(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095301
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】遺言メッセージ動画の管理・配信システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220621BHJP
H04N 21/274 20110101ALI20220621BHJP
H04N 21/235 20110101ALI20220621BHJP
【FI】
G06Q50/10
H04N21/274
H04N21/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208543
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】399097199
【氏名又は名称】株式会社きんざい
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
【テーマコード(参考)】
5C164
5L049
【Fターム(参考)】
5C164FA27
5C164MA04S
5C164SB06P
5C164SB36S
5C164SD11P
5L049CC14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遺言書に従った確実なメッセージ動画を提供する遺言メッセージ動画の管理・配信システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】遺言メッセージ動画の管理・配信システムは、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画と、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した第1遺言書画像データと、を受け付ける。そして、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データとを紐付け、第1遺言書画像データを動画の配信認証情報として登録する。開封に伴って撮影された遺言書の第2遺言書画像データを受信し、受信した第2遺言書画像データを配信認証情報として登録されている第1遺言書画像データと照合する。照合結果に基づいて第2遺言書画像データを送信した端末に、遺言メッセージ動画を配信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺言メッセージ動画の管理・配信システムであって、
遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を受信する動画受付部と、
開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した第1遺言書画像データを受信する遺言書画像受付部と、
前記遺言メッセージ動画と前記第1遺言書画像データとを紐付け、前記第1遺言書画像データを前記遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する動画登録部と、
遺言者の相続人が受領した遺言書の撮影画像データであって、開封に伴って撮影された第2遺言書画像データを受信し、受信した前記第2遺言書画像データを前記第1遺言書画像データと照合する動画配信認証部と、
前記動画配信認証部の照合結果に基づいて、前記第2遺言書画像データを送信した端末に、前記遺言メッセージ動画を配信する動画配信部と、
を有することを特徴とする遺言メッセージ動画の管理・配信システム。
【請求項2】
前記第1遺言書画像データ及び前記第2遺言書画像データは、遺言者による自筆部分または押印部分、又は、代筆した公証人による自筆部分または押印部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の遺言メッセージ動画の管理・配信システム。
【請求項3】
前記遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、又は秘密証書遺言であり、
前記所定の保管場所は、金融機関が提供する遺言者名義の貸金庫、法務局又は公証役場による保管場所、または相続人以外の遺言執行者による保管場所である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の遺言メッセージ動画の管理・配信システム。
【請求項4】
前記動画受付部は、受信した前記遺言メッセージ動画内の法的妥当性に関する専門家のリーガルチェックの有無を受信し、前記遺言メッセージ動画と関連付けて記憶し、
