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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095248
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/56 20060101AFI20220621BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20220621BHJP
   G11C 16/34 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G11C11/56 210
G11C16/04 170
G11C16/34 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208454
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光司
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225BA01
5B225BA19
5B225CA18
5B225DB02
5B225DB09
5B225DB29
5B225DB30
5B225EA05
(57)【要約】
【課題】書き込み速度の低下を抑制し且つデータの信頼性を向上させること。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、複数のメモリセルトランジスタと、ワード線と、複数のビット線と、コントローラと、を含む。ワード線は、複数のメモリセルトランジスタに接続される。複数のビット線は、複数のメモリセルトランジスタにそれぞれ接続される。コントローラは、プログラム動作とベリファイ動作とを含むプログラムループを繰り返し実行する書き込み動作を実行する。コントローラは、第1データのベリファイ動作において、ワード線に第1データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、第1データを書き込むメモリセルトランジスタが第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定し、且つ第2データを書き込むメモリセルトランジスタが第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、閾値電圧が複数のステートのいずれかに含まれるかにより複数ビットデータを記憶することが可能であり、閾値電圧が第1ステートに含まれる場合に第1データを記憶し、閾値電圧が前記第1ステートよりも高い第2ステートに含まれる場合に第2データを記憶する、複数のメモリセルトランジスタと、
前記複数のメモリセルトランジスタに接続されたワード線と、
前記複数のメモリセルトランジスタにそれぞれ接続された複数のビット線と、
プログラム動作とベリファイ動作とを含むプログラムループの繰り返しを含む書き込み動作を実行することが可能なコントローラと、を備え、
前記複数のステート毎にベリファイロー電圧とベリファイハイ電圧とが設定され、
前記コントローラは、
前記プログラム動作において、前記ワード線にプログラム電圧が印加されている間に、第1プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に第1電圧を印加し、第2プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加し、プログラム禁止のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に前記第2電圧よりも高い第3電圧を印加し、
前記ベリファイ動作において、書き込み先のステート毎に、閾値電圧がベリファイロー電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを前記第1プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイロー電圧を超え、且つベリファイハイ電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを前記第2プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイハイ電圧を超えていると判定されたメモリセルトランジスタを前記プログラム禁止に設定し、
前記第1データのベリファイ動作において、前記ワード線に前記第1データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定し、且つ前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する、
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1ステートと前記第2ステートとは隣り合っている、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1ステートと前記第2ステートとの間に他のステートが設定される、
請求項1又は請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記複数のメモリセルトランジスタの各々は、閾値電圧が第3ステートに含まれる場合に第3データを記憶し、閾値電圧が前記第3ステートよりも高い第4ステートに含まれる場合に第4データを記憶し、
前記コントローラは、前記第3データのベリファイ動作において、前記ワード線に前記第3データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、前記第3データを書き込むメモリセルトランジスタがベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定し、且つ前記第4データを書き込むメモリセルトランジスタがベリファイロー電圧を超えているか否かを判定し、
前記第1ステートと前記第2ステートとの間に設定された他のステートの数と、前記第1ステートと前記第2ステートとの間に設定された他のステートの数とが異なる、
請求項1又は請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1データのベリファイ動作において、前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かの判定と、前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かの判定とを、同時に実行する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記複数のビット線にそれぞれ接続され、各々がセンスノードの電圧に基づいてメモリセルトランジスタの閾値電圧を判定することが可能な複数のセンス回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1データのベリファイ動作において、
前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを第1の時間放電させ、
前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを前記第1の時間よりも長い第2の時間放電させる、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記複数のビット線にそれぞれ接続され、各々がセンスノードの電圧に基づいてメモリセルトランジスタの閾値電圧を判定することが可能な複数のセンス回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1データのベリファイ動作において、
前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを第1の時間放電させ、
前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定した後、且つ前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを充電することなく、第3の時間放電させる、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記複数のビット線にそれぞれ接続され、各々がセンスノードの電圧に基づいてメモリセルトランジスタの閾値電圧を判定することが可能な複数のセンス回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1データのベリファイ動作において、
前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを第1の時間放電させ、
前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを前記第1の時間よりも短い第4の時間放電させる、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記複数のビット線にそれぞれ接続され、各々がセンスノードの電圧に基づいてメモリセルトランジスタの閾値電圧を判定することが可能な複数のセンス回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1データのベリファイ動作において、
前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを第4の時間放電させ、
前記第2データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第2データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定した後、且つ前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する前に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを充電することなく、第5の時間放電させる、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記プログラムループの繰り返しにおいて、第5データを書き込むメモリセルトランジスタの閾値電圧がベリファイハイ電圧を超えていない、且つ1つ前のプログラムループで前記第5データのベリファイロー電圧を超えているか否かが判定されていない、且つ現在のプログラムループ数が第1の数以上である場合に、前記第5データを書き込むメモリセルトランジスタを前記第2プログラム対象に設定する、
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記プログラムループの繰り返しにおいて、第6データを書き込むメモリセルトランジスタの閾値電圧がベリファイハイ電圧を超えていない、且つ1つ前のプログラムループで前記第6データのベリファイロー電圧を超えているか否かが判定されていない、且つ現在のプログラムループの時点で第7データのベリファイにパスしたメモリセルトランジスタの数が第2の数以上である場合に、前記第6データを書き込むメモリセルトランジスタを前記第2プログラム対象に設定する、
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記コントローラは、書き込み動作で1つ前のステートのプログラム動作及びベリファイ動作が実行されないステートに割り当てられた第8データのベリファイ動作において、
前記ワード線に前記第8データのベリファイロー電圧が印加されている間に、前記第8データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第8データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定し、
前記ワード線に前記第8データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、前記第8データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第8データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する、
請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
各々が閾値電圧に基づいて複数ビットデータを記憶することが可能な複数のメモリセルトランジスタと、
前記複数のメモリセルトランジスタに接続されたワード線と、
前記複数のメモリセルトランジスタにそれぞれ接続された複数のビット線と、
前記複数のビット線にそれぞれ接続され、各々がセンスノードの電圧に基づいてメモリセルトランジスタの閾値電圧を判定することが可能な複数のセンス回路と、
プログラム動作とベリファイ動作とを含むプログラムループの繰り返しを含む書き込み動作を実行することが可能なコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記プログラム動作において、前記ワード線にプログラム電圧が印加されている間に、第1プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に第1電圧を印加し、第2プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加し、プログラム禁止のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に前記第2電圧よりも高い第3電圧を印加し、
前記ベリファイ動作において、書き込み先のステート毎に、閾値電圧がベリファイロー電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを前記第1プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイロー電圧を超え、且つベリファイハイ電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを前記第2プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイハイ電圧を超えていると判定されたメモリセルトランジスタを前記プログラム禁止に設定し、
第1データのベリファイ動作において、
前記コントローラは、前記ワード線に前記第1データのベリファイロー電圧と前記第1データのベリファイハイ電圧との間の第4電圧を印加している間に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを第1の時間放電させ、前記ワード線に前記第1データのベリファイハイ電圧を印加している間に、前記複数のセンス回路のそれぞれのセンスノードを前記第1の時間よりも長い第2の時間放電させ、
前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタに接続されたセンス回路は、前記ワード線に前記第4電圧が印加されている間に、前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定し、前記ワード線に前記第1データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、前記第1データを書き込むメモリセルトランジスタが前記第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定する、
半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データを不揮発に記憶することが可能なNAND型フラッシュメモリが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4786171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
書き込み速度の低下を抑制し且つデータの信頼性を向上させること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、複数のメモリセルトランジスタと、ワード線と、複数のビット線と、コントローラと、を含む。複数のメモリセルトランジスタの各々は、閾値電圧が複数のステートのいずれかに含まれるかにより複数ビットデータを記憶することが可能である。メモリセルトランジスタは、閾値電圧が第1ステートに含まれる場合に第1データを記憶する。メモリセルトランジスタは、閾値電圧が第1ステートよりも高い第2ステートに含まれる場合に第2データを記憶する。ワード線は、複数のメモリセルトランジスタに接続される。複数のビット線は、複数のメモリセルトランジスタにそれぞれ接続される。コントローラは、プログラム動作とベリファイ動作とを含むプログラムループを繰り返し実行する書き込み動作を実行する。複数のステート毎に、ベリファイロー電圧とベリファイハイ電圧とが設定される。コントローラは、プログラム動作において、ワード線にプログラム電圧が印加されている間に、第1プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に第1電圧を印加し、第2プログラム対象のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に第1電圧よりも高い第2電圧を印加し、プログラム禁止のメモリセルトランジスタに接続されたビット線に第2電圧よりも高い第3電圧を印加する。コントローラは、ベリファイ動作において、書き込み先のステート毎に、閾値電圧がベリファイロー電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを第1プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイロー電圧を超え、且つベリファイハイ電圧以下であると判定されたメモリセルトランジスタを第2プログラム対象に設定し、閾値電圧がベリファイハイ電圧を超えていると判定されたメモリセルトランジスタをプログラム禁止に設定する。コントローラは、第1データのベリファイ動作において、ワード線に第1データのベリファイハイ電圧が印加されている間に、第1データを書き込むメモリセルトランジスタが第1データのベリファイハイ電圧を超えているか否かを判定し、且つ第2データを書き込むメモリセルトランジスタが第2データのベリファイロー電圧を超えているか否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置の構成の一例を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る半導体記憶装置が備えるメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図。
