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特開2022-95572巻線構造を有するサージアレスタ及びその製造方法
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  • 特開-巻線構造を有するサージアレスタ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095572
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】巻線構造を有するサージアレスタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/12 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H01C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202907
(22)【出願日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】10 2020 133 830.9
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521547518
【氏名又は名称】トリデルタ メイデンシャ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRIDELTA MEIDENSHA GMBH
【住所又は居所原語表記】MARIE‐CURIE‐STR.3,07629 HERMSDORF,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パールホーン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラシュケ,フィリップ
【テーマコード(参考)】
5E034
【Fターム(参考)】
5E034CB01
5E034DB04
5E034DB05
5E034DE20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力損失が小さく、確実かつ安全な動作が可能な、サージアレスタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】サージアレスタは、対向する2つの端部取付具3と、これら端部取付具3間に配置される1つ以上のバリスタ5と、このバリスタ5上に設けられる、閉じられた巻線層9と、端部取付具3間で延在し、かつ、これらを張力下で保つと共に、開放交差巻線13である補強要素7と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの端部取付具(3)と、
これら端部取付具間に配置されるバリスタ(5)と、
このバリスタ(5)上に設けられてかつ、少なくとも部分的に閉じられた層である巻線層(9)と、
前記2つの端部取付具(3)間で延在しかつ、これら端部取付具(3)を張力下で保つと共に、開放交差巻線(13)である補強要素(7)と、
を備えるサージアレスタ。
【請求項2】
樹脂含浸ガラス繊維糸用の樹脂がカチオン性架橋エポキシ樹脂である、請求項1に記載のサージアレスタ。
【請求項3】
前記カチオン性架橋エポキシ樹脂がUV開始剤及び/又は熱開始剤を含む、請求項2に記載のサージアレスタ。
【請求項4】
前記カチオン性架橋エポキシ樹脂が前記バリスタ(5)の表面に付着する、請求項2又は3に記載のサージアレスタ。
【請求項5】
前記補強要素(7)は、前記巻線層(9)より5~10倍、好ましくは7倍厚い断面を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項6】
シリコン外側ハウジング(15)をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項7】
開放した菱形領域が前記交差巻線における樹脂含浸ガラス繊維糸間に生じており、この菱形の角度が20~160°である、請求項1から6のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項8】
前記バリスタを複数備え、
前記巻線層は、少なくとも、前記端部取付具(3)と前記バリスタ(5)との間の遷移領域、及び前記複数のバリスタ(5)間の遷移領域において、閉じられた層である、請求項1から7のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項9】
前記巻線層は、前記バリスタ(5)の外表面全体を覆う、連続的に閉じられた層である、請求項1から7のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項10】
対向する2つの端部取付具およびこれらの間に配置されるバリスタを有する積層体を用意するステップと、
