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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095233
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電動車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/04 20060101AFI20220621BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20220621BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220621BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20220621BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20220621BHJP
   F01N 13/02 20100101ALI20220621BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20220621BHJP
【FI】
B60K13/04 A
B60K15/063 A ZHV
B60K1/04 Z
B60K6/46
B60K6/40
F01N13/02
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208429
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】中村 好孝
【テーマコード(参考)】
3D038
3D202
3D235
3G004
【Fターム(参考)】
3D038BA14
3D038BB01
3D038BC07
3D038CA12
3D038CB01
3D038CD02
3D038CD19
3D202AA07
3D202EE03
3D202EE23
3D235AA01
3D235BB17
3D235CC15
3D235CC32
3D235DD02
3D235DD12
3D235DD37
3D235FF12
3D235FF23
3D235FF24
3G004AA01
3G004DA13
(57)【要約】
【課題】排気サイレンサの容量確保とバッテリおよび燃料タンクの容量確保とを両立することが可能な電動車両の下部構造を提供する。
【解決手段】電動車両の下部構造は、フロアパネル6の後方または後部下方に配置されたバッテリ17および燃料タンク18と、車両前部のエンジンルームに収容されたエンジン11から排出された排気ガスの消音を行う排気サイレンサ23、25と、排気サイレンサ23、25を通過した排気ガスを車両外部に排出するテールパイプ26とを備える。排気サイレンサ23、25およびテールパイプ26は、フロアパネル6の下方であるとともに車両前後方向においてエンジン11とバッテリ17および燃料タンク18との間に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のエンジンルームにエンジンが収容された電動車両の下部構造であって、
前記エンジンルームの車両後方側に配置されたフロアパネルと、
前記フロアパネルの後方または後部下方に配置されたバッテリおよび燃料タンクと、
前記エンジンから排出された排気ガスの消音を行う少なくとも1つの排気サイレンサと、
前記排気サイレンサを通過した前記排気ガスを車両外部に排出するテールパイプと
を備え、
前記排気サイレンサおよび前記テールパイプは、前記フロアパネルの下方であるとともに車両前後方向において前記エンジンと前記バッテリおよび前記燃料タンクとの間に配置されている、
電動車両の下部構造。
【請求項2】
前記フロアパネルは、前記車両前後方向に延びるとともに前記フロアパネルの下方に開放された空間を有するように前記フロアパネルの上方に突出するフロアトンネルを備え、
前記排気サイレンサおよび前記テールパイプの少なくとも一部は、前記フロアトンネルに収容されている、
前記請求項1に記載の電動車両の下部構造。
【請求項3】
前記テールパイプの排出口は、下方を向いている、
請求項2に記載の電動車両の下部構造。
【請求項4】
前記エンジンは、発電用のエンジンである、
請求項2または3に記載の電動車両の下部構造。
【請求項5】
前記排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサおよび第2排気サイレンサを備え、
前記下部構造は、前記第1排気サイレンサおよび前記第2排気サイレンサを接続する接続パイプをさらに備え、
前記テールパイプは、前記第1排気サイレンサと前記第2排気サイレンサの間であって、前記接続パイプよりも下方の位置に配置されている、
請求項2~4のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項6】
前記排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサおよび第2排気サイレンサを備え、
前記下部構造は、前記第1排気サイレンサおよび前記第2排気サイレンサを接続する接続パイプと、前記フロアパネルの下方に配置された電気部品とをさらに備え、
前記テールパイプは、前記第1排気サイレンサと前記第2排気サイレンサの間であって、前記車幅方向において前記接続パイプにおける前記電気部品と反対側に配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項7】
前記バッテリおよび前記燃料タンクは、車幅方向に並んで配置されている、
前記請求項1~6のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項8】
複数の前記排気サイレンサを有し、
前記複数の排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置され、
前記テールパイプは、少なくとも1つの前記排気サイレンサより車両前方に配置されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造。
【請求項9】
複数の前記排気サイレンサを有し、
