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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095377
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】バンパアブソーバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B60R19/18 P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208666
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】592048431
【氏名又は名称】株式会社中外
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】澤居 政次
(72)【発明者】
【氏名】菊地 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中村 有希
(72)【発明者】
【氏名】小竹 翔太
(72)【発明者】
【氏名】雪本 善和
(57)【要約】
【課題】衝突時に歩行者への反力が一定以上に大きくならないようエネルギー吸収する。
【解決手段】本発明のバンパアブソーバー(20)は、X方向に延び、衝撃を受けてX方向において単純圧縮する幹部(21)と、幹部(21)から車体の後方向に分岐する枝部(22)と、を有し、枝部(22)における幹部(21)との分岐部分(23)に、衝撃によって生じる幹部(21)と枝部(22)との破断を誘起する破断誘起部(24)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体内のバンパーシステムに配置されるバンパアブソーバーであって、
前記車体の前後方向に延び、衝突体により衝撃を受けて前後方向において単純圧縮する、平板状の幹部と、
前記幹部から車体の後方向に分岐する、少なくとも1つの平板状の枝部と、を有し、
前記枝部における前記幹部との分岐部分に、前記衝撃によって生じる前記幹部と前記枝部との破断を誘起する破断誘起部が設けられている、バンパアブソーバー。
【請求項2】
前記破断誘起部は、前記幹部と前記枝部とにより形成された空間側に設けられている、請求項1に記載のバンパアブソーバー。
【請求項3】
前記破断誘起部は、前記分岐部分から、前記幹部の圧縮方向と反対方向へ窪んだ溝である、請求項1または2に記載のバンパアブソーバー。
【請求項4】
少なくとも前記幹部は、発泡樹脂からなる、請求項1~3の何れか1項に記載のバンパアブソーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパアブソーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両の車体の前後には、車体の保護や、衝突時の乗員あるいは被衝突物の損傷の抑制を目的としてバンパーシステムが設けられている。特に最近では、対人事故において、歩行者の脚部に対して与える負荷を小さくして、歩行者の傷害値を軽減することができるバンパーシステムの開発が行われている。
【0003】
このようなバンパーシステムは、衝撃緩衝構造を有する。当該衝撃緩衝構造では、車幅方向に配設されたバンパリンフォースの前面に衝撃緩衝部材(バンパアブソーバー)が配設されている。
【0004】
バンパアブソーバーは、種々の形状が提案されている。例えば、特許文献1に開示されたバンパアブソーバーは、車両の前後方向に延び、略水平に配置された平板状の下脚と、前記下脚の上方に設けられる平板状の上脚と、前記下脚の前方と前記上脚の前方とをつなぐ側部と、を有する。
【0005】
また、特許文献2に開示されたバンパアブソーバーは、上下に分割形成された第1緩衝部材と第2緩衝部材と、を有している。第1緩衝部材および第2緩衝部材は互いに、前方位置で一体的に連結している一方、後方位置では、これら緩衝部材間で空間を形成している。そして、第1緩衝部材と第2緩衝部材との連結部分は、衝突体により前方から衝撃を受けたときに破断可能となるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015- 3688号公報
【特許文献2】特開2008- 94262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に開示される発泡体からなるバンパアブソーバーは、衝突時に発泡体が圧縮されることでエネルギーを吸収する。しかし、発泡体に対して一定以上の圧縮が起こると、バンパアブソーバーは、エネルギーを吸収できず、歩行者への反発が大きくなる場合がある。それゆえ、バンパアブソーバーには、歩行者保護のため、一定以上に反力が大きくならないようエネルギー吸収する点で改善の余地がある。
【0008】
