(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095361
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】無人飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 25/32 20060101AFI20220621BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B64C25/32
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208639
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】394019370
【氏名又は名称】株式会社ウオールナット
(71)【出願人】
【識別番号】715001390
【氏名又は名称】株式会社プロドローン
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】新 弘治
(72)【発明者】
【氏名】高岩 庸博
(72)【発明者】
【氏名】沖安 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】金谷 武伴
(72)【発明者】
【氏名】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 侑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖人
(57)【要約】
【課題】上方の構造部に対して、安定した姿勢で移動可能としつつ移動時の方向転換が容易な無人飛行体を提供する。
【解決手段】無人飛行体10は、本体部12と、揚力を生じさせる揚力発生手段13と、少なくとも本体部12の上方の情報を取得する情報取得部16と、揚力発生手段13により付与される揚力により本体部12の上方に位置する構造部Sに接して走行可能な走行手段20と、走行手段20が構造部Sに接した状態で水平方向に推進力を生じさせる推進力発生手段22と、を備える。走行手段20は、推進力発生手段22による推進力を補助する駆動輪20aと、進行方向を設定する操舵輪20bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
揚力を生じさせる揚力発生手段と、
少なくとも前記本体部の上方の情報を取得する情報取得部と、
前記揚力発生手段により付与される揚力により前記本体部の上方に位置する構造部に接して走行可能な走行手段と、
この走行手段が前記構造部に接した状態で水平方向に推進力を生じさせる推進力発生手段と、を備え、
前記走行手段は、
前記推進力発生手段による推進力を補助する駆動輪と、
進行方向を設定する操舵輪と、を有する
ことを特徴とする無人飛行体。
【請求項2】
操舵輪は、非駆動の従動輪である
ことを特徴とする請求項1記載の無人飛行体。
【請求項3】
情報取得部は、外殻の少なくとも一部をなす筐体を備え、
駆動輪は、前記筐体の幅内で前記筐体に対し所定方向の一側に離れて位置し、
操舵輪は、前記筐体の幅内で前記筐体に対し前記所定方向の他側に離れて位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の無人飛行体。
【請求項4】
情報取得部は、筐体を構造部に対して保護する筐体ガードを備える
ことを特徴とする請求項3記載の無人飛行体。
【請求項5】
駆動輪は、前輪であり、
操舵輪は、後輪であり、
推進力発生手段は、前進方向に推進力を生じさせる
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の無人飛行体。
【請求項6】
駆動輪は、複数配置され、
操舵輪は、一つのみ配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の無人飛行体。
【請求項7】
情報取得部は、本体部に対して上下方向に位置調整可能である
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載の無人飛行体。
【請求項8】
揚力発生手段は、本体部を囲んで複数配置され、