前記複数の排気サイレンサのうち最も車両後方側の排気サイレンサは、車両前方側に1つの開口を有する共鳴器の構成を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータで走行する電動車両において、航続距離を延ばすためにエンジンルームに発電用のエンジン(以下、発電エンジン)を備えた車両がある。このような電動車両では、モータおよびバッテリが搭載されているので、発電エンジンの排気系のレイアウト、とくに排気サイレンサおよびテールパイプの配置が問題になる。そこで、従来の電動車両には、バッテリなどの熱害を回避するために、排気サイレンサおよびテールパイプについて様々な配置が取られている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の電動車両では、車体前部のエンジンルームに発電エンジンが収容された構造において、排気サイレンサおよびテールパイプを含む排気系の部品がエンジンルームの後壁を構成するダッシュパネルの前側下方に配置されている。この構造では、テールパイプ等がダッシュパネル後方に位置するバッテリから離間して配置されていることにより、バッテリの熱害を回避する。
【0004】
また、特許文献2記載の電動車両は、車両前部のエンジンルームに配設された発電エンジンと、車両下部のフロアパネルにおいて車両前後方向に延びるフロアトンネル内に配設された排気サイレンサと、リアフロアパネルの下方に車幅方向に互いに並ぶように配設されたバッテリおよび燃料タンクと、車両後端に配設されたテールパイプと、排気サイレンサとテールパイプとを接続する排気パイプとを備えている。排気パイプは、排気サイレンサから後方に延び、燃料タンクまたはバッテリから離間するように当該燃料タンクまたはバッテリの側方(すなわち、燃料タンクまたはバッテリに対して車幅方向にずれた位置)を通ってテールパイプに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-23302号公報
【特許文献2】特開2011-148445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の電動車両は、フロアパネル下のバッテリなどの部品のレイアウトを考慮して、テールパイプを含む排気系がダッシュパネルの前側下方に配置された構造である。この構造では、排気サイレンサの容量を大きくするとエンジンルーム内の他の部品のレイアウトが制約されることが懸念されるので、排気サイレンサの容量確保が難しい。
【0007】
また、特許文献2記載の電動車両のように、排気サイレンサとテールパイプとを接続する排気パイプがタンクまたはバッテリの側方を延びるように配置された構造では、バッテリおよび燃料タンクは、排気パイプから発生する熱を避けるために当該排気パイプから距離を空けて配置される必要がある。このため、バッテリおよび燃料タンクのうちのいずれかの容量を減らしてしまうことが懸念され、バッテリおよび燃料タンクの容量確保が難しい。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、排気サイレンサの容量確保とバッテリおよび燃料タンクの容量確保とを両立することが可能な電動車両の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の電動車両の下部構造は、車両前部のエンジンルームにエンジンが収容された電動車両の下部構造であって、前記エンジンルームの車両後方側に配置されたフロアパネルと、前記フロアパネルの後方または後部下方に配置されたバッテリおよび燃料タンクと、前記エンジンから排出された排気ガスの消音を行う少なくとも1つの排気サイレンサと、前記排気サイレンサを通過した前記排気ガスを車両外部に排出するテールパイプとを備え、前記排気サイレンサおよび前記テールパイプは、前記フロアパネルの下方であるとともに車両前後方向において前記エンジンと前記バッテリおよび前記燃料タンクとの間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、排気サイレンサおよびテールパイプは、フロアパネルの下方であるとともに車両前後方向においてエンジンとバッテリおよび燃料タンクとの間に配置されている。したがって、排気サイレンサは、フロアパネルの下方においてエンジン、バッテリ、および燃料タンクと干渉することなく配置することが可能になり、排気サイレンサの容量確保が可能になる。また、テールパイプがフロアパネルの下方においてバッテリおよび燃料タンクの前方に退避しているので、バッテリおよび燃料タンクは、テールパイプで発生する熱の影響を受けにくくなるので、当該バッテリおよび燃料タンクの容量確保が可能になる。その結果、排気サイレンサの容量確保とバッテリおよび燃料タンクの容量確保とを両立することが可能になる。
【0011】
上記の電動車両の下部構造において、前記フロアパネルは、前記車両前後方向に延びるとともに前記フロアパネルの下方に開放された空間を有するように前記フロアパネルの上方に突出するフロアトンネルを備え、前記排気サイレンサおよび前記テールパイプの少なくとも一部は、前記フロアトンネルに収容されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、排気サイレンサおよびテールパイプの少なくとも一部をフロアパネルの下面よりも上方に配置することが可能になり、排気サイレンサの容量を大きく確保することが可能になる。しかも、排気サイレンサおよびテールパイプが車両走行中に地面などと干渉するおそれを低減することが可能である。
【0013】
上記の電動車両の下部構造において、前記テールパイプの排出口は、下方を向いているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、車両停車中におけるフロアトンネル内への排気ガスの流入を抑制することが可能である。
【0015】
上記の電動車両の下部構造において、前記エンジンは、発電用のエンジンであるのが好ましい。
【0016】
発電用のエンジンは、車輪駆動用のエンジンと比較して排気量が小さくて済むので、フロアトンネル内に収容された排気サイレンサおよびテールパイプを用いても発電用のエンジンから排出される排気ガスの消音ならびに排気を十分に行うことが可能である。
【0017】
上記の電動車両の下部構造において、前記排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサおよび第2排気サイレンサを備え、前記下部構造は、前記第1排気サイレンサおよび前記第2排気サイレンサを接続する接続パイプをさらに備え、前記テールパイプは、前記第1排気サイレンサと前記第2排気サイレンサの間であって、前記接続パイプよりも下方の位置に配置されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、テールパイプとフロアトンネルとの間の距離を確保することが可能である。これにより、テールパイプから排出される排気ガスによるフロアトンネルの熱害を抑制することが可能である。
【0019】
