IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-充放電試験装置 図1
  • 特開-充放電試験装置 図2
  • 特開-充放電試験装置 図3
  • 特開-充放電試験装置 図4
  • 特開-充放電試験装置 図5A
  • 特開-充放電試験装置 図5B
  • 特開-充放電試験装置 図6
  • 特開-充放電試験装置 図7
  • 特開-充放電試験装置 図8
  • 特開-充放電試験装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095502
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】充放電試験装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20220621BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220621BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220621BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220621BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220621BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/00 Q
G05F1/56 310W
G05F1/56 310K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208863
(22)【出願日】2020-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H430
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503EA09
5G503GB03
5H030AS18
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC01
5H430CC05
5H430EE02
5H430EE12
5H430GG08
5H430GG17
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB11
5H730DD03
5H730DD16
5H730FD31
5H730FG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高出力型又は低出力型の二次電池に対して精度の高い充放電特性の評価を行うことが可能な充放電試験装置を提供する。
【解決手段】充放電試験装置100は、第1の接続点n11で縦続に接続された第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2と、第2の接続点n2で縦続に接続された第3及び第4のスイッチ素子Q3、Q4とを含むブリッジ回路と、モード信号が第1のモードを示す場合には、第1及び第4のスイッチ素子と第2及び第3のスイッチ素子とを交互にオンオフさせるように第1~第4のスイッチ素子を制御し、モード信号が第2のモードを示す場合には、第3のスイッチ素子をオフ状態、第4のスイッチ素子をオン状態に制御すると共に、充電制御時には第1のスイッチ素子、放電時には第2のスイッチ素子に対して、ゲートしきい値電圧以上の電圧が上下に変化するアナログ電圧により、流す電流を上下に変化させるアナログ出力制御を施す制御部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に対して充放電試験を行う充放電試験装置であって、
前記二次電池の両端を接続する第1及び第2の出力端子と、
第1の接続点を介して互いに縦続に接続されている第1及び第2のスイッチ素子と、第2の接続点を介して互いに縦続に接続されている第3及び第4のスイッチ素子と、が電源ライン及び接地ライン間において並列に接続されているブリッジ回路と、
シャント抵抗及び第1のインダクタを含み、前記第1の接続点から前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子を経由して前記第2の接続点に到る充放電電流路と、
前記第1及び第2の出力端子間に接続されたコンデンサと、
第1又は第2のモードを指定するモード信号を受け、前記モード信号に基づき前記第1~第4のスイッチ素子を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には、前記第1及び第4のスイッチ素子と、前記第2及び第3のスイッチ素子とを交互にオン及びオフさせるように前記第1~第4のスイッチ素子を制御し、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には、前記第3のスイッチ素子をオフ状態、前記第4のスイッチ素子をオン状態に制御すると共に、充電制御時には前記第1のスイッチ素子に対して、放電制御時には前記第2のスイッチ素子に対して、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧を連続的に上下に変化させる制御を施すことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項2】
前記第1のインダクタは前記充放電電流路中の前記第1の接続点及び前記第1の出力端子間に接続されており、
前記充放電電流路は、前記第2の接続点及び前記第2の出力端子間に接続されている第2のインダクタを含むことを特徴とする請求項1に記載の充放電試験装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のスイッチ素子はトランジスタであり、
前記制御部は、前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には、前記第1のスイッチ素子又は前記第2のスイッチ素子のしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号を前記第1及び第2のスイッチ素子の制御端子に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の充放電試験装置。
【請求項4】