本発明の一態様は、衝突時に歩行者への反力を抑制できるバンパアブソーバーを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るバンパアブソーバーは、車体内のバンパーシステムに配置されるバンパアブソーバーであって、前記車体の前後方向に延び、衝突体により衝撃を受けて前後方向において単純圧縮する、平板状の幹部と、前記幹部から車体の後方向に分岐する、少なくとも1つの平板状の枝部と、を有し、前記枝部における前記幹部との分岐部分に、前記衝撃によって生じる前記幹部と前記枝部との破断を誘起する破断誘起部が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、衝突時に歩行者への反力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るバンパアブソーバーを有するバンパーシステムを備えた車両の概略構成を示す透視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るバンパアブソーバーの概略構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るバンパアブソーバーを規定する各寸法を説明するための断面図である。
図4】401(401A~401D)は本発明の一実施形態に係るバンパアブソーバーの衝撃緩衝作用を示す図であり、402(402A~402C)は比較例としてのバンパアブソーバーの衝撃緩衝作用を示す図であり、F-S線図は、本発明の一実施形態および比較例それぞれのバンパアブソーバーの衝撃緩衝作用における衝突体が受ける荷重と変位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。図1は、本実施形態に係るバンパアブソーバー20を有するバンパーシステム10を備えた車両100の概略構成を示す透視図である。なお、本願明細書において、車両100の後から前へ向かう方向をX方向とし、車両100の車幅方向をY方向とし、X方向およびY方向の両方に垂直な方向をZ方向とする。Z方向は、車両100の下側から上側へ向かう方向であるともいえる。
【0013】
図1に示されるように、バンパーシステム10は、バンパアブソーバー20と、バンパリンフォース30と、バンパフェイシア110と、を備えている。バンパリンフォース30は、車両100の車体に取り付けられている。バンパアブソーバー20は、バンパリンフォース30の前面に当接するように配置されている。バンパフェイシア110は、車両100の外装部材であり、バンパアブソーバー20およびバンパリンフォース30を覆う。
【0014】
バンパアブソーバー20は、衝突事故の際に、歩行者の脚等の被衝突物と、バンパリンフォース30との間で、変形し、あるいは押し潰されることによって、衝突のエネルギーを吸収する機能を有する。バンパアブソーバー20は、特に、被衝突物への反力を軽減する機能を有する。バンパアブソーバー20は、衝撃吸収性に優れた材料から構成されている。
【0015】
バンパリンフォース30は、鋼製であり、Y方向に水平に延びる部材である。バンパリンフォース30、圧縮変形するバンパアブソーバー20を受ける。バンパリンフォース30は、例えば、略直方体の外形の中空筒状の構造を有する。そして、このような中空筒状の構造において、中空筒内部に、補強用の仕切壁が設けられていてもよい。また、バンパリンフォース30は、バンパアブソーバー20の取付け座、および、バンパアブソーバー20が潰れて衝撃を吸収する際の台座として機能する。
【0016】
バンパフェイシア110は、バンパアブソーバー20およびバンパリンフォース30を車体外部から覆い隠す部材である。バンパフェイシア110により、車両100の車体の意匠性が向上する。また、バンパフェイシア110は、バンパアブソーバー20を外部環境から保護し、バンパアブソーバー20の性能が低下するのを防止する機能を有する。
【0017】
バンパフェイシア110は、衝撃荷重を受けた場合に、比較的小さな荷重により変形または破断されることが好ましい。これにより、衝撃荷重がバンパアブソーバー20に容易に伝達されるので、バンパアブソーバー20の衝撃吸収性能がバンパフェイシア110によって阻害されるのを抑制することができる。それゆえ、バンパフェイシア110は、例えば、合成樹脂等の射出成形またはプレス成形によって形成された、薄肉の成形体であることが好ましい。
【0018】
次に、バンパアブソーバー20の構成について、より詳細に説明する。図2は、バンパアブソーバー20の概略構成を示す断面図である。
【0019】
バンパアブソーバー20は、Y方向(車幅方向)に延びて、車両100の幅に近い長さを有している。そして、X方向に沿ったバンパアブソーバー20の断面形状は、Y方向において略均一である。図2に示されるように、バンパアブソーバー20は、幹部21と、枝部22と、を備えている。
【0020】
幹部21は、Y方向に延びる平板状であり、車体の前後方向、すなわちX方向に延びている。幹部21は、前面21aと、後面21bと、下面21cと、上面21dと、を有している。前面21aは、衝突事故の際に、衝突体からの衝突を受け止める衝突面として機能し、バンパアブソーバー20全体の最も前側に位置している。後面21bは、上述したバンパリンフォース30に当接する面である。また、下面21cは、前面21aおよび後面21bの両方と連結する。下面21cは、後側から前側へ向かって上方に傾斜した面となっている。上面21dは、幹部21における枝部22と対向する面である。
【0021】
幹部21は、前面21aにて衝突体より衝突を受けると、前後方向(すなわちX方向)において単純圧縮する形状である。ここでいう「単純圧縮」とは、衝突体の衝突によって幹部21が前面21aおよび後面21bの向きを変えることなく、X方向において圧縮することをいう。
【0022】
