(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095554
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ビード構造が改良されたタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B60C15/04 D
B60C15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197657
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】17/124009
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】上横 清志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BB05
3D131BB07
3D131BC05
3D131BC25
3D131HA13
3D131HA14
3D131HA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強度を犠牲にすることなく軽量であり、荷重下のクリープやフレッチングなどの問題を克服する、ビード構造が改良されたタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア30が内部に設けられたビード部と、前記ビードコア30を囲む複数のシースワイヤ線35の第1の層と、前記第1の層を囲む複数のシース線37から形成された第2の層とを有し、前記第2の層のシースワイヤ線37は、前記第1の層のシースワイヤ線35よりも小さい直径Cを有する空気入りラジアルタイヤ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアを内部に備えたビード部と、前記ビードコアを囲む複数のシースワイヤ線の環状の第1の層と、前記第1の層を囲む複数のシースワイヤ線で形成された環状の第2の層とを有し、前記第2の層のシースワイヤ線は、前記第1の層の前記シースワイヤ線よりも小さい直径を有することを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記第1の層の前記複数のシースワイヤ線の直径が1.5mm~3.0mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記第2の層の前記複数のシースワイヤ線の直径が1mm~2mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記ビードコアの断面形状が環であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記ビードコアの断面形状が円であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記ビードコアは、チタン、アルミニウム、マグネシウム、または他の金属合金の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】
前記ビードコアは、アラミド、炭素繊維、プラスチックまたは他の非金属材料の群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項8】
前記環の内部が、金属、非金属、アラミド、炭素繊維またはプラスチック充填材で満たされていることを特徴とする、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項9】
前記環の内部が空気で満たされていることを特徴とする、請求項4に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項10】
前記第1の層にはシースワイヤ線の合計3つの環状列があることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項11】
前記第1の層にはシースワイヤ線の合計2つの環状列があることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項12】
前記第2の層にはシースワイヤ線の合計2つの環状列があることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項13】
