(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095259
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】テニスボール用パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B65D81/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208479
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
(72)【発明者】
【氏名】青木 和美
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA17
3E067AB99
3E067AC03
3E067AC11
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA24
3E067EA09
3E067EB07
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA16
3E067GD10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い内圧を必要とするテニスボール用パウチにおいて、手による開封が可能なテニスボール用パウチを提供する。
【解決手段】テニスボール20を加圧した状態で収納し保存するためのパウチ1であって、ガスバリア層とシーラント層を有する積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部とシール部3、4、5を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチ7を有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの張り出し形状部8を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テニスボールを加圧した状態で収納し保存するためのパウチであって、ガスバリア層とシーラント層を有する積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチを有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの張り出し形状部を有することを特徴とするテニスボール用パウチ。
【請求項2】
収納部と前記張り出し形状部との間の開口部の幅よりも、張り出し形状部の縦寸法の方が長く、開口部を形成するシール部がくびれて、くびれ部を形成していることを特徴とする請求項1に記載のテニスボール用パウチ。
【請求項3】
くびれ部の横幅は、2mm以上であることを特徴とする請求項2に記載のテニスボール用パウチ。
【請求項4】
開口部の幅は、2mm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のテニスボール用パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスボールを収納して保存するために用いるパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
プレッシャーボールと呼ばれる試合用のテニスボールは、内部に窒素ガスが封入されており、大気中に放置すると中の窒素ガスが徐々に抜けて内圧が下がるため、従来、新品のテニスボールは金属缶に密封収納し、缶内に窒素を封入して圧力を上げた状態で保存することが一般的に行われている。圧力としては、ゲージ圧として0.1MPa程度の圧力が必要とされている。
【0003】
金属缶は高価であるため、より安価な包装で金属缶を代替する試みが種々なされている。特許文献1に記載されたプラスチック製ブロー成型容器は、広口の開口部を有するプラスチック製二軸延伸ブロー成型容器において、容器の開口部付近の内側に、内容物の飛び出し防止のための凸部を設けたことを特徴とするプラスチック製ブロー成型容器である。この容器は、蓋としてアルミニウム製の蓋を使用しているため、廃棄時の分別が面倒であるという欠点がある。
【0004】
特許文献2に記載された包装体および包装体に気体を封入する方法は、さらに軟包装袋によってテニスボール用の容器を実現しようとしたものであり、包装袋内に空気を封入する方法についても記載している。この包装体は、気体を透過し難いガスバリア性フィルムを使用することにより、封入した気体の抜けを防止することに成功したもので、プラスチック材料のみを使用しているため、廃棄時の分別が不要であり、製造コストの点においても特許文献1に記載されたプラスチック製ブロー成型容器に比較して有利である。
【0005】
一方、包装袋を開封する方法として、シール部のいずれかの箇所に開封開始用のノッチを設け、ノッチから積層体に裂け目を入れてシール部を引き裂くことが一般的に行われている。しかし特許文献2に記載された包装体のように、大きな内圧をかける場合、通常の包装袋のシール部では、シール後退を招く恐れがあるため、通常の包装袋よりも強力なシール強度が必要となり、シール幅もそれなりに大きくする必要がある。
【0006】
一般的にシール強度を大きくするためには、シーラント層を厚くする必要があり、従って積層体も厚くなり、シール幅も大きいため、手による開封が困難とならざるを得なかった。また、内圧の掛かった包装袋は、シール部の内端において積層体が急な角度で立ち上がっているため、シール部を通過した後も裂け目が止まってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-256738号公報
【特許文献2】特開2012-111556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、高い内圧を必要とするテニスボール用パウチにおいて、手による開封が可能なテニスボール用パウチを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、テニスボールを加
