IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 味の素株式会社の特許一覧

特開2022-95479樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置、及び構造体
<>
  • 特開-樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置、及び構造体 図1
  • 特開-樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置、及び構造体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095479
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置、及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220621BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220621BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220621BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20220621BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220621BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220621BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20220621BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20220621BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/40
H01L23/14 R
H01L23/12 501P
H01L23/30 R
H05K1/03 610L
G03F7/032 501
G03F7/004 501
G03F7/075 501
G03F7/031
G03F7/038 504
G03F7/023
G03F7/40 501
B32B27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208835
(22)【出願日】2020-12-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4F100
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA05
2H196BA06
2H196BA10
2H196EA02
2H196GA08
2H225AC24
2H225AC64
2H225AC66
2H225AD06
2H225AD26
2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AE12P
2H225AF02P
2H225AF04P
2H225AF05P
2H225AF87P
2H225AM10P
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM66P
2H225AM75P
2H225AM79P
2H225AM80P
2H225AM86P
2H225AM94P
2H225AM99P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225AN64P
2H225AN65P
2H225AN82P
2H225AN84P
2H225AN86P
2H225AP11P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225BA20P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC03
2H225CC11
2H225CC13
2H225CC21
4F100AA01A
4F100AH06A
4F100AK01A
4F100AK53A
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100DD07A
4F100DD07B
4F100EJ08A
4F100EJ08B
4F100EJ42A
4F100GB41
4F100GB43
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JB04
4F100JB13A
4F100JB14A
4F100JB14B
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JK14A
4F100JK14B
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD131
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD157
4J002GQ01
4J002GQ05
4J036AD08
4J036AH00
4J036AJ08
4J036AK02
4J036DA05
4J036DB08
4J036DC10
4J036DC40
4J036EA09
4J036FA05
4J036FA13
4J036GA28
4J036JA05
4J036JA09
4M109AA01
4M109BA07
4M109EA03
4M109EA08
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】エポキシ樹脂;酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤;並びに無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善する。
【解決手段】樹脂組成物の硬化物の研磨面上に感光性樹脂組成物の層を形成する特定の評価試験において、その感光性樹脂組成物の層の表面粗さを特定の範囲にし、且つ、その感光性樹脂組成物の層の最大厚みと最小厚みとの差TTVを特定の範囲にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物であって;
前記樹脂組成物の硬化試料の研磨面上に試験用組成物によって試験層を形成する評価試験を行った場合に、
前記試験層の前記研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、10nm以上、500nm未満であり、
前記試験層の最大厚みと最小厚みとの差TTVが、0.2μm以上、8μm以下であり;
前記研磨面は、
シリコンウエハ上に前記樹脂組成物の層をコンプレッションモールドによって形成すること、
前記樹脂組成物の層を熱硬化させて、前記硬化試料を得ること、及び、
前記硬化試料を研磨して前記研磨面を得ること、
を行う方法によって形成され;
前記試験層は、
前記硬化試料を円形にカットすること、
前記硬化試料の研磨面に、前記試験用組成物をスピンコートし、加熱して、前記試験用組成物の層を形成すること、及び、
前記試験用組成物の層を熱硬化させて、前記試験層を得ること、
を行う方法によって形成され;
前記試験用組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物及びポジ型感光性樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(C)無機充填材の量が60質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、シランカップリング剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物を150℃1時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の引張弾性率が、30GPa以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記評価試験において、前記研磨面が、
12インチシリコンウエハ上に、300μmの厚みを有する前記樹脂組成物の層を、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって形成すること、
前記樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、前記硬化試料を得ること、及び、
前記硬化試料を、厚み方向に30μm研磨して、算術平均粗さが10nm~300nmの前記研磨面を得ること、
を行う方法によって形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記評価試験において、前記試験層が、
前記硬化試料を、4インチサイズの円形にカットすること、
前記硬化試料の研磨面に、前記試験用組成物をスピンコートし、120℃5分の条件で加熱して、前記試験用組成物の層を形成すること、及び、
前記試験用組成物の層を250℃2時間の条件で熱硬化させて、中央の厚み8μmの前記試験層を得ること、
を行う方法によって形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ネガ型感光性樹脂組成物が、第一ポリマー50質量部、第二ポリマー50質量部、下記式(1)で表される化合物2質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート8質量部、2-ニトロソ-1-ナフト-ル0.05質量部、N-フェニルジエタノールアミン4質量部、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)フタルアミド酸0.5質量部、及び、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-(3-トリエトキシシリル)プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸0.5質量部を、N-メチルピロリドン及び乳酸エチルからなる混合溶媒(重量比8:2)に溶解して得られる、粘度35ポイズの組成物であり;
前記第一ポリマーが、4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーであり;
前記第二ポリマーが、3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーであり;
前記ポジ型感光性樹脂組成物が、第三ポリマー100質量部、ヘキサメトキシメチルメラミン15質量部、1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル11質量部、及び、γ-ブチロラクトン200質量部の混合物であり;
前記第三ポリマーは、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92質量部とドデカン二酸ジクロリド10.69質量部とを反応させて得られる、10000~50000の重量平均分子量及び2.0の分散度を有するポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化1】
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
支持体と、支持体上に設けられた請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【請求項15】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、
硬化物層の表面に接するように形成された感光性樹脂組成物の層と、を備え;
熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含み;
感光性樹脂組成物の層を硬化して得られる層の、硬化物層とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、10nm以上、500nm未満であり、
感光性樹脂組成物の層を硬化して得られる層の、最大厚みと最小厚みとの差TTVが、0.2μm以上、8μm以下である、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられる半導体チップパッケージ用の封止材も更なる高機能化が求められている。このような封止材として、樹脂組成物を硬化して形成されるものが知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-137370号公報
【特許文献2】特開2012-188555号公報
【特許文献3】特開2016-74920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップパッケージを製造する場合、回路基板に、樹脂組成物の硬化物によって絶縁層又は封止層として硬化物層を設けることがある。そして、この硬化物層上に、感光性樹脂組成物をレジストとして用いて再配線層等の配線を形成し、この配線によって回路基板の導体層と半導体チップとを電気的に接続することがある。
【0005】
感光性樹脂組成物を用いた配線の形成では、一般に、感光性樹脂組成物の層を形成すること、感光性樹脂組成物の層にマスクを介して露光して配線パターンの潜像を形成すること、現像によって潜像を形成された部分の感光性樹脂組成物を除去すること、及び、感光性樹脂組成物が除去された部分に配線を形成すること、を行う。以下の説明では、感光性樹脂組成物が除去された部分を、「開口部分」ということがある。よって、現像により感光性樹脂組成物が除去された開口部分のサイズが、配線のサイズに対応しうる。例えば、開口部分のサイズを小さくすることにより、配線の線幅を小さくできる。近年、配線の微細化のために、感光性樹脂組成物の層の開口部分を小さくすることが試みられている。
【0006】
しかし、開口部分が小さいと、当該開口部分を意図したとおりに形成することの困難性が高くなる。例えば、配線パターンに対応する開口部分の一部において、感光性樹脂組成物の除去が不十分であると、当該開口部分に残渣が形成されることがある。前記の残渣は、除去されずに残留した感光性樹脂組成物の塊りでありうる。この残渣が開口部分の一部にあると、適切な配線を形成できず、導通不良の原因となりうる。
【0007】
そこで、感光性樹脂組成物を改良して、解像性を高めることが試みられている。「解像性」とは、感光性樹脂組成物の層にサイズの小さい開口部分を形成できる性質を表す。しかし、感光性樹脂組成物の改良のみで解像性を高めることは、困難性が高い。例えば、回路基板に半導体チップを搭載して半導体チップパッケージを製造する場合、感光性樹脂組成物は、レジストとして用いた後も、必要に応じて硬化して絶縁層又は封止層として半導体チップパッケージに残りうる。よって、この場合、感光性樹脂組成物には、解像性だけでなく、機械的特性及び電気的特性についても優れることが求められるので、感光性樹脂組成物の改良には、解像性以外の要素に関する制約が多くなることがあった。前記のような事情から、本発明者は、感光性樹脂組成物の改良以外の方法によって、解像性を高めることを試みた。
【0008】
本発明者が検討を進めたところ、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、無機充填材、を含む樹脂組成物の硬化物によって硬化物層を形成した場合、当該硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物は、一般に、解像性に劣ることが判明した。そこで、本発明者は、感光性樹脂組成物ではなく、硬化物層の材料としての樹脂組成物を改良することにより、硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善することを試みた。
【0009】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善できる樹脂組成物;前記の樹脂組成物を用いた硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;並びに、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、当該硬化物層上に形成された感光性樹脂組成物の層とを備え、前記感光性樹脂組成物の層の解像性に優れる、構造体;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、樹脂組成物の硬化物の研磨面上に感光性樹脂組成物の層を形成する特定の評価試験において、その感光性樹脂組成物の層の表面粗さを特定の範囲にし、且つ、その感光性樹脂組成物の層の最大厚みと最小厚みとの差TTVを特定の範囲にした場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0011】
〔1〕 (A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物であって;
前記樹脂組成物の硬化試料の研磨面上に試験用組成物によって試験層を形成する評価試験を行った場合に、
前記試験層の前記研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、10nm以上、500nm未満であり、
前記試験層の最大厚みと最小厚みとの差TTVが、0.2μm以上、8μm以下であり;
前記研磨面は、
シリコンウエハ上に前記樹脂組成物の層をコンプレッションモールドによって形成すること、
前記樹脂組成物の層を熱硬化させて、前記硬化試料を得ること、及び、
前記硬化試料を研磨して前記研磨面を得ること、
を行う方法によって形成され;
前記試験層は、
前記硬化試料を円形にカットすること、
前記硬化試料の研磨面に、前記試験用組成物をスピンコートし、加熱して、前記試験用組成物の層を形成すること、及び、
前記試験用組成物の層を熱硬化させて、前記試験層を得ること、
を行う方法によって形成され;
前記試験用組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物及びポジ型感光性樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。
〔2〕 (A)エポキシ樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂を含む、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕 前記樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(C)無機充填材の量が60質量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 前記樹脂組成物が、シランカップリング剤を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕 前記樹脂組成物を150℃1時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の引張弾性率が、30GPa以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕 半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕 前記評価試験において、前記研磨面が、
