(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095472
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
E04B1/00 501Z
E04B1/00 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208818
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 栄治
(72)【発明者】
【氏名】島田 空
(72)【発明者】
【氏名】陣田 博史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】止水性により優れた屋根構造体を提供する。
【解決手段】屋根本体、屋根本体の周縁に設けられる複数の枠材、及び、複数の枠材のうちの互いに隣り合う2つの枠材の一方となる第一枠材3と対向する第一板部9aと、隣り合う2つの枠材の他方となる第二枠材5と対向する第二板部9bと、が角部を形成するコーナー部材9、を有し、コーナー部材は、第一板部が第一枠材に固定され、第二板部は、第二枠材と間隔を空けて配置され、第二枠材との間に弾性体14が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根本体、
前記屋根本体の周縁に設けられる複数の枠材、及び、
前記複数の枠材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠材の一方となる第一枠材と対向する第一板部と、前記隣り合う2つの枠材の他方となる第二枠材と対向する第二板部と、が角部を形成するコーナー部材、
を有し、
前記コーナー部材は、前記第一板部が前記第一枠材に固定され、前記第二板部は、前記第二枠材と間隔を空けて配置され、当該第二枠材との間に弾性体が設けられていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造体であって、
前記第二板部は、前記第二枠材側に突出し上下方向に沿う第二突出片を有し、
前記第二突出片に対して、前記角部とは反対側に前記弾性体が配置されていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の屋根構造体であって、
前記屋根本体は勾配を有し、
前記複数の枠材のうちの、前記屋根本体の水下側に位置する前記枠材には樋が設けられており、
前記屋根本体において水下側に配置される前記コーナー部材の下端は、前記樋の内側に位置していることを特徴とする屋根構造体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の屋根構造体であって、
前記隣り合う2つの枠材は、各々支柱を介して接合されており、
前記支柱の上端の小口とともに前記コーナー部材の上端の小口を覆うコーナーキャップを有していることを特徴とする屋根構造体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の屋根構造体であって、
前記第一板部は、前記第一枠材と間隔を空けて配置されていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の屋根構造体であって、
前記第一板部は、
前記第一枠材にビスにより固定されており、
前記第一板部において、前記ビスが貫通する部位の両側に、前記第一枠材側に突出して上下方向に沿って設けられ、前記第一枠材に当接する一対の第一突出片を有することを特徴とする屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の支柱と、支柱に取り付けられた複数の桁(水下桁、水上桁、一対の側桁)と、これら桁に取り付けられた屋根面材とを備えている屋根構造体は知られている(例えば、特許文献1参照)。この屋根構造体は、側桁と水下桁により形成されるコーナー部にコーナー部材がビスにより側桁と水下桁とに取り付けられており、コーナー部は、側桁の端部と水下桁の端部との間の部分がコーナー部材により覆われている。