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特開2022-95521低表面張力及び高平滑性を有するフッ素樹脂組成物の高光沢表面コーティング方法
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  • 特開-低表面張力及び高平滑性を有するフッ素樹脂組成物の高光沢表面コーティング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095521
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】低表面張力及び高平滑性を有するフッ素樹脂組成物の高光沢表面コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/38 20060101AFI20220621BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220621BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220621BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20220621BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20220621BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220621BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20220621BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20220621BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220621BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220621BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220621BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220621BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220621BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B05D1/38
C09D5/00 D
C09D183/04
C09D171/00
C09D127/12
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09D17/00
C09C1/44
B05D7/24 303A
B05D7/24 302L
B05D7/24 302R
B05D7/24 302Y
B05D3/12 Z
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05D3/02 Z
B05D7/24 303B
B32B27/30 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095460
(22)【出願日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0176388
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521249081
【氏名又は名称】ピー アンド シー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ク、ヨン モ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ドン ジュ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA02
4D075AE03
4D075BB08X
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB28Z
4D075CA02
4D075CA04
4D075CA07
4D075CA18
4D075CA32
4D075CA33
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB04
4D075DA06
4D075DB07
4D075DC38
4D075EA06
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4D075EB18
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4D075EB43
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC31
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC54
4F100AA01B
4F100AA01D
4F100AA37C
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4F100AK17B
4F100AK17C
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4F100AK52B
4F100AK52C
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4F100AK56B
4F100AK56D
4F100AK57B
4F100AK57D
4F100AT00A
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4F100BA07
4F100CA13B
4F100CA13D
4F100CA23B
4F100CA23D
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4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB71