前記第1のインダクタの両端に接続された第1の短絡スイッチと、
前記第2のインダクタの両端に接続された第2の短絡スイッチと、を含み、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には前記第1及び第2の短絡スイッチを共にオフ状態に設定し、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第1及び第2の短絡スイッチをオン状態に設定することで前記第1のインダクタの両端を短絡させると共に前記第2のインダクタの両端を短絡させることを特徴とする請求項2に記載の充放電試験装置。
【請求項5】
前記第1~第4のスイッチ素子の各々は、第1及び第2の信号端を有し、自身の制御端子に供給された制御信号に応じた電流を前記第1及び第2の信号端間に流すトランジスタであり、
前記第1のスイッチ素子の前記第2の信号端と前記第2のスイッチ素子の前記第1の信号端とが前記第1の接続点に接続されており、前記第3のスイッチ素子の前記第2の信号端と前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端とが前記第2の接続点に接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の充放電試験装置。
【請求項6】
前記第1及び第3のスイッチ素子各々の前記第1の信号端に前記電源ラインが接続されており、前記第4のスイッチ素子の前記第2の信号端に前記接地ラインが接続されており、
前記接地ラインに正極端子が接続されている直流電源と、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には、前記第3のスイッチ素子の前記第2の信号端を前記接地ラインと接続し、前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第3のスイッチ素子の前記第2の信号端を前記直流電源の負極端子に接続するセレクタと、を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の充放電試験装置。
【請求項7】
前記直流電源は、前記第2のスイッチ素子のオン抵抗値、第1のインダクタの抵抗値、前記シャント抵抗の抵抗値及び配線抵抗の抵抗値に伴う電圧降下分に、所定のマージン電圧を加えた電圧値を有する直流電圧を生成することを特徴とする請求項6に記載の充放電試験装置。
【請求項8】
前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端及び前記第2の信号端に接続された第3の短絡スイッチを含み、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第3の短絡スイッチをオン状態に設定することで前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端及び前記第2の信号端間を短絡させることを特徴とする請求項5~7のいずれか1に記載の充放電試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充放電させて試験する充放電試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
4つのスイッチ素子によって構成されたブリッジ回路を含む電力変換装置を用いて、二次電池の充放電特性を測定する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
当該電力変換装置は、互いに縦続に接続された第1及び第2のスイッチ素子と、互いに縦続に接続された第3及び第4のスイッチ素子と、が高電位ライン及び接地ライン間に並列に接続されてなるブリッジ回路、インダクタ、及び平滑用のコンデンサを含む。インダクタは、その一端が第1及び第2のスイッチ素子同士の接続点に接続されており、他端が第1の出力点に接続されている。第3及び第4のスイッチ素子同士の接続点には第2の出力点が接続されており、当該第1及び第2の出力点間に平滑用のコンデンサが接続されている。尚、当該インダクタとは別に、その一端が第3及び第4のスイッチ素子同士の接続点に接続されており、他端が第2の出力点に接続されている第2のインダクタが設けられている場合もある。
【0004】
ここで、充放電特性の測定対象となる二次電池の正極を第1の出力点に接続し、負極を第2の出力点に接続した状態で、先ず、第1及び第4のスイッチ素子をオン状態、第2及び第3のスイッチ素子をオフ状態に設定する。これにより、第1のスイッチ素子、インダクタ、第4のスイッチ素子からなる電流路を介して二次電池に充電電流が供給され、当該二次電池が充電状態となる。その後、第1及び第4のスイッチ素子をオフ状態、第2及び第3のスイッチ素子をオン状態に切り替えると、当該二次電池が放電し、第3のスイッチ素子、インダクタ、第2のスイッチ素子からなる電流路を介して放電電流が流れる。
【0005】
つまり、当該電力変換装置を用いて二次電池の充放電特性の試験を行う場合、上記したように第1~第4のスイッチ素子のオン・オフ状態を交互に切り替える(スイッチング方式と称する)ことで、試験対象となる二次電池を繰り返し充放電させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-243874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した電力変換装置によるスイッチング方式を採用した二次電池の充放電特性試験では、充電電流又は放電電流を検出し、この検出した充電電流又は放電電流に基づき、試験対象の二次電池の充放電特性を評価する。
【0008】
ところで、スイッチング方式によって二次電池を充放電させると、その充電電流及び放電電流に、スイッチング動作に起因するリップルやノイズが重畳される。
【0009】
この際、例えば電気自動車のバッテリ等の高出力型の二次電池を試験対象とした場合には、充電電流又は放電電流の大きさに占めるリップルやノイズの割合は微量となるので、検出した充電電流又は放電電流に基づき正当な評価を行うことができる。
【0010】
しかしながら、例えば携帯型の情報機器用の低出力型の二次電池を試験対象とした場合には、高出力型の二次電池を試験対象とした場合に比べて、充電電流又は放電電流の大きさに占めるリップル又はノイズの割合が高くなる。
【0011】
