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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095481
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】イオンセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
G01N27/414 301V
G01N27/414 301U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208837
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593022021
【氏名又は名称】山形県
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹知 和重
(72)【発明者】
【氏名】岩松 新之輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】渡部 善幸
(57)【要約】
【課題】高精度にイオン濃度を測定できるイオンセンサを実現する。
【解決手段】イオンセンサ装置は、第1電界効果トランジスタと、第2電界効果トランジスタと、被検液に直接接触している 参照電極と、第1イオン感応膜と、第2イオン感応膜と、を含む。第1電界効果トランジスタ及び第2電界効果トランジスタは、それぞれ、ボトムゲート電極と、ボトムゲート絶縁膜と、トップゲート絶縁膜と、を含む。第1イオン感応膜及び前記第2イオン感応膜の接液材料は、同一である。第1電界効果トランジスタ及び第1イオン感応膜の組み合わせの感応度は、第2電界効果トランジスタ及び第2イオン感応膜の組み合わせの感応度より高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンセンサ装置であって、
第1電界効果トランジスタと、
第2電界効果トランジスタと、
被検液に直接接触している参照電極と、
第1イオン感応膜と、
第2イオン感応膜と、
を含み、
前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタは、それぞれ、
半導体膜と、
ボトムゲート電極と、
前記ボトムゲート電極と前記半導体膜との間のボトムゲート絶縁膜と、
トップゲート絶縁膜と、
を含み、
前記第1イオン感応膜は、前記被検液と直接接触し、前記被検液のイオン濃度に応じた前記第1電界効果トランジスタの前記半導体膜に対するトップゲート電位を生成し、
前記第2イオン感応膜は、前記被検液と直接接触し、前記被検液のイオン濃度に応じた前記第2電界効果トランジスタの前記半導体膜に対するトップゲート電位を生成し、
前記参照電極の電位は、前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタの前記半導体膜のソース/ドレインに与えられ、
前記第1イオン感応膜及び前記第2イオン感応膜の接液材料は、同一であり、
前記第1電界効果トランジスタ及び前記第1イオン感応膜の組み合わせの感応度は、前記第2電界効果トランジスタ及び前記第2イオン感応膜の組み合わせの感応度より高い、
イオンセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタの単位面積当たりのトップゲート絶縁膜静電容量の単位面積当たりのボトムゲート絶縁膜静電容量に対する比の値は、前記第2電界効果トランジスタの単位面積当たりのトップゲート絶縁膜静電容量の単位面積当たりのボトムゲート絶縁膜静電容量に対する比の値、より大きい、
イオンセンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタの前記トップゲート絶縁膜は、前記第2電界効果トランジスタの前記トップゲート絶縁膜より薄い、
イオンセンサ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜は、前記第1イオン感応膜に含まれ、
前記第2電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜は、前記第2イオン感応膜に含まれ、
前記第1電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜は、前記第2電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜より薄い、
イオンセンサ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜の誘電率は、前記第2電界効果トランジスタのトップゲート絶縁膜の誘電率より高い、
イオンセンサ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1イオン感応膜は、前記第2イオン感応膜より薄い、
イオンセンサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタは、それぞれ、
トップゲート電極と、
前記トップゲート電極から延びる延長電極と、をさらに含み、
前記第1イオン感応膜は、前記第1電界効果トランジスタの延長電極上に直接接触して配置されており、
前記第2イオン感応膜は、前記第2電界効果トランジスタの延長電極上に直接接触して配置されている、
イオンセンサ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
前記参照電極は、前記トップゲート絶縁膜を含む絶縁層上に形成され、