圧した状態で収納し保存するためのパウチであって、ガスバリア層とシーラント層を有する積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチを有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの張り出し形状部を有することを特徴とするテニスボール用パウチである。
【0010】
本発明に係るテニスボール用パウチは、ノッチと収納部の間に未シールの張り出し形状部を設けたことにより、開封が容易となった。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、収納部と前記張り出し形状部との間の開口部の幅よりも、張り出し形状部の縦寸法の方が長く、開口部を形成するシール部がくびれて、くびれ部を形成していることを特徴とする請求項1に記載のテニスボール用パウチである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、くびれ部の横幅が、2mm以上であることを特徴とする請求項2に記載のテニスボール用パウチである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、開口部の幅が、2mm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のテニスボール用パウチである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るテニスボール用パウチは、開封開始部であるノッチと、収納部との間に、未シールの張り出し形状部を設けたことにより、切断すべきシール部の幅が狭くなると共に、シール部を通過した時点での表裏積層体の開き角度が小さくなることからさらに開封し易くなるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るテニスボール用パウチの一実施態様を示した平面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A´断面を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1のB-B´断面を示した断面模式図である。
【
図4】
図4は、開封時に、シール部と表面積層体とのなす角度αについて示した断面説明図であり、
図4(1)は、張り出し形状部の無い場合を、(2)は、張り出し形状部の有る場合を示している。
【
図5】
図5は、
図1の点線部分の拡大図であり、張り出し形状部に関連する諸寸法についての説明図である。
【
図6】
図6は、張り出し形状部の他の形状の例を示した説明図である。
【
図7】
図7は、張り出し形状部の他の形状の例を示した説明図である。
【
図8】
図8は、張り出し形状部の他の形状の例を示した説明図である。
【
図9】
図9は、張り出し形状部の他の形状の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しながら、本発明に係るテニスボール用パウチについて詳細に説明する
。
図1は、本発明に係るテニスボール用パウチ1の一実施態様を示した平面模式図である。
図2は、
図1のA-A´断面を示した断面模式図である。
図3は、
図1のB-B´断面を示した断面模式図である。また
図5は、
図1の点線部分の拡大図であり、張り出し形状部8に関連する諸寸法についての説明図である。
【0017】
本発明に係るテニスボール用パウチ1は、テニスボール20を加圧した状態で収納し保存するためのパウチであって、ガスバリア層とシーラント層を有する積層体2のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部11とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチ7を有し、ノッチ7と収納部11との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの張り出し形状部8を有することを特徴とするテニスボール用パウチである。
【0018】
図1に示した例では、
図5の拡大図に示したように、張り出し形状部8は、上下に長い楕円形であり、収納部11と張り出し形状部8との間の開口部9の幅(W)よりも、張り出し形状部8の縦寸法の方が長く、開口部9を形成するシール部がくびれて、くびれ部10を形成している。
【0019】
図1に示した例では、トップシール部4に逆止弁6が取り付けられている。逆止弁は、パウチにテニスボールを収納して、周縁部を熱シールした後に、ここから窒素ガスを圧入するための弁である。逆止弁は、外から中に向かってガスを注入することはできるが、注入したガスが中から外には漏れ出ることはない。逆止弁としては、公知の逆止弁が使用できる。
【0020】
図4は、開封時に、サイドシール部3と表面積層体2とのなす角度αについて示した断面説明図であり、
図4(1)は、張り出し形状部の無い場合を、(2)は、張り出し形状部8の有る場合を示している。張り出し形状部8が存在することにより、サイドシール部3の切断しなければならない長さ自体が半減することが分かる。これに加えて、シール部3の切断が終了し、収納部11にかかる位置における積層体2とシール部3とのなす角度αを比較すると、張り出し形状部のない(1)の場合に比較し、張り出し形状部8が存在する場合には、αが鈍角になるのが分かる。最も切り易いのは、αが180°の場合であって、シール部3の切れ目は、何の抵抗もなく収納部11に入って行く。(1)の場合のようにαが90°に近いような場合には、シール部3の切れ目が止まってしまうのであるが、(2)の場合のように、張り出し形状部8が存在することにより、αが鈍角になり、切れ目が止まってしまうことを防ぐことができる。
【0021】
図5において、開口部9の幅Wの値については、2mm以上であることが望ましい。2mm未満であると、閉塞する恐れがある。またくびれ部10の幅Tについては、2mm以上であることが望ましい。2mm未満であると、内圧によるシール後退が生じる恐れがある。ノッチ7と張り出し形状部8との距離Dは、5mm以上が望ましい。5mm未満であると、輸送中に切れてしまう場合がある。張り出し形状部8の縦寸法は、10mm以上であることが望ましい。張り出し形状部8の横寸法は、シール部の幅とノッチ7の寸法によって規定される。
