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  • 特開-乳酸菌発酵物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095539
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】乳酸菌発酵物
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/22 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
C12P7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021184393
(22)【出願日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020220002
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕子
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AC17
4B064CB18
4B064CC09
4B064CD06
4B064DA01
4B064DA10
(57)【要約】
【課題】 乳酸菌を用いた発酵によるジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物の製造方法及び乳酸菌発酵物を提供することを課題とする。
【解決手段】 ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を、乳酸菌を用いて発酵させることによって、ジンゲルジオールを含有する乳酸菌発酵物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を乳酸菌により発酵させることによって、下記化学式1又は2で表されるジンゲルジオールを含む発酵物が得られる、ジンゲルジオール含有乳酸菌発酵物の製造方法。
【化1】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
【化2】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
【請求項2】
発酵用原料中の固形分あたりのジンゲロール含有量が0.1重量%以上である、請求項1記載のジンゲルジオール含有乳酸菌発酵物の製造方法。
【請求項3】
ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を乳酸菌により発酵させることによって得られる、前記化学式1又は2で表されるジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物。
【請求項4】
発酵物中の固形分あたりのジンゲルジオール含有量が0.1重量%以上である、請求項3記載の乳酸菌発酵物。
【請求項5】
固形分あたりのジンゲロール含有量が0.1重量%以上である、ジンゲルジオール生成用培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌発酵物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ショウガの成分として知られているジンゲロール及びその誘導体は、近年、機能性が注目されており、例えば、非特許文献1には、癌細胞又はマウスの代謝により、6-ジンゲロールが(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールに変換されること、それらの代謝物が癌細胞に細胞毒性を誘発することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Lishuang Lv、他5名、“6-Gingerdiols as the Major Metabolites of 6-Gingerol in Cancer Cells and in Mice and Their Cytotoxic Effects on Human Cancer Cells”、Journal of Agricultural and Food Chemistry、(米国)、2012年11月14日、第60巻、第45号、p.11372-11377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、ジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物の製造方法及び乳酸菌発酵物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を、乳酸菌を用いて発酵させることによって、ジンゲルジオールの含有量が増加した発酵物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]の態様に関する。
[1]ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を乳酸菌により発酵させることによって、下記化学式1又は2で表されるジンゲルジオールを含む発酵物が得られる、ジンゲルジオール含有乳酸菌発酵物の製造方法。
【化1】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
【化2】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
[2]発酵用原料中の固形分あたりのジンゲロール含有量が0.1重量%以上である、[1]記載のジンゲルジオール含有乳酸菌発酵物の製造方法。
[3]ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を乳酸菌により発酵させることによって得られる、前記化学式1又は2で表されるジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物。
[4]発酵物中の固形分あたりのジンゲルジオール含有量が0.1重量%以上である、[3]記載の乳酸菌発酵物。
