220621BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20220621BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/65
C08G18/40
B60C5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208424
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】松澤 冴子
(72)【発明者】
【氏名】佐渡 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】井戸 博章
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J034
【Fターム(参考)】
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】被着体との接着強度が向上したポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物から得られ、前記組成物が、官能基数が2以上でかつ分子量が60~1000g/molである架橋剤を前記ポリオール100質量部に対して3質量部以上の量で含む、被着体への直接接着のための軟質または半硬質ポリウレタンフォームである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物から得られ、前記組成物が、官能基数が2以上でかつ分子量が60~1000g/molである架橋剤を前記ポリオール100質量部に対して3質量部以上の量で含む、被着体への直接接着のための軟質または半硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記物理発泡剤が、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、およびシクロペンタンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記被着体が空気入りタイヤである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物を被着体に直接塗布し、ポリウレタンフォームを形成させることを含む、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームの製造方法に関し、特には、被着体との接着強度が向上したポリウレタンフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
音の発生を抑える制音体として、吸音材、遮音材、制振材等が知られており、ポリウレタン材料等が使用されている。
【0003】
特開2018-70148号公報(特許文献1)には、インナーライナの内側に塗布された接着剤層と、前記接着剤層に付着された吸音材層とを含み、前記接着剤層は、末端ではなく主鎖中にアルコキシシラン置換基を含むポリエーテルを含むものである、共鳴音低減タイヤが記載されており、吸音材層にポリウレタンフォームが使用されている。特許文献1では、タイヤのインナーライナと吸音材層との間に、弾性および接着強度が向上した接着剤層を適用することによって、走行時の発熱および変形にも吸音材の脱離がない安定した共鳴音低減タイヤを提供することができるとしている。
【0004】
特開2012-117039号公報(特許文献2)には、ジオールとジイソシアネートを反応させて得られ、前記ジオールは、ポリエーテル系ジオールとポリエステル系ジオールを混合して使用することを特徴とするポリウレタンフォームが記載されている。特許文献2では、空気入りタイヤの内部空間が低引張力と剛性により容易に崩壊される短所を改善することを発明の目的とし、上記ポリウレタンフォームを吸音材として適用することで、内部空間の共鳴騒音を低減して乗車感に優れた空気入りタイヤを提供することができるとしている。
【0005】
特開2020-19390号公報(特許文献3)には、空気入りタイヤと、この空気入りタイヤのトレッド内面に配される多孔質樹脂発泡体からなる制音体とを具えた制音体付き空気入りタイヤであって、制音体がタイヤ周方向に連続してのびる1本の環状体からなること、そして、制音体のコア密度、オーバーオール密度、およびトレッド内面からの最大高さを特定の範囲に規定することを特徴とする制音体付き空気入りタイヤが記載されており、多孔質樹脂発泡体としてポリウレタンフォームが使用されている。特許文献3では、かかる制音体を空気入りタイヤに適用することで、制音体の損傷を抑制できかつ制音性能の向上を図りうる制音体付き空気入りタイヤを提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-70148号公報
【特許文献2】特開2012-117039号公報
【特許文献3】特開2020-19390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3では空気入りタイヤに適用されているように、制音体は、振動等により剥がれ易い環境下に配置される場合も多く、耐久性に関する課題があることから、被着体との接着強度の向上が求められている。特許文献1に記載されるように、接着強度の向上のために接着剤を使用する手法が知られているが、制音体自体の接着性を改善することについては十分な検討がなされているとはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、被着体との接着強度が向上したポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、軟質または半硬質ポリウレタンフォームの製造において、発泡剤として物理発泡剤を用いることで、得られるポリウレタンフォームの被着体との接着強度を向上でき、被着体に直接適用しても十分な接着強度を発揮できることを見出した。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物から得られ、前記組成物が、官能基数が2以上でかつ分子量が60~1000g/molである架橋剤を前記ポリオール100質量部に対して3質量部以上の量で含む、被着体への直接接着のための軟質または半硬質ポリウレタンフォームである。
