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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095329
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】救助艇
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/03 20060101AFI20220621BHJP
   B63B 17/04 20060101ALI20220621BHJP
   B63H 11/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B63C9/03
B63B17/04
B63H11/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208597
(22)【出願日】2020-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】漂流物が衝突した場合でも破損を免れ、しかも輸送が容易な、水害水の中を円滑に航行できる救助艇を提供すること。
【解決手段】救助艇1は、床10、外殻20、およびポンプ30(推進手段)を備えている。床10は、甲板11、甲板11の下面に固定される浮体12、および甲板11の上面に固定される手摺13を有しており、3個の床部材10a、10b、10cで構成されている。甲板11は、浮体12が受ける浮力によって水面150に浮上している。浮体12は、第1側面側111、第2側面側112のそれぞれの端部に固定された状態で、甲板11と外殻20とで画定される船底空間50に配設されている。ポンプ30は、甲板11cに着脱可能に固定されており、管31から船底空間50に存する水害水160を取込み、管32から排出することで、救助艇1が、進行方向Sの方向に航行するための推進力を付与する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水害時に、被災者を救助する救助艇であって、
水害水が通過できる通過部と、前記水害水に漂流する漂流物の通過を阻止する保護部と、を有する外殻と、
前記外殻に着脱可能に固定される甲板と、前記甲板の両側端部に進行方向に沿って配設されて気体を供給することで膨張する浮体と、を有する床と、を備え、
前記甲板は、前記浮体の浮力によって水面上に浮上し、
前記浮体は、前記甲板と前記外殻とで画定される船底空間に配設されて、前記漂流物の衝突から保護されることを特徴とする救助艇。
【請求項2】
前記床に着脱可能に固定される推進手段を備え、
前記推進手段は、前記船底空間に存する水害水を取込んで、排出することで推進力を得ることを特徴とする請求項1に記載の救助艇。
【請求項3】
前記通過部は、前記外殻の中央部に帯状に設けられ、前記保護部は、前記外殻の両側端部に設けられて、前記通過部に接続することを特徴とする請求項1または2に記載の救助艇。
【請求項4】
前記床は、気体を供給することで膨張する手摺を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の救助艇。
【請求項5】
前記外殻および/または前記床は分離できるとともに、相互に固定することで前記外殻および/または前記床に復元できる複数個の構成部材で構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の救助艇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時に被災者を救助する救助艇に関する。
【背景技術】
【0002】
津波、洪水などの水害が発生したとき、災害現場に取り残された被災者の方々は、家屋の屋根や高台に一時的に避難して救助を待っている。避難場所の周辺の水は、木片、紐、膜状のビニール等様々な漂流物が漂流している。また、水は濁っており、粒子径の小さい土砂が水中に浮遊している。災害現場に取り残された被災者の方々を救助するためには、このような状況下の水の中を、円滑に航行できる救助艇が必要となる。
【0003】
特許文献1には、人や荷物などの積載物を安定的に載せることができるとともに浅瀬であっても円滑に航行することができる船艇が開示されている。船艇は、船底とフロート体を備えている。船底は、船艇の外側の底部を構成するとともに船艇における人や荷物などの積載物を載せられる部分であり、硬質ウレタン発泡体で構成されている。フロート体は、船艇の船首から舷側を構成するとともに船艇に浮力を与える部分であり、平面視でU字状の円柱体で構成されている。このフロート体は、袋状の外皮体の内側に硬質ウレタン発泡体が充填されて構成されている。また、フロート体の内部は、隔壁によって複数の区画に仕切られている。この場合、互いに隣接する区画間においては、一方の区画が他方の区画に入り込んで構成されている。
【0004】
特許文献2には、救難区域において転覆し難く、かつ多くの浮遊物などの障害物による影響をなくすことで、安定した救命活動を可能にするプロペラ推進救命艇が開示されている。プロペラ推進救命艇は、船底と、船底の前側及び両側に固定されたフロート部と、船底の後部上に設けられ、軸芯を中心に回転可能なプロペラで排出される排気によって当該救命艇を水上で推進させるプロペラ推進機4とを備えている。フロート部を、防舷性を有する樹脂製のチューブに硬質発泡ウレタンを充填して構成することで、転覆し難く、かつ多くの浮遊物などによる走行への影響をなくし、安定した救命活動を可能にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-155266号公報