幹部21は、衝突体より衝突を受けると、反転または転倒などすることなく、単純圧縮する。このとき、上述したバンパリンフォース30とバンパアブソーバー20との当接位置I(後面21bの位置に相当)に対して前面21aが近づくように、幹部21は圧縮する。ここで、当接位置Iに対して前面21aが近づく方向を圧縮方向とする。当該圧縮方向は、前側から後側へ向かう方向、すなわち、-X方向であるともいえる。
【0023】
枝部22は、Y方向に延びる平板状であり、幹部21から車体の後方向に分岐する。より具体的には、枝部22は、幹部21の前側部分にて、前側から後側へ向かって上方に傾斜して分岐している。前側傾斜面22aと、後面22bと、内面22cと、を有している。前側傾斜面22aは、前面21aに連結している。そして、前側傾斜面22aは、前面21aとの連結部分から、前側から後側へ向かって上方に傾斜した面となっている。また、後面22bは、上述したバンパリンフォース30に当接する面である。後面21bと後面22bとは、X方向において、ほぼ同じ位置に配されている。また、内面22cは、枝部22における幹部21と対向する面である。
【0024】
また、バンパアブソーバー20では、枝部22における幹部21との分岐部分23には、破断誘起部24が設けられている。破断誘起部24は、衝撃によって生じる幹部21と枝部22との破断を誘起する機能を有する。この破断誘起部24により、バンパアブソーバー20は、前面21aにて衝撃を受けると、幹部21の単純圧縮の間、枝部22が幹部21から破断する。それゆえ、バンパアブソーバー20では、衝突体により衝撃を受けて衝突エネルギーを吸収する過程で、破断誘起部24によって枝部22が幹部21から破断し、当該破断後、幹部21のみが衝撃を受ける。
【0025】
破断誘起部24は、衝撃により幹部21と枝部22との破断を誘起する構造であれば、特に限定されない。より簡便な構造にて幹部21と枝部22との破断を誘起する観点では、破断誘起部24は、幹部21と枝部22とにより形成された空間内に形成されていることが好ましい。
【0026】
例えば、図2に示されるように、破断誘起部24は、溝25である。溝25は、Y方向に延びた構成となっている。そして、溝25は、分岐部分23から、幹部21の圧縮方向と反対方向へ窪んだ溝である。ここでいう「圧縮方向と反対方向へ窪んだ溝」とは、枝部22に対して圧縮方向と反対方向へ窪んだ溝のことである。
【0027】
溝25は、面25aと、面25bと、幹部21の上面21dとにより形成される。そして、面25aは、枝部22の内面22cに対して、前側傾斜面22a側へ延びる面である。そして、面25bは、溝25を構成する面のうち前端の面を構成する面であり、幹部21の上面21dと面25aとをつなぐ面である。Y方向から見て、面25aと面25bとは逆L字形状の壁面を構成する。
【0028】
この逆L字状の壁面部分が、幹部21と枝部22との破断を誘起する機能を有する。バンパアブソーバー20の前面21aに衝突荷重が加わると、幹部21および枝部22は、-X方向に圧縮変形する。そして、この圧縮変形が進むと、前記逆L字形状の壁面部分において、面25aと面25bとの連結部25cに応力が集中する。そして、さらにバンパアブソーバー20が圧縮変形すると、最終的に幹部21と枝部22とは破断し、枝部22は幹部21から離間する。
【0029】
次に、バンパアブソーバー20を規定する各寸法について説明する。図3は、バンパアブソーバー20を規定する各寸法の好ましい一例を説明するための断面図である。なお、本発明の一実施形態に係るバンパアブソーバーは、かかる寸法等に限定されないことを念のため付言しておく。
【0030】
まず、幹部21について、下面21cの水平面に対する傾斜角度θ1は、0°≦θ1≦5°の範囲内で設定され得る。また、長さL1、幹部21の高さL2、および長さL3は、バンパアブソーバー20の許容荷重に応じて適宜設定可能である。なお、長さL1は、前面21aから面25bまでのX方向の長さであり、長さL3は、前面21aから後面21bまでのX方向の長さである。
【0031】
長さL1は、長さL3の10~90%の範囲であることが好ましく、30~60%の範囲であればより好ましい。長さL3が前記範囲内であれば、枝部の変形と破断による衝撃緩衝されるという効果を奏する。
【0032】
溝25について、前記逆L字形状の壁面を構成する面25aおよび25bの傾斜角度は、次のように設定され得る。すなわち、面25aの水平面に対する傾斜角度θ3は、0°≦θ3<90°の範囲内で設定され得る。また、面25bの鉛直面に対する傾斜角度θ2は、-75°≦θ2<90°の範囲内で設定され得る。
【0033】
また、枝部22について、枝部22の水平面に対する傾斜角度θ4は、0°<θ4≦75°の範囲内で設定され得る。なお、傾斜角度θ4は、具体的には、枝部22の内面22cの水平面に対する傾斜角度である。
【0034】
また、溝25の形成部分での枝部22の厚さb1は、溝25の形成部分以外の枝部22の厚さb2よりも小さくなっている。厚さb1は、具体的には、枝部22の前側傾斜面22aと、溝25における面25aと面25bとの連結部25cと、の間の長さとして規定されている。また、厚さb2は、枝部22における前側傾斜面22aと内面22cとの間の長さとして規定されている。このように厚さb1が厚さb2よりも小さくなっているので、幹部21と枝部22との破断が誘起され得る。
【0035】
