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特開2022-95509シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法
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  • 特開-シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法 図1
  • 特開-シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法 図2
  • 特開-シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法 図3
  • 特開-シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095509
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】シート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 5/12 20060101AFI20220621BHJP
   E01C 23/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
E01C5/12
E01C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220003
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】593012479
【氏名又は名称】株式会社雄交
(72)【発明者】
【氏名】中村 盛一
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
【Fターム(参考)】
2D051AC02
2D051AD07
2D051AG01
2D051AG03
2D051AG11
2D051DA13
2D051DB01
2D051DB02
2D051DC01
2D051DC09
2D053AA09
2D053AA14
2D053AD03
2D053CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シート型高粘度アスファルト混合物補修材の品質を向上させることができる製造方法を提供する。
【解決手段】シート型高粘度アスファルト混合物6に骨材を混練する工程において、電気ヒータ1で加熱するとともに骨材を加熱することで均一に骨材を混練した後プレスで押圧することで品質の安定したシート型高粘度アスファルト混合物補修材が製造可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の高粘度特殊アスファルト混合物を電気ヒータで加熱する工程、細骨材を前記シート状高粘度特殊アスファルト混合物上に均一に散布する工程、前記細骨材を均一に散布した前記シート状の高粘度特殊アスファルト混合物を加圧する工程からなるシート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、シート状の高粘度特殊アスファルト混合物を電気ヒータで加熱後に、前記細骨材を加熱する工程を加えた請求項1に記載のシート状高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、シート状高粘度特殊アスファルト混合物を専用トレイに収納する工程を加えた請求項1に記載のシート状の高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路補修用に用いるシート状のアスファルト混合物舗装補修材の品質向上に関する製造方法を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
社会資本である道路舗装もその蓄積とともに老朽化が進んでおり、社会生活産業の維持のためには、道路の新設よりも、既存の道路補修の維持管理を効率的に行う必要がある。特に最近では、交通車両の大型化や交通量の増大によって、舗装体が受ける損傷も大きくなっており、舗装体の損傷に応じた適切な補修を適切な時期に行わないと、道路の寿命そのものが短くなる危険性が高まっている。
【0003】
現在の道路の維持管理に関する問題は、過去に建設された大量の道路舗装が同時に修繕時期を迎えていることである。舗装の補修は早期発見、早期補修が望ましいが、現状では補修箇所が大量に発生しているため、その全てに対応しきれていない。舗装の破損は、線状のひび割れから発生するものが多い。小さいひび割れを補修せずに放置すると、ひび割れは亀甲状に成長し、その後表面のアスファルト層の剥脱が発生する。アスファルト層の剥脱が発生すると舗装としての機能は失われ、車両の安全な走行は確保できなくなる。現在は局所的に亀甲状のひび割れが増加している傾向にあり、適切な補修工法が求められている。