前記参照電極は、前記絶縁層のコンタクトホールを介して前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタのソース/ドレインに電気的に接続されている、
イオンセンサ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタのソース/ドレイン電極は、一つの導体膜に含まれ、
前記参照電極は、前記導体膜の一部であって、前記被検液に直接に接触している部分である、
イオンセンサ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオンセンサ装置であって、
さらに駆動回路を含み、
前記第1電界効果トランジスタのソース/ドレイン、前記第2電界効果トランジスタのソース/ドレイン、及び前記参照電極が同電位になるように、前記第1電界効果トランジスタ、前記第2電界効果トランジスタ及び前記参照電極が電気的に接続されており、
前記駆動回路は、
前記第1電界効果トランジスタのドレイン電流が一定になるように前記第1電界効果トランジスタのボトムゲート電位を制御し、
前記第2電界効果トランジスタのドレイン電流が一定になるように前記第2電界効果トランジスタのボトムゲート電位を制御し、
前記第1電界効果トランジスタのボトムゲート電位と前記第2電界効果トランジスタのボトムゲート電位との差を出力する、
イオンセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はイオンセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検液内の特定イオンに選択的に応答し、その濃度に対応する電極電位を発生させるイオンセンサが、化学、生物及び医学等の様々な分野で利用されている。例えば、特許文献1は、液絡型のイオン電極及び参照電極を用いない構造として、ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)の差動動作を用いた全固体型のイオンセンサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-25124号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0330674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するイオンセンサは、イオン感応ISFETとイオン不感応FETの差動動作により、イオン濃度を検出する。このイオンセンサは、感度が(59-α)mV/pHに比例する全固体イオンセンサである。αは、イオン不感応膜が有する感度であり、理想的にはゼロである。しかし、完全なイオン不感応膜を形成することは技術的に非常に困難であり、このイオンセンサの感度を規定するαは、イオン不感応膜の不確定性を示す。つまり、この従来のイオンセンサの感度は、不確定なイオン不感応膜感度αに依存する。
【0005】
また、被検液に接するイオン感応膜とイオン不感応膜はお互いに異なる材料であるため、両者のイオン選択性やドリフト傾向が異なり、精度の高い測定が難しい。例えば、水素イオン感応膜は水素イオンには感応するがナトリウムイオンには感応しない、水素イオン不感応膜は水素イオンには感応しないがナトリウムイオンには感応する、という性質を持っていた場合、被検液の水素イオン濃度とナトリウムイオン濃度が同時に変化すると、本来測定したい水素イオン濃度の変化を正しく測定できない。これは、水素イオン不感応膜がナトリウムイオン濃度の変化に応答してしまうためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るイオンセンサ装置は、第1電界効果トランジスタと、第2電界効果トランジスタと、被検液に直接接触している参照電極と、第1イオン感応膜と、第2イオン感応膜と、を含む。前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタは、それぞれ、半導体膜と、ボトムゲート電極と、前記ボトムゲート電極と前記半導体膜との間のボトムゲート絶縁膜と、トップゲート絶縁膜と、を含む。前記第1イオン感応膜は、前記被検液と直接接触し、前記被検液のイオン濃度に応じた前記第1電界効果トランジスタの前記半導体膜に対するトップゲート電位を生成する。前記第2イオン感応膜は、前記被検液と直接接触し、前記被検液のイオン濃度に応じた前記第2電界効果トランジスタの前記半導体膜に対するトップゲート電位を生成する。前記参照電極の電位は、前記第1電界効果トランジスタ及び前記第2電界効果トランジスタの前記半導体膜のソース/ドレインに与えられる。前記第1イオン感応膜及び前記第2イオン感応膜の接液材料は、同一である。前記第1電界効果トランジスタ及び前記第1イオン感応膜の組み合わせの感応度は、前記第2電界効果トランジスタ及び前記第2イオン感応膜の組み合わせの感応度より高い。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、高精度にイオン濃度を測定できるイオンセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書の一実施形態のイオンセンサ装置の全体構成の例を模式的に示す。
図2】本明細書の一実施形態のイオンセンサ装置の全体構成の他の例を模式的に示す。
図3】被検液の特定イオンの濃度を測定するための二つのTFTの構造例を模式的に示す断面図である。
図4】二つのTFTの構造例を模式的に示す平面図である。
図5】高感応TFTからのセンシング信号と低感応TFTからのセンシング信号から、被検液における特定イオンのイオン濃度を測定するための回路構成例を示す。