そして、コーナー部材と側桁との間、及び、コーナー部材と水下桁との間に水密材が挟まれて、コーナー部がシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の屋根構造体は、側桁と水下桁により形成されるコーナー部を覆うコーナー部材が、側桁及び水下桁との間に各々水密材を挟んでビスにより取り付けられているので、圧縮された水密材は弾性変形しにくいので、積雪時などに側桁と水下桁の接合部に開きが生じると水密材が切れるなどして漏水が生じる虞がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、止水性により優れた屋根構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の屋根構造体は、屋根本体、前記屋根本体の周縁に設けられる複数の枠材、及び、前記複数の枠材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠材の一方となる第一枠材と対向する第一板部と、前記隣り合う2つの枠材の他方となる第二枠材と対向する第二板部と、が角部を形成するコーナー部材、を有し、前記コーナー部材は、前記第一板部が前記第一枠材に固定され、前記第二板部は、前記第二枠材と間隔を空けて配置され、当該第二枠材との間に弾性体が設けられていることを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、止水性により優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明にかかる屋外構築物の一例をなす屋根ユニットの概略図である。
【
図3】屋根ユニットの左側の側桁近傍を示す平面図ある。
【
図4】屋根ユニットの左側における水上側の納まりを示す斜視図である。
【
図5】屋根ユニットの左側における水下側の納まりを示す斜視図である。
【
図7】水上コーナー部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図9】水下コーナー部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る屋根構造体について図面を参照して説明する。
本実施形態では、屋根構造体の一例として、
図1に示すような、例えば、テラスなどの屋根を構成し、上下方向に沿って立設された4本の支柱2に支持されて独立して設けられる屋根ユニット1を例に挙げて説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の屋根ユニット1は、4本の支柱2と、支柱2の上端部間に取り付けられた4本の桁3、4、5と、これら桁3、4、5に取り付けられた屋根本体6と、を有している。本実施形態の屋根ユニット1及び屋根本体6は、平面視で長方形状をなしており、屋根ユニット1は、四隅に配置される4本の支柱2が地面から立設されている。長方形状をなす屋根本体の長手方向または短手方向に隣り合う2本の支柱2の間には、それぞれ桁3、4、5が架け渡されており、各桁3、4、5の端部は、支柱2の上端部に接合されている。すなわち、4本の桁3、4、5は、支柱2を介して接合されて矩形状をなし、支柱2により支持されている。本実施形態においては、4本の桁3、4、5が屋根本体6の周縁に設けられる複数の枠材に相当するが、枠材は、屋根本体の周縁に設けられて枠状に形成される部材や、支柱に接続される梁などの長尺の部材であれば構わない。
【0010】
屋根本体6は、矩形状に配置された桁3、4、5の内側に設けられ、各桁3、4、5により屋根本体6の周縁部が接合されて屋根ユニット1の屋根面を形成している。屋根本体6は、短手方向における一方の端側から他方の端側に向かって高さが低くなる水勾配を有している。支柱2を介して矩形状に接合された桁3、4、5により形成される4箇所のコーナー部には、各々、各支柱2を挟んで両側に位置する桁3、4、5の間、及び、各桁3、4、5と屋根本体6との間が湿式のシーラント1aにより止水されている(
図6,
図8参照)。
【0011】
以下の説明では、矩形状に配置された桁3、4、5のうち、屋根本体6の水上側の縁部に沿って配置されている桁を水上桁3、屋根本体6の水下側の縁部に沿って配置されている桁を水下桁4、屋根本体6の左右の両側の縁部に沿ってそれぞれ配置されている桁を側桁5と称する。
【0012】
また、以下の説明においては、構築された屋根ユニット1を水下側から見たときに、上下となる方向を上下方向、屋根本体6の長手方向となる方向を左右方向、屋根本体6の短手方向となる方向を勾配方向として示す。屋根ユニット1の各部位であっても、また、屋根ユニット1を構成する各部材については単体の状態であっても、構築された状態にて上下方向、左右方向、勾配方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0013】
屋根本体6は、屋根支持部材である複数の垂木6aと、屋根ふき材である複数の屋根パネル6bと、垂木6aを水上桁3に接合する垂木掛け6cと、を有している。