【0011】
本発明のポリウレタンフォームの好適例においては、前記物理発泡剤が、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、およびシクロペンタンよりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0012】
本発明のポリウレタンフォームの他の好適例においては、前記被着体が空気入りタイヤである。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物を被着体に直接塗布し、軟質または半硬質ポリウレタンフォームを形成させることを含む、ポリウレタンフォームの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1および第2の態様によれば、被着体との接着強度が向上したポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の1つの態様は、ポリウレタンフォームである。ポリウレタン製品には、フォームと非フォームが知られているが、使用される場所において問題となる音を低減するための制音体としての観点から、本発明の一実施形態は、ポリウレタンフォームに関するものである。また、ポリウレタンフォームは、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームに分類されるが、本発明のポリウレタンフォームは、軟質または半硬質ポリウレタンフォームであることが好ましい。
【0017】
本明細書において「軟質ポリウレタンフォーム」とは、水酸基価56mgKOH/g以下のポリオールを50質量%以上含んだ配合ポリオールを用いて成形され、製品の密度が100kg/m3未満のウレタンフォームを指す。
「半硬質ポリウレタンフォーム」とは、水酸基価56mgKOH/g以下のポリオールを50質量%以上含み、かつ水酸基価112mgKOH/g以上の架橋剤を5質量%以上添加された配合ポリオールを用いて成形され、製品の密度が100kg/m3以上のウレタンフォームを指す。
「硬質ポリウレタンフォーム」とは、水酸基価300~500mgKOH/gのポリオールを50質量%以上含んだ配合ポリオールを用いて成形されるウレタンフォームを指す。
ここで、水酸基価の定義については後述する。ここでいう密度とは、見かけの全体密度であり、後述のとおりJIS K 7222:2005に準拠して測定できる。
【0018】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物から得られる。本発明によれば、軟質または半硬質ポリウレタンフォームの製造において、発泡剤として物理発泡剤を用いることで、得られるポリウレタンフォームの被着体との接着強度を向上させることができる。ポリウレタンフォームの製造において物理発泡剤を用いると、被着体との接着界面近傍では、被着体に熱が奪われ発泡が起こりにくくなるため、密度の高いスキンが生成され、ポリウレタンフォームの被着体への接着面積を増大させることができる。これにより、ポリウレタンフォームの被着体への接着強度を向上させることができる。一方、化学発泡剤を用いる場合には被着体との接着界面近傍でも気泡が存在するため、ポリウレタンフォームの被着体への接着面積は小さい。このため、化学発泡剤の使用では、物理発泡剤の使用により奏される接着強度の向上効果は得られない。また、化学発泡剤として水などを用いた発泡反応では、ポリイソシアネートとの反応によりウレア結合が生成する。このため、水などを使用する場合には、ハードセグメントであるウレアの凝集破壊により剥離しやすいといった課題もある。
【0019】
本発明のポリウレタンフォームによれば、被着体との接着強度が向上したポリウレタンフォームを提供できることから、ポリウレタンフォームを被着体に直接適用しても十分な接着強度を発揮することができる。このため、本発明のポリウレタンフォームは、被着体への直接接着のためのポリウレタンフォームとして好適である。本明細書において「被着体への直接接着」とは、ポリウレタンフォームが被着体へ直接接着していることを意味し、より具体的な態様としては、ポリウレタン原料を被着体に直接塗布または注入して発泡させることによりポリウレタンフォームが被着体へ直接接着している状態が挙げられる。一方、ポリウレタンフォームと被着体とを貼り合わせるのに接着剤や治具等の手段を用いた接着は「被着体への直接接着」から除かれる。
【0020】
本発明のポリウレタンフォームは、被着体との剥離強度が55N以上であることが好ましく、70N以上であることが更に好ましい。一方、上限については特に制限はないものの、例えば、被着体との剥離強度は500N以下であり、好ましくは200N以下である。発泡剤の種類や量を適宜調整することで(具体的には、物理発泡剤を使用し、また、化学発泡剤との併用の際には物理発泡剤の量を増やすことで)被着体に対するポリウレタンフォームの剥離強度を向上させることができる。
【0021】
本明細書において、被着体に対するポリウレタンフォームの剥離強度は、以下の手順によって測定される値である。
1.平板状のゴムシートに反応混合液(後述の原料組成物)を塗布し発泡させ、幅10mm以上のフォームを形成する。
2.硬化したポリウレタンフォームに、ゴムシートに対し垂直に10mm幅で切り込みを入れる。
3.幅10mmの山形圧子が取り付けられたプッシュプルゲージ(例えばアイコーエンジニアリング社製9520A)を用い、山形圧子をゴムシートに対して45度の角度で接着界面を押しウレタンフォームをゴムシートから剥がす。
4.プッシュプルゲージに表示された最大荷重を記録する。
5.N≧5の平均値を剥離強度とする。
【0022】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォームの表層部分から厚さ2mm以上切除した残りの部分(コア部分)を用い、厚さ20mmで100~5000Hzにおける垂直入射吸音率の平均値が、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。一方、上限については特に制限はないものの、例えば、100~5000Hzにおける垂直入射吸音率の平均値は、1.0以下である。