図6】トップゲート絶縁膜とボトムゲート絶縁膜の静電容量比が異なるTFTの、被検液のpHとゲート-ソース間電圧Vgsとの関係の測定結果の例を示す。
図7】センサTFTペアの構成例を示す。
図8】センサTFTペアの構成例を示す。
図9】センサTFTペアの構成例を示す。
図10】センサTFTペアの構成例を示す。
図11】センサTFTペアの構成例を示す。
図12】センサTFTペアの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0010】
特定イオン種の濃度を測定するイオンセンサ装置は、様々な分野、例えば、バイオテクノロジや医療分野等で利用されている。イオン感応ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)とイオン不感応FETの差動動作により、イオン濃度を検出するイオンセンサ装置が知られている。しかし、完全なイオン不感応膜を形成することは技術的に非常に困難であり、このイオンセンサ装置の感度はm不確定なイオン不感応膜感度αに依存する。
【0011】
また、被検液に接するイオン感応膜とイオン不感応膜はお互いに異なる材料であるため、両者のイオン選択性やドリフト傾向が異なり、精度の高い測定が難しい。例えば、水素イオン感応膜は水素イオンには感応するがナトリウムイオンには感応しない、水素イオン不感応膜は水素イオンには感応しないがナトリウムイオンには感応する、という性質を持っていた場合、被検液の水素イオン濃度とナトリウムイオン濃度が同時に変化すると、本来測定したい水素イオン濃度の変化を正しく測定できない。
【0012】
本明細書の一実施形態に係るイオンセンサ装置は、二つの電界効果トランジスタと、二つの電界効果トランジスタそれぞれに対応する接液材料が同一のイオン感応膜とを含む。イオン感応膜は、単層構造又は積層構造を有することができる。二つのイオン感応膜は、被検液に接する部分のイオン感応膜の材料(接液材料)が同一である。
【0013】
例えば、一方の電界効果トランジスタに対応するイオン感応膜は、酸化タンタルの単層で構成され、もう一方の電界効果トランジスタに対応するイオン感応膜は、酸化タンタルの接液層と酸化シリコンの下層で構成することができる。この場合、いずれのイオン感応膜においても、被検液と接する部分は酸化タンタルである。被検液に接する部分のイオン感応膜は、測定したいイオン種に応じて適宜選択することができる。電界効果トランジスタは、ボトムゲート及びトップゲートを含むダブルゲート構造を有する。イオン感応膜は、被検体のイオン濃度に応じたトップゲート電位を対応する電界効果トランジスタに与える。
【0014】
一方の電界効果トランジスタと対応するイオン感応膜とを含むデバイスのイオン濃度測定の感度と、他方の電界効果トランジスタと対応するイオン感応膜とを含むデバイスのイオン濃度測定の感度とは異なる。このように異なる感度のデバイスを使用することで、高精度にイオン濃度を測定できるイオンセンサ装置を実現することができる。
【0015】
[イオンセンサ装置の全体構成]
図1は、本明細書の一実施形態のイオンセンサ装置の全体構成の例を模式的に示す。イオンセンサ装置10は、イオンセンサ基板120及びイオンセンサ基板120を駆動する駆動回路モジュール100を含む。駆動回路モジュール100は、差動増幅回路103を含む。
【0016】
イオンセンサ基板120は、ガラス又は樹脂で形成された可撓性又は不撓性の絶縁基板121を含む。高感応TFT(Thin Film Transistor)123及び低感応TFT125が、絶縁基板121上に配置されている。高感応TFF123及び低感応TFT125は、それぞれ、被検液141の特定のイオンの濃度に応じた信号を駆動回路モジュールに出力する。高感応TFT123の特定イオンに対する感度は、低感応TFT125の感度より高い。
【0017】
高感応TFT123及び低感応TFT125は、保護膜133により覆われている。後述するように、高感応TFF123及び低感応TFT125は、それぞれダブルゲート構造を有しており、活性半導体膜の下層に配置されたボトムゲートと、活性半導体膜の上層に配置されたトップゲート電極とを含む。
【0018】
延長ゲート電極127は、高感応TFT123のトップゲート電極及びトップゲート電極から延びている延在部を含み、絶縁基板121上で、保護膜133の外側まで延びている。延長ゲート電極129は、低感応TFT125のトップゲート電極及びトップゲート電極から延びている延在部を含み、絶縁基板121上で、保護膜133の外側まで延びている。延長ゲート電極127及び129の保護膜133から露出している先端部は、それぞれ、イオン感応膜(単に感応膜とも呼ぶ)135及び137で覆われている。イオン感応膜135、137の最表面(接液面)は、同一材料で構成されている。
【0019】
例えば、高感応TFT123及び低感応TFT125のソースは電気的に接続されており、さらに、それらのソースに金属参照電極131が電気的に接続されている。これらは同電位である。金属参照電極131は、高感応TFT123及び低感応TFT125のソースから、保護膜133の外側まで延びており、その先端部は露出している。
【0020】
保護膜133の外側において、金属参照電極131、延長ゲート電極127の感応膜135、及び延長ゲート電極129の感応膜137が、被検液141と接触している。金属参照電極131の電位が、高感応TFT123及び低感応TFT125のソースに与えられる。感応膜135による電位が、延長ゲート電極127、つまり、高感応TFT123のトップゲートに与えられる。感応膜137による電位が、延長ゲート電極129、つまり、低感応TFT125のトップゲートに与えられる。