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4F100JJ03
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4F100JK10
4F100JL14
4F100JN21
4J037AA01
4J037DD24
4J037DD27
4J037EE28
4J037FF13
4J038CD091
4J038DF002
4J038DL032
4J038HA026
4J038KA08
4J038KA12
4J038MA10
4J038NA05
4J038NA07
4J038NA10
4J038NA11
4J038NA20
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB02
(57)【要約】
【課題】 クッキングウェアの分野に適用され、表面張力が低く、平滑性に優れて、高光沢を示すフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法を提供する。
【解決手段】 コーティング塗膜の表面張力を20mN/m以下に下げることで、調理時に食品がコーティング面に付着せず、平滑性に優れ、高光沢の外観効果を示し、層間付着力に優れていて、調理用キッチンツールの使用中にコーティング塗膜が容易に剥離されない。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料組成物55~75重量%、フッ素樹脂20~30重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%及びシリコーン系樹脂1~5重量%を混合して下塗りコーティング組成物を準備するステップと;
調理器具の表面に、前記下塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、80~250 ℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して下塗りコーティング層を形成するステップと;
フッ素樹脂45~65重量%、水20~40重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、グラフェン分散液2~3重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤1~3重量%を混合して上塗りコーティング組成物を準備するステップと;
前記下塗りコーティング層上に上塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、350~450 ℃で10~30分間焼成した後、常温まで冷却して上塗りコーティング層を形成するステップと;
を含むフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項2】
前記下塗りコーティング層と上塗りコーティング層との間に中塗りコーティング層をさらに設け、
前記中塗りコーティング層は、
顔料組成物45~55重量%、フッ素樹脂30~50重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、シリコーン系樹脂1~5重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤0.1~1.5重量%を混合して中塗りコーティング組成物を準備するステップと:
前記下塗りコーティング層上に中塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~25μmでコーティングし、80~250℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して中塗りコーティング層を形成するステップと;
からなることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項3】
前記上塗りコーティング組成物にシリコーン系樹脂1~5重量%を添加することを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項4】
前記グラフェン分散液は、フッ素化ポリエーテル系樹脂50~70重量%、水25~45重量%及びグラフェン2~7重量%を混合し、500~700rpmで20~30時間ミリングして製造されることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項5】
前記下塗りコーティング組成物又は中塗りコーティング組成物に用いられる顔料組成物は、水30~70重量%、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドイミド系の中から選択される1種又は2種以上の高耐熱性プラスチック樹脂15~40重量%、無機充填剤5~15重量%、顔料2~10重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤2~5重量%を混合した後、粒度25μm以下にミリングして製造されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項6】
前記下塗りコーティング組成物又は中塗りコーティング組成物を200~250℃に加熱した後、コーティングし、前記上塗りコーティング組成物を400~450℃に加熱した後、コーティングすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。
【請求項7】
前記下塗りコーティング組成物、中塗りコーティング組成物又は上塗りコーティング組成物に用いられるシリコーン系樹脂は、フェニル系ポリシロキサンエマルジョン、メチル系ポリシロキサンエマルジョン、フェニルメチル系ポリシロキサンエマルジョンの中から選択される1種又は2種以上のポリシリコーン樹脂の末端又は繰り返し構造にヒドロキシ基を導入してなる反応性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキングウェア分野に適用され、表面張力が低く平滑性に優れているため、高い光沢を示すフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンで使用するフライパンなどの調理器具の表面には、各種食品の調理時に食品の焦げ付きを防止するために、通常、耐熱性と離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)系のフッ素樹脂コーティング剤をコーティングされている。
