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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095255
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】乗客搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20220621BHJP
   B66B 23/00 20060101ALI20220621BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20220621BHJP
   B66B 23/08 20060101ALI20220621BHJP
   B66B 23/12 20060101ALI20220621BHJP
   B66B 13/30 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B66B11/02 K
B66B23/00 C
B66B31/00 Z
B66B23/08
B66B23/12 G
B66B13/30 Q
B66B13/30 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208471
(22)【出願日】2020-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
【テーマコード(参考)】
3F306
3F307
3F321
【Fターム(参考)】
3F306AA11
3F306CA24
3F307CD02
3F321AA04
3F321CB01
3F321CB02
3F321CD14
3F321HA31
(57)【要約】
【課題】乗客の靴底を介して細菌やウイルスが他の箇所に拡散するのを防止することができる乗客搬送装置を提供する。
【解決手段】乗客搬送装置は、乗客が通行又は一定時間滞在する足下面の所定領域に形成される紫外線透過性を有する透過部12aと、透過部12aに対応して足下面の下方に配置される紫外線出射部50とを備える。紫外線出射部50から出射された紫外線は、透過部12aから足元面の上方に向かって照射され、所定領域における乗客の靴底に紫外線が照射され、乗客の靴底に付着した細菌やウイルスが殺菌される。これにより、細菌やウイルスが他の箇所に拡散することが防止される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が通行又は一定時間滞在する足下面の所定領域に形成される紫外線透過性を有する透過部と、
透過部に対応して足下面の下方に配置される紫外線出射部とを備える
乗客搬送装置。
【請求項2】
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、かごの床面に設定される
請求項1に記載の乗客搬送装置。
【請求項3】
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、乗り場の床面に設定される
請求項1又は請求項2に記載の乗客搬送装置。
【請求項4】
乗客搬送装置は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアであり、
所定領域は、乗降口の床面に設定される
請求項1に記載の乗客搬送装置。
【請求項5】
乗客搬送装置は、エスカレータであり、
所定領域は、踏段の踏面に設定される
請求項1又は請求項4に記載の乗客搬送装置。
【請求項6】
透過部に対応して足下面と紫外線出射部との間に配置される導光板を備える
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の乗客搬送装置。
【請求項7】
透過部は、
所定領域の全域に亘って形成される多数の透孔と、
導光板の板部の上面から突出し、各透孔を埋める多数の凸部とで構成される
請求項6に記載の乗客搬送装置。
【請求項8】
乗客を検知する検知手段を備え、
紫外線出射部は、検知手段による検知結果に応じて、作動制御される
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の乗客搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ、エスカレータ、動く歩道等の乗客搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客搬送装置は、不特定多数の者が利用する設備であり、細菌やウイルスの感染の懸念を否定することはできない。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。対策の一つとして、光触媒によってエレベータの床を清浄化する技術(特許文献1)や、紫外線の照射によってエスカレータのハンドレールを殺菌する技術(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-254102号公報