よって、低出力型の二次電池を試験対象とした場合には、スイッチング動作に伴うリップルやノイズに起因して、充放電特性の評価結果の信頼性が低くなるという問題があった。
【0012】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、高出力型及び低出力型のいずれの二次電池に対しても、信頼性の高い充放電特性の評価を行うことが可能な充放電試験装置を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る充放電試験装置は、二次電池に対して充放電試験を行う充放電試験装置であって、前記二次電池の両端を接続する第1及び第2の出力端子と、第1の接続点を介して互いに縦続に接続されている第1及び第2のスイッチ素子と、第2の接続点を介して互いに縦続に接続されている第3及び第4のスイッチ素子と、が電源ライン及び接地ライン間において並列に接続されているブリッジ回路と、シャント抵抗及び第1のインダクタを含み、前記第1の接続点から前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子を経由して前記第2の接続点に到る充放電電流路と、前記第1及び第2の出力端子間に接続されたコンデンサと、第1又は第2のモードを指定するモード信号を受け、前記モード信号に基づき前記第1~第4のスイッチ素子を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には、前記第1及び第4のスイッチ素子と、前記第2及び第3のスイッチ素子とを交互にオン及びオフさせるように前記第1~第4のスイッチ素子を制御し、前記第1及び第4のスイッチ素子のオン時間と前記第2及び第3のスイッチ素子のオン時間の時間比で充電制御または放電制御を行なう。前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には、前記第3のスイッチ素子をオフ状態、前記第4のスイッチ素子をオン状態に制御すると共に、充電制御時には前記第1のスイッチ素子に対して、放電制御時には前記第2のスイッチ素子に対して、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧を連続的に上下に変化させる制御を施す。尚、第4のスイッチ素子と並列に短絡スイッチを設け、モード信号が第2のモードを示す場合には、この短絡スイッチをオン状態に設定するようにしても良い。
【0014】
かかる構成により、試験対象となる二次電池が高出力型である場合には、第1~第4のスイッチ素子からなるブリッジ回路をスイッチング制御することで、当該二次電池を充放電させる。この際、充電電流又は放電電流にはスイッチング制御に伴うリップルやノイズが重畳するが、高出力型の二次電池を試験対象とした場合には、充電電流又は放電電流自体が大きいので、その電流の大きさに占めるリップルやノイズの割合は微量となる。よって、検出した充電電流又は放電電流に基づき信頼性の高い評価を行うことができる。
【0015】
一方、試験対象となる二次電池が低出力型である場合には、第3のスイッチ素子をオフ状態、第4のスイッチ素子をオン状態に設定すると共に、充電制御時には第1のスイッチ素子に対して、放電制御時には第2のスイッチ素子に対して、流す電流をオンまたはオフさせるスイッチング制御ではなく、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧を上下に変化させるようにブリッジ回路を制御することで、当該二次電池を充放電させる。したがって、試験対象となる二次電池が低出力型である場合には、スイッチング動作ではなく、シリーズレギュレート方式で動作するため、発生するリップル又はノイズが実質的にゼロになる。
【0016】
よって、本発明に係る充放電試験装置によれば、高出力型及び低出力型のいずれの二次電池に対しても、信頼性の高い充放電特性の評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る充放電試験装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図2】スイッチングモードでの充放電試験装置100の内部動作を表すタイムチャートである。
図3】スイッチングモード(充電行程)において充放電試験装置100の内部に流れる充電電流の経路を表す図である。
図4】スイッチングモード(放電行程)において充放電試験装置100の内部に流れる放電電流の経路を表す図である。
図5A】シリーズレギュレートモード(充電行程)において充放電試験装置100の内部動作を表すタイムチャートである。
図5B】シリーズレギュレートモード(放電行程)において充放電試験装置100の内部動作を表すタイムチャートである。
図6】シリーズレギュレートモード(充電行程)において充放電試験装置100の内部に流れる充電電流の経路を表す図である。
図7】シリーズレギュレートモード(放電行程)において充放電試験装置100の内部に流れる放電電流の経路を表す図である。
図8】充放電試験装置100の構成の他の一例を示すブロック図である。
図9】充放電試験装置100の構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る充放電試験装置について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、充放電試験装置100の構成を示すブロック図である。尚、図1では、試験対象となる二次電池BTが当該充放電試験装置100に接続された状態を表している。
【0020】
充放電試験装置100は、DCバイアス電源部21、制御部22、トランジスタQ1~Q4からなるブリッジ回路、セレクタSEL、直流電源B1、インダクタL1及びL2(L1のみの場合も含む)、短絡スイッチSW1及びSW2(L2が無い場合は不要となる)、シャント抵抗SR、及び平滑用のコンデンサC1を含む。
【0021】
DCバイアス電源部21は、スイッチングモード及びシリーズレギュレートモードのうちの一方を指定するモード信号MODを受ける。DCバイアス電源部21は、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、直流の電位V1(例えば数百ボルト)を有する電源電位VDDを電源ラインn0に印加すると共に、接地電位GNDを接地ラインn1に印加する。一方、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合には、電位V1よりも低い直流の電位V2(例えば数十ボルト)を有する電源電位VDDを電源ラインn0に印加すると共に、接地電位GNDを接地ラインn1に印加する。
