(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095247
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】削孔方法、削孔装置及びコンクリート床版の切断方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208453
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501165628
【氏名又は名称】株式会社ティ・エス・プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】東 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA17
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】コンクリート床版のハンチに削孔して所定の位置に横孔を形成することができる削孔方法。
【解決手段】コンクリート床版F1のハンチh1を横方向に削孔するための削孔方法であって、横方向に向けて延びるドリルビット33と、ドリルビット33に接触されるローラー部36を有するとともにドリルビット33を保持する保持部35と、を備えた削孔装置3を用いて、ドリルビット33によりコンクリート床版F1のハンチh1を横方向に削孔して横孔4を形成する横孔削孔工程を備え、横孔削孔工程では、ドリルビット33を回転させるとともに、ローラー部26を回転させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床版のハンチを横方向に削孔するための削孔方法であって、
横方向に向けて延びるドリルビットと、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有するとともに前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備えた削孔装置を用いて、前記ドリルビットによりコンクリート床版のハンチを横方向に削孔して横孔を形成する横孔削孔工程を備え、
前記横孔削孔工程では、前記ドリルビットを回転させるとともに、前記ローラー部を回転させること
を特徴とする削孔方法。
【請求項2】
前記横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する桁に前記ドリルビットに平行に延びる棒状部材を接触させて前記ドリルビットが削孔する位置を定めた後、前記棒状部材を撤去した上で、削孔すること
を特徴とする請求項1記載の削孔方法。
【請求項3】
前記横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する桁にレーザー光を照射して、削孔すること
を特徴とする請求項1記載の削孔方法。
【請求項4】
前記横孔削孔工程では、前記ローラー部を下方から支持する第1支持部材における前記ドリルビットの基端側から先端側に向かうにつれて上方に傾斜する第1傾斜面と、コンクリート床版を支持する桁に接触される第2支持部材における第2傾斜面とを接触させ、削孔すること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の削孔方法。
【請求項5】
コンクリート床版のハンチを横方向に削孔するための削孔装置であって、
横方向に向けて延びるドリルビットと、
前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備え、
前記保持手段は、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有すること
を特徴とする削孔装置。
【請求項6】
コンクリート床版を桁から撤去するためにコンクリート床版を切断するコンクリート床版の切断方法であって、
水平方向に向けて延びるドリルビットと、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有するとともに前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備えた削孔装置を用いて、前記ドリルビットによりコンクリート床版のハンチを横方向に削孔して横孔を形成する横孔削孔工程と、
前記横孔削孔工程で形成した前記横孔にワイヤーソーを挿通して前記コンクリート床版を切断するワイヤーソー切断工程と、を備え、
前記横孔削孔工程では、前記ドリルビットを回転させるとともに、前記ローラー部を回転させること
を特徴とするコンクリート床版の切断方法。
【請求項7】
前記削孔装置が配置される側の前記ハンチとは桁を挟んで反対側のハンチに前記コンクリート床版の下面側から縦方向に切削して縦溝を形成する縦溝形成工程を備えること
を特徴とする請求項6記載のコンクリート床版の切断方法。
【請求項8】
前記コンクリート床版を上下に貫通する上下貫通孔を削孔する上下貫通孔削孔工程を備え、
前記ワイヤーソー切断工程では、前記上下貫通孔削孔工程で削孔した前記上下貫通孔にワイヤーソーを挿通して前記コンクリート床版の上面にワイヤーソーの駆動装置を載置して前記コンクリート床版を切断すること
を特徴とする請求項6又は7に記載のコンクリート床版の切断方法。
【請求項9】
前記コンクリート床版を橋軸直角方向に切断する床版橋軸直角方向切断工程と、前記床版橋軸直角方向切断工程で切断したコンクリート床版を揚重装置で上方に持ち上げて桁から引き剥がす揚重工程と、をさらに備えること