12インチシリコンウエハ上に、300μmの厚みを有する前記樹脂組成物の層を、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって形成すること、
前記樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、前記硬化試料を得ること、及び、
前記硬化試料を、厚み方向に30μm研磨して、算術平均粗さが10nm~300nmの前記研磨面を得ること、
を行う方法によって形成される、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕 前記評価試験において、前記試験層が、
前記硬化試料を、4インチサイズの円形にカットすること、
前記硬化試料の研磨面に、前記試験用組成物をスピンコートし、120℃5分の条件で加熱して、前記試験用組成物の層を形成すること、及び、
前記試験用組成物の層を250℃2時間の条件で熱硬化させて、中央の厚み8μmの前記試験層を得ること、
を行う方法によって形成される、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔9〕 前記ネガ型感光性樹脂組成物が、第一ポリマー50質量部、第二ポリマー50質量部、下記式(1)で表される化合物2質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート8質量部、2-ニトロソ-1-ナフト-ル0.05質量部、N-フェニルジエタノールアミン4質量部、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)フタルアミド酸0.5質量部、及び、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-(3-トリエトキシシリル)プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸0.5質量部を、N-メチルピロリドン及び乳酸エチルからなる混合溶媒(重量比8:2)に溶解して得られる、粘度35ポイズの組成物であり;
前記第一ポリマーが、4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーであり;
前記第二ポリマーが、3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーであり;
前記ポジ型感光性樹脂組成物が、第三ポリマー100質量部、ヘキサメトキシメチルメラミン15質量部、1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル11質量部、及び、γ-ブチロラクトン200質量部の混合物であり;
前記第三ポリマーは、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92質量部とドデカン二酸ジクロリド10.69質量部とを反応させて得られる、10000~50000の重量平均分子量及び2.0の分散度を有するポリマーである、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化1】
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
〔11〕 支持体と、支持体上に設けられた〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。
〔12〕 〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
〔13〕 〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
〔14〕 〔13〕に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
〔15〕 熱硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、
硬化物層の表面に接するように形成された感光性樹脂組成物の層と、を備え;
熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含み;
感光性樹脂組成物の層を硬化して得られる層の、硬化物層とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、10nm以上、500nm未満であり、
感光性樹脂組成物の層を硬化して得られる層の、最大厚みと最小厚みとの差TTVが、0.2μm以上、8μm以下である、構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善できる樹脂組成物;前記の樹脂組成物を用いた硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;並びに、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、当該硬化物層上に形成された感光性樹脂組成物の層とを備え、前記感光性樹脂組成物の層の解像性に優れる、構造体;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、特定評価試験によって製造されるサンプルを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0015】
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材、を含む。以下、当該樹脂組成物の硬化物層上に形成されうる感光性樹脂組成物との区別のため、(A)~(C)成分を含む本実施形態に係る樹脂組成物を「特定樹脂組成物」ということがある。特定樹脂組成物は、通常、熱によって硬化可能な熱硬化性樹脂組成物である。この特定樹脂組成物は、当該特定樹脂組成物の硬化試料の研磨面上に試験用組成物によって試験層を形成する評価試験を行った場合に、下記の要件(i)及び(ii)の両方を満たす。以下、前記の評価試験を、「特定評価試験」ということがある
(i)試験層の研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaが、10nm以上、500nm未満である。
(ii)試験層の最大厚みと最小厚みとの差TTVが、0.2μm以上、8μm以下である。
【0016】
要件(i)は、詳細には、下記の通りである。すなわち、試験層の研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、通常500nm未満、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下である。また、前記算術平均粗さRaは、通常10nm以上であり、例えば、12nm以上、14nm以上などであってもよい。算術平均粗さは、JIS B 0601に規定されている。
【0017】
要件(ii)は、詳細には、下記の通りである。すなわち、試験層の最大厚みと最小厚みとの差TTVは、通常8μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは6μm以下である。また、前記TTVは、通常0.2μm以上であり、例えば、0.3μm以上、0.4μm以上などであってもよい。
【0018】
特定樹脂組成物の特定評価試験は、当該特定樹脂組成物の硬化試料の研磨面上に、試験用組成物によって試験層を形成する試験を表す。硬化試料は、特定樹脂組成物の試験用の硬化物を表す。また、試験用組成物は、特定樹脂組成物の評価のために用いる感光性樹脂組成物であり、ネガ型感光性樹脂組成物及びポジ型感光性樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いうる。以下の説明では、試験用組成物としてのネガ型感光性樹脂組成物を「第一特定組成物」と呼ぶことがあり、試験用組成物としてのポジ型感光性樹脂組成物を「第二特定組成物」と呼ぶことがある。
【0019】
特定評価試験において、研磨面は、
シリコンウエハ上に特定樹脂組成物の層をコンプレッションモールドによって形成すること、
特定樹脂組成物の層を熱硬化させて硬化試料を得ること、及び、
硬化試料を研磨して研磨面を得ること、
をこの順に行う方法によって形成される。
【0020】
シリコンウエハとしては、12インチのものを用いうる。また、このシリコンウエハ上に形成される特定樹脂組成物の層の厚みは、300μmでありうる。前記のコンプレッションモールドは、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件で行いうる。また、特定樹脂組成物の層の熱硬化は、150℃1時間の条件で行いうる。さらに、硬化試料の研磨は、硬化試料を厚み方向の30μm研磨するように行いうる。この研磨は、通常、グラインダーを用いて行う。グラインダーとしては、ディスコ社製「DAG810」を用いうる。このグラインダーは、φ200mmダイヤモンドホイールを用いたインフィールド方式のグラインダーである。また、前記の研磨は、特定の表面粗さを有する研磨面が得られるように行う。具体的には、研磨面の算術平均粗さは、通常、10nm~300nmである。よって、特定評価試験において、研磨面は、通常、12インチシリコンウエハ上に、300μmの厚みを有する特定樹脂組成物の層を、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって形成すること;特定樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、硬化試料を得ること;及び、硬化試料を、厚み方向の30μm研磨して、算術平均粗さが10nm~300nmの研磨面を得ること、を行う方法によって、形成される。
【0021】
また、特定評価試験において、試験層は、
研磨面を形成された硬化試料を円形にカットすること、
硬化試料の研磨面に、試験用組成物をスピンコートし、加熱して、試験用組成物の層を形成すること、及び、
前記試験用組成物の層を熱硬化させて、試験層を得ること、
をこの順に行う方法によって形成される。
【0022】
硬化試料のカットは、4インチサイズの円形に行いうる。ここで「4インチサイズの円形」とは、硬化試料を厚み方向からみた形状が、直径が4インチの円であることを表す。また、研磨面への試験用組成物のスピンコートは、中央の厚みが8μmの試験層が得られる条件で行いうる。通常は、最大回転数が1000rpm~3000rpmの回転数範囲に収まる範囲でスピンコートの具体的な回転数を設定して、熱硬化後に中央の厚みが8μmの試験層を得る。また、スピンコートする試験用組成物の量は、中央の厚みが8μmの試験層が得られるように調整しうる。試験層の中央とは、厚み方向から見た試験層の中央を表す。また、試験用組成物のスピンコート後に行う加熱の条件は、通常、120℃5分である。さらに、試験用組成物の層の熱硬化の条件は、通常、250℃で2時間である。よって、特定評価試験において、試験層は、通常、硬化試料を、4インチサイズの円形にカットすること;硬化試料の研磨面に、試験用組成物をスピンコートし、120℃5分の条件で加熱して、試験用組成物の層を形成すること;及び、試験用組成物の層を250℃2時間の条件で熱硬化させて、中央の厚み8μmの前記試験層を得ること;を行う方法によって、形成される。
【0023】
図1は、前記の特定評価試験によって製造されるサンプル1を模式的に示す断面図である。図1に示すように、特定評価試験によれば、シリコンウエハ10と、このシリコンウエハ10の表面10Uに形成された硬化試料20と、この硬化試料20の研磨面20Uに形成された試験層30と、を備えるサンプル1が得られる。上述した要件(i)は、試験層30の研磨面20Uとは反対側の表面30Uが、特定の範囲の算術平均粗さRaを有することを表す。また、上述した要件(ii)は、試験層30の最大厚みと最小厚みとの差TTVが、特定の範囲にあることを表す。TTVは、ウエハ中央部及び端部を含む15か所の測定点で、それぞれ試験層の厚みを測定し、それら測定された厚みの最大値と最小値との差として求めうる。
【0024】
特定評価試験において用いられる試験用組成物は、前記のように、ネガ型感光性樹脂組成物としての第一特定組成物及びポジ型感光性樹脂組成物としての第二特定組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
第一特定組成物は、第一ポリマー50質量部、第二ポリマー50質量部、下記式(1)で表される化合物2質量部、テトラエチレングリコールジメタクリレート8質量部、2-ニトロソ-1-ナフト-ル0.05質量部、N-フェニルジエタノールアミン4質量部、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)フタルアミド酸0.5質量部、及び、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-(3-トリエトキシシリル)プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸0.5質量部を、N-メチルピロリドン及び乳酸エチルからなる混合溶媒(重量比はN-メチルピロリドン:乳酸エチル=8:2)に溶解して得られる組成物である。混合溶媒の量は、23℃における第一特定組成物の粘度が、35ポイズとなるように調整される。第一特定組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」)を用い、1°34’xR24のローター、25℃、回転数5rpmで測定できる。
【0026】
【化2】
【0027】
第一ポリマーは、4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーである。
【0028】
詳細には、第一ポリマーは、
4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0g、及び、γ-ブチロラクトン400mlを混合して第一液を得ること、
第一液を23℃(室温)で攪拌しながら、第一液にピリジン79.1gを加えて、第二液を得て、第二液が発熱すること、
第二液の発熱の終了後、23℃まで放冷し、16時間静置すること、
氷冷下において、第二液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド溶液を、攪拌しながら40分かけて加えて、第三液を得ること、
第三液に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、攪拌しながら60分かけて加えて、第四液を得ること、
第四液を、23℃で2時間攪拌すること、
第四液に、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌して、第五液を得ること、
第五液に、γ-ブチロラクトン400mlを加えて第六液を得ること、
第六液を濾過して、第七液を得ること、
第七液を、3リットルのエチルアルコールに加えて、第一沈殿物を得ること、
第一沈殿物を、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して、第八液を得ること、並びに、
第八液を、28リットルの水に滴下して、第一ポリマーを沈殿させること、
を、この順で行う方法によって得られる、重量平均分子量が18000~25000のポリマーでありうる。
【0029】
第二ポリマーは、3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0質量部との反応生成物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3質量部を反応させ、更に4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0質量部を反応させて得られる、18000~25000の重量平均分子量を有するポリマーである。
【0030】
詳細には、第二ポリマーは、
3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート134.0g、及び、γ-ブチロラクトン400mlを混合して第九液を得ること、
第九液を23℃で攪拌しながら、第九液にピリジン79.1gを加えて、第十液を得て、第十液が発熱すること、
第十液の発熱の終了後、23℃まで放冷し、16時間静置すること、
氷冷下において、第十液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド溶液を、攪拌しながら40分かけて加えて、第十一液を得ること、
第十一液に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、攪拌しながら60分かけて加えて、第十二液を得ること、
第十二液を、23℃で2時間攪拌すること、
第十二液に、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌して、第十三液を得ること、
第十三液に、γ-ブチロラクトン400mlを加えて第十四液を得ること、
第十四液を濾過して、第十五液を得ること、
第十五液を、3リットルのエチルアルコールに加えて、第二沈殿物を得ること、
第二沈殿物を、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して、第十六液を得ること、並びに、
第十六液を、28リットルの水に滴下して、第二ポリマーを沈殿させること、
を、この順で行う方法によって得られる、重量平均分子量が18000~25000のポリマーでありうる。
【0031】
第二特定組成物は、第三ポリマー100質量部、下記式(2)で表されるヘキサメトキシメチルメラミン15質量部、下記式(3)で表される感光剤としての1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル11質量部、及び、γ-ブチロラクトン200質量部の混合物である。ヘキサメトキシメチルメラミンとしては、Allnex社製「サイメル300」を用いうる。また、1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステルとしては、ダイトーケミックス社製「TPPA528」を用いうる。
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
第三ポリマーは、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92質量部とドデカン二酸ジクロリド10.69質量部とを反応させて得られる、10000~50000の重量平均分子量及び2.0の分散度を有するポリマーである。分散度は、比Mw/Mnを表す。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0035】
詳細には、第三ポリマーは、
N-メチルピロリドン60gに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解して、第十七液を得ること、
第十七液を0℃~5℃に保ちながら、第十七液に、ドデカン二酸ジクロリド10.69g(40mmol)を10分間で滴下し、60分間撹拌して、第十八液を得ること、
第十八液を3リットルの水に投入して、析出物を生じさせること、
析出物を純水で洗浄して、第三ポリマーを得ること
を、この順で行う方法によって得られる、10000~50000の重量平均分子量及び2.0の分散度(Mw/Mn)を有するポリマーでありうる。
【0036】