図3】第1実施形態に係る半導体記憶装置が備えるロウデコーダモジュールの回路構成の一例を示す回路図。
図4】第1実施形態に係る半導体記憶装置が備えるセンスアンプモジュールの回路構成の一例を示す回路図。
図5】第1実施形態に係る半導体記憶装置が備えるセンスアンプモジュールに含まれたセンスアンプユニットの回路構成の一例を示す回路図。
図6】第1実施形態に係る半導体記憶装置におけるデータの記憶方式の一例を示す概念図。
図7】第1実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作の概要を示すタイミングチャート。
図8】第1実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作におけるプログラムループの設定の一例を示すテーブル。
図9】第1実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作で書き込みステート毎に使用され得る2種類のベリファイ電圧2種類のプログラム方法との一例を示す閾値電圧分布図。
図10】第1実施形態に係る半導体記憶装置のプログラム動作の一例を示すタイミングチャート。
図11】第1実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブル。
図12】第1実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図13】第1実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作のより詳細な一例を示すタイミングチャート。
図14】第1実施形態の第1変形例におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブル。
図15】第1実施形態の第2変形例におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブル。
図16】第2実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図17】第2実施形態に係る半導体記憶装置における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図。
図18】第3実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図19】第4実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図20】第4実施形態に係る半導体記憶装置における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図。
図21】第5実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図22】第6実施形態に係る半導体記憶装置のプログラム動作の一例を示すフローチャート。
図23】第6実施形態の変形例におけるプログラム動作の一例を示すフローチャート。
図24】第7実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブル。
図25】第7実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作の一例を示すタイミングチャート。
図26】第7実施形態の変形例におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブル。
図27】第8実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャート。
図28】第8実施形態に係る半導体記憶装置における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は、模式的又は概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0008】
以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号が付されている。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素は文字のみを含んだ参照符号により参照される。
【0009】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、データを不揮発に記憶することが可能なNAND型フラッシュメモリの一種である。以下に、第1実施形態に係る半導体記憶装置1について説明する。
【0010】
[1-1]構成
[1-1-1]半導体記憶装置1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の構成の一例を示している。図1に示すように、半導体記憶装置1は、外部のメモリコントローラ2によって制御可能に構成される。また、半導体記憶装置1は、例えばメモリセルアレイ10、コマンドレジスタ11、アドレスレジスタ12、シーケンサ13、ドライバモジュール14、ロウデコーダモジュール15、並びにセンスアンプモジュール16を備えている。
【0011】
メモリセルアレイ10は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含む。各ブロックBLKは、データを不揮発に記憶することが可能な複数のメモリセルの集合を含む。ブロックBLKは、例えば、データの消去単位として使用される。メモリセルアレイ10には、後述される複数のビット線及び複数のワード線が設けられる。各メモリセルは、1本のビット線と1本のワード線とに関連付けられている。
【0012】
コマンドレジスタ11は、半導体記憶装置1がメモリコントローラ2から受信したコマンドCMDを記憶する。コマンドCMDは、シーケンサ13に、読み出し動作、書き込み動作、消去動作等を実行させるための命令を含む。
【0013】
アドレスレジスタ12は、半導体記憶装置1がメモリコントローラ2から受信したアドレス情報ADDを記憶する。アドレス情報ADDは、例えば、ブロックアドレスBA、ページアドレスPA、及びカラムアドレスCAを含む。ブロックアドレスBA、ページアドレスPA、及びカラムアドレスCAは、それぞれブロックBLK、ワード線、及びビット線に関連付けられている。
【0014】
シーケンサ13は、半導体記憶装置1の全体の動作を制御する。例えば、シーケンサ13は、コマンドレジスタ11に記憶されたコマンドCMDに基づいて、ドライバモジュール14、ロウデコーダモジュール15、及びセンスアンプモジュール16等を制御し、読み出し動作、書き込み動作、消去動作等を実行する。
【0015】
ドライバモジュール14は、複数の信号線を介してロウデコーダモジュール15に接続され、読み出し動作、書き込み動作、消去動作等で使用される電圧を生成する。例えば、ドライバモジュール14は、アドレスレジスタ12に保持されたページアドレスPAに基づいて選択されたワード線に接続された信号線と、他のワード線に接続された信号線とのそれぞれに、所定の電圧を印加する。
【0016】
ロウデコーダモジュール15は、ドライバモジュール14によって複数の信号線に印加された電圧を、メモリセルアレイ10に転送する。また、ロウデコーダモジュール15は、メモリセルアレイ10内で、アドレスレジスタ12に記憶されたブロックアドレスBAに関連付けられた1つのブロックBLKを選択し、選択されたブロックBLKと非選択のブロックBLKとで、互いに異なる信号線の組に印加された電圧を転送する。
【0017】
センスアンプモジュール16は、図示が省略された入出力回路を介して、メモリコントローラ2との間でデータDATを送受信する。書き込み動作において、センスアンプモジュール16は、メモリコントローラ2から受信した書き込みデータに応じた電圧を、各ビット線に印加する。読み出し動作において、センスアンプモジュール16は、メモリセルに記憶されたデータをビット線の電圧に基づいて判定し、判定結果に基づいて確定した読み出しデータをメモリコントローラ2に送信する。
【0018】
半導体記憶装置1とメモリコントローラ2との間の通信は、例えば、NANDインターフェイス規格をサポートしている。半導体記憶装置1とメモリコントローラ2との間の通信では、例えば、入出力信号I/O、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、リードイネーブル信号REn、及びレディビジー信号RBnが使用される。
【0019】
入出力信号I/Oは、例えば8ビット幅の信号であり、コマンドCMD、アドレス情報ADD、データDAT等を含み得る。コマンドラッチイネーブル信号CLEは、半導体記憶装置1が受信した入出力信号I/OがコマンドCMDであるか否かを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、半導体記憶装置1が受信した入出力信号I/Oがアドレス情報ADDであるか否かを示す信号である。ライトイネーブル信号WEnは、入出力信号I/Oの入力を半導体記憶装置1に命令するための信号である。リードイネーブル信号REnは、入出力信号I/Oの出力を半導体記憶装置1に命令するための信号である。レディビジー信号RBnは、半導体記憶装置1がレディ状態及びビジー状態のいずれであるかをメモリコントローラ2に通知する信号である。レディ状態は、半導体記憶装置1がメモリコントローラ2からの命令を受け付ける状態である。ビジー状態は半導体記憶装置1が、メモリコントローラ2からの命令を受け付けない状態である。
【0020】
尚、半導体記憶装置1及びメモリコントローラ2の組み合わせによって、1つの半導体装置が構成されても良い。このような半導体装置としては、例えばSDTMカードのようなメモリカードや、SSD(solid state drive)等が挙げられる。
【0021】
[1-1-2]半導体記憶装置1の回路構成
(メモリセルアレイ10の回路構成)
図2は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1が備えるメモリセルアレイ10の回路構成の一例を示す回路図である。図2は、メモリセルアレイ10に含まれた1つのブロックBLKを抽出して示している。図2に示すように、ブロックBLKは、例えば4つのストリングユニットSU0~SU3を含む。ブロックBLKには、複数のビット線BL0~BLm(mは1以上の整数)と、複数のワード線WL0~WL7と、複数の選択ゲート線SGD0~SGD3と、選択ゲート線SGSと、ソース線SLとが接続されている。
【0022】
各ストリングユニットSUは、複数のNANDストリングNSを含む。複数のNANDストリングNSには、互いに異なるカラムアドレスが割り当てられる。各ストリングユニットSU内の複数のNANDストリングNSは、それぞれビット線BL0~BLmに関連付けられている。各ビット線BLには、同一のカラムアドレスが割り当てられた複数のNANDストリングNSが接続される。複数のワード線WL0~WL7と、複数の選択ゲート線SGD0~SGD3と、選択ゲート線SGSとの組は、ブロックBLK毎に設けられる。ソース線SLは、複数のブロックBLK間で共有される。
【0023】
各NANDストリングNSは、メモリセルトランジスタMT0~MT7、並びに選択トランジスタST1及びST2を含む。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲート及び電荷蓄積層を含み、閾値電圧に応じてデータを不揮発に保持する。選択トランジスタSTD及びSTSのそれぞれは、読み出し動作、書き込み動作、及び消去動作等において、ストリングユニットSUの選択等に使用される。
【0024】
各NANDストリングNSにおいて、メモリセルトランジスタMT0~MT7は、直列に接続される。選択トランジスタSTDのドレインは、関連付けられたビット線BLに接続される。選択トランジスタSTDのソースは、直列に接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の一端に接続される。選択トランジスタSTSのドレインは、直列に接続されたメモリセルトランジスタMT0~MT7の他端に接続される。選択トランジスタSTSのソースは、ソース線SLに接続される。
【0025】
同一のブロックBLKに含まれたメモリセルトランジスタMT0~MT7の制御ゲートは、それぞれワード線WL0~WL7に接続される。ストリングユニットSU0に含まれた選択トランジスタSTDのゲートは、選択ゲート線SGD0に接続される。ストリングユニットSU1に含まれた選択トランジスタSTDのゲートは、選択ゲート線SGD1に接続される。ストリングユニットSU2に含まれた選択トランジスタSTDのゲートは、選択ゲート線SGD2に接続される。ストリングユニットSU3に含まれた選択トランジスタSTDのゲートは、選択ゲート線SGD3に接続される。同一のブロックBLKに含まれた選択トランジスタSTSのゲートは、選択ゲート線SGSに接続される。
【0026】
以下では、1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルトランジスタMTの集合のことを、“セルユニットCU”と呼ぶ。例えば、各々が1ビットデータを記憶する複数のメモリセルトランジスタMTを含むセルユニットCUの記憶容量が、“1ページデータ”として定義される。メモリセルトランジスタMTは、2ビットデータ以上の記憶容量を有していてもよい。セルユニットCUは、メモリセルトランジスタMTが記憶するビット数に応じて、2ページデータ以上の記憶容量を有し得る。第1実施形態では、1つのメモリセルトランジスタMTが3ビットデータを記憶する場合の構成及び動作について説明する。
【0027】
尚、メモリセルアレイ10は、その他の回路構成であっても良い。例えば、各ブロックBLKが含むストリングユニットSUの個数や、各NANDストリングNSが含むメモリセルトランジスタMT並びに選択トランジスタST1及びST2の個数は、変更されても良い。NANDストリングNSが、1つ以上のダミートランジスタを含んでいても良い。選択ゲート線SGSが、ストリングユニットSU毎に設けられても良い。
【0028】
(ロウデコーダモジュール15の回路構成)
図3は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の備えるロウデコーダモジュール15の回路構成の一例を示す回路図である。図3に示すように、ロウデコーダモジュール15は、信号線CG0~CG7、SGDD0~SGDD3、SGSD、USGD、及びUSGSを介して、ドライバモジュール14に接続される。また、ロウデコーダモジュール15は、ロウデコーダRD0~RDn(nは1以上の整数)を含む。ロウデコーダRD0~RDnは、それぞれブロックBLK0~BLKnに関連付けられている。以下に、ロウデコーダRD0に注目して、ロウデコーダRDの詳細な回路構成について説明する。
【0029】
ロウデコーダRDは、例えば、トランジスタTR0~TR17、転送ゲート線TG及びbTG、並びにブロックデコーダBDを含む。
【0030】
トランジスタTR0~TR17のそれぞれは、高耐圧なN型のMOSトランジスタである。トランジスタTR0~TR12のそれぞれのゲートは、転送ゲート線TGに接続される。トランジスタTR13~TR17のそれぞれのゲートは、転送ゲート線bTGに接続される。そして、各トランジスタTRのドレイン及びソースは、ドライバモジュール14に接続された複数の信号線のいずれかと、当該ロウデコーダRDに関連付けられたブロックBLKに接続された複数の配線のいずれかとの間に接続される。
【0031】
具体的には、トランジスタTR0のドレインは、信号線SGSDに接続される。トランジスタTR0のソースは、選択ゲート線SGSに接続される。トランジスタTR1~TR8のそれぞれのドレインは、それぞれ信号線CG0~CG7に接続される。トランジスタTR1~TR8のそれぞれのソースは、それぞれワード線WL0~WL7に接続される。トランジスタTR9~TR12のそれぞれのドレインは、それぞれ信号線SGDD0~SGDD3に接続される。トランジスタTR9~TR12のそれぞれのソースは、それぞれ選択ゲート線SGD0~SGD3に接続される。トランジスタTR13のドレインは、信号線USGSに接続される。トランジスタTR13のソースは、選択ゲート線SGSに接続される。トランジスタTR14~TR17のそれぞれのドレインは、信号線USGDに接続される。トランジスタTR14~TR17のそれぞれのソースは、それぞれ選択ゲート線SGD0~SGD3に接続される。
【0032】
ブロックデコーダBDは、ブロックアドレスBAをデコードする。そして、ブロックデコーダBDは、デコード結果に基づいて、転送ゲート線TG及びbTGのそれぞれに所定の電圧を印加する。転送ゲート線TGに印加される電圧と転送ゲート線bTGに印加される電圧とは、相補的な関係を有している。言い換えると、転送ゲート線bTGには、転送ゲート線TGに入力される信号の反転信号が入力される。
【0033】