【特許文献2】特開2020-157965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている船艇は、救命艇フロート体が、袋状の外皮体の内側に硬質ウレタン発泡体が充填されて構成されているため、漂流物が直接フロート体に衝突しても、浮力が失われる可能性は低いが、フロート体の損傷は免れ得ない。すなわち、1回の出艇で漂流物が衝突した場合、次回は出艇できない可能性は否定できず、耐久性に問題があった。また、船艇を災害現場に輸送する際、船艇を一括して輸送する必要があるため、輸送経路となる幹線道路が通行不能の場合は、災害現場に輸送できないという問題があった。さらに、推進装置として、ウォータージェット式推進機を使用していることから、ビニールシート等を吸引してしまうと、作動できなくなるという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示されているプロペラ推進救命艇は、フロート部を、防舷性を有する樹脂製のチューブに硬質発泡ウレタンを充填して構成していることから、特許文献1と同様に、耐久性に問題があった。また、災害現場に輸送する際、フロート部を一括して輸送する必要があるため、輸送経路となる幹線道路が通行不能の場合は、災害現場に輸送できないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、漂流物が衝突した場合でも破損を免れ、しかも輸送が容易な、水害水の中を円滑に航行できる救助艇を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、水害時に被災者を救助する救助艇であって、水害水が通過できる通過部と、水害水に漂流する漂流物の通過を阻止する保護部を有する外殻と、外殻に着脱可能に固定される甲板と、甲板の両側端部に進行方向に沿って配設されて気体を供給することで膨張する浮体とを有する床を備え、甲板は、浮体の浮力によって水面上に浮上し、浮体は、甲板と外殻とで画定される船底空間に配設されて、漂流物の衝突から保護されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、甲板を浮力によって水面上に浮上させる浮体は、気体を供給することで膨張するので、軽量化が可能であり、また、気体を充填しない状態では嵩張ることはない。浮体は、漂流物の衝突によって充填されていた気体が破損個所から拡散して収縮し、所定の浮力を得られない虞があるが、この構成によれば浮体は甲板と外殻とで画定される船底空間に配設されて、漂流物の衝突から保護されるので、漂流物の衝突による破損を回避できる。
【0011】
水害とは、津波、洪水、高潮によって水面の水位が上昇して被害が及ぶ災害であり、水害水とは、上昇した水面の下方に位置する水である。
【0012】
好ましくは、床に着脱可能に固定される推進手段を備え、推進手段は、船底空間に存する水害水を取込んで、排出することで推進力を得ることを特徴とする。
【0013】
推進手段として、スクリューの回転によって推進力を得る機構を用いる場合、通過部を通過する細長い紐状の漂流物が通過部を通過してスクリューに絡みつくことで、回転が停止する虞がある。しかし、この構成によれば、推進手段は、船底空間に存する水を取込んで、水中に排出することで推進力を得るので、仮に、通過部を通過する細長い紐状の漂流物が推進手段に取込まれたとしても、推進手段が停止することはない。
【0014】
好ましくは、通過部は、外殻の中央部に帯状に設けられ、保護部は、外殻の両側端部に設けられて通過部に接続することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、通過部は、外殻の中央部に帯状に設けられるので、広い範囲から水害水を船底空間に取込むことができる。仮に、一部の領域がビニール等の膜状の漂流物で閉塞されたとしても、閉塞されていない他領域から水害水の流入・排出は可能となるため、推進手段の推進力を低下させることはない。また、保護部は、外殻の両側端部に設けられて、通過部に接続するので、保護部で漂流物の船底空間への侵入の可能性が高い範囲を効率的に阻止することで、浮体の破損を免れ得る。
【0016】
好ましくは、床は、気体を供給することで膨張する手摺を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、手摺は、気体を供給することで膨張するので、軽量化が可能であり、また、気体を充填しない状態では嵩張ることはない。
【0018】
好ましくは、外殻および/または床は分離できるとともに、相互に固定することで外殻および/または床に復元できる複数個の構成部材で構成されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、外殻および/または床は分離できるとともに、相互に固定することで外殻および/または床に復元できる複数個の構成部材で構成されるので、小型トラックを用いて災害現場に搬送して、現地で組立てることで、救助艇とすることができる。すなわち、狭隘な道路を通過せざるを得ない災害現場に向かう場合においても、適切な規模の救助艇を使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は、図2の矢視A-Aにおける救助艇の側面断面図である。(b)は、同、矢視B-Bのおける救助艇の正面断面図である。
図2】床の平面図である。