【特許文献2】特開2011-073874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、細菌やウイルスに罹患した者が乗客搬送装置を利用したことにより、乗客搬送装置の床面やその周辺の床面には、細菌やウイルスが付着しているおそれがある。そして、乗客がその床面を踏むことにより、靴底に細菌やウイルスが付着し、乗客の移動に伴い、細菌やウイルスが他の箇所に拡散してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、乗客の靴底を介して細菌やウイルスが他の箇所に拡散するのを防止することができる乗客搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗客搬送装置は、
乗客が通行又は一定時間滞在する足下面の所定領域に形成される紫外線透過性を有する透過部と、
透過部に対応して足下面の下方に配置される紫外線出射部とを備える
乗客搬送装置である。
【0007】
ここで、本発明に係る乗客搬送装置の一態様として、
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、かごの床面に設定される
との構成を採用することができる。
【0008】
また、本発明に係る乗客搬送装置の他態様として、
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、乗り場の床面に設定される
との構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明に係る乗客搬送装置の別の態様として、
乗客搬送装置は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアであり、
所定領域は、乗降口の床面に設定される
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客搬送装置のさらに別の態様として、
乗客搬送装置は、エスカレータであり、
所定領域は、踏段の踏面に設定される
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客搬送装置のさらに別の態様として、
透過部に対応して足下面と紫外線出射部との間に配置される導光板を備える
との構成を採用することができる。
【0012】
また、この場合、
透過部は、
所定領域の全域に亘って形成される多数の透孔と、
導光板の板部の上面から突出し、各透孔を埋める多数の凸部とで構成される
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客搬送装置のさらに別の態様として、
乗客を検知する検知手段を備え、
紫外線出射部は、検知手段による検知結果に応じて、作動制御される
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紫外線出射部から出射された紫外線は、透過部から足元面の上方に向かって照射され、所定領域における乗客の靴底に紫外線が照射され、乗客の靴底に付着した細菌やウイルスが殺菌される。このため、本発明によれば、乗客の靴底を介して細菌やウイルスが他の箇所に拡散するのを防止することができる。なお、殺菌とは、細菌の殺菌、ウイルスの不活性化を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置をかごの床面に備えるエレベータのかご内の外観図である。
図2図2(a)は、かごの床面の平面図である。図2(b)及び(c)は、かごの床面の断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置を乗り場の床面に備えるエレベータの乗り場の外観図である。
図4図4(a)は、乗り場の床面の平面図である。図4(b)及び(c)は、乗り場の床面の断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置を乗降口の床面及び踏段の踏面に備えるエスカレータの外観図である。
図6図6(a)は、乗降口の床面の平面図である。図6(b)は、乗降口の床面の断面図である。
図7図7(a)は、踏段の平面図である。図7(b)は、図7(a)のA-A線断面図である。
図8図8(a)は、エスカレータの傾斜部の一部概略断面側面図である。図8(b)は、図8(a)の一部拡大図である。
図9図9は、他実施形態に係る紫外線照射装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る第1実施形態として、紫外線照射装置をかごの床面に備えるエレベータについて、図1及び図2を参酌して説明する。
【0017】
図1に示すように、かご1は、かご室10と、かごドア11とを備える。かご室10は、床板12と、床板12の周囲から立ち上がる壁と、天井とを備える。かごドア11は、かご室10の前面の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。かごドア11には、両開き式と片開き式とがある。
【0018】
かご1の床面(床板12の上面)は、かご1の移動中、乗客が滞在する足下面となる。床面は、所定領域に、紫外線照射装置5を備える。図2(a)及び(b)に示すように、紫外線照射装置5は、上から下に向かう順に、透過部12aと、導光板53と、紫外線出射部50とを備える。紫外線照射装置5は、紫外線出射部50から出射した紫外線を導光板53を介して透過部12aから床面の上方に向かって照射させる装置である。