【0021】
高感応TFT123及び低感応TFT125は、それぞれ、被検液141の特定のイオン濃度に対応した検出信号を、伝送線111及び113を介して、駆動回路モジュール100に出力する。後述するように、高感応TFT123及び低感応TFT125のボトムゲート電位が検出信号である。
【0022】
駆動回路モジュール100の差動増幅回路103は、高感応TFT123及び低感応TFT125の検出信号の差を出力する。駆動回路モジュール100は、差動増幅回路103の出力に基づき、イオン濃度を示す測定信号を出力する。
【0023】
図1に示す構成例は、イオン濃度を測定するためのTFT123、125が絶縁基板121上に配置されており、それらを被検液141の近くに配置することができる。また、TFT123、125は、保護膜133で覆われているため、イオンセンサ基板120の信頼性を高めることができる。なお、TFTと異なる電界効果トランジスタの例として、シリコン基板上のMOSFETが使用されてもよい。この点は、以下に説明する二つのTFTの構成例について同様である。
【0024】
図2は、本明細書の一実施形態のイオンセンサ装置の全体構成の他の例を模式的に示す。図1に示す構成例は、絶縁基板上121の二つのTFT123、125を含む。一方、図2に示すイオンセンサ装置20は、駆動回路モジュール200内に、イオン測定のための二つのTFT223、225を含む。
【0025】
イオンセンサ装置20は、イオンセンサ基板220及びイオンセンサ基板220を駆動する駆動回路モジュール200を含む。駆動回路モジュール200は、差動増幅回路203を含む。
【0026】
イオンセンサ基板220は、ガラス又は樹脂で形成された可撓性又は不撓性の絶縁基板221を含む。電極227及び229並びに金属参照電極231が、絶縁基板221上に配置されている。電極227及び229の一部は保護膜233に覆われ、他の一部は保護膜223の外側に露出している。同様に、金属参照電極231の一部は保護膜233に覆われ、他の一部は保護膜223の外側に露出している。電極227及び229の保護膜233から露出している先端部は、それぞれ、イオン感応膜235及び237で覆われている。イオン感応膜235及び237は、同一材料で構成されている。
【0027】
高感応TFF223及び低感応TFT225が、駆動回路モジュール200の基板上に配置されている。高感応TFF223及び低感応TFT225は、それぞれ、被検液141の特定のイオンの濃度に応じた信号を、駆動回路モジュール200内の差動増幅回路203に出力する。高感応TFF223の感度は、低感応TFT225の感度より高い。
【0028】
後述するように、高感応TFF223及び低感応TFT225は、それぞれダブルゲート構造を有しており、活性半導体膜の下層に配置されたボトムゲートと、活性半導体膜の上層に配置されたトップゲート電極とを含む。
【0029】
電極227は、配線211を介して、高感応TFF223のトップゲート電極に電気的に接続されている。これらは同電位である。電極229は、配線213を介して、低感応TFF225のトップゲート電極に電気的に接続されている。これらは同電位である。
【0030】
例えば、高感応TFT223及び低感応TFT225のソースは電気的に接続されており、さらに、それらのソースに、金属参照電極231は、配線212を介して電気的に接続されている。これらは同電位である。
【0031】
保護膜233の外側において、金属参照電極231、電極227の感応膜235、及び電極229の感応膜237が、被検液241と接触している。金属参照電極231の電位が、高感応TFT223及び低感応TFT225のソースに与えられる。感応膜235による電位が、電極227、つまり、高感応TFT223のトップゲートに与えられる。感応膜237による電位が、電極229、つまり、低感応TFT225のトップゲートに与えられる。
【0032】
高感応TFT223及び低感応TFT225は、それぞれ、被検液241の特定のイオン濃度に対応した検出信号を、差動増幅回路203に出力する。後述するように、高感応TFT223及び低感応TFT225のボトムゲート電位が検出信号である。
【0033】
差動増幅回路203は、高感応TFT223及び低感応TFT225の検出信号の差を出力する。駆動回路モジュール200は、差動増幅回路203の出力に基づき、イオン濃度を示す測定信号を出力する。
【0034】
[センサTFTペアの構成]
図3は、被検液の特定イオンの濃度を測定するための二つのTFT(センサTFTペアとも呼ぶ)の構造例を模式的に示す断面図である。図4は、それら二つのTFTの構造例を模式的に示す平面図である。図3及び4に示す構成例は、図1に示す構成例のように、保護膜に覆われた絶縁基板上の二つのTFTと、それらから延びる延長ゲート電極とを含む。
【0035】
絶縁基板301上に、高感応TFT310及び低感応TFT330が配置されている。高感応TFT310の被検液371内の特定イオンに対する感度は相対的に高く、低感応TFT330の被検液371内の特定イオンに対する感度は相対的に低い。
【0036】
高感応TFT310は、絶縁基板301上のボトムゲート電極311と、ボトムゲート電極311より上層の酸化物半導体膜312とを含む。平面視において(基板法線に沿って見て)、ボトムゲート電極311は、酸化物半導体膜312と重なっている。ボトムゲート絶縁層302の一部が、ボトムゲート電極311と酸化物半導体膜312との間に存在する。ボトムゲート絶縁層302は、ボトムゲート電極311と酸化物半導体膜312それぞれと直接接触している。
【0037】