図3】床部材の斜視図である。
図4】形状保持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図1~4を参照して説明する。
【0022】
図1(a)、(b)に示す通り、救助艇1は、被災者の方々を救助するために、洪水等で水位が上昇した水面150に浮上している。水害水160は、木片、紐、膜状のビニール等様々な漂流物(図示略)が漂流している。また、水害水160は濁っており、粒子径の小さい微細な土砂が浮遊している。
【0023】
救助艇1は、床10、外殻20、およびポンプ30(推進手段)を備えている。床10は、甲板11、甲板11の下面に固定される浮体12、および甲板11の上面に固定される手摺13を有しており、3個の床部材10a、10b、10cで構成されている。甲板11は、浮体12が受ける浮力によって水面150に浮上している。浮体12は、第1側面側111、第2側面側112のそれぞれの端部に固定された状態で、甲板11と外殻20とで画定される船底空間50に配設されている。
【0024】
甲板11は、3個の甲板部材11a、11b、11cで構成されている。それぞれの甲板部材11a、11b、11cは、進行方向Sの方向に沿って、直列に配設されており、外殻部材20a、20b、20cとボルト接合されている。これにより、甲板部材11a、11b、11cと、外殻20は着脱可能に固定される。甲板11は、軽量で、撓みにくく強度に優れた材料であることが好ましい。具体的には、FRP製パネル、アルミ製パネルであることが好ましい。
【0025】
ポンプ30は、甲板部材11cに着脱可能に固定されており、管31から船底空間50に存する水害水160を取込み、管32から排出することで、救助艇1が、進行方向Sの方向に航行するための推進力を付与する。また、管32から船底空間50に存する水害水160を取込み、管31から排出することとで、救助艇1が、進行方向Sと反対の方向に航行する推進力を付与する。ポンプ30は、微細な土砂を吸い上げることができる、土木・建築分野で使用されているエンジンポンプであることが好ましい。
【0026】
管31は、船底空間50に位置する管31aと、管31aとポンプ本体33を接続する管31bを有している。管31aは、甲板部材11cに着脱可能に固定され、管31bは、管31aと着脱可能に固定される。
【0027】
同様に、管32は、船底空間50に位置する管32aと、管32aとポンプ本体33を接続する管32bを有している。管32aは、甲板部材11cに着脱可能に固定され、管32bは、管32aと着脱可能に固定される。
【0028】
外殻20は、外面が網目状のメッシュで覆われており、外殻部材20a、20b、20cで構成されている。外殻部材20a、20b、20cはボルト接合によって、固定できて、さらに分離できる構造となっている。メッシュに、膜状のシートが張り付けられている領域が保護部21となり、メッシュそのものの領域が通過部22となる。
【0029】
通過部22は、底面120、前面130、および後面140の中央部に帯状に設けられ、保護部21は、第1側面側111、および第2側面側112、並びに前面130、底面120、後面140のそれぞれに、通過部22に接続して設けられている。また、浮体12は、平面視で保護部21の内部領域に配設されている。
【0030】
メッシュは、形状保持部材25によって形状が保たれている。形状保持部材25は、3個の形状保持ユニット25a、25b、25cで構成されている。形状保持ユニット25aは、外殻部材20aを構成する1部材であり、形状保持ユニット25bは、外殻部材20bを構成する1部材であり、形状保持ユニット25cは、外殻部材20cを構成する1部材である。
【0031】
図2に示す通り、手摺13は、6個の手摺部材14、1個の前方手摺部材15、および1個の後方手摺部材16を有しており、甲板11の上面に固定された状態で、外縁に沿って環状に設けられている。甲板部材11aに、2個の手摺部材14が第1側面側111、第2側面側112に対向して配設されるとともに、1個の前方手摺部材15が、先端部113に配設されている。また、甲板部材11bに、2個の手摺部材14が第1側面側111、第2側面側112に対向して配設されている。また、甲板部材11cに、2個の手摺部材14が第1側面側111、第2側面側112に対向して配設されるとともに、1個の後方手摺部材16が、後端部114に配設されている。手摺13の素材は、救助艇として使用可能なゴムボートの素材、具体的には、ゴム引布であることが好ましい。
【0032】
手摺部材14の両側面に、隙間を塞ぐための封止膜19が固定されている。封止膜19を、後方に位置する手摺部材14と面テープで着脱可能に固定することで、進行方向Sの方向に直列に配設された手摺部材14同士の間に生じる隙間は封止できる。
【0033】
前方手摺部材15の両端部(第1側面側111、第2側面側112の端部)に位置する両側面に、封止膜19が固定されている。封止膜19を、両端部に近接して配設される手摺部材14と面テープで着脱可能に接着することで、前方手摺部材15と、前方手摺部材15に近接して配設される手摺部材14との間に生じる隙間は封止できる。
【0034】
同様に、後方手摺部材16と、甲板部材11cに配設された手摺部材14との間に生じる隙間についても、封止できる。
【0035】
6個の浮体12は、甲板部材11a、11b、11cの下面のそれぞれの端部に3個づつ固定されている。浮体12に生じる浮力によって、救助艇1は、甲板11が水面150に浮上した状態で浮遊できる。浮体12の素材は、救助艇として使用可能なゴムボートの素材、具体的には、ゴム引布であることが好ましい。