【0003】
フッ素樹脂は、非粘着性、耐熱性、耐薬品性を優れ、炭素原子とフッ素原子の結合エネルギーが非常に大きく、強い塗膜を形成するので、紫外線、湿気、酸・アルカリ及び大気汚染物質に対する耐性に優れ、撥水性が高く、塗膜の劣化が少なく、長期保存が可能な利点を有する。
【0004】
また、ポリテトラフルオロエチレン系フッ素樹脂コーティング剤の塗膜表面は、エポキシ樹脂系、ウレタン系、セラミック系、シリコーンポリマー系などの他の系列の樹脂塗膜に比べて耐熱特性に優れるだけでなく、表面張力(surface tension)が低いという利点がある。
【0005】
全ての物質は固有の表面張力を有しており、表面張力の低い物質を表面張力の高い物体に塗布すると、均一なコーティング層を形成することができるが、逆に、表面張力の高い物質を表面張力の低い物体に塗布すると、均一なコーティング層を形成するのが難しい。
【0006】
たとえば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)フィルム上に表面張力32mN/mのオリーブオイルを薄い厚みで塗布する際には均一にコーティングできるが、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に表面張力72mN/mの蒸留水を薄い厚みで塗布する際には均一なコーティング層を形成するのが非常に難しい。
【0007】
これは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面張力が38mN/mレベルであるため、表面張力がオリーブオイルよりも高く、蒸留水よりも低いから現れる現象である。
【0008】
キッチン用調理器具の場合、調理過程で食品が表面にくっつく場合がしばしば発生し、上述の原理に基づき、調理器具の表面の表面張力が低いほど、離型性に優れて調理中に食品がくっつくことが防止され、光沢も良い。これにより、キッチンツールの管理が容易になり、長期に渡って優れた塗膜特性を維持できるので、キッチンツールの寿命を延ばすことができる。
【0009】
ポリテトラフルオロエチレンは、一般的に表面張力が約22~24mN/mで低いので、キッチンツールの表面コーティングだけでなく、様々な分野でコーティングや塗料材料として広く使われている。コーティング塗膜の表面張力を極力下げることができれば、撥水性、撥油性、耐汚染性などを向上させる効果を得ることができる。
【0010】
このようなフッ素樹脂の表面張力をさらに低下させて離型性を向上させるための方策として、韓国登録特許公報第1086852号公報には、低い表面エネルギー及び高い電気陰性度を有するフッ素-シリコーン系塗料組成物が開示されている。
【0011】
前記塗料組成物は、水、アクリルモノマー、シリコーンポリマー及びフッ素化合物を重合反応させてフッ素-シリコーン系エマルジョンを製造し、ここに二酸化チタン、体質顔料、増粘剤、および添加剤を混合して製造され、低い表面エネルギー及び摩擦係数だけでなく、高い撥水性及び撥油性を有するので、耐汚染性に優れた効果を発揮することができる。
【0012】
また、韓国登録特許公報第1007916号には、アルキレンジイソシアネートを含むプレポリマー溶液と樹脂溶液(アミノ基変性シリコーン樹脂、アミノ基変性フッ素化樹脂、非放出型抗菌剤及びガラスフレークを含む)を含む防汚塗料が開示されている。
【0013】
前記アルキレンジイソシアネートは、塗膜形成時に、前記アミノ基変性シリコーン樹脂またはアミノ基変性フッ素化樹脂と反応して、短時間で硬化し、防汚性が優れていて、私のクラック剥離性、耐摩耗性などの耐久性が向上された塗膜を安定的に形成することができる。
【0014】
しかし、前記フッ素-シリコーン重合樹脂、アルキレンジイソシアネート-シリコーン/フッ素反応樹脂は、強度が低いため、被覆物が摩耗しやすく、高温に対する抵抗性が低く、調理器具のコーティング材としての使用が困難である。このため、建築物外装材や装備、保管容器のように常に高温の熱に接しない用途に限定されざるを得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、その目的は、調理器具の表面にコーティングされる塗膜の表面張力を20mN/m以下に下げることで、調理中の食品の付着を防止するとともに、耐熱性及び耐久性を高く維持できるフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法を提供することとである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、顔料組成物55~75重量%、フッ素樹脂20~30重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%及びシリコーン系樹脂1~5重量%を混合して下塗りコーティング組成物を準備するステップと;調理器具の表面に、前記下塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、80~250 ℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して下塗りコーティング層を形成するステップと;フッ素樹脂45~65重量%、水20~40重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、グラフェン分散液2~3重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤1~3重量%を混合して上塗りコーティング組成物を準備するステップと;前記下塗りコーティング層上に上塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、350~450 ℃で10~30分間焼成した後、常温まで冷却して上塗りコーティング層を形成するステップと;を含むフッ素樹脂組成物の表面コーティング方法を提供する。
【0017】