【0019】
透過部12aは、所定領域の全域に亘って形成される。より詳しくは、透過部12aは、互いに間隔を有して所定領域の全域に亘って形成される多数の透孔12b,…と、後述する、導光板53の板部53aの上面から突出し、各透孔12bを埋める多数の凸部53b,…とで構成され、互いに間隔を有して所定領域の全域に亘って多数形成される。透過部12aは、必要十分な紫外線放射強度となるよう、単位面積当たり所定の個数(密度)で形成される。透過部12a以外の床面は、紫外線透過性を有さない。本実施形態においては、所定領域は、外縁が床面の外縁よりも若干内側となる矩形の領域であり、透過部12aは、所定領域の全域に亘って格子状に配置される。また、本実施形態においては、床板12として、パンチングメタルが用いられる。
【0020】
紫外線出射部50は、かご1の床基部13の上に設置される。紫外線出射部50は、基板51と、紫外線源52とを備える。基板51は、床面の所定領域に対応した大きさ(本実施形態においては、床面の所定領域と同じ大きさ)を有し、紫外線源52の回路基板を構成する。紫外線源52は、基板51の一方の面に、互いに間隔を有して全域に亘って多数実装される。好ましくは、紫外線源52は、各透過部12aに対応して設けられ、各透過部12aと同軸に配置される。このように、紫外線出射部50は、紫外線の面光源として機能する。本実施形態においては、紫外線源52は、ピーク波長が100nm以上280nm以下の範囲内の深紫外光を照射する紫外線LED(UV-LED)である。
【0021】
紫外線照射装置5は、エレベータの制御部及び電源ラインと電気的に接続される。これにより、紫外線出射部50は、制御部を介して給電を受け、制御部によって作動制御される。あるいは、紫外線照射装置5は、独自の制御部及び/又は電源を備えてもよい。
【0022】
導光板53は、床板12の下面に重なるように配置され、紫外線源52から出射された紫外線を、面方向に均一に拡散する作用と、透孔12bに導く作用とを有する。導光板53は、ガラスやアクリル等の透明素材で構成される。なお、導光板53と紫外線出射部50とが直接接触せず、所定厚みの離間部54が形成されるよう、所定の高さ位置で床板12が床基部13に(直接又は間接的に)固定される。
【0023】
導光板53は、板部53aと、凸部53bとを備える。板部53aは、床板12の下面に沿った板状の部分である。凸部53bは、板部53aの上面のうち、透孔12bに対応した位置から透孔12bを埋めるように突出する。凸部53bは、板部53aと一体的に形成され、透孔12bの数に対応して多数形成される。凸部53bは、透孔12bと同じ断面形状を有し、かつ、透孔12bの厚みと同じ高さ寸法を有する。このため、凸部53bは、隙間なく透孔12bに挿入され、かつ、凸部53bの上面と床面(床板12の上面)とは、面一となる。本実施形態においては、床板12の下面が上向きにされた状態で、型枠が形成され、型枠内に溶融したアクリル等の樹脂が流し込まれることにより、導光板53が樹脂成型される。
【0024】
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータによれば、紫外線出射部50から出射された紫外線は、導光板53を介して透過部12aから床面の上方に向かって照射され、かご1内の乗客の靴底に紫外線が照射され、乗客の靴底に付着した細菌やウイルスが殺菌される。このため、本実施形態に係るエレベータによれば、乗客の靴底を介して細菌やウイルスが複数の階床に拡散するのを防止することができる。
【0025】
ところで、図2(c)に示すように、床板12の上には、マットやカーペット等の床材14が敷かれることがある。この場合は、透孔12bに対応した位置に透孔14aが形成され、透過部12aは、透孔12b、凸部53b及び透孔14aによって構成される。
【0026】
また、本実施形態に係るエレベータによれば、床板12の透孔12bは、導光板53の凸部53bによって埋められ、塞がれている。このため、ごみ、塵、埃や乗客が落とした小物が透孔12bを通って床面の下方に侵入することや、特にヒールや傘等の乗客所持物が透孔12bに引っ掛かることを防止することができる。
【0027】
なお、かご1は、重量センサ(図示しない)を備えることがある。重量センサは、たとえば、床面(の中央部)に配置され、かご1に搭乗する乗客の重量を検知する。すなわち、重量センサは、かご1に搭乗した乗客を検知するものであり、乗客を検知する検知手段の一形態である。かご1が重量センサを備えることにより、一例として、紫外線照射装置5においては、乗客がいない間は、作動停止(消灯)し、重量センサが乗客を検知すると、作動(点灯)する、という制御を採用することができる。この場合、作動は、重量センサが乗客を検知している間は、継続するものであってもよいし、作動後一定時間経過すると、作動停止するものであってもよい。
【0028】