【0036】
図3を参照して、床部材10bが、保管されている状態について説明する。なお、床部材10a、10cについても床部材10bの保管状態と同様である。手摺部材14は、内部の気体が排出された状態で結束バンド17によって、甲板部材11bに固定されている。浮体12についても同様に、内部の気体が排出された状態で結束バンドによって、甲板部材11bに固定されている。このような保管状態となり得ることから、水害時に使用する状態、すなわち手摺部材14および浮体12を膨張させた状態と比べ、外形がコンパクトになり輸送効率の向上が図れる。
【0037】
図4に示す通り、形状保持ユニット25aは、細長い部材を四方に組んだ下組26a、および上組27aの四隅をコラム28aで連結した構造である。上組27aは、甲板部材11aとボルト接合するための孔51が穿孔されている。形状保持ユニット25b、25cについても、ほぼ同じ構造であり、形状保持ユニット25bは、下組26b、上組27b、コラム28bを有し、形状保持ユニット25cは、下組26c、上組27c、コラム28cを有している。
【0038】
相互に接触するように配設されるコラム28a、28bは、ボルト接合するための孔52が穿孔されている。これにより、形状保持ユニット25a、25bは、分離可能に固定される。形状保持ユニット25b、25cについても、ほぼ同じであることから、説明は省略する。
【0039】
水害のときの、救助艇1の出艇について説明する。
【0040】
出艇しないときは、外殻20は、外殻部材20a、20b、20cに分離された状態で保管されている。また、床10についても、床部材10a、10b、10cに分離された状態で保管されている。このとき、図3に示す通り手摺部材14および浮体12は、内部の気体が排出された状態で、結束バンド17等によって甲板部材11a、11b、11cに固定されている。ポンプ30についても同様に、床部材10cから分離された状態で保管されている。
【0041】
水害が発生したとき、救助艇1は分離された部材の状態で水害現場に輸送する。それぞれの部材は、小型トラックに積載できるので、水害現場に向かう途中で、狭隘な道路の通過を余儀なくされる場合でも、水害現場への輸送が可能になる。
【0042】
水害現場に輸送された部材を、以下の手順で組立てて、救助艇1は完成する。なお、大型トラックが通行できる輸送路を利用できる場合は、組立てた状態で災害現場に輸送してもよい。
【0043】
外殻部材20a、20b、20cを相互にボルト接合して外殻20を組立てる。床部材10aの浮体12に空気を供給して膨張させた状態で、甲板部材11aと、上組27aをボルト接合して、床部材10aを、外殻20に固定する。同様の手順で、床部材10bを外殻20に固定する。
【0044】
床部材10cに、管31a、32aを取り付けて、浮体12に空気を供給して膨張させた状態で、床部材10cを外殻20に固定する。これにより、床10は、外殻20に固定される。
【0045】
ポンプ本体33を甲板部材11cに固定するとともに、管31b、32bを介してポンプ本体33と管31a、31bを接続して、救助艇1の組立は完成する。
【0046】
手摺13に空気を供給して膨張させた後に、救助艇1を水中に浮かべる。ポンプ30を動作して、管31から、船底空間50に存する水害水160を取込み、管32から放出することで、救助艇1は、進行方向Sの方向に航行する。また、管32から、船底空間50に存する水害水160を取込み、管31から放出することで、救助艇1は、進行方向Sと反対方向に航行する。このとき、船底空間50の外部領域に存する水害水160は通過部22を経由して流入・排出される。通過部22は、進行方向Sの方向に沿って外殻20の中央部に帯状に設けられているため、一部分が漂流物によって塞がれたとしても、水の船底空間50への流入・流出が阻害されることはない。これにより、救助艇1は、水害水160の中を円滑に航行できる。
【0047】
また、航行中に木片等の漂流物が外殻20に衝突したとしても、保護部21で船底空間50への侵入は阻止されるので、漂流物が浮体12を貫通して内部に供給されている空気が外部に漏れることはない。
【0048】
手足が不自由な方々にとっては、手摺部材14が障害となって、救助艇1に乗り込むことが困難な状況が想定される。このような場合は、例えば、床部材10bに固定されている第1側面側111、または第2側面側112のいずれかに位置する手摺部材14に充填されている空気を排出して手摺部材14の高さを低くすることで、高さの高い手摺部材14を乗り越えることなく救助艇1に容易に乗船できる。これにより、車椅子に乗った状態での乗船が可能となる
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る救助艇は、狭隘な輸送路でも輸送できて、災害状況に応じて大きさを設定できる汎用性の高いものであることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0050】
1:救助艇
10:床
11:甲板
12:浮体
13:手摺
20:外殻
21:保護部
22:通過部
30:ポンプ(推進手段)
50:船底空間
160:水害水
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記外殻および/または前記床は分離できるとともに、相互に固定することで前記外殻および/または前記床に復元できる複数個の構成部材で構成されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の救助艇。