ボトムゲート電極311の材料として、例えば、タンタル、モリブデン、タングステン、アルミニウム等を使用することができる。ボトムゲート絶縁層302は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、あるいはそれらを複数積層した複合膜で形成される。酸化物半導体の例は、非晶質InGaZnO(a-InGaZnO)や微結晶InGaZnOである。この他、a-InSnZnO、a-InGaZnSnO、ZnO等の酸化物半導体を使用することができる。なお、酸化物半導体に代えて、アモルファスシリコンやポリシリコンを使用してもよい。
【0038】
高感応TFT310は、酸化物半導体膜312の両端それぞれに直接に接触するソース電極313及びドレイン電極314を含む。酸化物半導体膜312の一部は、ソース電極313とドレイン電極314との間のスペースから露出している。ソース電極313とドレイン電極314の材料として、ボトムゲート電極311と同様の材料を使用できる。
【0039】
トップゲート絶縁層315は、酸化物半導体膜312、ソース電極313及びドレイン電極314を覆う。さらに、延長トップゲート電極316が、トップゲート絶縁層315上に配置されている。トップゲート絶縁層315は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物又はこれらの積層で構成することができる。延長トップゲート電極316は、例えば、アルミニウム、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、銅、クロム等で形成できる。
【0040】
延長トップゲート電極316の一部は高感応TFT310のトップゲート電極を構成し、図4に示すように、平面視において、ソース電極313とドレイン電極314との間のスペースから露出している部分を含む、酸化物半導体膜312の一部と重なっている。トップゲート絶縁層315において、高感応TFT310のトップゲート電極と酸化物半導体膜312との間の部分は、高感応TFT310のトップゲート絶縁膜を構成する。
【0041】
保護膜351は、図4に示すように、高感応TFT310の全体を覆うように形成されている。保護膜351は、例えば、エポキシ樹脂で形成することができる。保護膜351は、延長トップゲート電極316の一部及びトップゲート絶縁層315と接触している。感応膜317は、延長トップゲート電極316の保護膜351の外側の部分(保護膜351から露出している部分)上に、直接配置されている。
【0042】
感応膜317は、被検液371に対して露出しており、直接接触している。感応膜317は、有機材料又は無機材料で形成される。感応膜317は特定のイオンに反応し、被検液371と感応膜317との界面に電気二重層が形成される。電気二重層は、延長トップゲート電極316を介して、酸化物半導体膜312のチャネルの界面電位を変化させる。電気二重層による電位変化は、被検液371のイオン濃度に依存する。
【0043】
低感応TFT330は、絶縁基板301上のボトムゲート電極331と、ボトムゲート電極331より上層の酸化物半導体膜332とを含む。平面視において、ボトムゲート電極331は、酸化物半導体膜332と重なっている。ボトムゲート絶縁層302の一部が、ボトムゲート電極331と酸化物半導体膜332との間に存在する。ボトムゲート絶縁層302は、ボトムゲート電極331と酸化物半導体膜332それぞれと直接接触している。ボトムゲート電極331の材料は、ボトムゲート電極311の材料と同様でよい。酸化物半導体膜332の材料は、酸化物半導体膜312の材料と同様でよい。
【0044】
低感応TFT330は、酸化物半導体膜332の両端それぞれに直接に接触するソース電極333及びドレイン電極334を含む。酸化物半導体膜332の一部は、ソース電極333とドレイン電極334との間のスペースから露出している。ソース電極333、ドレイン電極334の材料は、ソース電極313、ドレイン電極314の材料と同様でよい。
【0045】
トップゲート絶縁層335は、酸化物半導体膜332、ソース電極333及びドレイン電極334を覆う。さらに、延長トップゲート電極336が、トップゲート絶縁層335上に配置されている。図3及び4に示す構成例において、トップゲート絶縁層335の材料は、高感応TFT310のトップゲート絶縁層315の材料と同様である。トップゲート絶縁層335の厚みは、高感応TFT310のトップゲート絶縁層315の厚みより大きい。延長トップゲート電極336の材料は、延長トップゲート電極316と同様でよい。
【0046】
延長トップゲート電極336の一部は低感応TFT330のトップゲート電極を構成し、図4に示すように、平面視において、ソース電極333とドレイン電極334との間のスペースから露出している部分を含む、酸化物半導体膜332の一部と重なっている。トップゲート絶縁層335において、低感応TFT330のトップゲート電極と酸化物半導体膜332との間の部分は、低感応TFT330のトップゲート絶縁膜を構成する。
【0047】
保護膜353は、図4に示すように、低感応TFT330の全体を覆うように形成されている。保護膜353の材料は、保護膜351の材料と同じでよい。保護膜353は、延長トップゲート電極336の一部及びトップゲート絶縁層335と接触している。保護膜351、353は、分離された異なる膜でもよく、一つの連続した膜の一部でもよい。
【0048】
感応膜337は、延長トップゲート電極336の保護膜353の外側の部分(保護膜353から露出している部分)上に、直接配置されている。感応膜337は、被検液371に対して露出しており、直接接触している。感応膜337の材料は、感応膜317の材料と同一である。図3の構成例において、感応膜337と感応膜317の厚みは同一である。