ロウデコーダモジュール15は、ロウデコーダRD0~RDnのそれぞれのブロックデコーダBDにブロックアドレスBAが入力されることによって、ブロックBLKを選択することが出来る。例えば、読み出し動作や書き込み動作の際に、選択されたブロックBLKに関連付けられているブロックデコーダBDは、“H”レベル及び“L”レベルの電圧をそれぞれ転送ゲート線TG及びbTGに印加する。一方で、非選択のブロックBLKに関連付けられているブロックデコーダBDは、“L”レベル及び“H”レベルの電圧をそれぞれ転送ゲート線TG及びbTGに印加する。これにより、選択されたブロックBLKと非選択のブロックBLKとに、互いに異なる信号線の組に印加された電圧が転送される。
【0034】
尚、ロウデコーダモジュール15は、その他の回路構成であっても良い。例えば、ロウデコーダモジュール15が含むトランジスタTRの個数は、各ブロックBLKに設けられる配線の本数に応じて変更されても良い。信号線CGは、複数のブロックBLK間で共有されることから、“グローバルワード線”と呼ばれても良い。ワード線WLは、ブロック毎に設けられることから、“ローカルワード線”と呼ばれても良い。信号線SGDD及びSGSDのそれぞれは、複数のブロックBLK間で共有されることから、“グローバル転送ゲート線”と呼ばれても良い。選択ゲート線SGD及びSGSのそれぞれは、ブロック毎に設けられることから、“ローカル転送ゲート線”と呼ばれても良い。
【0035】
(センスアンプモジュール16の回路構成)
図4は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1が備えるセンスアンプモジュール16の回路構成の一例を示す回路図である。図4に示すように、センスアンプモジュール16は、センスアンプユニットSAU0~SAUm(mは1以上の整数)を含む。センスアンプユニットSAU0~SAUmは、それぞれビット線BL0~BLmに関連付けられている。以下に、センスアンプユニットSAU0に注目して、センスアンプユニットSAUの詳細な回路構成について説明する。
【0036】
センスアンプユニットSAUは、例えば、ビット線接続部BLHU、センスアンプ部SA、バスLBUS、並びにラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLを含む。ビット線接続部BLHUは、ビット線BLとセンスアンプ部SAとの間に接続された高耐圧なトランジスタを含む。センスアンプ部SAは、ビット線BLの電圧に基づいてメモリセルトランジスタMTの閾値電圧を判定するための回路を含む。ラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLのそれぞれは、データを一時的に記憶することが可能な回路である。
【0037】
センスアンプ部SA、並びにラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLは、バスLBUSに接続される。ラッチ回路SDL、ADL、BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLは、バスLBUSを介して、互いにデータを送受信することが出来る。ラッチ回路XDLは、半導体記憶装置1の入出力回路とセンスアンプユニットSAUとの間のデータDATの入出力に使用される。ラッチ回路XDLは、半導体記憶装置1のキャッシュメモリCMとしても使用され得る。半導体記憶装置1は、少なくともラッチ回路XDLが空いていれば、レディ状態になることが出来る。
【0038】
各センスアンプ部SAには、シーケンサ13によって生成された制御信号STBが入力される。制御信号STBがアサートされると、センスアンプ部SAは、選択されたメモリセルトランジスタMTに記憶されたデータを判定する。簡潔に述べると、センスアンプ部SAは、制御信号STBがアサートされると、関連付けられたビット線BLの電圧に応じて、バスLBUSを放電させる。そして、このときのバスLBUSの電圧に基づいたデータ(“0”又は“1”)が、バスLBUSを共有するいずれかのラッチ回路に記憶される。
【0039】
図5は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1が備えるセンスアンプモジュール16に含まれたセンスアンプユニットSAUの回路構成の一例を示す回路図である。図5に示すように、センスアンプ部SAは、トランジスタ20~27、キャパシタ28、ノードND1及びND2、並びにセンスノードSENを含む。ビット線接続部BLHUは、トランジスタ29を含む。ラッチ回路SDLは、インバータ30及び31、トランジスタ32及び33、並びにノードSINV及びSLATを含む。
【0040】
トランジスタ20は、P型のMOSトランジスタである。トランジスタ21~27のそれぞれは、N型のMOSトランジスタである。トランジスタ20のソースは、電源線に接続される。電源線には、電源電圧VDDが印加される。トランジスタ20のドレインは、ノードND1に接続される。トランジスタ20のゲートは、ノードSINVに接続される。トランジスタ21のドレインは、ノードND1に接続される。トランジスタ21のソースは、ノードND2に接続される。トランジスタ21のゲートは、ノードBLXに接続される。トランジスタ22のドレインは、ノードND1に接続される。トランジスタ22のソースは、センスノードSENに接続される。トランジスタ22のゲートは、ノードHLLに接続される。トランジスタ23のドレインは、センスノードSENに接続される。トランジスタ23のソースは、ノードND2に接続される。トランジスタ23のゲートは、ノードXXLに接続される。
【0041】
トランジスタ24のドレインは、ノードND2に接続される。トランジスタ24のゲートは、ノードBLCに接続される。トランジスタ25のドレインは、ノードND2に接続される。トランジスタ25のソースは、ノードSRCに接続される。ノードSRCには、例えば接地電圧VSSが印加される。トランジスタ25のゲートは、ノードSINVに接続される。トランジスタ26のソースは、接地される。トランジスタ26のゲートは、センスノードSENに接続される。トランジスタ27のドレインは、バスLBUSに接続される。トランジスタ27のソースは、トランジスタ26のドレインに接続される。トランジスタ27のゲートには、制御信号STBが入力される。キャパシタ28の一方電極は、センスノードSENに接続される。キャパシタ28の他方電極に、クロックCLKが入力される。
【0042】
トランジスタ29は、トランジスタ20~27のそれぞれよりも高耐圧なN型のMOSトランジスタである。トランジスタ29のドレインは、トランジスタ24のソースに接続される。トランジスタ29のソースは、ビット線BLに接続される。トランジスタ29のゲートは、ノードBLSに接続される。
【0043】
インバータ30の入力ノードは、ノードSLATに接続される。インバータ30の出力ノードは、ノードSINVに接続される。インバータ31の入力ノードは、ノードSINVに接続される。インバータ31の出力ノードは、ノードSLATに接続される。トランジスタ32及び33のそれぞれは、N型のMOSトランジスタである。トランジスタ32のソース及びドレインは、ノードSINVとバスLBUSとの間に接続される。トランジスタ32のゲートは、ノードSTIに接続される。トランジスタ33のソース及びドレインは、ノードSLATとバスLBUSとの間に接続される。トランジスタ33のゲートは、ノードSTLに接続される。ラッチ回路SDLは、ノードSLATにおいて、データを記憶する。一方で、ラッチ回路SDLは、ノードSINVにおいて、ノードSLATに記憶されたデータの反転データを記憶する。
【0044】
ラッチ回路ADL、BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLのそれぞれの回路構成は、例えば、ラッチ回路SDLと類似している。簡潔に述べると、ラッチ回路ADLは、ラッチ回路SDLにおいて、ノードSLAT及びSINVがそれぞれノードALAT及びAINVに置き換えられ、ノードSTL及びSTIがそれぞれノードATL及びATIに置き換えられた構成を有する。ラッチ回路ADLは、ノードALATにおいてデータを記憶し、ノードAINVにおいてノードALATに記憶されたデータの反転データを記憶する。ラッチ回路BDL、CDL、VLDL、VHDL、及びXDLについての説明は省略する。
【0045】
ノードBLX、HLL、XXL、BLC、BLS、STI、STL、ATL、及びATIのそれぞれは、例えば複数のセンスアンプユニットSAUの間で共有される。ノードBLX、HLL、XXL、BLC、BLS、STI、STL、ATL、及びATIのそれぞれには、シーケンサ13によって生成された制御信号が入力される。尚、センスアンプモジュール16は、その他の回路構成であっても良い。例えば、各センスアンプユニットSAUが備えるラッチ回路の個数は、1つのメモリセルトランジスタMTが記憶可能なビット数に応じて変更され得る。
【0046】
[1-1-3]データの記憶方式
図6は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1におけるデータの記憶方式の一例を示す概念図である。図6は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布と、データの割り当てと、データの読み出しに使用される電圧との一例を示している。以下で参照される閾値電圧分布図において、縦軸の“NMTs”は、メモリセルトランジスタMTの個数を示し、横軸の“Vth”は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧を示している。
【0047】
図6に示すように、1つのメモリセルトランジスタMTが3ビットデータを記憶する場合に、セルユニットCUに含まれた複数のメモリセルトランジスタMTが形成する閾値電圧分布は、8種類のステートを有し得る。以下では、この8種類のステートのことを、閾値電圧の低い方から順に、それぞれ“S0”ステート、“S1”ステート、“S2”ステート、“S3”ステート、“S4”ステート、“S5”ステート、“S6”ステート、“S7”ステートと呼ぶ。1つのメモリセルトランジスタに対して3ビットデータを記憶させる方式は、TLC(Triple-Level Cell)方式とも呼ばれる。
【0048】
メモリセルトランジスタMTが消去状態である場合に、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、“S0”ステートに含まれる。メモリセルトランジスタMTにデータが書き込まれている場合に、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、“S0”~“S7”ステートのいずれかに含まれる。“S0”~“S7”ステートのそれぞれには、互いに異なる3ビットデータが割り当てられている。隣り合う2つのステートのそれぞれにおけるデータの割り当ては、1ビットデータのみが異なるように設定されることが好ましい。以下に、8種類のステートに対するデータの割り付けの一例を羅列する。
【0049】
“S0”ステート:“111(上位ビット/中位ビット/下位ビット)”データ
“S1”ステート:“110”データ
“S2”ステート:“100”データ
“S3”ステート:“000”データ
“S4”ステート:“010”データ
“S5”ステート:“011”データ
“S6”ステート:“001”データ
“S7”ステート:“101”データ
【0050】
隣り合うステート間のそれぞれには、データの書き込みの確認に使用されるベリファイ電圧や、データの読み出しに使用される読み出し電圧が設定される。具体的には、“S0”及び“S1”ステートの間に、ベリファイ電圧V1と読み出し電圧R1とが設定される。“S1”及び“S2”ステートの間に、ベリファイ電圧V2と読み出し電圧R2とが設定される。“S2”及び“S3”ステートの間に、ベリファイ電圧V3と読み出し電圧R3とが設定される。“S3”及び“S4”ステートの間に、ベリファイ電圧V4と読み出し電圧R4とが設定される。“S4”及び“S5”ステートの間に、ベリファイ電圧V5と読み出し電圧R5とが設定される。“S5”及び“S6”ステートの間に、ベリファイ電圧V6と読み出し電圧R6とが設定される。“S6”及び“S7”ステートの間に、とベリファイ電圧V7と読み出し電圧R7が設定される。ベリファイ電圧V1~V7は、それぞれ読み出し電圧R1~R7よりも高く設定されることが好ましい。
【0051】
ベリファイ電圧V1~V7は、それぞれ“S1”~“S7”ステートに関連付けられている。書き込み動作において、半導体記憶装置1は、ベリファイ電圧を用いた読み出し動作(以下、ベリファイ読み出しと呼ぶ)によって、あるデータを記憶させたいメモリセルトランジスタMTの閾値電圧が、当該データに関連付けられたベリファイ電圧を超えたか否かを確認する。そして、シーケンサ13は、当該メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が、当該データに関連付けられたベリファイ電圧を超えたことを検知すると、当該メモリセルトランジスタMTに対するデータの書き込みを完了する。
【0052】
読み出し電圧R1は、“S0”ステートと“S1”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R2は、“S1”ステート以下と“S2”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R3は、“S2”ステート以下と“S3”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R4は、“S3”ステート以下と“S4”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R5は、“S4”ステート以下と“S5”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R6は、“S5”ステート以下と“S6”ステート以上との区別に使用される。読み出し電圧R7は、“S6”ステート以下と“S7”ステート以上との区別に使用される。また、読み出しパス電圧VREADが、最も高いステートよりも高い電圧に設定される。ゲートに読み出しパス電圧VREADが印加されたメモリセルトランジスタMTは、記憶するデータに依らずにオン状態になる。
【0053】
読み出し動作において、半導体記憶装置1は、少なくとも1つの読み出し電圧を用いて、メモリセルトランジスタMTがどのステートに分布しているのかを判定する。例えば、下位ビットデータの集合である下位ページデータは、読み出し電圧R1及びR5のそれぞれを用いた読み出し動作によって確定される。中位ビットデータの集合である中位ページデータは、読み出し電圧R2、R4及びR6のそれぞれを用いた読み出し動作によって確定される。上位ビットデータの集合である上位ページデータは、読み出し電圧R3及びR7のそれぞれを用いた読み出し動作によって確定される。複数の読み出し電圧が使用されるページの読み出し動作では、演算処理が適宜実行される。
【0054】
尚、半導体記憶装置1は、TLC方式において、その他のデータの割り当てを使用しても良い。半導体記憶装置1は、TLC方式以外の記憶方式を使用しても良く、あらゆるデータの割り当てを使用することが出来る。例えば、1つのメモリセルトランジスタMTが、2ビットデータや、4ビットデータ以上を記憶しても良い。本明細書で説明される動作は、データの記憶方式や、データの割り当ての種類に依らずに実行され得る。
【0055】
また、本明細書において、1つ前のステートは、隣り合うステートで閾値電圧の低い方のステートのことを示している。例えば、“S2”ステートの一つ前のステートは、“S1”ステートである。2つ前のステートは、2つのステートが1つのステートを挟み、当該2つのステートで閾値電圧の低い方のステートのことを示している。例えば、“S3”ステートの2つ前のステートは、“S1”ステートである。このように、2つのステートの関係は、間に配置されたステートの個数によって示されても良い。
【0056】
[1-2]動作
次に、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の動作について説明する。以下の説明では、ページアドレスPAに基づいて選択されたワード線WLのことを、“ワード線WLsel”と呼び、非選択のワード線WLのことを“ワード線WLusel”と呼ぶ。ワード線WLselに接続されたメモリセルトランジスタMTのことを、“メモリセルトランジスタMTsel”と呼ぶ。ワード線WLに対する電圧の印加は、ドライバモジュール14及びロウデコーダモジュール15によって実行される。ビット線BLに対する電圧の印加は、センスアンプユニットSAUによって実行される。
【0057】
[1-2-1]書き込み動作の概要
図7は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作の概要を示すタイミングチャートである。図7に示すように、半導体記憶装置1は、書き込み動作において、プログラムループを繰り返し実行する。図7には、書き込み動作においてプログラムループが実行された回数(以下、ループ数と呼ぶ)と、ワード線WLselの電圧変化(WLsel電圧)とが示されている。各プログラムループは、プログラム動作(Program)とベリファイ動作(Verify)とを含む。
【0058】
プログラム動作は、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧を上昇させ得る。プログラム動作において、ワード線WLselに接続された複数のメモリセルトランジスタMTselは、関連付けられたセンスアンプユニットSAUに記憶された書き込みデータに基づいて、プログラム対象(program-target)又はプログラム禁止(program-inhibit)に設定される。具体的には、書き込み目標のステート(以下、書き込みステートと呼ぶ)の閾値電圧に到達していないメモリセルトランジスタMTselが、プログラム対象に設定される。一方で、書き込みステートの閾値電圧に到達しているメモリセルトランジスタMTselが、プログラム禁止に設定される。