前記揚力発生手段を障害物に対して保護するガード部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一記載の無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚力発生手段を備える無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルあるいは橋の調査及び点検においては、地中レーダシステムを用い、コンクリート厚、空洞、鉄筋状況を調査している。このような調査の際には、高所作業車を用いたり、仮設の足場を用いたりして、人力での計測、あるいは専用治具の設置による計測を実施している。
【0003】
地中レーダシステムは、アンテナとコントローラとが個々に製作されており、これらアンテナとコントローラとをケーブルで接続して電力及びデータを送受信している。計測の際には、アンテナを操作する人員、コントローラを操作する計測員、車両の運転員、及び計測サポートの作業補助員を含む、最低四名の人員を要する。
【0004】
そのため、近年、計測装置をドローンなどの無人飛行体に搭載することで、無人飛行体の操作員がそのまま計測員となることにより、人員を削減する方法が用いられる。すなわち、情報取得部を無人飛行体の本体部に設け、この無人飛行体を被調査部などの構造部に沿って移動させることで、構造部の情報を情報取得部により取得する。
【0005】
その際、構造部に対する無人飛行体の姿勢を安定させるために、構造部に接触する機構を本体部の上部に突設したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、この構成の場合、無人飛行体を移動させる際、前後に位置する回転翼の回転数を変えることによって前後方向への推進力を生じさせていることにより、前後方向に移動する際に本体部が前傾する。そのため、本体部に搭載された計測装置を構造部と平行な姿勢に維持することが困難となり、計測装置による情報取得の精度が低下する。
【0007】
この点、上方の構造部に対して接する駆動輪により構造部に沿って走行する無人飛行体も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、この構成の場合、前後一対ずつの駆動輪を構造部に圧接して走行するため、走行時の方向転換が容易でない。この点、例えば無人飛行体の本体部の対角に位置する回転翼の回転数を変えることで方向転換することが考えられるものの、駆動輪により構造部に接している場合には、そのグリップ力が影響し、容易に方向転換できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-223995号公報
【特許文献2】特開2016-211878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、上方の構造部に対して、安定した姿勢で移動可能としつつ移動時の方向転換が容易なものが望まれている。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、上方の構造部に対して、安定した姿勢で移動可能としつつ移動時の方向転換が容易な無人飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の無人飛行体は、本体部と、揚力を生じさせる揚力発生手段と、少なくとも前記本体部の上方の情報を取得する情報取得部と、前記揚力発生手段により付与される揚力により前記本体部の上方に位置する構造部に接して走行可能な走行手段と、この走行手段が前記構造部に接した状態で水平方向に推進力を生じさせる推進力発生手段と、を備え、前記走行手段は、前記推進力発生手段による推進力を補助する駆動輪と、進行方向を設定する操舵輪と、を有するものである。
【0013】
請求項2記載の無人飛行体は、請求項1記載の無人飛行体において、操舵輪は、非駆動の従動輪であるものである。
【0014】
請求項3記載の無人飛行体は、請求項1または2記載の無人飛行体において、情報取得部は、外殻の少なくとも一部をなす筐体を備え、駆動輪は、前記筐体の幅内で前記筐体に対し所定方向の一側に離れて位置し、操舵輪は、前記筐体の幅内で前記筐体に対し前記所定方向の他側に離れて位置するものである。
【0015】
請求項4記載の無人飛行体は、請求項3記載の無人飛行体において、情報取得部は、筐体を構造部に対して保護する筐体ガードを備えるものである。
【0016】
請求項5記載の無人飛行体は、請求項1ないし4いずれか一記載の無人飛行体において、駆動輪は、前輪であり、操舵輪は、後輪であり、推進力発生手段は、前進方向に推進力を生じさせるものである。
【0017】
請求項6記載の無人飛行体は、請求項1ないし5いずれか一記載の無人飛行体において、駆動輪は、複数配置され、操舵輪は、一つのみ配置されているものである。