を特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載のコンクリート床版の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床版のハンチを削孔する削孔方法、削孔装置及びコンクリート床版の切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの橋梁では、車両の通行によりコンクリート床版が損傷するために、一定期間が経過すると、鋼桁などの橋桁から損傷した既設の古いコンクリート床版を撤去して新たな床版に架け替えて更新することが行われている。新たに架け替える床版は、現地で打設するRC製のコンクリート床版とする場合、予め工場等で打設したプレキャスト製のPCa床版とする場合、鋼製床版とする場合など、様々な新設床版にする場合があり得る。
【0003】
このような既設のコンクリート床版を撤去する方法としては、特許文献1の技術が開示されている。特許文献1の開示技術は、コンクリートのハンチに孔を削孔し、床版のコンクリートをジベルごとドリルで削孔することによりジベルを切断し、ジベルが切断された床版を主桁から剥離して撤去するものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の開示技術では、ハンチに接触した刃部が滑ってしまい、ハンチの所定の位置に削孔することが難しい、という問題点があった。
【0005】
また、コンクリートを削孔する削孔装置としては、特許文献2の技術が開示されている。特許文献2の開示技術は、ロッドの先端に取り付けられたビットを回転させながら、コンクリート版に衝撃を与えて削孔するものであって、昇降部のフレームの下方には保持部が取り付けられるものである。
【0006】
しかしながら、特許文献2の開示技術では、ビットの回転を安定化させることが難しく、所定の位置に削孔することが難しい、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-89302号公報
【特許文献2】特開2014-51859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コンクリート床版のハンチに削孔して所定の位置に横孔を形成することができる削孔方法、削孔装置及びコンクリート床版の切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る削孔方法は、コンクリート床版のハンチを横方向に削孔するための削孔方法であって、横方向に向けて延びるドリルビットと、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有するとともに前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備えた削孔装置を用いて、前記ドリルビットによりコンクリート床版のハンチを横方向に削孔して横孔を形成する横孔削孔工程を備え、前記横孔削孔工程では、前記ドリルビットを回転させるとともに、前記ローラー部を回転させることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る削孔方法は、第1発明において、前記横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する桁に前記ドリルビットに平行に延びる棒状部材を接触させて前記ドリルビットが削孔すべき位置を定めた後、前記棒状部材を撤去した上で、削孔することを特徴とする請求項2記載の削孔方法。
【0011】
第3発明に係る削孔方法は、第1発明において、前記横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する桁にレーザー光を照射して、削孔することを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る削孔方法は、第1発明ないし第3発明において、前記横孔削孔工程では、前記ローラー部を下方から支持する第1支持部材における前記ドリルビットの基端側から先端側に向かうにつれて上方に傾斜する第1傾斜面と、コンクリート床版を支持する桁に接触される第2支持部材における第2傾斜面とを接触させ、削孔することを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る削孔装置は、コンクリート床版のハンチを横方向に削孔するための削孔装置であって、横方向に向けて延びるドリルビットと、前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備え、前記保持手段は、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有することを特徴とする。
【0014】
第6発明に係るコンクリート床版の切断方法は、コンクリート床版を桁から撤去するためにコンクリート床版を切断するコンクリート床版の切断方法であって、水平方向に向けて延びるドリルビットと、前記ドリルビットに接触されるローラー部を有するとともに前記ドリルビットを保持する保持手段と、を備えた削孔装置を用いて、前記ドリルビットによりコンクリート床版のハンチを横方向に削孔して横孔を形成する横孔削孔工程と、前記横孔削孔工程で形成した前記横孔にワイヤーソーを挿通して前記コンクリート床版を切断するワイヤーソー切断工程と、を備え、前記横孔削孔工程では、前記ドリルビットを回転させるとともに、前記ローラー部を回転させることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係るコンクリート床版の切断方法は、第6発明において、前記傾斜の下側のハンチに前記コンクリート床版の下面側から縦方向に切削して縦溝を形成する縦溝形成工程を備えることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係るコンクリート床版の切断方法は、第6発明又は第7発明において、前記コンクリート床版を上下に貫通する上下貫通孔を削孔する上下貫通孔削孔工程を備え、前記ワイヤーソー切断工程では、前記上下貫通孔削孔工程で削孔した前記上下貫通孔にワイヤーソーを挿通して前記コンクリート床版の上面にワイヤーソーの駆動装置を載置して前記コンクリート床版を切断することを特徴とする。