【0004】
亀甲状のひび割れに対して、従来の補修では、アスファルト合材工場出荷の加熱アスファルト混合物によるオーバレイ工法や袋入り常温合材による応急補修が適用されているが、これらの工法には経済性や施工性、効果の継続性などの点で一長一短がある。オーバレイ工法は、破損した表層部分を切削して、新しい表層を舗設する工法で舗装表面を新設と同様の状態に回復できる。しかし、施工面積が大きくなり、かつ破損していない個所も切削するため、費用及び時間が多大に必要となり、かつ産業廃棄物となる舗装廃材も大量に発生する。袋入り常温合材による補修では、袋から常温合材と取り出して、敷き均し、転圧することで補修は完了する。比較的簡便な補修が可能であるが、骨材同士の結合力が低いため、耐久性は低く、ひび割れが再発しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-95434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、シート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材が発明されており、施工における簡便性と交通荷重に対する耐久性が実現されている。まず、施工における簡便性の実現であるが、これは補修材を、接着層を有するシート型とすることで解決している。特許文献1におけるシート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材のシートの大きさは一辺約50cmを基準とし、厚さは約5mmである。接着層には離形紙が貼付されており、使用する際には、離形紙を剥がし、接着面と補修面を接着させる。接着させる際には補修面をガスバーナーなどで予め加熱させて接着性を高めておく。持ち運びが可能な大きさにして、下面に接着層を持つシート型舗装補修材としたことで、施工の簡便性を有する性能となっている。
【0007】
次に、交通荷重に対する耐久性の実現を図る上で、シート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材は、この補修材が張り付けられるひび割れ破損個所の上下方向の動きに追従する弾力性と交通荷重の圧縮力に対する変形抵抗性を兼ね備える必要がある。すなわち、繰り返し発生する変位に耐えうる弾性と繰り返し荷重に耐えうる剛性という相反する性能を有する必要がある。特許文献1では、基材に高粘度特殊アスファルトを結合材としたアスファルト混合物を使い、その表面に細骨材を散布することで前述の弾性と剛性を兼ねえた性能を獲得している。表面に散布される細骨材は、シート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材が、交通荷重を受けた際に変形することを防止することに寄与している。加えて、タイヤに対して適度な摩擦を発生させて、雨天時における車両通行の安全性を確保している。特許文献1によるシート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材、舗装表面のひび割れの補修に際し、簡便な施工性と長期における供用性の確保を実現している特許文献1においては、シート型高粘度特殊高粘度特殊アスファルト混合物と細骨材を混練する工程において、シート型高粘度特殊アスファルトをガスバーナで加熱した後、細骨材を均一に散布し、プレスで加圧する方法で行っている。
【0008】
シート状の高粘度特殊アスファルト混合物の加熱をガスバーナを利用して人手で行っているため、シート状の高粘度特殊アスファルト混合物の表面全体を均一な温度に加熱することが困難となっている。特にシートの周辺部の温度を均一にすることが困難で、周辺部の温度が高くなり過ぎると、シート状の高粘度特殊アスファルト混合物の側面に細骨材が付着するという問題も発生し、側面に付着した細骨材を取り除く工程が必要となっている
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート型高粘度特殊アスファルト混合物と細骨材を混練する工程において、電気ヒータを活用することにより実現されたものである。電気ヒータを用いれば、広い面積を均一な温度にすることが可能となる。シート状の高粘度特殊アスファルト混合物及び骨材の保存温度の変化や加工環境の季節による温度変化に対いても対応が容易である。
【発明の効果】
【0010】
シート型高粘度特殊アスファルト混合物と細骨材を混練する工程において、制御が簡単な電気ヒータで加熱する手段により、シート型高粘度特殊アスファルト混合物と細骨材を均一に混練することが可能となり、特許文献1によるシート型高粘度特殊アスファルト混合物舗装補修材の品質が向上する。加えて、シート状の高粘度特殊アスファルト混合物の側面に付着した細骨材を取り除く工程を省くことができる。
【0011】