【0059】
プログラム動作では、ワード線WLselにプログラム電圧VPGMが印加される。プログラム電圧VPGMは、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧を上昇させることが可能な高電圧である。プログラム電圧VPGMは、例えば、プログラムループの繰り返しに応じてステップアップされる。つまり、プログラム電圧VPGMは、実行されたプログラムループの回数に応じて高くなり得る。ワード線WLselにプログラム電圧VPGMが印加されると、ワード線WLselに接続され、且つプログラム対象のビット線BLに接続されたメモリセルトランジスタMTselの閾値電圧が上昇する。一方で、ワード線WLselに接続され、且つプログラム禁止のビット線BLに接続されたメモリセルトランジスタMTselの閾値電圧の上昇は、セルフブースト技術等によって抑制される。シーケンサ13は、プログラム動作を終了すると、ベリファイ動作を実行する。
【0060】
ベリファイ動作は、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧が書き込みステートの閾値電圧に到達したか否かを確認する読み出し動作である。シーケンサ13は、同じプログラムループ内で、プログラム対象に設定され、且つベリファイ対象の書き込みステートと一致しているメモリセルトランジスタMTselを対象として、所定のベリファイ電圧を用いた読み出し動作を実行する。以下では、ベリファイ動作において実行される読み出し動作のことを、ベリファイ読み出しとも呼ぶ。
【0061】
ベリファイ読み出しでは、センスアンプユニットSAUが、ビット線BLの電圧に基づいて、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧がワード線WLselに印加されているベリファイ電圧を超えたか否かを判定する。各センスアンプユニットSAUは、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧がベリファイ電圧を超えた、すなわち書き込みステートの閾値電圧に到達したとみなせるメモリセルトランジスタMTselを、“ベリファイパス”と判定する。一方で、各センスアンプユニットSAUは、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧がベリファイ電圧以下である、すなわち書き込みステートの閾値電圧に到達していないとみなせるメモリセルトランジスタMTselを、“ベリファイフェイル”と判定する。各センスアンプユニットSAUは、以上で説明された書き込みステートのベリファイ結果を、内部のいずれかのラッチ回路に記憶させる。シーケンサ13は、ベリファイ動作が完了すると、現在のプログラムループにおけるベリファイ結果に基づいて、各メモリセルトランジスタMTselをプログラム対象又はプログラム禁止に設定し、次のプログラムループの処理を開始する。
【0062】
尚、半導体記憶装置1は、各プログラムループの後に、検出動作(“Detection”)を適宜実行し得る。検出動作では、ベリファイにパスしたメモリセルトランジスタMTの数が、書き込みステート毎にカウントされる。そして、シーケンサ13は、書き込みステート毎に、当該書き込みステートの書き込みが完了したか否かを判定する。プログラムループの繰り返しにおいて、シーケンサ13は、例えば“S1”~“S7”ステートのベリファイにパスしていないメモリセルトランジスタMTの数が所定の数を下回ったことを検知すると、書き込み動作を終了する。
【0063】
図8は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作におけるプログラムループの設定の一例を示すテーブルである。図8に示されたテーブルは、ループ数と、当該ループに割り当てられたベリファイ対象の書き込みステートとの関係を示し、ベリファイ読み出しが実行される部分に“○”が記載されている。図8に示すように、ベリファイ対象の書き込みステートの種類及び数は、プログラムループの進行に応じて変更され得る。本例では、シーケンサ13が、最大で19回のプログラムループを実行する。そして、シーケンサ13は、19回のプログラムループのそれぞれにおいて、少なくとも1種類のステートを対象としたベリファイ読み出しを実行する。
【0064】
具体的には、“S1”ステートが、1~6回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S2”ステートが、2~8回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S3”ステートが、4~10回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S4”ステートが、6~12回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S5”ステートが、8~14回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S6”ステートが、10~16回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。“S7”ステートが、12~19回目のプログラムループにおいてベリファイ対象に設定されている。
【0065】
尚、半導体記憶装置1が1回の書き込み動作で実行可能なプログラムループの回数は、その他の回数であっても良い。シーケンサ13は、全てのステートにおいて書き込みが完了していない場合にも、所定の回数のプログラムループが実行されたことに応じて書き込み動作を終了し得る。ループ数に関連付けられたベリファイ対象のステートは、その他の設定であっても良い。シーケンサ13は、検出動作の結果に基づいて、ベリファイ読み出しを省略しても良い。
【0066】
[1-2-2]プログラム方法の詳細
図9は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作で書き込みステート毎に使用され得る2種類のベリファイ電圧と、2種類のプログラム方法との一例を示す閾値電圧分布図である。図9(1)及び(2)は、それぞれ同じプログラムループ内のベリファイ動作及びプログラム動作に対応する閾値電圧分布を示している。図9に示された閾値電圧分布を形成する複数のメモリセルトランジスタMTselの書き込みステートは同じである。図9に示すように、第1実施形態に係る半導体記憶装置1では、書き込みステート毎にベリファイロー電圧VLとベリファイハイ電圧VHとが設定され得る。ベリファイハイ電圧VHは、図6を参照して説明されたベリファイ電圧である。ベリファイロー電圧VLは、ベリファイハイ電圧VHよりも低く設定される。
【0067】
図9(1)に示すように、シーケンサ13は、ベリファイ動作において、ベリファイロー電圧VLを用いたベリファイ読み出し(以下、VLベリファイと呼ぶ)と、ベリファイハイ電圧VHを用いたベリファイ読み出し(以下、VHベリファイと呼ぶ)とを実行し得る。このようなベリファイ動作により、複数のメモリセルトランジスタMTselは、閾値電圧がVL以下であるMTsel(VLフェイルのMTsel)と、閾値電圧がVLよりも高くVH以下であるMTsel(VLパスのMTsel)と、閾値電圧がVHよりも高いMTsel(VHパスのMTsel)とに分類される。図9(1)では、VLフェイルのMTselと、VLパスのMTselとが表示されている。
【0068】
シーケンサ13は、プログラム動作において、VLフェイルのMTselとVLパスのMTselとのそれぞれをプログラム対象に設定し、VHパスのMTselをプログラム禁止に設定する。さらに、シーケンサ13は、VLフェイルのMTselに対して第1プログラム方法を適用し、VLパスのMTselに対して第2プログラム方法を適用する。プログラム動作が実行されると、図9(2)に示すように、第2プログラム方法が適用されたメモリセルトランジスタMTselにおける閾値電圧の上昇量(図9(A))が、第1プログラム方法が適用されたメモリセルトランジスタMTselにおける閾値電圧の上昇量(図9(B))よりも小さくなる。その結果、VHベリファイにパスしたメモリセルトランジスタMTselにより形成される閾値電圧分布の広がりが抑制される。
【0069】
図10は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1のプログラム動作の一例を示すタイミングチャートである。図10は、プログラム動作におけるワード線WLselの電圧変化とビット線BLの電圧変化との一例を示している。以下では、VLフェイルのMTselに接続されたビット線BLのことを、“ビット線BLprog(A)”と呼ぶ。VLパスのMTselに接続されたビット線BLのことを、“ビット線BLprog(B)”と呼ぶ。プログラム禁止のメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLのことを、“ビット線BLinh”と呼ぶ。
【0070】
図10に示すように、プログラム動作の開始時において、ワード線WLselと、ビット線BLprog(A)、BLprog(B)及びBLinhとのそれぞれの電圧は、例えばVSSである。ワード線WLselにプログラム電圧VPGMが印加されている間に、ビット線BLprog(A)に接地電圧VSSが印加され、ビット線BLprog(B)に電圧VQPWが印加され、ビット線BLinhに電圧VINHが印加される。VQPWは、VSSよりも高い電圧である。VINHは、VPCHよりも高い電圧である。
【0071】
このとき、ビット線BLprog(A)に接続されたNANDストリングNSでは、選択トランジスタSTDがオン状態になり、ビット線BLprog(A)にVSSが印加されたことに伴い、チャネルの電圧の上昇が抑制される。ビット線BLprog(B)に接続されたNANDストリングNSでは、選択トランジスタSTDがオン状態になり、ビット線BLprog(B)にVQPWが印加されたことに伴い、チャネルの電圧が上昇する。ビット線BLinhに接続されたNANDストリングNSでは、選択トランジスタSTDがオフ状態になり、チャネルがフローティング状態になる。
【0072】
その結果、ビット線BLprog(A)に接続されたメモリセルトランジスタMTsel(VLフェイルのMTsel)では、チャネル及び制御ゲート間の電圧差が大きくなったことに伴い電荷蓄積層に電子が注入され、閾値電圧が上昇する。ビット線BLprog(B)に接続されたメモリセルトランジスタMTsel(VLパスのMTsel)では、VLフェイルのMTselと同様に電荷蓄積層に電子が注入されるが、チャネル及び制御ゲート間の電圧差がVLフェイルのMTselよりも小さくなるため、閾値電圧の上昇がVLフェイルのMTselよりも抑制される。ビット線BLinhに接続されたメモリセルトランジスタMTsel(VHパスのMTsel)では、フローティング状態であるチャネルの電圧が各ワード線WLに印加された電圧の上昇に伴い上昇するため、閾値電圧の上昇がVLパスのMTselよりも抑制される。
【0073】
[1-2-3]ベリファイ方法の詳細
図11は、第1実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作におけるベリファイ電圧の設定の一例を示すテーブルである。図11に示すように、各書き込みステートのベリファイハイ電圧VHとしては、図6を参照して説明されたベリファイ電圧が使用される。具体的には、“S1”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V1”である。“S2”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V2”である。“S3”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V3”である。“S4”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V4”である。“S5”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V5”である。“S6”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V6”である。“S7”ステートのベリファイハイ電圧VHは、“V7”である。
【0074】
一方で、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとしては、“S(N-1)”ステート(Nは、書き込みステートに割り当てられた数字)のベリファイハイ電圧VH、すなわちベリファイ電圧V(N-1)が使用される。具体的には、“S1”ステートのベリファイロー電圧VLは、第1実施形態において未定義である。“S2”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S1”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V1”である。“S3”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S2”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V2”である。“S4”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S3”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V3”である。“S5”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S4”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V4”である。“S6”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S5”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V5”である。“S7”ステートのベリファイロー電圧VLは、“S6”ステートのベリファイハイ電圧VHと同じ“V6”である。
【0075】
図12は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図12は、ベリファイ動作において、シーケンサ13が、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しと、“S(N)”ステートのベリファイ読み出しとを実行する場合の動作を示している。本例において、“N”は、2から7のいずれかの数字である。以下では、書き込みステートが“S(N)”ステートであるメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLのことを、“ビット線BLprog(N)”と呼ぶ。
【0076】
図12に示すように、プログラム動作の開始時において、ワード線WLselと、ビット線BLprog(N-1)、BLprog(N)及びBLinhとのそれぞれの電圧は、例えばVSSである。そして、シーケンサ13は、ベリファイ対象のメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLを適宜充電して、ベリファイ動作を実行する。ベリファイ読み出しが実行されるビット線BLは、VSSからVPCHに充電される。
【0077】
“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出し時に、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加され、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)にVPCHが印加される。このとき、シーケンサ13は、ビット線BLprog(N-1)に接続されたメモリセルトランジスタMTselに対するVHベリファイと、ビット線BLprog(N)に接続されたメモリセルトランジスタMTselに対するVLベリファイとを実行する。そして、このVHベリファイの結果が、ビット線BLprog(N-1)に接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VHDLに記憶され、このVLベリファイの結果が、ビット線BLprog(N)に接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VLDLに記憶される。
【0078】
“S(N)”ステートのベリファイ読み出し時に、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N)が印加され、ビット線BLprog(N)にVPCHが印加される。このとき、シーケンサ13は、ビット線BLprog(N)に接続されたメモリセルトランジスタMTselに対するVHベリファイを実行する。そして、このVHベリファイの結果が、ビット線BLprog(N)に接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VHDLに記憶される。
【0079】
上述されたように、シーケンサ13は、“S(N)”ステートのVLベリファイを、1つ前の書き込みステートに関連付けられたベリファイ読み出し時に実行する。つまり、シーケンサ13は、各プログラムループにおいて、“S(N-1)”ステートのVHベリファイが設定されている場合に、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとを並列に実行し得る。
【0080】
尚、第1実施形態に係る半導体記憶装置1では、各プログラムループにおいて、“S(N)”ステートのVHベリファイが設定され、且つ“S(N-1)”ステートのVHベリファイが設定されていない場合に、当該プログラムループにおける“S(N)”ステートのVLベリファイが省略される。
【0081】