前記積層体を樹脂含浸ガラス繊維糸で巻き付けて、少なくとも部分的に閉じられた巻線層を形成するステップと、
前記樹脂含浸ガラス繊維糸を供給しながら、前記積層体を相対回転させると同時に長手方向で前後移動させることによって、前記積層体に前記樹脂含浸ガラス繊維糸を軸方向で部分的に巻き付けて開放交差巻線を形成するステップと、
を有する、サージアレスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線構造を有するサージアレスタ及びその製造方法に関する。特に、本発明は、ガラス繊維強化プラスチックから形成される開放交差巻線を備えるサージアレスタに関する。
【背景技術】
【0002】
サージアレスタに関する、特にそれらのハウジングの選択及び設計に関する詳細は、例えば、「Metalloxid-Ableiter in Hochspannungsnetzen」、Volker Hinrichsen、第3版、発行元及び著作権(c)2012:Siemens AG Energy Sector Freyeslebenstrase 1 91058 エルランゲン、ドイツ
(https://cache.industry.siemens.com/dl/files/132/109747132/att_918329/v1/Metalloxid-Ableiter_in_Hochspannungsnetzen_-_Grundlagen.pdf)から知られている。
【0003】
そこで説明されているように、プラスチック製のハウジングを有するサージアレスタが短絡した場合には、一般に、ハウジング内で明確な圧力(その圧力は、磁器アレスタから知られているように、圧力解放装置を作動させ得る)の上昇はなく、その代わり、発生するアークが、プラスチックハウジングのハウジング壁を通じて、任意のポイント又はこの目的のために特別に設計されたポイントに直接に到達する。
【0004】
そのようなアレスタの過負荷の場合には、プラスチック製のハウジングが破損だけはしないようにするか、または、ハウジングの破片及び放出された部品がサージアレスタの周囲の領域内で地面に落下するようにするか、のいずれかを確保する必要があり、前記領域のサイズは、サージアレスタの高さに基づいて規定される。
【0005】
各所定の重量制限を下回る部品、例えば60g未満の部品だけは前記領域の外側で発見されてもよい。
【0006】
実際には、3つの基本的なタイプのプラスチックハウジングが確立されている。これらプラスチックハウジングとしては、第一に、いわゆるチューブ形状を成す、ガス容積が密閉されたプラスチックハウジング、第二に、バリスタ(好ましくは金属酸化物バリスタ)の積層体と平行に延びて2つの端部取付具又は端子(好ましくはアルミニウムから形成される)に固定されるとともに成型シリコンハウジング(ケージ形状)にガス容積を伴うことなく、取り囲まれるガラス繊維強化プラスチックバーから形成されたバーケージを伴うプラスチックハウジング、第三に、いわゆるプリプレグとしてバリスタに適用される場合が多いガラス繊維糸から形成される巻線(「巻線構造」)を伴うプラスチックハウジングがある。
【0007】
巻線構造を伴う既知のサージアレスタの問題は、要求される機械的強度を得るためにある程度の厚さの巻線が必要とされることであるが、この厚さは短絡の場合の障害となる。なぜなら、この場合、巻線の内部で圧力が上昇するため、ハウジングが破損する際の突然の圧力解放の場合より、バリスタの破片が許容範囲を超えて飛び出す可能性があるためである。
【0008】
この問題に対処するべく、例えば米国特許第5042838号に示されるように、過去に開放巻線が提案されてきた。この場合には、巻線が閉鎖空間を形成せず、巻線がない多数の菱形開放領域が残存し、これらの開放領域はバリスタの表面全体にわたってほぼ規則的に分布され、外側のシリコンハウジングのみがこれらの領域内で外部環境からバリスタを分離する。この構造は、内部における圧力の上昇を確実に防ぎ、それにもかかわらず、優れた機械的強度を実現する。上記菱形開放領域が十分に小さければ、バリスタの比較的大きな破片が外部に達するのを防ぐこともできる。
【0009】
サージアレスタは、通常は、長年にわたって稼働しており、その過程で環境の影響、例えば、雨、霧(塩を含む沿岸の霧を含む)、及び、極端な温度変化に晒されるため、これらのサージアレスタの長期的挙動は特に重要である。その過程の中で、通常のプラスチック製のハウジング、好ましくはシリコンハウジングは、特定の状況下においては水の侵入を防ぐのに不十分であり、この場合、水は、バリスタの表面に集まり、選好して開放領域に集まり、更には、バリスタに対する巻線の接着が不足している場合には、巻線下に徐々に進入していくことが分かった。これにより、電力損失が増大し、サージアレスタの故障につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、長期間であっても電力損失が小さく、確実かつ安全な動作が可能な、前述のタイプのサージアレスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、添付の特許請求の範囲に係るサージアレスタによって、及び、添付の特許請求の範囲に記載されるサージアレスタを製造するための方法によって達成される。