【0014】
複数の垂木6aは、各々左右方向において互いに適宜間隔を空けて配置され、見込方向に沿って設けられている。屋根パネル6b は、矩形状に形成されたパネル材であり、垂木6aにより支持されて、互いに隣り合う2つの垂木6aの間を覆うように設けられている。垂木掛け6cは、水上桁3に固定されており、各垂木6aの水上側の端が支持される。
【0015】
屋根ユニット1には、
図2に示すように、水下桁4の水上側に設けられた樋7と、屋根本体6の左右の端に位置する垂木6aと側桁5とを連結する連結部材8と、互いに隣り合う桁3、4、5により形成されるコーナー部に取り付けられるコーナー部材9、10と、屋根ユニット1の四隅を上方から覆うコーナーキャップ11と、が設けられている。
【0016】
支柱2、水上桁3、水下桁4、側桁5、樋7、及び、連結部材8は、例えば、押出成形により形成された金属(例えば、アルミニウム合金)製の形材から形成されており、
図2、
図3に示すように、支柱2、水上桁3、水下桁4、側桁5、及び、樋7はそれぞれ長手方向に貫通する中空部2a、3a、4a、5a、7aを有している。
【0017】
樋7は、水下桁4の水上側の下部に長手方向に沿って取り付けられている。樋7は、水下桁4から水上側に向かって配置された底面部7bと、底面部7bの水下側の縁から立ち上がる水下壁部7cと、底面部7bの水上側の縁から立ち上がる水上壁部7dと、を有し、上方に向かって開放された凹状の排水溝7eが形成されている。
【0018】
樋7は、水下桁4の水上側の下部に設けられた被係止部4bに、水下壁部7cの水上側に設けられた被係止部7fが係止されて、水下壁部7cが水下桁4の水上側の面4cに当接されてビス止めされている。
【0019】
屋根本体6の垂木6aと屋根パネル6bの水下側の端部は、水上壁部7dの上方を覆い水上壁部7dよりも水下側に張り出すように、水上壁部7dに連結されている。このため、屋根本体6上を上下側に向かって流れる雨水は、水上壁部7dを越えて、排水溝7e内に流入する。また、雨水は、排水溝7e内を流れて排水される。排水溝7eを流れる雨水等は、底面部7bに形成された排水孔(不図示)から縦樋(不図示)を通って排水される。樋7の両端には、シート状をなす水密シートを備え、樋7の端を塞ぐ閉塞部材(不図示)が設けられている。
【0020】
連結部材8は、
図4、
図5に示すように、屋根本体6と側桁5との間に介在されて設けられており、側桁5とほぼ同じ長さを有している。すなわち、水上桁3の水下側の面と水下桁4の水上側の面との間に、ほぼ全長に亘って設けられている。連結部材8の上端には、左右方向に僅かな幅を有して屋根本体6と側桁5との間に露出する上端面部8aを有している。上端面部8aの水下側の端部は、切り欠かれており、上端面部8aの水下側の先端は、樋7の排水溝7e上に位置している。また、上端面部8aの水上側における屋根本体6側の縁は、屋根本体6が有する垂木掛け6cの側桁5側の縁と突き合わされている。
【0021】
互いに隣り合う桁3、4、5により形成されるコーナー部に取り付けられるコーナー部材9、10は、水上桁3と側桁5とにより形成される水上側のコーナー部に取り付けられる水上コーナー部材9と、水下桁4と側桁5とにより形成される水下側のコーナー部に取り付けられる水下コーナー部材10と、がある。
【0022】
水上側、及び、水下側、各々の左右2箇所のコーナー部に取り付けられるコーナー部材9、10は、左右が反転した形状をなしている。ここでは、左側の水上側、及び、水下側のコーナー部に取り付けられるコーナー部材9、10を例に挙げて説明する。
【0023】
水上コーナー部材9は、
図3、
図6に示すように、水上桁3と間隔を空けて対向する水上対向板部9aと、側桁5と間隔を空けて対向する上側対向板部9bとを有している。水上対向板部9aの側桁5側の縁と、上側対向板部9bの水上桁3側の縁とは繋がっており、水上対向板部9aと上側対向板部9bとは平面視においてL字状をなしている。
【0024】
水上対向板部9aには、上側対向板部9bと繋がっていない側の先端から水上桁3に向かって突出された板状の水上先端突出片9cと、水上先端突出片9cと、左右方向に間隔を空けて対向し、水上桁3に向かって突出された板状の水上対向突出片9dと、が設けられている。水上対向板部9aには、水上先端突出片9cと水上対向突出片9dとの間において、左右方向におけるほぼ中央に位置させて、ビス12が貫通するビス貫通孔9eが設けられている。
【0025】
水上コーナー部材9は、