このとき、前記下塗りコーティング層と上塗りコーティング層との間に中塗りコーティング層をさらに設け、前記中塗りコーティング層は、顔料組成物45~55重量%、フッ素樹脂30~50重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、シリコーン系樹脂1~5重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤0.1~1.5重量%を混合して中塗りコーティング組成物を準備するステップと:前記下塗りコーティング層上に中塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~25μmでコーティングし、80~250℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して中塗りコーティング層を形成するステップと;からなることが好ましい。
【0018】
また、前記上塗りコーティング組成物にシリコーン系樹脂1~5重量%を添加することが好ましく、前記グラフェン分散液は、フッ素化ポリエーテル系樹脂50~70重量%、水25~45重量%及びグラフェン2~7重量%を混合し、500~700rpmで20~30時間ミリングして製造されることが好ましい。
【0019】
また、前記下塗りコーティング組成物又は中塗りコーティング組成物に用いられる顔料組成物は、水30~70重量%、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドイミド系の中から選択される1種又は2種以上の高耐熱性プラスチック樹脂15~40重量%、無機充填剤5~15重量%、顔料2~10重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤の中から選択される1種又は2種以上の添加剤2~5重量%を混合した後、粒度25μm以下にミリングして製造されることが好ましい。
【0020】
また、前記下塗りコーティング組成物又は中塗りコーティング組成物を200~250℃に加熱した後、コーティングし、前記上塗りコーティング組成物を400~450℃に加熱した後、コーティングすることが好ましい。
【0021】
また、前記下塗りコーティング組成物、中塗りコーティング組成物又は上塗りコーティング組成物に用いられるシリコーン系樹脂は、フェニル系ポリシロキサンエマルジョン、メチル系ポリシロキサンエマルジョン、フェニルメチル系ポリシロキサンエマルジョンの中から選択される1種又は2種以上のポリシリコーン樹脂の末端又は繰り返し構造にヒドロキシ基を導入してなる反応性シリコーン樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるコーティング方法は、コーティング塗膜の表面張力を20mN/m以下に下げることにより、調理時にコーティング面に食品が付着することなく、平滑性に優れ、高い光沢外観効果を発揮するとともに、層間付着性に優れるので、使用中に調理用キッチンツールのコーティング塗膜が簡単に剥離されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の方法でコーティングされたキッチン調理器具(フライパン)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、クッキングウェアの分野で使用されるフッ素樹脂系コーティング剤の表面張力を20mN/m以下に下げることで離型性を向上させ、レベリング特性に優れた高光沢フッ素樹脂組成物のコーティング方法を提供し、フッ素樹脂組成物がコーティングされた基材表面は、従来のフッ素樹脂コーティング剤がコーティングされた表面に比べて、調理中の食品の付着を防ぐ優れた離型性能に加え、平滑性による高い光沢外観効果を示す。
【0025】
本発明は、コーティング基材上にフッ素樹脂を含む下塗りコーティング組成物及び上塗りコーティング組成物とを順次コーティングして下塗りコーティング層及び上塗りコーティング層とを形成する工程からなり、コーティング塗膜の耐久性及びレベリング特性を高めるために、下塗りコーティング層及び上塗りコーティング層との間に中塗りコーティング組成物をコーティングして中塗りコーティング層をさらに形成してもよい。
【0026】
前記下塗りコーティング組成物は、顔料組成物55~75重量%、フッ素樹脂20~30重量%、フッ素化ポリエーテル(fluorinated polyether)系樹脂3~10重量%、及びシリコーン系樹脂1~5重量%を含む。
【0027】
前記中塗りコーティング組成物は、顔料組成物45~55重量%、フッ素樹脂30~50重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、シリコーン系樹脂1~5重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤等の添加剤0.1~1.5重量%を含む。
【0028】
前記上塗りコーティング組成物は、フッ素樹脂45~65重量%、水20~40重量%、フッ素化ポリエーテル系樹脂3~10重量%、グラフェン分散液2~3重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤等の添加剤1~3重量%を含み、上塗りコーティング層の結着力、離型性、消泡特性を向上させるためにシリコーン系樹脂1~5重量%をさらに含んでもよく、色の実現によりパール顔料、有色顔料を少量添加してもよい。
【0029】
前記下塗り及び中塗りコーティング組成物に使用される顔料組成物は、水30~70重量%、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylene sulfide)、ポリエチレンサルファイド(polyethylene sulfide)、ポリアリールエーテルケトン(polyaryl ether ketone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドイミド(polyamide-imide)系の中から選択される1種又は2種以上の高耐熱性プラスチック樹脂15~40重量%、無機充填剤5~15重量%、顔料2~10重量%、及び、pH調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤等の添加剤2~5重量%を含み、このような組成物をバスケットミル(basket mill)、パールミル(perl mill)、ビーズミル(bead mill)、3-ロールミル(3-roll mill)等を使用して粒度25μm以下、好ましくは粒度15~25μmにミリングして製造される。