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、標準ポリスチレン換算によって求めうる。
【0037】
上述した要件(i)及び要件(ii)を満たす特定樹脂組成物は、当該特定樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善できる。このように解像性を改善できる仕組みを、本発明者は下記の通りと推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組み制限されない。
【0038】
従来の樹脂組成物の硬化物層上に形成された感光性樹脂組成物の層は、その表面の粗度が大きいことがあった。このように粗度が大きいと、露光時に感光性樹脂組成物の層に進入する光が、その表面において意図しない屈折、回折又は反射を生じうる。その結果、光の焦点がずれて、設定された位置から焦点が外れうる。このように焦点がずれた部分では、露光が不十分となりうるので、現像後に残渣が残りうる。
【0039】
また、従来の樹脂組成物の硬化物層上に形成された感光性樹脂組成物の層は、その厚みが不均一であることがあった。このように厚みが不均一であると、感光性樹脂組成物の層が厚い部分と薄い部分との間で、適切な露光を行うために求められる光の焦点深度が異なりうる。よって、適切な焦点深度にバラツキが生じるので、適切な焦点深度の光による露光ができない部分が、感光性樹脂組成物の層に生じうる。したがって、当該部分においては、露光が不十分となりうるので、現像後に残渣が残りうる。
【0040】
露光及び現像によって感光性樹脂組成物を除去されるべき開口部分が小さい場合、前記の残渣があると、当該開口部分が残渣によって塞がれる可能性がある。そして、このように開口部分が仮に残渣で塞がれると、当該開口部分に意図した通りの配線を形成することが困難になりうる。
【0041】
これに対し、本実施形態では、感光性樹脂組成物の層の組成を調整するのではなく、当該層の下地としての硬化物層の材料としての特定樹脂組成物によって、感光性樹脂組成物の層の表面の粗さ及び厚みの均一性を改善している。
具体的には、本実施形態では、一般的な感光性樹脂組成物としての試験用組成物を用いた特定評価試験において、試験層が要件(i)及び(ii)を満たすことができる特定樹脂組成物を提供している。要件(i)は、感光性樹脂組成物の層の表面の粗度を低くできることを表す。また、要件(ii)は、感光性樹脂組成物の層の厚みの均一性を高められることを表す。一般的な感光性樹脂組成物である試験用組成物を用いて、表面の粗度が小さく且つ厚みが均一な層(試験層)を形成できる本実施形態の特定樹脂組成物は、試験用組成物以外の感光性組成物を用いた場合も、表面の粗度が小さく且つ厚みが均一な感光性樹脂組成物の層を得ることができる。よって、上述したように、露光のための光の焦点がずれたり、適切な焦点深度がばらついたりすることを、抑制できる。したがって、意図した通りの適切な露光を行うことができるので、残渣の発生を抑制できる。よって、サイズの小さい開口部分を形成することが可能となり、解像性の改善を達成できる。
【0042】
本発明者の検討によれば、前記のような開口部分の残渣は、エポキシ樹脂と、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤と、無機充填材と、を含む従来の樹脂組成物において、生じ易かったことが判明している。さらに、本発明者の検討によれば、それらの従来の樹脂組成物の中でも、無機充填材の量が多い樹脂組成物、及び、硬化物の弾性率が低い樹脂組成物において、特に残渣が生じ易かったことがことが判明している。よって、解像性の改善という効果を活用する観点から、(A)エポキシ樹脂と、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤と、(C)無機充填材とを組み合わせて含む特定樹脂組成物が要件(i)及び(ii)を満たすことが好ましい。その中でも、無機充填材の量が多い特定樹脂組成物、及び、硬化物の弾性率が低い特定樹脂組成物が、要件(i)及び(ii)を満たすことがより好ましい。
【0043】
-弾性率-
前記の要件(i)及び要件(ii)を充足する特定樹脂組成物を得る方法としては、例えば、特定の範囲の弾性率を有する硬化物が得られるように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。具体的には、特定樹脂組成物を150℃1時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物が、特定の範囲の引張弾性率を有するように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。硬化物の引張弾性率の範囲は、好ましくは7GPa以上、より好ましくは8GPa以上、特に好ましくは9GPa以上である。上限は、特段の制限は無い。ただし、従来は低い引張弾性率を有する硬化物が得られる樹脂組成物において解像性に劣る傾向があった。そこで、このように従来特に解像性の改善が困難であった樹脂組成物においてその解像性を改善して本実施形態の活用を図る観点から、特定樹脂組成物の硬化物の引張弾性率は、好ましくは30GPa以下、より好ましくは27GPa以下、特に好ましくは25GPa以下である。
【0044】
特定樹脂組成物の硬化物の引張弾性率は、後述する実施例で説明する方法によって測定しうる。
【0045】
無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物層の表面からは、無機充填材の粒子が離脱することがありえる。特に、硬化物を研磨した場合には、当該研磨の際に与えられる力によって、研磨面から無機充填材の粒子が離脱し易い傾向がある。仮に無機充填材の粒子が硬化物層の表面から離脱すると、その離脱した跡には窪みが形成されうる。このような窪みがあると、この硬化物層の表面に形成される感光性樹脂組成物の層の表面が粗くなったり、その感光性樹脂組成物の層の厚みが不均一になったりしうる。これに対し、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率が前記の範囲にあると、樹脂が(C)無機充填材の粒子を強固に保持することができるので、(C)無機充填材の粒子の離脱を抑制できる。よって、要件(i)及び要件(ii)を充足することが可能になりうる。
【0046】
一般に、樹脂組成物中の無機充填材が多いほど、無機充填材の粒子の離脱の頻度は大きくなりうる。よって、特定樹脂組成物の硬化物の具体的な弾性率は、(C)無機充填材の粒子の量に応じて設定することが好ましい。具体的には、特定樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(C)無機充填材の割合をR(C)[質量%]とし、特定樹脂組成物の硬化物の引張弾性率をT[GPa]とする。この場合、比R(C)/Tは、好ましくは8.0[質量%/GPa]以下、より好ましくは7.0[質量%/GPa]以下、特に好ましくは6.5[質量%/GPa]以下である。下限は、好ましくは2.0[質量%/GPa]以上であり、例えば2.5[質量%/GPa]以上、3.0[質量%/GPa]以上であってもよい。比R(C)/Tが前記の範囲にある場合、(C)無機充填材の粒子の離脱を効果的に抑制できるので、通常は、要件(i)及び要件(ii)を充足する特定樹脂組成物を得て、解像性の効果的な改善を達成できる。
【0047】
-表面自由エネルギー-
前記の要件(i)及び要件(ii)を充足する特定樹脂組成物を得る別の方法としては、例えば、特定の範囲の表面自由エネルギーを有する硬化物が得られるように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。具体的には、特定樹脂組成物を150℃1時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物が、特定の範囲の表面自由エネルギーを有するように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。硬化物の表面自由エネルギーの範囲は、好ましくは25mJ/m以上、より好ましくは30mJ/m以上、特に好ましくは35mJ/m以上である。上限は、特段の制限は無い。ただし、硬化物層上に厚い感光性樹脂組成物の層を形成する観点では、硬化物の表面自由エネルギーは、好ましくは200mJ/m以下、より好ましくは150mJ/m以下、特に好ましくは100mJ/m以下である。
【0048】
樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーは、後述する実施例で説明する方法によって測定しうる。後述する実施例では、表面自由エネルギーは、北崎・畑の理論に基づいて測定している。北崎・畑の理論では、下記の式(4)が成立する。
(γ ・γ 1/2+(γ ・γ 1/2+(γ ・γ 1/2={γ(1+cosθ)}/2 (4)
ここで、γは液体の表面自由エネルギーを表す。γ 、γ 及びγ は、それぞれ、液体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分及び水素結合成分を表す。θは、液体の固体に対する接触角を表す。γ 、γ 及びγ は、それぞれ、固体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分及び水素結合成分を表す。
【0049】
よって、表面自由エネルギーγ、並びに、その分散成分γ 、極性成分γ 及び水素結合成分γ が既知の3種類の液体(例えば、水、ジヨードメタン及びn-ヘキサデカン)を用意する。そして、これらの液体それぞれの、固体としての硬化物に対する接触角を測定する。測定された接触角を前記の式(4)に代入し、連立方程式を解くことにより、硬化物の表面自由エネルギーの分散成分γ 、極性成分γ 及び水素結合成分γ を求める。よって、これら各成分の和として、下記式(5)により、硬化物の表面自由エネルギーEを求めることができる。
E=γ +γ +γ (5)
【0050】
エポキシ樹脂及び硬化剤を含む樹脂組成物において、硬化剤が酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤又はフェノール系硬化剤を含む場合、一般には、当該樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーは小さい傾向がある。よって、一般的な感光性樹脂組成物は、この硬化物に対する濡れ性に劣る傾向がある。このように硬化物に対する濡れ性に劣る感光性樹脂組成物は、当該硬化物で形成された硬化物層上に層を形成した場合に、感光性樹脂組成物の層の表面が粗くなったり、その感光性樹脂組成物の層の厚みが不均一になったりしうる。これに対し、特定樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーが前記の範囲にあると、硬化物に対して感光性樹脂組成物が良好な濡れ性を有することができる。よって、硬化物層の表面に感光性樹脂組成物が均一な層を形成できるので、要件(i)及び要件(ii)を充足することが可能になりうる。
【0051】
また、前記のように、硬化物層の表面から(C)無機充填材の粒子が離脱している場合、(C)無機充填材の粒子が離脱した跡には、窪みが形成されうる。仮に硬化物に対する感光性樹脂組成物の濡れ性が小さい場合、前記の窪みの影響により、感光性樹脂組成物の層の表面の粗度が大きくなったり、厚みの不均一さが大きくなったりしうる。ここで、一般には、特定樹脂組成物中の(C)無機充填材が多いほど、(C)無機充填材の粒子の離脱の頻度は大きくなりうるから、特定樹脂組成物の硬化物の具体的な表面自由エネルギーは、(C)無機充填材の粒子の量に応じて設定することが好ましい。具体的には、特定樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(C)無機充填材の割合をR(C)[質量%]とし、特定樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーをE[mJ/m]とする。この場合、比R(C)/Eは、好ましくは4.0[質量%・m/mJ]以下、より好ましくは3.0[質量%・m/mJ]以下、特に好ましくは2.5[質量%・m/mJ]以下である。下限は、好ましくは0.1[質量%・m/mJ]以上であり、例えば0.5[質量%・m/mJ]以上、0.8[質量%・m/mJ]以上であってもよい。比R(C)/Eが前記の範囲にある場合、(C)無機充填材の粒子の離脱による感光性樹脂組成物の層の表面粗さ及び厚みの不均一さへの影響を抑制できるので、通常は、要件(i)及び要件(ii)を充足する特定樹脂組成物を得て、解像性の効果的な改善を達成できる。
【0052】
-靱性-
前記の要件(i)及び要件(ii)を充足する特定樹脂組成物を得る更に別の方法としては、例えば、特定の範囲の靱性を有する硬化物が得られるように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。具体的には、特定樹脂組成物を150℃1時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物が、特定の範囲の破壊靱性K1Cを有するように、特定樹脂組成物の組成を調整する方法が挙げられる。硬化物の破壊靱性K1Cの範囲は、好ましくは1.0MPa・m1/2以上、より好ましくは1.5MPa・m1/2以上である。上限は、特に制限は無く、例えば10MPa・m1/2以下でありうる。
【0053】
樹脂組成物の硬化物の破壊靱性K1Cは、後述する実施例で説明する方法によって測定しうる。
【0054】
前記のように、無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物層の表面から無機充填材の粒子が離脱すると、硬化物層の表面に形成される感光性樹脂組成物の層の表面が粗くなったり、その感光性樹脂組成物の層の厚みが不均一になったりしうる。これに対し、特定樹脂組成物の硬化物の破壊靱性K1Cが前記の範囲にあると、樹脂が(C)無機充填材の粒子を強固に保持することができる。特に、破壊靱性K1Cが前記の範囲にある場合、研磨時の応力に樹脂が強力に抗することができるので、(C)無機充填材の粒子の離脱を効果的に抑制できる。よって、要件(i)及び要件(ii)を充足することが可能になりうる。特に、硬化物の研磨面に感光性樹脂組成物の層を形成する用途に用いる場合に、効果的である。
【0055】
[2.樹脂組成物の組成]
本発明の一実施形態にかかる特定樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤、並びに、(C)無機充填材を組み合わせて含む。この特定樹脂組成物の具体的な組成は、(A)成分~(C)成分を組み合わせて含む範囲で、上述した要件(i)及び要件(ii)を満たすことができるように設定される。
【0056】
例えば、芳香環等の剛直な構造を含む(A)エポキシ樹脂を用いる場合、通常は、硬化物の弾性率を高めたり、靱性を低くしたりすることができる。また、例えば、脂肪族炭化水素鎖、ポリブタジエン構造、ポリオキシアルキレン構造等の柔軟な構造を含む(A)エポキシ樹脂を用いる場合、通常は、硬化物の弾性率を低くしたり、靱性を高くしたりすることができる。さらに、例えば、(A)エポキシ樹脂が有する基の種類によって硬化物の表面自由エネルギーを調整することが可能であるので、適切な分子構造を有する(A)エポキシ樹脂を選択することにより、硬化物の表面自由エネルギーを調整できる。また、例えば、(A)~(C)成分に組み合わせて更に適切な成分を用いることにより、硬化物の弾性率、表面自由エネルギー及び靱性等を調整してもよい。これらの手段を適切に組み合わせることにより、上述した要件(i)及び要件(ii)を満たす特定樹脂組成物が得られる。以下、特定樹脂組成物の組成の例を説明するが、特定樹脂組成物の組成は、以下に説明するものに限定されない。
【0057】
[2.1.(A)エポキシ樹脂]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する樹脂をいう。
【0058】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;イソシアヌラート型エポキシ樹脂;アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン構造含有エポキシ樹脂;等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(A)エポキシ樹脂は、弾性率及び靱性の高い特定樹脂組成物の硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含んでいてもよい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0060】
芳香族構造を含有するエポキシ樹脂の中でも、耐熱性に優れる特定樹脂組成物の硬化物を得る観点から、縮合環構造含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。縮合環構造含有エポキシ樹脂における縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、特に好ましくはナフタレン環である。したがって、(A)エポキシ樹脂は、ナフタレン環構造を含むナフタレン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。通常、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いた場合、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率及び靱性を高めることができる。(A)エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、ナフタレン型エポキシ樹脂の量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0061】
(A)エポキシ樹脂は、特定樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び金属密着性を向上させる観点から、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0062】
(A)エポキシ樹脂は、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率を下げる観点から、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0063】
特定樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0064】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。本実施形態の特定樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0065】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン構造含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン構造含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0067】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);等が挙げられる。