次に、バンパアブソーバー20の衝撃緩衝作用について、さらに詳述する。図4の401(401A~401D)は、本実施形態に係るバンパアブソーバー20の衝撃緩衝作用を示す図であり、図4の402(402A~402C)は、比較例としてのバンパアブソーバー20’の衝撃緩衝作用を示す図である。また、図4のF-S線図は、バンパアブソーバー20および20’それぞれの衝撃緩衝作用における衝突体が受ける荷重Fと変位Sとの関係を示すグラフである。図4のF-S線図では、バンパアブソーバー20のF-S線を実線で示し、バンパアブソーバー20’のF-S線を点線で示している。なお、「衝突体が受ける荷重」とは、車両の衝突時等において衝突体に加わる(減速)加速度に衝突体の質量を乗じて得られる値であり、単に荷重と称する場合もある。また、当該荷重は、反力であるともいえる。
【0036】
また、図4の401A~401Dは、F-S線図におけるバンパアブソーバー20の変位Sと対応するように示されている。また、同様に、図4の402A~402Cは、F-S線図におけるバンパアブソーバー20’の変位Sと対応するように示されている。
【0037】
なお、図4の402に示されるように、バンパアブソーバー20と比較して、バンパアブソーバー20’は、幹部21と枝部22との間の空間に構成材料が埋められた構成となっている。すなわち、バンパアブソーバー20’の形状は、Y方向に延びる台形四角柱である。
【0038】
衝突体により前方から衝撃を受けると、バンパアブソーバー20は、図4の401A~401Dに示されるように形状を変化させることにより、衝突(衝撃荷重)Fを緩和することができる。図4の401Aに示されるように、図示しない衝撃体により前面21aに衝撃Fが加わると、枝部22が幹部21に対し離間するように幹部21および枝部22が上下方向に広がりつつ、バンパアブソーバー20は前後方向に圧縮する。このとき、バンパリンフォース30の前面は、幹部21および枝部22の両方に当接している。このように衝撃Fに対して幹部21および枝部22の両方が受け止めて圧縮するので、衝突初期の荷重は上昇する。
【0039】
そして、さらに衝撃Fが加わると、破断誘起部24により破断が誘起され、バンパアブソーバー20は、枝部22における幹部21との分岐部分23にて破断されて、破断片20Aおよび20Bに分離する。このとき、F-S線図に示されるように、衝突体の受ける荷重Fは、徐々に大きくなり、破断片20Aおよび20Bに分離した際に、荷重ピーク(目標荷重)となる。なお、破断片20Aは、枝部22を含み、破断片20Bは、幹部21を含む。
【0040】
そして、破断片20Aおよび20Bに分離すると、衝撃Fは、幹部21を含む破断片20Bに伝達され、枝部22を含む破断片20Aには伝達されない。その結果、破断片20Aおよび20Bに分離すると、衝撃Fに対して、幹部21を含む破断片20Bのみが受け止めて圧縮することになる。そして、破断片20Bに対し、より強い衝撃が加わり、前面21aが相対的に後退して衝撃Fを吸収することになる。このとき、衝突体の受ける荷重は、荷重下限値にまで低下する。
【0041】
次いで、図4の401Cに示されるように、衝撃Fに対して、破断片20Bのみが受け止める。そして、破断片20Bは、衝撃Fを吸収しつつ圧縮変形し、許容荷重内で圧縮する。そして、図4の401Dに示されるように、衝撃Fに対して、幹部21を含む破断片20Bのみが反発するので、衝撃に対する反発を低く抑えることができる。それゆえ、衝突体の受ける荷重は、荷重下限値を下回ることなく、緩やかに上昇しながら目標荷重に到達するので、衝撃Fが緩和される。
【0042】
バンパアブソーバー20と比較して、バンパアブソーバー20’は、図4の402A~402Cに示されるように形状を変化させることにより、衝突(衝撃荷重)Fを緩和する。図4の402A~402Cに示されるように、バンパアブソーバー20’は、前面21’aから衝撃Fを受けて、単なる圧縮変形により衝撃Fを緩衝させている。このため、F-S線図の点線に示すように、衝突体の受ける荷重は、目標荷重を上回る。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るバンパアブソーバー20によれば、衝突体の受ける荷重を荷重下限値から目標荷重までの許容荷重範囲内に抑えることができる。すなわち、バンパアブソーバー20は、衝突時に歩行者への反力(荷重)が一定以上に大きくならないようにエネルギー吸収できるという効果を奏する。なお、バンパアブソーバー20では、図3にて規定された長さL1、幹部21の高さL2、および長さL3を適宜設計することにより、車両に適した目標荷重、荷重下限値を設定することができる。
【0044】
また、図1等に示されたバンパアブソーバー20は、1つの幹部21に対して1つの枝部22が設けられた構成であった。しかし、本実施形態に係るバンパアブソーバーは、上述した効果を奏する限り、少なくとも1つの枝部が設けられた構成であればよく、図1に示された構成に限定されない。例えば、本実施形態に係るバンパアブソーバーは、図1において、1つの幹部21に対して複数の枝部22が設けられた構成であってもよい。
【0045】
また、バンパアブソーバー20の材質は、特に限定されない。好ましくは、バンパアブソーバー20は、少なくとも幹部21が発泡樹脂製であればよい。枝部22は、前方からの衝撃により、幹部21から破断および分離されるので、幹部21と異なる材料であってもよいし、幹部21と同じ材料であってもよい。枝部22の材料が幹部21と異なる場合、好ましくは、枝部22の材料は、前方からの衝撃により圧縮する可撓材料である。
【0046】
幹部21と枝部22とが同じ発泡樹脂製である場合、バンパアブソーバー20は、幹部21と枝部22とが一体成形された成形体から構成されていることが好ましい。
【0047】