【0017】
第9発明に係るコンクリート床版の切断方法は、第6発明ないし第8発明において、前記コンクリート床版を橋軸直角方向に切断する床版橋軸直角方向切断工程と、前記床版橋軸直角方向切断工程で切断したコンクリート床版を揚重装置で上方に持ち上げて桁から引き剥がす揚重工程と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第9発明によれば、ドリルビットがローラー部により保持されるため、ドリルビットがハンチに対して滑るのを抑制することができる。また、ドリルビットの回転動作をローラー部により安定化させることができる。このため、所定の位置に削孔して横孔を形成することが可能となる。
【0019】
特に、第2発明によれば、ドリルビットが削孔すべき位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビットによる削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
所定の位置に削孔して横孔を形成することが可能となる。
【0020】
特に、第3発明によれば、ドリルビットが削孔すべき位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビットによる削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
【0021】
特に、第4発明によれば、第1支持部材におけるローラー部を下方から支持する力が、第1傾斜面に接触される第2傾斜面を介して、第2支持部材から鋼桁に伝達される。このため、ドリルビットを安定して保持することできる。このため、所定の位置に削孔して横孔を形成することが可能となる。
【0022】
特に、第6発明によれば、交通規制を開始する前に、事前に準備工としてすすめることができ、交通規制下での作業を減らすことができるため、規制時間の短縮化を図ることができる。
【0023】
特に、第7発明によれば、前記削孔装置が配置される側の前記ハンチとは桁を挟んで反対側のハンチに前記コンクリート床版の下面側から縦方向に切削して縦溝を形成する縦溝形成工程を有するので、ハンチの高さが左右で違うコンクリート床版であっても横孔削孔工程で形成する横孔の削孔距離を短くすることができる。このため、第7発明によれば、コンクリート床版と桁とを短時間で容易に切断して切り離すことができる。
【0024】
特に、第8発明によれば、コンクリート床版の上面にワイヤーソーの駆動装置を載置してコンクリート床版を切断することができる。このため、第9発明によれば、ワイヤーソーの駆動装置を設置する大きなスペースを床版の下方に設ける必要がなくなり、仮設施設を低減してコンクリート床版の切断作業の作業コストを低減することができる。また、第8発明によれば、重量が重いワイヤーソーの駆動装置を落下の恐れが少ない床版上に載置するので、安全性も向上する。
【0025】
特に、第9発明によれば、揚重工程をワイヤーソー切断工程と同時並行で行うことが可能となり、ワイヤーソー切断工程で床版と桁を完全に切り離さなくても、揚重装置で持ち上げて床版に横方向の亀裂を生じさせることができる。このため、第9発明によれば、さらに短時間でコンクリート床版と桁とを切断して切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート床版の切断方法を適用する橋梁を橋軸直角方向に鉛直に切断した状態を示す鉛直横断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の縦溝形成工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る削孔装置を模式的に示す側面図であり、
図4(b)は、本発明の第1実施形態に係る削孔装置を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行う前について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行った後について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法のワイヤーソー切断工程を透視平面図で示す工程説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例に係るコンクリート床版の切断方法の上下貫通孔削孔工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【
図9】
図9は、同上のコンクリート床版の切断方法で用いるワイヤーソーの回送ルートの変形例を透視平面図で示す回送ルート説明図である。
【
図10】
図10は、同上のコンクリート床版の切断方法のワイヤーソー切断工程におけるワイヤーソー装置の設置状態を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す設置状態説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の床版橋軸直角方向切断工程を行って切断線Y1,Y2で切断され、揚重工程を行う前の状態を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の揚重工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行った後について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る削孔方法、削孔装置及びコンクリート床版の切断方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1~