また、かご1は、かご室内カメラ(図示しない)を備えることがある。かご室内カメラは、かご室10内を撮像し、画像処理により、かご1に搭乗する乗客を検知することができる。すなわち、かご室内カメラは、かご1に搭乗した乗客を検知するものであり、乗客を検知する検知手段の一形態である。かご1がかご室内カメラを備えることにより、一例として、紫外線照射装置5においては、乗客がいない間は、作動停止し、室内カメラが乗客を検知すると、作動する、という制御を採用することができる。この場合、作動は、かご室内カメラが乗客を検知している間は、継続するものであってもよいし、作動後一定時間経過すると、作動停止するものであってもよい。
【0029】
また、かご1は、ドア閉検知部及びドア開検知部(図示しない)を備える。ドア閉検知部は、かごドア11が全閉したことを検知する。ドア開検知部は、かごドア11が全開したことを検知する。ドア閉検知部及びドア開検知部は、たとえば、相対的に移動する2つの物体(かご室10やかご枠と、かごドア11)の一方に配置される磁気近接センサや光電センサ等の検知センサと、他方に配置されるプレートとの組み合わせである。かご1がドア閉検知部及びドア開検知部を備えることにより、一例として、紫外線照射装置5においては、i)かごドア11が開いてから乗客の乗り込み完了により閉じると、作動し、作動後一定時間経過すると、作動停止する、という制御や、ii)かごドア11が開くと、作動し、かごドア11が閉じると、作動停止する、という制御を採用することができる。
【0030】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態として、紫外線照射装置を乗り場の床面に備えるエレベータについて、図3及び図4を参酌して説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせるか否か、すなわち、紫外線照射装置をかごの床面及び乗り場の床面の両方に設けるか、又は、いずれか一方のみに設けるかは、適宜選択すべき事項である。
【0031】
図3に示すように、各階床の乗り場2は、三方枠20と、乗り場ドア21とを備える。三方枠20は、壁面に形成され、枠内がかご1の開口に対応した大きさの開口となる。乗り場ドア21は、三方枠20内の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。乗り場ドア21にも、かごドア11に対応して、両開き式と片開き式とがある。乗り場ドア21は、通常は閉となっており、階床に停止したかご1のかごドア11の開閉動作に従動して開閉される。
【0032】
乗り場2の床面(床板やモルタル等の床材22の上面(図4(b))、又はその上に敷かれるマット、カーペット、タイルカーペット等の床材24の上面(図4(c)))は、かご1が到来するのを待機中、乗客が滞在する足下面となる。床面は、所定領域に、紫外線照射装置5を備える。本実施形態においては、所定領域は、出入口の手前に出入口と同じ幅を有する矩形の領域である。あるいは、複数の乗客の待機形態に鑑みれば、所定領域は、出入口の幅中心を中心として出入口の幅よりも大きな直径を有する半円形の領域であってもよい。
【0033】
図4に示すように、紫外線照射装置5のその他の構成は、第1実施形態に係る紫外線照射装置5の構成と同様である。この同様の構成についての記載は、第1実施形態における記載と同様であるとして、省略する。
【0034】
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータによっても、第1実施形態に係るエレベータが奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0035】
なお、乗り場2は、乗り場操作部25を備え、乗り場操作部25は、上方呼び登録ボタン及び下方呼び登録ボタンの呼び登録ボタン26を備える。また、乗り場操作部25は、行先階登録ボタン(図示しない)を備えることがある。これらのボタンは、押し操作されることにより、かご1が到来するのを待機する乗客がいることを検知するものであり、乗客を検知する検知手段の一形態である。乗り場2がこれらのボタンを備えることにより、一例として、紫外線照射装置5においては、乗客がいない間は、作動停止(消灯)し、ボタンの押し操作によって乗客が検知されると、作動(点灯)する、という制御を採用することができる。この場合、作動は、ボタンの押し操作が登録されている間は、継続するものであってもよいし、作動後一定時間経過すると、作動停止するものであってもよい。
【0036】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態として、紫外線照射装置を乗降口の床面に備えるエスカレータについて、図5及び図6を参酌して説明する。
【0037】
図5に示すように、エスカレータは、搬送部3と、乗降口4とを備える。搬送部3は、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。乗降口4は、乗り口4Aと降り口4Bとからなり、搬送部3の各端部に設けられる。本実施形態においては、エスカレータは、乗客を階下から階上に搬送する設定となっている。設定を逆に切り替えると、乗り口4Aは降り口に、降り口4Bは乗り口に切り替わり、乗客を階上から階下に搬送する設定となる。
【0038】