図7に示すように、水上先端突出片9cと水上対向突出片9dの各々の先端が水上桁3に当接した状態で、ビス貫通孔9eを貫通するビス12により水上桁3に固定される。このとき、水上対向板部9aと水上桁3とが平行をなすように、水上先端突出片9cと水上対向突出片9dとの、水上対向板部9aからの突出量は等しく形成されている。また、水上先端突出片9cと水上対向突出片9dとの間隔は、ビス12のねじ部の直径よりも広く、ねじ頭部の直径よりも狭く設定することが望ましい。
【0026】
また、水上対向突出片9dよりも側桁5側の部位と、対向する水上桁3との間には、スポンジ等のパッキン13が圧縮された状態で介在されている。
【0027】
上側対向板部9bには、水上対向板部9aと繋がっていない側の先端よりも水上桁3に、側桁5側に向かって突出された板状の上側突出片9fが設けられている。上側突出片9fは、水上コーナー部材9が、ビス12により水上桁3に固定された状態で、上側突出片9fの先端が、側桁5に接触、または、近接する位置まで突出されている。このため、水上コーナー部材9が水上桁3に固定されると、水上対向板部9aの先端部分9gと、水上桁3において水上対向板部9aの先端部分9gと対向する部位と、上側突出片9fとにより、上方及び水下側が開放された空隙9hが形成される。
【0028】
空隙9hには弾性体でなる湿式のシーラント14が充填されて止水される。このとき、上側突出片9fの水下側の面には、ボンドブレーカー等の絶縁テープ(不図示)が貼り付けて、シーラント14と上側突出片9fとは縁切りされている。
【0029】
水上コーナー部材9においては、水上対向板部9aが第一板部に、上側対向板部9bが第二板部に、水上先端突出片9c及び水上対向突出片9dが一対の第一突出部に、上側突出片9fが第二突出部に、それぞれ相当する。また、水上桁3が第一板部と対向する第一枠材に相当し、側枠5が第二板部と対向する第二枠材に相当する。
【0030】
また、水上先端突出片9c及び水上対向突出片9dの水上対向板部9aからの突出量、及び、上側突出片9fのからの上側対向板部9bからの突出量は、水上コーナー部材9が水上桁3に固定された状態で、当該水上コーナー部材9が、支柱2を介して矩形状に接合された水上桁3と側桁5とにより形成されるコーナー部に施されたシーラント1a(
図6)に接触しない長さに設定されている。
【0031】
水上コーナー部材9は、水上桁3に取り付けられた状態では、上端の小口9iが、水上桁3と側桁5の上面及び支柱2の小口2bとほぼ同一高さとなり、下端は、連結部材8の上端面部8a及び垂木掛け6cの上面と接触、または、近接する。水上コーナー部材9の水上対向板部9a及び上側対向板部9bと、上端面部8a及び垂木掛け6cの上面との間も湿式のシーラント14により止水されている。
【0032】
水下コーナー部材10は、
図3、
図8に示すように、水下桁4と間隔を空けて対向する水下対向板部10aと、側桁5と間隔を空けて対向する下側対向板部10bとを有している。水下対向板部10aの側桁5側の縁と、下側対向板部10bの水下桁4側の縁とは繋がっており、水下対向板部10aと下側対向板部10bとは平面視においてL字状をなしている。
【0033】
水下対向板部10aには、下側対向板部10bと繋がっていない側の先端から水下桁4に向かって突出された板状の水下先端突出片10cと、水下先端突出片10cと、左右方向に間隔を空けて対向し、水下桁4に向かって突出された板状の水下対向突出片10dと、が設けられている。水下対向板部10aには、水下先端突出片10cと水下対向突出片10dとの間において、左右方向におけるほぼ中央に位置させて、ビス15が貫通するビス貫通孔10eが設けられている。
【0034】
水下コーナー部材10は、
図9に示すように、水下先端突出片10cと水下対向突出片10dの各々の先端が水下桁4に当接した状態で、ビス貫通孔10eを貫通するビス15により水下桁4に固定される。このとき、水下対向板部10aと水下桁4とが平行をなすように、水下先端突出片10cと水下対向突出片10dとの、水下対向板部10aからの突出量は等しく形成されている。また、水下先端突出片10cと水下対向突出片10dとの間隔は、ビス15のねじ部の直径よりも広く、ねじ頭部の直径よりも狭く設定することが望ましい。
【0035】
また、水下対向突出片10dよりも側桁5側の部位と、対向する水下桁4との間には、スポンジ等のパッキンが圧縮された状態で介在されている。
【0036】