【0022】
制御部22は、試験対象となる二次電池BTに充電及び放電を交互に生起させる制御信号g1~g4、またはアナログ出力制御信号ga1~ga2を生成する。尚、制御部22は、上記したモード信号MODを受け、当該モード信号MODがスイッチングモード及びシリーズレギュレートモードのいずれを示すのかによって、スイッチ出力制御信号g1~g4またはアナログ出力制御信号ga1~ga2の信号形態を変える。
【0023】
モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、制御部22は、トランジスタ(Q1~Q4)の閾値電圧より高い第1の電位及び当該閾値電圧より低い第2の電位が交互に表れる2値信号をスイッチ出力制御信号g1及びg4として生成すると共に、当該2値信号の位相を反転させた信号をスイッチ出力制御信号g2及びg3として生成する。
【0024】
一方、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合には、制御部22は、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号ga1及びga2を生成する。更に、制御部22は、トランジスタQ3の閾値電圧より低い所定の低電位の状態を維持するスイッチ出力制御信号g3、トランジスタQ4の閾値電圧より高い所定の高電位の状態を維持するスイッチ出力制御信号g4を生成する。
【0025】
制御部22は、上記のように生成したスイッチ出力制御信号g1またはアナログ出力制御信号ga1をトランジスタQ1のゲート(制御端子)に供給し、スイッチ出力制御信号g2またはアナログ出力制御信号ga2をトランジスタQ2のゲート(制御端子)に供給し、スイッチ出力制御信号g3をトランジスタQ3のゲート(制御端子)に供給し、スイッチ出力制御信号g4をトランジスタQ4のゲート(制御端子)に供給する。
【0026】
トランジスタQ1~Q4の各々は、スイッチ素子としての例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる。尚、トランジスタQ1~Q4の各々としては、バイポーラトランジスタ又はFET(Field Effect Transistor)等のスイッチ素子を用いても良い。
【0027】
トランジスタQ1のコレクタは電源ラインn0に接続されており、当該電源ラインn0を介して電源電位VDDを受ける。トランジスタQ1のエミッタは、ノードn11を介してトランジスタQ2のコレクタに接続されている。トランジスタQ1は、自身のゲートに供給されたスイッチ出力制御信号g1またはアナログ出力制御信号ga1に応じてオン状態又はオフ状態に設定される。トランジスタQ1は、オン状態に設定された場合(トランジスタQ4がオン時)に、電源電位VDDに基づく電流を充電電流として、自身のエミッタからノードn11に送出する。
【0028】
トランジスタQ2のエミッタはセレクタSELに接続されている。トランジスタQ2は、自身のゲートに供給されたスイッチ出力制御信号g2またはアナログ出力制御信号ga2に応じてオン状態又はオフ状態に設定される。トランジスタQ2は、オン状態に設定された場合(トランジスタQ3がオン時)に、ノードn11を介して供給された電流を、自身のエミッタからセレクタSELに送出する。
【0029】
セレクタSELは、例えばトランスファ接点式のリレー等からなる。セレクタSELは、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、トランジスタQ2のエミッタを接地ラインn1に接続する。すなわち、この際、トランジスタQ2のエミッタには、当該接地ラインn1を介して接地電位GNDが印加される。一方、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合には、セレクタSELは、トランジスタQ2のエミッタを直流電源B1の負極端子に接続する。
【0030】
直流電源B1は、トランジスタQ2のオン抵抗値、シャント抵抗SRの抵抗値、及びこれを接続する配線抵抗の抵抗値に伴う電圧降下分に、所定のマージン電圧を加えた直流の電圧Vmを発生する。ここで、図1に示すように直流電源B1の正極端子は接地ラインn1に接続されている。よって、トランジスタQ2のエミッタがセレクタSELを介して直流電源B1の負極端子に接続されている場合には、当該トランジスタQ2のエミッタには、接地電位に対して負極性の電位を有する負極性バイアス電位(-Vm)が印加される。
【0031】
トランジスタQ3のコレクタは電源ラインn0に接続されており、当該電源ラインn0を介して電源電位VDDを受ける。トランジスタQ3のエミッタは、ノードn12を介してトランジスタQ4のコレクタに接続されている。トランジスタQ3は、自身のゲートに供給されたスイッチ出力制御信号g3に応じてオン状態又はオフ状態に設定される。トランジスタQ3は、オン状態に設定された場合(トランジスタQ2がオン時)に、試験対象となる二次電池BTの放電に伴い流れる放電電流を、自身のエミッタからノードn12に送出する。
【0032】
トランジスタQ4のエミッタは接地ラインn1に接続されている。トランジスタQ4は、自身のゲートに供給されたスイッチ出力制御信号g4に応じてオン状態又はオフ状態に設定される。トランジスタQ4は、オン状態に設定された場合(トランジスタQ1がオン時)に、ノードn12を介して供給された充電電流を、自身のエミッタから接地ラインn1に送出する。
【0033】
インダクタL1の一端はノードn11に接続されており、その他端はシャント抵抗SRの一端に接続されている。
【0034】
短絡スイッチSW1は、例えば半導体リレー、機械式のリレー、又はフォトカプラー等の無接点リレー等からなり、インダクタL1の両端に接続されている。短絡スイッチSW1は、上記したモード信号MODを受け、当該モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合にオン状態となって、インダクタL1の両端を短絡する。一方、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、短絡スイッチSW1はオフ状態となり、インダクタL1の両端の短絡状態を解除する。
【0035】