図10を用いて、第1実施形態に係る削孔方法、削孔装置及びコンクリート床版の切断方法について説明する。第1実施形態に係る削孔方法では、第1実施形態に係る削孔装置を用いて、コンクリート床版のハンチを削孔して横孔を形成する。第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、鋼桁に接続される合成床版であるコンクリート床版において、コンクリート床版の横孔に挿通したワイヤーソーにより鋼桁から切断して切り離す場合を例示して説明する。
【0029】
<橋梁>
先ず、
図1,
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法を適用して床版を切断する橋梁について簡単に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法を適用する橋梁を橋軸直角方向に鉛直に切断した状態を示す鉛直横断面図であり、
図2は、
図1のA部拡大図である。
【0030】
本発明を適用する橋梁B1は、道路橋として使用される橋梁であり、
図1,
図2に示すように、4本の鋼桁G1~G4と、これらの鋼桁G1~G4の上部と図示しないスタッドジベル等のずれ止め材を介して接合された鉄筋コンクリート製の合成床版であるコンクリート床版F1など、から構成されている。また、コンクリート床版F1の両脇の縁沿いには、車止めとして地覆部W1,W2が形成され、コンクリート床版F1の上方には、アスファルト舗装などの舗装P1が敷設されている。但し、地覆部W1,W2の上方に設置される壁高欄等の施設は、省略している。
【0031】
なお、図中のX方向は、橋梁B1の鋼桁G1~G4の軸方向に沿った橋軸方向を指し、Y方向は、橋梁B1の橋軸方向Xに直交する水平方向である橋軸直角方向を指している。また、Z方向は、鉛直方向である上下方向を指している。
【0032】
通常、このような道路橋の橋梁B1には、床版F1の上面に、排水勾配が設けられており、特に、排水勾配で最下流側となる最外縁に位置する鋼桁G1の上方の床版F1は、ハンチの高さが左右でかなり違うようになっている。このため、このようなハンチの高さが左右で違うコンクリート床版F1と鋼桁G1(橋桁)の接合部分を鋼桁G1から切り離す従来の切断方法では、ドリルビットがハンチ部分で滑ってしまい、ハンチ部分を水平に削孔することがそもそも難しい。加えて、削孔する距離が中側の鋼桁(G2,G3)との接合部分より長くなり、削孔作業に時間と労力が掛かってしまうという問題があった。
【0033】
図1に示すように、本発明を適用するにあたり図示して例示した橋梁B1は、主桁の中央部分ではなく、一方の縁が高くなった排水勾配が一方向にだけ設けられた直線状の横断勾配となった橋梁となっている。勿論、中央が高く、両方の縁が低くなった拝み勾配となっている橋梁でもよい。
【0034】
また、
図2に示すように、最下流側に位置する鋼桁G1の図示右側のハンチh1の傾斜角度α(水平面となす角度、以下同じ)は、図示形態では約20.0°となっており、図示左側のハンチh2の傾斜角度βは、図示形態では約2.5°となっている。つまり、床版F1の厚さH1が160mmであった場合、右側のハンチh1のハンチ高さH2は、一般的なハンチ高さである100mmであり(tanα=100mm/250mm程度)、左側のハンチh2のハンチ高さH3は、殆どハンチの高さがなく20mm程となっている(tanβ=20mm/430mm程度)。勿論、本発明を適用することができる橋梁は、ハンチの高さが左右で違い、ハンチ間に削孔する削孔距離が長くなる場合であり、例示したハンチの傾斜角度やハンチ高さに限られない。
【0035】
[第1実施形態]
次に、
図3~
図10を用いて、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の具体的な手順について説明する。
【0036】
(縦溝形成工程)
図3は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の縦溝形成工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、先ず、
図3に示すように、コンクリート床版の下面側から縦方向に切削して縦溝を形成する縦溝形成工程を行う。
【0037】
具体的には、ウォールソーやダイヤモンドカッターなどと呼ばれる大型の回転切削装置1を用いて、コンクリート床版F1の下面側から縦方向(上下方向Z)に切削して傾斜角度が小さいハンチ高さが低いハンチh2に縦溝2を切削する。
【0038】
この縦溝2は、後述の横孔4の削孔位置の先端部に応じた所定深さの橋軸方向Xに沿った溝であり、縦溝2の切削長さは、コンクリート床版F1の橋軸直角方向Yに沿って切断する幅に応じた所定長さとする。所定深さに達したか否かの判断は、回転切削装置1に設けられている目盛の付いた棒材を有する深さ計測治具1aを用いて判断する。
【0039】
(横孔削孔工程)
本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、次に、横方向に削孔して横孔を形成する横孔削孔工程を備える削孔方法を行う。
図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る削孔装置を模式的に示す側面図であり、
図4(b)は、本発明の第1実施形態に係る削孔装置を模式的に示す正面図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行う前について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
図6は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行った後について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【0040】