【0018】
請求項7記載の無人飛行体は、請求項1ないし6いずれか一記載の無人飛行体において、情報取得部は、本体部に対して上下方向に位置調整可能であるものである。
【0019】
請求項8記載の無人飛行体は、請求項1ないし7いずれか一記載の無人飛行体において、揚力発生手段は、本体部を囲んで複数配置され、前記揚力発生手段を障害物に対して保護するガード部材をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上方の構造部に対して、安定した姿勢で移動可能としつつ移動時の方向転換が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態の無人飛行体を示す側面図である。
【
図4】同上無人飛行体を含む調査システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1ないし
図3において、10は無人飛行体を示す。無人飛行体10は、ドローン、あるいはUAV(Unmanned Aerial Vehicle)などと呼ばれるものである。無人飛行体10は、本体部12を備えている。本体部12は、無人飛行体10の中央部を構成する。
【0024】
無人飛行体10は、揚力を発生させる揚力発生手段13を備える。揚力発生手段13は、無人飛行体10に作用する重力と釣り合う揚力を付与することにより、無人飛行体10を浮遊(ホバリング)させる機能を有する。揚力発生手段13は、一例として上下方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(水平回転翼)であり、回転によって本体部12に対して揚力を付与する。揚力発生手段13は、複数設けられている。揚力発生手段13は、好ましくは本体部12の周囲に均等または略均等に配置されている。すなわち、揚力発生手段13は、本体部12の周囲を囲んで複数配置されている。好ましくは、揚力発生手段13は、上方または下方から見て、本体部12を基準として互いに反対側に対をなして配置される。
【0025】
本実施の形態において、揚力発生手段13は、本体部12に形成された腕部14に取り付けられている。腕部14は、本体部12から水平方向に沿って延びている。腕部14には、揚力発生手段13を障害物に対して保護するガード部材15が取り付けられている。ガード部材15は、揚力発生手段13に対し外方に延出している。ガード部材15は、揚力発生手段13の動作範囲よりも外方に延出している。つまり、本実施の形態では、ガード部材15は、揚力発生手段13をなす回転翼の回転範囲よりも外側に位置している。
【0026】
また、本実施の形態において、無人飛行体10は、情報取得部16を備える。情報取得部16は、少なくとも本体部12の上側の情報を取得する。情報取得部16は、本体部12の上部に位置している。本実施の形態において、情報取得部16は、本体部12の上方に突出して位置している。図示される例では、情報取得部16は、支持体であるフレーム17を介して本体部12の上部に支持される支持部材18上に取り付けられている。これに限らず、情報取得部16は、本体部12に収容されていてもよい。
【0027】
本実施の形態において、情報取得部16は、筐体16aと、筐体16aの内部に配置された検出部16bと、を有する。筐体16aは、情報取得部16の外殻の少なくとも一部をなす。本実施の形態において、筐体16aは、四角形箱状に形成され、情報取得部16の少なくとも上面部、前面部、後面部、及び、両側面部のそれぞれの外殻をなす。また、筐体16aの上面部は、平面状に形成されている。以下、説明を明確にするために、
図1の矢印FRに示す方向を前方向、矢印RRに示す方向を後方向とし、前後方向に対して交差または直交する方向を左右方向とする。図示される例では、筐体16aは、前後方向が左右方向よりも長手状となっている。
【0028】
そして、情報取得部16は、検出部16bから筐体16aの検出面となる上面部を介して検査対象物に向けて電磁波を反射するとともに、その反射波を検出部16bの位置で検出することで、トンネルや橋梁などの人工構造物である調査対象物の天井面などのコンクリート内部、すなわち構造部S(被調査部)内の空隙G(
図4)の有無や厚みなどを調査するための、既知の地中レーダアンテナ装置とするが、これに限らず、各種のセンサやカメラでもよい。
【0029】
