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▶ テーイー オートモーティブ エンジニアリング センター(ハイデルベルク) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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  • 特開-パイプ装置用接続要素、及び、装置 図1
  • 特開-パイプ装置用接続要素、及び、装置 図2
  • 特開-パイプ装置用接続要素、及び、装置 図3
  • 特開-パイプ装置用接続要素、及び、装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095561
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】パイプ装置用接続要素、及び、装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 33/00 20060101AFI20220621BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20220621BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B23K33/00 310A
B23K1/00 330K
B23K3/06 J
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021200860
(22)【出願日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】20214022.4
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518001014
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ エンジニアリング センター(ハイデルベルク) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン クレム
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ウィンター
(57)【要約】      (修正有)
【課題】永続的な気密性と機械的な破壊抵抗性とが改良された、パイプ装置用接続要素及び装置を提供する。
【解決手段】パイプ装置用接続要素(1)であって、少なくとも1つの貫通チャネル(3)と、パイプ(9)のパイプ端(5)を収容するための収容穴(4)とを有する基体(2)を備える。収容穴(4)は、貫通チャネル(3)に対応しており、且つ、貫通チャネル(3)よりも大きい断面を有する。貫通チャネル(3)と収容穴(4)との間には、移行段部(6)が基体(2)内に設けられている接続要素(1)と、装置と、装置を製造するための方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ装置用接続要素(1)であって、
少なくとも1つの貫通チャネル(3)と、
パイプ(9)のパイプ端(5)を収容するための収容穴(4)と
を有する基体(2)を備え、
前記収容穴(4)は、前記貫通チャネル(3)に対応しており、
前記収容穴(4)は、前記貫通チャネル(3)よりも大きい断面を有し、
前記貫通チャネル(3)と前記収容穴(4)との間には、移行段部(6)が前記基体(2)内に設けられている
ことを特徴とする接続要素。
【請求項2】
請求項1に記載の接続要素であって、
前記移行段部(6)の直径は、前記貫通チャネル(3)の前記直径よりも大きく、前記収容穴(4)の前記直径よりも小さい
ことを特徴とする接続要素。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接続要素であって、
前記移行段部(6)は、径方向部分と、軸方向部分とを有し、
前記径方向部分と前記軸方向部分との間の移行部は、丸くなっている
ことを特徴とする接続要素。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の接続要素であって、
前記収容穴(4)の底部(7)は、先細り形状になっている
ことを特徴とする接続要素。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の接続要素であって、
前記収容穴(4)は、前記移行段部(6)から離れる方に向かう側で断面拡張部(8)につながっている
ことを特徴とする接続要素。
【請求項6】
装置(10)であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の接続要素(1)と、
パイプ(9)であって、該パイプ(9)のパイプ端(5)が前記収容穴(4)内へ挿入されているパイプ(9)とを
