(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095260
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】加圧パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20220621BHJP
B65D 30/24 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
B65D81/20 F
B65D30/24 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208480
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 和美
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA03
3E064AB13
3E064AB14
3E064BA21
3E064BA24
3E064BA36
3E064BB03
3E064EA30
3E064GA02
3E064HM02
3E064HN05
3E064HP01
3E064HR05
3E067AA17
3E067AB99
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC03A
3E067CA04
3E067CA24
3E067EA06
3E067FA01
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、高い内圧の掛かった加圧パウチにおいても、手で容易に開封することができる加圧パウチを提案するものである。
【解決手段】大気圧よりも高い圧力に加圧した状態で内容物を収納し保存するための加圧パウチ1であって、それぞれガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体2と裏面積層体3のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部10とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチ7を有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの異形加工部8を有し、ノッチから出発したシール部の切れ目が異形加工部に到達した点における表面積層体と裏面積層体のなす角度(開封角度α)が100°以下であることを特徴とする加圧パウチである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも高い圧力に加圧した状態で内容物を収納し保存するための加圧パウチであって、それぞれガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体と裏面積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチを有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの異形加工部を有し、ノッチから出発したシール部の切れ目が異形加工部に到達した点における表面積層体と裏面積層体のなす角度(開封角度α)が100°以下であることを特徴とする加圧パウチ。
【請求項2】
加圧時のパウチの短辺の直径を(D)、パウチの長辺の内寸を(L)、パウチの長辺の中央から前記異形加工部の中心までの距離を(A)とした時、A>Dであることを特徴とする請求項1に記載の加圧パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に気体を充填して加圧した状態で使用するパウチに関し、特に手で容易に開封することができる加圧パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスボールのように、内部に加圧した気体が充填されており、大気圧に放置すると徐々に内部の気体が抜けてしまうような物品を安定して保存するためには、テニスボールを収納した容器内部にも加圧した気体を封入して、テニスボール内部の気体の抜けを防ぐことが必要とされている。
【0003】
プレッシャーボールと呼ばれる試合用のテニスボールは、内部に窒素ガスが封入されており、大気中に放置すると中の窒素ガスが徐々に抜けて内圧が下がるため、従来、新品のテニスボールは金属缶に密封収納し、缶内に窒素を封入して圧力を上げた状態で保存することが一般的に行われている。圧力としては、ゲージ圧として0.1MPa程度の圧力が必要とされている。
【0004】
金属缶は高価であるため、より安価な包装で金属缶を代替する試みが種々なされている。特許文献1に記載されたプラスチック製ブロー成型容器は、広口の開口部を有するプラスチック製二軸延伸ブロー成型容器において、容器の開口部付近の内側に、内容物の飛び出し防止のための凸部を設けたことを特徴とするプラスチック製ブロー成型容器である。この容器は、蓋としてアルミニウム製の蓋を使用しているため、廃棄時の分別が面倒であるという欠点があった。
【0005】
特許文献2に記載された包装体および包装体に気体を封入する方法は、さらに軟包装袋によってテニスボール用の容器を実現しようとしたものであり、包装袋内に空気を封入する方法についても記載している。この包装体は、気体を透過し難いガスバリア性フィルムを使用することにより、封入した気体の抜けを防止することに成功したもので、プラスチック材料のみを使用しているため、廃棄時の分別が不要であり、製造コストの点においても特許文献1に記載されたプラスチック製ブロー成型容器に比較して有利である。
【0006】