搬送部3は、無端搬送体30と、ハンドレール32と、欄干パネル33とを備える。無端搬送体30は、複数の踏段(ステップ)31,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール32は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体30と連動して循環駆動される。欄干パネル33は、下辺部がトラスに支持され、ハンドレール32を循環移動可能に支持する。ハンドレール32及び欄干パネル33は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0039】
乗降口4は、乗り口4A及び降り口4Bともに、床板40を備える。床板40は、乗降口4の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。床板40の先端縁は、無端搬送体30の上面に接し、搬送部3と乗降口4との境界を画する。
【0040】
乗降口4の床面(床板40の上面)は、乗客が通行する足下面となる。床面は、所定領域に、紫外線照射装置5を備える。本実施形態においては、所定領域は、通路と同じ幅を有する矩形の領域である。
【0041】
図6に示すように、紫外線照射装置5のその他の構成は、第1実施形態に係る紫外線照射装置5の構成と同様である。この同様の構成についての記載は、第1実施形態における記載と同様であるとして、省略する。
【0042】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータによっても、第1実施形態に係るエレベータが奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0043】
なお、乗降口4は、ポール(図示しない)を備えることがある。ポールは、通路の左右に一対設けられ、通路の端(始端及び終端)に設置される。乗客は、一対のポール間を通って、乗り口4Aに進入し、一対のポール間を通って、降り口4Bから退出する。ポールは、人検知センサを備える。人検知センサは、乗り口4Aに進入した乗客を検知し、降り口4Bから退出する乗客を検知するものであり、乗客を検知する検知手段の一形態である。人検知センサは、たとえば2種類がある。一つの人検知センサは、エリアセンサである。もう一つの人検知センサは、ラインセンサである。これらセンサの組み合わせにより、乗り口4Aに進入した乗客や降り口4Bから退出する乗客の数を正確に把握することができる。そして、エスカレータの種類として、乗客がいない(人検知センサによって乗客が検知されない)状態では、搬送部3が停止し、乗客がいる(人検知センサによって乗客が検知される)と、搬送部3の運転が開始される、いわゆる自動エスカレータがある。乗降口4が人検知センサを備えることにより、一例として、紫外線照射装置5においては、乗客がいない間は、作動停止(消灯)し、人検知センサが乗客を検知すると、作動(点灯)し、作動後一定時間経過して乗客が検知されないと、再び作動停止する、という制御を採用することができる。
【0044】
また、乗降口4は、紫外線殺菌を実施している旨及び殺菌のために一定時間滞在することを要請する旨を表示する案内表示部(図示しない)を備えることができる。案内表示部は、ポールの表面に貼られたステッカー、ラベル、プレート等の公知の表示手段である。あるいは、案内表示部は、これに加え、又は、これの代わりに、ポール等に設けられたディスプレイを用いた視覚的表示部や、ポール又はこの近辺に設けられたスピーカを用いた音声表示部を採用することもできる。これらの場合、乗降口4(のポール)の人検知センサが乗客を検知するたびに、表示を行うようにしてもよい。これらの構成によれば、搬送部3に乗り込もうとする乗客が殺菌を受けた後、次に搬送部3に乗り込もうとする乗客が殺菌を受けるまでに、所定時間の待機状態が発生する。これにより、必然的に乗客同士が引き離され、乗客間の間隔が広くなる乗客搬送態様となる。このため、エスカレータ上での乗客の集中を効果的に防ぐことができ、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を実現することができる。ただし、降り口4Bの案内表示部においても、同様の表示が行われるとすると、降り口4Bで乗客が滞留するおそれがあり、安全上好ましくない。そこで、制御部は、案内表示部の作動モードと不作動モードとの切り替えを可能とし、降り口4Bの案内表示部においては、不作動とされることが好ましい。
【0045】
<第4実施形態>
以下、本発明に係る第4実施形態として、紫外線照射装置を踏段の踏面に備えるエスカレータについて、図5及び図7を参酌して説明する。なお、第3実施形態及び第4実施形態を組み合わせるか否か、すなわち、紫外線照射装置を乗降口の床面及び踏段の踏面の両方に設けるか、又は、いずれか一方のみに設けるかは、適宜選択すべき事項である。
【0046】
図5に示すように、踏段31の踏面(踏段31の水平部の上面)は、搬送部3の移動中、乗客が滞在する足下面となる。各踏段31の踏面は、所定領域に、紫外線照射装置5を備える。本実施形態においては、所定領域は、左右及び奥側の外縁が踏面の外縁よりも若干内側となり、手前側の外縁が踏面の外縁と一致する矩形の領域である。
【0047】