横孔削孔工程では、狭隘な場所でも削孔可能な特殊な削孔装置3を用いて、傾斜角度及び高さが左右で違うハンチh1,h2において、排水勾配(傾斜)の上側のハンチの高さが高いハンチh1側から排水勾配(傾斜)の下側のハンチ高さが低いハンチh2側に向け略水平に横孔4を削孔する。
【0041】
削孔装置3は、装置本体30の中心軸であるスピンドル31がギア32を介して、スピンドル31より上方に位置するドリルビット33を回転駆動可能な構成となっている。このため、削孔装置3は、駆動力の高い(例えば、直径40mmのコアドリルを10,000回転/分程度で削孔可能な能力)径の大きな装置本体30を用いて、ハンチ高さH2が100mm程度の通常のハンチ高さであるハンチh1のような高さスペースがない狭隘な場所でも削孔が可能であり、短時間で所望深さの削孔が可能となる。また、略水平に削孔することで、最短距離で削孔することになり、その点でも短時間で削孔が可能となる。
【0042】
従来の削孔装置は、床版下面に取付けられた装置本体に接続するコアビットが計画位置より、鋼桁の上フランジに近接、又は鋼桁上フランジに接触する位置になる場合がある。原因は、一般の削孔装置は大口径コア削孔用に設計されているため、コア中心部が削孔装置の中心に近いところにあることで大口径のコア削孔を可能にしているため、装置の機械高さの影響をうけるためである。このため、従来の削孔装置は、床版下縁のより近い位置にコア上縁部を設置する必要があった。
【0043】
本発明の実施形態に係る削孔装置3は、削孔装置のコア部に偏心機能を持たせることで、床版下面から下に10mmの位置にコア上縁部を設置できる構成となっている。これによりハンチ高さが小さい環境、例えばハンチ高さが50mmであっても鋼桁の上フランジ上縁部まで40mmあることになる。
【0044】
そのため、削孔装置3は、コア削孔径の外周部がφ35mm以下であれば5mm以上の空きが確保されるため削孔可能である。しかし、少しの角度変化で鋼桁に当たる可能性があり、より小口径でコア削孔することが望まれる。よって、本実施形態に係る削孔装置3は、コア外径がφ27mmとなっており、鋼桁上フランジ上縁部まで13mmのクリアランスを確保することができる。
【0045】
勿論、削孔装置3のコア削孔径は、φ20mmがより好ましく、さらに望ましくはφ15mmである。理論上の削孔装置3のコア削孔径は、ワイヤーソーの径の太さ以上の削孔径であればワイヤーソーを設置することができる。
【0046】
削孔装置3は、床版下面に設置する。削孔装置3は、縦溝2が形成されたハンチh2と鋼桁G1を挟んで反対側のハンチh1に配置される。削孔装置3は、支持治具34に載置してその支持治具34をアンカーで床版下面に吊り下げ支持して固定する。他の設置方法としては、床版下面に吸盤で固定する方法もある。
【0047】
この支持治具34は、吊下げ状態に設置した削孔装置3の位置決め機能を有している。また、支持治具34は、載置した削孔装置3を前後に移動できる機能を有しており、削孔装置3を前後に移動して削孔後のコア内のコンクリート片を取り除くことができるようになっている。また、この支持治具34の移動機能により、コアビット延長のためのコア延長治具の装着が容易となるだけでなく、削孔装置3を上下、左右に移動させて位置調整が可能となっている。
【0048】
それに加え、支持治具34は、削孔装置3の角度調整が可能となっており、削孔装置3による水平面に対して傾斜を付けた削孔や角度を付けた方向性を持った削孔が可能となっている。この支持治具による角度調整は、赤外レーザー等で検知できる構成となっており、傾斜角度の確認や鋼桁との平行性を確保することができるようになっている。
【0049】
支持治具34は、ドリルビット33を保持する保持部35を有する。保持部35は、ドリルビット33の下側に接触されるとともに回転可能なローラー部36を一対有する。
【0050】
横孔削孔工程では、ドリルビット33を回転させるとともに、一対のローラー部36を回転させる。これにより、ドリルビット33が一対のローラー部36により下方から保持されるため、ドリルビット33がハンチh1に対して滑るのを抑制することができる。また、ドリルビット33の回転動作をローラー部36により安定化させることができる。このため、所定の位置に削孔して横孔4を形成することが可能となる。
【0051】
保持部35は、ローラー部36を下方から支持する第1支持部材37を有する。
【0052】
支持治具34は、ドリルビット33に平行に延びる棒状部材39を有する。棒状部材39は、鋼桁G1までの距離と角度を設定するためのものである。棒状部材39は、鋼棒等が用いられる。支持部材34は、棒状部材39を複数有していてもよい。
【0053】
横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する鋼桁G1にドリルビット33に平行に延びる棒状部材39を接触させてドリルビット33が削孔する位置を定めた後、棒状部材39を撤去した上で、削孔する。これにより、鋼桁G1のウェブに対するドリルビット33の位置を把握することができ、ドリルビット33が削孔する位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビット33による削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
【0054】
なお、前述の縦溝形成工程後に、横孔削孔工程を行う場合を例示して説明したが、本横孔削孔工程を行った後に縦溝形成工程を行うことも可能である。横孔削孔工程で削孔する横孔4の深さを確認し、それより鋼桁G1側に縦溝2を切削すれば結果は同じになるからである。
【0055】
(ワイヤーソー切断工程)
図7は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法のワイヤーソー切断工程を透視平面図で示す工程説明図である。本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、次に、