【0030】
前記下塗り、中塗り及び上塗りコーティング組成物に使用されるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride、PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(fluorinated ethylene propylene copolymer、FEP)、パーフルオロアルコキシ(perfluoroalkoxy、PFA)樹脂の中から選択される1種又は2種以上の樹脂であることが好ましい。
【0031】
表面張力の高い物体上に表面張力の低い物質を塗布する際には、均一なコーティング層を形成でき、表面張力が低いほどキッチンツールの表面の撥水性、撥油性、耐汚染性、離型性などが向上するので、コーティング組成物の表面張力が低いほど、調理時に食品が付着するのを防止することができる。
【0032】
一般に、ポリテトラフルオロエチレンの表面張力は、他の樹脂の種類より低い22~24mN/mであるが、本発明では、このような表面張力をさらに下げるために、フッ素樹脂と共にフッ素化ポリエーテル系樹脂を使用して、コーティング組成物の表面張力を20mN/m以下に下げる。
【0033】
前記下塗り、中塗り及び上塗りコーティング組成物に使用されるフッ素化ポリエーテル系樹脂樹脂は、フッ素化ポリエーテルポリマー(fluorinated polyether polymer)、フッ素化ポリエーテルエトキシル化ポリマー(fluorinated polyether ethoxylated polymer)、ジオール官能性フッ素化ポリエーテルポリマー(diol functional fluorinated polyether polymer)、フッ素化ポリエーテルジアンモニウムジサルファイドポリマー(fluorinated polyether diammonium disulfate polymer)の中から選択される1種又は2種以上の樹脂であることが好ましい。
【0034】
フッ素化ポリエーテル系樹脂は、フッ素系成分と親水性(hydrophilic)及び親油性(lipophilic)を持っているため、表面張力の低減能力に優れており、フッ素樹脂だけでなくシリコーン系樹脂、顔料及び添加剤との相溶性に優れている。
【0035】
前記下塗りコーティング組成物及び中塗りコーティング組成物、または、下塗りコーティング組成物、中塗りコーティング組成物及び上塗りコーティング組成物に使用されるシリコーン系樹脂は、コーティング基材と各層との間の接着力を高めることにより、コーティング層が容易に剥離しないようにする付着増進剤の役割を果たし、水溶性シリコーン系樹脂の中でフェニル(phenyl)系ポリシロキサンエマルジョン(polysiloxane emulsion)、メチル(methyl)系ポリシロキサンエマルジョン、フェニルメチル(phenyl methyl)系ポリシロキサンエマルジョン、酸性系シリカゾル、アルカリ系シリカゾル、及び中性系シリカゾルから選択される1種又は2種以上の樹脂であることが好ましい。
【0036】
一般的にシリコーン系樹脂は、反応性がないため、樹脂硬化反応に影響を及ぼさないが、シリコーンの分子構造に反応基を付けることで反応性を付与することができる。
【0037】
このため、シリコーン系樹脂の末端にヒドロキシ基(-OH)を導入することで反応性シリコーン樹脂を製造して中塗り組成物に使用することができ、中塗りコーティング層におけるシリコーン系樹脂のヒドロキシ基は、上塗り層及び下塗り層におけるフッ素化ポリエーテルと縮合反応してアルコールが抜けてくると共有結合が形成され、層間結合力が強化される。
【0038】
また、フッ素化ポリエーテルとシリコーン系樹脂とが反応すると、シリコーンにポリエーテル鎖が付加されて親水性が向上し、これにより相溶性が向上し、フッ素が結合しているシリコーン樹脂は、表面張力が低くなって離型性が向上し、コーティング塗膜に消泡特性が付与できる。
【0039】
このとき、シリコーン系樹脂としては、酸性系シリカゾル、アルカリ系シリカゾル、中性系シリカゾルを除いて、フェニル系ポリシロキサンエマルジョン、メチル系ポリシロキサンエマルジョン、フェニルメチル系ポリシロキサンエマルジョンを使用することが好ましい。ポリシロキサンは熱に安定であり、その末端にヒドロキシ基が導入されたポリシロキサン樹脂は、下塗り、中塗り及び上塗りコーティング層の乾燥工程でフッ素化ポリエーテルと縮合反応してポリエーテル変性ポリシロキサンを生成し、ポリエーテル変性ポリシロキサンは、界面活性剤の機能を果たすとともに、塗膜表面のクレーターの発生(cratering)を防止することができる。
【0040】
上塗り層及び下塗りコーティング組成物にも前記反応性シリコーン樹脂を使用可能であり、この場合、上塗りコーティング層と中塗りコーティング層との間、中塗りコーティング層と下塗りコーティング層との間の反応性シリコーン同士が脱水縮合反応して共有結合が形成されるとともに結合力が増加し、また、シリコーン分子構造の末端だけでなくポリシロキサンの繰り返し構造にもヒドロキシ基を導入することで、隣接する層同士間の共有結合を増加させて結合力をさらに高めることもできる。
【0041】
高分子樹脂材料は、優れた成形性、生産性、均一な品質などの理由から産業分野で広く使用されてきたが、熱や衝撃に弱い欠点があり、特にフッ素樹脂は軟性樹脂であり、半透明又は透明であるため、フッ素樹脂が被覆された製品は、被覆物が摩耗しやすく、調理過程で蒸気が浸透して基材が変色しやすい。このため、これらの製品は、寿命が短いという欠点がある。
【0042】
そこで、これを補完できる素材が開発されてきており、高分子樹脂に強化材料を混合して製品の強度、弾性率などの物理的特性や電磁波シールド(電磁波遮蔽)、導電性(電気伝導性)などを向上させる方法が使用されている。
【0043】
このような強化材料としてのグラフェン(graphene)を本発明の上塗りコーティング組成物に混合して上塗りコーティング層の強度を高める。グラフェンは、鋼の200倍以上の強度を有し、炭素原子間の二重結合により熱的に非常に安定した構造を有しており、高分子樹脂に添加すると、少ない含有量でも高分子複合材料のガラス転移温度(Tg )及び分解温度を上昇させることができ、グラフェンの高い熱伝導率(5000W/m・K )特性により上塗りコーティング層の熱伝導率が大幅に増加できる。