【0068】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0069】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0070】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0071】
(A)エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、液状エポキシ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0072】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0073】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0074】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(A)エポキシ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0075】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(A)エポキシ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。特定樹脂組成物中の樹脂成分とは、別に断らない限り、特定樹脂組成物中の不揮発成分のうち、(C)無機充填材以外の成分を表す。
【0076】
[2.2.(B)硬化剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、(B)硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して特定樹脂組成物を硬化する機能を有する。この(B)硬化剤として、本実施形態では、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤又はフェノール系硬化剤を用いる場合、通常は、硬化物の反りを抑制できる。また、従来は、このように酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤を含む特定樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層は、解像性に劣る傾向があった。これに対し、本実施形態に係る特定樹脂組成物を用いれば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選ばれる(B)硬化剤を用いながら、解像性の改善を達成することができる。硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;等が挙げられる。
【0078】
アミン系硬化剤としては、例えば、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられる。その具体例としては、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」、住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0079】
フェノール系硬化剤としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0080】
フェノール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」;シグマアルドリッチ社製の「2,2-ジアリルビスフェノールA」等が挙げられる。
【0081】
(B)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの硬化剤の質量を表す。
【0082】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値を表す。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値を表す。
【0083】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(B)硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0084】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(B)硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0085】
[2.3.(C)無機充填材]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、(C)無機充填材を含む。(C)無機充填材を含む特定樹脂組成物の硬化物は、通常、熱膨張係数を小さくして反りを抑制できる。また、従来は、無機充填材を含む特定樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層は、解像性に劣る傾向があった。これに対し、本実施形態に係る特定樹脂組成物を用いれば、(C)無機充填材を用いながら、解像性の改善を達成することができる。
【0086】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
(C)無機充填材の50%累積径D50は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上、特に好ましくは0.4μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。このように小さい50%累積径D50を有する(C)無機充填材を用いた場合、(C)無機充填材の粒子の脱離によって形成される窪みを小さくできる。よって、特定樹脂組成物の硬化物層の表面に形成される感光性樹脂組成物の層の表面が粗くなったり、その感光性樹脂組成物の層の厚みが不均一になったりすることを、効果的に抑制できる。
【0088】
(C)無機充填材の90%累積径D90は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは3.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは26μm以下、特に好ましくは25μm以下である。90%累積径D90がこのように小さいことは、(C)無機充填材が巨大粒子を含まないことを表す。よって、(C)無機充填材の粒子の脱離によって形成される窪みを小さくできる。したがって、特定樹脂組成物の硬化物層の表面に形成される感光性樹脂組成物の層の表面が粗くなったり、その感光性樹脂組成物の層の厚みが不均一になったりすることを、効果的に抑制できる。
【0089】
特定樹脂組成物の硬化物層の表面に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善する観点では、硬化物層の表面の面形状を均一にすることが好ましい。ここで、(C)無機充填材の粒子の脱離が生じた場合に、その脱離の跡に形成される窪みの大きさを均一にして、硬化物層の表面の面形状を均一にする観点では、(C)無機充填材の粒子径はそろっていることが好ましい。他方、特定樹脂組成物に含まれる(C)無機充填材の量を多くして熱膨張係数を小さく観点では、(C)無機充填材の粒子の充填密度を高められるように、(C)無機充填材の粒子径にはある程度の分布があることが好ましい。これらの観点から、(C)無機充填材の粒子径の分布を表すパラメータ「D50/D90」及び「D90-D50」には、好適な範囲がありうる。
【0090】
具体的には、(C)無機充填材の50%累積径D50と90%累積径D90との比D50/D90は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.35以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.65以下である。比D50/D90が前記の範囲にある場合、特定樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数と、その硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性とを、両方とも良好にできる。
【0091】
また、(C)無機充填材の50%累積径D50と90%累積径D90との差D90-D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは2.5μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。差D90-D50が前記の範囲にある場合、特定樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数と、その硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性とを、両方とも良好にできる。
【0092】
(C)無機充填材の50%累積径D50及び90%累積径D90は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(C)無機充填材の粒径分布を体積基準で作成する。そして、その小径側からの累積頻度が50%である粒子径(即ち、メディアン径)を50%累積径D50としうる。また、その小径側からの累積頻度が90%である粒子径を90%累積径D90としうる。測定サンプルは、(C)無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(C)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布から50%累積径D50及び90%累積径D90を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0093】
(C)無機充填材の比表面積は、好ましくは1m/g以上、より好ましくは1.5m/g以上、更に好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0094】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」、「ST7010-2」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SO-C5」、「SO-C6」、「FE9シリーズ」、「FEBシリーズ」、「FEDシリーズ」;デンカ社製の「DAW-03」、「DAW-10」、「FB-105FD」、「UFP-30」などが挙げられる。ただし、これらの市販品は、いずれも、通常はそのままでは上述した粒子径分布を有していない。よって、市販品は、上述した粒子径分布を有するように、粉砕、混合、分級又はそれらの組み合わせを行って、適切な粒子径分布に調整して使用することが好ましい。
【0095】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0096】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0097】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0098】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、特定樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0099】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0100】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(C)無機充填材の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。このような範囲の量の(C)無機充填材を含む特定樹脂組成物の硬化物は、熱膨張係数を効果的に小さくできる。また、このように多くの無機充填材を含む従来の樹脂組成物は、その硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性に特に劣る傾向があった。これに対し、本実施形態に係る特定樹脂組成物は、このように多くの(C)無機充填材を含みながら、解像性を改善できる。よって、本実施形態に係る特定樹脂組成物は、従来両立が困難であった低い熱膨張係数と優れた解像性との両立を達成することができる。
【0101】
[2.4.(D)シランカップリング剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(C)成分以外に、更に任意の成分として(D)シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤によれば、特定樹脂組成物の硬化物と導体層との密着性を向上させることができる。また、(D)シランカップリング剤によれば、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率、表面自由エネルギー及び靱性を調整することができる。
【0102】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。中でも、エポキシ基を含有するエポキシシラン系カップリング剤、及び、メルカプト基を含有するメルカプトシラン系カップリング剤が好ましく、エポキシシラン系カップリング剤が特に好ましい。また、シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
シランカップリング剤としては、例えば、市販品を用いてもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」等が挙げられる。
【0104】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(D)シランカップリング剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0105】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(D)シランカップリング剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0106】
[2.5.(E)硬化促進剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分以外に、更に任意の成分として(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。(E)硬化促進剤によれば、特定樹脂組成物の硬化時間を効率的に調整することができる。
【0107】
(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0109】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0110】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0111】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」、四国化成工業社製の「キュアゾール2MZ」、「2E4MZ」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「Cl1Z-A」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」等が挙げられる。
【0112】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0113】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0114】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(E)硬化促進剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0115】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(E)硬化促進剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。
【0116】
[2.6.(F)ラジカル重合性化合物]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分以外に、更に任意の成分として(F)ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。(F)ラジカル重合性化合物によれば、特定樹脂組成物の硬化物の電気的特性(誘電率、誘電正接等)を調整できる。また、通常は、(F)ラジカル重合性化合物によれば、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率、表面自由エネルギー及び靱性を調整することができる。
【0117】
(F)ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いうる。このような(F)ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、マレオイル基、ビニルフェニル基、スチリル基、シンナモイル基及びマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のラジカル重合性基を有する化合物が挙げられる。(F)ラジカル重合性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
(F)ラジカル重合性化合物の具体例としては、1個又は2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物;芳香族炭素原子に直接結合した1個又は2個以上のビニル基を有するスチレン系ラジカル重合性化合物;1個又は2個以上のアリル基を有するアリル系ラジカル重合性化合物;1個又は2個以上のマレイミド基を有するマレイミド系ラジカル重合性化合物;などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物が好ましい。
【0119】
(F)ラジカル重合性化合物は、ポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましい。ポリアルキレンオキシド構造を含む(F)ラジカル重合性化合物を用いることにより、特定樹脂組成物の硬化物の柔軟性を高めて、硬化物の反りを低減したり、硬化物と導体層との密着性を向上させたりできる。更に、通常は、硬化物の弾性率を低くしたり、靱性を高くしたりすることができる。
【0120】