【0023】
本明細書において、ポリウレタンフォームの垂直入射吸音率は、JIS A 1405-2:2007に準拠して測定される値である。測定される音の入射方向は、発泡方向上側から実施した。
【0024】
本発明のポリウレタンフォームは、見かけの全体密度が30~150kg/m3であることが好ましく、40~120kg/m3であることが更に好ましく、50~90kg/m3であることが特に好ましい。本明細書において、ポリウレタンフォームの密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0025】
本発明のポリウレタンフォームの形成に用いる組成物は、上述のとおり、ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物である。本明細書においては、このポリウレタンフォームの形成に用いる組成物を原料組成物とも称する。
【0026】
原料組成物に用いるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが挙げられ、また、これらポリイソシアネートの変性物も含まれる。ポリイソシアネートの変性物としては、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、ウレア、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、オキサゾリドン等の構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。また、ポリイソシアネートとして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーを使用してもよい。なお、ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリイソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基含有率が20~40質量%であることが好ましく、23~35質量%であることが更に好ましい。本明細書において、イソシアネート基含有率は、JIS K 1603-1:2007に従い求められる。
【0029】
原料組成物において、ポリイソシアネートの量は、例えば、イソシアネートインデックスにより示すことができる。原料組成物において、イソシアネートインデックスは、好ましくは70~150であり、より好ましくは80~120であり、更に好ましくは90~110である。
【0030】
本明細書において、イソシアネートインデックスとは、ポリオール等のイソシアネート基と反応する活性水素の合計に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の比に100を乗じた値である。
【0031】
原料組成物に用いるポリオールは、複数の水酸基を有する化合物であり、好ましくは重合体のポリオールである。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。
【0032】
原料組成物において、ポリオールの量は、ポリイソシアネートの量に応じて適宜調整されるが、例えば、原料組成物100質量部に対して、30~70質量部である。なお、ポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオールが代表例として挙げられ、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、その他の活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料に、アルキレンオキサイドを開環付加反応させて製造することができる。
【0034】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの出発原料には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、マンノース、ショ糖、フルクトース、デキストロース、ソルビトール等の多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタアミン等の多価アミン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、ハイドロキノン等の多価フェノール、マンニッヒベース(フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させたもの)、それらの変性物等が挙げられ、これら出発原料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリオキシアルキレン系ポリオールを製造する際に、開環付加反応せしめるアルキレンオキサイドには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、これらアルキレンオキサイドは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ポリマーポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリアクリロニトリル微粒子やポリスチレン微粒子等のポリマー微粒子が分散したもの等が挙げられる。ポリマーポリオールは、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むものであることから、ポリエーテルポリオールの一種である。
【0037】
マンニッヒポリオールは、フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させ、さらに必要に応じてエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドの開環付加反応を行うことにより、製造することができる。マンニッヒポリオールは、分子中に複数のエーテル結合を有することから、ポリエーテルポリオールの一種である。
【0038】