前記動画登録部は、リーガルチェック済の前記遺言メッセージ動画を対象に、前記第1遺言書画像データを配信認証情報として登録することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の遺言メッセージ動画の管理・配信システム。
【請求項5】
カメラ装置が搭載された前記端末にインストールされるアプリケーションモジュールを記憶する記憶部と、
前記端末に、前記アプリケーションモジュールをダウンロードさせるダウンロード制御部と、をさらに備え、
前記アプリケーションモジュールは、
前記カメラ装置によって撮影された前記第2遺言書画像データを、前記遺言メッセージ動画の管理・配信システムに送信する送信部と、
前記遺言メッセージ動画の管理・配信システムから配信された前記遺言メッセージ動画を再生する動画再生部と、を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の遺言メッセージ動画の管理・配信システム。
【請求項6】
遺言メッセージ動画の管理・配信を行うコンピュータ装置によって実行されるプログラムであって、前記コンピュータ装置に、
遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を受信する第1機能と、
開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した第1遺言書画像データを受信する第2機能と、
前記遺言メッセージ動画と前記第1遺言書画像データとを紐付け、前記第1遺言書画像データを前記遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する第3機能と、
遺言者の相続人が受領した遺言書の撮影画像データであって、開封に伴って撮影された第2遺言書画像データを受信し、受信した前記第2遺言書画像データを前記第1遺言書画像データと照合する第4機能と、
照合結果に基づいて、前記第2遺言書画像データを送信した端末に、前記遺言メッセージ動画を配信する第5機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺言者のメッセージ動画を管理し、相続人等の関係者にメッセージ動画を配信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
証書遺言としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などがある。遺言者(被相続人)は、相続人等の遺言関係者に対する遺言書を作成し、公証役場や弁護士に預けて保管したり、近年では、法務局における自筆証書遺言書保管制度が開始され、法務局の遺言書保管所に保管したりすることができる。
【0003】
このような制度により、遺言書が紛失・亡失したり、遺言書の廃棄,隠匿,改ざんが行われたりすることが防止できるが、遺言書はあくまでも文字情報であるため、遺言者の相続人等に対する気持ちや想い、遺言者本人の意思や意図を推し量ることは難しい。
【0004】
そこで、遺言者本人の意思や意図、相続人等に対する気持ちや想いなどを生前に動画メッセージとして残すことにより、例えば、被相続人の意思を確実に伝え、相続人同士の意見の違いを回避して、円滑な相続に寄与することができる。
【0005】
特許文献1は、撮影された動画メッセージを動画配信サーバに保管し、遺言書に動画配信サーバのURL及びアクセスキー(認証情報)を記載しておくことで、遺言書開封時に生前に撮影された動画メッセージを閲覧できる仕組みを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、動画配信サーバのURL情報と、サーバ認証又は/及び動画再生のためのパスワードなどのアクセスキーを、遺言書に記載しなければならない。つまり、動画配信サーバ側で、動画再生用のURL情報及びアクセスキーを発行する仕組みであるため、遺言書と動画メッセージの直接的な紐付けを管理することができない。
【0008】
例えば、動画配信サーバのURL情報と、サーバ認証又は/及び動画再生のためのアクセスキーが、遺言書以外に記載されていたり、入手できたりすると、遺言書とは関係なく、動画メッセージを閲覧できてしまう可能性がある。遺言書開封前に、遺言書に付帯する動画メッセージが閲覧できてしまう可能性は、遺言書に関する内容が事前に相続人に伝わってしまう懸念等が生じ、相続人同士の紛争等の要因になりかねない。
【0009】
このように、特許文献1の仕組みは、動画配信サーバ側で発行するURL情報とアクセスキーとが、遺言書のみに紐付いていることを担保することができず、遺言書開封前に、遺言者の動画メッセージが閲覧できてしまう懸念を、払拭し難い課題がある。