【0049】
感応膜337は、被検液371に対して露出しており、直接接触している。感応膜337は特定のイオンに反応し、被検液371と感応膜337との界面に電気二重層が形成される。電気二重層は、延長トップゲート電極336を介して、酸化物半導体膜332のチャネルの界面電位を変化させる。電気二重層による電位変化は、被検液371のイオン濃度に依存する。
【0050】
高感応TFTのソース電極313及び低感応TFTのソース電極333は、金属参照電極305により電気的に接続されており、それらは同電位である。金属参照電極305は、例えば、金又はプラチナで形成できる。
【0051】
金属参照電極305は、トップゲート絶縁層315内のコンタクトホールを介して、高感応TFTのソース電極313に直接接触している。金属参照電極305は、トップゲート絶縁層335内のコンタクトホールを介して、低感応TFTのソース電極333に直接接触している。図3の構成例において、金属参照電極305の一部は保護膜351及び353から被検液371に対して露出しており、被検液371に直接接触している。
【0052】
高感応TFT310及び低感応TFT330は、それぞれトップゲート電極及びボトムゲート電極を含む。これらのイオン濃度検出の感度は、ボトムゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量BCとトップゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量TCの比に依存する。トップゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量TCのボトムゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量BCの比の値(TC/BC)が大きい程、感度が高くなる。TFTの感度を高めるため、例えば、トップゲート絶縁膜の静電容量TCは、ボトムゲート絶縁膜の静電容量BCより大きい。
【0053】
図3の構成例において、トップゲート絶縁層315は、トップゲート絶縁層335より薄く、これらの材料は同一である。したがって、高感応TFT310のトップゲート絶縁膜の静電容量は、低感応TFT330のトップゲート絶縁膜の静電容量より大きい。高感応TFT310と低感応TFT330のボトムゲート絶縁膜の静電容量は同一である。そのため、高感応TFT310の感度は、低感応TFT330の感度より高い。
【0054】
図3及び4を参照して説明した構成において、第1電界効果トランジスタである高感応TFT310のトップゲート絶縁膜は、第2電界効果トランジスタでる低感応TFT330のトップゲート絶縁膜より薄い。これにより、高感応TFT310と第1イオン感応膜である感応膜317の組み合わせの感度は、低感応TFT330と第2イオン感応膜であるイオン感応膜337の組み合わせの感度より高くなっている。
【0055】
[センサTFTペアの駆動]
図5は、高感応TFT310からのセンシング信号と低感応TFT330からのセンシング信号から、被検液371における特定イオンのイオン濃度を測定するための回路構成例を示す。図5は回路構成の一例を示すに過ぎず、他の回路構成が採用されてもよい。
【0056】
駆動回路モジュール500は、マイクロプロセッサ(MP)521、523、定電圧発生回路501、電流電圧変換回路511、513、及び差動増幅回路527を含む。定電圧発生回路501が生成した定電圧は、高感応TFT310及び低感応TFT330それぞれの、ソースとドレインとの間に与えられる。
【0057】
電流電圧変換回路511は、高感応TFT310のソースとドレインとの間を流れる電流I1を電圧として検出する。マイクロプロセッサ521は、電流電圧変換回路511にて検出した電圧が一定となる、つまり、高感応TFT310のドレイン電流が一定となるように、高感応TFT310のボトムゲート電位(ボトムゲートとソースと間の電圧)を制御する。
【0058】
電流電圧変換回路513は、低感応TFT330のソースとドレインとの間を流れる電流I2を電圧として検出する。マイクロプロセッサ523は、電流電圧変換回路513にて検出した電圧が一定となる、つまり、低感応TFT330のドレイン電流が一定となるように、低感応TFT330のボトムゲート電位(ボトムゲートとソースと間の電圧)を制御する。
【0059】
高感応TFT310のボトムゲート電位と、低感応TFT330のボトムゲート電位とが、差動増幅回路527に入力される。差動増幅回路527は、高感応TFT310のボトムゲート電位と低感応TFT330のボトムゲート電位との差に応じた電圧(電位)Voを出力する。電圧Voは、被検液371のイオン濃度に応じて変化する。本構成例のイオンセンサの感度は、高感応TFT310と低感応TFT330の感度の差に比例する。
【0060】
図6は、トップゲート絶縁膜とボトムゲート絶縁膜の静電容量比(TC/BC)が異なるTFTの、被検液のpHとゲート-ソース間電圧Vgsとの関係の測定結果の例を示す。pHは特定イオンの濃度を表す。図5のグラフは、43mV/pH、180mV/pH、185mV/pH、270mV/pH、及び610mV/pHのTFTの測定結果を示す。
【0061】
図6に示されるように、トップゲート絶縁膜とボトムゲート絶縁膜の静電容量比に依存するTFTの感度は、高い線形性を示す。そのため、図5を参照して説明したように異なる感度のTFTの出力の差を測定することにより、高い精度でイオン濃度を測定することが可能である。
【0062】
[センサTFTペアの他の構成例]