さらに、情報取得部16は、本体部12に対し、上下方向に位置を調整可能となっている。したがって、筐体16aの上面部及び検出部16bの位置が、本体部12に対して上下に移動する。図示される例では、情報取得部16は、支持部材18に対して上下に移動する。本実施の形態では、情報取得部16は、構造部Sからの距離が所定の距離範囲(例えば0.8cm~5.0cm)内となるように調整可能となっている。
【0030】
好ましくは、情報取得部16は、構造部Sに対して筐体16aを保護する筐体ガード16cを有する。筐体ガード16cは、筐体16aの上面部に配置されている。図示される例では、筐体ガード16cは、筐体16aの四隅の上部にそれぞれ配置されている。筐体ガード16cは、橇状のものでもよいが、前後方向に回転可能な車輪とすることがより好ましい。筐体ガード16cは、構造部Sと接して回転可能な従動輪であり、構造部Sに対する接地抵抗を抑制している。筐体ガード16cの直径は、例えば3cmに設定されている。
【0031】
また、情報取得部16には、取得した情報を記憶する記憶部を備えていてもよい。記憶部としては、例えばUSBメモリなど、着脱可能なものが好適に用いられる。
【0032】
さらに、無人飛行体10は、この無人飛行体10または本体部12を走行可能とする走行手段20を備える。走行手段20は、回転により無人飛行体10を上方の構造部Sに沿って走行可能とする。
【0033】
走行手段20は、駆動輪20aと、操舵輪20bと、を有する。
【0034】
駆動輪20aは、後述する推進力発生手段22による無人飛行体10または本体部12の移動を補助する。駆動輪20aは、モータなどのアクチュエータである駆動手段により駆動される。駆動輪20aは、情報取得部16の筐体16aに対して所定方向の一側に離れた位置にある。本実施の形態において、駆動輪20aは、筐体16aに対して前方に離れて位置する。図示される例では、駆動輪20aは、支持部材18の前端部に支持される。すなわち、駆動輪20aは、前輪である。駆動輪20aは、情報取得部16の筐体16aの上面部より外方に位置する。
【0035】
駆動輪20aは、回転軸が筐体16aの上面部よりも下方に位置し、かつ、上端部が筐体16aの上面部よりも上方に突出する。駆動輪20aは、好ましくは大径に形成される。本実施の形態において、駆動輪20aは、情報取得部16の筐体ガード16cよりも大径に形成される。図示される例では、駆動輪20aは、情報取得部16の筐体16aの高さと同等あるいはそれより大きい直径を有する。好ましくは、駆動輪20aは、外周が合成樹脂製のタイヤなどの弾性部材により形成され、構造部Sに対して弾性的に接触可能となっている。
【0036】
駆動輪20aは、走行方向に対して交差する方向に複数、本実施の形態では対をなして配置されている。本実施の形態において、駆動輪20aは、筐体16aの左右方向の中心線を基準としてその両側に離れて配置されている。また、駆動輪20aは、筐体16aの両側面部よりも外方に突出しないように配置されている。つまり、駆動輪20aは、筐体16aの幅内に配置されている。
【0037】
操舵輪20bは、推進力発生手段22による無人飛行体10または本体部12の進行方向を設定するものである。操舵輪20bは、情報取得部16の筐体16aに対して所定方向の他側に離れた位置にある。すなわち、操舵輪20bは、情報取得部16の筐体16aを基準として、駆動輪20aとは反対側にある。本実施の形態において、操舵輪20bは、筐体16aに対して後方に離れて位置する。また、操舵輪20bは、上下方向に沿う支持軸に対して左右方向に旋回可能に取り付けられている。操舵輪20bの旋回は、モータなどのアクチュエータである旋回手段により駆動される。操舵輪20bは、駆動されてもよいが、好ましくは非駆動の従動輪である。本実施の形態では、操舵輪20bは、回転軸を中心とする回転が従動回転であり、支持軸を中心とする旋回が駆動される。図示される例では、操舵輪20bは、支持部材18の後端部に支持される。すなわち、操舵輪20bは、後輪である。操舵輪20bは、情報取得部16の筐体16aの上面部より外方に位置する。
【0038】
操舵輪20bは、回転軸が筐体16aの上面部よりも下方に位置し、かつ、上端部が筐体16aの上面部よりも上方に突出する。操舵輪20bは、好ましくは大径に形成される。本実施の形態において、操舵輪20bは、情報取得部16の筐体ガード16cよりも大径に形成される。図示される例では、操舵輪20bは、情報取得部16の筐体16aの高さと同等あるいはそれより大きい直径を有する。また、操舵輪20bは、駆動輪20aと同等の直径を有する。さらに、操舵輪20bは、駆動輪20aと同等の幅を有する。好ましくは、操舵輪20bは、外周が合成樹脂製のタイヤなどの弾性部材により形成され、構造部Sに対して弾性的に接触可能となっている。