【0010】
また、特許文献1は、発行された動画配信サーバのURL情報と、サーバ認証又は/及び動画再生のためのアクセスキーとを「記載」しなければならないので、遺言書に間違って記載されてしまうと、動画メッセージを再生することができない課題もある。
【0011】
本発明の目的は、遺言書に付帯する遺言者のメッセージ動画の管理及び配信が、遺言書自体と直接紐付き、遺言書に従った確実なメッセージ動画を提供することができる遺言メッセージ動画の管理・配信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、遺言メッセージ動画の管理・配信システムであり、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を受信する動画受付部と、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した第1遺言書画像データを受信する遺言書画像受付部と、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データとを紐付け、第1遺言書画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する動画登録部とを有する。さらに、遺言者の相続人が受領した遺言書の撮影画像データであって、開封に伴って撮影された第2遺言書画像データを受信し、受信した第2遺言書画像データを第1遺言書画像データと照合する動画配信認証部と、上記動画配信認証部の照合結果に基づいて、第2遺言書画像データを送信した端末に、遺言メッセージ動画を配信する動画配信部と、を有する。
【0013】
(2)上記(1)において、上記第1遺言書画像データ及び第2遺言書画像データは、遺言者による自筆部分または押印部分、又は、代筆した公証人による自筆部分または押印部分を含むように撮影された画像データとすることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、上記遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、又は秘密証書遺言とすることができ、上記所定の保管場所は、金融機関が提供する遺言者名義の貸金庫、法務局又は公証役場による保管場所、または相続人以外の遺言執行者による保管場所とすることができる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)において、上記動画受付部は、受信した遺言メッセージ動画内の法的妥当性に関する専門家のリーガルチェックの有無を受信し、遺言メッセージ動画と関連付けて記憶することができる。このとき、上記動画登録部は、リーガルチェック済の遺言メッセージ動画を対象に、第1遺言書画像データを配信認証情報として登録するように構成することができる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)において、遺言メッセージ動画の管理・配信システムは、カメラ装置が搭載された上記端末にインストールされるアプリケーションモジュールを記憶する記憶部と、上記端末に、アプリケーションモジュールをダウンロードさせるダウンロード制御部と、をさらに備えることができる。アプリケーションモジュールは、カメラ装置によって撮影された第2遺言書画像データを、遺言メッセージ動画の管理・配信システムに送信する送信部と、遺言メッセージ動画の管理・配信システムから配信された遺言メッセージ動画を再生する動画再生部と、を備えることができる。
【0017】
(6)本発明のプログラムは、遺言メッセージ動画の管理・配信を行うコンピュータ装置によって実行され、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を受信する第1機能と、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した第1遺言書画像データを受信する第2機能と、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データとを紐付け、第1遺言書画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する第3機能と、遺言者の相続人が受領した遺言書の撮影画像データであって、開封に伴って撮影された第2遺言書画像データを受信し、受信した第2遺言書画像データを第1遺言書画像データと照合する第4機能と、照合結果に基づいて第2遺言書画像データを送信した端末に、遺言メッセージ動画を配信する第5機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した画像データ(第1遺言書画像データ)と紐付け、遺言書の撮影画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する。これにより、遺言書自体が遺言メッセージ動画と直接的に紐付くことになり、所定の保管場所で保管されている期間、相続人は、遺言書を撮影することができないので、遺言書に関する内容が遺言執行前に漏れ出ることを防止することができる。したがって、遺言書と直接的に結び付いた遺言メッセージ動画の配信環境を実現することができる。