【0012】
本発明によれば、対向する2つの端部取付具と、これら端部取付具間に配置されるバリスタと、このバリスタ上に設けられてかつ、少なくとも部分的に閉じられた層である巻線層と、前記2つの端部取付具間で延在しかつ、これら端部取付具を張力下で保つと共に、開放交差巻線である補強要素と、を備えるサージアレスタが提供される。
【0013】
好ましくは、サージアレスタでは、巻線のために使用されるべき樹脂含浸ガラス繊維糸のため或いはガラス繊維糸束又はロービングのための樹脂として、カチオン性架橋エポキシ樹脂が使用される。
【0014】
更に好ましくは、カチオン性架橋エポキシ樹脂は、UV開始剤及び/又は熱開始剤を含む。
【0015】
特に、カチオン性架橋エポキシ樹脂が少なくとも1つのバリスタの表面に付着することが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態において、補強要素は、巻線層より5~10倍、好ましくは7倍厚い断面を有する。
【0017】
本発明に係るサージアレスタは、シリコン外側ハウジングを有することが好ましい。
【0018】
また、交差巻線においては、開放した菱形領域が樹脂含浸ガラス繊維糸間に残存し、この菱形領域の角度が20~160°であることも好ましい。
【0019】
また、本発明によれば、対向する2つの端部取付具およびこれらの間に配置されるバリスタを有する積層体を用意するステップと、積層体を樹脂含浸ガラス繊維糸で巻き付けて、少なくとも部分的に閉じられた巻線層を形成するステップと、この樹脂含浸ガラス繊維糸を供給しながら、積層体を相対回転させると同時に長手方向で前後移動させることによって、積層体に樹脂含浸ガラス繊維糸を軸方向で部分的に巻き付けて開放交差巻線を形成するステップと、を有する、前述のサージアレスタを製造する方法が供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るサージアレスタを示す図である。
図2図1においてシリコンハウジングが除去されたサージアレスタを示す図である。
図3図2のサージアレスタの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に示されるように、本発明に係るサージアレスタは、プラスチック外側ハウジング15(好ましくは、シリコン外側ハウジング)を有する。このハウジングは、電流のための沿面経路を長くするための、及び、付着する水又は汚染物質を介したサージアレスタの2つの端部間の連続的な導電接続を回避するための複数のシールド17を有している。
【0022】
図示のサージアレスタは、好ましくはアルミニウムから製造される、互いに対向する2つの端部取付具3(端子)と、好ましくは金属酸化物(特に酸化亜鉛)から成る1つ以上のバリスタ5とを有する。バリスタ5はこれら2つの端子3間で積層されている。
このバリスタ5は、閾値電圧未満においては、非常に良好な絶縁体であるという特性を有するが、閾値電圧に達すると、サージアレスタを流れる適切な電流によってサージアレスタの一端のサージが低減されるように、自身の電気抵抗を非線形かつ可逆的に小さな値に変化させる。このようにして、アース接続されたサージアレスタは、電力網の他の電気部品をサージから保護する。
【0023】
しかしながら、最初に説明したように、サージアレスタに非常に高い電流が流れる場合、例えばアレスタの近くで落雷が発生した場合には、サージアレスタが過負荷になる場合がある。この場合、電離ガスがサージアレスタで生じ、その後にアークが形成され得る。その過程で高温が発生し、適切な対策を講じなければ高圧も生じ、サージアレスタの破裂をもたらす場合もある。
【0024】
図1に示されるサージアレスタは、プラスチックハウジング15下にモジュール19を含み、該モジュールは、図2及び図3により詳細に示されるように、バリスタ5の積層体、2つの端部取付具3、及び、補強要素9を有する。
【0025】
ここでは、補強要素9は開放交差巻線13として形成されている。
【0026】
この交差巻線13を製造するために、ガラス繊維糸(好ましくはガラス繊維糸束)が樹脂浴を通って案内されて、ガラス繊維糸に樹脂が含浸される。この樹脂が含浸されたガラス繊維糸は、その後、バリスタ5の積層体及び2つの端部取付具3の周囲に巻回される。このため、好ましくは、ガラス繊維糸の一端が積層体に固定され、この積層体がその後にその長手方向軸の周りで回転される一方で、同時に、積層体がガラス繊維糸の供給ポイントに対してその長手方向軸に沿って移動される。
【0027】
本願において単に「ガラス繊維糸」と称する場合、それはガラス繊維糸束又はロービングを意味する。
【0028】