【0039】
操舵輪20bは、駆動輪20aよりも数が少なく、本実施の形態では一つのみ配置されている。本実施の形態において、操舵輪20bは、筐体16aの左右方向の中心線上に支持軸が配置される。また、操舵輪20bは、筐体16aの両側面部よりも外方に突出しないように配置されている。つまり、操舵輪20bは、筐体16aの幅内に配置されている。
【0040】
さらに、無人飛行体10は、走行手段20が構造部Sに接した状態で水平方向の推進力を生じさせて無人飛行体10を移動させる推進力発生手段22を備える。推進力発生手段22は、一例として前後方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(垂直回転翼)であり、回転によって無人飛行体10に対して前進方向の推進力を付与する。推進力発生手段22は、単数でも複数でもよい。図示される例では、推進力発生手段22は、本体部12に形成された脚部27に取り付けられている。脚部27は、無人飛行体10の着地時に地面に対して設置する部分である。脚部27は、本体部12から下方へと延びている。本実施の形態において、脚部27は、左右に対をなして配置され、これら脚部27間を連結する梁部材27aに推進力発生手段22が位置する。すなわち、本実施の形態では、推進力発生手段22の回転軸が揚力発生手段13の回転軸よりも下方に位置する。
【0041】
また、推進力発生手段22は、情報取得部16の筐体16aに対して所定方向の他側、本実施の形態では後側に位置する。すなわち、推進力発生手段22は、情報取得部16の筐体16aに対して、操舵輪20bと同側である後側に位置する。したがって、推進力発生手段22は、操舵輪20bの下方に位置する。
【0042】
また、無人飛行体10は、制御部29を備える。制御部29は、本体部12に配置されている。制御部29は、揚力発生手段13、走行手段20の駆動輪20aの駆動、走行手段20の操舵輪20bの操舵、及び、推進力発生手段22の動作を制御する。例えば、制御部29は、
図4に示す操作員POにより、所定のコントローラCを介して入力された操作信号に応じて、揚力発生手段13、走行手段20の駆動輪20aの駆動、走行手段20の操舵輪20bの操舵、及び、推進力発生手段22の動作を制御する。すなわち、無人飛行体10は、操作員POにより遠隔操作される。コントローラCは、制御部29と無線通信可能とすることが好ましいが、これに限らず、制御部29と有線通信するように構成されていてもよい。なお、操作員POは、トンネルの内部などの暗所を調査する場合、通常、作業補助員PAとともに調査を実施する。作業補助員PAは、例えば無人飛行体10及び構造部Sを照明することで操作員POによる無人飛行体10の操作を補助する。その他に、制御部29は、情報取得部16の動作を制御してもよいし、情報取得部16により取得された情報を記憶したり、解析したりする機能を備えていてもよい。
【0043】
さらに、無人飛行体10は、電源部を備える。電源部は、揚力発生手段13、走行手段20の駆動輪20a、推進力発生手段22、及び、制御部29の動力源となる。また、電源部は、情報取得部16の電源となっていてもよい。電源部は、充電可能な二次電池としてもよいし、交換可能な一次電池としてもよいし、有線によって外部電源から電力を取るものでもよい。例えば、電源部は、
図1に示す本体部12に配置される。
【0044】
そして、無人飛行体10は、空中を移動する際には、制御部29により制御された揚力発生手段13、及び/または、推進力発生手段22により生じる推進力を利用し、前後、左右、上下に移動可能となっている。
【0045】
一方、本実施の形態において、無人飛行体10は、例えば上方の構造部Sを調査する際などの場合、
図1ないし
図3に示すように、揚力発生手段13による上方向に向かう揚力によって走行手段20の駆動輪20a及び操舵輪20bを構造部Sに押圧し、推進力発生手段22により生じる推進力を利用して構造部Sに沿って例えば時速4km程度の所定の速度で移動しながら、情報取得部16によって構造部Sの情報を取得する。推進力発生手段22により生じる推進力が不足する場合には、それを補助するように走行手段20の駆動輪20aを駆動させる。また、走行時に方向転換する際には、走行手段20の操舵輪20bを旋回軸に沿って旋回させることで、比較的小さい旋回半径で容易に方向転換可能となる。
【0046】