加工環境の季節による温度変化に対しては、電気ヒータの加熱温度または加熱時間を制御することで対応が可能であり。電気ヒータの加熱温度を熱電対を使って制御することで自由な温度に加熱することが可能であり、加熱時間はタイマーを用いることで制御可能である。細骨材の保存温度の変化に対しては、細骨材を所定の温度に加熱することで対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明におけるシート型高粘度アスファルト混合物を加熱する工程を説明する図
図2】本発明におけるシート型高粘度アスファルト混合物に細骨材を散布した断面図
図3】本発明に加圧工程を説明する図
図4】本発明におけるシート型高粘度アスファルト混合物補修材を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する高粘度アスファルトとは、製油所で製造される石油系アスファルトにゴム及び熱可塑性高分子材料を添加した改質されたアスファルトである。本発明で使用するシート型高粘度特殊アスファルト混合物は、細骨材と前述の高粘度アスファルトを混練することで製造される。細骨材は粒径が0~5mmのものを使用する。細骨材と高粘度アスファルトの混合割合は、細骨材100重量部に対して、5~40の重量部である。この配合割合は使用箇所の気候や交通条件によって変動する。例えば、気温が高く、交通量が多い場所には、高粘度アスファルトの配合割合は少なくなる。また、気温が低く、交通量が少ない場所では、高粘度アスファルトの配合割合は多くなる。
【0014】
使用材料のうち、高粘度アスファルト混合物の表面に散布する細骨材は、その使用が可能であれば、舗装廃材から回収される再生細骨材が望ましい。再生細骨材は、表面にアスファルトが微量付着しており、高粘度アスファルト混合物との接着性が良いからである。散布量は、使用箇所に応じて調整を行うが、表面のすべり抵抗性を確保する観点から約0.2g/cm~0.4g/cmとする。
【0015】
シート型高粘度特殊アスファルト混合物の形状は、通常は、一辺の長さが約20cm~1mの正方形で、厚さは7~10mmである。この程度の大きさにすることで、補修現場で容易に持ち運びができ、施工も簡単に行うことができる。
【0016】
次に図1を用いてシート型高粘度特殊アスファルト混合物6を加熱する工程について説明する。シート型高粘度特殊アスファルト混合物6はトレイ7に収納した状態で、電気ヒータ1で加熱する。電気ヒータ1の下部に設けた熱電対5により電気ヒータ1の加熱温度を測定している。熱電対5は温度調節器2に接続されており、加熱温度を設置する機能を有している。電気ヒータ5には電気ヒータ用電源4が接続されており、電気ヒータ5を加熱するための電気を供給するものである。電気ヒータ用電源4はタイマー3が接続されており、電気の供給と遮断を制御している。
【0017】
電気ヒータ1はセラミックボードにヒータ線を組み込んだ構造としているが、金属管にヒータ線を内部に収納した構造のものであっても良い。図1において、ヒータ1は加熱する時にシート型高粘度特殊アスファルト混合物6の上面に配置し、加熱が完了するとシート型高粘度特殊アスファルト混合物6の上面から移動させている。
【0018】
シート型高粘度特殊アスファルト混合物6の加熱温度は高粘度特殊アスファルトが溶け始める温度より10度~30度程度高く設定することが望ましい。温度が高すぎるとシート型高粘度特殊アスファルト混合物6に含まれる高粘度特殊アスファルトが周囲に広がりシート型高粘度特殊アスファルト混合物6の形状が変形することが考えられ、温度が低すぎるとシート型高粘度特殊アスファルト混合物6に含まれる高粘度特殊アスファルトと骨材の接着性が落ち、補修材としての性能確保ができないからである。
【0019】
次に図2用いて、細骨材8をシート状高粘度特殊アスファルト混合物6上に均一に散布する工程について説明する。細骨材8はシート状高粘度特殊アスファルト混合物6上に散布した後、ブラシ等で上面を平らにする。散布する細骨材の温度は保存状態や外気温によって変化するため、シート型高粘度特殊アスファルト混合物6に含まれる高粘度特殊アスファルトが溶融する温度に加熱しておくことが望ましいが、シート状高粘度特殊アスファルト混合物6の加熱温度を高くして、細骨材を散布したことによる温度低下を防ぐことでも対応可能である
【0020】
次に図3を用いて、細骨材8を均一に散布したシート状の高粘度特殊アスファルト混合 物6を加圧する工程について説明する。加圧には、円筒型プレス用ローラ9を左右に移 動させて加圧した後、円筒型プレス用のローラ9を90度回転させて、再び前後に回転 させて行っている。加圧した後、シート状の高粘度特殊アスファルト混合物6の温度が 低下するのを待ってトレイ7から、図4に示すシート状の高粘度特殊アスファルト混合 物補修材10を取り出す.
【産業上の利用可能性】
【0021】
品質の高い道路補修材としての活用が期待できる。
【符号の説明】
1 電気ヒータ
2 温度調節器
3 タイマー
4 ヒータ用電源回路
5 熱電対
6 シート状高粘度アスファルト混合物
7 トレイ
8 骨材
9 プレス用ローラ
10 シート状高粘度アスファルト混合物補修材
図1
図2
図3
図4