図13は、第1実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作のより詳細な一例を示すタイミングチャートである。図13は、ベリファイ動作において、シーケンサ13が、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しを実行する場合の詳細な動作を示し、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSEN(N-1)及びSEN(N)、並びに制御信号STBのそれぞれの電圧の一例を示している。センスノードSEN(N)は、書き込みステートが“S(N)”ステートであるメモリセルトランジスタMTselに接続されたセンスアンプユニットSAU内のセンスノードSENの電圧を示している。また、VHDL(N-1)は、書き込みステートが“S(N-1)”ステートであるメモリセルトランジスタMTselに接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VHDLが記憶するデータに対応している。VLDL(N)は、書き込みステートが“S(N)”ステートであるメモリセルトランジスタMTselに接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VLDLが記憶するデータに対応している。
【0082】
図13に示すように、ベリファイ動作の開始前において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧は、例えばVSSである。このとき、各センスアンプユニットSAU内では、ゲートにVSSが印加されたトランジスタ21~24のそれぞれがオフ状態になっている。また、本例では、VHDL(N-1)が“L”レベルのデータを記憶し、VLDL(N)が“L”レベルのデータを記憶している。すなわち、このプログラムループの1つ前のプログラムループで実行されたベリファイ動作において、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと、“S(N)”ステートのVLベリファイとのそれぞれがフェイルしている。シーケンサ13は、プログラム動作を開始すると、時刻t1~t6の処理を順に実行する。
【0083】
時刻t1において、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加され、ワード線WLuselにVREADが印加される。ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加されることによって、選択されたメモリセルトランジスタMTselがオン状態又はオフ状態になり、ワード線WLuselにベリファイ電圧V(N-1)が印加されることによって、非選択のメモリセルトランジスタMTがオン状態になる。
【0084】
また、時刻t1において、ノードBLXにVBLXが印加され、ノードBLCにVBLCが印加され、ノードHHLにVHHLが印加される。VBLX、VBLC及びVHLLのそれぞれは、VSSよりも高い電圧である。ゲートにVBLXが印加されたトランジスタ21と、ゲートにVBLCが印加されたトランジスタ24と、ゲートにVHLLが印加されたトランジスタ22とのそれぞれは、オン状態になる。すると、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)のそれぞれが、トランジスタ20、21、24及び29を介した電流によって充電され、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)のそれぞれの電圧が、VSSからVPCHに上昇する。センスノードSEN(N-1)及びSEN(N)のそれぞれが、トランジスタ20及び22を介した電流によって充電され、センスノードSEN(N-1)及びSEN(N)のそれぞれの電圧が、VSSからVSENに上昇する。
【0085】
時刻t2において、ノードHHLにVSSが印加される。すると、ゲートにVSSが印加されたトランジスタ22がオフ状態になり、ノードND1とセンスノードSENとの間の電流経路が遮断される。このとき、センスノードSENは、フローティング状態であり、時刻t1~t2において充電された電圧を維持する。
【0086】
時刻t3において、ノードXXLにVXXLが印加される。VXXLは、VSSよりも高い電圧である。ゲートにVXXLが印加されたトランジスタ23は、オン状態になる。すると、センスノードSEN(N-1)及びSEN(N)のそれぞれの電圧が、関連付けられたメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。具体的には、センスノードSENの電圧は、ベリファイ電圧V(N-1)が印加されたメモリセルトランジスタMTselがオン状態である場合に下降し(図13、MTsel(ON))、ベリファイ電圧V(N-1)が印加されたメモリセルトランジスタMTselがオフ状態である場合に維持される(図13、MTsel(OFF))。尚、メモリセルトランジスタMTselがオン状態である場合においても、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧と、印加されているベリファイ電圧の大きさとの関係に応じて、センスノードSENの電圧の下降速度が変わり得る。
【0087】
時刻t4において、ノードXXLにVSSが印加される。すると、ゲートにVSSが印加されたトランジスタ23がオフ状態になり、センスノードSENとノードND2との間の電流経路が遮断される。このとき、センスノードSENは、フローティング状態であり、時刻t3~t4において放電された後の電圧を維持する。本明細書では、センスノードSENが充電された後に、ノードXXLにVXXLが印加されている時間(本例では、時刻t3~t4)のことを、“センスノードSENの放電時間”と呼ぶ。
【0088】
時刻t5において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートする。言い換えると、シーケンサ13が、制御信号STBを、一時的に“L”レベルから“H”レベルに遷移させて、センスアンプモジュール16に、メモリセルトランジスタMTselの閾値電圧を判定させる。具体的には、ゲートに“H”レベルの電圧が印加されたトランジスタ27がオン状態になり、トランジスタ26の状態に応じて、予め充電されていたバスLBUSの電圧が、下降又は維持される。例えば、センスノードSENの電圧がトランジスタ26の閾値電圧以上である場合に、トランジスタ26はオン状態であり、バスLBUSの電圧が下降する。一方で、センスノードSENの電圧がトランジスタ26の閾値電圧未満である場合に、トランジスタ26はオフ状態であり、バスLBUSの電圧が維持される。
【0089】
そして、シーケンサ13は、バスLBUSの電圧に基づいたデータを、所定のラッチ回路に記憶させる。本例において、シーケンサ13は、書き込みステートが“S(N-1)”ステートであるセンスアンプユニットSAUに、センスノードSEN(N-1)の電圧に基づくデータを、ラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。一方で、シーケンサ13は、書き込みステートが“S(N)”ステートであるセンスアンプユニットSAUに、センスノードSEN(N)の電圧に基づくデータを、ラッチ回路VHDL(N)に記憶させる。本例では、MTsel(ON)に対応するデータを記憶する場合の各ラッチ回路の電圧が、“H”レベルとして示されている。MTsel(OFF)に対応するデータを記憶する場合の各ラッチ回路の電圧が、“L”レベルとして示されている。
【0090】
時刻t6において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を終了する。
【0091】
以上のように、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、第1データ(例えば、“S(N-1)ステート”)のベリファイ動作において、第1データを書き込むメモリセルトランジスタMTが第1データのベリファイハイ電圧(例えば、V(N-1)”)を超えているか否かの判定と、第2データ(例えば、“S(N)ステート”)を書き込むメモリセルトランジスタMTが第2データのベリファイロー電圧(例えば、VL(N)=V(N-1))を超えているか否かの判定とを、同時に実行する。この“判定”は、シーケンサ13が制御信号STBをアサートすることに対応している。
【0092】
尚、第1実施形態に係る半導体記憶装置1において、シーケンサ13は、ベリファイ動作において、上述された“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しと同様のベリファイ読み出しを、複数の書き込みステートを対象として連続で実行しても良い。ベリファイ動作において、ベリファイ読み出しの対象である書き込みステートが1つである場合に、当該書き込みステートのベリファイ読み出しを利用したVLベリファイは、実行されても良いし、省略されても良い。ある書き込みステートのVLベリファイは、当該書き込みステートのVHベリファイが開始された後、且つ1つ前の書き込みステートのVHベリファイが実行される場合に、実行されても良い。
【0093】
[1-3]第1実施形態の効果
以上で説明した第1実施形態に係る半導体記憶装置1に依れば、書き込み速度の低下を抑制し且つデータの信頼性を向上させることが出来る。以下に、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の効果の詳細について説明する。
【0094】
半導体記憶装置において、書き込み対象のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、書き込みステートのベリファイ電圧を超える前の閾値電圧と、その後に実行されるプログラム動作による閾値電圧の上昇量とに応じて決定される。書き込み動作後の複数のメモリセルトランジスタMTの閾値電圧は、正規分布に近いばらつきを有している。このようなメモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつきは、メモリセルトランジスタMTの書き込み特性のばらつきや、プログラム電圧のステップアップ幅に応じて生じ得る。書き込み動作を高速化させるためには、プログラム電圧のステップアップ幅を大きくすることが好ましい。しかしながら、プログラム電圧のステップアップ幅を大きくすることは、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりの原因となり得る。
【0095】
これに対して、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、書き込みステート毎に2種類のベリファイ電圧(ベリファイロー電圧VL及びベリファイハイ電圧VH)を設定し、書き込みの進行に応じて、閾値電圧の上昇量を変化させる。簡潔に述べると、半導体記憶装置1は、ベリファイハイ電圧VHを用いたVHベリファイにパスした場合に、書き込みが完了したものとみなし、以降のプログラム動作で当該メモリセルトランジスタMTを書き込み禁止に設定する。一方で、半導体記憶装置1は、ベリファイロー電圧VLを用いたVLベリファイにパスした場合に、当該メモリセルトランジスタMTに接続されたビット線BLを充電した状態でプログラム動作を実行する。
【0096】
これにより、VLベリファイにパスしたメモリセルトランジスタMTでは、閾値電圧の上昇量が抑制され、ベリファイハイ電圧VHを大幅に超えることが抑制される。その結果、半導体記憶装置1は、プログラム電圧のステップアップ幅を大きくした場合においても、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。しかしながら、書き込みステート毎にベリファイロー電圧VL及びベリファイハイ電圧VHが設定されたベリファイ動作が実行される場合、ベリファイ動作に伴う読み出し回数が増加し、書き込み動作の処理時間が長くなるおそれがある。
【0097】
そこで、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイロー電圧VLとして、一つ前の書き込みステートに設定されたベリファイハイ電圧VHと同じ電圧を割り当てる。そして、半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を実行する際に、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと、“S(N)”ステートのVLベリファイとを並列に実行する。それから、半導体記憶装置1は、一つ前のステートのVHベリファイと並列に実行されたVLベリファイの結果に基づいて、続くプログラム動作においてメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の上昇量を調整する。
【0098】
このように、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、プログラム動作の処理時間を延ばすことなくVLベリファイを実行することが出来る。言い換えると、VLベリファイの処理時間が、VHベリファイの時間によって隠される。そして、半導体記憶装置1は、VLベリファイを実行することによって、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。その結果、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、書き込み速度の低下を抑制し且つデータの信頼性を向上させることが出来る。
【0099】
[1-4]第1実施形態の変形例
半導体記憶装置1において、第2プログラム方法を利用するためのベリファイロー電圧VLの設定は、メモリセルトランジスタMTの書き込み特性に応じて最適化されることが好ましい。以下に、ベリファイロー電圧VLの設定のバリエーションとして、第1実施形態の第1及び第2変形例について説明する。
【0100】
(第1実施形態の第1変形例)
図14は、第1実施形態の第1変形例におけるベリファイ動作の設定の一例を示すテーブルである。図14に示すように、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとしては、2つ前のステートのベリファイハイ電圧VHが使用されても良い。言い換えると、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとしては、“S(N-2)”ステートのベリファイハイ電圧VH、すなわちベリファイ電圧V(N-2)が使用されても良い。
【0101】
具体的には、第1実施形態の第1変形例において、“S1”及び“S2”ステートのそれぞれのベリファイロー電圧VLは、未定義であり、“S3”~“S7”ステートのそれぞれのベリファイロー電圧VLは、それぞれV1~V5である。このような場合においても、第1実施形態の第1変形例に係る半導体記憶装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。なお、3つ以上前のステートのベリファイハイ電圧VHが、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとして使用されても良い。
【0102】
(第1実施形態の第2変形例)
図15は、第1実施形態の第2変形例におけるベリファイ動作の設定の一例を示すテーブルである。図15に示すように、各書き込みステートに対するベリファイロー電圧VLの割り当てにおいて、1つ前の書き込みステートのベリファイハイ電圧VHの使用と、2つ前のステートのベリファイハイ電圧VHの使用とが混在していても良い。言い換えると、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとしては、“S(N-1)”ステートのベリファイハイ電圧VHと、“S(N-2)”ステートのベリファイハイ電圧VHとが使い分けられても良い。
【0103】
具体的には、第1実施形態の第2変形例において、“S1”ステートのベリファイロー電圧VLは、未定義であり、“S2”~“S4”ステートのそれぞれのベリファイロー電圧VLは、それぞれV1~V3であり、“S5”~“S7”ステートのそれぞれのベリファイロー電圧VLは、それぞれV3~V5である。このような場合においても、第1実施形態の第2変形例に係る半導体記憶装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。なお、3つ以上前のステートのベリファイハイ電圧VHが、各書き込みステートのベリファイロー電圧VLとして使用されても良い。ベリファイロー電圧VLの組み合わせは、適宜変更され得る。
【0104】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイにおけるセンス時間をVHベリファイよりも長くすることによって、実質的なベリファイロー電圧を調整する。以下に、第2実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0105】
[2-1]ベリファイ方法
図16は、第2実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図16は、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しにおける、図13に示されたタイミングチャートと同様の各項目の電圧の変化の一例を示している。
【0106】
図16に示すように、ベリファイ動作の開始前の状態は、図13に示されたタイミングチャートと同様である。シーケンサ13は、ベリファイ動作を開始すると、時刻t1~t11の処理を順に実行する。時刻t1~t6の期間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに対応している。時刻t6~t11の期間は、“S(N)”ステートのVLベリファイに対応している。
【0107】