すなわち、本実施の形態の場合、構造部Sに沿って移動する際には、前後や左右の揚力発生手段13の揚力差、例えば回転翼の回転速度差により生じる前後方向や左右方向の推進力を用いず、上方向の揚力を用い、推進力は基本的に推進力発生手段22によって前進方向に生じさせ、必要に応じて駆動輪20aによって補助する。そのため、無人飛行体10は、基本的に前進する。つまり、無人飛行体10は、駆動輪20aを前側として構造部Sに沿って移動し、必要に応じて操舵輪20bを旋回させ推進力発生手段22により生じる推進力による前進方向を変える。
【0047】
このため、例えば回転翼の回転速度差によって無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させる従来の場合のように、本体部12を構造部Sに対し前後に傾斜させることなく、簡素な構成で、上方の構造部Sに対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部Sに沿って移動させることができ、かつ、移動時の方向転換が容易になる。
【0048】
すなわち、揚力発生手段13により発生させる揚力によって走行手段20を構造部Sに押圧する場合には、接地抵抗が大きく、従来のように揚力発生手段13の回転数の制御による方向転換では方向転換が容易でない。そのため、本実施の形態では、構造部Sに沿って移動する際、基本的に操舵輪20bで方向転換を行うことで、方向転換を容易としつつ、揚力発生手段13の回転数の制御による方向転換を基本的に用いないため、システム制御としても単純な構成で済む。
【0049】
したがって、本体部12の上側の情報を取得する情報取得部16を備える場合、情報取得部16を構造部Sに正対させた状態を維持しながら構造部Sに沿って移動できるので、構造部Sの情報を情報取得部16によって精度よく取得できる。すなわち、無人飛行体10に搭載した情報取得部16によって、構造部Sを調査できるため、従来の計測方法と比較して、計測車両、高所作業者、仮設足場などの準備が不要になり、作業員の削減、時間短縮、及びコスト削減が可能になる。
【0050】
操舵輪20bを非駆動の従動輪とすることで、操舵輪20bを駆動するためのモータなどのアクチュエータが不要となり、無人飛行体10をより簡素化及び軽量化できる。
【0051】
情報取得部16の筐体16aに対し、駆動輪20a及び操舵輪20bをそれぞれ筐体16aの幅内に配置したことで、情報取得部16の位置で筐体16aの幅方向に突出する部分をなくすことができる。そのため、障害物などに対して引っ掛かりにくくし、狭い位置での移動が可能になる。また、駆動輪20aを筐体16aに対し所定方向の一側に離れて配置し、操舵輪20bを筐体16aに対し所定方向の他側に離れて配置することで、駆動輪20aあるいは操舵輪20bを筐体16aに取り付ける場合と比較して、駆動輪20a及び操舵輪20bに大径のものを用いても、情報取得部16からの上方への突出量を減らし、情報取得部16の検出面となる筐体16aの上面部を駆動輪20a及び操舵輪20bによって覆うことがない。そこで、大径の駆動輪20a及び操舵輪20bにより構造部Sにある突起や段差などを乗り越えやすくなって安定した走行性を得つつ、情報取得部16による上方の構造部Sの検出精度を低下させることがない。
【0052】
また、駆動輪20aを前輪、操舵輪20bを後輪として、推進力発生手段22が前進方向に推進力を生じさせるため、無人飛行体10の前方にて構造部Sにある突起や段差などを乗り越えやすくなる。
【0053】
さらに、駆動輪20aを複数配置し、操舵輪20bを一つのみ配置することで、操舵輪20b側の重量を軽くし、操舵機構を単純化できる。また、前進時には、構造部Sにある突起などに対して複数の駆動輪20aがガードとなり、情報取得部16の筐体16aに突起などが衝突しにくくなる。
【0054】
情報取得部16の筐体16aを構造部Sに対して筐体ガード16cにより保護することで、構造部Sにある突起や段差などによる情報取得部16の傷付きを抑制できる。また、筐体ガード16cを車輪とすることで、構造部Sへの接地抵抗を抑制でき、構造部Sに沿ってより円滑に走行可能となる。
【0055】
情報取得部16の位置を本体部12に対して上下方向に調整可能としたので、構造部Sの突起や段差に応じて、構造部Sからの情報取得部16の距離を情報の取得に適切な距離に設定できる。
【0056】
また、飛行中や構造部Sに沿って移動するとき、本体部12を囲む複数の揚力発生手段13をガード部材15によって障害物に対して保護できる。
【符号の説明】
【0057】
10 無人飛行体
12 本体部
13 揚力発生手段
15 ガード部材
16 情報取得部
16a 筐体
16c 筐体ガード
20 走行手段
20a 駆動輪
20b 操舵輪
22 推進力発生手段
S 構造部