【0044】
しかしながら、炭素素材であるグラフェンは、高分子樹脂内で凝集する現象が発生し、これは、コーティング層の物的特性を低下させる要因として作用するため、グラフェンを上塗りコーティング組成物内に均一に分散させる必要がある。
【0045】
このため、グラフェンを分散液として製造した後、上塗りコーティング組成物に添加し、フッ素化ポリエーテル系樹脂50~70重量%、水25~45重量%及びグラフェン2~7重量%を混合し、ミリング装置、好ましくは、バスケットミルに入れて500~700rpmで20~30時間ミリングを行い、グラフェン分散液を製造する。フッ素化ポリエーテル系樹脂は、極性効果によりグラフェンを均一に取り囲んだ後、ミリング過程でグラフェンを均一に粉砕及び分散させながら板状に配向する。
【0046】
このようなグラフェン分散液を上塗りコーティング組成物に2~3重量%添加することにより、コーティング塗膜の最外層である上塗りコーティング層の耐スクラッチ性及び熱伝導性を向上させる。グラフェンの高い分散及び配向性により、コーティング表面の表面張力が低下し、離型性が向上する。また、分散されたグラフェンの周囲の高分子鎖により移動性が制限されるため、コーティング層の熱的安定性(thermal stability)が向上し、コーティング塗膜の耐熱性がさらに向上する。
【0047】
上記のように下塗り、中塗り及び上塗りコーティング組成物が準備されると、コーティング基材上に順次下塗り-上塗りコーティング、又は、下塗り-中塗り-上塗りコーティングを行う。まず、下塗りコーティングの場合、サンディング処理(sanding treatment)又は化成処理(chemical conversion treatment)されたアルミニウム、ステンレスなどのキッチン調理器具の金属基材の表面に、前記下塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、熱風乾燥炉において80~250℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して下塗りコーティング層を形成する。
【0048】
上塗りコーティングの場合、前記下塗りコーティング層上に前記上塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~30μmでコーティングし、熱風乾燥炉において350~450℃で10~30分間焼成した後、常温まで冷却して上塗りコーティング層を形成する。
【0049】
塗膜の最終焼成温度が350 ℃未満であるか、焼成時間が10分未満であれば、キッチン調理器具の表面と下塗りコーティング層及び各コーティング層間の結着力が低く、一方、焼成温度が450℃を超えるか、焼成時間が30分を超えると、塗膜の硬度、耐摩耗性、耐久性、離型性が低下する問題がある。
【0050】
中塗りコーティング層を形成する際には、前記下塗りコーティング層上に前記中塗りコーティング組成物を乾燥塗膜厚15~25μmでコーティングし、熱風乾燥炉において80~250 ℃で10~30分間乾燥させた後、常温まで冷却して中塗りコーティング層を形成する。冷却された中塗りコーティング層の上に上塗りコーティングを行い、この際には、下塗りコーティング層及び上塗りコーティング層の厚さをより薄く、例えば、15~25μmの薄い厚さであっても、コーティング塗膜の耐久性及び離型性を十分に維持することができる。
【0051】
本発明の各層を構成する組成物のうち、表面張力に影響を及ぼす成分を見ると、フッ素化ポリエーテル系樹脂は、表面張力を低減する能力が最も高く、フッ素樹脂は、樹脂の中で比較的表面張力が低く、顔料組成物は、比較的表面張力が高い。
【0052】
表面張力を低減するフッ素化ポリエーテル系樹脂は、各層に同じ割合で含有されているが、焼成工程中に上塗りコーティング組成物中の水分が除去されるため、上塗りコーティング層中の含量が最も多く、表面張力の低いフッ素樹脂は、上塗り>中塗り>下塗りの順に多く、表面張力の高い顔料組成物は、下塗り>中塗りの順に多いので、全体的に下塗りコーティング組成物の表面張力が最も大きく、上塗りコーティングの表面張力が最も小さくなる。
【0053】
したがって、本発明のコーティング方法では、相対的に比較して、表面張力の高い下塗りコーティング層に表面張力の低い上塗りコーティング組成物をコーティングするか、または、表面張力の最も高い下塗りコーティング層に中間の表面張力を有する中塗りコーティング組成物をコーティングし、中間の表面張力を有する中塗りコーティング層に表面張力の最も低い上塗りコーティング組成物をコーティングする。
【0054】
表面張力の低い物質を表面張力の高い物質上に塗布すると、均一なコーティング層が形成され、最外層の表面張力が低いほど、撥水性、撥油性、耐汚染性、離型性等に優れるので、本発明のコーティング方法では、各コーティング層が均一に形成され、これにより調理時に食品がコーティング塗膜の表面に付着するのを防止することができる。
【0055】
各コーティング層をより均一にコーティングし、各コーティング層間の結着力をより高めるために、前記下塗り、中塗り及び上塗りコーティングの際に、コーティング組成物を加熱して、常温まで冷却された金属基材及びコーティング層上にコーティングすることが好ましい。
【0056】
表面張力は、単位面積当たりの表面のエネルギー、又は表面積を増やすために単位長さ当たりに加える必要がある力であり、表面の任意の線上で単位長さ当たりに作用する分子引力の強度と言える。
【0057】
温度が上昇すると分子の熱運動が活発になり、分子間の距離が増加すると体積が増加し、これにより分子間の引力が減少する。分子間の引力が減少すると、表面張力が低下し、濡れ性(wettability)が増加する。
【0058】
表面張力の低い物質を表面張力の高い物質の表面に塗布すると、均一なコーティング層が形成され、各コーティング層間の結着力が増加するが、上記のようにコーティング組成物を加熱すると、分子間の引力が減少するにつれて、表面張力が低下するので、常温まで冷却されて表面張力が相対的に高い金属基材又はコーティング層上に、加熱により表面張力が相対的に低下したコーティング組成物をコーティングすると、コーティング層が均一に形成されるとともに、コーティング層間の結着力が増加する。
【0059】