“S(N-1)”ステートのVHベリファイは、図13を参照して説明された“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しから、ラッチ回路VLDL(N)に対応する動作が省略された構成を有する。時刻t1~t4の動作は、図13に示された時刻t1~t4の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加される。ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。以下では、このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T1”と呼ぶ。時刻t5において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N-1)”ステートのVHベリファイの結果をラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。
【0108】
“S(N)”ステートのVLベリファイは、図13を参照して説明された“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しから、ラッチ回路VLDL(N-1)に対応する動作が省略された構成を有する。時刻t6~t9の動作は、図13に示された時刻t1~t4の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、センスノードSENが再び充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。以下では、このVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T2”と呼ぶ。T2は、T1よりも長い。これにより、VHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間がT1である場合に、VL(N-1)よりも高い電圧が、VLベリファイに実質的に使用されている状態になる。時刻t10において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVLベリファイの結果をラッチ回路VLDL(N)に記憶させる。
【0109】
時刻t11において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を終了する。
【0110】
以上のように、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作において、“S(N-1)”ステートのベリファイハイ電圧VHを用いて、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとを続けて実行する。そして、第2実施形態では、“S(N)”ステートのVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間T2が、“S(N-1)”ステートのVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間T1よりも長く設定される。第2実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。尚、第2実施形態において、S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとの順番は、入れ替えられても良い。
【0111】
[2-2]第2実施形態の効果
図17は、第2実施形態に係る半導体記憶装置1における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図である。図17(1)は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、印加されているベリファイ電圧V(N-1)とを示している。図17(2)は、“S(N)”ステートのVLベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、実質的なベリファイ電圧とを示している。本例では、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作時に、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとが実行されている。
【0112】
ベリファイ読み出しと通常の読み出し動作との間で、同じ条件でメモリセルトランジスタMTの閾値電圧が比較されるためには、ベリファイ読み出しにおけるセンスノードSENの放電時間が、読み出し動作時のセンスノードSENの放電時間と同じ設定にされていることが好ましい。一方で、第2実施形態に係る半導体記憶装置1では、センスノードSENの放電時間が、“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも、“S(N)”ステートのVLベリファイの方が長くなるように設定されている。
【0113】
図17(1)に示すように、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作時には、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加されている。センスノードSENの放電時間が“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも長く設定されると、図16に示されたセンスノードSEN(N)の電圧変化(弱いオンセル)のように、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧に応じたセンスノードSENの電圧の下降量が大きくなる。このようなセンスノードSENの電圧変化は、センスノードSENの放電時間をVHベリファイと同じであると仮定した場合に、ワード線WLselに印加されているベリファイ電圧が高くなっていることに相当する。つまり、図17(2)に示すように、第2実施形態に係る半導体記憶装置1では、“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて使用されている実質的なベリファイ電圧を、実際に印加されているベリファイ電圧V(N-1)よりも高いものとみなすことが出来る。
【0114】
以上のように、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、実質的に、ワード線WLselに印加されているベリファイ電圧V(N-1)よりも高いベリファイロー電圧VL(N)をVLベリファイに使用することが出来る。その結果、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、より好ましいベリファイロー電圧VLを用いたベリファイ動作を実行することが出来、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。
【0115】
なお、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとのそれぞれで、センスノードSENの充電及び放電、並びにセンス動作を行っている。このように、複数回の読み出しが実行される場合、ベリファイ動作の処理時間が第1実施形態よりも長くなる。しかしながら、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、各書き込みステートのベリファイ動作を、ワード線WLselの電圧を固定した状態で実行することによって、ベリファイ動作の処理時間を短縮している。以下に、本効果の詳細について説明する。
【0116】
ワード線WLの配線抵抗等は、メモリセルの積層等による高集積化によって高くなる傾向を有する。ワード線WLの電圧を変化させることは、センスアンプユニットSAU内の各ノードに印加される電圧を変化させることよりも困難である。つまり、ベリファイ動作の時間は、ワード線WLの電圧変化に要する時間の制限により長くなり得る。これに対して、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイ動作時に、共通のベリファイ電圧を用いてVHベリファイとVLベリファイとを実行する。これにより、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、ワード線WLの電圧を上昇させる時間や電圧を安定させる時間を省略することが出来る。その結果、第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、VHベリファイとVLベリファイとの間でワード線WLselの電圧変化を伴う場合と比べて、ベリファイ動作の時間を短縮することが出来る。
【0117】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、第2実施形態で説明されたVLベリファイ及びVHベリファイとの組を、1回のセンスノードSENの充電で実行する。以下に、第3実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
【0118】
[3-1]ベリファイ方法
図18は、第3実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図18は、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しにおける、図13に示されたタイミングチャートと同様の各項目の電圧の変化の一例を示している。
【0119】
図18に示すように、ベリファイ動作の開始前の状態は、図13に示されたタイミングチャートと同様である。シーケンサ13は、ベリファイ動作を開始すると、時刻t1~t9の処理を順に実行する。時刻t1~t6の期間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに対応している。時刻t6~t9の期間は、“S(N)”ステートのVLベリファイに対応している。
【0120】
“S(N-1)”ステートのVHベリファイは、図16を参照して説明された“S(N-1)”ステートのVHベリファイと同様である。つまり、時刻t1~t5の動作は、図16に示された時刻t1~t5の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加される。ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間は、“T1”である。シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N-1)”ステートのVHベリファイの結果をラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。
【0121】
第3実施形態では、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに続けて実行される“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて、センスノードSENの充電が省略される。具体的には、時刻t6において、ノードXXLにVXXLが印加され、センスノードSENが放電される。時刻t7において、ノードXXLにVSSが印加され、センスノードSENが、時刻t6~t7において放電された後の電圧を維持する。以下では、このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T3”と呼ぶ。T1とT3との合計は、第2実施形態で説明された放電時間T2に対応している。時刻t8において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVLベリファイの結果をラッチ回路VLDL(N)に記憶させる。
【0122】
時刻t11において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を終了する。第3実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0123】
[3-2]第3実施形態の効果
以上のように、第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作において、“S(N-1)”ステートのベリファイハイ電圧VHを用いて、1回のセンスノードSENの充電で、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとを続けて実行する。また、第3実施形態では、VHベリファイのセンス前におけるセンスノードSEN(N)の放電時間が、第2実施形態と同様の“T1”に設定され、VLベリファイのセンス前におけるセンスノードSEN(N-1)の合計の放電時間が、T1+T3に設定される。つまり、第3実施形態において、“S(N)”ステートのVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも長くなり、図18に示されたセンスノードSEN(N)の電圧変化(弱いオンセル)のように、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧に応じたセンスノードSENの電圧の下降量がVHベリファイよりも大きくなる。
【0124】
これにより、第3実施形態に係る半導体記憶装置1では、第2実施形態と同様に、“S(N)”ステートのVLベリファイにおける実質的なベリファイ電圧を、ワード線WLselに印加されているベリファイハイ電圧VHよりも高くすることが出来る。また、第3実施形態では、“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて、センスノードSENの充電が省略され、センスノードSENの放電時間が第2実施形態における“S(N)”ステートのVLベリファイよりも短い。従って、第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、第2実施形態と同様の効果を得ることが出来、且つ第2実施形態よりもベリファイ動作の時間を短縮することが出来る。
【0125】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイにおけるセンス時間をVHベリファイよりも短くすることによって、実質的なベリファイロー電圧を調整する。以下に、第4実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1~第3実施形態と異なる点を説明する。
【0126】
[4-1]ベリファイ方法
図19は、第4実施形態に係る半導体記憶装置のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図19は、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しにおける、図13に示されたタイミングチャートと同様の各項目の電圧の変化の一例を示している。
【0127】
図19に示すように、ベリファイ動作の開始前の状態は、図13に示されたタイミングチャートと同様である。シーケンサ13は、ベリファイ動作を開始すると、時刻t1~t11の処理を順に実行する。時刻t1~t6の期間は、“S(N)”ステートのVLベリファイに対応している。時刻t6~t11の期間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに対応している。
【0128】
“S(N)”ステートのVLベリファイは、図13を参照して説明された“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しから、ラッチ回路VHDL(N-1)に対応する動作が省略された構成を有する。具体的には、時刻t1~t4の動作は、図13に示された時刻t1~t4の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加され、ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。以下では、このVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T4”と呼ぶ。これにより、本例では、VHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間がT1である場合に、V(N-1)よりも低い電圧が、VLベリファイに実質的に使用されている状態になる。時刻t5において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVLベリファイの結果を、ラッチ回路VLDL(N)に記憶させる。
【0129】
“S(N-1)”ステートのVHベリファイは、図13を参照して説明された“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しから、ラッチ回路VLDL(N-1)に対応する動作が省略された構成を有する。時刻t6~t9の動作は、図13に示された時刻t1~t4の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、センスノードSENが再び充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間は、“T1”である。T1は、T4よりも長い。時刻t10において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N-1)”ステートのVHベリファイの結果を、ラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。
【0130】
時刻t11において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を終了する。第4実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。尚、第4実施形態において、S(N)”ステートのVLベリファイと“S(N-1)”ステートのVHベリファイとの順番は、入れ替えられても良い。