積層体の長手方向軸に沿う移動の結果としてガラス繊維糸が積層体の端部の一方に到達するときはいつでも、積層体の長手方向軸に沿う移動の方向が逆にされ、積層体のその長手方向軸を中心とした回転が継続される間、ガラス繊維糸がそれぞれの端部取付具の肩部上にわたって案内される。
【0029】
これらの2つの移動の速度が互いに一致しているため、図2及び図3に示されるような開放交差巻線を形成することができる。この際、端部取付具におけるオフセットが利用される。つまり、ガラス繊維糸が端部取付具3に到達すると、長手方向軸の方向での移動は止まるが、積層体は所定の角度分回転される。その後、長手方向軸の方向での移動が再開されるが、その移動方向は、ガラス繊維糸が前の反復中に形成されたトラック上に配置されるように反対の符号を伴う。
【0030】
フィラメントワインディング法とも称されるこの製造プロセスでは、ガラス繊維糸が樹脂浴を通って延び、その後、スピンドルの回転によって少なくとも1つのバリスタ5及び端部取付具3がクランプされる。この際、ガラス繊維糸は、積層体の長手方向軸の方向での設置キャリッジの更なる並進移動によって交差パターンが生じるように適用される。層の互いの上下の正確な位置決め及び巻線の角度は、巻回プログラムの数学的関係に起因する。開放交差巻線とする理由は、短絡の場合にサージアレスタで発生するガスが結果的に容易に逃げることができるとともに、発生するアークがバリスタ5からハウジング15の外へ急速に達することができるためである。
【0031】
ガラス繊維糸は、積層体の長手方向軸に対して10~89°、好ましくは30~70°、特に好ましくは45°の角度を含むため、ガラス繊維糸は、2つの端部アーマチャ3及びバリスタ5を、張力を利用して強固に保持することができる。すなわち、かかる開放交差巻線は、長手方向軸と平行な軸力、曲げ力、及びねじり力に耐えることができるため、積層体の高い機械的強度を確保できる。
【0032】
好ましい実施形態において、複数の平行なガラス繊維糸は、例えば2400テックスであり、いわゆるロービングとして同時に使用される。
【0033】
図2及び図3に示される交差巻線13では、そのようなロービングの7つの層が、いずれの場合にも、巻線の断面厚さが2~10mmになるように互いに重なり合って配置される。断面厚さは、所望の機械的強度に応じて設定され得る。より大きな断面厚さは、機械的強度を増大させるが、プラスチックハウジング15を形成するためにより多くのシリコンを必要とするとともに、補強要素を形成するためにより多くの材料も必要とし、それにより、サージアレスタがより高価になる。
【0034】
本発明によれば、カチオン性架橋エポキシ樹脂を使用してこれをガラス繊維糸に含浸させる。そのような樹脂の例としては、Panacol-Elosol GmbHが提供しているVitralit(登録商標)接着剤及びポッティングコンパウンドが挙げられる。これらは、アクリレート又はエポキシ樹脂をベースにした単一成分系であり、UV又は可視光の下で非常に短時間で硬化するとともに、要件に応じて熱的に後硬化され得る。用途に応じて、高エネルギー照射により0.5~60秒の硬化時間を実現できる。熱による後硬化の結果として、光による硬化に続いて接着剤を陰影領域で硬化することもできる。
【0035】
特に、カチオン性架橋エポキシ樹脂は、UV照射又は熱のいずれかによって硬化をもたらすべくUV開始剤及び/又は熱開始剤を含むことが好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、図3により詳細に示されるように、開放交差巻線13と端部取付具3との間における機械的に安定した固定接続を促進してかつ、水に対するシールをもたらすため、端部取付具3の領域に径方向巻線が付加的に設けられる。
【0037】
冒頭で述べたように、サージアレスタの実際の使用に関しては、サージアレスタが比較的長期間にわたって及び変化する環境条件においてもその電気的特性を維持することが重要である。これに関連して、特に、水がプラスチックハウジング15を通じて拡散してバリスタ5の表面にある交差巻線13の開放部位に集まるリスクがある。これは、サージアレスタの電力損失を増大させる。
【0038】
この問題に対処するために、本発明によれば、樹脂含浸ガラス繊維糸である実質的に単層の巻線9が開放交差巻線13とバリスタ5との間に設けられることにより、バリスタ5の外表面全体に閉じられた層が生じる。カチオン性架橋エポキシ樹脂は、接着剤として作用して、バリスタ5の表面に良好な接着をもたらす。
【0039】
巻線層9として形成されるこの層を形成するために、樹脂含浸ガラス繊維糸又はロービングは、巻き付けられるべき積層体に固定された後、積層体の周りに実質的に径方向で巻回され、すなわち、ガラス繊維糸又はロービングの幅に等しい又はそれよりも必要最小限度に小さい巻線のオフセットのみが回転ごとに形成されるような、積層体のその長手方向軸周りの回転速度に対する積層体の長手方向軸の方向での低い相対移動を伴って巻回される。