前記発泡樹脂の基材樹脂は、特に限定されないが、発泡性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である。
【0048】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂を含む樹脂が挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが好適に挙げられる。スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂としては、(a)1種のスチレン系単量体を重合してなる、スチレン系単量体の単独重合体、または(b)2種以上のスチレン系単量体を重合してなる、スチレン系単量体の共重合体、が挙げられる。スチレン系単量体の単独重合体およびスチレン系単量体の共重合体、すなわちスチレン系単量体に由来する構成単位のみを有する樹脂である、ポリスチレン樹脂を好ましく使用し得る。
【0049】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族系ポリエステル樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族系ポリエステル樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフラレート)(PBAT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。また、ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0050】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の単量体(以下、オレフィン系単量体と称する場合もある)の具体例として、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、ペンテン-1、3-メチル-ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、3,4-ジメチル-ブテン-1、ヘプテン-1、3-メチル-ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1などの炭素数2~12のα-オレフィンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、前記オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,8,8a,6-オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンなどのジエンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂、プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、エチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂は、本実施形態に係る製造方法において、特に有効である。特に、α-オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が、入手容易であり、加工成形性に優れている。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、α-オレフィン-プロピレンランダム共重合体、α-オレフィン-プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性の炭化水素系発泡剤;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;および水を用いることが可能である。無機ガスを用いる場合は、比較的高い発泡倍率の発泡粒子が得られやすいことから、二酸化炭素が好ましい。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0056】
(まとめ)
本発明の態様1に係るバンパアブソーバー20は、車体内のバンパーシステム10に配置されるバンパアブソーバー20であって、前記車体の前後方向(X方向)に延び、衝突体により衝撃Fを受けて前後方向において単純圧縮する、平板状の幹部21と、前記幹部21から車体の後方向に分岐する、少なくとも1つの平板状の枝部22と、を有し、前記枝部22における前記幹部21との分岐部分23に、前記衝撃Fによって生じる前記幹部21と前記枝部22との破断を誘起する破断誘起部24が設けられている構成である。
【0057】
本発明の態様2に係るバンパアブソーバー20は、態様1において、前記破断誘起部24は、前記幹部21と前記枝部22とにより形成された空間側に設けられている構成である。
【0058】
本発明の態様3に係るバンパアブソーバー20は、態様1または2において、前記破断誘起部24は、前記分岐部分23から、前記幹部21の圧縮方向と反対方向へ窪んだ溝25である構成である。
【0059】
本発明の態様4に係るバンパアブソーバー20は、態様1~3の何れかにおいて、少なくとも前記幹部は、発泡樹脂からなる構成である。
【符号の説明】
【0060】
10 バンパーシステム
20 バンパアブソーバー
21 幹部
22 枝部
23 分岐部分
24 破断誘起部
100 車両
図1
図2
図3
図4