【0131】
以上のように、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作において、“S(N-1)”ステートのベリファイハイ電圧VHを用いて、“S(N)”ステートのVLベリファイと“S(N-1)”ステートのVHベリファイとを続けて実行する。そして、第4実施形態では、“S(N)”ステートのVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間T4が、“S(N-1)”ステートのVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間T1よりも短く設定される。第4実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0132】
[4-2]第4実施形態の効果
図20は、第4実施形態に係る半導体記憶装置1における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図である。図20(1)は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、印加されているベリファイ電圧V(N-1)とを示している。図20(2)は、“S(N)”ステートのVLベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、実質的なベリファイ電圧とを示している。本例では、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作時に、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとが実行されている。そして、第4実施形態に係る半導体記憶装置1では、センスノードSENの放電時間が、“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも、“S(N)”ステートのVLベリファイの方が短くなるように設定されている。
【0133】
図20(1)に示すように、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作時には、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加されている。センスノードSENの放電時間が“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも短く設定されると、図19に示されたセンスノードSEN(N)の電圧変化(弱いオンセル)のように、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧に応じたセンスノードSENの電圧の下降量が小さくなる。このようなセンスノードSENの電圧変化は、センスノードSENの放電時間をVHベリファイと同じであると仮定した場合に、ワード線WLselに印加されているベリファイ電圧が低くなっていることに相当する。つまり、図20(2)に示すように、第4実施形態に係る半導体記憶装置1では、“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて使用されている実質的なベリファイ電圧を、実際に印加されているベリファイ電圧V(N-1)よりも低いものとみなすことが出来る。
【0134】
以上のように、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、実質的に、ワード線WLselに印加されているベリファイ電圧V(N-1)よりも低いベリファイロー電圧VL(N)をVLベリファイに使用することが出来る。その結果、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、より好ましいベリファイロー電圧VLを用いたベリファイ動作を実行することが出来、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。
【0135】
また、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、第2実施形態と同様に、共通のベリファイ電圧が印加されている間にVHベリファイとVLベリファイとを実行する。従って、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、第2実施形態と同様に、VLベリファイとVHベリファイとの間でワード線WLの電圧変化に要する時間を省略することが出来、ベリファイ動作の処理時間を短縮することが出来る。
【0136】
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第5実施形態に係る半導体記憶装置1は、第4実施形態で説明されたVLベリファイ及びVHベリファイとの組を、1回のセンスノードSENの充電で実行する。以下に、第5実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1~第4実施形態と異なる点を説明する。
【0137】
[5-1]ベリファイ方法
図21は、第5実施形態に係る半導体記憶装置1のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図21は、ベリファイ動作において、シーケンサ13が、“S(N-1)”ステートのベリファイ読み出しを実行する場合の詳細な動作を示し、図13に示されたタイミングチャートと同様の各項目における電圧の変化の一例を示している。
【0138】
図21に示すように、プログラム動作の開始前の状態は、図13に示されたタイミングチャートと同様である。シーケンサ13は、ベリファイ動作を開始すると、時刻t1~t9の処理を順に実行する。時刻t1~t6の期間は、“S(N)”ステートのVLベリファイに対応している。時刻t6~t9の期間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに対応している。
【0139】
“S(N)”ステートのVLベリファイは、図19を参照して説明された“S(N-1)”ステートのVLベリファイと同様である。つまり、時刻t1~t5の動作は、図19に示された時刻t1~t5の動作とそれぞれ同様である。要点を述べると、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N-1)が印加される。ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。ノードXXLにVXXLが印加されている間に、センスノードSENの電圧がメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N-1)”ステートのVHベリファイの結果をラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。
【0140】
第3実施形態では、“S(N-1)”ステートのVHベリファイに続けて実行される“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて、センスノードSENの充電が省略される。具体的には、時刻t6において、ノードXXLにVXXLが印加され、センスノードSENが放電される。時刻t7において、ノードXXLにVSSが印加され、センスノードSENが、時刻t6~t7において放電された後の電圧を維持する。以下では、このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T5”と呼ぶ。T4とT5との合計は、放電時間T1に対応している。時刻t8において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVLベリファイの結果をラッチ回路VLDL(N)に記憶させる。
【0141】
時刻t11において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N-1)及びBLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作を終了する。第5実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0142】
[5-2]第5実施形態の効果
以上のように、第5実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S(N-1)”ステートのベリファイ動作において、“S(N-1)”ステートのベリファイハイ電圧VHを用いて、1回のセンスノードSENの充電で、“S(N-1)”ステートのVHベリファイと“S(N)”ステートのVLベリファイとを続けて実行する。また、第5実施形態では、VLベリファイのセンス前におけるセンスノードSEN(N)の放電時間が、第4実施形態と同様の“T4”に設定され、VHベリファイのセンス前におけるセンスノードSEN(N-1)の合計の放電時間が、“T4+T5=T1”に設定される。つまり、第5実施形態において、“S(N)”ステートのVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間は、“S(N-1)”ステートのVHベリファイよりも短くなり、図21に示されたセンスノードSEN(N)の電圧変化(弱いオンセル)のように、VLベリファイのセンス前におけるセンスノードSEN(N)の電圧の下降量が、VHベリファイよりも小さくなる。
【0143】
これにより、第5実施形態に係る半導体記憶装置1では、第4実施形態と同様に、“S(N)”ステートのVLベリファイにおける実質的なベリファイ電圧を、ワード線WLselに印加されているベリファイハイ電圧VHよりも低くすることが出来る。また、第5実施形態では、“S(N-1)”ステートのVHベリファイにおいて、センスノードSENの充電が省略され、センスノードSENの放電時間が第4実施形態における“S(N)”ステートのVHベリファイよりも短い。従って、第5実施形態に係る半導体記憶装置1は、第4実施形態と同様の効果を得ることが出来、且つ第4実施形態よりもベリファイ動作の時間を短縮することが出来る。
【0144】
[6]第6実施形態
第6実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイ対象のステートの1つ前の書き込みステートのベリファイ読み出しが実行されない場合に、所定の条件に基づいて、第2プログラム方法の使用を開始する。以下に、第6実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1~第5実施形態と異なる点を説明する。
【0145】
[6-1]プログラム方法
図22は、第6実施形態に係る半導体記憶装置1のプログラム動作の一例を示すフローチャートである。図22に示すように、プログラム動作において各ビット線BLに印加される電圧が、プログラムループ毎に決定される。尚、以下で説明される動作は、シーケンサ13と、センスアンプユニットSAUとによって実行される。
【0146】
まず、複数のメモリセルトランジスタMTselが、VHベリファイにパスしているか否かに分類される(ST10)。
【0147】
VHベリファイにパスしている場合(ST10、YES)、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VINHを印加する(ST11)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、書き込み禁止に設定される。
【0148】
VHベリファイにパスしていない場合(ST10、NO)、このグループのメモリセルトランジスタMTselが、1つ前のプログラムループでVLベリファイが実行されているか否かに分類される(ST12)。
【0149】
1つ前のプログラムループでVLベリファイが実行されている場合(ST12、YES)、このグループのメモリセルトランジスタMTselが、VLベリファイにパスしているか否かに分類される(ST13)。
【0150】
1つ前のプログラムループでVLベリファイが実行されていない場合(ST12、NO)、ST15の処理に進む。
【0151】
VLベリファイにパスしている場合(ST13、YES)、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VQPWを印加する(ST14)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、プログラム対象に設定され、さらに、第2プログラム方法が適用される。
【0152】
VLベリファイにパスしていない場合(ST13、NO)、ST15の処理に進む。
【0153】
ST15では、現在のループ数が、書き込みステート毎に設定された所定のループ数未満であるか否かが確認される。言い換えると、書き込みステート毎にST15の処理に使用されるループ数が設定され、現在のループ数が、書き込みステート毎に、設定されたループ数未満であるか否かが確認される。
【0154】
書き込みステート毎に設定された所定のループ数未満である場合、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VQPWを印加する(ST14)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、プログラム対象に設定され、さらに、第2プログラム方法が適用される。
【0155】
書き込みステート毎に設定された所定のループ数以上である場合、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VSSを印加する(ST16)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、プログラム対象に設定され、さらに、第1プログラム方法が適用される。第6実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0156】
[6-2]第6実施形態の効果
以上のように、第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、1つ前のプログラムループにおいて1つ前の書き込みステートのベリファイ動作が実行されていない、すなわちVLベリファイが実行されていない場合に、所定の条件に基づいて第2プログラム方法を用いたプログラム動作を実行する。言い換えると、第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイをパスしているか否かに依らずに、第2プログラム方法を適用するか否かを判断することが出来る。
【0157】
その結果、第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイ動作におけるベリファイ読み出しの回数を削減することが出来るため、書き込み動作の処理時間を短縮することが出来る。また、第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイが実行されているプログラムループの間にVLベリファイにパスすることができなかったメモリセルトランジスタMTに対しても第2プログラム方法を適用することが出来るため、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。
【0158】
[6-3]第6実施形態の変形例
図23は、第6実施形態の変形例におけるプログラム動作の一例を示すフローチャート。図23に示されたフローチャートは、図22に示されたフローチャートにおいて、ST15がST20に入れ替えられた構成を有している。ST20では、このグループのメモリセルトランジスタMTselにおいて、書き込みステートに関連付けられた所定のステートのベリファイにパスしているか否かかが確認される。この所定のステートは、当該書き込みステートよりも閾値電圧が低いステートの何れかである。
【0159】
書き込みステートに関連付けられた所定のステートのベリファイにパスしている場合(ST20、YES)、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VQPWを印加する(ST14)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、プログラム対象に設定され、さらに、第2プログラム方法が適用される。
【0160】
書き込みステートに関連付けられた所定のステートのベリファイにパスしていない場合(ST20、NO)、プログラム動作時にセンスアンプユニットSAUが、このグループのメモリセルトランジスタMTselに接続されたビット線BLに、VSSを印加する(ST16)。つまり、このグループのメモリセルトランジスタMTselは、プログラム対象に設定され、さらに、第1プログラム方法が適用される。第6実施形態の変形例におけるその他の動作は、第6実施形態と同様である。
【0161】
以上のように、VLベリファイが省略された場合に、第2プログラム方法が使用される条件が変更されても良い。第6実施形態の変形例では、所定のステートのベリファイにパスしているか否かをトリガとして設定したが、これに限定されない。例えば、第2プログラム方法は、所定のステートのベリファイ読み出しにパスしたメモリセルトランジスタMTselの数が所定の数を超えたことに基づいて適用されても良い。
【0162】
[7]第7実施形態
第7実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第7実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイ対象のステートの1つ前の書き込みステートのベリファイ読み出しが実行されない場合に、当該ベリファイ対象のステートのVLベリファイを追加する。以下に、第7実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1~第6実施形態と異なる点を説明する。