以下において、センサTFTペアの異なる構成例を説明する。図7は、センサTFTペアの構成例を示す。以下においては、図3に示す構成例との相違点を主に説明する。図3に示す構成例と比較して、感応膜317、337、保護膜351、353、延長トップゲート電極316、336が省略されている。さらに、図3に示す構成例のトップゲート絶縁層315、335に代えて、トップゲート絶縁層415、435が配置されている。
【0063】
トップゲート絶縁層415、435は、被検液371に直接接触しており、イオン感応膜としても機能する。トップゲート絶縁層415、435は、同一材料で形成されており、例えば、シリコン酸化物で形成することができる。トップゲート絶縁層415、435は異なる厚みを有し、トップゲート絶縁層415はトップゲート絶縁層435より薄い。そのため、図3に示す構成例と同様に、高感応TFT410は、低感応TFT430よりも高い感度を有する。
【0064】
図7を参照して説明した構成において、第1電界効果トランジスタである高感応TFT410のトップゲート絶縁膜は、トップゲート絶縁層415のイオン感応膜として機能する部分に含まれ、第2電界効果トランジスタである低感応TFT430のトップゲート絶縁膜は、トップゲート絶縁層435のイオン感応膜として機能する部分に含まれている。トップゲート絶縁層415は、トップゲート絶縁層435より薄い。
【0065】
図8は、センサTFTペアの他の構成例を示す。以下においては、図3に示す構成例との相違点を主に説明する。図8の構成例は、図3に示す構成例のトップゲート絶縁層315、335に代えて、トップゲート絶縁層515、535を含む。トップゲート絶縁層515、535異なる材料で形成されており、それらの比誘電率は異なる。具体的には、トップゲート絶縁層515の比誘電率は、トップゲート絶縁層535の比誘電率より高い。例えば、高比誘電率の材料としてhigh-k絶縁体を使用し、低誘電率材料としてシリコン酸化物やシリコン窒化物を使用することができる。high-k絶縁体の例としては、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることができる。
【0066】
高感応TFT510のトップゲート絶縁膜は、トップゲート絶縁層515の一部であり、トップゲート電極と酸化物半導体膜312との間の部分である。低感応TFT530のトップゲート絶縁膜は、トップゲート絶縁層535の一部であり、トップゲート電極と酸化物半導体膜332との間の部分である。図8の構成例において、高感応TFT510のトップゲート絶縁膜の厚みは、低感応TFT530のトップゲート絶縁膜の厚みと同一である。
【0067】
トップゲート絶縁膜の比誘電率が高いことは、トップゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量が大きいことを意味する。従って、高感応TFT510の感度は、低感応TFT530の感度よりも高い。
【0068】
図8の構成例において、トップゲート絶縁層535は、二つのTFT510、530の間の領域において、突出部を含む。金属参照電極505は、この突出部を覆うように形成されている。
【0069】
上述のように、図8の構成例において、第1電界効果トランジスタである高感応TFT510のトップゲート絶縁膜の比誘電率は、第2電界効果トランジスタである低感応TFT530のトップゲート絶縁膜の比誘電率より高い。高感応TFT510と感応膜317との組み合わせの感度は、低感応TFT530と感応膜337との組み合わせの感度より高い。
【0070】
図3及び8を参照して説明したように、二つのTFTのトップゲート絶縁膜の厚み又は比誘電率が異なることで、二つのTFTの感度を異なるものとすることができる。二つのTFTのトップゲート絶縁膜の厚み及び比誘電率の双方が異なっていてもよい。TFTの感度は、ボトムゲート絶縁膜とトップゲート絶縁膜の単位面積当たりの静電容量の比に依存する。したがって、二つのTFTのボトムゲート絶縁膜の特性を異なるものとすることで、二つのTFTの感度を異なるものとしてもよい。
【0071】
図9は、センサTFTペアの他の構成例を示す。以下においては、図3に示す構成例との相違点を主に説明する。図9の構成例において、二つのセンサTFTのための感応膜は、異なる厚みを有する。感応膜が厚くなるほど、センサTFTと感応膜とからなるセンサデバイスの感度は低くなる。
【0072】
図9の構成例において、TFT610とTFT630は同様の構成を有しており、TFT610のトップゲート電位を与える感応膜617は、TFT630のトップゲート電位を与える感応膜637の厚みより薄い。感応膜617、637の材料は同一である。したがって、TFT610及び感応膜617の組み合わせの感度は、TFT630及び感応膜637の組み合わせの感度より高い。
【0073】
図9の構成例において、TFT610及び630のトップゲート絶縁膜は、同一のトップゲート絶縁層625に含まれている。したがって、TFT610及び630のトップゲート絶縁膜の材料及び厚みは同一である。
【0074】
図9の構成例において、TFT610及び630のソース電極613及び633は、それぞれ、導体膜623の一部である。導体膜623の材料は、図3に示す構成例と同様でよい。金属参照電極605は、トップゲート絶縁層625に形成されたコンタクトホールを介して、導体膜623に電気的に接続されている。
【0075】
上述のように、図9の構成例において、第1電界効果トランジスタであるTFT610と第1感応膜である感応膜617との組み合わせの感度は、第2電界効果トランジスタであるTFT630と第2感応膜である感応膜637との組み合わせの感度より高い。
【0076】