上記の電動車両の下部構造において、前記排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサおよび第2排気サイレンサを備え、前記下部構造は、前記第1排気サイレンサおよび前記第2排気サイレンサを接続する接続パイプと、前記フロアパネルの下方に配置された電気部品とをさらに備え、前記テールパイプは、前記第1排気サイレンサと前記第2排気サイレンサの間であって、前記車幅方向において前記接続パイプにおける前記電気部品と反対側に配置されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、テールパイプは、第1排気サイレンサと第2排気サイレンサの間であって、車幅方向において接続パイプにおける前記電気部品と反対側に配置されているので、テールパイプと電気部品との間の距離を確保することが可能である。しかも、テールパイプから排出される排気ガスが電気部品へ向かうことを接続パイプによって抑制することが可能である。これにより、テールパイプから排出される排気ガスによる電気部品の熱害を抑制することが可能である。
【0021】
上記の電動車両の下部構造において、前記バッテリおよび前記燃料タンクは、車幅方向に並んで配置されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、排気サイレンサおよびテールパイプの設置スペースを考慮することなく、バッテリおよび燃料タンクをフロアパネルの後方または後部下方において互いに近接するとともに車幅方向両側の車体構成部品(リアサイドフレームなど)に近接して配置することが可能になる。その結果、バッテリおよび燃料タンクの容量をより大きく確保することが可能になる。
【0023】
上記の電動車両の下部構造において、複数の前記排気サイレンサを有し、前記複数の排気サイレンサは、前記車両前後方向に互いに間隔を空けて配置され、前記テールパイプは、少なくとも1つの前記排気サイレンサより車両前方に配置されているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、テールパイプが少なくとも1つの前記排気サイレンサより車両前方に配置されているので、テールパイプとバッテリおよび燃料タンクとの間の距離を大きく確保することが可能である。しかも、テールパイプから排出される排気ガスがバッテリおよび燃料タンクへ向かうことをテールパイプ後方に位置する少なくとも1つの排気サイレンサによって抑制することが可能である。これにより、テールパイプから排出される排気ガスによるバッテリおよび燃料タンクの熱害を抑制することが可能である。
【0025】
上記の電動車両の下部構造において、複数の前記排気サイレンサを有し、前記複数の排気サイレンサのうち最も車両後方側の排気サイレンサは、車両前方側に1つの開口を有する共鳴器の構成を有するのが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、最も車両後方側の排気サイレンサが車両前方側に1つの開口を有する共鳴器の構成を有するので、当該共鳴器内部で発生する排気ガスの振動の共鳴を用いて消音効果を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電動車両の下部構造によれば、排気サイレンサの容量確保とバッテリおよび燃料タンクの容量確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る電動車両の下部構造の全体構成を示す下面図である。
図2図1のエンジンおよびその周辺部分を車両前方から見た正面図である。
図3図1の第1~2排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の拡大図である。
図4図3の第1~2排気サイレンサ、テールパイプおよび第1~2接続パイプの斜視図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】本発明の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~2排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の拡大図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8】本発明の他の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~2排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の拡大図である。
図9図8の第1~2排気サイレンサ、テールパイプおよび第1~2接続パイプの斜視図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11】本発明のさらに他の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~3排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の断面説明図である。
図12】本発明のさらに他の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~3排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の断面説明図である。
図13】本発明のさらに他の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~2排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の断面説明図である。
図14】本発明のさらに他の変形例に係る電動車両の下部構造の第1~2排気サイレンサおよびテールパイプおよびその周辺部分の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0030】
図1~3および図5に示される電動車両1は、車両前部(車両前方側X1)のエンジンルーム2には発電用のエンジン11、発電機14および車両駆動用のモータ15が収容され、車両後部(車両後方側X2)のリアフロアパネル10の下方Z2にはバッテリ17および燃料タンク18が配置された構造を有している。
【0031】
図1~3および図5に示される電動車両1は、モータ15の駆動力によってタイヤ33(図2参照)を回転して走行する電気自動車である。なお、本発明の電動車両は、電気自動車のみに限定されるものではなく、モータ15とエンジンの駆動力を併用して走行するハイブリッド車も含む。
【0032】
具体的には、電動車両1は、車体を構成する部品として、図1~2に示されるように、車幅方向Yに離間する一対のフロントサイドフレーム3と、フロントサイドフレーム3の後端同士を連結するように車幅方向Yに延びるダッシュパネル5と、ダッシュパネル5の車両後方側X2に配置されたフロアパネル6と、フロアパネル6の車両後方側X2に配置されたリアフロアパネル10と、リアフロアパネル10の車幅方向Yの両側に配置されて車両前後方向Xに延びる一対のリアサイドフレーム4とを備える。