好適なポリエーテルポリオールの例としては、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加反応させて得られる(ジ)エチレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)グリセリン系ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパン系ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール、ショ糖系ポリエーテルポリオール、デキストロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、モノ(ジ、トリ)エタノールアミン系ポリエーテルポリオール、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA系ポリエーテルポリオール等のポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリマー微粒子が分散したポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。
【0039】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルの製造条件を調整して製造することができ、例えば、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、直鎖状のポリエステルポリオールや僅かに分岐したポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸類と、ジオールと、任意に多価カルボン酸類および/または三官能性以上のポリオールとを使用して、既知の方法で調製することができる。
【0040】
ポリラクトンポリオールは、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであって、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリラクトン等が挙げられる。具体的には、上記ポリオキシアルキレン系ポリオールにおいて説明したような活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトンを開環付加反応させて製造することができる。なお、ポリラクトンポリオールは、分子中に複数のエステル結合を有することから、ポリエステルポリオールの一種である。
【0041】
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートの製造条件を調整して製造することができ、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリブタジエンポリオールは、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン等が挙げられる。
【0042】
ポリオールの水酸基価は、好ましくは28~112mgKOH/gであり、より好ましくは28~56mgKOH/gである。
【0043】
本明細書において、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基をカルボン酸無水物(例えば、無水フタル酸又は無水酢酸)で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である(JIS K 1557 2007参照)。
【0044】
ポリオールの分子量は、好ましくは1500~12000g/モルであり、好ましくは2000~8000g/モルであり、より好ましくは2000~7000g/モルである。
【0045】
本明細書において、ポリオールが重合体である場合、その分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量として測定することができる。
【0046】
ポリオールの官能基数(fn)は、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、更に好ましくは2~4である。
【0047】
本明細書において、ポリオール1分子あたりの官能基数(fn)は、ポリオールの持つ水酸基価(OHV)と数平均分子量(Mn)から次の計算式により求めることができる。
fn=Mn(g/mol)×OHV(mgKOH/g)/56100
【0048】
原料組成物に用いる物理発泡剤は、その具体例として、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)等のフロン類、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、二酸化炭素等が挙げられる。中でも、被着体との接着強度を向上させる観点から、ハイドロフルオロオレフィン及びシクロペンタンが好適である。発泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
原料組成物は、物理発泡剤としてシクロペンタンを含むことが好ましい。
【0050】
原料組成物は、物理発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、フロン類に該当しない物理発泡剤として好適に使用される発泡剤である。HFOとは、フッ素原子を含有するオレフィン化合物であり、フッ素以外のハロゲン原子(例えば塩素原子)を更に含有するものも含まれる。HFOのうち塩素原子を更に含有するものは、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とも称される。なお、HFOとHCFOは区別される場合もあるが、本明細書においては、上述のとおり、HFOにはHCFOが含まれる。
【0051】
ハイドロフルオロオレフィンは、炭素原子の数が2~5個であることが好ましく、また、フッ素原子の数が3~7個であることが好ましい。HFOの分子量は、100~200g/モルであることが好ましい。HFOの具体例としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロブテン等が挙げられる。なお、HFOは、シス体とトランス体のいずれの異性体であってもよい。
【0052】