図7に示すように、横孔削孔工程で形成した横孔4にワイヤーソー5(チェーンソーともいう)を挿通してコンクリート床版F1を切断するワイヤーソー切断工程を行う。
【0056】
具体的には、ワイヤーソー5を回転駆動可能な駆動装置であるワイヤーソー装置50を用いて、ワイヤーソー5でコンクリート床版F1をスタッドジベルなどのずれ止め材(図示せず)ごと略水平に切削し、鋼桁G1から切り離す。
【0057】
ワイヤーソー5の回送ルートは、
図7に示すように、第1ルートR1~第4ルートR4までの同一平面上の矩形の回送ルートとなっている。ワイヤーソー装置50は、コンクリート床版F1の下方に、鋼桁G1等に支持させた仮設足場を設置し、その上にワイヤーソー装置50を固定して使用する。また、回送ルートの方向転換は、図示しないプーリー(滑車)や変換架台を用いて行っている。
【0058】
図7に示すように、第1ルートR1は、ワイヤーソー装置50からコンクリート床版F1の既切断端面F1a沿い、即ち橋軸直角方向Yに沿ったルートであり、鋼桁G1の上フランジを超えた位置に至るルートである。第2ルートR2は、第1ルートR1と略直交し、第1ルートR1の終点から橋軸方向Xに沿った横孔4のハンチh1側に至るルートである。
【0059】
そして、第3ルートR3は、第2ルートR2と略直交する横孔4内を通過するルートであり、横孔4のハンチh2側に至るルートである。第4ルートは、第3ルートR3と略直交する縦溝2内を通過するルートであり、ワイヤーソー装置50に戻るルートとなっている。
【0060】
なお、第1ルートR1は、コンクリート床版F1の橋軸直角方向Yに沿った略鉛直な既切断端面F1aに、最初に切欠きを切削加工してワイヤーソー5が引っ掛かるようにする。その際、支保工で受けて(押さえて)ワイヤーソー5がルートから脱落しないようにすると好ましい。
【0061】
本工程は、ワイヤーソー5での切削が進行するにつれて回送ルート全体が縮まって行き、最終的には、コンクリート床版F1が鋼桁G1から切り離なされることとなる。本工程の作業時間は、実際の現場において、6m×3か所を2台のワイヤーソー装置50で切断作業を行って8~9時間かかるものである。そして、本工程の終了により本実施形態に係るコンクリート床版の切断方法による床版の切断作業が完了する。
【0062】
<ワイヤーソーの回送ルートの変形例>
次に、
図8~
図10を用いて、ワイヤーソー5の回送ルートの変形例について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態の変形例に係るコンクリート床版の切断方法の上下貫通孔削孔工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図であり、
図9は、ワイヤーソーの回送ルートの変形例を透視平面図で示す回送ルート説明図である。また、
図10は、本実施形態の変形例に係るコンクリート床版の切断方法のワイヤーソー切断工程におけるワイヤーソー装置の設置状態を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す設置状態説明図である。
【0063】
(上下貫通孔削孔工程)
図8、
図9に示すように、ワイヤーソー5の変形例に係る回送ルートでワイヤーソー切断工程を実施する場合は、ワイヤーソー切断工程を実施する前にコンクリート床版F1を上下方向Zに貫通する上下貫通孔6を削孔する上下貫通孔削孔工程を行う必要がある。
【0064】
具体的には、一般的な市販のコアドリルである削孔装置7を用いて、コンクリート床版F1の上面から下面に向け上下貫通孔6を削孔する。上下貫通孔6の削孔位置は、
図8,
図9に示すように、前述の第2ルートR2と第3ルートR3との交点部分である横孔4のハンチh1側の開口部直近としている。勿論、上下貫通孔6の削孔位置は、第3ルートR3と第4ルートR4との交点部分など、ワイヤーソー装置50の設置位置に応じて適宜変更できることは云うまでもない。また、ワイヤーソー装置50を複数台用いて、切断してもよい。
【0065】
このように、上下貫通孔6を削孔して、
図8に示すように、前述の第2ルートR2と第3ルートR3との間に、第2ルートR2と直交して鉛直上方に延びる変形第2ルートR2’と、鉛直下方に延びる変形第3ルートR3’と、を設ける。これにより、ワイヤーソー5の回送ルートをコンクリート床版F1の上面を迂回して経由する回送ルートとすることができ、
図9に示すように、ワイヤーソー装置50をコンクリート床版F1の上面に設置して使用することができる。このため、コンクリート床版F1の下方に、ワイヤーソー装置50を設置固定する大きなスペースが必要で昇降の困難な仮設の架台を設ける必要がなくなる。そのため、仮設費用を低減することができるだけでなく、安全性が格段に向上する。
【0066】
なお、
図10に示す、符号51は、第2ルートR2~変形第2ルートR2’及び変形第3ルートR3’~第3ルートR3への変換架台51を示し、符号52は、防護ネット52を示している。この防護ネット52は、ワイヤーソー装置50全体を覆うネットであり、ダイヤモンドが付着している鋭利なワイヤーソー5に作業員が接触しないように防護する機能を有している。
【0067】
[第2実施形態]
次に、
図11,
図12を用いて、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法について説明する。前述の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法と相違する点は、床版橋軸直角方向切断工程と揚重工程であるので、これらの工程を主に説明し、その他の縦溝形成工程、横孔削孔工程、ワイヤーソー切断工程は、前述と同様に行うため、説明を省略する。
図11は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の床版橋軸直角方向切断工程を行って切断線Y1,Y2で切断され、揚重工程を行う前の状態を示す平面図である。