一方、包装袋を開封する方法として、シール部のいずれかの箇所に開封開始用のノッチを設け、ノッチから積層体に裂け目を入れてシール部を引き裂くことが一般的に行われている。しかし特許文献2に記載された包装体のように、内圧の掛かった包装袋においては、シール部の内端において積層体が急な角度で立ち上がっているため、シール部を通過した後に裂け目がそこで止まってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-256738号公報
【特許文献2】特開2012-111556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、高い内圧の掛かった加圧パウチにおいても、手で容易に開封することができる加圧パウチを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、大気圧よりも高い圧力に加圧した状態で内容物を収納し保存するための加圧パウチであって、それぞれガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体と裏面積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部とシール部を形成してなり、シール部には、開封開始部となるノッチを有し、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの異形加工部を有し、ノッチから出発したシール部の切れ目が異形加工部に到達した点における表面積層体と裏面積層体のなす角度(開封角度α)が100°以下であることを特徴とする加圧パウチである。
【0010】
本発明に係る加圧パウチは、ノッチと収納部との間に、収納部からノッチに向かって張り出した未シールの異形加工部を設けたことにより、ノッチから出発したシール部の切れ目が異形加工部に到達した点における表面積層体と裏面積層体のなす角度(開封角度α)を100°以下とすることが可能となり、開封性が良好となった。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、加圧時のパウチの短辺の直径を(D)、パウチの長辺の内寸を(L)、パウチの長辺の中央から前記異形加工部の中心までの距離を(A)とした時、A>Dであることを特徴とする請求項1に記載の加圧パウチである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加圧パウチは、開封開始部であるノッチと収納部との間に未シールの異形加工部を設けたことにより、ノッチから出発したシール部の切れ目が、異形加工部に到達した点における表面積層体と裏面積層体のなす角度(開封部角度)が100°以下となり、その結果、シール部の切れ目が表面積層体と裏面積層体とに円滑に移行し、開封が容易に行われる。
【0013】
請求項2に記載の発明のように、加圧時のパウチの短辺の直径を(D)、パウチの長辺の内寸を(L)、パウチの長辺の中央から前記異形加工部の中心までの距離を(A)とした時、A>Dとした場合には、開封位置がパウチ中央よりも離れた場所となるため開封性がより良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る加圧パウチの構造や各部の寸法等を記した平面説明図である。
【
図2】
図2は、
図1のB-B´断面を示した断面模式図であり、開封角度αの説明図である。
【
図3】
図3は、
図1のC-C´断面を示した断面模式図であり、短辺の直径D、および、異形加工部が存在しない場合の開封角度αの説明図である。
【
図4】
図4は、異形加工部の形状の例を示した拡大平面模式図である。
【
図5】
図5は、異形加工部の形状の他の例を示した拡大平面模式図である。
【
図6】
図6は、異形加工部の形状の他の例を示した拡大平面模式図である。
【
図7】
図7は、異形加工部の形状の他の例を示した拡大平面模式図である。
【
図8】
図8は、異形加工部の形状の他の例を示した拡大平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る加圧パウチについて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る加圧パウチ1の構造や各部の寸法等を記した平面説明図である。
図2は、
図1のB-B´断面を示した断面模式図であり、開封角度αの説明図である。
図3は、
図1のC-C´断面を示した断面模式図であり、短辺の直径D、および、異形加工部が存在しない場合の開封角度αの説明図である。
【0016】
本発明に係る加圧パウチ1は、大気圧よりも高い圧力に加圧した状態で内容物を収納し保存するための加圧パウチであって、それぞれガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体2と裏面積層体3のシーラント層同士を対向させ、周縁部を熱シールして、収納部10とシール部を形成してなる。この例ではシール部は、トップシール部4、サイドシール部5、5、ボトムシール部6の4辺に形成されている。サイドシール部が片側だけの3方シール袋でもよい。
【0017】
図1に示した例では、トップシール部4に逆止弁9が取り付けられている。逆止弁は、パウチにテニスボール等の内容物を収納して、周縁部を熱シールした後に、ここから窒素ガスを圧入するための弁である。逆止弁は、外から中に向かってガスを注入することはできるが、注入したガスが中から外には漏れ出ることはない。逆止弁としては、公知の逆止弁が使用できる。
【0018】
サイドシール部5には、開封開始部となるノッチ7を有し、ノッチ7と収納部10との間に、収納部10からノッチ7に向かって張り出した未シールの異形加工部8が形成されている。
図2に示したように、本発明に係る加圧パウチは、ノッチ7から出発したサイドシール部5の切れ目が異形加工部8に到達した点における表面積層体2と裏面積層体3のなす角度(開封角度α)が100°以下であることを特徴とする。
【0019】
図3は、
図1のC-C´断面を示した断面模式図であり、短辺の直径Dの説明図である。これはまた、異形加工部8が存在しない場合の開封角度αの説明図ともなっている。異形加工部が存在しない場合には、パウチの断面はほぼ円形になっている。