各コーティング組成物の加熱温度は、各コーティング層の乾燥又は焼成温度の範囲で設定でき、前記温度範囲で可能な限り高い温度に設定することが好ましい。下塗り及び中塗りコーティング組成物は200~250℃、上塗りコーティング組成物は400~450 ℃に加熱してコーティングすることで、表面張力を極力低減し、前記加熱温度で連続工程でコーティングした後に乾燥又は焼成処理を行うことができるので、乾燥又は焼成に伴うエネルギーコストを削減することができる。
【0060】
上記のようにコーティングされた塗膜表面は20mN/m以下の低い表面張力を有するので、離型性に優れ、平滑性に高く、これにより外観が美麗な高光沢の調理用キッチンツールコーティング物を製造することができる。
【0061】
以下、本発明について、下記の実施例、比較例及び試験例に基づいて、より詳細に説明する。
【0062】
但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明は下記実施例により限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で置換および均等な他の実施例に変更できることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0063】
<実施例1>顔料組成物の製造
1500mlのビーカーに水349gを入れ、攪拌機で80~100rpmで徐々に攪拌しながら、分散剤Disperbyk181(BYK社製)15g、レベリング剤BYK346(BYK社製)3g、有色顔料Colour Black FW-200(Orion Engineered Carbons社製)50g、無機充填剤AM-27(アルミナ、住友化学製)60g、Shieldex C-303(Grace社製)10g、AEROSIL 200(FUMED SILICA、EVONIK社製)3g、pH調整剤ジメチルエタノールアミン10gを入れ、徐々に攪拌して均一化した後、高耐熱性プラスチック樹脂Elan-Bind 1015NFH(ポリアミドイミド12%水溶液、ELANTAS社製)400g、ポリエチレンサルファイド(Solvay社製、Veradel PESU)150gを20分間徐々に投入した。
【0064】
攪拌速度を500rpmに上げて30分間高速攪拌して組成物を均一な状態に混合した後、バスケットミルを用いて600rpmで3時間ミリング処理を行い、固形分33%、粒度20μmの顔料組成物1000gを製造した。
【0065】
<実施例2>下塗りコーティング組成物の製造
1500mlのビーカーに前記実施例1の顔料組成物650gを投入した後、攪拌機で80~100rpmで徐々に攪拌しながら、フッ素化ポリエーテル系樹脂Polyfox PF-151N(Omnova Solution社製)40g、消泡剤BYK011(BYK社製)5gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した。
【0066】
前記配合物を攪拌し続けながら、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(DISP30、CHEMOURS社製)275gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した後、水性ポリaシロキサン樹脂SIRES@MPF52E(WACKER社製)30gを投入し、均一になるまで300rpmで1時間攪拌して、固形分39%、pH9、粘度18秒(JAHN CUP#3)の下塗りコーティング組成物を製造した。
【0067】
<実施例3>中塗りコーティング組成物の製造
1500mlのビーカーに前記実施例1の顔料組成物514gを投入した後、攪拌機で80~100rpmで徐々に攪拌しながら、フッ素化ポリエーテル系樹脂Polyfox PF-151N(Omnova Solution社製)50g、消泡剤BYK011(BYK社製)5gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した。
【0068】
前記配合物を攪拌し続けながら、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(DISP30、CHEMOURS社製)400.7gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した後、水性ポリシロキサン樹脂SIRES@MPF52E(WACKER社製)30g、pH調整剤トリエタノールアミン3gを投入し、均一になるまで300rpmで1時間攪拌して、固形分43%、pH9、粘度16秒(JAHN CUP#3)の中塗りコーティング組成物を製造した。
【0069】
<実施例4>グラフェン分散液の製造
500mlのビーカーにフッ素化ポリエーテル系樹脂Polyfox PF-151N(Omnova Solution社製)60gを入れ、攪拌機で80~100rpmで徐々に攪拌しながら、グラフェン(av-PLAT-2,avanzarematerials社製)5gを投入し、80~100rpmで20分間攪拌した後、蒸留水35gを投入し、攪拌速度を500rpmに上げて1時間均一に混合した。
【0070】
前記均一に混合された混合物を、バスケットミルを使用して600rpmで24時間ミリング処理し、5%のグラフェン分散液を製造した。
【0071】
<実施例5>上塗りコーティング組成物の製造
1500mlのビーカーに水325gを投入した後、攪拌機で80~100rpmで徐々に攪拌しながら、フッ素化ポリエーテル系樹脂Polyfox PF-151N(Omnova Solution社製)50g、消泡剤BYK011(BYK社製)5gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した
【0072】
前記配合物を攪拌し続けながら、パール顔料SZ400(Sheng Zhu Company)15gを投入し、均一になるまで10分間攪拌した後、実施例4のグラフェン分散液25gとポリテトラフルオロエチレン樹脂(DISP30、CHEMOURS社製)580gとを投入し、均一になるまで10分間攪拌した。
【0073】
継続的に攪拌しながら、増粘剤Acrysol TT-935(Palmerholland社製)15gとpH調整剤ジメチルエタノールアミン10gとを投入し、80~100rpmで10分間攪拌した後、撹拌速度を300rpmに上げて再び1時間撹拌して、固形分40%、pH10、粘度11秒(JAHN CUP#3)の上塗りコーティング組成物を製造した。