ポリアルキレンオキシド構造は、式(6):-(RO)-で表されうる。式(6)において、nは、通常2以上の整数を表す。この整数nは、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは11以上であり、通常101以下、好ましくは90以下、より好ましくは68以下、さらに好ましくは65以下である。式(6)において、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。前記のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、更に好ましくは3以下であり、特に好ましくは2である。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、アルコキシ基、1級又は2級アミノ基、アリール基、-NH、-CN、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ただし、前記のアルキル基は、置換基を有さないことが好ましい。ポリアルキレンオキシド構造の具体例としては、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、ポリn-ブチレンオキシド構造、ポリ(エチレンオキシド-co-プロピレンオキシド)構造、ポリ(エチレンオキシド-ran-プロピレンオキシド)構造、ポリ(エチレンオキシド-alt-プロピレンオキシド)構造及びポリ(エチレンオキシド-block-プロピレンオキシド)構造が挙げられる。
【0121】
(F)ラジカル重合性化合物が1分子中に含むポリアルキレンオキシド構造の数は、1でもよく、2以上でもよい。(F)ラジカル重合性化合物が1分子中に含むポリアルキレンオキシド構造の数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは9以上、特に好ましくは11以上であり、好ましくは101以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは68以下、特に好ましくは65以下である。(F)ラジカル重合性化合物が1分子中に2以上のポリアルキレンオキシド構造を含む場合、それらのポリアルキレンオキシド構造は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0122】
ポリアルキレンオキシド構造を含む(F)ラジカル重合性化合物の市販品の例を挙げると、新中村化学工業社製の単官能アクリレート「AM-90G」、「AM-130G」、「AMP-20GY」;2官能アクリレート「A-1000」、「A-B1206PE」、「A-BPE-20」、「A-BPE-30」;単官能メタクリレート「M-20G」、「M-40G」、「M-90G」、「M-130G」、「M-230G」;並びに、2官能メタクリレート「23G」、「BPE-900」、「BPE-1300N」、「1206PE」が挙げられる。また、別の例としては、共栄社化学社製の「ライトエステルBC」、「ライトエステル041MA」、「ライトアクリレートEC-A」、「ライトアクリレートEHDG-AT」;日立化成社製の「FA-023M」;日油社製の「ブレンマー(登録商標)PME-4000」、「ブレンマー(登録商標)50POEO-800B」、「ブレンマー(登録商標)PLE-200」、「ブレンマー(登録商標)PLE-1300」、「ブレンマー(登録商標)PSE-1300」、「ブレンマー(登録商標)43PAPE-600B」、「ブレンマー(登録商標)ANP-300」等が挙げられる。このうち、1分子当たり13個のポリアルキレンオキシド構造(詳細には、ポリエチレンオキシド構造)を有する「M-130G」;及び、1分子当たり23個のポリアルキレンオキシド構造(詳細には、ポリエチレンオキシド構造)を有する「M-230G」が好ましい。
【0123】
(F)ラジカル重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性化合物の質量を表す。
【0124】
(F)ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150以上、より好ましくは250以上、更に好ましくは400以上であり、好ましくは40000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下、特に好ましくは3000以下である。
【0125】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(F)ラジカル重合性化合物の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0126】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(F)ラジカル重合性化合物の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0127】
[2.7.(G)ラジカル重合開始剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分以外に、更に任意の成分として(G)ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。(G)ラジカル重合開始剤としては、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合開始剤が好ましい。特定樹脂組成物が(F)ラジカル重合性化合物を含む場合、通常、その特定樹脂組成物は(G)ラジカル重合開始剤を含む。(G)ラジカル重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
(G)ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。中でも、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0129】
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス(1-tert-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド化合物;ジラウロイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のジアシルパーオキサイド化合物;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、(1,1-ジメチルプロピル)2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルパーヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシマレイン酸等のパーオキシエステル化合物;等が挙げられる。
【0130】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル等のアゾニトリル化合物;2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾアミド化合物;2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)等のアルキルアゾ化合物;等が挙げられる。
【0131】
(G)ラジカル重合開始剤は、中温活性を有するものが好ましい。具体的には、(G)ラジカル重合開始剤は、10時間半減期温度T10(℃)が、特定の低い温度範囲にあることが好ましい。前記の10時間半減期温度T10は、好ましくは50℃~110℃、より好ましくは50℃~100℃、更に好ましくは50℃~80℃である。このような(G)ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、アルケマ富士社製「ルペロックス531M80」、日油社製「パーヘキシル(登録商標)O」、及び、富士フイルム和光純薬社製「MAIB」が挙げられる。
【0132】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(G)ラジカル重合開始剤の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0133】
[2.8.(H)ポリエーテル骨格含有化合物]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(G)成分以外に、更に任意の成分として(H)ポリエーテル骨格含有化合物を含んでいてもよい。(H)ポリエーテル骨格含有化合物によれば、特定樹脂組成物の硬化物の反りを抑制できる。また、通常は、(H)ポリエーテル骨格含有化合物によれば、特定樹脂組成物の硬化物の弾性率、表面自由エネルギー及び靱性を調整することができる。(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、ポリエーテル骨格を有するポリマー化合物を表す。この(H)ポリエーテル骨格含有化合物には、上述した(A)~(G)成分は含まれない。(H)ポリエーテル骨格含有化合物に含まれるポリエーテル骨格は、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位から選ばれる1種以上のモノマー単位で構成されたポリオキシアルキレン骨格であることが好ましい。よって、(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、ブチレンオキシド単位、フェニレンオキシド単位等の、炭素数4以上のモノマー単位を含むポリエーテル骨格を含まないことが好ましい。また、(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、ヒドロキシ基を含有していてもよい。
【0135】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、シリコーン骨格を含有していてもよい。シリコーン骨格としては、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格等のポリジアルキルシロキサン骨格;ポリジフェニルシロキサン骨格等のポリジアリールシロキサン骨格;ポリメチルフェニルシロキサン骨格等のポリアルキルアリールシロキサン骨格;ポリジメチル-ジフェニルシロキサン骨格等のポリジアルキル-ジアリールシロキサン骨格;ポリジメチル-メチルフェニルシロキサン骨格等のポリジアルキル-アルキルアリールシロキサン骨格;ポリジフェニル-メチルフェニルシロキサン骨格等のポリジアリール-アルキルアリールシロキサン骨格等が挙げられ、ポリジアルキルシロキサン骨格が好ましく、ポリジメチルシロキサン骨格が特に好ましい。シリコーン骨格を含有する(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アルキルエーテル化ポリオキシアルキレン変性シリコーン(ポリエーテル骨格末端の少なくとも一部がアルコキシ基のポリオキシアルキレン変性シリコーン)等でありうる。
【0136】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、ポリエステル骨格を含有していてもよい。このポリエステル骨格は、脂肪族ポリエステル骨格が好ましい。脂肪族ポリエステル骨格が含む炭化水素鎖は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、分岐鎖状が好ましい。ポリエステル骨格に含まれる炭素原子数は、例えば、4~16でありうる。ポリエステル骨格は、ポリカルボン酸、ラクトン、又はそれらの無水物に由来して形成されうるので、ポリエステル骨格を含有する(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、分子の末端にカルボキシル基を有していてもよいが、分子の末端にヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0137】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の直鎖型ポリオキシアルキレングリコール(直鎖型ポリアルキレングリコール);ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレントペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビット等の多鎖型ポリオキシアルキレングリコール(多鎖型ポリアルキレングリコール)等のポリオキシアルキレングリコール(ポリアルキレングリコール);ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンモノエステル、ポリオキシエチレンジエステル、ポリプロピレングリコールモノエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジエステル等のポリオキシアルキレンエステル(酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル等を含む);ポリオキシエチレンモノエステル、ポリオキシエチレンジエステル、ポリオキシプロピレンモノエステル、ポリオキシプロピレンジエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルエステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルエステル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルエステル(酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル等を含む);ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミド等のポリオキシアルキレンアルキルアミド;ポリオキシエチレンジメチコン、ポリオキシプロピレンジメチコン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチコン、ポリオキシエチレンポリジメチルシロキシアルキルジメチコン、ポリオキシプロピレンポリジメチルシロキシアルキルジメチコン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリジメチルシロキシアルキルジメチコン等のポリオキシアルキレン変性シリコーン;ポリオキシエチレンアルキルエーテルジメチコン、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルジメチコン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルジメチコン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルポリジメチルシロキシアルキルジメチコン、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリジメチルシロキシアルキルジメチコン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリジメチルシロキシアルキルジメチコン等のアルキルエーテル化ポリオキシアルキレン変性シリコーン(ポリエーテル骨格末端が少なくとも一部がアルコキシ基のポリオキシアルキレン変性シリコーン)等が挙げられる。
【0138】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物の数平均分子量は、好ましくは500~40000、より好ましくは500~20000、さらに好ましくは500~10000である。(H)ポリエーテル骨格含有化合物の重量平均分子量は、好ましくは500~40000、より好ましくは500~20000、さらに好ましくは500~10000である。数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0139】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物は、25℃において液状であることが好ましい。(H)ポリエーテル骨格含有化合物の25℃における粘度は、好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは50000mPa・s以下、更に好ましくは30000mPa・s以下、更に好ましくは10000mPa・s以下、更に好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは4000mPa・s以下、更に好ましくは3000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、特に好ましくは1500mPa・s以下である。(H)ポリエーテル骨格含有化合物の25℃における粘度の下限は、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、更に好ましくは30mPa・s以上、更に好ましくは40mPa・s以上、特に好ましくは50mPa・s以上である。粘度は、B型粘度計により測定して得られる粘度(mPa・s)でありうる。
【0140】
(H)ポリエーテル骨格含有化合物の市販品としては、例えば、日油社製の「プロノン#102」、「プロノン#104」、「プロノン#201」、「プロノン#202B」、「プロノン#204」、「プロノン#208」、「ユニルーブ70DP-600B」、「ユニルーブ70DP-950B」(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール);ADEKA社製の「プルロニックL-23」、「プルロニックL-31」、「プルロニックL-44」、「プルロニックL-61」、「アデカプルロニックL-62」、「プルロニックL-64」、「プルロニックL-71」、「プルロニックL-72」、「プルロニックL-101」、「プルロニックL-121」、「プルロニックP-84」、「プルロニックP-85」、「プルロニックP-103」、「プルロニックF-68」、「プルロニックF-88」、「プルロニックF-108」、「プルロニック25R-1」、「プルロニック25R-2」、「プルロニック17R-2」、「プルロニック17R-3」、「プルロニック17R-4」(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール);信越シリコーン社製の「KF-6011」、「KF-6011P」、「KF-6012」、「KF-6013」、「KF-6015」、「KF-6016」、「KF-6017」、「KF-6017P」、「KF-6043」、「KF-6004」、「KF351A」、「KF352A」、「KF353」、「KF354L」、「KF355A」、「KF615A」、「KF945」、「KF-640」、「KF-642」、「KF-643」、「KF-644」、「KF-6020」、「KF-6204」、「X22-4515」、「KF-6028」、「KF-6028P」、「KF-6038」、「KF-6048」、「KF-6025」(ポリオキシアルキレン変性シリコーン)等が挙げられる。
【0141】
特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、(H)ポリエーテル骨格含有化合物の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0142】
特定樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、(H)ポリエーテル骨格含有化合物の量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0143】