備える装置(10)。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記パイプ端(5)は、内周縁に、周方向に延在するばり(11)を有し、
前記ばり(11)は、前記移行段部(6)内へ突出している
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の装置であって、
前記パイプ端(5)の端面(12)は、先細り形状になっている
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の装置であって、
前記接続要素(1)と前記パイプ(9)とは、半田付けによる材料接続式の態様で接続されている
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
自動車の冷却回路であって、
請求項6~9のいずれか1項に記載の装置(10)を少なくとも1つ備える冷却回路。
【請求項11】
請求項6~9のいずれか1項に記載の装置(10)を製造する方法であって、
初めに、パイプ(9)が、パイプカッタによってある寸法に切断され、
半田リング(13)が、付加され、
前記パイプ(9)の前記パイプ端(5)が、前記収容穴(4)内に挿入され、
前記パイプ端(5)の前記ばり(11)が、前記移行段部(6)内へ突出し、
前記装置(10)が加熱されて、前記半田が溶融し、該半田が、前記収容穴(4)の内壁と前記パイプ(9)の外壁との間を這い上がる
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
半田付け工程後、余分な半田は、前記断面拡張部(8)に収容される
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法であって、
前記半田リング(13)は、前記収容穴(4)内に挿入され、
その後、前記パイプ(9)は、前記収容穴(4)内に挿入される
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の方法であって、
前記半田リング(13)は、前記パイプ(9)に押し付けられ、
続いて、前記パイプ(9)は、前記収容穴(4)内に挿入され、
前記半田リング(13)は、前記半田付け工程前に、前記断面拡張部(8)で止められる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ装置用接続要素に関する。この接続要素は、少なくとも1つの貫通チャネルと、パイプ端を収容するための収容穴とを有する基体を備え、収容穴は、貫通チャネルに対応しており且つ貫通チャネルよりも大きい断面を有する。本発明は更に、接続要素とパイプとを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような接続要素及びこのような装置が、先行技術から知られている。このような接続要素及び装置は、空調技術において使用されることが多く、例えば空調システム又は冷媒回路において使用される。これに関連して、この装置は、例えば電気自動車における又は車両空調用システムにおける移動式温度制御機器に特に適している。接続要素は、1つのパイプ装置の異なるパイプを又は複数のパイプを、他のパイプに接続する又は空調システムの異なる部品に接続するために、使用することができる。使用される冷媒によっては、空調システム内に極端な高圧が発生することがある。このため、これに関連して、接続要素の収容穴内で、半田接続によって材料接続式にパイプを固締することが知られている。半田接続は、機械的に非常に破壊抵抗性が高く、非常に良好な永続的気密性を有する。よって、このような装置は、原則として、冷媒としてCOを用いた空調システムで使用するのに適している。ただし、COの熱力学的特性に起因して、装置は最大135バールの圧力に耐えることができなければならない。COは、その良好な他の熱力学的特性に起因して、移動式空調システムでの使用、例えば自動車での使用に特に適している。
【0003】
パイプ端は、生産工程に起因して、平面でないことが多く且つ円錐形状に切断されていることが判っている。このため、パイプ端が収容穴内へ挿入されると隙間が生じることがあり、この隙間により半田付け工程中にエアポケットができてしまうことがある。エアポケットは、機械的な破壊抵抗性の減少に関連しており、これにより、連続運転中に冷媒の損失が生じかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、永続的な気密性と機械的な破壊抵抗性とが改良された、パイプ装置用接続要素及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴により達成される。従属請求項は、有利な実施形態を示している。
【0006】
本発明によるパイプ装置用接続要素は、少なくとも1つの貫通チャネルと、パイプ端を収容するための収容穴とを有する基体を備え、収容穴は、貫通チャネルに対応しており且つ貫通チャネルよりも大きい断面を有し、貫通チャネルと収容穴との間には移行段部が基体内に設けられている。
【0007】