【0019】
また、相続人等の関係者が遺言書を受領し、開封に伴って撮影した遺言書の画像データ(第2遺言書画像データ)を第1遺言書画像データと照合して認証し、遺言メッセージ動画を配信するので、動画再生のためのアクセスキーの記載ミスや記載漏れ、紛失等によって閲覧できないという事態を回避することができる。
【0020】
このように本発明によれば、遺言書に付帯する遺言者のメッセージ動画の管理及び配信が、遺言書自体と紐付き、遺言書に従った確実なメッセージ動画の配信環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の遺言メッセージ動画の管理・配信システムの概略図である。
【
図2】第1実施形態の遺言メッセージ動画の管理・配信システムを構成する各機能ブロックを説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の遺言者情報の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の遺言メッセージ動画の管理・配信システムの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1から
図5は、第1実施形態の遺言メッセージ動画の管理・配信システムを説明するための図であり、
図1は、遺言メッセージ動画の管理・配信システムの概略図である。
【0023】
本システムは、遺言者自身が利用するケースもあるが、主に、遺言書のアドバイスやチェックなどの遺言書関連サービスを行う事業者が仲介者として利用するケースを想定することができる。このため、本サービスを利用するための遺言メッセージ動画の撮影、遺言書画像の撮影、及び遺言メッセージ動画及び遺言書画像のアップロードは、事業者端末400が、本システムに対して行うことができる。
【0024】
事業者としては、例えば、弁護士・司法書士・税理士などの専門家や、信託銀行などの金融機関、またはこれらから委託を受ける委託事業者である。後述するように、事業者は、遺言執行者である場合もあるが、必ずしも遺言執行者である必要はない。
【0025】
まず、遺言書について説明する。
図1に示すように、遺言者(被相続人)は、遺言書を作成する。遺言書は、遺言者自身が紙に書き記す自筆証書遺言、公証役場で作成する公正証書遺言、又は公正証書遺言と同じく公証役場で作成するが、公証人も遺言内容を知らない秘匿性の高い秘密証書遺言である。これら各遺言書は、遺言者直筆の署名領域(自筆部分)が含まれている。
【0026】
なお、公正証書遺言の場合、公証人による代筆が認められている。このため、遺言者直筆の署名領域以外に、代筆した公証人直筆の署名領域(公証人の自筆部分)が含まれる。また、自筆部分以外にも押印も含まれ、遺言者の押印や公証人の押印なども含まれる場合がある。
【0027】
遺言書は、「相続人の手に渡りづらい場所」に保管する必要がある。これは、遺言内容が事前に相続人に知られることを回避するためである。保管方法としては、遺言者自らが保管する、法務局や公証役場などの公的機関が保管する、遺言執行者が保管する、の3つの方法があるが、「相続人の手に渡りづらい場所」という観点において、本実施形態では、遺言書は、金融機関が提供する遺言者名義の貸金庫、公的機関による保管場所又は相続人以外の遺言執行者による保管場所にて、保管されていることを前提とする。
【0028】
公的機関による保管場所とは、自筆証書遺言であれば、自筆証書遺言書保管制度に基づく法務局の遺言書保管所である。また、公的機関による保管場所として、公正証書遺言は、公証役場で原本が保管される。なお、公正証書遺言の正本と謄本が交付された場合、遺言者は、公正証書遺言の正本と謄本を遺言執行者に預け、相続人以外の遺言執行者が保管する。相続人以外の遺言執行者による保管場所とは、弁護士・司法書士・税理士などの専門家や信託銀行などの金融機関が遺言執行者となり、遺言執行者側で確保した保管場所である。
【0029】