下側対向板部10bには、水下対向板部10aと繋がっていない側の先端よりも水下桁4に、側桁5側に向かって突出された板状の下側突出片10fが設けられている。下側突出片10fは、水下コーナー部材10が、ビス15により水下桁4に固定された状態で、下側突出片10fの先端が、側桁5に接触、または、近接する位置まで突出されている。このため、水下コーナー部材10が水下桁4に固定されると、水下対向板部10aの先端部分10gと、水下桁4において水下対向板部10aの先端部分10gと対向する部位と、下側突出片10fとにより、下方及び水下側が開放された空隙10hが形成される。
【0037】
空隙10hには弾性体でなる湿式のシーラント14が充填されて止水される。このとき、下側突出片10fの水上側の面には、ボンドブレーカー等の絶縁テープ(不図示)が貼り付けて、シーラント14と下側突出片10fとは縁切りされている。
【0038】
水下コーナー部材10においては、水下対向板部10aが第一板部に、下側対向板部10bが第二板部に、水下先端突出片10c及び水下対向突出片10dが一対の第一突出部に、下側突出片10fが第二突出部に、それぞれ相当する。また、水下桁4が第一板部と対向する第一枠材に相当し、側枠5が第二板部と対向する第二枠材に相当する。
【0039】
水下コーナー部材10は、水下桁4に取り付けられた状態では、上端の小口10iが、水下桁4と側桁5の上面及び支柱2の小口2bとほぼ同一高さとなり、下端は、樋7の排水溝7e内に位置している。すなわち、水下コーナー部材10の、水下対向板部10aの下端は、水下桁4の水上側の面に当接されて水下桁4に固定されている樋7の水下壁部7cの上端よりも下に位置し、下側対向板部10bの下端は、側桁5と屋根本体6との間に介在されている連結部材8の上端面部8aよりも下に位置している。
【0040】
このため、水下先端突出片10c及び水下対向突出片10dの水下対向板部10aからの突出量、及び、下側突出片10fの下側対向板部10bからの突出量は、水下対向板部10aが、水下壁部7c及び水下壁部7cを固定しているビス15と接触しない位置に、下側対向板部10bが連結部材8の上端面部8aと接触しない位置に配置される長さに設定されている。そして、水下先端突出片10c、水下対向突出片10d、及び、下側突出片10fの下端の部位には、水下壁部7c及びビス15または上端面部8aと接触しないように切除されている。すなわち、水下コーナー部材10は、水下対向板部10a及び下側対向板部10bが、水下先端突出片10c、水下対向突出片10d及び下側突出片10fよりも下方に延出されており、水下対向板部10a及び下側対向板部10bにおいて延出された部位が樋7の排水溝7e内に位置している。
【0041】
水下先端突出片10c及び水下対向突出片10dの水下対向板部10aからの突出量、及び、下側突出片10fからの突出量を、水下対向板部10aが、水下壁部7c及びビス15と接触しないように、下側対向板部10bが上端面部8aと接触しないように設定することにより、水下コーナー部材10が水下桁4に固定された状態で、当該水下コーナー部材10が、支柱2を介して矩形状に接合された水下桁4と側桁5により形成されるコーナー部に施されたシーラント1a(
図8)に接触しない長さに設定される。
【0042】
コーナーキャップ11は、各支柱2の上端の小口2bよりも僅かに大きく、小口2bを覆う矩形状のキャップ本体部11aと、キャップ本体部11aの屋根本体6側の角から延出されて、各コーナー部材9、10の上端の小口9i、10iを覆う延出キャップ部11bと、を有している。キャップ本体部11aから繋がった延出キャップ部11bは、水上対向板部9a及び上側対向板部9b、また、水下対向板部10a及び下側対向板部10bよりも屋根本体6側に張り出して、コーナー部材9、10の上方を完全に覆っている。コーナーキャップ11の下面には、シート状をなす水密シート(不図示)が全面に設けられている。
【0043】
コーナーキャップ11は、キャップ本体部11aの四隅が、支柱2の四隅にビス止めされることにより、水密シートが圧縮されて、コーナーキャップ11と支柱2の小口2b及びコーナー部材9、10の上端の小口9i、10iとの間が止水されている。
【0044】
水上コーナー部材9及び水下コーナー部材10は、いずれも、支柱2の上端部に、水上桁3、水下桁4、2本の側桁5が矩形状に固定され、その内側に屋根本体6が固定された状態で、取り付けられる。
【0045】
水上コーナー部材9を取り付ける際には、まず、支柱2を挟んで両側に位置する水上桁3と側桁5の間、及び、水上桁3及び側桁5と屋根本体6との間に湿式のシーラント1aを施す。
【0046】
次に、パッキン13を取り付けた水上コーナー部材9の水上先端突出片9cと水上対向突出片9dとを水上桁3に当接させ、ビス貫通孔9eを貫通するビス12により、水上コーナー部材9を水上桁3に取り付ける。これにより、水上対向板部9aと水上桁3との間でパッキン13が圧縮される。