外側層にシースワイヤ線の2つの環状列あることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、空気入りタイヤに関し、より詳細には、航空機またはトラックのような大型車両用のビード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にタイヤビードコアと呼ばれる環状引張部材は、使用中にタイヤをリムにしっかりと保持するように設計されている。タイヤビードは、ビードコアとリムとの間に半径方向に圧縮される半径方向内側部分を提供し、この部分が圧縮されると、ビードコアは引張状態に置かれる。半径方向の圧縮は、タイヤの内圧がビードを垂直のビードフランジに向かって軸方向外向きに押し出す作用によって、タイヤがテーパー付きリムシートに装着されるときに生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近、軽量化された重荷重用ビード構造を提供する試みがなされている。しかし、荷重下のクリープやフレッチングなどの問題が生じている。荷重下のクリープでは、合成ケーブルまたはコードが荷重下で伸び、プラスチックが流動するにつれて、保持力は実際には経時的に低下する。第2の問題はフレッチングであり、コードが圧縮状態に置かれた場合に脆性破壊が生じる。したがって、強度を犠牲にすることなく軽量であり、上述の欠点をさらに克服する、改良されたビード設計が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は第1の態様において、ビードコアを内部に備えたビード部と、前記ビードコアを囲む複数のシースワイヤ線の第1の層と、前記第1の層を囲む複数のシースワイヤ線で形成された第2の層とを有し、前記第2の層のシースワイヤ線は、前記第1の層の前記シースワイヤ線よりも小さい直径を有する、空気入りラジアルタイヤを提供する。
定義
【0005】
「約」は、特に明記しない限り、±10%を意味する。
【0006】
「縦横比」は、タイヤの断面の幅に対するタイヤの断面の高さの比を意味する。
【0007】
「軸方向の」および「軸方向に」は、タイヤの回転軸に平行な線または方向を意味する。
【0008】
「ビード」または「ビードコア」は一般に、環状引張り部材を含むタイヤの部分を意味し、半径方向内側のビードは、タイヤをリムに保持することに関連し、フリッパ、チッパ、エイペックスまたはフィラー、トウガード、およびチェーファーなどの他の補強要素の有無にかかわらず、プライコードが巻かれて形成されている。
【0009】
「ベルト構造」または「補強ベルト」は、織布または不織布であって、トレッドの下に位置する、平行コードからなる少なくとも2つの環状層またはプライを意味する。
【0010】
「カーカス」は、円筒形状または円環形状に継ぎ合わせるのに適した長さに切断されるか、またはすでに継ぎ合わされている、タイヤプライ材と他のタイヤ構成要素との積層体を意味する。カーカスを加硫して成形タイヤを作製する前に、追加の要素をカーカスに付加してもよい。
【0011】
「円周方向の」は、±5°以内で軸方向に垂直な線または方向を意味する。
【0012】
「コード」は、プライを補強するために使用される、繊維を含む補強ストランドの1つを意味する。
【0013】
「伸長可能な」は、硬化タイヤから取り出したコードから測定した場合に、破断荷重の10%で0.2%を超える相対破断点伸びを有するコードを意味する。破断点伸び(全伸び%)の引張り測定は、ISO 6892-1B(2019)に従って、硬化タイヤから取り出したときにケーブルまたはコード上で試験される25mpa以下の予荷重で行われる。
【0014】
「フリッパ」は、ビードコアの周りに巻かれた補強織物を意味する。
【0015】
「半径方向の」及び「半径方向に」は、半径方向にタイヤの回転軸に向かう、またはタイヤの回転軸から離れる方向を意味する。
【0016】
「ラジアルプライ構造」は、1つ以上のカーカスプライであって、そのうちの少なくとも1つのプライがタイヤの赤道面(EP)に対して65°と90°の間の角度で配置された補強コードを有するものを意味する。
【0017】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向溝と、第2の周方向溝または横方向縁部のいずれかとによって画定される、トレッドの周方向に延びるゴムのストリップを意味し、ストリップは、最も深い溝によって分割されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、一例として、添付の図面を参照して説明される。
【
図2】
図1のタイヤの下部サイドウォールおよびビード部の拡大図である。
【
図4】本発明のビードコアの第2の実施形態の断面図である。
【
図5】本発明のビードコアの第3の実施形態の断面図である。
【
図6】本発明のビードコアの第4の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、ラジアルプライタイヤ100の半部断面図が示されている。図示されているように、タイヤ100は、航空機のタイヤとして使用するための構造である。一例として、タイヤ100は、高内圧および高負荷を受けるラジアル航空機用タイヤである。アースムーバ、トラックおよびファームタイヤのような他のこのようなタイヤも、本発明のビードコアを使用するのに理想的に適している。
【0020】
タイヤ100は、圧力下で流体または空気を収容する空気不透過性の内側ライナー22を有するラジアルプライタイヤである。内側ライナー22の半径方向外側には、1つまたは複数のラジアルプライ20がある。各プライ20は、一般にビードコア30と呼ばれる環状引張部材から延びている。図に示すように、プライ20は、ビードコア30の周りに固定されており、軸方向外向きおよび上向きに折り返してプライ折り返しを形成するか、またはビードコア30よりも下で、軸方向内側に折り返している。ビードコア30の半径方向上方には、任意のゴムエイペックス40がある。