【0033】
エンジンルーム2は、一対のフロントサイドフレーム3とダッシュパネル5によって形成されている。フロアパネル6は、エンジンルーム2の車両後方側X2に配置されている。
【0034】
フロアパネル6は、車両前後方向Xに延びるとともにフロアパネル6の下方Z2に開放された空間8を有するようにフロアパネル6の上方Z1に突出するフロアトンネル9(図1、3、および5参照)を備える。
【0035】
フロアパネル6の後方または後部下方には、バッテリ17および燃料タンク18が配置されている。バッテリ17および燃料タンク18は、フロアパネル6の車両後方側X2において車幅方向Yに並んで配置されている。なお、本発明における「バッテリ17および燃料タンク18が車幅方向Yに並んで配置されている」状態とは、バッテリ17および燃料タンク18が車両前後方向Xにおいて少なくとも一部が重なるように車幅方向Yに並んでいる状態を意味するものであり、車両前後方向Xにおいて完全に重なっている状態だけでなく、車両前後方向Xに多少ずれた状態も含まれる。
【0036】
バッテリ17は、発電機14および停車時の外部電源(図示せず)から供給される電気を蓄える。燃料タンク18は、発電用のエンジン11で使用される燃料を貯留する。
【0037】
本実施形態では、バッテリ17および燃料タンク18は、フロアパネル6の後方においてリアフロアパネル10の下方Z2に配置されている。フロアパネル6、リアフロアパネル10、バッテリ17および燃料タンク18は、車両1の下部構造の一部を構成している。
【0038】
なお、本発明の下部構造では、リアフロアパネル10は必須構成要素ではなく、省略してもよい。その場合、フロアパネル6の後部を車両後方X2に延長することにより、フロアパネル6の後部下方にバッテリ17および燃料タンク18を配置するようにすればよい。
【0039】
図1~2に示されるように、エンジンルーム2内には、主要な構成として、エンジン11と、発電機14およびモータ15を含む電気系ユニット12とが車幅方向Yに並んで互いに連結された状態で収容されている。
【0040】
エンジン11は、発電機14を駆動する発電用のエンジンである。エンジン11は、種々の形態のエンジンを採用することが可能であるが、エンジン11としてロータリーエンジンを採用すれば、小型、高出力であり、かつ振動や騒音が低い点で好ましい。
【0041】
図1~2に示されるエンジン11は、車両前後方向Xにおいて当該エンジン11の車両前方側X1に開口する排気ポート(図示せず)が形成された前方排気のエンジンである。排気ポートには、排気マニホールド30が接続されている。排気マニホールド30は、エンジン11の車幅方向Yの側面(具体的には、電気系ユニット12から遠い方の側Y1の側面)に沿って延びて、エンジン11の車両後方側X2に配置された排気浄化装置21に接続されている。
【0042】
排気浄化装置21は、排気マニホールド30を介して送られてきたエンジン11の排気ガスを浄化する機能を有しており、具体的には、白金やパラジウムなどの金属の触媒を含むフィルタなどを備える。
【0043】
図2に示されるように、本実施形態では、カバー部材40が、排気マニホールド30から離間して排気マニホールド30の周囲を取り囲むように配置されている。カバー部材40は、車両前方X1からエンジン11に向かう空気を排気マニホールド30に沿って案内する通風路41を形成する。
【0044】
カバー部材40の導入口42は、図2に示されるように、車両前方側X1から空気が流入可能な向きおよび位置に開口しており、車両走行時において走行風およびファン31によって発生する風による空気流れWを導入することが可能である。ファン31は、その周囲をシュラウド32に取り囲まれた状態で、エンジンルーム2よりも車両前方側X1に配置されている。ファン31としては、車両1のラジエータやコンデンサ(図示せず)などの冷却用に用いられる既存のファンが用いられる。
【0045】
図2に示されるように、エンジン11の上部には、吸気系の構成要素として、一端がエンジン11の吸気口(図示せず)に接続された吸気マニホールド43と、吸気マニホールド43の他端に接続されたエアクリーナボックス44とが配置されている。エンジン11の下部には、エンジン11の潤滑用のオイルを貯留するオイルパン20が設けられている。
【0046】
図1~2に示されるように、電気系ユニット12は、第1減速機13と、発電機14と、モータ15と、第2減速機16とを備える。第1減速機13は、発電用のエンジン11が発生する回転駆動力を減速して発電機14に伝達する。発電機14は、第1減速機13で減速された回転駆動力を受けて発電を行う。発電機14で発電した電気は、車両後方側X2のバッテリ17に充電されるかまたはモータ15へ直接供給される。モータ15は、車両1の走行状態に応じて発電機14から供給される電流およびバッテリ17から供給される電流のうちの少なくとも1つが供給されることによって、回転駆動する。第2減速機16は、モータ15が発生する回転駆動力を減速して図示しない駆動軸に伝達する。駆動軸に伝達された回転駆動力によって、タイヤ33(図2参照)を回転することが可能である。
【0047】
図1および図3~5に示されるように、本実施形態の車両1の下部構造は、エンジン11の排気系の構成要素として、上記の排気浄化装置21(図1参照)の下流側端部に接続された第1接続パイプ22と、少なくとも1つの排気サイレンサ(すなわち、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25)と、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25とを接続する第2接続パイプ24と、テールパイプ26とを備えている。
【0048】
第1排気サイレンサ23は、第1接続パイプ22の車両後方側X2の端部に接続されている。第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、車両前後方向Xに互いに間隔を空けて配置され、第2接続パイプ24を介して連通している。
【0049】
図1に示されるように、第1排気サイレンサ23、第2排気サイレンサ25、第2接続パイプ24、テールパイプ26は、フロアパネル6の下方Z2であるとともに車両前後方向Xにおいてエンジン11とバッテリ17および燃料タンク18との間に配置されている。
【0050】
さらに具体的には、図1図3、および図5に示されるように、第1排気サイレンサ23、第2排気サイレンサ25、第2接続パイプ24、およびテールパイプ26は、フロアパネル6の下方Z2において、フロアトンネル9の空間8に収容されている。
【0051】