【0047】
次に、水上対向板部9aと、水上桁3と、上側突出片9fとにより形成されている空隙9hに湿式のシーラント14を充填し、水上対向板部9a及び上側対向板部9bと、上端面部8a及び垂木掛け6cの上面との間にも湿式のシーラント14を施す。
【0048】
水下コーナー部材10を取り付ける際には、まず、支柱2を挟んで両側に位置する水下桁4と側桁5の間、及び、水下桁4及び側桁5と屋根本体6との間に湿式のシーラント1aを施す。
【0049】
次に、パッキン13を取り付けた水下コーナー部材10の水下先端突出片10cと水下対向突出片10dとを水下桁4に当接させ、ビス貫通孔10eを貫通するビス15により、水下コーナー部材10を水下桁4に取り付ける。これにより、水下対向板部10aと水下桁4との間でパッキン13が圧縮される。
【0050】
次に、水下対向板部10aと、水下桁4と、下側突出片10fとにより形成されている空隙10hに湿式のシーラント14を充填する。このとき、水下対向板部10a及び下側対向板部10bの下端部は、樋7の排水溝7e内に位置している。
最後に、コーナーキャップ11を、各支柱2及び各コーナー部材9、10の上方を覆うように配置し、上方からビス止めする。
【0051】
本実施形態の屋根ユニット1によれば、屋根本体6の周縁に設けられる水上桁3と対向する水上対向板部9a及び側桁5と対向する上側対向板部9bを有して角部を形成する水上コーナー部材9は、水上対向板部9aが水上桁3と対向して固定され、上側対向板部9bは、側桁5と間隔を空けて、その間に湿式のシーラント14が介在されているので、水上桁3と側桁5との間にて開きが生じたとしても、上側対向板部9bは、対向する側桁5との間に介在された湿式のシーラント14が変形するので、水上桁3と側桁5との間で生じた開きを吸収させることが可能である。
【0052】
屋根本体6の周縁に設けられる水下桁4と対向する水下対向板部10a及び側桁5と対向する下側対向板部10bを有して角部を形成する水上コーナー部材10は、水下対向板部10aが水下桁4と対向して固定され、下側対向板部10bは、側桁5と間隔を空けて、その間に湿式のシーラント14が介在されているので、水下桁4と側桁5との間にて開きが生じたとしても、下側対向板部10bは、対向する側桁5との間に介在された湿式のシーラント14が変形するので、水下桁4と側桁5との間で生じた開きを吸収させることが可能である。このため、水上桁3と側桁5との間、及び、水下桁4と側桁5との間で開きが生じたとしても止水性は低下しないので、止水性により優れた屋根ユニット1を提供することが可能である。
【0053】
また、上側対向板部9bは、側桁5側に突出し上下方向に沿う上側突出片9fを有し、下側対向板部10bは、側桁5側に突出し上下方向に沿う下側突出片10fを有しているので、上側対向板部9bと側桁5との間、または、下側対向板部10bと側桁5との間に充填される湿式のシーラント14を、バックアップ材を設けることなく充填することができ、空隙9h、10h内に留めておくことが可能である。
【0054】
また、上側突出片9fの水下側の面および下側突出片10fの水上側の面に絶縁テープが貼り付けて、シーラント14と上側突出片9fおよび下側突出片10fとは縁切りされており、シーラント14は、上側対向板部9bと側桁5との間及び下側対向板部10bと側桁5との間にて伸縮し易いので、水上桁3と側桁5との間、または、水下桁4と側桁5との間で生じた開きをより吸収させることが可能であり、シーラント14の損傷を抑制することが可能である。
【0055】
上記実施形態においては、上側対向板部9bと側桁5との間及び下側対向板部10bと側桁5との間に、弾性体として湿式のシーラント14を充填する例について説明したが、弾性体はこれに限るものではない。例えば、弾性体としてスポンジやウレタン製などのAT(エアタイト)材を圧縮させて備えても構わない。この場合には、弾性体が、角部側に移動することを、上側突出片9fおよび下側突出片10fにより規制することができる。このため、弾性体を角部より、より離れた位置に留めて止水することができる。
【0056】
また、水下桁4に設けられた樋7の排水溝7e内に、水下桁コーナー部材10の下端が位置しているので、屋根本体6の勾配により水下側に流れて水下コーナー部材10に至った水を樋7に流して排出することが可能である。このため、水下側に水が溜まることを防止することが可能である。
【0057】
また、水下桁コーナー部材10の下端が、樋7の排水溝7e内に位置しているので、屋根本体6を伝って樋7に流れ込む雨水等が排水溝7e内で跳ねたとしても、水下桁4及び側桁5側に進入することを抑制することが可能である。