[2.9.(I)その他の添加剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、上述した(A)~(H)成分以外に、更に任意の不揮発成分として、任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等の有機充填材;ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0144】
[2.10.(J)溶剤]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに(J)任意の溶剤を含有していてもよい。(J)溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。また、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶剤は、量が少ないほど好ましい。溶剤の量は、特定樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下であり、含まないこと(0質量%)が特に好ましい。
【0145】
[3.樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0146】
[4.樹脂組成物の特性]
通常、上述した特定樹脂組成物は熱硬化性を有する。よって、特定樹脂組成物を熱によって硬化させることにより、硬化物を得ることができる。この特定樹脂組成物の硬化物によって形成された硬化物層上に感光性樹脂組成物の層を形成した場合、当該感光性樹脂組成物の層の解像性を良好にできる。具体的には、感光性樹脂組成物の層に露光及び現像によって、サイズの小さい開口部分を形成することができる。通常、ポジ型及びネガ型のいずれの感光性樹脂組成物を用いる場合でも、前記の解像性の改善を達成することが可能である。例えば、後述する実施例の[解像性の評価試験]に記載の方法によって特定樹脂組成物の硬化物層上に感光性樹脂組成物の層を形成した場合、その感光性樹脂組成物の層に、直径10μmの開口部を形成することが可能である。
【0147】
特定樹脂組成物は、ペースト状であることが好ましい。このようにペースト状の特定樹脂組成物は、コンプレッションモールドによる成型を容易に行うことができる。よって、特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、この硬化物層の表面に接するように形成された感光性樹脂組成物の層とを備える構造体;並びに、半導体チップパッケージを容易に製造できる。ペースト状の特定樹脂組成物の25℃における粘度は、1Pa・s~1000Pa・sの範囲にあってもよく、20Pa・s~500Pa・sの範囲内にあることが好ましい。前記の粘度は、E型粘度計を用いて測定しうる。
【0148】
半導体チップパッケージの封止又は絶縁用途に用いる観点では、特定樹脂組成物の硬化物は、誘電正接が小さいことが好ましい。例えば、特定樹脂組成物を150℃60分の条件で熱硬化して得られる硬化物の誘電正接は、好ましくは0.03以下、より好ましくは0.025以下、さらに好ましくは0.02以下である。下限値は、0.0001以上でありうる。また、特定樹脂組成物の硬化物は、比誘電率が小さいことが好ましい。例えば、特定樹脂組成物を150℃60分の条件で熱硬化して得られる硬化物の比誘電率は、好ましくは3.7以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.5以下である。下限値は、0.001以上でありうる。誘電正接及び比誘電率は、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製のHP8362B装置を用いた空洞共振摂動法により、測定温度23℃、測定周波数5.8GHzにおいて測定できる。
【0149】
[5.樹脂組成物の用途]
本実施形態に係る特定樹脂組成物は、有機EL装置及び半導体等の電子機器を封止するための樹脂組成物(封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができ、特に、半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)、好ましくは半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、樹脂組成物は、封止用途以外に絶縁層用の絶縁用途の樹脂組成物として用いることができる。例えば、前記の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0150】
特定樹脂組成物の硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層の解像性を改善できるという利点を活用する観点では、本実施形態に係る特定樹脂組成物は、半導体チップパッケージの封止層又は絶縁層を形成するための材料として用いることが好ましい。半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0151】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0152】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0153】
[6.樹脂シート]
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、特定樹脂組成物を含む層であり、通常は、特定樹脂組成物で形成されている。
【0154】
樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上でありうる。
【0155】
また、この樹脂組成物層を硬化させて得られる硬化物層の厚みは、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。硬化物層の厚みの下限は、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上である。
【0156】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0157】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0158】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0159】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0160】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0161】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0162】
樹脂シートは、例えば、特定樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、特定樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。有機溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。有機溶剤を含む特定樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に特定樹脂組成物又は樹脂ワニスを乾燥させて、特定樹脂組成物層を形成する。
【0163】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0164】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。特定樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む特定樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0165】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0166】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0167】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0168】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0169】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0170】
[7.回路基板]
本発明の一実施形態に係る回路基板は、特定樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は、特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層を含み、この硬化物層は、絶縁層又は封止層として機能しうる。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、硬化物層を形成する工程。
【0171】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。金属層を有する基材としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
【0172】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0173】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0174】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0175】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0176】
樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。圧縮成型法では、通常、基材及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、基材上に樹脂組成物層を形成する。
【0177】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、基材上に樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された基材を、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0178】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、基材を取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた基材に接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0179】
成型条件は、特定樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成型時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは3分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0180】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行ってもよい。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0181】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0182】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0183】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、硬化物層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、特定樹脂組成物の種類によっても異なりうるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間の範囲、より好ましくは15分間~90分間の範囲)である。
【0184】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0185】
以上のようにして、特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0186】
回路基板の製造方法は、例えば、硬化物層を形成した後で、その硬化物層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。研磨方法の例としては、化学機械研磨装置による化学機械研磨方法、バフ等の機械研磨方法、砥石回転による平面研削方法、等が挙げられる。
【0187】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、例えば、硬化物層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより硬化物層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板の出デザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、硬化物層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0188】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、硬化物層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、硬化物層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、硬化物層に粗化処理が施されてもよい。
【0189】
また、硬化物層上に導体層を形成する前に、硬化物層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた硬化物層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0190】
ビアホールを形成後、硬化物層上に導体層を形成してもよい。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられる。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって硬化物層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成してもよい。また、例えば、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成してもよい。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0191】
ここで、硬化物層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。硬化物層の表面にマスク層を形成し、このマスク層の一部にマスクパターンとして開口部分を形成する。その後、スパッタによって金属層を形成した後、マスク層を除去する。これにより、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。前記のマスク層は、通常、感光性樹脂組成物の層によって形成される。また、マスク層の開口部分は、感光性樹脂組成物の層に露光及び現像を施すことにより、形成されうる。特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層上に形成される感光性樹脂組成物の層は、解像性に優れることができる。よって、サイズの小さい開口部分としてマスクパターンを形成することが可能であるので、導体層として微細な配線を形成することが可能である。
【0192】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、硬化物層と、この硬化物層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0193】
[8.半導体チップパッケージ]
本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージは、特定樹脂組成物の硬化物を含む。この半導体チップパッケージとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0194】
第一の例に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0195】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0196】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間の範囲)である。
【0197】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0198】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した特定樹脂組成物を用いてもよい。
【0199】
第二の例に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する特定樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、特定樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二の例に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLPが挙げられる。
【0200】
図2は、本実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。Fan-out型WLPとしての半導体チップパッケージ100は、例えば、図2に示すように、半導体チップ110;半導体チップ110の周囲を覆うように形成された封止層120;半導体チップ110の封止層120とは反対側の面に設けられた、絶縁層としての再配線形成層130;導体層としての再配線層140;ソルダーレジスト層150;及び、バンプ160を備える。
【0201】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0202】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0203】
基材としては、例えば、シリコンウエハ;ガラスウエハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0204】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0205】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0206】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、特定樹脂組成物の硬化物によって形成しうる。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層としての硬化物層を形成する工程とを含む方法で形成する。半導体チップ上への樹脂組成物層の形成は、例えば、基板の代わりに半導体チップを用いること以外は、前記[7.回路基板]で説明した基板上への樹脂組成物層の形成方法と同じ方法で行いうる。