物理発泡剤の量は、原料組成物100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、更に好ましくは3~12質量部である。
【0053】
原料組成物は、物理発泡剤と共に、化学発泡剤を含んでもよい。化学発泡剤としては、水や、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。しかし、化学発泡剤は、物理発泡剤のような接着強度の向上効果は期待できないことから、化学発泡剤を用いる場合であってもその量は少ないことが望ましい。例えば、化学発泡剤の量は、原料組成物100質量部に対して、0.5質量部未満である。
【0054】
原料組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、官能基数が2以上でかつ分子量が60~1000g/molである化合物が好ましい。ここで、架橋剤の官能基は、通常、イソシアネートに反応性のある基を指す。架橋剤の平均官能基数は、好ましくは2以上であり、より好ましくは2~3である。また、架橋剤の分子量は、好ましくは60~1000g/molであり、より好ましくは60~400g/molである。架橋剤としては、例えば、アミン架橋剤や水酸基を有する架橋剤が挙げられる。架橋剤には、複数の水酸基を有する化合物も含まれることから、ポリオールに該当し得るが、本明細書において、架橋剤は、ポリオールとは区別される成分である。このため、本明細書においてポリオールとは、複数の水酸基を有する化合物であるが、官能基数が2以上でかつ分子量が60~1000g/molである化合物は除かれる成分であると表現することもできる。
【0055】
架橋剤の量は、ポリオール100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、5~25質量部であることが更に好ましい。架橋剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
アミン架橋剤としては、1級または2級のアミノ基を有する、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン等が挙げられる。1級または2級のアミノ基を有する脂肪族アミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、m-キシレンジアミン、1,4-ジアミノヘキサン、ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン等のアルキルアミン化合物、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン化合物、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。1級または2級のアミノ基を有する芳香族アミン化合物の具体例としては、3,5-ジエチル-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン(DETDA)、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン、1-トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-クロロ-3,5-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。1級または2級のアミノ基を有する脂環族アミン化合物の具体例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等のアミノ基および/またはアミノアルキル基を2個以上有するシクロアルカンが挙げられる。
【0057】
水酸基を有する架橋剤の具体例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、ソルビトール、シュークロース、ペンタエリシリトール、N-アルキルジエタノール、ビスフェノールA-アルキレンオキシド付加物、グリセリン-アルキレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-アルキレンオキシド付加物、ペンタエリシリリトール-アルキレンオキシド付加物、ソルビトール-アルキレンオキシド付加物、シュークロース-アルキレンオキシド付加物、脂肪族アミン-アルキレンオキシド付加物、脂環式アミン-アルキレンオキシド付加物、複素環ポリアミン-アルキレンオキシド付加物、芳香族アミン-アルキレンオキシド付加物、天然物由来のポリオール等が挙げられる。
【0058】
原料組成物は、触媒を含んでもよい。触媒としては、水とポリイソシアネートとの反応を促進する触媒(泡化触媒)、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進する触媒(樹脂化触媒)、ポリイソシアネートの三量化反応(即ち、イソシアヌレート環の形成)を促進する触媒(三量化触媒)等が挙げられる。本発明において、原料組成物は、樹脂化触媒を含むことが好ましい。
【0059】
泡化触媒としては、例えば、ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン触媒、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン触媒、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛、カルボン酸ビスマス、ジルコニウム錯体などの金属触媒等が挙げられる。これらのアミン触媒およびアルカノールアミン触媒としては、炭酸を付加させて合成したアミン炭酸塩やギ酸、酢酸等のカルボン酸を付加させて合成したアミンカルボン酸塩を使用してもよい。
【0061】
三量化触媒としては、例えば、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩、又はその他オニウム塩等が挙げられる。
【0062】
触媒の量は、原料組成物100質量部に対して、例えば0.1~5質量部であり、好ましくは0.5~2.5質量部である。触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