【0068】
(床版橋軸直角方向切断工程)
本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、
図11に示すように、コンクリート床版F1を橋軸直角方向Yに沿った切断線Y1及び切断線Y2で切断する床版橋軸直角方向切断工程を行う。
【0069】
具縦的には、前述の大型の回転切削装置1を用いて、
図11に示すように、コンクリート床版F1を上面から下面まで上下に貫通するとともに、橋軸直角方向Yに沿った切断線である切断線Y1で全幅に亘り切断して既切断床版F1’から切断対象床版であるコンクリート床版F1を切り離す。また、橋軸直角方向Yに沿った切断線Y2でコンクリート床版F1を全幅に亘り切断して未切断床版F1”からも切り離す。
【0070】
ここで、既切断床版F1’とは、前述の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法により、コンクリート床版F1の鋼桁G1との接合部分を略水平に既に切断されて切り離されたコンクリート床版F1を指している。また、未切断床版F1”とは、前述の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法により、鋼桁G1との接合部分を未だ切断されていないコンクリート床版F1を指している。
【0071】
なお、本工程は、前述の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法のワイヤーソー切断工程の終了後に行ってもよいし、縦溝形成工程や横孔削孔工程の実行前や同時並行で行っても構わない。要するに、後述の揚重工程前に、既切断床版F1’や未切断床版F1”から切断対象床版であるコンクリート床版F1が切断線Y1,Y2で切り離されていればよい。
【0072】
(揚重工程)
次に、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法では、
図11,12に示すように、床版橋軸直角方向切断工程で切断線Y1,Y2で切断して切り離したコンクリート床版F1を揚重装置で上方に持ち上げて鋼桁G1から引き剥がす揚重工程を行う。
図12は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の揚重工程を橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【0073】
本工程を行う前に、前述の上下貫通孔削孔工程と同様に、コンクリート床版F1を上下方向Zに貫通する上下貫通孔6’を削孔する上下貫通孔削孔工程を行う必要がある。具体的には、前述のコアドリルの径より小さい削孔装置7を用いて、コンクリート床版F1の上面から下面に向け後述の高張力鋼棒90を挿通するための上下貫通孔6’を削孔する。
【0074】
そして、揚重装置である油圧ジャッキ8の上に鋼材からなる吊上げ架台9を井桁に組んで油圧ジャッキ8で吊上げ架台9を持ち上げ、吊上げ架台9にねじ止めされた引張力を負担する引張部材である高張力鋼棒90で切断対象床版であるコンクリート床版F1を吊り上げ、鋼桁G1から引き剥がす。本工程により、ワイヤーソー切断工程でスタッドジベルなどのずれ止め鋼材等が完全に切断されていなくてもコンクリート床版F1を鋼桁G1から撤去することが可能となり、切断作業の作業時間を短縮することができる。
【0075】
図11に示すように、油圧ジャッキ8及び吊上げ架台9の基礎部91は、前述の切断線Y1,Y2を跨ぐように、既切断床版F1’と未切断床版F1”の上に、それぞれ左右一対設ける。勿論、吊上げ架台9の組み方や、油圧ジャッキ8の設置台数などは、持ち上げるコンクリート床版F1の大きさや重量に合わせて適宜設定すればよく図示形態に限られない。
【0076】
また、高張力鋼とは、鋼材メーカーにより基準が相違するが、一般的には、SS400材の引張り強度の保証値である400MPaより引張強度が高い490MPa以上となっている鋼材を指している。勿論、高張力鋼棒90の径も持ち上げるコンクリート床版F1の大きさや重量に合わせて適宜設定すればよい。
【0077】
なお、揚重装置として油圧ジャッキ8を例示して説明したが、本発明に係る揚重装置はジャッキに限られず、クレーン、門型クレーン、下からサポートで押し上げる、又はこれらの併用としてもよい。
【0078】
[第3実施形態]
次に、
図13を用いて、本発明の第3実施形態に係るコンクリート床版の切断方法について説明する。前述の第1実施形態に係るコンクリート床版の切断方法と相違する点は、支持治具34は、レーザー光照射部40を有する。
図13は、本発明の第3実施形態に係るコンクリート床版の切断方法の横孔削孔工程を行った後について、橋軸直角方向Yに沿って切断した断面図で示す工程説明図である。
【0079】
レーザー光照射部40は、鋼桁G1までの距離と角度を設定するためのものであって、赤外レーザー光を照射する。レーザー光照射部40は、H形鋼からなる鋼桁G1の上フランジの下方に配置され、鋼桁G1の上フランジの下面に赤外レーザー光を照射する。また、レーザー光照射部40は、鋼桁G1の上フランジと下フランジとを繋ぐウェブに対向して配置され、鋼桁G1のウェブの側面に、赤外レーザー光を照射する。
【0080】
横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する鋼桁G1にレーザー光照射部40によりレーザー光を照射し削孔する。これにより、ドリルビット33が削孔する位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビット33による削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
【0081】