【0163】
[7-1]ベリファイ方法
図24は、第7実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作におけるベリファイ動作の設定の一例を示すテーブルである。図14に示すように、第7実施形態における各書き込みステートのベリファイハイ電圧VHとしては、第1実施形態と同様に、図6を参照して説明されたベリファイ電圧が使用される。一方で、第7実施形態では、“S1”ステートのベリファイロー電圧VLとして、ベリファイロー電圧VL1が設定されている。ベリファイロー電圧VL1は、V1よりも低い電圧である。第7実施形態におけるその他の書き込みステートのベリファイロー電圧VLの設定は、第1実施形態と同様である。
【0164】
図25は、第7実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作の一例を示すタイミングチャートである。図25には、ループ数と、WLsel電圧とが示されている。図25に示すように、1~3回目のそれぞれのプログラムループで、“S1”ステートのベリファイ読み出しが実行されている。そして、“S1”ステートのベリファイ読み出しにおいて、ワード線WLselに、ベリファイロー電圧VL1とベリファイ電圧V1とのそれぞれが印加される。このように、シーケンサ13は、ベリファイ動作において、“S1”ステートのVLベリファイと、“S1”ステートのVHベリファイとの両方を実行する。第7実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0165】
[7-2]第7実施形態の効果
以上のように、第7実施形態に係る半導体記憶装置1は、1つ前の書き込みステートのベリファイ動作が存在しない場合に、任意のベリファイロー電圧VLを追加する。その結果、第7実施形態に係る半導体記憶装置1は、“S1”ステートのような、1つ前の書き込みステートが存在しない書き込みステートの書き込み動作においても、VLベリファイを実行することが出来る。そして、第6実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイの結果に基づいた第2プログラム方法を利用することによって、“S1”ステートの閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来、データの信頼性を向上させることが出来る。
【0166】
[7-3]第7実施形態の変形例
図26は、第7実施形態の変形例におけるベリファイ動作の設定の一例を示すテーブルである。図26に示すように、特殊なパターンのデータの書き込み動作が実行される場合に、一部の書き込みステートのプログラム動作及びベリファイ動作が省略され得る。本例では、書き込みステートとして、“S1”、“S3”、“S5”及び“S7”ステートが設定され、その他のステートに割り当てられたデータの書き込みが省略されている。この場合、“S1”、“S3”、“S5”及び“S7”ステートでは、1つ前の書き込みステートのベリファイ動作が実行されない。
【0167】
そこで、第7実施形態の変形例では、“S1”、“S3”、“S5”及び“S7”ステートのそれぞれに、ベリファイロー電圧VLが設定される。具体的には、“S1”ステートのベリファイロー電圧VLとして“VL1”が設定され、“S3”ステートのベリファイロー電圧VLとして“VL3”が設定され、“S5”ステートのベリファイロー電圧VLとして“VL5”が設定され、“S7”ステートのベリファイロー電圧VLとして“VL7”が設定される。VL1は、V1よりも低い。VL3は、V3よりも低い。VL5は、V5よりも低い。VL7は、V7よりも低い。
【0168】
シーケンサ13は、これらのベリファイロー電圧VLを用いたVLベリファイを、例えば、関連付けられた書き込みステートのVHベリファイを含むベリファイ動作において実行する。このように、ベリファイロー電圧VLとして利用される書き込みステートのベリファイ動作が実行されない場合に、VLベリファイ用のベリファイロー電圧VLが追加されても良い。これにより、第7実施形態の変形例に係る半導体記憶装置1は、第2プログラム方法を利用することが出来、データの信頼性を向上させることが出来る。
【0169】
[8]第8実施形態
第8実施形態に係る半導体記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第8実施形態に係る半導体記憶装置1は、1回のセンスノードSENの充電でVLベリファイとVHベリファイとを実行する場合に、ワード線WLselに印加する電圧とセンスノードSENの放電時間との組み合わせにより、所望のVLベリファイを実行する。以下に、第8実施形態に係る半導体記憶装置1について、第1~第7実施形態と異なる点を説明する。
【0170】
[8-1]ベリファイ方法
図27は、第8実施形態に係る半導体記憶装置1のベリファイ動作の一例を示すタイミングチャートである。図27は、ベリファイ動作において、シーケンサ13が、“S(N)”ステートのベリファイ読み出しを実行する場合の詳細な動作を示し、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N)、センスノードSEN(N)、並びに制御信号STBのそれぞれの電圧の一例を示している。また、VHDL(N)及びVLDL(N)は、書き込みステートが“S(N)”ステートであるメモリセルトランジスタMTselに接続されたセンスアンプユニットSAU内のラッチ回路VHDL及びVLDLがそれぞれ記憶するデータに対応している。
【0171】
図27に示すように、ベリファイ動作の開始前において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N)及びBLprog(N)、センスノードSEN(N)のそれぞれの電圧は、例えばVSSである。VHDL(N)及びVLDL(N)のそれぞれが、“L”レベルのデータを記憶している。時刻t1~t6の期間は、“S(N)”ステートのVLベリファイに対応している。時刻t6~t11の期間は、“S(N)”ステートのVHベリファイに対応している。
【0172】
時刻t1において、ワード線WLselにベリファイ電圧VM(N)が印加され、ワード線WLuselにVREADが印加され、ノードBLXにVBLXが印加され、ノードBLCにVBLCが印加され、ノードHHLにVHHLが印加される。ベリファイ電圧VM(N)は、ベリファイロー電圧VLよりも高く、ベリファイハイ電圧VHよりも低い電圧である。これにより、第1実施形態と同様に、ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。
【0173】
時刻t2において、ノードHHLにVSSが印加される。すると、センスノードSENが、フローティング状態になり、時刻t1~t2において充電された電圧を維持する。
【0174】
時刻t3において、ノードXXLにVXXLが印加される。すると、センスノードSEN(N)の電圧が、関連付けられたメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。
【0175】
時刻t4において、ノードXXLにVSSが印加される。すると、センスノードSENの放電経路が遮断される。このとき、センスノードSENは、フローティング状態であり、時刻t3~t4において放電された後の電圧を維持する。以下では、このVLベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間を“T6”と呼ぶ。T6は、T1よりも短い。これにより、本例では、VHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間がT1である場合に、VM(N-1)よりも低いVL(N)が、VLベリファイに実質的に使用されている状態になる。
【0176】
時刻t5において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVLベリファイの結果をラッチ回路VHDL(N-1)に記憶させる。
【0177】
時刻t6において、ワード線WLselにベリファイ電圧V(N)が印加され、ノードHHLにVHHLが印加される。これにより、第1実施形態と同様に、ビット線BLprogとセンスノードSENとのそれぞれが充電される。
【0178】
時刻t7において、ノードHHLにVSSが印加される。すると、センスノードSENが、フローティング状態になり、時刻t6~t7において充電された電圧を維持する。
【0179】
時刻t8において、ノードXXLにVXXLが印加される。すると、センスノードSEN(N)の電圧が、関連付けられたメモリセルトランジスタMTselの状態に応じて下降又は維持される。
【0180】
時刻t9において、ノードXXLにVSSが印加される。すると、センスノードSENの放電経路が遮断される。このとき、センスノードSENは、フローティング状態であり、時刻t8~t9において放電された後の電圧を維持する。このVHベリファイにおけるセンスノードSENの放電時間は、“T1”である。
【0181】
時刻t10において、シーケンサ13は、制御信号STBをアサートして、“S(N)”ステートのVHベリファイの結果をラッチ回路VHDL(N)に記憶させる。
【0182】
時刻t11において、ワード線WLsel及びWLusel、ノードBLX、BLC、HHL及びXXL、ビット線BLprog(N)、センスノードSENのそれぞれの電圧が、ベリファイ動作の開始前の状態に戻される。これにより、シーケンサ13は、“S(N)”ステートのベリファイ動作を終了する。第8実施形態に係る半導体記憶装置1のその他の動作は、第4実施形態と同様である。
【0183】
[8-2]第8実施形態の効果
図28は、第8実施形態に係る半導体記憶装置1における実質的なベリファイ電圧の一例を示す概念図である。図28(1)は、“S(N)”ステートのVLベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、印加されているベリファイ電圧VM(N)と、実質的なベリファイ電圧とを示している。図28(2)は、“S(N)”ステートのVHベリファイのセンス時における閾値電圧分布と、印加されているベリファイ電圧V(N)とを示している。本例では、“S(N)”ステートのベリファイ動作時に、“S(N)”ステートのVLベリファイ及びVHベリファイが実行されている。VLベリファイにおいてワード線WLselに印加されているベリファイ電圧VM(N)が、ベリファイロー電圧VL(N)とベリファイ電圧V(N)との間に設定されている。
【0184】
そして、第8実施形態に係る半導体記憶装置1では、センスノードSENの放電時間が、VHベリファイよりも、VLベリファイの方が短くなるように設定されている。これにより、図20(1)に示すように、“S(N)”ステートのVLベリファイにおいて使用されている実質的なベリファイ電圧が、実際に印加されているベリファイ電圧VM(N)よりも低くみなされ得る。その結果、第8実施形態に係る半導体記憶装置1は、所望のベリファイロー電圧VLによるVLベリファイを実行することが出来る。
【0185】
また、第8実施形態に係る半導体記憶装置1では、図20(2)に示すように、VLベリファイで印加されるベリファイ電圧と、VHベリファイで印加されるベリファイ電圧との差が、VLベリファイにおいてベリファイロー電圧VLをワード線WLselに印加する場合よりも小さい。その結果、第8実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイからVHベリファイに移行することに伴うワード線WLselの電圧変化量を小さくすることが出来、ワード線WLの電圧の安定化に要する時間を短縮することが出来る。
【0186】
観点を変えると、第8実施形態に係る半導体記憶装置1は、VLベリファイにおけるベリファイロー電圧VLの調整幅を、センスノードSENの放電時間の短縮とワード線WLの電圧の変化との組み合わせによって広げることが出来る。その結果、第8実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイロー電圧VLをより好ましい設定にすることが出来、書き込み動作における閾値電圧分布の広がりを抑制することが出来る。
【0187】
[9]その他
上記実施形態及び変形例は、可能な範囲で組み合わされても良い。例えば、半導体記憶装置1は、書き込みステート毎のVLベリファイの方法を変更しても良い。第1実施形態の第1及び第2変形例のそれぞれと、他の実施形態とが組み合わされても良い。第8実施形態で説明されたVLベリファイが適用される書き込みステートと、第5実施形態で説明されたVLベリファイが適用される書き込みステートとが混在していても良い。その他の組み合わせが利用されても良く、3つ以上の実施形態の動作が組み合わされても良い。
【0188】
上記実施形態で説明されたセンスノードSENの電圧の検知方法は、あくまで一例である。センスアンプユニットSAUの回路構成が異なる場合に、センスノードSENの電圧は、実施形態と異なる方法によって検知されても良い。半導体記憶装置は、各書き込みステートの書き込み動作で、VLベリファイ及びVHベリファイにおけるセンスノードSENの充電時間及び放電時間の取り扱いが上記実施形態と同様であれば、上記実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0189】
上記実施形態では、ベリファイハイ電圧VHを用いたベリファイ読み出しの結果をラッチ回路VHDLに記憶させる場合について例示したが、これに限定されない。例えば、半導体記憶装置1は、VHベリファイにパスしたことを、センスアンプユニットSAUに記憶されたデータを、消去状態と同じ状態に書き換えることによって判別しても良い。
【0190】
上記実施形態では、第2プログラム方法が適用されたプログラム動作によって、VHベリファイにパスする場合について例示したが、これに限定されない。VLベリファイにパスした後にVHベリファイにパスしていない場合には、第2プログラム方法を用いたプログラム動作が、特定のメモリセルトランジスタMTselに対して複数回実行され得る。
【0191】
上記実施形態では、シーケンサ13が様々な動作を兼任する場合について例示したが、これに限定されない。実施形態で説明したシーケンサ13の処理は、その他の回路によって実行されても良い。例えば、半導体記憶装置1がカウンタを備え、当該カウンタによって、ベリファイにパスしたメモリセルトランジスタMTの数がカウントされても良い。
【0192】
上記実施形態で書き込み動作の説明に使用されたタイミングチャートは、あくまで一例である。例えば、各時刻において信号及び配線のそれぞれの電圧が制御されるタイミングは、ずれていても良い。また、各フローチャートの処理の一部は、可能な範囲で順番を入れ替えられ得る。また、上記実施形態において、メモリセルアレイ10内の各種配線に印加される電圧は、信号線CG、SGDD、SGDS、USGD及びUSGS等の電圧に基づいて推測されても良い。例えば、ワード線WLselに印加される電圧は、信号線CGの電圧に基づいて推測され得る。
【0193】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、間に別の素子を介することを除外しない。“オン状態”は、トランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”は、トランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示している。オフ状態は、トランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のMOSトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のMOSトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のMOSトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のMOSトランジスタがオン状態になる電圧である。
【0194】
本明細書において、センスアンプユニットSAUは、センス回路と呼ばれても良い。“プログラム動作に第1プログラム方法が適用されること”が、“第1プログラム対象”と呼ばれても良い。“プログラム動作に第2プログラム方法が適用されること”が、“第2プログラム対象”と呼ばれても良い。シーケンサ13は、シーケンスコントローラ、コントローラ、又は制御回路と呼ばれても良い。シーケンサ13の制御に基づいた各構成の動作は、シーケンサ13の動作として記載されても良い。“センスノードSENを充電すること”は、ノードHHLにVHHLが印加されている期間に対応している。 “センスノードSENを放電すること”は、ノードXXLにVXXLが印加されている期間に対応している。VHHL及びVXXLのそれぞれは、少なくとも“H”レベルを超えていれば良く、複数の段階に分けて印加されても良い。
【0195】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0196】
1…半導体記憶装置、2…メモリコントローラ、10…メモリセルアレイ、11…コマンドレジスタ、12…アドレスレジスタ、13…シーケンサ、14…ドライバモジュール、15…ロウデコーダモジュール、16…センスアンプモジュール、BLK…ブロック、SU…ストリングユニット、SAU…センスアンプユニット、RD…ロウデコーダ、CG,SGDD,SGSD,USGD,USGS…信号線、BL…ビット線、WL…ワード線、SGD,SGS…選択ゲート線、MT…メモリセルトランジスタ、STD,STS…選択トランジスタ
図1
図2
図3
図4
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図6
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