原料組成物は、整泡剤を含んでもよい。整泡剤は、好ましくは界面活性剤である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性といったイオン性の界面活性剤や非イオン性界面活性剤があるが、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。また、具体例としては、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤が好適に挙げられる。整泡剤の量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.3~5質量部である。整泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
原料組成物には、その他の成分として、難燃剤、着色剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、防かび剤、抗菌剤、溶媒、減粘剤、減圧剤、分離防止剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0065】
原料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。例えば、ポリオールを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートからなるポリイソシアネート成分とを混合することで、原料組成物が調製できる。この際、物理発泡剤は、ポリオール成分やポリイソシアネート成分中に含まれる場合やポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合する際に配合される場合もある。
【0066】
ポリオール成分は、ポリオールを含み、通常、架橋材、発泡剤、整泡剤、触媒を含み、更なる添加剤を含んでもよい。また、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートからなるが、発泡剤や難燃剤などの添加剤を更に含んでもよい。
【0067】
原料組成物は、その液垂れ長さが300mmを超えるように調整されるのが好ましい。原料組成物の液垂れ長さが300mmを超えると、被着体に対する原料組成物の濡れ性が向上し、接着強度の向上に有利である。
【0068】
本明細書において、原料組成物の液垂れ長さとは、以下の測定方法により測定される。高圧発泡機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して高圧発泡機から、原料組成物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に吐出物を形成する。吐出後5分経過後、アクリル板上の吐出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定する。
【0069】
本発明のポリウレタンフォームは、上述した原料組成物を発泡させることで形成できる。原料組成物には、ポリオール及びポリイソシアネートが含まれることから、両者を混合することで、反応が進行し、ポリウレタンフォームを形成することが可能である。なお、ポリウレタンフォーム形成時の温度は10~30℃であることが好ましい。
【0070】
ポリウレタンフォームの発泡方法は、特に限定されず、既知の発泡手段、例えば、ハンドミキシング発泡、簡易発泡、注入法、フロス注入法、スプレー法等が利用できる。また、ポリウレタンフォームの成形方法も、特に限定されず、既知の成形手段、例えば、モールド成形、スラブ成形、ラミネート成形、現場発泡成形等が利用できる。
【0071】
本発明のポリウレタンフォームは、吸音材、遮音材、制振材等の制音体といった、音の発生を抑える製品として好適である。
【0072】
本発明のポリウレタンフォームの被着体としては、空気入りタイヤ、車体(自動車など)またはその部品(ホイール、特にリムなど)、重機、発電機、OA機器、家電製品、建築部材等が挙げられる。車体部品としては、例えば車体骨格部材であり、ピラー、シル(ロッカーパネル)、シャーシレール等が挙げられる。本発明のポリウレタンフォームを空気入りタイヤに適用する場合には、空気入りタイヤの内側表面(空気を閉じ込める空間側の表面)、特にはトレッド部における内側表面に本発明のポリウレタンフォームを配置することが好ましい。また、空気入りタイヤの空気を閉じ込める空間に本発明のポリウレタンフォームを適用する場合には、タイヤではなく、ホイール側、好ましくはリム表面に本発明のポリウレタンフォームを配置してもよい。
【0073】
本発明の別の態様は、ポリウレタンフォームの製造方法である。本発明のポリウレタンの製造方法は、ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物を被着体に直接塗布し、軟質または半硬質ポリウレタンフォームを形成させることを含む。本発明によれば、軟質または半硬質ポリウレタンフォームの製造において、発泡剤として物理発泡剤を用いることで、得られるポリウレタンフォームの被着体との接着強度を向上させることができる。本明細書においては、本発明のポリウレタンフォームの製造方法を本発明の製造方法とも称する。
【0074】
なお、「ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物」、「被着体」、「ポリウレタンフォーム」等の、本発明のポリウレタンフォームの説明において記載した内容については、本発明の製造方法にも当てはまることである。例えば、本発明の製造方法において「ポリイソシアネート、ポリオールおよび物理発泡剤を含む組成物」としては、本発明のポリウレタンフォームの説明において記載した原料組成物が好適である。また、「被着体」としては、本発明のポリウレタンフォームの説明において記載した空気入りタイヤ等が挙げられる。
【0075】
本発明の製造方法において「直接塗布」とは、ポリウレタンフォームの形成に用いる組成物を被着体へ直接塗布することを意味し、かかる組成物を塗布する前に被着体上に接着剤が適用される態様は除かれる。一方、かかる組成物を塗布する前に、被着体表面を清掃または洗浄することは可能である。例えば、脱脂処理などが挙げられる。
【0076】