製造過程が原因でパイプ端から突出してしまう部分を収容できるようにするために、移行段部は受けとなっている。これにより、パイプ端が周縁全体に亘って収容穴の底部に確実に当接するようにできる。これにより、接続要素とパイプとの間の接触領域では、非常に小さい隙間しか生じなくなり、半田が接続要素とパイプとの間の隙間を実質的に空隙なしに充填可能となる。この結果、隙間幅が一定に規定された隙間ができ、これにより半田を均一に収容可能になり、このように均一に収容できることによって、パイプが接続要素にしっかりと接続される。
【0008】
移行段部の直径は、好ましくは、貫通チャネルの直径よりも大きく、収容穴の直径よりも小さい。貫通チャネルの直径は、収容穴へ挿入されるパイプの直径に対応することが好ましい。この結果、パイプは、外周の領域において収容穴の底部に当接し、パイプの内周部は移行段部に対応する。
【0009】
移行段部は、径方向部分と、軸方向部分とを有してもよく、径方向部分と軸方向部分との間の移行部は丸くなっていてもよい。別の方法としては、移行部は、斜面、段部、斜角面等の、異なる幾何学形状を有することもできる。この設計により、接続要素は、機械的な破壊抵抗性が特に高くなる。更に、この移行段部により、半田が貫通チャネル内へ入り込むリスクが低減される。
【0010】
収容穴の底部は、先細り形状になっていてもよい。底部の斜面は、好ましくは、移行段部につながっている。傾斜した底部及び移行段部を有するこの設計は、パイプカッタによってある寸法に切断されたパイプを収容するのに特に適している。パイプカッタは切断ホイールを有し、切断ホイールはパイプの外周を案内される。この工程において、パイプカッタの各切断ホイールがパイプの外周に切欠を刻み、パイプカッタにより切り落とされる部分的なパイプは、各切断ホイールがパイプを完全に最後まで切ってしまう前に張力を加えることにより、互いから分離される。この工程により、切断されたパイプの内径を確実に一定にすることができる。また、工業生産において、切り落とされたパイプ端はしばしば、ばり取りされず、その結果、パイプ端は、突出するばりを内周縁上に有することになる。各切断ホイールが原因で、パイプ端は、平坦な切断面をなしておらず、先細り形状になっている。本発明による接続要素の設計によれば、このようにしてある寸法に切断されたパイプは、接続要素の収容穴内へ、正確に適合するように挿入することができる。接続要素とパイプとの間に規定の隙間があり、この隙間を半田により一様に充填することができる。
【0011】
収容穴は、移行段部から離れる方に向かう側で断面拡張部につながっていることが可能である。断面拡張部は、収容穴を取り囲む半田ポケットをなしている。また、半田リングはパイプが収容穴内へ挿入された後に加熱されるが、この半田ポケットは、この半田リングを収容するのに使用可能である。工程中、半田が溶融し、この半田がパイプと接続要素との間の隙間を充填する。一方、収容穴内へパイプを挿入する前に半田リングを挿入し、その後パイプを挿入することも考えられる。接続要素が加熱されると半田が溶融する。溶融した半田は、パイプと接続要素との間の隙間を充填し、断面拡張部内を這い上がる。断面拡張部により半田が収容されることを利用して、半田付け工程がパイプと接続要素との間にどの程度安定した接続をもたらしたかを検査することができる。
【0012】
半田リングは、銅製又は銅合金製であることが好ましい。しかしながら、半田リングは、その他の金属材料製又は合金製とすることもできる。
【0013】
本発明における装置は、先に記載したような接続要素と、パイプであって、該パイプのパイプ端が収容穴内へ挿入されているパイプとを備える。
【0014】
この場合、パイプ端は、内周縁に、移行段部内へ突出する周方向に延在するばりを有してもよい。このことにより、所望の長さのパイプを、簡易且つ安価に生産することが可能になる。同時に、接続要素の設計により、パイプ端が収容穴の底部に当接することを確実に実現することができる。パイプ端の内周縁上のばりは、移行段部内へ突出している。この点で、移行段部は、パイプの突出部分の受け部をなしている。
【0015】
パイプ端の端面は、先細り形状になっていてもよい。この実施形態は、パイプカッタを使用してパイプがある寸法に切断した場合に当てはまる。パイプは、パイプカッタによって迅速に及び経済的に切断することができる。
【0016】
接続要素とパイプとは、半田付けによる材料接続式の態様で接続することができる。半田付けによる接続は、接続要素とパイプとの、永続的な気密性と機械的な破壊抵抗性とを有する接続である。
【0017】
このような装置は、空調システムでの使用に特に適している。特に適しているのは、冷媒としてCOを用いた空調システムでの使用である。しかしながら、本装置は、燃料路等、その他の用途にも適している。本発明による装置は、特に自動車の空調システム及び冷媒回路で使用される。
【0018】
本発明における装置を製造する方法では、初めに、パイプがパイプカッタによってある寸法に切断され、半田リングが付加され、パイプ端が収容穴内に挿入され、パイプ端のばりが移行段部内へ突出する。そして、装置が加熱されて、半田が溶融し、この半田が収容穴の内壁とパイプの外壁との間を這い上がる。そうすると、余分な半田は断面拡張部に収容することができる。