図1および図3に示されるように、フロアトンネル9内部の車両前後方向Xの中間位置には、フロアトンネル9ならびに車体全体を補強するための補強部材7が設けられている。フロアトンネル9の内部において、車両前後方向Xにおける補強部材7の位置には、第2接続パイプ24およびテールパイプ26が配置され、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25が補強部材7から車両前方側X1および後方側X2に離間している。このため、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、フロアトンネル9内部において、補強部材7と干渉するおそれがないので、当該排気サイレンサ23、25の容量を大きくすることが可能である。
【0052】
第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、エンジン11から排出された排気ガスの消音を行うことが可能な構成を有する。
【0053】
具体的には、第1排気サイレンサ23は、図3~5に示されるように、第1接続パイプ22および第2接続パイプ24の内径よりも大きい断面積を有する空間部を有し、排気ガスが第1接続パイプ22、第1排気サイレンサ23、および第2接続パイプ24を通過するときの流路の急縮小および急拡大による圧力損失を用いて消音を行うことが可能である。
【0054】
第2排気サイレンサ25は、図5に示されるように、2つの空間部25a、25bを仕切る仕切り壁25cを有する。仕切り壁25cは、2つの空間部25a、25bの間の排気ガスの流通を許容する開口(図示せず)を有する。2つの空間部25a、25bのうち車両前方側X1の空間部25bは、第2接続パイプ24に連通する。車両前方側X1の空間部25bは、仕切り壁25cに形成された開口(図示せず)を通して車両後方側X2の空間部25aに連通する。テールパイプ26は、第2排気サイレンサ25の車両前方側X1の壁および仕切り壁25cを貫通して車両後方側X2の空間部25aに連通している。したがって、第2排気サイレンサ25では、排気ガスが第2接続パイプ24、空間部25b、仕切り壁25cの開口(図示せず)、空間部25a、およびテールパイプ26を通過するときの流路の急縮小および急拡大による圧力損失を用いて消音を行うことが可能である。
【0055】
図1および図3~5に示されるように、テールパイプ26は、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を通過した排気ガスを車両外部に排出するパイプである。テールパイプ26は、第2排気サイレンサ25の車両前方側X1の端部から車両前方側X1に突出している。テールパイプ26は、車両前方側X1の端部において排出口26aを有する。いいかえれば、テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、第2排気サイレンサ25よりも車両前方側X1に配置されている。
【0056】
本実施形態では、テールパイプ26の排出口26aは、下方Z2を向いているため、排出口26aから車両外部に排出された排気ガスG(図4参照)がフロアトンネル9の空間8に流入しにくい。
【0057】
また、本実施形態のテールパイプ26は、図4に示されるように、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、第2接続パイプ24よりも下方Z2の位置に配置されている。さらに、具体的には、テールパイプ26は、第2接続パイプ24に対して斜め下方、すなわち、下方Z2であるとともに車幅方向Yにずれた位置に配置されている。
【0058】
また、本実施形態の車両1の下部構造は、図1および図3に示されるように、フロアパネル6の下方Z2に配置された電気部品19をさらに備えている。電気部品19は、例えば、エンジンや空調装置に供給する水を温めるヒータ(例えば、PTCヒータ)やバッテリ制御ユニットなどである。
【0059】
上記のように電気部品19がフロアパネル6の下方Z2に配置されている構成では、テールパイプ26から排出される排気ガスによる電気部品19の熱害を抑制するために、テールパイプ26は、図1および図3に示されるように、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、車幅方向Yにおいて第2接続パイプ24における電気部品19と反対側Y2に配置されている。
【0060】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の電動車両1の下部構造は、車両前部のエンジンルーム2にエンジン11が収容された電動車両1の下部構造である。この下部構造は、エンジンルーム2の後方または後部下方に車両後方側X2に配置されたフロアパネル6と、フロアパネル6の車両後方側X2に配置されたバッテリ17および燃料タンク18と、エンジン11から排出された排気ガスの消音を行う少なくとも1つの排気サイレンサ、本実施形態では第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25と、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を通過した排気ガスを車両外部に排出するテールパイプ26とを備える。
【0061】
図1図3および図5に示されるように、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26は、フロアパネル6の下方Z2であるとともに車両前後方向Xにおいてエンジン11とバッテリ17および燃料タンク18との間に配置されている。
【0062】
かかる構成によれば、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26は、フロアパネル6の下方Z2であるとともに車両前後方向Xにおいてエンジン11とバッテリ17および燃料タンク18との間に配置されている。したがって、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、フロアパネル6の下方Z2においてエンジン11、バッテリ17、および燃料タンク18と干渉することなく配置することが可能になり、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25の容量確保が可能になる。また、テールパイプ26がフロアパネル6の下方Z2においてバッテリ17および燃料タンク18の車両前方側X1に退避しているので、バッテリ17および燃料タンク18は、テールパイプ26で発生する熱の影響を受けにくくなるので、当該バッテリ17および燃料タンク18の容量確保が可能になる。その結果、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25の容量確保とバッテリ17および燃料タンク18の容量確保とを両立することが可能になる。
【0063】