図1に戻り、遺言者は、作成した遺言書の内容を、弁護士などにアドバイスを受けたり、チェックしたりしてもらうことができる。このようなリーガルチェックの仕組みの導入は、任意である。
【0030】
遺言者は、遺言書を作成した後、事業者が遺言メッセージ動画を撮影する。遺言メッセージ動画は、遺言者本人が、作成した遺言書の内容に則して相続人に向けてメッセージを語る様子が撮影された動画である。動画撮影が可能なカメラ装置を用いて動画を撮影する。例えば、撮影スタジオや事業者が用意した撮影場所、又は遺言者の自宅等で事業者が動画撮影を行う。
【0031】
また、事業者は、遺言メッセージ動画の撮影に伴い、保管場所への保管前に、作成された遺言書の静止画像を撮影する。事業者は、撮影された遺言書の画像データ(第1遺言書画像データ)と遺言メッセージ動画とを、事業者端末400を通じて、遺言メッセージ動画管理・配信装置(以下、動画管理・配信装置という)100にアップロードし、登録する。
【0032】
遺言者は、遺言メッセージ動画の登録後に、遺言書を所定の保管場所に保管する。上述のように、金融機関が提供する遺言者名義の貸金庫、公的機関による保管場所又は相続人以外の遺言執行者による保管場所に、保管することができる。
【0033】
遺言者の逝去(相続の開始)以後、相続人は、保管場所に預けてあった遺言書を受け取る。例えば、自筆証書遺言を法務局の保管所に預けていれば、遺言者は保管証を受け取っているので、相続人は、その保管証に基づいて法務局の保管所から遺言書を受け取ることができる。
【0034】
利用者端末300は、相続人又は遺言執行者が操作する端末であり、本システムで遺言メッセージ動画の配信サービスを受ける情報処理装置である。利用者端末300は、最初に、動画管理・配信装置100に接続し、遺言メッセージ動画アプリ(プログラムモジュール)をダウンロードしてインストールする。本実施形態では、本システムが提供する遺言メッセージ動画アプリを通じた動画配信制御を行う。
【0035】
利用者端末300は、遺言メッセージ動画アプリを起動し、利用者端末300の撮影装置320を用いて、受け取った遺言書を撮影する。遺言メッセージApp330の送信部331は、撮影した遺言書画像データ(第2遺言書画像データ)を、動画管理・配信装置100に送信する。
【0036】
動画管理・配信装置100は、遺言メッセージ動画に紐付く第1遺言書画像データと、遺言メッセージ動画アプリを通じて受信した、相続の開始以後に撮影された第2遺言書画像データとを照合し、動画配信認証を行う。認証結果がOKであれば、遺言メッセージ動画を利用者端末300に送信する。利用者端末300は、遺言メッセージApp330の動画再生部332が、配信された遺言メッセージ動画を再生し、表示画面に表示する。
【0037】
図2は、遺言メッセージ動画の管理・配信システムを構成する各機能ブロックを説明するための図である。
【0038】
動画管理・配信装置100は、制御装置110、記憶装置120及び通信装置130を備え、動画登録管理を行う機能と、動画配信を行う機能とに大きく分けることができる。動画登録管理機能として、制御装置110は、遺言者登録部111、遺言メッセージ動画登録部112、動画受付部112A、遺言書画像受付部112Bを備えている。
【0039】
遺言者登録部111は、遺言者情報を登録する制御を行う。具体的には、本システムを利用する事業者が、事業者端末400を介して動画管理・配信装置100に接続し、遺言者登録部111が提供する登録画面に、遺言者から取得した各種情報を入力する。
図3は、遺言者情報121の一例を示す図であり、氏名、年齢、住所連絡先、相続人などの個人情報を入力して登録することができる。登録された遺言者情報121は、遺言者別に識別IDが割り当てられる。なお、相続人情報などの登録は、任意である。
【0040】
動画受付部112Aは、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を受け付ける。例えば、本システムを利用する事業者が、遺言者から委託を受けて動画撮影を行い、事業者端末400から動画管理・配信装置100に接続して、撮影した動画データを送信することができる。動画受付部112Aは、受信した遺言メッセージ動画を遺言者別に記憶装置120に格納する。
【0041】
遺言書画像受付部112Bは、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した画像データであって、遺言者による自筆部分(直筆部分)を含む遺言書画像データ(第1遺言書画像データ)を受信する。遺言書画像受付部112Bは、受信した遺言書画像データを、遺言者別に記憶装置120に格納する。
【0042】