本発明の製造方法において、組成物の被着体への塗布方法としては、本発明のポリウレタンフォームの説明において記載した発泡手段を利用することができるが、注入法により組成物を被着体へ塗布することが好ましい。
【実施例0077】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
<原料>
ポリウレタンフォームの製造に用いた材料を以下に示す。
1)ポリオールa1、平均官能基数3で、アルキレンオキシドを開環付加重合させた、25℃における粘度が1160mPa・s、水酸基価が28mgKOH/gのポリエーテルポリオール
2)ポリオールa2、平均官能基数2で、アルキレンオキシドを開環付加重合させた、25℃における粘度が850mPa・s、水酸基価が28mgKOH/gのポリエーテルポリオール
3)架橋剤b1、日本触媒社製モノエチレングリコール、官能基数fn=2、水酸基価=1810mgKOH/g、分子量=62g/mol
4)架橋剤b2、三洋化成社製PEG 200、官能基数fn=2、水酸基価=561mgKOH/g、分子量=200g/mol
5)架橋剤b3、日本触媒社製トリエタノールアミン、官能基数fn=3、水酸基価=1506mgKOH/g、分子量=149g/mol
6)架橋剤b4、日本触媒社製ジエタノールアミン、官能基数fn=2、水酸基価=1603mgKOH/g、分子量=105g/mol
7)触媒c1、東京ファインケミカル社製ジブチルチンジラウレート
8)触媒c2、エボニック社製Dabco EG
9)触媒c3、東ソー社製Toyocat ET
10)触媒c4、エボニック社製Dabco 2040
11)触媒c5、サンアプロ社製 U-CAT SA102
12)整泡剤d1、エボニック社製TEGOSTAB B 8715 LF 2
13)整泡剤d2、エボニック社製TEGOSTAB B 8745 LF 2
14)発泡剤e1、水
15)発泡剤e2、ハネウェル社製SolsticeTM LBA(HCFO-1233zd)
16)発泡剤e3、丸善石油化学社製マルカゾールFH(シクロペンタン)
17)ポリイソシアネートf1、住化コベストロウレタン製変性プレポリマーSBU ISOCYANATE S234、NCO%=25質量%
18)ポリイソシアネートf2、混合ポリイソシアネート、混合比率:住化コベストロウレタン製スミジュール44V20/住化コベストロウレタン製スミジュール44S41=4/6(質量比)、NCO%=33質量%
【0079】
<原料組成物の調製例>
表1の配合処方に従いポリオール成分を調製した。物理発泡剤とポリイソシアネート成分とを混合し、次いでポリオール成分を混合し、原料組成物を調製した。ポリオール成分、物理発泡剤およびポリイソシアネート成分の配合量については、表1に示される。
【0080】
<ポリウレタンフォームの調製例>
上記<原料組成物の調製例>に従い調製された原料組成物を、高圧発泡機により、被着体に直接塗布し、ポリウレタンフォームを形成させた。
高圧発泡機としては、Cannon社製の高圧発泡機を用いた。ポリオール成分とポリイソシアネート成分の温度は、表1に示される原料温度に調整された。原料組成物の吐出量は120~200g/秒で実施した。原料組成物の吐出圧は、13~16MPaで実施した。
【0081】
<発泡評価>
上記<ポリウレタンフォームの調製例>に従いポリウレタンフォームを形成する際に発泡評価を行った。評価基準は、崩壊なく発泡が行われた場合を「〇」とし、発泡時に崩壊が生じた場合を「×」とした。結果を表1に示す。
なお、発泡時に崩壊が生じたポリウレタンについては、後述の密度測定、剥離試験、吸音率の測定および液垂れ長さの測定ができなかったため、これらの評価を行わなかった。
【0082】
<密度>
JIS K 7222:2005に準拠してポリウレタンフォームの見かけの全体密度を測定した。幅80mm~120mm、高さ10mm~30mm、奥行き30mm以上のポリウレタンフォームを作製し、奥行き20mmに切り出してサンプルとした。結果を表1に示す。
【0083】
<剥離試験>
以下の手順に従ってポリウレタンフォームの剥離強度を測定した。結果を表1に示す。また、測定された値について55N以上の場合を「〇」とし、55N未満の場合を「×」として評価を行った。
1.上記<ポリウレタンフォームの調製例>に従いポリウレタンフォームを平板状のゴムシート上に直接作製させた。
2.ゴムシートに対し垂直に10mm幅でポリウレタンフォームに切り込みを入れた。
3.幅10mmの山形圧子が取り付けられたプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング社製9520A)を用い、山形圧子をゴムシートに対して45度の角度で接着界面を押しポリウレタンフォームをゴムシートから剥がした。
4.プッシュプルゲージに表示された最大荷重を記録した。
5.5回測定を行って得た値の平均値をポリウレタンフォームの剥離強度とした。
【0084】
<吸音率>
上記<ポリウレタンフォームの調製例>に従い作製されたポリウレタンフォームの表層部分を切除して、厚さ20mmのコア部分を用意した。次いで、JIS A 1405-2:2007に準拠して、このコア部分についての垂直入射吸音率を測定し、100~5000Hzにおける垂直入射吸音率の平均値を求めた。なお、測定される音の入射方向は、発泡方向上側から実施した。評価基準は、0.4以上を「〇」とし、0.4未満を「×」とした。結果を表1に示す。
【0085】
<液垂れ長さ>
高圧発泡機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して高圧発泡機から、上記<原料組成物の調製例>に従い調製された原料組成物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に吐出物を形成させた。吐出後5分経過後、アクリル板上の吐出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定する。
【0086】
【0087】
実施例1および実施例2では、発泡剤として物理発泡剤を用いた組成物から得られた軟質または半硬質ポリウレタンフォームであり、発泡剤として水を用いた組成物から得られた比較例1の軟質ポリウレタンフォームと比べて、被着体との接着強度が高い。なお、比較例2は、架橋剤の量が十分ではなく、ポリウレタンフォームを製造することができなかった。