【0040】
断面におけるこの層の厚さは、好ましくは0.1~0.5mmであるが、これに限定されない。
【0041】
略径方向巻きの代わりに、閉鎖交差巻きを使用することもできる。すなわち、開放交差巻線の場合、巻回は、長手方向軸の方向でより大きな移動速度を伴って行われ、端部取付具3の一方に達すると、移動方向が逆にされる。今度は、回転速度及び長手方向軸の方向での移動速度は、ガラス繊維糸がオフセットを伴って(互いに隣り合って、又は、僅かな重なりを伴って)横たえられて閉じられた層が形成されるように選択される。しかしながら、かかるガラス繊維糸に起因して、この層の厚さは、上述した略径方向巻きの場合よりも顕著に変化する。しかしながら、この場合、最初に閉じられた層が生じること、および、この層がかなりの程度まで「単層」であることに気づくべきである。
【0042】
利用された樹脂に起因して、前述の方法で形成される層は、バリスタ5の表面にうまく付着する。しかしながら、ガラス繊維糸の厚さが小さいこと、及びガラス繊維糸が随意的に径方向に配置されていることに起因して、この層は、機械的安定性への顕著な貢献をもたらさない。
【0043】
エポキシ樹脂は非常に水密性の高い層を形成するため、バリスタ5の表面に水が集まらないようにすることができる。この点で、巻線層は水分に対する遮蔽層として作用する。
【0044】
したがって、短絡の場合、及び、内部バリスタをシールする場合において、圧力解放を同時に得るために、開放交差巻線7下の薄層9が「径方向に」又は「閉鎖交差巻線」として巻回される。第一に、薄層は、短絡の場合に膜のように開くのに十分弱い。第二に、非常に水を通さない樹脂を使用する場合には、大幅に改善された緊密性がもたらされる。
【0045】
UV照射による硬化は、巻線を適用した後、巻線を形成するための機械で直接に完全に硬化するのを促進させる。その後、モジュール19を寸法的に安定した態様で取り外すことができ、UV照射の陰影で残存する領域さえも硬化されるようにオーブンでモジュール19を後硬化することができる。
【0046】
好適に使用されるUV開始剤及び熱開始剤を伴うカチオン性架橋エポキシ樹脂は、バリスタ5の表面に非常にうまく接着する。言い換えると、樹脂の特定の強度は、樹脂としてよりも接着剤として作用する場合の方が大きくなる。これにより、バリスタ5の表面上に水分が集まるのが防止され、更に、水(蒸気)の取り込みが大幅に減速される。
【0047】
短絡の場合、薄い厚さの閉じられた層9は、ガラス繊維糸の使用にもかかわらず、発生するプラズマに対する耐圧バリアの役割を果たさず、そのため、内圧の上昇が回避される。
【0048】
これは、一連の試験で確認できた。この一連の試験では、開放交差巻線を伴うサージアレスタ、開放交差巻線とその下方の閉じられた層とを伴うサージアレスタ、及び、完全閉鎖交差巻線を伴うサージアレスタが製造されるとともに、製品に典型的な貯水試験(サージアレスタが所定の時間にわたって沸騰塩水中に配置される沸騰試験)及び短絡検査に晒された。開放交差巻線を伴うが閉じられた層を伴わないサージアレスタは、短絡試験に合格したが、貯水試験には合格しなかった。閉鎖交差巻線を伴うサージアレスタは、貯水試験に合格したが、短絡試験には合格しなかった。開放交差巻線とその下方の閉じられた層と伴うサージアレスタは、両方の検査に合格した。
【0049】
閉じられた層9を伴うサージアレスタは、貯水試験又は沸騰試験に対して、著しく良好な反応を示しており、障害が殆ど生じないことが分かった。
【0050】
以上、本発明を一例に基づいて詳しく説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。閉じられた層9の形成と、開放交差巻線7の形成とが同じ巻回装置によって実施されることが好ましく、この場合、閉じられた層9の適用後における、長手方向軸の方向での移動速度、及び/又は回転速度、及び/又は端部取付具3でのオフセットを単に変えればよい。しかしながら、2つの巻回を異なる機械で実施することもでき、また、開放交差巻線13が適用される前に、閉じられた層をUV放射によって又は熱的に硬化させることができる。
【0051】
更なる代替案は、端部端子とバリスタ5との間の遷移領域、又は積層体の2つのバリスタ5間の遷移領域におけるシール目的のみで、径方向巻線を設けることから成る。これは、巻線層が巻き付けられるときにガラス繊維糸が遷移領域に達するまで積層体の長手方向軸と略平行に案内され、その後、遷移領域が巻線層により覆われるまで、長手方向の移動が実質的に停止されて、積層体の回転のみが行われ、その後、次の遷移領域まで長手方向の移動が再開されることによって達成され得る。この場合、バリスタの表面上の樹脂の接着効果は、移動方向が変えられるときに既に適用されたガラス繊維糸を保持するのに十分であることに注意する必要がある。
【0052】
これは遷移領域のシールを達成するにすぎないが、貯水試験又は沸騰試験にもプラスの効果をもたらす。
図1
図2
図3
【外国語明細書】