[5]固形分あたりのジンゲロール含有量が0.1重量%以上である、ジンゲルジオール生成用培地。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を乳酸菌で発酵させることにより、ジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物を提供できる。また、簡便にジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物を製造できる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】乳酸菌による発酵前後の6-ジンゲロール、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの固形分あたりの濃度を示す。
図2】乳酸菌による発酵前後の6-ジンゲロール、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの固形分あたりの濃度を示す。
図3】各濃度のCaCO又はジンゲロール含有物を含む培地における各種乳酸菌による発酵後の、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの固形分あたりの濃度を示す。
図4】CaCO有り又は無し条件下で、乳酸菌発酵における6-ジンゲルジオールの経時変化を示す。
図5】各ジンゲロール含有物等を含む培地における乳酸菌による発酵後の、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの固形分あたりの濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のジンゲルジオールを含む乳酸菌発酵物の製造方法は、ジンゲロール含有物を含む発酵用原料を、乳酸菌により発酵させることによって、下記化学式1又は2で表されるジンゲルジオールを含む発酵物が得られる。ジンゲルジオールは、4-ジンゲルジオール、6-ジンゲルジオール、8-ジンゲルジオール、10-ジンゲルジオールが例示でき、例えば6-ジンゲルジオールは(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールが知られている。ジンゲルジオールを生成できる乳酸菌であれば特に限定されないが、乳酸菌としては、ラクトバチルス属に属する菌が例示でき、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)、ラクトバチルス・ケフィリ(L.kefiri)、ラクトバチルス・フルクチボランス(L.fructivorans)が好ましく、1種又は2種以上を使用することができる。
【0010】
【化1】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
【0011】
【化2】
[式中Rは炭素数3、5、7又は9の直鎖アルキル基を示す。]
【0012】
本発明の発酵用原料は、ジンゲルジオールを生成可能な菌が発酵可能な成分であれば特に限定されず、一般的な培地成分が使用できるが、炭素源、窒素源、無機物、微量栄養素等を含有するものが例示でき、合成培地、天然培地の何れでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン、ソルビトール、糖蜜等が使用できる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類、DL-アラニン、L-グルタミン酸等のアミノ酸類、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、乳蛋白、大豆蛋白等の窒素含有天然物が使用できる。無機物としては、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛等が使用できる。さらにTween80等の界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、オリーブオイル等の油脂を使用してもよい。炭酸カルシウムを使用すると、ジンゲルジオールの生成速度が上がる点で好ましい。
【0013】
また、ジンゲロール含有物は、天然物由来又は合成品の何れでもよく、ショウガやギニアショウガ等のショウガ科植物を抽出して得られる植物抽出物が好ましく、植物抽出物の抽出法としては、超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等が例示できる。前記菌を用いた発酵によりジンゲルジオールが生成されれば特に限定されないが、発酵用原料中の固形分あたりのジンゲロール含有量は、0.1重量%以上が好ましく、0.2~50重量%がより好ましく、0.4~40重量%がさらに好ましく、0.6~30重量%が特に好ましい。また、発酵中にジンゲロール含有物を添加してもよい。
【0014】
ジンゲロール含有物は、発酵用原料によく分散するように、乳化させるのが好ましく、乳化粉末としてもよい。乳化剤は、乳化能力を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、アカシアガム、ガティガム、キサンタンガム等のガム質、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、カゼイン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン等が例示でき、1種又は2種以上を使用することができる。乳化処理は、一般的な乳化方法で行うことができ、詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。
【0015】
発酵条件は、前記発酵用原料を含む液体培地を殺菌後、乳酸菌を接種し、静置又は振盪にて発酵させることができるが、通気、振盪、攪拌等により好気的条件下で発酵するのが好ましく、発酵温度は例えば10~50℃が例示でき、15~40℃が好ましく、発酵時間は例えば1~120時間が例示でき、2~96時間が好ましく、6~72時間がより好ましく、pHは例えば2.0~8.0が例示でき、3.0~7.5が好ましく、培養中に例えば前記範囲でpHを調整してもよい。pH調整は、水酸化ナトリウム、アンモニア等を用いることができるが、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物を用いると、培養中に培養液が酸性になるのに伴い、徐々に溶解して、pHの低下を緩和し、pH調整が可能で、pH低下に伴う乳酸菌の増殖抑制が抑えられるため好ましい。