【0058】
また、支柱2の上端の小口2bとともにコーナー部材9、10の上端の小口9i、10iを覆うコーナーキャップ11を有しているので、コーナー部材9、10と支柱2との間に上方から水が浸入することを防止することができる。コーナーキャップ9、10は、支柱2の上端の小口2bとコーナー部材9、10の上端の小口9i、10iとをいずれも覆うので、支柱2の上端の小口2bとコーナー部材9、10の上端の小口9i、10iとを各々別個に塞ぐ場合よりも止水性がよく、1つのコーナーキャップ11を取り付けるだけなので、施工性にも優れている。
【0059】
また、水上対向板部9aは水上桁3と間隔を空けて配置されているので、水上対向板部9aが水上桁3に密着している場合より、水上対向板部9aが撓む場合の自由度が高い。このため、水上桁3と側桁5との間で生じた開きに対してより追従しやすい。また、水下対向板部10aは水下桁4と間隔を空けて配置されているので、水下対向板部10aが水下桁4に密着している場合より、水下対向板部10aが撓む場合の自由度が高い。このため、水下桁4と側桁5との間で生じた開きに対してより追従しやすい。このため、より止水性に優れた屋根ユニット1を提供することが可能である。
【0060】
また、水上対向板部9aは、ビス12が貫通するビス貫通孔9eの両側に水上桁3側に突出して上下方向に沿って設けられ、水上桁3に当接する水上先端突出片9cと水上対向突出片9dとを有しているので、水上先端突出片9cと水上対向突出片9dと水上桁3により確実に当接させて安定した状態で固定することができる。また、ビス12により水上桁3がより確実に当接されているので、水上桁3に沿って水上桁3と水上対向板部9aとの間から角部側に浸入する水を水上先端突出片9cと水上対向突出片9dより規制することが可能である。このとき、上先端突出片9cと水上対向突出片9dが各々、水の浸入を防止するのでより止水性が高い。
【0061】
また、水下対向板部10aは、ビス15が貫通するビス貫通孔10eの両側に水下桁4側に突出して上下方向に沿って設けられ、水下桁4に当接する水下先端突出片10cと水下対向突出片10dとを有しているので、水下先端突出片10cと水下対向突出片10dと水下桁4により確実に当接させて安定した状態で固定することができる。また、ビス15により水下桁4がより確実に当接されているので、水下桁4に沿って水下桁4と水下対向板部10aとの間から角部側に浸入する水を水下先端突出片10cと水下対向突出片10dより規制することが可能である。このとき、下先端突出片10cと水下対向突出片10dが各々、水の浸入を防止するのでより止水性が高い。このため、より止水性に優れた屋根ユニット1を提供することが可能である。
【0062】
上記実施形態においては、屋根構造体の一例として、4本の支柱2に支持されて独立して設けられる屋根ユニット1を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、建物の外壁に沿って設けられ、建物と2本の支柱とにより支持される屋根構造体であっても、また、屋根本体の周縁に水下桁または水上桁と2つの側桁とが設けられている、所謂、三方枠といわれる構造でなる屋根構造体であっても構わない。また、本発明の屋根構造体は、屋根本体の周縁に設けられる少なくとも2つの枠材が形成する1つのコーナー部を有していれば構わない。このため、互いに隣り合う桁により形成されるコーナー部に取り付けられるコーナー部材の角部の角度は90度に限らず、2つの枠材により形成されるコーナー部の角度に基づいて設定される。
【0063】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0064】
屋根本体、前記屋根本体の周縁に設けられる複数の枠材、及び、前記複数の枠材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠材の一方となる第一枠材と対向する第一板部と、前記隣り合う2つの枠材の他方となる第二枠材と対向する第二板部と、が角部を形成するコーナー部材、を有し、前記コーナー部材は、前記第一板部が前記第一枠材に固定され、前記第二板部は、前記第二枠材と間隔を空けて配置され、当該第二枠材との間に弾性体が設けられていることを特徴とする屋根構造体である。
【0065】