【0207】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、特定樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の熱硬化条件と同じ条件を採用してもよい。さらに、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0208】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0209】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0210】
前記のように基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離すると、封止層の面が露出する。半導体チップパッケージの製造方法は、この露出した封止層の面を研磨することを含んでいてもよい。研磨により、封止層の表面の平滑性を向上させることができる。研磨方法としては、回路基板の製造方法で説明したのと同じ方法を用いうる。
【0211】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。通常、この再配線形成層は、半導体チップ及び封止層上に形成される。
【0212】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。特定樹脂組成物の硬化物によって封止層を形成した場合、この封止層上に形成される再配線形成層は、感光性樹脂組成物によって形成することが好ましい。特定樹脂組成物の硬化物層上に感光性樹脂組成物の層として再配線形成層を形成した場合、この再配線形成層は解像性に優れることができる。よって、サイズの小さい開口部分としてビアホールを形成することが可能である。
【0213】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、通常、再配線形成層にビアホールを形成する。再配線形成層が感光性樹脂組成物で形成されている場合、ビアホールの形成方法は、通常、再配線形成層の表面を、マスクを通して露光することを含む。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。露光方法としては、例えば、マスクを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0214】
前記の露光により、再配線形成層には潜像が形成されうるので、その後、現像を行うことにより、再配線形成層の一部を除去して、再配線形成層を貫通する開口部分としてビアホールを形成できる。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0215】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、殊更好ましくは5μm以下、である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0216】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における硬化物層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0217】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物として、特定樹脂組成物を用いてもよい。
【0218】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0219】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0220】
第三の例に係る半導体チップパッケージとしては、図2に一例を示すような半導体チップパッケージ100において、再配線形成層130又はソルダーレジスト層150を、特定樹脂組成物の硬化物で形成した半導体チップパッケージが挙げられる。
【0221】
[9.構造体]
上述したように、回路基板の製造方法、及び、半導体チップパッケージの製造方法においては、その中間製造物として、熱硬化性樹脂組成物としての特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、硬化物層の表面に形成された感光性樹脂組成物の層と、を備える構造体が得られうる。例えば、回路基板の製造方法において導体層形成用のマスク層を感光性樹脂組成物によって形成する場合、基板と、この基板上に特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層と、この硬化物層上に感光性樹脂組成物で形成されたマスク層と、をこの順に備える構造体が得られる。また、例えば、半導体チップパッケージの製造方法において再配線形成層を感光性樹脂組成物で形成する場合、特定樹脂組成物の硬化物で形成された封止層と、この封止層上に感光性樹脂組成物で形成された再配線形成層とを備える構造体が得られる。
【0222】
前記の構造体において、マスク層及び再配線形成層などの感光性樹脂組成物の層は、特定樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層上に、当該硬化物層に直接に接するように設けられうる。ここで「直接」とは、硬化物層と感光性樹脂組成物の層との間に他の層が無いことをいう。
【0223】
これらマスク層及び再配線形成層などの感光性樹脂組成物の層を硬化させた場合、当該感光性樹脂組成物の層を硬化して得られる層(以下、「硬化組成物層」ということがある。)の硬化物層とは反対側の表面は、通常、上述した要件(i)で規定された範囲と同じ範囲の算術平均粗さRaを有することができる。よって、硬化前の感光性樹脂組成物の層は、硬化組成物層の表面の算術平均粗さRaに対応した低い粗度を有することができる。また、マスク層及び再配線形成層などの感光性樹脂組成物の層を硬化させて得られる硬化組成物層は、通常、上述した要件(ii)で規定された範囲と同じ範囲の最大厚みと最小厚みとの差TTVを有することができる。よって、硬化前の感光性樹脂組成物の層は、硬化組成物層の最大厚みと最小厚みとの差TTVに対応した厚みの高い均一性を有することができる。よって、この感光性樹脂組成物の層は、優れた解像性を得ることができる。したがって、上述した実施形態に係る回路基板及び半導体チップパッケージにおいては、微細な配線の形成が可能である。感光性樹脂組成物の層の硬化条件は、感光性樹脂組成物の組成に応じて適切な条件を採用してもよく、例えば、250℃2時間の条件で行いうる。
【0224】
[10.半導体装置]
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0225】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ質量基準である。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧(23℃1atm)の環境で行った。
以下の説明において、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、別に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて標準ポリスチレン換算により求めた。
【0226】
[製造例1.第一ポリマーとしての感光性ポリイミド前駆体(ポリマーA-1)の製造]
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mlを加えた。室温下で攪拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。
【0227】
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を用意した。この溶液を、氷冷下において、前記の反応混合物に、反応混合物を攪拌しながら、40分かけて加えた。
続いて、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁した懸濁液を、前記の反応混合物に、反応混合物を攪拌しながら60分かけて加えた。
さらに、反応混合物を室温で2時間攪拌した後、その反応混合物にエチルアルコール30mlを加えて、更に1時間攪拌した。
その後、反応混合物に、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取り除き、反応液を得た。
【0228】
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して、粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下して、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾取した後に真空乾燥することにより、第一ポリマーとしての粉末状のポリマーA-1を得た。
このポリマーA-1の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、20,000であった。
【0229】
[製造例2.第二ポリマーとしての感光性ポリイミド前駆体(ポリマーA-2)の製造]
4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1gに代えて、3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1gを用いた以外は、製造例1と同じ方法により、第二ポリマーとしてのポリマーA-2を製造した。
このポリマーA-2の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、22,000であった。
【0230】
[製造例3.第一特定組成物としてのネガ型感光性樹脂組成物の製造]
ポリマーA-1を50gと、ポリマーA-2を50gと、式(1)で表される化合物を2gと、テトラエチレングリコールジメタクリレート8gと、2-ニトロソ-1-ナフト-ル0.05gと、N-フェニルジエタノールアミン4gと、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)フタルアミド酸0.5gと、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-(3-トリエトキシシリル)プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸0.5gとを、N-メチルピロリドン及び乳酸エチルからなる混合溶媒(重量比はN-メチルピロリドン:乳酸エチル=8:2)に溶解して、第一特定組成物としてのネガ型感光性樹脂組成物を得た。混合溶媒の量は、得られるネガ型感光性樹脂組成物の粘度が35ポイズになるように調整した。
【0231】
【化5】
【0232】
[製造例4.第三ポリマーとしてのポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリマーI)の製造]
撹拌機及び温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン60gを仕込み、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0℃~5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド10.69g(40mmol)を10分間で滴下した後、フラスコ中の溶液を60分間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を生じさせた。析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(ポリベンゾオキサゾール前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIの重量平均分子量は33,100、分散度は2.0であった。
【0233】
[製造例5.第二特定組成物としてのポジ型感光性樹脂組成物の製造]
ポリマーIを100部と、酸変性アルキル化メラミンホルムアルデヒド(ヘキサメトキシメチルメラミン;Allnex社製「サイメル300」)15部と、感光剤(1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル;ダイトーケミックス社製「TPPA528」)11部と、γ-ブチロラクトン200部とを混合して、第二特定組成物としてのポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0234】
[製造例6.ポリエーテルポリオールAの製造]
反応容器に、ε-カプロラクトンモノマー(ダイセル社製「プラクセルM」)22.6g、ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール、ジオール型、3,000(富士フィルム和光純薬社製)10g、2-エチルヘキサン酸すず(II)(富士フィルム和光純薬製)1.62gを仕込み、窒素雰囲気下130℃に昇温し、約16時間攪拌させ反応させた。反応後の生成物をクロロホルムに溶かし、その生成物をメタノールで再沈殿させたのち乾燥させ、脂肪族骨格からなるヒドロキシル基末端のポリエーテルポリオール樹脂Aを得た。GPC分析から、ポリエーテルポリオール樹脂Aの数平均分子量Mn=9000であった。
【0235】
[製造例7.解像性評価用のネガ型感光性樹脂組成物N1の製造]
クレゾールノボラック樹脂(旭有機材社製「TR4020G」)10質量部、ビフェニルアラルキル樹脂(明和化成社製「MEHC-7851SS」)5質量部、特殊ビスフェノール(本州化学社製「BisE」)5質量部、分子中に少なくとも2つ以上のアルコキシメチル基を含有する化合物(三和ケミカル社製「MW-390」)5質量部、光酸発生剤(三和ケミカル社製「MP-トリアジン」)0.05質量部、有機充填材(根上工業社製「MM-101SM」)6質量部、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、純正化学社製)30質量部を混合して、ネガ型感光性樹脂組成物N1を製造した。
【0236】
[製造例8.解像性評価用のポジ型感光性樹脂組成物P1の製造]
(エラストマーAの合成:)
攪拌機、窒素導入管、および温度計を備えた100mlの三口フラスコに乳酸エチル55gを秤取し、別途に秤取した重合性単量体(アクリル酸n―ブチル34.7g、アクリル酸ドデシル2.2g、アクリル酸3.9g、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジンー4-イルメタクリレート1.7g、及びアクリル酸ヒドロキシブチル2.6g)、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.29gを加えた。室温にて約160rpmの攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を止め、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を10時間保持して重合反応を行い、アクリル系エラストマーを得た。アクリル系エラストマーの重量平均分子量は、約22000であった。
【0237】
(ポジ型感光性樹脂組成物の調製)
ジシクロペンタジエン環を有するフェノール樹脂(JFEケミカル社製「J-DPP-140」)16.8部、4-ヒドロキシスチレン/スチレン(70/30(モル比))の共重合体(丸善石油化学社製「マルカリンカーCST」)50.3部、o―キノンジアジド化合物(ダイトーケミトックス社製「PA-28」)7.5部、o―キノンジアジド化合物(ダイトーケミトックス社製「4C-PA-280」)7.5部、酸変性アルキル化メラミンホルムアルデヒド(ヘキサメトキシメチルメラミン;Allnex社製「サイメル300」)10部、エポキシ化合物(日産化学工業社製「TEPIC-VL」)7部、エラストマーA 30部、5-アミノテトラゾール(東洋紡績社製「HAT」)1部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-403」)1部、4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)-フェニル)-エチリデン)-ビスフェノール(本州化学社製「TrisP-PA-MF」)3部、乳酸エチル160部、及び、1-メトキシー2-プロパノール 5部を配合し、ポジ型感光性樹脂組成物P1を製造した。
【0238】
[実施例1~9及び比較例1~2]
下記表1に示す成分を、下記表1に示す量(質量部)で混合して、樹脂組成物を得た。下記の表1に示す製品において、溶液で入手できるものの量は、その固形分の量を表す。また、表1に示す各成分の詳細は、下記の通りである。
【0239】
(A)成分:
セロキサイド2021P:液状の、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂(ダイセル製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量126g/eq.)。
HP4032D:液状の、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製の「HP4032D」、エポキシ当量151g/eq.)。
EX-991L:液状の、アルキレンオキシ骨格含有エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX-991L」、エポキシ当量450g/eq.)。
EG-280:液状の、フルオレン構造含有エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製「EG-280」、エポキシ当量460g/eq.)。
EP-3950L:液状の、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-3950L」、エポキシ当量95g/eq.)。
EP-3980S:液状の、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-3980S」、エポキシ当量115g/eq.)。
EP-4088S:液状の、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP-4088S」、エポキシ当量170g/eq.)。
ZX1059:液状の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)(日鉄ケミカル&マテリアルズ社製「ZX1059」、エポキシ当量169g/eq.)。
JP-100:ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量210g/eq.)。
【0240】
(B)成分:
2,2-ジアリルビスフェノールA:フェノール系硬化剤(シグマアルドリッチ社製、活性基当量154g/eq.)