遺言メッセージ動画登録部112は、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データとを紐付け、第1遺言書画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する。動画受付部112A及び遺言書画像受付部112Bは、遺言メッセージ動画と遺言書画像データのアップロード機能を司り、各制御部を1つの制御部として構成することも可能である。つまり、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データとをセットにしてアップロード可能に構成することも可能である。
【0043】
言い換えれば、遺言メッセージ動画登録部112は、アップロードするタイミングが同時又は異なっていても、遺言メッセージ動画と第1遺言書画像データの双方が登録されていなければ、遺言メッセージ動画の登録ができないように(または動画配信ができないように)構成される。
【0044】
次に、動画配信機能として、制御装置110は、遺言メッセージ動画配信部113、配信認証部113A及び遺言メッセージAppダウンロード部114を備えている。
【0045】
配信認証部113Aは、遺言者の相続人が受領した遺言書の利用者端末300を通じて撮影した画像データ、すなわち、遺言書開封に伴って撮影された遺言者による自筆部分を含む第2遺言書画像データを受信し、受信した第2遺言書画像データを、予め登録された第1遺言書画像データと照合する。遺言書画像データとは、例えば、遺言者の自筆文字を含む表紙や日付及び署名欄を含むページである。
【0046】
遺言メッセージ動画配信部113は、配信認証部113Aの照合結果に基づいて、第2遺言書画像データを送信した利用者端末300に、該当の遺言メッセージ動画を配信する。
【0047】
利用者端末300は、通信制御部310、撮影装置320、遺言メッセージApp部33及び記憶部340を備えている。動画再生を行う利用者端末300は、予め遺言メッセージAppモジュールを動画管理・配信装置100からダウンロードし、インストールしておく必要がある。動画管理・配信装置100の遺言メッセージAppダウンロード部114は、利用者端末300からのダウンロード要求に基づいて、遺言メッセージAppモジュール124を、利用者端末300に提供する。
【0048】
そして、本実施形態の動画配信機能は、遺言メッセージApp330の送信部331を通じた第2遺言書画像データの受信でなければ、配信認証処理を受け付けないように制御することができる。また、遺言メッセージApp330の動画再生部332でなければ、遺言メッセージ動画を再生できないように制御することができる。
【0049】
この場合、例えば、ダウンロードされる遺言メッセージAppモジュール毎に、ユニークな識別情報を割り当てておき、利用者端末300から送信する第2遺言書画像データにモジュール識別情報を付与し、動画管理・配信装置100側でモジュール識別情報を用いた認証処理を追加するようにしてもよい。また、遺言メッセージApp330の動画再生部332による動画再生処理においても、動画管理・配信装置100による動画配信処理において、遺言メッセージAppモジュールを特定し、他の動画再生アプリでは再生できないように制御することができる。
【0050】
図4は、遺言メッセージ動画の管理・配信システムの処理フローを示す図である。
【0051】
遺言者は、事業者から遺言書に関するアドバイス等を受け、遺言書を作成する。なお、上述のように、公正証書遺言であれば、公証役場側で遺言書を作成する。遺言者は、遺言メッセージ動画を相続人に残したい場合、事業者に遺言メッセージ動画サービスの利用申し込みを行う。事業者は、遺言者から受け付けた遺言者情報を動画管理・配信装置100に入力し、登録する(S401,S101)。
【0052】
事業者は、遺言メッセージ動画を撮影し、動画データを作成する(S402)。また、保管場所への保管前の遺言書の静止画像を撮影し、遺言書の画像データ(第1遺言書画像データ)を作成する(S403)。そして、事業者は、事業者端末400を通じて、動画管理・配信装置100にアップロードする(S404)。
【0053】
動画管理・配信装置100は、アップロードされた遺言メッセージ動画及び遺言書の撮影画像をそれぞれ又はセットにして受け付ける(S102,S103)。動画管理・配信装置100は、遺言メッセージ動画と遺言書画像データとを紐付け(S104)、遺言書画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録して動画配信準備を行う(S105)。遺言者は、その後、遺言書を所定の保管場所に保管する。
【0054】