【0074】
<実施例6>調理用キッチンツールコーティング(1)(下塗りコーティング/中塗りコーティング/上塗りコーティング)
化成処理又は300メッシュサイズの金剛砂(emery)でサンディング処理したアルミニウム製のフライパン金属基材上に、前記実施例2の下塗りコーティング組成物を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において170℃で15分間乾燥させた後、常温まで冷却した。
【0075】
前記下塗りコーティングされた基材上に、前記実施例3の中塗りコーティング組成物を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において170 ℃で15分間乾燥させた後、常温まで冷却した。
【0076】
さらに中塗りコーティングされた基材上に、前記実施例5の上塗りコーティング組成物を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において400℃で20分間乾燥させた後、常温まで冷却して調理用キッチンツールコーティング物(1)を完成した(図1)。
【0077】
<実施例7>調理用キッチンツールコーティング(2)(下塗りコーティング/上塗りコーティング)
化成処理又は300メッシュサイズの金剛砂でサンディング処理したアルミニウム製のフライパン金属基材上に、前記実施例2の下塗りコーティング組成物を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚25μmで塗装し、熱風乾燥炉において170℃で15分間乾燥させた後、常温まで冷却した。
【0078】
前記下塗りコーティングされた基材上に、前記実施例5の上塗りコーティング組成物を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚25μmで塗装し、熱風乾燥炉において400℃で20分間乾燥させた後、常温まで冷却して調理用キッチンツールコーティング物(2)を完成した。
【0079】
<比較例>調理用キッチンツールコーティング(3)(下塗りコーティング/中塗りコーティング/上塗りコーティング)
化成処理又は300メッシュサイズの金剛砂でサンディング処理したアルミニウム製のフライパン金属基材上に、下塗り塗料(DYFLON PR 8278、メーカー:大英ケミカル(株))を、ノズル孔1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において170℃で15分間乾燥させた後、常温まで冷却した。
【0080】
前記下塗りコーティングされた基材上に、中塗り塗料(DYFLON MID 817、製造社:大英ケミカル(株))を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において170℃で15分間乾燥させた後、常温まで冷却した。
【0081】
さらに中塗りコーティングされた基材上に、上塗り塗料(DYFLON TOP 8857、製造社:大英ケミカル(株))を、1.3mmのノズル孔を有するエアスプレーを用いて2kg/cmの圧力で吹き付け塗装して乾燥塗膜厚20μmで塗装し、熱風乾燥炉において400℃で20分間乾燥させた後、常温まで冷却して調理用キッチンツールコーティング物(3)を完成した。
【0082】
<試験例>コーティング塗膜の物性評価
前記実施例6、7および比較例で製造された調理用キッチンツールコーティング物の塗膜物性を評価し、その結果を下記表1に示す。分析方法は下記の通りである。
【0083】
-表面張力:ドイツARCOTEST社製の表面張力インクを用いて測定(例えば、表面張力20mN/m、22mN/m、24mN/mのインクを塗膜上に塗布する際に、20mN/mのインクは均一に塗布され、22mN/mのインクは滴状になって塗布されなければ、塗膜の表面張力を20~22 mN/mと評価する。)
【0084】
-光沢:Tri-Gloss meter(光沢系)を使用し、基準板補正を完了した後、60度光沢を測定する。
【0085】
-離型性:コーティングされたキッチンツール上に食用油をかけずに目玉焼き(fry)を連続的に作る際に塗膜上に目玉焼きがくっつくまでの回数
【0086】
-付着性:コーティング塗膜上にナイフを使用して1mm間隔で碁盤目100升を作り、セロハンテープを使用して取り外した後、塗膜の剥離有無を確認する。
【0087】
-耐摩耗性:コーティングされた基材を、耐摩耗性試験機(WEAR Abrasion Tester TW-A31)上に装着し、重りを用いて3kgの荷重を印加した後、たわし面で塗膜面を往復させて塗膜の剥離を確認する(剥離発生時点:往復10000回未満(×)、往復10000~30000回(△)、往復30000回超過(○))。
【0088】
-耐熱性:コーティングされた基材を400 ℃に加熱した後、再び常温まで冷却する実験を10回繰り返して、常温で色が変化するかどうかを確認する。
【0089】
-耐熱性試験後の付着性:コーティングされた基材を400℃に加熱した後、再び常温まで冷却する実験を10回繰り返した後、コーティングされた基材上にナイフを使用して1mmの間隔で碁盤目100升を作り、セロハンテープを使用して取り外した後、塗膜の剥離有無を確認する。
【0090】
-耐衝撃性:DUPONT衝撃性試験機を用いて50cmの高さから500gの重りを落した後、塗膜の破壊有無及び剥離有無を確認する。
【0091】
-耐塩水噴霧性:塩水噴霧器内で72時間暴露した後、塗膜の浸食有無を確認する。
【0092】
-耐光性:Q.U.V(Accelated Weathering Tester)に1000時間暴露した後の塗膜の色変化と光沢変化を評価する。
【0093】
【表1】
【0094】
前記表1に示すように、本発明の実施例によるフッ素樹脂コーティング組成物をキッチンツールの表面にコーティングしたコーティング塗膜は、本発明で達成しようとする表面張力、離型性、付着性、耐摩耗性などの物性に加えて、熱変色特性、耐熱特性、耐衝撃性、耐塩水分繁茂、耐光性などの物性が優秀さを確認した。
【0095】
上記のように、本発明は、コーティング表面の表面張力が低いため、離型性に優れ、平滑性に優れ、高光沢を発揮し、層間付着力に優れていて、調理用キッチンツールの使用中にコーティング塗膜が剥がれにくいという利点がある。


図1