図7に示すように、踏段31は移動体であるところ、第1実施形態のかご1の床基部13、第2実施形態の乗り場2の床基部(床スラブ)23、第3実施形態の乗降口4の床基部(トラスの上部水平部)41といった床基部は存在しない。そこで、本実施形態においては、紫外線出射部50は、所定厚みの離間部54をあけて、踏段31の水平部の下面又は導光板53に(直接又は間接的に)固定される。
【0048】
なお、紫外線出射部50が、第1実施形態のかご1の床基部13、第2実施形態の乗り場2の床基部(床スラブ)23、第3実施形態の乗降口4の床基部(トラスの上部水平部)41といった床基部に配置される場合は、エレベータやエスカレータの電源系統から給電を受けることができる。しかし、本実施形態においては、紫外線出射部50は、踏段31という可動部に配置される。そこで、紫外線出射部50への給電方法としては、ワイヤレス給電、摺動式給電、バッテリ、発電機(ダイナモ)等が採用可能である。ワイヤレス給電では、固定側(トラス等)に送電コイルが設置され、踏段31側に受電コイルが設置される。摺動式給電では、固定側(トラス等)に踏段31の移動方向に沿って給電線が設置され、踏段31側に給電線に摺接する受電体が設置される。バッテリは、踏段31側に設置される。発電機は、たとえば踏段31の後輪(後述)の回転により発電するもので、踏段31側に設置される。
【0049】
紫外線照射装置5のその他の構成は、第1実施形態及び第3実施形態に係る紫外線照射装置5の構成と同様である。この同様の構成についての記載は、第1実施形態及び第3実施形態における記載と同様であるとして、省略する。
【0050】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータによっても、第1実施形態に係るエレベータが奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0051】
<第5実施形態>
以下、本発明に係る第5実施形態として、第4実施形態とは異なる形態で紫外線照射装置を踏段の踏面に備えるエスカレータについて、図8を参酌して説明する。なお、第3実施形態及び第5実施形態を組み合わせるか否か、すなわち、紫外線照射装置を乗降口の床面及び踏段の踏面の両方に設けるか、又は、いずれか一方のみに設けるかは、適宜選択すべき事項である。
【0052】
第4実施形態では、紫外線出射部50は、踏段31の水平部の下面に(直接又は間接的に)固定され、踏段31の移動に伴って移動する。これに対し、本実施形態では、図8に示すように、紫外線出射部50は、トラス42の傾斜部に(直接又は間接的に)固定され、不動である。より詳しくは、踏段31の後輪31c(図8(b)では図示省略)は、トラス42に(直接又は間接的に)固定されたガイドレール43の上を転動する。これにより、踏段31の水平部は、エスカレータの傾斜部においても、水平に維持される。踏段31の後輪31cは、踏段31の幅方向両端2箇所に設けられ、これに伴い、ガイドレール43は、互いに離間して平行して一対設けられる。この一対のガイドレール43,43間は、踏段31の構成が通過せず、踏段31と干渉することがない空間部である。紫外線出射部50は、この空間部に配置される。
【0053】
踏段31の移動方向における紫外線出射部50の長さは、1段の踏段31に対応した長さであってもよい。この場合、1段の踏段31の踏面は、紫外線照射装置5を備える。あるいは、紫外線出射部50の長さは、2段、3段又はこれ以上の複数段の踏段31,…に対応した長さであってもよい。この場合、複数段の踏段31の踏面に亘って、紫外線照射装置5を備える。
【0054】
紫外線照射装置5のその他の構成は、第1実施形態、第3実施形態及び第4実施形態に係る紫外線照射装置5の構成と同様である。この同様の構成についての記載は、第1実施形態、第3実施形態及び第4実施形態における記載と同様であるとして、省略する。
【0055】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータによっても、第1実施形態に係るエレベータが奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0056】
<その他の実施形態>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
上記実施形態においては、透過部は、多数の透孔12b,…で構成される関係から、互いに間隔を有して足下面(床面や踏面)の所定領域の全域に亘って多数形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、透過部は、足下面の所定領域の全域に形成される単一の透過部や、足元面の所定領域が複数の領域に分割され、各領域に形成される複数の透過部であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、多数の透過部は、格子状に配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。透過部が多数である場合の配置パターンは、たとえば、千鳥状、縦横比が異なる格子状、所定の単位パターンの連続配置等、適宜選択することができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、紫外線源52は、透過部に対応して設けられ、各透過部と同軸に配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。導光板を備えることにより、紫外線が面方向に均一に拡散される作用が得られるのであれば、紫外線源の配置は、透過部と無関係に設定することができる。他方、本発明においては、導光板は、必須ではなく、選択的事項である。あるいは、導光板を備えるとしても、凸部は、必須ではなく、これも選択的事項である。