シャント抵抗SRの他端には正側出力端子TM0が接続されている。シャント抵抗SR(または電流を検出するための電流センサなどでもよい)は、充放電試験において、二次電地BTに供給される充電電流、及び当該二次電地BTから送出される放電電流の電流量を検出する為に設けられたものであり、当該放電電流及び充電電流を検出する電流計(図示せず)が接続されている。
【0036】
平滑用のコンデンサC1は、その一端が正側出力端子TM0に接続されており、他端が負側出力端子TM1に接続されている。
【0037】
尚、充放電試験時には、図1に示すように、試験対象となるバッテリBTの正極端子が正側出力端子TM0に接続され、当該バッテリBTの負極端子が負側出力端子TM1に接続される。
【0038】
インダクタL2の一端はノードn12に接続されており、その他端は負側出力端子TM1に接続されている。
【0039】
短絡スイッチSW2は、例えば半導体リレー、機械式のリレー、又はフォトカプラー等の無接点リレー等からなり、インダクタL2の両端に接続されている。短絡スイッチSW2は、上記したモード信号MODを受け、当該モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合にオン状態となって、インダクタL2の両端を短絡する。一方、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、短絡スイッチSW2はオフ状態となり、インダクタL2の両端の短絡状態を解除する。
【0040】
以下に、充放電試験装置100による充放電試験の動作について、試験対象となるバッテリBTが、高出力(数百ボルト)型のバッテリである場合と、低出力(数ボルト~十数ボルト)型のバッテリである場合とに分けて詳細に説明する。尚、充放電試験では、バッテリBTを充電させる充電行程と、放電させる放電行程と、を交互に実行しつつ、当該充電行程においてバッテリBTに供給された充電電流、及び放電行程においてバッテリBTから送出された放電電流の検出を行う。
【0041】
先ず、高出力型のバッテリを試験対象とした場合における充放電試験ついて、充放電試験装置100の内部動作を表す図2に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0042】
[高出力型バッテリの充放電試験]
試験対象となるバッテリBTが高出力型である場合には、スイッチングモードを示すモード信号MODを充放電試験装置100に供給する。これにより、DCバイアス電源部21は、バッテリBTが生成する電圧より高い電位V1を有する電源電位VDDを電源ラインn0に印加する。
【0043】
また、スイッチングモードを示すモード信号MODに応じて、短絡スイッチSW1及びSW2は、図2に示すように共にオフ状態となり、セレクタSELは、トランジスタQ2のエミッタを接地ラインn1に接続した状態となる。
【0044】
また、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合、制御部22は、図2に示すように、高電位VHを維持する状態と、低電位VLを維持する状態とが交互に繰り返し表われる2値のPWM信号をスイッチ出力制御信号g1及びg4として生成する。更に、制御部22は、図2に示すように、当該PWM信号の位相を反転させた信号を、スイッチ出力制御信号g2及びg3として生成する。
【0045】
この際、図2に示すように、トランジスタQ1は、スイッチ出力制御信号g1が高電位VHを維持している間に亘りオン状態となり、当該スイッチ出力制御信号g1が低電位VLを維持している間に亘りオフ状態となる。トランジスタQ2は、スイッチ出力制御信号g2が高電位VHを維持している間に亘りオン状態となり、当該スイッチ出力制御信号g2が低電位VLを維持している間に亘りオフ状態となる。トランジスタQ3は、スイッチ出力制御信号g3が高電位VHを維持している間に亘りオン状態となり、当該制御信号g3が低電位VLを維持している間に亘りオフ状態となる。トランジスタQ4は、スイッチ出力制御信号g4が高電位VHを維持している間に亘りオン状態となり、当該制御信号g4が低電位VLを維持している間に亘りオフ状態となる。
【0046】
よって、スイッチングモードでは、図2に示すように、トランジスタQ1及びQ4がオン状態、トランジスタQ2及びQ3がオフ状態となる充電行程CY1と、トランジスタQ2及びQ3がオン状態、トランジスタQ1及びQ4がオフ状態となる放電行程CY2と、が交互に繰り返し実施される。
【0047】
当該充電行程CY1では、図3の太線矢印に示すように、電源ラインn0、トランジスタQ1、インダクタL1、シャント抵抗SR、正側出力端子TM0、負側出力端子TM1、インダクタL2、トランジスタQ4、及び接地ラインn1からなる電流路を介して、バッテリBTに充電電流が供給される。よって、充電行程CY1の期間に亘り、バッテリBTが当該充電電流によって充電される。この際、シャント抵抗SRによって検出される充電電流は、インダクタL1、L2及びコンデンサC1からなるLC回路により、図2に示すように充電行程CY1の開始時点から終了時点までの間に亘り徐々に増加する。
【0048】
一方、放電行程CY2では、図4の太線矢印に示すように、電源ラインn0、トランジスタQ3、インダクタL2、負側出力端子TM1、正側出力端子TM0、シャント抵抗SR、インダクタL1、トランジスタQ2、セレクタSEL、接地ラインn1からなる電流路が形成される。これにより、バッテリBTが放電し、その放電に伴う放電電流が送出される。この際、シャント抵抗SRに流れる放電電流は、上記した充電電流とは逆向きに流れる。よって、当該シャント抵抗SRによって検出される放電電流は、インダクタL1、L2及びコンデンサC1からなるLC回路により、図2に示すように、放電行程CY2の開始時点から終了時点までの間に亘り徐々に低下する。
【0049】
このように、スイッチングモードでは、トランジスタQ1及びQ4のオン時間と、トランジスタQ2及びQ3のオン時間の時間比で充電制御または放電制御を行なう。
【0050】
次に、低出力型のバッテリを試験対象とした場合における充放電試験ついて、充放電試験装置100の内部動作を表す図5A及び図5Bに示すタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0051】
[低出力型バッテリの充放電試験]
試験対象となるバッテリBTが低出力型である場合には、シリーズレギュレートモードを示すモード信号MODを充放電試験装置100に供給する。これにより、DCバイアス電源部21は、バッテリBTが生成する電圧より高い電位V2(V2<V1)を有する電源電位VDDを電源ラインn0に印加する。