そして、相続開始に伴い、相続人が保管場所に預けてあった遺言書を受け取る。相続人は、利用者端末300で、動画管理・配信装置100に接続し、遺言メッセージ動画アプリ(プログラムモジュール)をダウンロードしてインストールする(S301)。
【0055】
相続人は、遺言メッセージApp330を起動し、利用者端末300の撮影装置320を用いて、受け取った遺言書を撮影する(S302)。遺言メッセージApp330の送信部331は、撮影した遺言書画像データ(第2遺言書画像データ)を、動画管理・配信装置100に送信する(S303)。
【0056】
動画管理・配信装置100は、遺言メッセージ動画に紐付く第1遺言書画像データと、遺言メッセージApp330を通じて受信した、相続開始以後に撮影された第2遺言書画像データとを照合し、動画配信認証を行う(S106)。動画配信認証処理は、例えば、画像マッチング処理であり、公知のマッチング技術を適用することができる。
【0057】
画像マッチングの結果、マッチング率が所定値以上であれば、認証OKと判定し(S107のYES)、マッチング率が所定値未満であれば、認証NGと判定し(S107のNO)、エラーメッセージを利用者端末300に送信する。
【0058】
動画管理・配信装置100は、認証OKであると判定されると、第1遺言書画像データに紐付く遺言メッセージ動画が選択(特定)する(S108)。動画管理・配信装置100は、利用者端末300に、選択された遺言メッセージ動画の動画配信処理を行う(S109)。遺言メッセージApp330の動画再生部332は、配信された遺言メッセージ動画の再生処理を行う(S304)。
【0059】
このように本実施形態の遺言メッセージ動画の管理・配信システムは、遺言書に付帯して撮影された遺言者の遺言メッセージ動画を、開封時までに所定の保管場所で保管される遺言書を撮影した画像データ(第1遺言書画像データ)と紐付け、遺言書の撮影画像データを遺言メッセージ動画の配信認証情報として登録する。
【0060】
これにより、遺言書自体が遺言メッセージ動画と直接的に紐付くことになり、所定の保管場所で保管されている期間、相続人は、遺言書を撮影することができないので、遺言書に関する内容が遺言執行前に漏れ出ることを防止することができる。したがって、遺言書と直接的に結び付いた遺言メッセージ動画の配信環境を実現することができる。
【0061】
また、相続人等の関係者が遺言書を受領し、開封に伴って撮影した遺言書の画像データ(第2遺言書画像データ)を第1遺言書画像データと照合して認証し、遺言メッセージ動画を配信するので、動画再生のためのアクセスキーの記載ミスや記載漏れ、紛失等によって閲覧できないという事態を回避することができる。
【0062】
遺言書に付帯する遺言者のメッセージ動画の管理及び配信が、物理的な遺言書と紐付き、遺言書に従った確実なメッセージ動画の配信環境を実現することができる。
【0063】
図5は、本実施形態の変形例を示す図である。本変形例は、事業者を介さずに、遺言者が本システムを直接利用できる態様を示す図である。なお、
図5において、
図4と同じ処理については、同符号を付して説明を省略し、相違する点を中心に説明する。
【0064】
遺言者は、遺言者端末200を用いて、動画管理・配信装置100に接続し、遺言者情報を入力する(S201)。遺言メッセージ動画の撮影、作成した遺言書の画像の撮影は、遺言者側(自身を含む)で行う(S202,S203)。そして、遺言者は、遺言者端末200から遺言メッセージ動画及び遺言書画像を動画管理・配信装置100にアップロードする(S204)。
【0065】
その後、遺言者は、遺言書を所定の保管場所に保管する(S205)。このとき、遺言者は、保管場所を管理する管理者から保管証を受領する。例えば、法務局や遺言執行者から保管証をもらうことができる(S206)。
【0066】
遺言者は、遺言者端末200を用いて、保管証を撮影し、保管証画像データを作成する。そして、保管証画像データを動画管理・配信装置100に送信する。動画管理・配信装置100(遺言メッセージ動画登録部112)は、登録された遺言メッセージ動画と紐付けて、受信した保管証画像データを記憶装置120に記憶する。また、遺言者情報121に、保管証の登録履歴を記憶する。
【0067】
このように、本変形例では、遺言者本人が、遺言メッセージ動画の登録を行う場合、保管証の登録ができるようにしている。このように構成することで、所定の保管場所で遺言書が保管されていることを担保することができる。例えば、保管証が登録されていない場合は、遺言メッセージ動画の登録や配信を行わないように制御することができる。もちろん、保管証がなくても、遺言者本人が本システムを利用できる態様とすることもでき、保管証があれば、より信頼性の高い遺言メッセージ動画配信の仕組みを実現することができる。
【0068】