横孔削孔工程では、H形鋼からなる鋼桁G1のウェブと上フランジとにレーザー光照射部40によりレーザー光を照射し削孔する。これにより、鋼桁G1のウェブに対するドリルビット33の位置と、鋼桁G1の上フランジに対するドリルビット33の位置と、を把握することができ、ドリルビット33が削孔する位置の精度をより高めることができる。このため、ドリルビット33による削孔作業の管理を更に容易に行うことが可能となる。
【0082】
以上述べた実施形態によれば、横孔削孔工程では、ドリルビット33を回転させるとともに、一対のローラー部36を回転させる。これにより、ドリルビット33が一対のローラー部36により下方から保持されるため、ドリルビット33がハンチh1に対して滑るのを抑制することができる。また、ドリルビット33の回転動作をローラー部36により安定化させることができる。このため、所定の位置に削孔して横孔4を形成することが可能となる。
【0083】
また、以上述べた実施形態によれば、横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する鋼桁G1にドリルビット33に平行に延びる棒状部材39を接触させて、ドリルビット33が削孔する位置を定めた後、棒状部材39を撤去した上で、削孔する。これにより、鋼桁G1のウェブに対するドリルビット33の位置を把握することができ、ドリルビット33が削孔する位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビット33による削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
【0084】
また、以上述べた実施形態によれば、横孔削孔工程では、コンクリート床版を支持する鋼桁G1にレーザー光照射部40によりレーザー光を照射し削孔する。これにより、ドリルビット33が削孔する位置の精度を高めることができる。このため、ドリルビット33による削孔作業の管理を容易に行うことが可能となる。
【0085】
また、以上述べた実施形態によれば、横孔削孔工程では、第1支持部材37における第1傾斜面37aと、第2支持部材38における第2傾斜面38aとを接触させ、削孔する。これにより、第1支持部材37におけるローラー部36を下方から支持する力が、第1傾斜面37aに接触される第2傾斜面38aを介して、第2支持部材38から鋼桁G1に伝達される。このため、ドリルビット33を安定して保持することできる。このため、所定の位置に削孔して横孔4を形成することが可能となる。
【0086】
また、以上述べた実施形態によれば、削孔装置3が配置される側のハンチh1とは鋼桁G1を挟んで反対側のハンチh2に縦溝2を形成する縦溝形成工程を有するので、ハンチの高さが左右で違うコンクリート床版F1であっても横孔削孔工程で形成する横孔4の削孔距離を短くすることができる。このため、第1実施形態及び第2実施形態に係るコンクリート床版の切断方法によれば、コンクリート床版F1と鋼桁G1とを短時間で容易に切断して切り離すことができる。
【0087】
また、以上述べた実施形態によれば、ワイヤーソー5の回送ルートは、床版上面を経由するように変更してコンクリート床版F1の上面にワイヤーソー装置50を載置してコンクリート床版F1を切断することができる。このため、ワイヤーソー装置50を設置する大きなスペースを床版の下方に設ける必要がなくなり、仮設施設を低減してコンクリート床版F1の切断作業の作業コストを低減することができる。また、重量が重いワイヤーソーの駆動装置であるワイヤーソー装置50を落下の恐れが少ない床版上に載置するので、安全性も向上する。
【0088】
それに加え、以上述べた実施形態によれば、ワイヤーソー切断工程でコンクリート床版F1と鋼桁G1を完全に切り離さなくても、揚重装置である油圧ジャッキ8で持ち上げてコンクリート床版F1に横方向の亀裂を生じさせることができる。このため、さらに短時間でコンクリート床版と桁とを切断して切り離すことができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態に係るコンクリート床版の切断方法、削孔方法、削孔装置について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0090】
特に、本発明を適用するコンクリート床版として排水勾配で最下流側となる最外縁に位置する鋼桁とコンクリート床版の接続部分を鋼桁から切断して切り離す場合を例示して説明した。しかし、
図1のB部など、排水勾配で最上流側となる最外縁に位置する鋼桁(G4)とコンクリート床版の接続部分にも本発明を適用することができる。また、
図1のC部など、排水勾配で中側の鋼桁(G2,G3)とコンクリート床版の接続部分にも本発明を適用することができる。本発明は、ハンチの高さが左右で違う部分を有するコンクリート床版や、ハンチの高さが左右で同じ部分を有するコンクリート床版にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:回転削孔装置(切削装置)
1a:深さ計測治具
2:縦溝
3:削孔装置
30:装置本体
31:スピンドル
32:ギア
33:ドリルビット
34:支持治具
35:保持部
36:ローラー部
37:第1支持部材
39:棒状部材
39a:ボルト
40:レーザー光照射部
4:横孔
5:ワイヤーソー
50:ワイヤーソー装置
51:変換架台
52:防護ネット
R1:第1ルート
R2:第2ルート
R2’:変形第2ルート
R3:第3ルート
R3’:変形第3ルート
R4:第4ルート
6,6’:上下貫通孔
7:削孔装置
8:油圧ジャッキ(揚重装置)
9:吊上げ架台
90:高張力鋼棒(引張部材)
91:基礎部
B1:橋梁
F1:コンクリート床版(切断対象床版:床版)
F1a:既切断端面
F1’:既切断床版
F1”:未切断床版
G1~G4:鋼桁(橋桁)
H1:床版の厚さ
H2,H3:ハンチ高さ
h1:(傾斜の上側の)ハンチ
h2:(傾斜の下側の)ハンチ
α,β:傾斜角度
P1:舗装
W1,W2:地覆部
X:橋軸方向
Y:橋軸直角方向
Z:上下方向