このような屋根構造体によれば、屋根本体の周縁に設けられる複数の枠材のうちの互いに隣り合う2つの枠材の各々と対向する第一板部及び第二板部を有して角部を形成するコーナー部材は、第一板部が隣り合う2つの枠材の一方の第一枠材と対向して固定され、第二板部は、対向する第二枠材と間隔を空けて、その間に弾性体が介在されているので、隣り合う2つの枠材に開きが生じたとしても、第二板部は、対向する第二枠材と間隔を空けて、その間に介在された弾性体が変形するので、2つの枠材の間で生じた開きを吸収させることが可能である。このため、2つの枠材に開きが生じたとしても、止水性は低下しないので、止水性により優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【0066】
かかる屋根構造体であって、前記第二板部は、前記第二枠材側に突出し上下方向に沿う第二突出片を有し、前記第二突出片に対して、前記角部とは反対側に前記弾性体が配置されていることを特徴とする。
【0067】
このような屋根構造体によれば、第二板部は、第二枠材側に突出し上下方向に沿う第二突出片を有しているので、第二枠材との間に設けられている弾性体が、角部側に移動することを規制することができる。このため、角部より、より離れた位置にて止水することができる。
【0068】
かかる屋根構造体であって、前記屋根本体は勾配を有し、前記複数の枠材のうちの、前記屋根本体の水下側に位置する前記枠材には樋が設けられており、前記屋根本体において水下側に配置される前記コーナー部材の下端は、前記樋の内側に位置していることを特徴とする。
【0069】
このような屋根構造体によれば、屋根本体の勾配により水下側に流れてコーナー部材に至った水を樋に流して排出することが可能である。このため、水下側に水が溜まることを防止することが可能である。
【0070】
かかる屋根構造体であって、前記隣り合う2つの枠材は、各々支柱を介して接合されており、前記支柱の上端の小口とともに前記コーナー部材の上端の小口を覆うコーナーキャップを有していることを特徴とする。
【0071】
このような屋根構造体によれば、支柱の上端の小口とともにコーナー部材の上端の小口を覆うコーナーキャップを有しているので、コーナー部材と、2つの枠材及び支柱との間に上方から水が浸入することを防止することができる。コーナーキャップは、支柱の上端の小口とコーナー部材の上端の小口とをいずれも覆うので、支柱の上端の小口とコーナー部材の上端の小口とを各々別個に塞ぐ場合よりも止水性がよく、1つのコーナーキャップを取り付けるだけなので、施工性にも優れている。
【0072】
かかる屋根構造体であって、前記第一板部は、前記第一枠材と間隔を空けて配置されていることを特徴とする。
【0073】
このような屋根構造体によれば、第一板部が第一枠材と間隔を空けて配置されているので、第一板部が第一枠材に密着している場合より、第一板部が撓む場合の自由度が高い。このため、2つの枠材に生じた開きに対してより追従しやすい。このため、より止水性に優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【0074】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の屋根構造体であって、前記第一板部は、前記第一枠材にビスにより固定されており、前記第一板部において、前記ビスが貫通する部位の両側に、前記第一枠材側に突出して上下方向に沿って設けられ、前記第一枠材に当接する一対の第一突出片を有することを特徴とする。
【0075】
このような屋根構造体によれば、第一枠材にビス止めされる第一板部は、ビスが貫通する部位の両側に、第一枠材側に突出して上下方向に沿って設けられ、第一枠材に当接する一対の第一突出片を有しているので、第一板部の一対の第一突出片を第一枠材により確実に当接させて安定した状態で固定することができる。また、ビスにより一対の第一突出部がより確実に当接されているので、第一枠材に沿って第一枠材と第一板部との間から角部側に浸入する水を一対の第一突出部により規制することが可能である。このため、より止水性に優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 屋根ユニット、2 支柱、2b 支柱の小口、3 水上桁、4 水下桁、
5 側桁、6 屋根本体、7 樋、9 水上コーナー部材、9a 水上対向板部、
9b 上側対向板部、9c 水上先端突出片、9d 水上対向突出片、
9f 上側突出片、9i 水上コーナー部材の小口、10 水下コーナー部材、
10a 水下対向板部、10b 下側対向板部、10c 水下先端突出片、
10d 水下対向突出片、10f 下側突出片、10i 水下コーナー部材の小口、
11 コーナーキャップ、12 ビス、14 シーラント、15 ビス、