【0016】
発酵物中のジンゲルジオール含有量は、固形分あたり、0.05重量%以上が好ましく、0.1~50重量%がより好ましく、0.2~40重量%がさらに好ましく、0.5~30重量%が特に好ましい。尚、ジンゲルジオール含有量は、前記化学式1及び2の合計をジンゲルジオール含有量とする。
【0017】
また、発酵後の発酵物中のジンゲロール含有量は、発酵前のジンゲロール含有量より減少していることが好ましく、発酵前のジンゲロール含有量を100重量%とした場合の発酵後のジンゲロールの含有量は、90重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましく50重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が特に好ましく、10重量%以下が最も好ましい。発酵物中のジンゲロール含有量は、固形分あたり、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、2重量%以下が特に好ましい。
【0018】
本発明の発酵物は、発酵後に殺菌してもよく、殺菌条件は一般的な方法であれば特に限定されないが、例えば60~120℃で1~30分間又は80~100℃で5~20分間の加熱が好ましい。発酵物の回収は、不織布、メッシュ等を用いたろ過、遠心分離等により、固液分離することで得られる液体として利用してもよいし、さらに濃縮及び/又は乾燥し、濃縮品や乾燥品として利用してもよい。乾燥は、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等により行うことができる。
【0019】
本発明の発酵物は、各種飲食品等に添加することにより、ジンゲルジオール含有飲食品等を製造できる。これにより、該発酵物が有する各種機能性成分を容易に各種飲食品等に付加することができる。各飲食品等への添加量は特に限定されないが、好ましくは0.1~80重量%、より好ましくは0.5~50重量%、さらに好ましくは1.0~30重量%、特に好ましくは2.0~20重量%である。添加する飲食品等は特に限定されないが、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品の他、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料等にも利用できる。
【実施例0020】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0021】
ジンゲロール含有物としてジンジャーエキスパウダーG2(6-ジンゲロール含有量:2.3%、池田糖化工業株式会社製)を終濃度で5%となるようにMRS培地に添加し、20gずつ、試験管に分注後、121℃で15分間加熱殺菌処理した。冷却した液体培地2本ずつに、Lactobacillus brevis NBRC3345(実施例1-1及び1-2)又はLactobacillus fermentum NBRC15885(実施例1-3及び1-4)を一白金耳植菌し、30℃で40時間静置培養した。培養終了後、90℃で10分間、殺菌処理し、各乳酸菌発酵物を得た。
【0022】
実施例1-1~1-4で得られた各乳酸菌発酵物について、発酵後のpHを測定し、表1に記載すると共に、6-ジンゲロールの含有量を下記のHPLC測定条件にて測定し、発酵後の濃度として図1に示した。
【0023】
<HPLC測定条件>
・検出器:UV検出器(282nm)
・カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
・移動相:30%アセトニトリル水溶液から100%アセトニトリルへグラジエント
・流速:0.8ml/分
・カラム温度:40℃
・標品:6-ジンゲロール(分子量:294.39、富士フィルム和光純薬株式会社製)を95%エタノールに溶解して、検量線を作成した。
・検体:各試料を80%アセトニトリルにて適宜希釈して使用した。
【0024】
さらに、発酵前と発酵後のHPLCチャートを比較したところ、6-ジンゲロール(リテンションタイム:17分付近)とは別に発酵後に現れた2つのピーク(リテンションタイム:L.brevisが14分付近、L.fermentumが15分付近)が確認でき、発酵により生成された物質と考えられたため、LC/MS及びNMRで解析した結果、該物質は何れも6-ジンゲルジオール(分子量:296.39)の2種類の構造異性体、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールであることが明らかになった。
【0025】
(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールについては、NMRで解析した精製物を標品として、上記のHPLC測定条件にて濃度を算出し、発酵物中の固形分あたりの濃度として図1に示した。尚、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの合計を6-ジンゲルジオールとし、発酵物中の固形分あたりの6-ジンゲルジオール濃度として表1に示した。また、植菌直前の培地中の各成分について、発酵前の固形分あたりの濃度として、測定値を図1に示した。
【0026】
【表1】
【実施例0027】
実施例1の方法に準じて、表2に記載の条件でL.reuteri NBRC15892、L.kefiri NBRC15888又はL.fructivorans NBRC13954(実施例2-1、2-2又は2-3)による各乳酸菌発酵物を得た。尚、植菌には、グリセロールストック10μLを使用した。
【0028】
実施例2-1~2-3で得られた各乳酸菌発酵物について、実施例1と同様に、発酵後のpHを測定し表2に記載すると共に、発酵物中の6-ジンゲロール、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの固形分あたりの含有量を測定して図2に示し、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの合計を、発酵物中の固形分あたりの6-ジンゲルジオール濃度として表2に示した。
【0029】
【表2】
【0030】