【0020】
図2、
図3の比較から明らかなように、異形加工部8が存在することにより、ノッチ7から出発したサイドシール部5の切れ目がシール部端部の異形加工部8に到達した点における表面積層体2と裏面積層体3のなす角度すなわち開封角度αは、
図3の場合に比較して明らかに小さくなっていることが分かる。
【0021】
開封角度αは、異形加工部8が存在しない場合には、ほぼ180°に近い数値となるが、異形加工部を設けることにより、小さい値となる。種々検討した結果、開封角度αが100°以下であれば、開封性が良好であることが判明したのである。
【0022】
開封角度αが100°を超える場合には、シール部を進んできた切れ目が収納部に到達した時点で、進まなくなってしまう恐れがある。
【0023】
図4、
図5は、異形加工部8の形状の例を示した拡大平面模式図である。
図4の例では、異形加工部8の形状は、楕円形の半分に近い。
図5の例では、長方形である。異形加工部8の形状については、特に制約はなく、開封角度αが100°以下となるような形状であれば、いかなる形状でも良い。
図6~8は、いずれも異形加工部8の形状の例を示した拡大平面模式図である。
【0024】
本発明に係る加圧パウチ1に使用する積層体の構成について述べる。積層体の基本的な構成としては、基材フィルム/ガスバリアフィルム/シーラントフィルムであるが、基材フィルムとガスバリアフィルムが共通でも良い。また全体の強度を向上させるために、適
宜中間層を加えることができる。
【0025】
積層体を構成する基材フィルムとしては、各種合成樹脂フィルムが使用できる。具体的には、延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、アイオノマー樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)等の熱可塑性樹脂フィルムが使用できる。
【0026】
ガスバリアフィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを用いることができる。中でもPET樹脂フィルムに酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物を蒸着した無機酸化物蒸着フィルムは好適に使用できる。なお包装材料のガスバリア層として一般的に使用されているアルミニウム箔は、パウチ内部加圧に起因するテンションによって微細なクラックが生じる場合があることが確認されている。
【0027】
シーラントフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用される。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0028】
中間層としては、基材フィルムとして用いられる合成樹脂フィルムと同様の合成樹脂フィルムを使用することができる。これらの各層は、ドライラミネート用接着剤を用いて貼り合わせることができる。以下実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0029】
<実施例1>
厚さ12μmのPETフィルム基材に酸化ケイ素を蒸着した無機蒸着フィルム(凸版印刷社製GLフィルム)を基材フィルムとガスバリアフィルムを兼ねたものとして用い、これに中間層として厚さ25μmのナイロンフィルムを用い、さらにシーラント層として厚さ120μmのLLDPEフィルムを用いて、これらを接着剤を用いてドライラミネートして積層体を作製した。
【0030】
積層体の4周を熱シールして加圧パウチを作製した。サイドシール部の下部には
図6に示したような形状の異形加工部とノッチを設けた。コーナー部にシール部を斜めに増やし、楕円形の異形加工部の角度を斜めのシール部に沿って傾斜させた。異形加工部の開口幅は30mmで、深さは10mmである。トップシール部には逆止弁を取り付けた。逆止弁からパウチの内部に空気を0.1MPaとなるように注入し、ノッチからの開封性を評価した。開封角度αは、100°であった。
【0031】
<実施例2>
異形加工部の形状を
図7のように変更し、収納部への開口を狭くした。異形加工部の開口幅は20mmで、深さは10mmである。それ以外は、実施例1と同様にして加圧パウチを作製した。開封角度αは、95°であった。
【0032】
<実施例3>
異形加工部の形状を
図8のように変更し、収納部への開口を狭くした、くびれ形状とした。異形加工部の開口幅は3mmで、深さは10mmである。楕円形状の異形加工部の幅は10mmである。それ以外は、実施例1と同様にして加圧パウチを作製した。開封角度αは、10°であった。
【0033】
<比較例1>
異形加工部を設けなかった以外は、実施例1と同様にして加圧パウチを作製した。開封角度αは、140°であった。
【0034】
<参考例>
異形加工部は設けず、空気を注入しなかった場合。開封角度αは、0°である。以上の結果を表1にまとめた。
【0035】
<開封性の評価>
◎:ノッチからシール部を切り進める力と同じ力で切り開けられた場合。
〇:同じ力では、切り開けることができなかったが、容易に切ることができた場合。
△:大きな力が必要だが、何とか切ることができた場合。
×:シール部の終点で引っ掛かって切ることができなかった場合。
【0036】
【0037】
この結果から、異形加工部を設けることにより、開封性が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・加圧パウチ
2・・・表面積層体
3・・・裏面積層体
4・・・トップシール部
5・・・サイドシール部
6・・・ボトムシール部
7・・・ノッチ
8・・・異形加工部
9・・・逆止弁
10・・・収納部
D・・・パウチの短辺の直径
L・・・パウチの長辺の内寸
A・・・パウチの中央から異形加工部までの距離
α・・・開封角度