【0021】
カーカスプライ20の半径方向外側には、複数のベルト補強層を含むベルトパッケージ50があり、各層は平行な補強コードで補強されている。頂部ベルト層53は、ベルト層50の半径方向外側に示されている。ベルトの上方には、図示のようなトレッド18があり、トレッド18は複数の任意の円周方向に連続する溝17を有する。このようなタイヤ構造100は、本発明のビードコア30を利用可能なタイヤ構造の一例である。図示されているタイヤ100は、航空機のタイヤ構造であるが、本発明はあらゆる高積載重量タイヤ構造において使用可能である。
【0022】
図2を参照すると、本発明の下部サイドウォールおよびビードコア30の拡大図が示されている。図示するように、中央コア33は、任意選択的に360°に巻かれた単一のワイヤまたはロッドであっても良いことが示されており、ワイヤ線の両端は、1つの切れ目のないフープまたは中央コア33を形成するように一緒に固定されている。中央コア33は、好ましくは3mm~20mmの範囲、より好ましくは5mm~15mmの範囲の直径を有する。
図3に示すように、中央コアの断面形状は中実円である。
図3に示すように、中央コア33は、アルミニウムの合金、またはマグネシウム、チタンなどの他の軽量金属合金、またはスチールよりも重量が小さい任意の金属合金で作られることが好ましい。金属製の中央コアが使用される場合には、中央コアは、アルミニウム、または優れた延性を維持するとともに優れた強度比を有するアルミニウム合金からなることが好ましい。中央コアはまた、アラミド、炭素繊維、またはプラスチック樹脂などの非金属材料から作製されてもよい。
【0023】
さらに図示するように、中央コア33は、内側シースワイヤ線35の第1の環状列によって包まれている。好ましくは、内側シースワイヤ線35の少なくとも2つの環状列があり、各内側シースワイヤ線が直径Bを有する。好ましくは、内側シースワイヤ線35のワイヤの直径は同じであり、1.5mm~約3mmの範囲のサイズであり、より好ましくは、1.8mm~約2.5mmの範囲のサイズである。好ましくは、3つから4つの環状列の内側シースワイヤ線35が設けられている。シース層のワイヤ線35は、中央コア33の周りにヘリカル状またはスパイラル状に巻かれたスチールである。
【0024】
ビードコア30は、外側シース層37の1つ以上の環状列をさらに含む。外側環状列内のワイヤ線は、内側シース層内のワイヤ線の直径Bよりも小さい直径Cを有する。好ましくは、外側シース層37のワイヤ線の直径Cは同じであり、1.5mm~約2.5mmの範囲のサイズ、より好ましくは1mm~約2mmの範囲のサイズである。
【0025】
図4は、本発明のビードコア140の第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、以下の相違点を除いて、
図3と同じである。中央コア40は、環状管40の断面形状を有し、環状管の内側部分45は充填剤で満たされている。環状管40は、金属、アラミド、ナイロン、炭素繊維、またはプラスチックであってもよい。金属は、好ましくはアルミニウムまたはスチールである。充填材は、金属、プラスチック、炭素繊維またはプラスチックであってもよい。
図5に示すように、ビードコア240の第3の実施形態が示されており、第3の実施形態は、以下の相違点を除いて
図4のビードコアと同じである。中央コアの内部45は空気で満たされている(すなわち、空気以外に何もない)。
【0026】
図6は、本発明のビードコア300の第4の実施形態を示す。中央コア310は、環状管から形成され、管320の内部は充填剤で満たされていてもよく、または満たされていなくても(空気が充填されても)よい。環状管310は、金属、アラミド、ナイロン、炭素繊維、またはプラスチックであってもよい。金属は、好ましくはアルミニウムまたはスチールである。充填剤は、金属、プラスチック、炭素繊維またはアラミドであってもよい。この実施形態では、同じ直径を有する環状ワイヤの1つまたは複数の内側列350が設けられている。好ましくは、内側列のワイヤ線の直径は同じであり、1.5mm~約3mmの範囲のサイズで、より好ましくは1.8mm~約2.5mmの範囲のサイズである。ビードコア300はさらに、より大きな直径のワイヤ線の1つまたは複数の半径方向外側列370を有し、直径の範囲は2~3mmである。
【0027】
ビード全体が接着ゴム層で被覆され、次いで、繊維製のプライコードが、ビードコードの周囲に螺旋状に巻き付けられる。
【0028】
本明細書で提供される本発明の説明に照らして、本発明の変形形態が可能である。特定の代表的な例および詳細を、本発明を説明する目的で示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の完全に意図された範囲内にある、本明細書に記載された特定の実施例において変更を行うことができることを理解されたい。
【外国語明細書】