【0052】
また、シリーズレギュレートモードを示すモード信号MODに応じて、短絡スイッチSW1及びSW2は、図5A又は図5Bに示すように共にオン状態となり、インダクタL1の両端を短絡すると共にインダクタL2の両端を短絡する。更に、セレクタSELは、トランジスタQ2のエミッタを直流電源B1の負極端子に接続した状態となる。よって、トランジスタQ2のエミッタには、負極性バイアス電位(-Vm)が印加される。
【0053】
また、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合には、制御部22は、図5Aに示すように、充電行程において、トランジスタQ1のゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号ga1を生成する。
【0054】
尚、図5Aに示す一例では、充電行程においてアナログ出力制御信号ga1は、その信号レベルが接地電位GNDの状態から閾値電圧Vthより高い電位Vgc1に上昇すると、充電電流が流れ始める。引き続き当該電位Vgc1より高い電位Vgc2に上昇するとゲート電位に相当する充電電流まで上昇する。また、ゲート電位が閾値電圧Vth以下まで下降すると充電電流は流れなくなる。この際、制御部22は、図5Aに示すように、アナログ出力制御信号ga2の信号レベルを、接地電位GND、またはスイッチング素子で保証されている範囲内のマイナスバイアス電位に維持する。
【0055】
また、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合、制御部22は、図5Bに示すように、放電行程において、トランジスタQ2のゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号ga2を生成する。尚、図5Bに示す一例では、放電行程においてアナログ出力制御信号ga2は、その信号レベルが接地電位GNDの状態から閾値電圧Vthより高い電位Vgd1に上昇すると放電電流が流れ始める。引き続き当該電位Vgd1より高い電位Vgd2に上昇するとゲート電位に相当する放電電流まで上昇する。また、ゲート電位が閾値電圧Vth以下まで下降すると放電電流は流れなくなる。この際、制御部22は、図5Bに示すように、アナログ出力制御信号ga1の信号レベルを接地電位GND(またはスイッチング素子で保証されている範囲内のマイナスバイアス電位)に維持する。
【0056】
尚、図5A及び図5Bに示す一例では、アナログ出力制御信号ga1及びga2は、その信号レベルを段階的に上下に変化させている。しかしながら、アナログ出力制御信号ga1及びga2としては、閾値電圧Vthを境にして上下に且つ徐々に信号レベルが変化する例えば正弦波状の信号を採用しても良く、その波形自体は限定されない。
【0057】
よって、図5Aに示す充電行程では、図6の太線矢印に示すように、電源ラインn0、トランジスタQ1、短絡スイッチSW1、シャント抵抗SR、正側出力端子TM0、負側出力端子TM1、短絡スイッチSW2、トランジスタQ4、及び接地ラインn1からなる電流路を介して、バッテリBTに充電電流が供給される。これにより、バッテリBTが当該充電電流によって充電される。この際、充電行程において、シャント抵抗SRによって検出される充電電流は、図5Aに示すように、トランジスタQ1のゲートに供給されるスイッチ出力制御信号g1の信号レベルに追従したものとなる。例えば、図5Aに示すように、電位Vgc1(Vgc1>Vth)のアナログ出力制御信号ga1がトランジスタQ1のゲートに供給されている間は、トランジスタQ1がオン状態となり、当該電位Vgc1に対応した電流値Ic1の充電電流を送出する。よって、当該電流値Ic1の充電電流がシャント抵抗SRを介して検出される。その後、図5Aに示すように、アナログ出力制御信号ga1の信号レベルが電位Vgc2に上昇すると、トランジスタQ1は、当該電位Vgc2に対応した電流値Ic2の充電電流を送出するので、この電流値Ic2の充電電流がシャント抵抗SRを介して検出される。その後、アナログ出力制御信号ga1の信号レベルが接地電位GND(GND<Vth)に下がると、図5Aに示すように、トランジスタQ1はオフ状態となり、充電電流の電流値がゼロになり、これがシャント抵抗SRを介して検出される。
【0058】
一方、図5Bに示す放電行程では、図7の太線矢印に示すように、正側出力端子TM0、シャント抵抗SR、短絡スイッチSW1、トランジスタQ2、セレクタSEL、直流電源B1、トランジスタQ4、短絡スイッチSW2、及び負側出力端子TM1からなる電流路が形成される。これにより、バッテリBTが放電し、その放電に伴う放電電流がバッテリBTから送出される。この際、放電行程において、シャント抵抗SRによって検出される放電電流は、図5Bに示すように、トランジスタQ2のゲートに供給されるアナログ出力制御信号ga2の信号レベルに追従したものとなる。更に、シャント抵抗SRにおいて、上記した充電電流とは逆方向に流れる。よって、例えば、図5Bに示すように、電位Vgd1(Vgd1>Vth)のアナログ出力制御信号ga2がトランジスタQ2のゲートに供給されている間は、トランジスタQ2がオン状態となり、当該電位Vgd1に対応した電流値Id1の放電電流が上記した充電電流とは逆方向に流れる。よって、シャント抵抗SRを介して負極性の電流値Id1の放電電流が検出される。その後、図5Bに示すように、アナログ出力制御信号ga2の信号レベルが電位Vgd2に上昇すると、トランジスタQ2は、当該電位Vgd2に対応した電流値Id2の放電電流を送出する。よって、シャント抵抗SRを介して、負極性の電流値Id2の放電電流が検出される。当該放電に伴いバッテリBTの電圧は徐々に低下する。
【0059】
尚、充放電試験装置100では、直流電源B1を設けることで、シリーズレギュレートモード時において、バッテリBTの電圧値がゼロになるまでバッテリBTを放電させるという放電試験を可能としている。仮に、直流電源B1が設けられていない場合には、トランジスタQ2のエミッタには接地電位GNDが印加されることになる。この際、バッテリBTの放電に伴い、当該バッテリBTの電圧値が、トランジスタQ2のオン抵抗値、インダクタL1の抵抗値、シャント抵抗SRの抵抗値、及び配線抵抗の抵抗値に伴う電圧降下分の電圧値まで低下すると、その時点でトランジスタQ2がオフ状態となる。よって、バッテリBTの電圧値がゼロに到る前に放電試験が終了してしまう。