【0019】
本方法の第1の別法によれば、半田リングは収容穴内に挿入され、その後、パイプは収容穴内に挿入される。結果として、半田リングは、接続要素の内の、パイプと接続要素との間に位置する。
【0020】
第2の別法によれば、半田リングはパイプに押し付けられ、続いて、パイプは収容穴内に挿入され、半田リングは半田付け工程前に断面拡張部で止められる。
【0021】
以下で図を参照して、本発明における接続要素の幾つかの実施形態及び本発明における装置の幾つかの実施形態を、より詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】接続要素と、パイプと、半田リングとを備えた装置の、接合前の断面図を示す。
図2】パイプ及び半田リングが収容穴内に挿入されている状態の図1における装置を示す。
図3】半田リングがパイプ上に押し付けられている状態の図1における装置を示す。
図4】半田付け工程が完了後の状態の図1における装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これらの図は、接続要素1とパイプ9とを備える装置10を示している。装置10は、冷媒としてCOを使用する空調システムの一部である。
【0024】
接続要素1は、鋼又はステンレス鋼又はアルミニウム等の金属材料製である基体2を有する。基体2には貫通チャネル3が設けられており、貫通チャネル3は、パイプ9のパイプ端5を収容するための収容穴4に対応している。この収容穴4は、貫通チャネル3よりも大きい断面を有する。収容穴4の直径は、パイプ9のパイプ端5を収容する際に隙間ができるように設計されている。貫通チャネル3の直径は、実質的にパイプ9の内径に相当する。別の選択肢である実施形態においては、パイプ9のパイプ端5を、圧力嵌めで収容穴4内に収容することも考えられる。パイプ9も、鋼又はステンレス鋼又はアルミニウム等の金属材料製である。
【0025】
貫通チャネル3と収容穴4との間には、移行段部6が基体2内に設けられている。この移行段部6の直径は、貫通チャネル3の直径よりも大きく、収容穴4の直径よりも小さい。移行段部6は、径方向部分及び軸方向部分を有し、径方向部分と軸方向部分との間の移行部は丸くなっている。
【0026】
収容穴4の底部7は先細り形状になっている。収容穴4は、移行段部6から離れる方に向かう側で断面拡張部8につながっている。
【0027】
パイプ端5は、周方向に延在するばり11を内周縁に有し、このばり11は、移行段部6内へ突出している。パイプ端5の端面12は、先細り形状になっている。
【0028】
図1は、パイプ9が収容穴4内へ挿入される前の装置10を示す。
【0029】
図2は、パイプ9が収容穴4内へ挿入されている状態の図1における装置10を示す。収容穴4内には、パイプ9と移行段部6との間に、半田リング13が位置する。
【0030】
図3は、パイプ9が収容穴4内へ挿入されている状態の図1における装置10を示す。半田リング13がパイプ9に押し付けられており、半田リング13は断面拡張部8で止まっている。
【0031】
図4は、図1における装置10を示しており、ここでは、収容穴4内へ挿入されたパイプは、接続要素1に、半田付けによる材料接続式の態様で接続されている。この場合、移行段部6及び断面拡張部8に、余分な半田が収容される。断面拡張部8に収容された半田の量をに基づいて、半田付けが破損しないことについての品質検査を行うことができる。
【0032】
装置10を製造するために、まず、パイプカッタを使用してパイプ9をある寸法に切断する。このパイプカッタは切断ホイールを有し、切断ホイールはパイプ9の外周上を案内される。切断工程に起因して、パイプ9の内周縁に、周方向に延在するばり11が形成される。切断ホイールの幾何学形状に起因して、パイプ端5の端面12は先細り形状になっている。
【0033】
次のステップにおいて、接続要素1の収容穴4内に半田リング13が挿入され、この半田リング13がパイプ9の端面12と移行段部6との間に配置されるように、収容穴4内にパイプ9のパイプ端5が挿入される。その後、装置10が加熱されて、半田が溶融し、この半田が、収容穴4の内壁とパイプ9の外壁との間の隙間を充填する。このとき、半田が隙間を這い上がり、余分な半田は断面拡張部8により収容される。半田付けが完了した後に断面拡張部8が半田で一様に充填されているならば、これは、半田付け工程が適正であることを示している。
【0034】
別の選択肢となる方法では、半田リング13がパイプ9に押さえつけられ、その後、パイプ9が接続要素1の収容穴4内に挿入される。このとき、半田リング13は、断面拡張部8で止められる。その後、装置10が加熱されて、半田が溶融し、この半田が、収容穴4の内壁とパイプ9の外壁との間の隙間を充填する。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】