また、上述した事業者を仲介した本システムの利用に際しても、本変形例の保管証登録の仕組みを適用することで、より信頼性の高い遺言メッセージ動画配信の仕組みを実現することができる。
【0069】
以上、本実施形態について説明したが、遺言書や遺言メッセージ動画は、リーガルチェックを受けることができるので、
図3に示したように、遺言者情報121に、リーガルチェック有無を登録できるように構成してもよい。この場合、リーガルチェックの有無を動画配信の際に利用者端末300に通知したりすることもできる。なお、リーガルチェック有無に基づく動画配信制御、例えば、リーガルチェックが有るものは動画配信し、リーガルチェックが無いものは、動画配信しないなどの制御は、任意に構成することができる。
【0070】
例えば、動画管理・配信装置100(遺言メッセージ動画登録部112)は、受信した遺言メッセージ動画内の法的妥当性に関する専門家のリーガルチェックの有無を受信し、遺言者情報121にリーガルチェックの有無を登録し、遺言メッセージ動画と関連付けて記憶装置120することができる。そして、リーガルチェック済の遺言メッセージ動画を対象に、第1遺言書画像データを配信認証情報として登録するように構成することができる。
【0071】
また、遺言者は、遺言書を訂正することができる。この場合、遺言書の訂正に伴い、訂正前に登録した遺言メッセージ動画及び遺言書画像は、破棄するように制御し、訂正後の遺言書について、新規に遺言メッセージ動画及び遺言書画像の撮影やアップロードを行うように構成してもよい。また、遺言者情報121には、遺言者の訂正履歴等のログを蓄積するようにしてもよい。
【0072】
また、上記説明では、遺言メッセージ動画と紐付ける第1遺言書画像データが、遺言者による自筆部分を含む態様について説明したが、代筆した公証人による自筆部分を含む第1遺言書画像データであってもよい。また、自筆部分以外に、上述した遺言者又は公証人による押印部分を含む第1遺言書画像データ、または自筆部分と押印部分の双方を含む第1遺言書画像データであってもよい。この場合、開封に伴って撮影される第2遺言書画像データも、遺言者又は公証人による自筆部分や押印部分を含む画像データを適用することができる。
【0073】
一方で、遺言者等の自筆部分や押印部分を含む第1遺言書画像データを用いて、遺言メッセージ動画と紐付けて認証処理を行っているが、遺言者等の自筆部分や押印部分を含まない遺言者画像データを適用することもできる。遺言者等の自筆部分や押印部分を含む第1遺言書画像データを適用することで、遺言書と遺言メッセージ動画の紐付けにおける信頼性をより向上させることができるが、遺言者等の自筆部分や押印部分を含まない第1遺言書画像データを適用しても、上述のように、原則、保管後は、遺言者が逝去するまでは、遺言者以外誰も見ることができないので、十分な遺言書と遺言メッセージ動画の紐付けにおける信頼性を担保できるからである。
【0074】
また、遺言者端末200、利用者端末300、事業者端末400は、通信機能、演算機能及び入力機能を備え、IP(Internet protocol)網又は移動通信回線網(Mobile communication network)を通じて動画管理・配信装置100に接続し、データ通信を行うことができる。各端末200,300,400は、スマートフォンなどの多機能携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型端末などの持ち運び可能な携帯端末(モバイル端末)、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータなどである。
【0075】
また、動画管理・配信装置100の各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該当プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0076】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【符号の説明】
【0077】
100 遺言メッセージ動画管理・配信装置
110 制御装置
111 遺言者登録部
112 遺言メッセージ動画登録部
112A 動画受付部
112B 遺言書画像受付部
113 遺言メッセージ動画配信部
113A 配信認証部
114 遺言メッセージAppダウンロード部
120 記憶装置
121 遺言者情報
122 遺言メッセージ動画
123 遺言書画像
124 遺言メッセージApp(モジュール)
130 通信装置
300 利用者端末
310 通信制御部
320 撮影装置
330 遺言メッセージApp部
331 送信部
332 動画再生部
340 記憶部