しかも、テールパイプ26がバッテリ17および燃料タンク18の車両前方側X1に退避しているので、バッテリ17および燃料タンク18の熱害対策(例えば、遮熱用のインシュレータの設置など)が不要になる。
【0064】
なお、上記の(1)ならびに後述の(2)~(5)の作用効果は、少なくとも1つの排気サイレンサを備えていれば奏することが可能であり、排気サイレンサは1個でもよいし3個以上であってもよい。
【0065】
(2)
本実施形態の下部構造では、図1図3および図5に示されるように、フロアパネル6は、車両前後方向Xに延びるとともにフロアパネル6の下方Z2に開放された空間8を有するようにフロアパネル6の上方Z1に突出するフロアトンネル9を備える。第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、フロアトンネル9に収容されている。
【0066】
かかる構成によれば、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26の少なくとも一部をフロアパネル6の下面よりも上方Z1に配置することが可能になり、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25の容量を大きく確保することが可能になる。しかも、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26が車両1の走行中に地面などと干渉するおそれを低減することが可能である。
【0067】
(3)
本実施形態の下部構造では、図1および図3~5に示されるように、テールパイプ26の排出口26aは、下方Z2を向いている。かかる構成によれば、車両1の停車中におけるフロアトンネル9内への排気ガスの流入を抑制することが可能である。
【0068】
また、この構成によって、排気ガスがフロアトンネル9内を通って車両後方側X2へ流れてバッテリ17および燃料タンク18へ到達することも抑制されるので、排気ガスによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害を抑制することが可能である。
【0069】
(4)
本実施形態の下部構造では、エンジン11は、発電用のエンジンである。発電用のエンジンは、車輪駆動用のエンジンと比較して排気量が小さくて済むので、フロアトンネル9内に収容された第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26を用いても発電用のエンジンから排出される排気ガスの消音ならびに排気を十分に行うことが可能である。
【0070】
(5)
本実施形態の下部構造では、図1および図3に示されるように、バッテリ17および燃料タンク18は、車幅方向Yに並んで配置されている。
【0071】
かかる構成によれば、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25およびテールパイプ26の設置スペースを考慮することなく、バッテリ17および燃料タンク18をフロアパネル6の後方または後部下方において互いに近接するとともに車幅方向Y両側の車体構成部品(リアサイドフレーム4など)に近接して配置することが可能になる。その結果、バッテリ17および燃料タンク18の容量をより大きく確保することが可能になる。
【0072】
(6)
本実施形態の下部構造では、図1図3図5に示されるように、複数の第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、車両前後方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。
【0073】
テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、少なくとも1つの排気サイレンサ、本実施形態では第2排気サイレンサ25より車両前方X1に配置されている。
【0074】
かかる構成によれば、テールパイプ26が第2排気サイレンサ25より車両前方X1に配置されているので、テールパイプ26とバッテリ17および燃料タンク18との間の距離を大きく確保することが可能である。しかも、テールパイプ26から排出される排気ガスがバッテリ17および燃料タンク18へ向かうことをテールパイプ26の車両後方側X2に位置する第2排気サイレンサ25によって抑制することが可能である。これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害を抑制することが可能である。
【0075】
なお、排気サイレンサは、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25以外にも追加の排気サイレンサ(図11~12の第3排気サイレンサ28など)を備えていても、上記(6)ならびに後述の(7)、(8)の作用効果を奏することが可能である。
【0076】
(7)
本実施形態の下部構造では、排気サイレンサは、車両前後方向Xに互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を備えている。
【0077】
本実施形態の下部構造は、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を接続する第2接続パイプ24をさらに備える。
【0078】
図4に示されるように、テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、第2接続パイプ24よりも下方Z2の位置に配置されている。
【0079】
かかる構成によれば、テールパイプ26とフロアトンネル9との間の距離を確保することが可能である。これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによるフロアトンネル9の熱害を抑制することが可能である。
【0080】
(8)
本実施形態の下部構造では、排気サイレンサは、車両前後方向Xに互いに間隔を空けて配置された第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を備える。
【0081】
図1および図3に示されるように、下部構造は、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を接続する第2接続パイプ24と、フロアパネル6の下方Z2に配置された電気部品19とをさらに備える。
【0082】
テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、車幅方向Yにおいて第2接続パイプ24における電気部品19と反対側Y2に配置されている。
【0083】