【0060】
また、上記第3実施形態においては、乗客コンベアとして、エスカレータが例示される。しかし、本発明は、乗客コンベアとして、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【0061】
また、上記第4実施形態においては、各踏段31が紫外線照射装置5を備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、紫外線照射装置は、踏段の1段おき、又は2段おき、又は3段おきに設けられるようにしてもよい。この場合、乗客が紫外線照射装置を備える踏段であることを理解し、この踏段に乗るよう、紫外線照射装置を備える踏段は、踏面に所定の表示を備える。
【0062】
また、上記実施形態においては、紫外線照射装置5の作動(点灯)時は、すべての紫外線源52がONになる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図9に示すように、足下面の所定領域が複数の領域に分割され、各領域に、検知センサ55が設けられ(配線は図示しない)、乗客の靴底に反応した検知センサ55に係る領域における紫外線源52だけがONになるように、紫外線出射部50が領域を分割して作動制御されるようにしてもよい。
【0063】
また、「矩形」、「円形」、「中心」、「全域」、「同じ」、「面一」、「一致」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【符号の説明】
【0064】
1…かご、10…かご室、11…かごドア、12…床板、12a…透過部、12b…透孔、13…床基部、14…床材、14a…透孔、2…乗り場、20…三方枠、21…乗り場ドア、22…床材、22a…透過部、22b…透孔、23…床基部(床スラブ)、24…床材、24a…透孔、25…乗り場操作部、26…呼び登録ボタン、3…搬送部、30…無端搬送体、31…踏段(ステップ)、31a…透過部、31b…透孔、31c…後輪、32…ハンドレール、33…欄干パネル、4…乗降口、4A…乗り口、4B…降り口、40…床板、40a…透過部、40b…透孔、41…床基部(トラスの上部水平部)、42…トラス、43…ガイドレール、5…紫外線照射装置、50…紫外線出射部、51…基板、52…紫外線源(紫外線LED)、53…導光板、53a…板部、53b…凸部、54…離間部、55…検知センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が通行又は一定時間滞在する足下面の所定領域に形成される紫外線透過性を有する透過部と、
透過部に対応して足下面の下方に配置される紫外線出射部と
透過部に対応して足下面と紫外線出射部との間に配置される導光板とを備える
乗客搬送装置。
【請求項2】
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、かごの床面に設定される
請求項1に記載の乗客搬送装置。
【請求項3】
乗客搬送装置は、エレベータであり、
所定領域は、乗り場の床面に設定される
請求項1又は請求項2に記載の乗客搬送装置。
【請求項4】
乗客搬送装置は、循環駆動される無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアであり、
所定領域は、乗降口の床面に設定される
請求項1に記載の乗客搬送装置。
【請求項5】
乗客搬送装置は、エスカレータであり、
所定領域は、踏段の踏面に設定される
請求項1又は請求項4に記載の乗客搬送装置。
【請求項6】
透過部は、
所定領域の全域に亘って形成される多数の透孔と、
導光板の板部の上面から突出し、各透孔を埋める多数の凸部とで構成される
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の乗客搬送装置。
【請求項7】
乗客を検知する検知手段を備え、
紫外線出射部は、検知手段による検知結果に応じて、作動制御される
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の乗客搬送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明に係る乗客搬送装置は、
乗客が通行又は一定時間滞在する足下面の所定領域に形成される紫外線透過性を有する透過部と、
透過部に対応して足下面の下方に配置される紫外線出射部と
透過部に対応して足下面と紫外線出射部との間に配置される導光板とを備える
乗客搬送装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明に係る乗客搬送装置のさらに別の態様として、
透過部は、
所定領域の全域に亘って形成される多数の透孔と、
導光板の板部の上面から突出し、各透孔を埋める多数の凸部とで構成される
との構成を採用することができる。