【0060】
そこで、充放電試験装置100では、シリーズレギュレートモード時には、接地電位GNDに代えて、直流電源B1で生成した負極性バイアス電位(-Vm)をトランジスタQ2のエミッタに印加することで、バッテリBTの電圧値がゼロになるまで放電を継続可能にしている。
【0061】
また、上記実施例では、シリーズレギュレートモード時には、トランジスタQ4をオン状態に固定設定することで、充電電流及び放電電流に共通の電流路を形成している。しかしながら、この際、当該トランジスタQ4のコレクタ・エミッタ間電圧が大きくなる場合には、例えばトランジスタQ4の電力損失が大きくなり、当該トランジスタQ4の発熱が規定温度を超える可能性がある。そこで、このような場合には、トランジスタQ4のコレクタ・エミッタ間に機械式リレーを並列に接続し、当該機械式リレーをオン状態に設定することで、ノードn12及び接地ラインn1間の電流路を形成するようにしても良い。
【0062】
図8は、かかる点に鑑みて為された充放電試験装置100の他の一例を示すブロック図である。
【0063】
尚、図8に示す構成では、例えば機械式リレー等からなるスイッチ素子SW3を新たに設けると共に、制御部22に代えて制御部22aを採用した点を除く他の構成は、図1に示すものと同一である。
【0064】
制御部22aは、モード信号MODがスイッチングモードを示す場合には、制御部22と同様なスイッチ出力制御信号g1~g4をトランジスタQ1~Q4に供給すると共に、スイッチ素子SW3をオフ状態に設定する制御信号SSをスイッチ素子SW3に供給する。つまり、スイッチ素子SW3は、スイッチングモード時にはオフ状態に固定設定される。
【0065】
一方、モード信号MODがシリーズレギュレートモードを示す場合には、制御部22aは、制御部22と同様なスイッチ出力制御信号g3をトランジスタQ3に供給し、アナログ出力制御信号ga1~ga2をトランジスタQ1~2に供給する。更に、この際、制御部22aは、トランジスタQ4をオフ状態に設定するスイッチ出力制御信号g4を当該トランジスタQ4に供給すると共に、スイッチ素子SW3をオン状態に設定する制御信号SSをスイッチ素子SW3に供給する。これにより、シリーズレギュレートモード時には、スイッチ素子SW3によってノードn12及び接地ラインn1間の電流路が形成される。シリーズレギュレートモード時におけるトランジスタQ4の高温化が回避される。
【0066】
尚、上記した実施例において充放電試験装置100では、試験対象のバッテリBTを接続する為の正側出力端子TM0及び負側出力端子TM1と、ブリッジ回路(Q1~Q4)との間をインダクタL1及びL2を介して接続しているが、いずれか一方のインダクタを省いても良い。
【0067】
図9は、かかる点に鑑みて為された充放電試験装置100の変形例を示す回路図である。尚、図9に示す構成では、ブリッジ回路(Q1~Q4)のノードn12(ブリッジ回路の第2の接続点)と、負側出力端子TM1との間に接続されていたインダクタL2及び短絡スイッチSW2を省いた点を除く他の構成は図1に示すものと同一である。
【0068】
以上、詳述したように、充放電試験装置100は、試験対象となる二次電池を接続する為の第1及び第2の出力端子と、以下のようなブリッジ回路、充放電電流路、コンデンサ、及び当該ブリッジ回路を制御する制御部を備えている。
【0069】
すなわち、ブリッジ回路は、第1の接続点(n11)を介して互いに縦続に接続されている第1のスイッチ素子(Q1)及び第2のスイッチ素子(Q2)と、第2の接続点(n12)を介して互いに縦続に接続されている第3のスイッチ素子(Q3)及び第4のスイッチ素子(Q4)とが、電源ライン(n0)及び接地ライン(n1)間において並列に接続されたものである。充放電電流路は、シャント抵抗(SR)及び第1のインダクタ(L1)を含み、第1の接続点(n11)から第1の出力端子(TM0)及び第2の出力端子(TM1)を経由して第2の接続点(n12)まで配される。コンデンサ(C1)は、第1及び第2の出力端子間に接続されている。制御部(22)は、第1のモード(スイッチングモード)又は第2のモード(シリーズレギュレートモード)を指定するモード信号(MOD)を受け、このモード信号に基づき第1~第4のスイッチ素子を制御する。すなわち、制御部は、モード信号が第1のモードを示す場合には、第1及び第4のスイッチ素子と、第2及び第3のスイッチ素子とを交互にオン及びオフさせる2値のスイッチ出力制御信号を第1~第4のスイッチ素子各々の制御端子(ゲート)に供給することで、試験対象の二次電池(BT)を充放電させる。
【0070】
一方、モード信号が第2のモードを示す場合には、制御部は、第3のスイッチ素子をオフ状態、第4のスイッチ素子をオン状態に設定すると共に、第1及び第2のスイッチ素子をオンまたはオフさせるスイッチング制御ではなく、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号を第1及び第2のスイッチ素子に供給する。すなわち、制御部は、充電制御時には第1のスイッチ素子に対して、放電制御時には第2のスイッチ素子に流す電流を、オンまたはオフさせるスイッチング制御ではなく、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧を連続的に上下に変化させるアナログ出力制御を第1及び第2のスイッチ素子に施すことで、試験対象の二次電池を充放電させる。
【0071】
かかる構成により、試験対象となる二次電池(BT)が高出力(数百ボルト)型である場合には、第1のモード(スイッチングモード)でブリッジ回路の各スイッチ素子(Q1~Q4)をスイッチング制御する。尚、第1のモードでブリッジ回路を制御すると、スイッチング動作に伴い発生するリップルやノイズが充電電流及び放電電流に重畳される。しかしながら、高出力型の二次電池を試験対象とした場合には、充電電流又は放電電流が大きいので、その電流の大きさに占めるリップルやノイズの割合は微量となる。よって、検出した充電電流又は放電電流に基づき信頼性の低下を招くことなく、充放電特性の評価を行うことができる。
【0072】
一方、試験対象となる二次電池(BT)が低出力(数ボルト~数十ボルト)型である場合には、第2のモード(シリーズレギュレートモード)でブリッジ回路(Q1~Q4)を制御する。つまり、第2のモードでは、第1のスイッチ素子(Q1)又は第2のスイッチ素子(Q2)に流れる電流を上下に且つ徐々に変化させるように第1及び第2のスイッチ素子を制御することで、上記したようなスイッチング動作ではなく、シリーズレギュレート方式で動作するため、発生するリップル又はノイズを実質的にゼロにする。