【0022】
図7~9は、本発明に係るテニスボール用パウチの他の実施態様を示した説明図である。
図7の例は、張り出し部形状が三角形の場合であり、
図8の例は、張り出し部形状が菱形の例である。また
図9の例は、張り出し部形状が長方形であり、張り出し部形状の縦寸法と開口部幅が等しくて、くびれ部が存在しない例である。このように、張り出し部形状については、特に制約されない。
【0023】
本発明に係るテニスボール用パウチ1に使用する積層体2の構成について述べる。積層
体2の基本的な構成としては、基材フィルム/ガスバリアフィルム/シーラントフィルムであるが、基材フィルムとガスバリアフィルムが共通でも良い。また全体の強度を向上させるために、適宜中間層を加えることができる。
【0024】
積層体2を構成する基材フィルムとしては、各種合成樹脂フィルムが使用できる。具体的には、延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、アイオノマー樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)等の熱可塑性樹脂フィルムが使用できる。
【0025】
ガスバリアフィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを用いることができる。中でもPET樹脂フィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物を蒸着した無機酸化物蒸着フィルムは好適に使用できる。なお包装材料のガスバリア層として一般的に使用されているアルミニウム箔は、パウチ内部加圧に起因するテンションによって微細なクラックが生じる場合があることが確認されている。
【0026】
シーラントフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用される。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0027】
中間層としては、基材フィルムとして用いられる合成樹脂フィルムと同様の合成樹脂フィルムを使用することができる。これらの各層は、ドライラミネート用接着剤を用いて貼り合わせることができる。以下実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0028】
<実施例1>
厚さ12μmのPETフィルム基材に酸化ケイ素を蒸着した無機蒸着フィルム(凸版印刷社製GLフィルム)を基材フィルムとガスバリアフィルムを兼ねたものとして用い、これに中間層として厚さ25μmのナイロンフィルムを用い、さらにシーラント層として厚さ120μmのLLDPEフィルムを用いて、これらをドライラミネートして積層体を作製した。
【0029】
2枚の積層体をシーラント層を内側にして対向させ、ボトムシール部を除く周縁を熱シールした後にテニスボール2個を入れ、ボトムシール部を熱シールして
図1に示したような包装体を作製した。逆止弁から窒素ガスを封入して、内圧を0.1MPaとした。サイドシール部のシール幅は20mmであり、張り出し形状部の縦寸法を15mm、横寸法を10mm、開口部の幅Wを3mmとした。くびれ部の幅Tは2mm、ノッチと張り出し形状部との距離Dは5mmとした。この包装体について、開封性を評価した。
【0030】
<実施例2>
開口部の幅Wを5mmとした以外は、実施例1と同様にして包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0031】
<実施例3>
開口部の幅Wを10mmとした以外は、実施例1と同様にして包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0032】
<実施例4>
張り出し形状部の形状を
図6に示したような長方形形状とした以外は、実施例1と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0033】
<実施例5>
開口部の幅Wを5mmとした以外は、実施例4と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0034】
<実施例6>
開口部の幅Wを10mmとした以外は、実施例4と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0035】
<比較例1>
張り出し形状部を設けなかった以外は、実施例1と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0036】
<比較例2>
開口部の幅Wを1mmとした以外は、実施例1と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0037】
<比較例3>
開口部の幅Wを15mmとした以外は、実施例1と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0038】
<比較例4>
開口部の幅Wを1mmとした以外は、実施例4と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0039】
<比較例5>
開口部の幅Wを15mmとした以外は、実施例4と同様に包装体を作製し、同様に開封性を評価した。
【0040】
以上の結果を表1にまとめた。
【0041】
【0042】
表1の結果から、張り出し部形状が
図5、
図6の場合には、いずれも開口部の幅Wが3mm~10mmであれば、良好な結果が得られることが判明した。
【符号の説明】
【0043】
1・・・テニスボール用パウチ
2・・・積層体
3・・・サイドシール部
4・・・トップシール部
5・・・ボトムシール部
6・・・逆止弁
7・・・ノッチ
8・・・張り出し形状部
9・・・開口部
10・・・くびれ部
11・・・収納部
W・・・開口部の幅
T・・・くびれ部の幅
D・・・張り出し形状部とノッチとの距離
α・・・収納部積層体とシール部との角度
20・・・テニスボール
21・・・圧縮ガス