カヤハードA-A:アミン系硬化剤(4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、日本化薬製の「カヤハードA-A」、活性基当量(活性水素当量)64g/eq.)。
MH-700:酸無水物系硬化剤(新日本理化社製「MH-700」、活性基当量164g/eq.)。
【0241】
(C)成分:
シリカA:シリカ粒子(50%累積径D50=1.5μm、90%累積径D90=3.5μm、比表面積2.78m/g)。KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
シリカB:シリカ粒子(50%累積径D50=4μm、90%累積径D90=12μm、比表面積3.01m/g)。KBM573(信越化学工業社製)で表面処理されたもの。
【0242】
(D)成分:
KBM-803:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM803」)。
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM403」)。
【0243】
(E)成分:
2E4MZ:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製「2E4MZ」)。
2MA-OK-PW:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「2MA-OK-PW」)。
【0244】
(F)成分:
M-130G:メタクリロイル基とポリエチレンオキシド構造とを有する化合物(新中村化学工業社製「M-130G」、メタクリロイル基当量:628g/eq.)。
M-230G:メタクリロイル基とポリエチレンオキシド構造とを有する化合物(新中村化学工業社製「M-230G」、メタクリロイル基当量:1068g/eq.)。
【0245】
(G)成分:
パーヘキシルO:ラジカル重合開始剤(日油社製「パーヘキシル(登録商標)O」)。
【0246】
(H)成分:
ポリエーテルポリオールA:製造例6で製造した脂肪族骨格からなるヒドロキシル基末端のポリエーテルポリオール樹脂A。数平均分子量9000。
L-64:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ADEKA社製「L-64」)。
KF-6012:ポリオキシアルキレン変性シリコーン樹脂(信越化学工業社製「KF-6012」、粘度(25℃):1500mm/s)。
【0247】
【表1】
【0248】
[第一特定組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を用いた評価試験]
(試験層の形成)
12インチシリコンウエハ上に、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって、各実施例及び比較例で得た樹脂組成物を成型して、厚み300μmの樹脂組成物の層を得た。この樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物で形成された層としての硬化試料を得た。得られた硬化試料を、グラインダー(ディスコ社製「DAG810」)によって、厚み方向に30μm研磨して、10nm~300nmの範囲の算術平均粗さを有する研磨面を形成した。
【0249】
硬化試料をウエハと一緒に、4インチサイズの円形にカットした。前記の研磨面に、製造例3で得た第一特定組成物を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、スピンコートした。このスピンコートの回転数は、最大回転数が1000rpm~3000rpmの回転数範囲に収まる範囲で、熱硬化後に所望の厚みの試験層が得られるように設定した。その後、ホットプレート上で120℃5分間の条件で加熱するプレベーク処理を行って、研磨面上に、中央の厚み10μmの第一特定組成物の層を形成した。その後、第一特定組成物の層に、250℃2時間の条件で熱硬化させるフルキュア処理を行って、中央の厚み8μmの試験層を得た。
【0250】
(算術平均粗さRaの測定)
試験層の研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaを、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて測定した。この測定は、VSIモードで、50倍レンズを用いて、測定範囲を121μm×92μmとして行った。この算術平均粗さRaの測定を試験層表面の10箇所で行い、その平均値を採用した。
【0251】
(TTVの測定)
ウエハ中央部及び端部を含む15か所の測定点で、それぞれ試験層の厚みを測定した。測定された厚みの最大値と最小値との差として、試験層のTTVを求めた。
【0252】
[第二特定組成物(ポジ型感光性樹脂組成物)を用いた評価試験]
第一特定組成物の代わりに、製造例5で得た第二特定組成物を用いたこと以外は、前記の[第一特定組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を用いた評価試験]と同じ方法によって、試験層の形成、試験層の研磨面とは反対側の表面の算術平均粗さRaを測定、及び、試験層のTTVの測定を行った。
【0253】
[樹脂組成物の硬化物の濡れ性の測定]
前記の[第一特定組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を用いた評価試験]及び[第二特定組成物(ポジ型感光性樹脂組成物)を用いた評価試験]で製造した試験層それぞれを鏡として用いて、電球を観察した。具体的には、試験層の表面に電球を映し、その表面に映された電球を肉眼で観察した。観察される電球の像の輪郭が鮮明であれば、試験層の表面形状が平滑であり、試験層の厚みが均一であることを表す。また、観察される電球の像の輪郭が不鮮明であれば、試験層の表面形状に凹凸があり、試験層の厚みが不均一であることを表す。そこで、観察された電球の像に応じて、下記の基準で濡れ性を評価した。
「◎」:試験層の表面に映る電球の輪郭が、鮮明に視認できる。
「○」:試験層の表面に映る電球の輪郭を視認できるが、鮮明でない。
「×」:試験層の表面に映る電球の輪郭を視認できない。
【0254】
[樹脂組成物の硬化物の靱性の評価]
各実施例及び比較例で得た樹脂組成物を熱循環式オーブンにて150℃60分の条件で熱硬化して、厚さ6mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板を使用して、ASTM E399-90に準拠したCT試験片法による破壊靭性試験を実施して、K1Cの値を求めた。試験速度1mm/min(クロスヘッド速度)、温度条件は23℃、48%RH、試験は5サンプル実施し、平均値を求めた。この平均値が1.5Mpa・m1/2以上の場合は「〇」、1.0Mpa・m1/2以上1.5Mpa・m1/2未満の場合を「△」、1.0Mpa・m1/2未満の場合を「×」とした。
【0255】
[樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーの測定]
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって、各実施例及び比較例で得た樹脂組成物を成型して、厚み300μmの樹脂組成物の層を得た。この樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層を得た。得られた硬化物層を、グラインダー(ディスコ社製「DAG810」)によって、厚み方向に30μm研磨して、10nm~300nmの範囲の算術平均粗さを有する研磨面を形成した。その後、硬化物層をウエハと一緒に2cm角にカットして、サンプルを得た。
【0256】
前記のサンプルの硬化物層の研磨面について、北崎・畑 理論に基づく表面自由エネルギーを、測定装置(協和界面科学社製「Drop Master DMs-401」)を用いて測定した。具体的には、表面自由エネルギーが既知の液体(水、ジヨードメタン及びn-ヘキサデカン)の研磨面に対する接触角を測定し、それらの測定された接触角から北崎・畑 理論に基づいて、研磨面の表面自由エネルギーを計算した。接触角は、θ/2法に基づいて測定した。また、接触角の測定は、液体の液滴が測定面としての研磨面に接触してから1分後に行った。
【0257】
[樹脂組成物の硬化物の弾性率の測定方法]
離型処理した12インチシリコンウエハ上に、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって、各実施例及び比較例で得た樹脂組成物を成型して、厚み300μmの樹脂組成物の層を得た。この樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物を得た。ウエハを剥がした後、硬化物から、平面視ダンベル形状の1号形の試験片を3個切り出した。続いて、各試験片に対し、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて25℃の室内で引張試験を実施することにより、25℃における弾性率(GPa)を測定した。測定は、JIS K7127:1999に準拠して実施した。3個の試験片の25℃における弾性率の測定値の平均値を算出した。
【0258】
[解像性の評価試験]
(評価基材の用意)
12インチシリコンウエハ上に、温度130℃、圧力6MPa、キュアタイム10分の条件でのコンプレッションモールドによって、各実施例及び比較例で得た樹脂組成物を成型して、厚み300μmの樹脂組成物の層を得た。この樹脂組成物の層を、150℃1時間の条件で熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物層を得た。得られた硬化物層を、グラインダー(ディスコ社製「DAG810」)によって、厚み方向に30μm研磨して、10nm~300nmの範囲の算術平均粗さを有する研磨面を形成した。その後、硬化物層をウエハと一緒に4インチサイズの円形でカットして、研磨面を有する硬化物層を備えた評価基材を得た。
【0259】
(ネガ型感光性樹脂組成物として第一特定組成物を用いる場合の解像性の評価)
評価基材の研磨面に、ネガ型感光性樹脂組成物として、製造例3で製造した第一特定組成物を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、最大回転数1500rpmでスピンコートした。その後、ホットプレート上で120℃5分間の条件で加熱するプレベーク処理を行って、研磨面上に、厚み10μmのネガ型感光性樹脂組成物の層を形成した。
【0260】
直径10μmの円形の遮光部を複数有するネガ型感光性樹脂組成物用のマスクを介して、前記のネガ型感光性樹脂組成物の層に露光を行った。露光は、パターン形成装置(UX-2240、ウシオ電機社製)によりi線にて300mJ/cmのエネルギーで行った。その後、シクロペンタノンを用いてスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートでリンスした。
前記の露光及び現像により、全ての遮光部に対応する開口をネガ型感光性樹脂組成物の層に形成できた場合、解像性を「○」と判定した。また、スピンコート後のネガ型感光性樹脂組成物の層の表面形状又は厚みにムラがあり、一部又は全ての遮光部に対応する開口に残渣があった場合、解像性を「×」と判定した。
【0261】
(第一特定組成物とは組成が異なるネガ型感光性樹脂組成物を用いる場合の解像性の評価)
評価基材の研磨面に、製造例7で製造したネガ型感光性樹脂組成物N1を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、最大回転数1200rpmでスピンコートした。その後、ホットプレート上で120℃5分間の条件で加熱するプレベーク処理を行って、研磨面上に、厚み10μmのネガ型感光性樹脂組成物の層を形成した。
【0262】
直径10μmの円形の遮光部を複数有するネガ型感光性樹脂組成物用のマスクを介して、前記のネガ型感光性樹脂組成物の層に露光を行った。露光は、パターン形成装置(UX-2240、ウシオ電機社製)によりi線にて200mJ/cmのエネルギーで行った。その後2.38%TMAH水溶液を用いてスプレー現像し、純水でリンスした。前記のTMAHは、水酸化テトラメチルアンモニウムを表す。
【0263】
前記の露光及び現像により、全ての遮光部に対応する開口をネガ型感光性樹脂組成物の層に形成できた場合、解像性を「○」と判定した。また、スピンコート後のネガ型感光性樹脂組成物の層の表面形状又は厚みにムラがあり、一部又は全ての遮光部に対応する開口に残渣があった場合、解像性を「×」と判定した。ネガ型感光性樹脂組成物N1を用いた解像性の評価結果は、いずれの実施例及び比較例でも、第一特定組成物を用いた場合と同じであった。よって、第一特定組成物を用いた解像性の評価結果は、第一特定組成物とは異なる組成を有するネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合にも当てはまることが確認された。
【0264】
(ポジ型感光性樹脂組成物として第二特定組成物を用いる場合の解像性の評価)
評価基材の研磨面に、ポジ型感光性樹脂組成物として、製造例5で製造した第二特定組成物を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、最大回転数1500rpmでスピンコートした。その後、ホットプレート上で120℃5分間の条件で加熱するプレベーク処理を行って、研磨面上に、厚み10μmのポジ型感光性樹脂組成物の層を形成した。
【0265】
直径10μmの円形の透光部を複数有するポジ型感光性樹脂組成物用のマスクを介して、前記のポジ型感光性樹脂組成物の層に露光を行った。露光は、パターン形成装置(UX-2240、ウシオ電機社製)によりi線にて500mJ/cmのエネルギーで行った。その後、2.38%TMAH水溶液を用いてスプレー現像し、純水でリンスした。
前記の露光及び現像により、全ての透光部に対応する開口をポジ型感光性樹脂組成物の層に形成できた場合、解像性を「○」と判定した。また、スピンコート後のポジ型感光性樹脂組成物の層の表面形状又は厚みにムラがあり、一部又は全ての透光部に対応する開口に残渣があった場合、解像性を「×」と判定した。
【0266】
(第二特定組成物とは組成が異なるポジ型感光性樹脂組成物を用いる場合の解像性の評価)
評価基材の研磨面に、製造例8で製造したポジ型感光性樹脂組成物P1を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、最大回転数1500rpmでスピンコートした。その後、ホットプレート上で120℃3分間の条件で加熱するプレベーク処理を行って、研磨面上に、厚み10μmのポジ型感光性樹脂組成物の層を形成した。
【0267】
直径10μmの円形の透光部を複数有するポジ型感光性樹脂組成物用のマスクを介して、前記のポジ型感光性樹脂組成物の層に露光を行った。露光は、パターン形成装置(UX-2240、ウシオ電機社製)によりi線にて500mJ/cmのエネルギーで行った。その後、2.38%TMAH水溶液を用いてスプレー現像し、純水でリンスした。
【0268】
前記の露光及び現像により、全ての透光部に対応する開口をポジ型感光性樹脂組成物の層に形成できた場合、解像性を「○」と判定した。また、スピンコート後のポジ型感光性樹脂組成物の層の表面形状又は厚みにムラがあり、一部又は全ての透光部に対応する開口に残渣があった場合、解像性を「×」と判定した。ポジ型感光性樹脂組成物P1を用いた解像性の評価結果は、いずれの実施例及び比較例でも、第二特定組成物を用いた場合と同じであった。よって、第二特定組成物を用いた解像性の評価結果は、第二特定組成物とは異なる組成を有するポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合にも当てはまることが確認された。
【0269】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
【0270】
【表2】
【符号の説明】
【0271】
1 サンプル
10 シリコンウエハ
10U シリコンウエハの表面
20 硬化試料
20U 硬化試料の研磨面
30 試験層
30 試験層の表面
100 半導体チップパッケージ
110 半導体チップ
120 封止層
130 再配線形成層
140 再配線層
150 ソルダーレジスト層
160 バンプ
図1
図2