【0073】
よって、本発明に係る充放電試験装置によれば、高出力型及び低出力型のいずれの二次電地に対しても、信頼正の高い充放電特性の評価を行うことが可能となる。
【0074】
尚、上記した実施例では、第1~第4のスイッチ素子としてトランジスタを用いているが、少なくとも第1及び第2のスイッチ素子(Q1、Q2)がトランジスタであれば、第3及び第4のスイッチ素子はリレーであっても構わない。
【符号の説明】
【0075】
22 制御部
100 充放電試験装置
B1 直流電源
BT バッテリ
L1、L2 インダクタ
Q1~Q4 トランジスタ
SR シャント抵抗
SEL セレクタ
SW1、SW2 短絡スイッチ
TM0、TM1 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に対して充放電試験を行う充放電試験装置であって、
前記二次電池の両端を接続する第1及び第2の出力端子と、
第1の接続点を介して互いに縦続に接続されている第1及び第2のスイッチ素子と、第2の接続点を介して互いに縦続に接続されている第3及び第4のスイッチ素子と、が電源ライン及び接地ライン間において並列に接続されているブリッジ回路と、
シャント抵抗及び第1のインダクタを含み、前記第1の接続点から前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子を経由して前記第2の接続点に到る充放電電流路と、
前記第1及び第2の出力端子間に接続されたコンデンサと、
第1又は第2のモードを指定するモード信号を受け、前記モード信号に基づき前記第1~第4のスイッチ素子を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には、前記第1及び第4のスイッチ素子と、前記第2及び第3のスイッチ素子とを交互にオン及びオフさせるように前記第1~第4のスイッチ素子を制御し、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には、前記第3のスイッチ素子をオフ状態、前記第4のスイッチ素子をオン状態に制御すると共に、充電制御時には前記第1のスイッチ素子に対して、放電制御時には前記第2のスイッチ素子に対して、ゲートしきい値電圧以上のアナログ電圧を連続的に上下に変化させる制御を施すことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項2】
前記第1のインダクタは前記充放電電流路中の前記第1の接続点及び前記第1の出力端子間に接続されており、
前記充放電電流路は、前記第2の接続点及び前記第2の出力端子間に接続されている第2のインダクタを含むことを特徴とする請求項1に記載の充放電試験装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のスイッチ素子はトランジスタであり、
前記制御部は、前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には、前記第1のスイッチ素子又は前記第2のスイッチ素子のしきい値電圧以上のアナログ電圧が上下に変化するアナログ出力制御信号を前記第1及び第2のスイッチ素子の制御端子に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の充放電試験装置。
【請求項4】
前記第1のインダクタの両端に接続された第1の短絡スイッチと、
前記第2のインダクタの両端に接続された第2の短絡スイッチと、を含み、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には前記第1及び第2の短絡スイッチを共にオフ状態に設定し、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第1及び第2の短絡スイッチをオン状態に設定することで前記第1のインダクタの両端を短絡させると共に前記第2のインダクタの両端を短絡させることを特徴とする請求項2に記載の充放電試験装置。
【請求項5】
前記第1~第4のスイッチ素子の各々は、第1及び第2の信号端を有し、自身の制御端子に供給された制御信号に応じた電流を前記第1及び第2の信号端間に流すトランジスタであり、
前記第1のスイッチ素子の前記第2の信号端と前記第2のスイッチ素子の前記第1の信号端とが前記第1の接続点に接続されており、前記第3のスイッチ素子の前記第2の信号端と前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端とが前記第2の接続点に接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の充放電試験装置。
【請求項6】
前記第1及び第3のスイッチ素子各々の前記第1の信号端に前記電源ラインが接続されており、前記第4のスイッチ素子の前記第2の信号端に前記接地ラインが接続されており

前記接地ラインに正極端子が接続されている直流電源と、
前記モード信号が前記第1のモードを示す場合には、前記第のスイッチ素子の前記第2の信号端を前記接地ラインと接続し、前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第のスイッチ素子の前記第2の信号端を前記直流電源の負極端子に接続するセレクタと、を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の充放電試験装置。
【請求項7】
前記直流電源は、前記第2のスイッチ素子のオン抵抗値、第1のインダクタの抵抗値、前記シャント抵抗の抵抗値及び配線抵抗の抵抗値に伴う電圧降下分に、所定のマージン電圧を加えた電圧値を有する直流電圧を生成することを特徴とする請求項6に記載の充放電試験装置。
【請求項8】
前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端及び前記第2の信号端に接続された第3の短絡スイッチを含み、
前記制御部は、
前記モード信号が前記第2のモードを示す場合には前記第3の短絡スイッチをオン状態に設定することで前記第4のスイッチ素子の前記第1の信号端及び前記第2の信号端間を短絡させることを特徴とする請求項5~7のいずれか1に記載の充放電試験装置。