かかる構成によれば、テールパイプ26は、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、車幅方向Yにおいて第2接続パイプ24における電気部品19と反対側Y2に配置されているので、テールパイプ26と電気部品19との間の距離を確保することが可能である。しかも、テールパイプ26から排出される排気ガスが電気部品19へ向かうことを第2接続パイプ24によって抑制することが可能である。これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによる電気部品19の熱害を抑制することが可能である。
【0084】
(9)
なお、テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、本実施形態のように、第1排気サイレンサ23と第2排気サイレンサ25の間であって、第2接続パイプ24よりも下方Z2の位置であり、かつ、車幅方向Yにおいて第2接続パイプ24における電気部品19と反対側Y2に配置されているのが好ましい。これにより、上記(7)、(8)の作用効果を両方奏することが可能である。
【0085】
(変形例)
(A)
図1~5に示される上記実施形態では、電動車両1の下部構造が2個の排気サイレンサ(第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25)を備えている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の下部構造は、少なくとも1つの排気サイレンサを備えていればよく、以下の図6~7に示される変形例のように1つの排気サイレンサ(第1排気サイレンサ23)を備えた構造であってもよい。
【0086】
具体的には、図6~7に示される変形例の電動車両1の下部構造は、上記の第1接続パイプ22、第1排気サイレンサ23、およびテールパイプ26のみ備えている。第1排気サイレンサ23およびテールパイプ26は、フロアパネル6のフロアトンネル9内部に収容され、バッテリ17および燃料タンク18よりも車両前方側X1に位置している。このため、第1排気サイレンサ23の容量確保とバッテリ17および燃料タンク18の容量確保との両立が可能である。
【0087】
図6~7に示される変形例の第1排気サイレンサ23は、高さ(上下方向Zの長さ)が幅(車幅方向Y)よりも長い略直方体形状を有しており、フロアトンネル9の空間8内部において大きい容積を確保することが可能である。さらに、この第1排気サイレンサ23の車両後方側X2の部分23Aは、補強部材7よりも車両後方側X2に延びることにより、第1排気サイレンサ23の容積を拡大している。さらに、この部分23Aは、補強部材7と車両前後方向Xで重なる部位で高さおよび幅が小さくなっており、補強部材7との干渉を防止している。
【0088】
また、変形例の第1排気サイレンサ23は、図7に示されるように、2つの空間部23a、23bを仕切る仕切り壁23cを有する。仕切り壁23cは、2つの空間部23a、23bの間の排気ガスの流通を許容する開口(図示せず)を有する。第1接続パイプ22は、第1排気サイレンサ23の車両前方側X1の壁および仕切り壁23cを貫通して(すなわち、車両前方側X1の空間部23bの内部を通って)、車両後方側X2の空間部23aに連通する。車両後方側X2の空間部23aは、仕切り壁23cに形成された開口(図示せず)を通して車両前方側X1の空間部23bに連通する。テールパイプ26は、第1接続パイプ22の下方Z2に配置され、第1排気サイレンサ23の車両後方側X2の壁および仕切り壁23cを貫通して車両前方側X1の空間部23bに連通している。テールパイプ26の車両後方側X2の端部には排出口26aが形成されている。
【0089】
したがって、第1排気サイレンサ23では、排気ガスが第1接続パイプ22、空間部23a、仕切り壁23cの開口(図示せず)、空間部23b、およびテールパイプ26を通過するときの流路の急縮小および急拡大による圧力損失を用いて消音を行うことが可能である。
【0090】
図6~7に示される変形例の下部構造では、テールパイプ26(具体的には、排出口26aが設けられた部分)は、第1排気サイレンサ23の車両後方側X2に配置されているが、バッテリ17および燃料タンク18から車両前方側X1に離間しているので、排気ガスによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害を抑制することが可能である。
【0091】
また、この図6~7の変形例では、テールパイプ26は、第1接続パイプ22よりも下方Z2の位置に配置されているので、テールパイプ26とフロアトンネル9との間の距離を確保することが可能であり、これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによるフロアトンネル9の熱害を抑制することが可能である。また、この図6~7の変形例においても、テールパイプ26の排出口26aが下方Z2を向いているので、車両1の停車中におけるフロアトンネル9内への排気ガスの流入を抑制することが可能である。
【0092】
(B)
図8~10に示される変形例の電動車両1の下部構造は、図1~5に示される上記実施形態と比較して、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25が高さ(上下方向Zの長さ)が幅(車幅方向Yの長さ)よりも長い形状、具体的には縦長の楕円形断面の筒状の中空体である点、およびテールパイプ26が第2接続パイプ24の真下に位置している点で異なっている。このように、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、縦長の楕円形断面の筒状の中空体であるので、フロアトンネル9の空間8内部において大きい容積を確保することが可能である。
【0093】
図8~10に示される変形例においても、図1~5に示される実施形態と同様に、テールパイプ26が第2排気サイレンサ25より車両前方X1に配置されているので、テールパイプ26とバッテリ17および燃料タンク18との間の距離を大きく確保することが可能である。しかも、テールパイプ26から排出される排気ガスがバッテリ17および燃料タンク18へ向かうことをテールパイプ26の車両後方側X2に位置する第2排気サイレンサ25によって抑制することが可能である。これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害を抑制することが可能である。
【0094】
また、テールパイプ26は、第2接続パイプ24よりも下方Z2の位置に配置されているので、テールパイプ26とフロアトンネル9との間の距離を確保することが可能である。これにより、テールパイプ26から排出される排気ガスによるフロアトンネル9の熱害を抑制することが可能である。しかも、図8~10に示されるテールパイプ26は第2接続パイプ24の真下に配置されているので、第2接続パイプ24によって排気ガスがフロアトンネル9へ向かう流れを妨げるので、フロアトンネル9の熱害を抑制する効果が向上している。