図1及び2より、実施例1及び2の何れもで、ジンゲロール含有物を含む培地で乳酸菌を培養することで、発酵後に6-ジンゲルジオールが生成され、特に、L.brevisは(3R,5S)-6-ジンゲルジオールを、L.fermentumは(3S,5S)-6-ジンゲルジオールを生成することが分かった。また、発酵前の6-ジンゲロールが減少し、6-ジンゲルジオールが増加していた。
【0031】
以上から、ジンゲロール含有物を含む液体培地で乳酸菌を培養することで、ジンゲルジオールを含有する乳酸菌発酵物を製造できることが明らかになり、また、6-ジンゲロールが6-ジンゲルジオールに変換されることが示唆された。
【実施例0032】
各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G(アサヒグループ食品株式会社製)):3%、ツィーン80:0.1%、MnSO・5HO:0.05%、並びに実施例3-1、3-2、3-5及び3-6はCaCOの終濃度が1.5%(実施例3-3、3-4、3-7及び3-8にはCaCO無し)、実施例3-1、3-3、3-5及び3-7はジンゲロール含有物としてジンジャーエキスパウダーG2の終濃度が5%又は実施例3-2、3-4、3-6及び3-8はジンジャーエキスパウダーG2の終濃度が10%となるように各液体培地を50gずつ200mL容のバッフル付三角フラスコで調製し、121℃で15分間加熱殺菌処理した。冷却した各液体培地に、乳酸菌の前培養液を各1%(v/v)植菌し、30℃で48時間振盪培養した。尚、実施例3-1~3-4は、各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス:3%及びCaCO:1.5%であって滅菌した液体培地で30℃、24時間、Lactobacillus brevis NBRC12005を静置培養したものを前培養液とし、実施例3-5~3-8は、同様の培養条件でLactobacillus fermentum NBRC15885を培養したものを前培養液とした。培養終了後、90℃で10分間、殺菌処理し、各乳酸菌発酵物を得た。各培養条件を表3に記載した。
【0033】
実施例3-1~3-8で得られた各乳酸菌発酵物について、発酵後のpHを測定して表3に記載すると共に、上記のHPLC測定条件にて6-ジンゲルジオール((3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオール)を測定し、発酵物中の固形分あたりの濃度として表3及び図3に示した。尚、表3の6-ジンゲルジオール濃度は、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの合計を6-ジンゲルジオール濃度とした。
【0034】
【表3】
【0035】
図3より、発酵前の6-ジンゲロール含有量が多いほど、発酵後の6-ジンゲルジオール含有量が多く、CaCOの有無に関わらず6-ジンゲルジオールが生成されることが分かった。
【実施例0036】
各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G):3%、並びに実施例4-1はジンゲロール含有物としてジンジャーエキスパウダーG2:10%及びCaCO:1.5%、又は実施例4-2はジンゲロール含有物としてジンジャーエキスパウダーG2:10%となるように各液体培地を50gずつ200mL容のバッフル付三角フラスコで調製し、121℃で15分間加熱殺菌処理した。冷却した各液体培地に、乳酸菌の前培養液を各1%(v/v)植菌し、30℃で24時間振盪培養した。尚、各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス:3%及びCaCO:1.5%であって滅菌した液体培地で30℃、24時間、Lactobacillus fermentum NBRC15885を振盪培養したものを前培養液とした。
【0037】
発酵14時間後から24時間後まで、2時間おきにサンプリングし、各サンプルのpHを測定して表4に記載すると共に、上記のHPLC測定条件にて6-ジンゲルジオール((3S,5S)-6-ジンゲルジオール)の含有量を測定し、図4に示した。
【0038】
【表4】
【0039】
図4より、CaCO存在下の方が、6-ジンゲルジオール生成速度が早いことが分かった。
【実施例0040】
各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス(ミースト(登録商標)P1G):3%、CaCO:1.5%、並びに実施例5-1はジンゲロール含有物としてショウガ抽出物(Ginger soft SCFE 35%、サビンサジャパン株式会社製):1%、実施例5-2は前記ショウガ抽出物:1%及びポリグリセリン脂肪酸エステル(NIKKOL(登録商標) Decagyn 1-MVEX PN、日光ケミカルズ株式会社製):2%、又は実施例5-3はジンゲロール含有物としてジンジャーエキスパウダーG2の終濃度が10%となるように各液体培地を50gずつ200mL容のバッフル付三角フラスコで調製し、121℃で15分間加熱殺菌処理した。冷却した各液体培地に、乳酸菌の前培養液を各1%(v/v)植菌し、30℃で24時間振盪培養した。尚、各終濃度がスクロース:5%、酵母エキス:3%及びCaCO:1.5%であって滅菌した液体培地で30℃、24時間、Lactobacillus fermentum NBRC15885を振盪培養したものを前培養液とした。培養終了後、90℃で10分間、殺菌処理し、各乳酸菌発酵物を得た。各培養条件等を表5に記載した。
【0041】
実施例5-1~5-3で得られた各乳酸菌発酵物について、発酵後のpHを測定して表5に記載すると共に、上記のHPLC測定条件にて6-ジンゲルジオール((3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオール)の含有量を測定し、発酵物中の固形分あたりの濃度として表5及び図5に示した。尚、表5の6-ジンゲルジオール濃度は、(3R,5S)-6-ジンゲルジオール及び(3S,5S)-6-ジンゲルジオールの合計を6-ジンゲルジオール濃度とした。
【0042】
【表5】
【0043】
ジンゲロール含有物を発酵用原料に含ませることで、ジンゲルジオールを含有する乳酸菌発酵物を調製でき、さらに、ジンゲロール含有物を、乳化物とすることで、固形分あたりのジンゲルジオール濃度が上がることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5