図10は、センサTFTペアの他の構成例を示す。以下においては、図3に示す構成例との相違点を主に説明する。図10に示す構成例において、図3に示す構成例から、延長トップゲート電極316、336が省略されている。二つのTFTのチャネルは、感応膜と共に被検液371に浸漬される。
【0077】
図10に示す構成例において、感応膜717はトップゲート絶縁層315上に直接配置され、それらは直接接触している。感応膜737はトップゲート絶縁層335上に直接配置され、それらは直接接触している。平面視において、感応膜717は高感応TFT710のチャネル領域を覆い、感応膜737は低感応TFT730のチャネル領域を覆う。感応膜717、737は、対応するチャネル領域の一部とのみ平面視において重なっていてもよい。
【0078】
感応膜717と被検液371との界面の電気二重層が、高感応TFT710のトップゲート電位を与える。また、感応膜737と被検液371との界面の電気二重層が、低感応TFT730のトップゲート電位を与える。図10に示す構成例において、図3に示す構成例と同様に、高感応TFT710のトップゲート絶縁膜は、低感応TFT730のトップゲート絶縁膜より薄い。これにより、高感応TFT710の感度を低感応TFT730の感度より高くしている。図10の構成例において、図9の構成例と同様に、TFT710及び730のソース電極613及び633は、それぞれ、導体膜623の一部である。
【0079】
図11は、センサTFTペアの他の構成例を示す。以下においては、図8に示す構成例との相違点を主に説明する。図11に示す構成例において、図8に示す構成例から、延長トップゲート電極316、336が省略されている。二つのTFTのチャネルは、感応膜と共に被検液371に浸漬される。
【0080】
図11に示す構成例において、感応膜717はトップゲート絶縁層515上に直接配置され、それらは直接接触している。感応膜737はトップゲート絶縁層535上に直接配置され、それらは直接接触している。平面視において、感応膜717は高感応TFT810のチャネル領域を覆い、感応膜737は低感応TFT830のチャネル領域を覆う。感応膜717、737は、対応するチャネル領域の一部とのみ平面視において重なっていてもよい。
【0081】
感応膜717と被検液371との界面の電気二重層が、高感応TFT810のトップゲート電位を与える。また、感応膜737と被検液371との界面の電気二重層が、低感応TFT830のトップゲート電位を与える。図11に示す構成例において、図8に示す構成例と同様に、高感応TFT810のトップゲート絶縁膜の比誘電率は、低感応TFT830のトップゲート絶縁膜の比誘電率より高い。これにより、高感応TFT810の感度を低感応TFT830の感度より高くしている。
【0082】
図11の構成例において、図9の構成例と同様に、TFT810及び830のソース電極613及び633は、それぞれ、導体膜623の一部である。金属参照電極605は、トップゲート絶縁層515とトップゲート絶縁層535との境界に形成されているコンタクトホールを介して、導体膜623に電気的に接続されている。
【0083】
図12は、センサTFTペアの他の構成例を示す。以下においては、図3に示す構成例との相違点を主に説明する。図12に示す構成例において、図3に示す構成例から、金属参照電極305が省略されている。二つのTFT910、930のソース電極913、933は、導体膜923に含まれる。導体膜923の一部905が保護膜から被検液371に対して露出し、直接接触している。この導体膜923の一部905は、金属参照電極として機能する。導体膜923は、例えば、金又は白金で形成してもよい。このように、第1電界効果トランジスタであるTFT910及び第2電界効果トランジスタであるTFT930のソース/ドレイン電極は一つの導体膜923に含まれ、その導体膜923において被検液371に直接接触している部分が、参照電極として機能する。
【0084】
図12に示す構成例において、図3に示す構成例と同様に、高感応TFT910のトップゲート絶縁膜は、低感応TFT930のトップゲート絶縁膜より薄い。これにより、高感応TFT910の感度を低感応TFT930の感度より高くしている。
【0085】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
10、20 イオンセンサ装置、100、200、500 駆動回路モジュール、103、203、527 差動増幅回路、120、220 イオンセンサ基板、121、221 絶縁基板、123、223、310、410、510、710、810、910 高感応TFT、610、630 TFT、125、225、330、430、530、730、830、930 低感応TFT、127、129 延長ゲート電極、131、231、605 金属参照電極、133、223、351、353 保護膜、135、137、235、237、317、337、617、637、717、737 イオン感応膜、141、241、371 被検液、227、229 電極、301 絶縁基板、302 ボトムゲート絶縁層、305、505 金属参照電極、311、331 ボトムゲート電極、312、332 酸化物半導体膜、313、333、613、913、933 ソース電極、314、334 ドレイン電極、315、335、415、435、535、625 トップゲート絶縁層、316、336 延長トップゲート電極、501 定電圧発生回路、511、513 電流電圧変換回路、515、535 トップゲート絶縁層、521、523 マイクロプロセッサ、623、923 導体膜
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図11
図12