【0095】
また、この図8~10の変形例においても、テールパイプ26の排出口26aが下方Z2を向いているので、車両1の停車中におけるフロアトンネル9内への排気ガスの流入を抑制することが可能である。
【0096】
図10の変形例の第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、縦長の大容量の中空体であるので、これらの内部を複数の空間部に仕切ることによって消音効果を向上している。具体的には、第1排気サイレンサ23は、それぞれ開口を有する2枚の仕切り壁23d、23eによって3個の空間部23a、23b、23cに仕切られている。また、第2排気サイレンサ25は、開口を有する1枚の仕切り壁25cによって2つの空間部25a、25bに仕切られている。
【0097】
(C)
図11~12に示される変形例の電動車両1の下部構造は、上記(B)の図8~10に示される変形例にさらに共鳴器構造の第3排気サイレンサ28を追加した構造である。第3排気サイレンサ28は、テールパイプ26が取り付けられた第2排気サイレンサ25よりも車両後方側X2に配置され、車両前方側X1にのみ開口28aを有する共鳴器の構造を有する中空体である。
【0098】
図11~12に示される変形例の下部構造は、具体的には、複数の排気サイレンサとして、3個の排気サイレンサ(第1排気サイレンサ23、第2排気サイレンサ25、第3排気サイレンサ28)を備え、最も車両後方側X2の第3排気サイレンサ28が車両前方X1側に1つの開口28aを有する共鳴器の構成を有する。この構成により、共鳴器である第3排気サイレンサ28の内部で発生する排気ガスの振動の共鳴を用いて消音効果を向上させることが可能である。
【0099】
図11~12に示される第3排気サイレンサ28は、車両前方側X1の第2排気サイレンサ25とは1本の第3接続パイプ27のみを介して連通している。第3接続パイプ27は、第3排気サイレンサ28の車両前方側X1の開口28aに接続されている。
【0100】
図11~12に示される変形例の下部構造では、第2排気サイレンサ25の車両後方側X2には、第3排気サイレンサ28が配置されているので、第2排気サイレンサ25の車両前方側X1または車両後方側X2に突出するようにテールパイプ26が取り付けられていても、テールパイプ26と燃料タンク18(またはバッテリ17)との間には第3排気サイレンサ28が介在する。第3排気サイレンサ28は、1つの開口8aのみを有する共鳴器の構成を有する中空体であり、第3排気サイレンサ28内部での排気ガスの流れがほとんど無いので、他の排気サイレンサ23、25と比較して排気ガスの熱によって昇温しにくい。この構造では、共鳴器の構成を有する第3排気サイレンサ28が遮熱用のインシュレータとして機能するので、テールパイプ26から排出される排気ガスGによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害をより効果的に抑制することが可能である。
【0101】
とくに、図12に示される変形例のように、テールパイプ26が第2排気サイレンサ25の車両前方側X1に突出し、排気ガスGが排出口26aから車両前方X1に排出する構造では、テールパイプ26を燃料タンク18(またはバッテリ17)からより車両前方側X1に遠ざけることが可能であり、しかも、テールパイプ26の排出口26aと燃料タンク18(またはバッテリ17)との間には第2排気サイレンサ25および第3排気サイレンサ28が介在する。これにより、排気ガスGによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害をより一層効果的に抑制することが可能である。
【0102】
(D)
図13に示される変形例の電動車両1の下部構造は、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25を備え、テールパイプ26が第1排気サイレンサ23の車両前方側X1の端部から車両前方側X1に突出するように取り付けられた構造を有している。この下部構造では、テールパイプ26をバッテリ17および燃料タンク18から車両前方X1へ最も遠く離間させることが可能になる。その結果、テールパイプ26の前方側端部の排出口26aから排出される排気ガスGによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害を最も効果的に抑制することが可能である。
【0103】
なお、図13に示される変形例の下部構造では、第1排気サイレンサ23および第2排気サイレンサ25は、上下一対の第2接続パイプ24によって接続されている。したがって、排気ガスは、第1接続パイプ22、第1排気サイレンサ23、上側の第2接続パイプ24、第2排気サイレンサ25、下側の第2接続パイプ24、第1排気サイレンサ23、およびテールパイプ26を通過してから外部に排出されるので、排気ガスの流路長さが非常に長くなる。このような長い流路において流路の急縮小および急拡大による圧力損失が増大することによって、消音を効果的に行うことが可能である。
【0104】
(E)
なお、図13の変形例を一部変更して、図14に示される変形例の電動車両1の下部構造のように、テールパイプ26が第1排気サイレンサ23の車両後方側X2の端部から車両後方側X2に突出するように取り付けられた構造でもよい。この場合も、上記図1~5に示される実施形態ならびに図6~12に示される変形例のようにテールパイプ26が第2排気サイレンサ25に取り付けられた構造よりも、テールパイプ26をバッテリ17および燃料タンク18から車両前方X1へ遠く離間させることが可能になる。その結果、テールパイプ26の前方側端部の排出口26aから排出される排気ガスGによるバッテリ17および燃料タンク18の熱害をより効果的に抑制することが可能である。
【0105】
また、図14に示される変形例の下部構造においても、図13に示される変形例と同様に排気ガスの流路長さが非常に長くなるので、長い流路において流路の急縮小および急拡大による圧力損失が増大することによって消音を効果的に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 車両
2 エンジンルーム
6 フロアパネル
8 空間
9 フロアトンネル
11 エンジン
12 電気系ユニット
14 発電機
15 モータ
17 バッテリ
18 燃料タンク
19 電気部品
21 排気浄化装置
22 第1接続パイプ
23 第1排気サイレンサ
24 第2接続パイプ
25 第2排気サイレンサ
26 テールパイプ
26a 排出口
27 第3接続パイプ
28 第3排気サイレンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14